商標拒絶査定不服審判
2021-016916
ミカサホテルデントーノチキンカレー、ミカサホテルデントーノチキン、ミカサホテル、ミカサ、デントーノチキンカレー、デントーノ、チキンカレー
- 審判番号
- 2021-016916
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-018795
- 請求日
- 2021年12月08日
- 審決日
- 2022年11月07日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社RAVIPA
- 【請求人代理人】原田 貴史
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 淳
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T18 .22 -Z (W293043)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、特許法第150条、商標法第4条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-18795拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年2月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 4月12日付け:拒絶理由通知
令和3年 5月 7日 :意見書及び手続補足書の提出
令和3年 9月14日付け:拒絶査定
令和3年12月 8日 :審判請求書及び手続補足書の提出
第2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと,即席カレー」、第30類「パン,中華肉まんじゅう,ピザ,サンドイッチ,ミートパイ,香辛料,カレー粉」及び第43類「飲食物の提供,インド料理の提供,うどん及びそばの提供,食事の支度に関する情報の提供及び助言,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」を指定商品及び指定役務として登録出願されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由(要点)
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなるものである。
そして、「旧三笠ホテル」は、長野県の軽井沢に所在する明治39年に創業された明治後期の純西洋式の木造ホテルであって、明治・大正時代を築いた著名人が訪れた面影を今に伝えており、昭和55年には、国の重要文化財に指定されている。また、「旧三笠ホテル」は、長野県軽井沢町のウェブサイトを始め、軽井沢観光案内においても取り上げられるなど、現在でも軽井沢を代表する観光名所であり、地元では、当該ホテルに関連する観光振興に力を入れている実情が認められる。
ところで、歴史的・文化的・伝統的価値を有し、豊かな文化の象徴となっている有形・無形の文化的所産、遺跡、自然等が各地に存在するところ、これらは一般に、関係する地域にとって、一つの地域資源、観光資源となり得るものであり、その名称等を利用した地域興し等も盛んに行われている。また、このような名称等は、その知名度により強い顧客吸引力を有しており、その地域の名産食品、特産品や土産物、由来する商品に表示され、観光客などに販売されている実情が多くみられる。
そうすると、先人から受け継がれている文化的所産である「旧三笠ホテル」に類似する「三笠ホテル」の文字を有する本願商標を、一私人である出願人に、自己の商標として、その指定商品について独占使用を認めることは、これを利用した地域における観光振興や地域おこしなどの公益的な施策の遂行を阻害するおそれがあり、公正な競業秩序を害するおそれがあるから、社会公共の利益に反するおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第4 当審においてした証拠調べ
当審において、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲3に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条の規定に基づき、その結果を令和4年7月26日付け証拠調べ通知書によって請求人に通知し、意見を求めた。
第5 証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は、前記第4の証拠調べに対し、何ら回答をしていない。
第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)本願商標
本願商標は、別掲1のとおり、上部中央に、3つの笠と思しき図形を円輪郭で囲った図形(以下「笠図形」という。)を配し、その下に、横書きにした小さな「三笠ホテル」の文字と大きな「伝統のチキンカレー」の文字を、上下二段に左寄りに配した構成からなる商標であって、全ての構成要素は灰色で表されている。
そして、本願商標の構成中、「軽井沢」の文字は、避暑地として著名な長野県東部の町を看取させ、「伝統の」の文字は、長い歴史を通じて培い、伝えられてきたものに用いられることがあり、また、「チキンカレー」の文字は、本願の指定商品及び指定役務との関係においては、チキンカレーライス、チキンカレーライスのソースを表したものと認識されるにとどまるものであるから、いずれも地名、商品の修飾語、商品名又は役務の提供の用に供する物を表すものであって、自他商品及び自他役務の識別標識として機能しないもの又はその機能が極めて弱いものといえる。
そうすると、本願商標の構成中、顕著に表された笠図形及び文字列の上段に表された「三笠ホテル」の文字が、独立して自他商品及び自他役務の識別標識として機能し得るものといえる。
