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商標拒絶査定不服審判

2021-017466

タカラズカ

審判番号
2021-017466
法域
商標
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
商願2020-065542
請求日
2021年12月17日
審決日
2023年11月30日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】阪急電鉄株式会社
  • 【請求人代理人】森岡 博
審判長/審判官
  • 審判長 豊田 純一
  • 審判官 杉本 克治
  • 審判官 小田 昌子
分類
T18 .13 -Z (W41) / T18 .17 -Z (W41)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法3条1項3号商標法3条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、商標法第4条第1項第16号、商標法第3条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

商願2020- 65542拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 本願商標 本願商標は、「宝塚」の文字を標準文字で表してなり、第41類に属する願書記載のとおりの役務(以下「原審役務」という。)を指定役務として、令和2年5月27日に登録出願されたものである。 本願は、令和3年4月26日付けで拒絶理由が通知され、同年6月8日に意見書が提出されたが、同年9月14日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年12月17日に拒絶査定不服審判が請求され、原審役務については、同日付けの手続補正書により、別掲1のとおりの指定役務(以下「当審補正役務」という。)に補正されたものである。 2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は、本願商標は「兵庫県南東部の市」の意味を有する語である「宝塚」の文字を標準文字で表してなるから、これを、原審役務に使用しても、本願商標に接する需要者は、宝塚市において提供される役務であること、すなわち、単に役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するから商標法第3条第1項第3号に該当し、提出された証拠によっては、同法第3条第2項に該当するものではなく、また、原審役務中の宝塚市において提供される役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3 当審においてした審尋 当審において、令和4年9月16日付け審尋(以下「審尋」という。)により、請求人(出願人)(以下「請求人」という。)に対し、別掲2のとおりの事実を提示した上で、本願商標を当審補正役務に使用しても、これに接する需要者、取引者は、「宝塚市で提供される役務」であることを理解するにとどまるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する旨及び同条第2項が適用されることに疑義がある旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。 4 審尋に対する回答(要旨) 請求人は、上記3の審尋に対し、令和4年11月8日受付の回答書(以下「回答書」という。)において、「宝塚」の文字が請求人(又はその関連会社)以外の者により使用されている事実はなく、請求人(又はその関連会社)以外の者による当審補正役務に係る「宝塚」の使用は見当たらないことから、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものであるとしても、「宝塚歌劇(団)」の名称の長年にわたる使用実績と高い知名度、広告宣伝、多数の一般紙・業界紙・雑誌などによる紹介記事により請求人が運営する「宝塚歌劇(団)」の著名な略称と認識されるため、本願商標が当審補正役務について使用された場合には、これに接する需要者が何人かの業務にかかる役務であることを認識できる識別標識として充分な機能を果たすから、本願商標は同条第2項に該当する旨を述べた。 5 当審の判断 (1)商標法第3条第1項第3号該当性について ア 商標法第3条第1項第3号の意義 商標法第3条第1項第3号所定の商標が登録要件を欠くとされているのは、商品の「産地、販売地、品質」等又は役務の「提供の場所、質、提供の用に供する物」等を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる」商標は、商品又は役務の特性を表示記述する標章であることから、取引者、需要者によって、専ら当該商品又は役務の性質を説明するものとして認識されるのが通常であり、自他商品又は役務の識別標識として認識されるとは考え難いこと、そのような標章は、多くの場合、当該商品又は役務に係る取引一般において、取引の内容を説明するために必要かつ適切な表示として機能するものであるから、誰もが自由に使用できるようにしておく必要があり、特定人の独占的使用を認めると、円滑な取引を阻害するなど公益上の問題が生じるおそれがあることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・集民126号507頁参照)。 