特許拒絶査定不服審判
2021-016113
自走式掃除機
- 審判番号
- 2021-016113
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-554111
- 請求日
- 2021年11月25日
- 審決日
- 2023年03月13日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】学校法人千葉工業大学
- 【請求人代理人】福井 仁
- 審判長/審判官
- 審判長 窪田 治彦
- 審判官 佐々木 芳枝
- 審判官 田合 弘幸
- 分類
- P18 .121-WZ (A47L) / P18 .537-WZ (A47L) / P18 .55 -WZ (A47L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-554111「自走式掃除機」拒絶査定不服審判事件〔令和元年5月23日国際公開、WO2019/097626〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)11月16日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概ね、以下のとおりである。
令和3年 3月 2日付け:拒絶理由通知書
令和3年 4月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 9月 3日付け:拒絶査定(同月7日送達)
令和3年11月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 8月31日付け:拒絶理由通知書
令和4年11月 4日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
令和4年11月4日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「床面に沿って自走しつつ床面を清掃可能な掃除機本体と、この掃除機本体から送信された情報を処理する情報処理装置と、を備えた自走式掃除機であって、
前記掃除機本体は、清掃対象空間の対象物に関する周囲情報を取得する周囲情報取得手段と、清掃対象空間における当該掃除機本体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、を備え、
前記掃除機本体および前記情報処理装置の少なくとも一方は、前記周囲情報および前記位置情報に基づいて清掃対象空間のマップを作成するマップ作成部を備え、
前記情報処理装置は、前記マップを表示するマップ表示部と、
使用者の操作入力を受け付けることによって前記マップ中の位置を指定して目的地を設定する目的地設定部と、
前記目的地に向かって移動させるための移動指令を前記掃除機本体に送信する送信司令部とを備え、
前記掃除機本体が自走しつつ前記周囲情報および前記位置情報を取得する都度、前記マップ作成部が当該掃除機本体を含む前記清掃対象空間のマップをリアルタイムで作成するとともに、前記情報処理装置のマップ表示部が前記掃除機本体の走行の継続に伴って前記清掃対象空間のマップを順次拡大して表示し、
前記掃除機本体は、前記情報処理装置から受信した移動指令に基づき、前記マップ中の目的地に対応した清掃対象空間中の目的地に向かって移動することを特徴とする自走式掃除機。」
第3 拒絶の理由
令和4年8月31日の当審が通知した拒絶理由のうちの理由Bは、次のとおりのものである。
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2002-244731号公報
引用文献2:特開2013-250748号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、「移動作業ロボット」に関し、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、移動走行しながら自動的に作業を行う移動作業ロボットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、特開平11-267074号公報に記載されているように、位置情報や動作状況といった現在の状態を本体に表示する機能を備えている自走式掃除機がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の移動作業ロボットの一種である自走式掃除機では、必要な情報を得ようとした場合、その都度移動作業ロボット本体へ近づく必要があったため、使用者が離れた場所で別の作業を行っているときに移動作業ロボットの状態を知るためには、その使用者は作業を中断する必要があり、利便性がよいとは言い難かった。
【0004】本発明は、前記従来の課題を解決するもので、離れた場所でも現在の状態が分かる移動作業ロボットを提供することを目的としている。」