(2)我が国における「三笠ホテル」、「旧三笠ホテル」の文字の周知性
三笠ホテルは、日本人により設計、施工され、1905年(明治38年)に竣工した木造の純西洋式ホテルであって、翌1906年(明治39年)に開業して以降、戦中、戦後の中断期を除いて1970年(昭和45年)まで営業された。長野県軽井沢町に所在する三笠ホテルは、スティック・スタイルと呼ばれる華麗な外観を持ち、明治・大正時代を築いた著名人や政財界の要人・文人等の避暑客に愛され、「軽井沢の鹿鳴館」とも評された。
その後、三笠ホテルは、1980年(昭和55年)に軽井沢町に寄贈されるとともに、同年5月31日には、「旧三笠ホテル」の名称で、我が国の「国宝・重要文化財(建造物)」の指定を受けた。現在は一般に公開され(審決注:令和元年12月28日ないし令和6年3月(予定)の期間は、大規模保存修理工事のため休館中。)、軽井沢町を代表する観光名所としてテレビやウェブサイト等において紹介されている。
旧三笠ホテルを擁する軽井沢町は、2006年(平成18年)に、旧三笠ホテルの開業100周年を祝う「三笠ホテル100年祭」を開催し、2017年(平成29年)には、建物の由来などを記した銘板を表示する「ブルー・プラーク制度」の第1弾として旧三笠ホテルを認定するなど、旧三笠ホテルを、日本の近代化を象徴する貴重な観光資源と捉え、同ホテルに係る観光振興に力を入れている実情がある。また、旧三笠ホテルは、経済産業省が地域の魅力ある観光資源を認定する「近代産業遺産群」のうち、「近代日本の国際化を支えた観光産業遺産群」の一として認定されたほか、軽井沢町で開催される音楽祭や展示会の会場として活用される等している。
そうすると、「三笠ホテル」及び「旧三笠ホテル」の文字は、長野県軽井沢町に所在する、明治後期の木造の純西洋式ホテルとして、また現在においては、我が国の重要文化財かつ軽井沢町を代表する観光名所として、広く一般に認識されているというのが相当である(以上、別掲2及び別掲3参照。)。
(3)我が国における「三笠ホテル」、「旧三笠ホテル」の文字の使用の実情
歴史的・文化的・伝統的価値を有し、豊かな文化の象徴となっている有形・無形の文化的所産、遺跡、自然等(以下「文化的所産等」という。)が各地に存在するところ、これらは一般に、国家にとって重要な資産、資源であるばかりでなく、関係する地域にとって、一つの地域資源、観光資源となり得るものであって、このような観光資源を利用した地域興し等が各地で行われていることも、一般に知られているところである。そして、これら文化的所産等の名称等は、その知名度により強い顧客吸引力を有していることから、その地域の名産食品、特産品や土産物、由来する商品に表示され、観光客などに販売されている実情が多く見受けられる。
そして、長野県軽井沢町でも、軽井沢町教育委員会が、「重要文化財」、「旧三笠ホテル」の文字と共に、旧三笠ホテルのシンボルマーク(以下「三笠マーク」という。)をあしらったマグカップや手拭いを、旧三笠ホテルで販売しており、同ホテルが休館中の現在は、これらの商品を同町内の追分宿郷土館、堀辰雄文学記念館、歴史民俗資料館等で販売している。
なお、軽井沢町教育委員会によると、商品に付された三笠マークは、「三つの笠と、MIKASAHOTELの「M」と「H」をモチーフにしたデザイン」とされている。
さらに、請求人以外の者により、軽井沢町の飲食店において、旧三笠ホテルで供されていた西洋風カレーライスの復刻版として「三笠ホテルカレー」と称するカレーライスが提供されており、そのレトルトカレーも「三笠ホテルカレー」と称して販売されているほか、三笠ホテル専用のコーヒーを卸していたコーヒー会社が、当時のオリジナルレシピを再現した「旧三笠ホテル・オリジナルブレンド」と称するコーヒーを販売している実情が認められる(以上、別掲3(2)参照。)。
(4)「三笠ホテル」、「旧三笠ホテル」の文字と本願の指定商品及び指定役務との関係
「三笠ホテル」の文字は、上記(2)のとおり、明治後期の木造の純西洋式ホテルとして、「旧三笠ホテル」の文字は、我が国の重要文化財かつ現在の軽井沢町を代表する観光名所(文化的所産等)の名称として、広く一般に認識されているため、強い顧客吸引力を有するといえる。
そして、上記(3)のとおり、軽井沢町において、軽井沢町教育委員会をはじめとする請求人以外の者が、「旧三笠ホテル」の文字(軽井沢町教育委員会に係る商品については、三笠マークも付されている。)をマグカップ、手拭いやコーヒーといった各種の商品に付し使用していることに加えて、本願の指定商品及び指定役務中、第29類「即席カレー」及び第43類「飲食物の提供」を取り扱う業界において、請求人以外の者が、「三笠ホテル」の文字をその商品及び役務に使用している事実が認められる。
上記事情を考慮すると、「三笠ホテル」及び「旧三笠ホテル」の文字は、軽井沢町で商品を製造、販売する又は役務を提供する事業者において、それぞれの商品又は役務に使用を欲するものと考えられる。
(5)請求人による本願商標の出願の目的
請求人の主張によれば、本願商標が付されたカレーは、ふるさと納税サイト「さとふる」において、長野県のふるさと納税の返礼品として掲載されているとするが、提出された甲第1号証によれば、「軽井沢・幻の三笠ホテル「ビーフカレー」+「チキンカレー」各・・・」、「軽井沢・幻の「三笠ホテルビーフカレー」 200g×4個セット」、「軽井沢・幻の「三笠ホテルチキンカレー」 200g×5個セット」等の記載とともに、商品の包装箱又はカレーライスと推測される画像が掲載されているものの、全ての画像は黒く不鮮明であり、商品の説明文及び商品画像のいずれにおいても、本願商標が使用されていることを確認することはできない。
(6)判断