イ 本願商標が商標法第3条第1項第3号の該当性について 本願商標は、上記1のとおり、「宝塚」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「兵庫県南東部の市。」(広辞苑第7版)の意味を有する語である。 そして、別掲2の1のとおり、「宝塚」の文字は、前掲書以外の一般的な国語辞典及び地名辞典においても地名を表示する語として載録され、また、別掲2の2のとおり、「宝塚」の文字が、地名を表示する語として使用されている実情がある。 そうすると、本願商標を、当審補正役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該役務が、「兵庫県南東部の市である宝塚市において提供される役務」であること、すなわち、役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示したものと認識するにすぎない。 そして、役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、役務の特性を表示記述する標章であることから、取引者、需要者によって、専ら当審補正役務の性質を説明するものとして認識されるのが通常であり、自他役務の識別標識として認識されるとは考え難く、また、そのような標章は、多くの場合、当審補正役務に係る取引一般において、取引の内容を説明するために必要かつ適切な表示として機能するものであるから、誰もが自由に使用できるようにしておく必要があり、特定人に独占使用させることは、円滑な取引を阻害するなどの問題が生じるおそれがある。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第16号該当性について 本願商標は、上記(1)イのとおり、当審補正役務中の「宝塚市において提供される役務以外の役務」に使用しても、役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示したものと認識するにすぎないものである。 また、本願商標を当審補正役務中の「宝塚市において提供される役務以外の役務」に使用したとしても、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるとはいえない。 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 (3)本願商標の使用による自他役務の識別性について 請求人は、意見書、審判請求書(以下「請求書」という。)及び回答書にて、本願商標は長年にわたり、当審補正役務に使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものと認識されるに至っているので、商標法第3条第2項の要件を充足しており、本願商標の登録は認められるべきである旨主張しているが、その前提として、本願商標が同条第1項第3号に該当するものであることは、上記(1)のとおりである。 そこで、請求人の主張及び同人が提出した証拠を参照し、以下、本願商標の使用による自他役務の識別性(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について検討する。 なお、本審決において、請求人が本件審判請求にて提出した第1号証ないし第23号証は、第1号証を甲第1号証、第2号証を甲第2号証のように読み替える。 また、証拠の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」のように省略して記載する場合があり、かつ、枝番号の全てを表示する場合は、枝番号を省略して記載する。 ア 商標法第3条第2項について ある標章が商標法第3条第2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは、出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品の販売数量又は売上高等、当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきであり(知財高裁平成24年(行ケ)第10285号、平成25年1月24日判決参照)、役務についても同様に解されるものである。 イ 請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。 (ア)請求人と宝塚歌劇団の関係について 請求人の創設者が、大正3年に兵庫県宝塚市に歌劇団と遊園地を誕生させて以来、請求人は、約100年の長きにわたり、請求人のエンターテインメント・コミュニケーション事業として、レビューや音楽劇等を演ずる「宝塚歌劇団」を運営している(請求人の主張、甲2、甲4の2)。 (イ)本願商標の使用状況について a 使用開始時期、使用地域について 「宝塚」の文字又は「寶塚」の文字は、少なくとも、昭和10年(1935年)頃から、「演芸の上演,演劇の上演,音楽の演奏」(以下「エンターテイメント役務」という。)について、請求人が運営する「宝塚歌劇(団)」(「宝塚歌劇団」の前身である「宝塚唱歌隊」及び「宝塚少女歌劇団」を含む。)の略称として使用されていた(甲16ほか)。 また、「宝塚歌劇(団)」の公演は、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)及び東京宝塚劇場(東京都千代田区有楽町)の2か所を中心として、大阪、福岡、千葉、横浜、名古屋などでも開催されている(甲2、甲5、甲19、甲20ほか)。 b 観客動員数等について 請求人発行の「会社ハンドブック」(2020年10月及び2022年8月発行)によれば、2019年度及び2021年度における宝塚大劇場の観客動員数はそれぞれ約111万人及び約90万人、東京宝塚劇場の観客動員数はそれぞれ約92万人及び約78万人である(甲19)。 また、阪急阪神ホールディングス株式会社発行の「統合報告書2022」によれば、2012年度ないし2021年度までの宝塚歌劇の観劇人員数は、宝塚大劇場、東京宝塚劇場、その他の劇場及びライブ中継等を含め、約157万人ないし313万人の間で推移している(甲20)。 c 「宝塚歌劇(団)」のファンクラブ会員構成について 「宝塚歌劇」のファンクラブ会員構成(2009年調査)は、成人女性が多く、女性が会員の96%を占めている(甲5)。 d 広告宣伝の方法、地域及び規模等について 平成9年(1997年)ないし令和3年(2021年)の新聞記事(産経新聞、読売新聞、朝日新聞及び毎日新聞)(甲3の1、3、5~8)、平成27年(2015年)発行の雑誌(甲5)、昭和49年(1974年)ないし令和4年(2022年)に発行された書籍(甲6、甲17の10~12、14~17、請求人の主張)、昭和10年(1935年)ないし令和5年(2023年)のポスター及びウェブサイト(甲8~甲17、甲22)、平成26年(2014年)、令和4年(2022年)及び令和5年(2023年)のテレビ放送(甲21の3、4、8、9、12)、平成23年(2011年)の宝塚歌劇専門チャンネル(甲21の1)、令和5年(2023年)のラジオ放送(甲21の7)、昭和57年(1982年)ないし平成29年(2017年)の宝塚歌劇(団)の舞台の映像、楽曲のインターネットによる配信(甲23)などにおいて、エンターテイメント役務について、請求人の運営に係る「宝塚歌劇(団)」の略称として「宝塚」の文字が使用されていたことは分かる。 ウ 判断 上記イによれば、請求人は、約100年の長きにわたり、エンターテインメント・コミュニケーション事業として、レビューや音楽劇等を演ずる「宝塚歌劇団」を運営していること、「宝塚歌劇(団)」の公演は、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)及び東京宝塚劇場(東京都千代田区有楽町)の2か所を中心として、大阪、福岡、千葉、横浜、名古屋などでも開催されていること、「宝塚」の文字又は「寶塚」の文字は、少なくとも、昭和10年(1935年)頃から、エンターテイメント役務について、請求人が運営する「宝塚歌劇(団)」の略称として使用されていたこと、2019年度及び2021年度における宝塚大劇場の観客動員数はそれぞれ約111万人及び約90万人、東京宝塚劇場の観客動員数はそれぞれ約92万人及び約78万人であり、2012年度ないし2021年度までの宝塚歌劇の観劇人員数は、宝塚大劇場、東京宝塚劇場、その他の劇場及びライブ中継等を含め、約157万人ないし313万人の間で推移していること、平成9年(1997年)ないし令和3年(2021年)に発行された各種新聞記事、平成27年(2015年)発行の雑誌、昭和49年(1974年)ないし令和4年(2022年)に発行された書籍、昭和10年(1935年)ないし令和5年(2023年)のポスター及びウェブサイト、平成26年(2014年)、令和4年(2022年)及び令和5年(2023年)のテレビ放送、平成23年(2011年)の宝塚歌劇専門チャンネル、令和5年(2023年)のラジオ放送、昭和57年(1982年)ないし平成29年(2017年)の宝塚歌劇(団)の舞台の映像、楽曲のインターネットによる配信等で、請求人の運営に係る「宝塚歌劇(団)」の略称として「宝塚」の文字が使用されていたことは分かる。 しかしながら、エンターテイメント役務の業界全体の観客動員数が確認できないため、「宝塚歌劇(団)」の観客動員数の多寡を判断することができず、また、「宝塚歌劇(団)」の公演について売上高等が確認できる証拠は提出されていないため、エンターテイメント役務の業界全体における請求人の市場シェア等を客観的に判断し得ない。 また、エンターテイメント役務の需要者は、老若男女を問わない一般の需要者が該当するところ、「宝塚歌劇(団)」のファンクラブ会員構成は、女性が会員の96%が女性であることからすると、「宝塚歌劇(団)」のレビューや音楽劇等の観覧をする者、宝塚歌劇専門チャンネルや宝塚歌劇(団)の舞台の映像及び楽曲のインターネットによる配信に接する需要者は、限定されていると推認できる。 