(2)「【0028】(実施例1)図1は、本発明の第1の実施例における自走式掃除機の内部透視斜視図である。図において、1は移動しながら清掃を行う自走式掃除機の本体部で、清掃領域を移動する。・・・9は各種入力に応じて左右の駆動モータ3、4を制御し、本体部1の移動制御を行う移動制御手段で、マイクロコンピュータおよびその他制御回路からなる。10、11は障害物検知手段で、本体部1の前方および側方の障害物までの距離を光センサ等により検知するようになっている。また、特には図示してないが、エンコーダよりなる走行距離検知手段12およびジャイロセンサよりなる方向検出手段13により本体部1の走行距離および走行方向を検知し、清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置をメモリ14に記憶する。15は床面を掃除する清掃ノズルで吸い込み具で、この吸い込み具15の吸い込み口には回転ブラシなどからなるアジテータ16が設けられ、電動送風機からなるファンモータ17で発生させた真空圧によりゴミを吸引する。・・・
【0029】無線情報端末部2は、図2に示すように、本体部1の送信手段21より送信された本体部1の現在位置や動作状態等の各種情報を電波22を介して受信手段23において受信する。受信された各種情報は表示制御手段24によって制御され、表示手段25において視覚的に表示する。また、端末部電源26の充電が必要な際には無線情報端末部2を本体部1に装着して充電装置27と接続した上で充電を行う。」
(3)「【0039】図3において、本体部1は移動走行開始地点3Aより移動走行を開始し、障害物検出手段10、11を用いて清掃領域の壁面を検出しながら該壁面に沿って移動走行する。本体部1が壁面を略1周した地点、すなわち再び移動走行開始地点3Aに到達した時点で清掃領域の輪郭レイアウト3Bを認識したとし、該清掃領域の輪郭レイアウト3Bを表示手段25に表示する。
【0040】以上のように、清掃領域の輪郭レイアウトをマップ形式で視覚的に表示することにより、移動作業ロボットが該作業領域の輪郭レイアウトを認識しているかどうかを確認でき、使用者の信頼感、安心感につながる。
【0041】次に、清掃領域中の障害物を表示するための手段の実施の形態について図12を用いて説明する。
【0042】図12において、本体部1は移動走行開始地点12Aより移動走行を開始し、障害物検出手段10、11を用いて清掃領域の壁面を検出しながら該壁面に沿って移動走行する。本体部1が壁面を略1周した後、清掃領域の中心部分を移動走行する。中心部分を移動走行中、障害物検出手段10、11が障害物を検出した場合、本体部1は障害物検出地点12Bより障害物12Cに沿って移動走行する。本体部1が再び障害物検出地点12Bに到達したときに該障害物12Cを認識したとし、該障害物12Cの位置を表示手段25に表示する。
【0043】以上のように、障害物12Cをマップ形式で視覚的に表示することにより、移動作業ロボットが該障害物の位置を認識しているかどうかを確認でき、使用者の信頼感、安心感につながる。
【0044】次に、清掃領域の輪郭レイアウト3Bおよび障害物12Cの表示以外に本体部1の現在位置を表示手段25に重ねて表示するための実施の形態について図13を用いて説明する。
【0045】図13に示すように、表示手段25に清掃領域の輪郭レイアウト3Bおよび障害物12Cの表示以外に、本体部1の現在位置13Aも重ねて表示する。
【0046】以上のように、本体部1の現在位置13Aもマップ形式で視覚的に表示することにより、移動作業ロボットが自身の現在位置を認識しているかどうかを確認でき、使用者の信頼感、安心感につながる。」
(4)「【0055】また、本発明の一実施例である自走式掃除機は、メモリ14により清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置を記憶する。
【0056】以上のように、清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置を記憶することによって、次に作業を行う際に効率よく作業を開始することが出来る。
【0057】さらに、作業領域の中を移動走行中あるいは作業中に、作業領域の輪郭レイアウトもしくは障害物位置が変化したことを認識した場合には、変化した部分に対してメモリ14の記憶内容を更新するものである。」
(5)上記(2)の特に段落【0028】の記載から、本体部1は、床面に沿って自走しつつ床面を清掃可能なものであることが理解できる。
(6)上記(2)の段落【0028】の記載、並びに、上記(3)の特に段落【0040】及び【0043】の記載から、本体部1は、障害物検知手段10、11の検知情報および走行距離検知手段12および方向検出手段13の検知情報に基づいて清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式で作成する移動制御手段9を備えていることが理解できる。
(7)上記(2)の特に段落【0029】の記載、並びに、上記(3)の特に段落【0040】及び【0043】の記載から、無線情報端末部2は、清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式で表示する表示手段25を備えていることが理解できる。