以上によれば、「三笠ホテル」は、明治後期に日本人により建築され、「軽井沢の鹿鳴館」と評されるほど各界の要人等に愛された木造の純西洋式ホテルであり、現在においては、「旧三笠ホテル」の名称で、我が国の「国宝・重要文化財(建造物)」の指定を受けた文化的所産等かつ軽井沢町を代表する観光名所として、広く一般に認識されているため、「三笠ホテル」及び「旧三笠ホテル」の文字は、強い顧客吸引力を有するといえる。
また、軽井沢町では、旧三笠ホテルを観光資源と捉え、同ホテルに関連する観光振興に力を入れているところ、一般的に文化的所産等を擁する地域では、文化的所産等の名称を付した各種の土産物等が販売されており、軽井沢町でも、既に請求人以外の者によって、各種の商品及び役務(本願の指定商品及び指定役務中、第29類「即席カレー」及び第43類「飲食物の提供」を含む。)に、「三笠ホテル」又は「旧三笠ホテル」の文字が使用されている実情が認められる。
上記の実情を踏まえれば、本願の指定商品及び指定役務の分野において、今後更に同地域の多くの事業者が、「三笠ホテル」又は「旧三笠ホテル」の文字の使用を欲する可能性は極めて高いというのが相当である。
さらに、本願商標は、その構成中に、「三笠ホテル」の文字と、三笠マークに酷似する笠図形を有するものであり、上記(2)の周知性を考慮すれば、当該「三笠ホテル」の文字及び笠図形は、取引者、需要者に対して、商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部であるとみるのが自然である。加えて、本願商標全体をみても、「伝統のチキンカレー」の文字が付されることにより、全体として「軽井沢町に所在する三笠ホテルで提供されていた伝統のチキンカレー」といった意味合いを容易に想起させるものである。
そうすると、たとえ、請求人の主張に係るカレー(甲1)がふるさと納税サイトにおいて、長野県のふるさと納税の返礼品として掲載されているとしても、上記事情を総合的に勘案すれば、商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「三笠ホテル」の文字及び笠図形を含む本願商標を、一私人が自己の商標として登録し、独占的に使用することは、「三笠ホテル(旧三笠ホテル)」を活用した観光振興等の公益的遂行を阻害するおそれがあり、さらに、「三笠ホテル(旧三笠ホテル)」に係る文化的所産等に関連した各種の土産物等を取り扱う事業者や、今後「三笠ホテル(旧三笠ホテル)」の文字の使用を欲するであろう多くの事業者に対して、無用の混乱を招くおそれがあると判断するのが相当である。
してみれば、このような事情を招くおそれがある本願商標を、請求人の商標として登録を認めることは、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものというべきである。
したがって、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、ふるさと納税の返礼品として、文化財の位置する地域より認められ、観光資源として活用されている本願商標が商標登録されても、観光振興や地域おこしなどの公益的な施策の遂行を阻害し、公正な競業秩序を害することはない旨主張する。
しかしながら、商標権は、指定商品又は指定役務について登録商標を独占的に使用することができる権利であるとともに、第三者に対しても、同一又は類似の商標の使用を禁止することができる権利でもある。上述のとおり、本願商標は、強い顧客吸引力を有する「三笠ホテル」の文字及び笠図形を含むものであるから、これを、特定の者に、商標権として商標登録を認めることは、「三笠ホテル(旧三笠ホテル)」を活用した観光振興に注力する軽井沢町をはじめ、各種の土産物等を取り扱う事業者(既に「三笠ホテルカレー」と称するカレーを提供、販売している第三者も含む。)や、今後、当該文字の使用を欲するであろう事業者に係る商品及び役務について、「三笠ホテル」の文字及び笠図形の使用を制限することとなる。
そうすると、本願商標をその指定商品及び指定役務について登録することは、指定商品及び指定役務についての使用の独占をもたらすことになり、関連地域における観光振興等の公益的遂行を阻害するおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を害し、ひいては社会公共の利益に反するおそれのあるものとして、商標法第4条第1項第7号にいう、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。
(2)請求人は、過去の商標登録の存在を挙げ、飲食物の分野においては観光名所や観光資源に類似する表現が含まれていても公益的な施策の遂行を阻害しないと考えられるべきであり、本願商標についても登録が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、請求人が挙げる登録例に含まれる観光名所や観光資源については、それぞれの名称が我が国において広く一般に認識されるようになった経緯等の事情や、各々の地域における観光振興の取組及びその地において観光資源の名称を使用する事業者の実情等が異なるし、加えて、商標法第4条第1項各号所定の商標登録を受けることができない商標に当たるかどうかを判断する基準時は、原則として登録査定時である(最三小平成16年6月8日判決 裁判集民事214号373頁)。そうすると、同号に該当するか否かは、個別かつ具体的に判断されるべきものであるから、上記の登録例の存在によって本件の判断が左右されるものではない。
(3)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり、審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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