さらに、広告宣伝については、各種新聞記事の掲載時期が限定的である上、掲載回数も決して多いとはいえないことからすると、各種新聞に継続的に広告宣伝を掲載していたとはいえず、また、「宝塚歌劇(団)」に関する宣伝広告がなされた雑誌、書籍等の発行部数、ポスターの印刷数量、頒布数及び頒布範囲なども具体的に確認できず、テレビ放送やラジオ放送についても、その放送回数は決して多いとはいえず、これらの放送の視聴者数も明らかではない。 その他、請求人の提出した証拠からは、広告宣伝の規模や広告宣伝費等は明らかではない。 以上からすると、本願商標は、当審補正役務の需要者の間で広く知られていたとはいえないから、本願商標が当審補正役務に使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものとは認められない。 したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。 (4)請求人の主張について ア 請求人は、回答書において、「宝塚」の文字が地名を表示する語であり、地名として使用されている事実があるとしても、請求人(又はその関連会社)以外の他社による当審補正役務に係る「宝塚」の文字の使用は見当たらず、本願商標を当審補正役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、単に役務の提供の場所を表示したというよりも宝塚歌劇(団)を表示したものと理解、認識するから、本願商標は自他役務の識別標識としての機能を十分に果たし得る旨主張する。 しかしながら、別掲2のとおり、「宝塚」の文字が有する意味合いに加えて、「宝塚」の文字が地名を表示する語として、一般的な国語辞典及び地名辞典に載録されている事実及び地名を表示する語として使用されている実情などを併せ考慮すれば、本願商標を当審補正役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、「兵庫県南東部の市である宝塚市において提供される役務」であること、すなわち、役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示したものと認識するにすぎない。 そして、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、取引者、需要者が、役務の質等を表示したものと一般に認識されるものであれば足り、それが一般に用いられていた実情があったことまでを必要とするものではないというべきである(知財高裁平成27年(行ケ)第10107号、平成27年10月21日判決参照)から、当審補正役務の分野において、請求人(又はその関連会社)以外の他社により、「宝塚」の文字が使用されていないことを理由として、本願商標が自他役務の識別標識としての機能を果たし得るとする請求人の上記主張は採用できない。 イ 請求人は、請求書及び回答書において、請求人の過去の「Takarazuka」に係る審決(平成11年審判第12238号、甲1の2)を挙げ、同審決において、宝塚歌劇又は宝塚歌劇団を単に「宝塚」等と略称していることは広く一般に知られていると認定されている旨主張する。 しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項各号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標の登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様とエンターテイメント役務の取引の実情等に基づいて、個別具体的に判断されるべきであり、請求人の過去の審決の存在によって、本願商標が同項第3号に該当するか否かについての判断が左右されるものではない。 ウ 請求人は、回答書及び令和5年2月28日受付の上申書において、本願商標は、「宝塚歌劇」の名称の長年にわたる使用実績と高い知名度、広告宣伝、多数の一般紙、業界紙、雑誌、ポスター、ウェブサイトなどに広く使用された結果、請求人が運営する「宝塚歌劇(団)」の著名な略称と認識され、当審補正役務について使用した場合には需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できるものである旨主張している。 しかしながら、上記(3)のとおり、本願商標は、当審補正役務の需要者の間で広く知られていたとはいえないから、本願商標が当審補正役務に使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものとは認められない。 エ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができず、請求人のその他の主張も採用することはできない。 (5)まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、同条第2項の要件を具備するものではないから、これを登録することはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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