(8)上記(2)及び(3)の記載、特に段落【0042】の「本体部1が壁面を略1周した後、清掃領域の中心部分を移動走行する。中心部分を移動走行中、障害物検出手段10、11が障害物を検出した場合、本体部1は障害物検出地点12Bより障害物12Cに沿って移動走行する。本体部1が再び障害物検出地点12Bに到達したときに該障害物12Cを認識したとし、該障害物12Cの位置を表示手段25に表示する。」との記載から、本体部1が自走しつつ障害物検知手段10、11の検知情報および走行距離検知手段12および方向検出手段13の検知情報を検知する都度、移動制御手段9が当該本体部1を含む清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式でリアルタイムで作成することが理解できる。
(9)上記(2)の特に段落【0028】、及び、上記(3)の段落【0039】~【0042】には、「本体部1が壁面を略1周した」直後は、「作業領域の輪郭レイアウト」のみを認識(マップを作成)しており、「清掃領域の中心部分」についてはマップの作成ができておらず、その後「清掃領域の中心部分を移動走行」することにより、「障害物検出手段10、11が障害物を検出」したことなどに応じて、マップが無かった「清掃領域の中心部分」についてのマップを作成し、「清掃領域の中心部分」を含む清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式で表示手段25に表示すること、すなわち、本体部1の走行の継続に伴ってマップ形式の清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報を順次拡大して作成し、当該順次拡大して作成したマップ形式の清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報を表示手段25に表示することが記載されている。そうすると、無線情報端末部2の表示手段25が、本体部1の走行の継続に伴ってマップ形式の清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報を順次拡大して表示するものであることが理解できる。
2 引用発明
上記1(1)~(9)及び図1~16の記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「床面に沿って自走しつつ床面を清掃可能な本体部1と、この本体部1から受信した各種情報を制御して表示する無線情報端末部2と、を備えた自走式掃除機であって、
前記本体部1は、清掃領域の障害物を検知する障害物検知手段10、11と、清掃領域における当該本体部1の現在位置を検知する走行距離検知手段12および方向検出手段13と、を備え、
前記本体部1は、前記障害物検知手段10、11の検知情報および前記走行距離検知手段12および前記方向検出手段13の検知情報に基づいて清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式で作成する移動制御手段9を備え、
前記無線情報端末部2は、前記清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式で表示する表示手段25を備え、
前記本体部1が自走しつつ前記障害物検知手段10、11の検知情報および前記走行距離検知手段12および前記方向検出手段13の検知情報を検知する都度、前記移動制御手段9が当該本体部1を含む前記清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式でリアルタイムで作成するとともに、前記無線情報端末部2の表示手段25が前記本体部1の走行の継続に伴ってマップ形式の清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報を順次拡大して表示する自走式掃除機。」
3 引用文献2の記載
引用文献2には、「自走式電子機器」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
この発明は、自走式電子機器に関し、より詳細には指定された位置を記憶しその位置へ移動する機能を有する自走式電子機器に関する。」
(2)「【0004】
・・・これとは別に、自走式掃除機等を任意の位置に設置し、その周辺を重点的に掃除させたい場合、自走式掃除機を人為的に持ち運び、その位置に載置する必要がある。・・・このように目的位置に自走式機器等を持ち運ぶといった人為的作業が困難な場合が考えられる。例えば、幼児、子供、老人等、嵩む重量の機器を持ち運ぶことができない場合である。・・・この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、簡便な操作および単純な検出により指定された位置に移動することのできる自走式電子機器を提供するものである。」
(3)「【0027】
入力部51は、ユーザが、イオン発生機1の動作を指示入力する部分であり、イオン発生機1の筐体表面に、操作パネル、あるいは操作ボタンとして設けられる。筐体表面にはまた、表示部57が設けられており、イオン発生機1の状態をユーザに知らせる。
あるいは、入力部51としては、イオン発生機1の本体とは別に、リモコンユニットを設け、このリモコンユニットに設けられた操作ボタンを押すことにより、赤外線や無線電波信号を送出し、無線通信により動作の指示入力をしてもよい。」
(4)「【0028】
入力部51としては、たとえば、電源スイッチ52、起動スイッチ53、主電源スイッチ54、その他のスイッチなどが設けられる。なお、入力部51としては、ユーザがリモコンによる指示を受ける。この指示内容に基づき、制御部11を介して走行制御部21へと送られ、ユーザが指示する方向への走行制御、また走行停止の制御、イオン発生量の制御等が実行される。
以上、自走電子機器の一例として、自走式イオン発生機1について詳細を述べたが、自走電子機器の他の例として、イオン発生部31を備え、イオン発生機能を有した自走式掃除機が挙げられる。」
(5)「【0030】
・・・イオン発生機1は例えばユーザが携帯するスマートフォン等の通信端末と通信可能に構成されてもよい。・・・」
(6)「【0050】
この構成によれば、指定位置は予めユーザが記憶させておく必要がある。しかし、多数の位置を記憶可能にし、例えば、イオン発生機1と通信可能なスマートフォンの画面に位置選択メニューとして室内のマップを表示させ、マップ上に選択可能な複数の指定位置が表示されるようにすれば、ユーザはイオン発生機1を室内の種々の位置へ移動させることができる。
また、指定位置からさらに充電台の方向へ30センチメートルの位置といったように、指定位置を基準にしてその近傍の位置をユーザが指示できるようにしてもよい。
以上、イオン発生機1について説明したが、自走式電子機器が、掃除機の場合、重点的に掃除を行わせない(当審注:「行わせたい」の誤記と思われる)位置に掃除機を載置する。この載置位置から先に説明した通り、充電台100への帰還制御を実行し、その帰還のための帰還経路を記憶部に記憶させる。そして、ユーザが目的の位置への移動を指示することで、自走式掃除機は、記憶された移動先データに基づき、走行制御が実行される。
目的の位置まで移動すれば、一例としてその移動地点から半径50cm以内、または一辺1mの範囲内を重点的に掃除する。その掃除を完了すれば、充電台100への帰還制御が実行される。・・・」
(7)上記(6)の記載から、スマートフォンは、スマートフォンの画面に室内のマップを表示し、マップ上に選択可能な複数の指定位置を表示し、ユーザが指定位置を選択することで、自走式電子機器を室内の種々の位置へ移動させることができることが理解でき、また、マップ上に選択可能に表示される複数の指定位置は、自走式電子機器が掃除機の場合、重点的に掃除を行わせたい位置となることは、引用文献2の記載から自明の事項である。
4 引用文献2に記載された事項
上記3からみて、引用文献2には、以下の事項が記載されている(以下「引用文献2記載事項」という。)。
「スマートフォンは、ユーザがスマートフォンの画面上に表示された室内のマップの複数の指定位置を選択して重点的に掃除を行わせたい位置を目的位置として設定するとともに、当該目的位置のデータを自走式掃除機に送信し、自走式掃除機は、スマートフォンから受信した目的位置のデータに基づき、目的位置まで移動すること。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
1 引用発明における「本体部1」は本願発明における「掃除機本体」に相当し、以下同様に、「受信した各種情報」は「送信された情報」に、「制御して表示する」ことは「処理する」ことに、「無線情報端末部2」は「情報処理装置」に、それぞれ相当する。
2 引用発明における「清掃領域」は本願発明における「清掃対象空間」に相当し、以下同様に、「障害物を検知する」ことは「対象物に関する周囲情報を取得する」ことに、「検知する」ことは「取得する」ことに、「障害物検知手段10、11」は「周囲情報取得手段」に、「現在位置を検知する」ことは「位置情報を取得する」ことに、「走行距離検知手段12および方向検出手段13」は「位置情報取得手段」に、それぞれ相当する。
3 引用発明における「障害物検知手段10、11の検知情報」は本願発明における「周囲情報」相当し、以下同様に、「走行距離検知手段12および方向検出手段13の検知情報」は「位置情報」に、「清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式で作成する」ことは「清掃対象空間のマップを作成する」ことに、「移動制御手段9」は「マップ作成部」に、「前記本体部1は、前記障害物検知手段10、11の検知情報および前記走行距離検知手段12および前記方向検出手段13の検知情報に基づいて清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式で作成する移動制御手段9を備え」ることは「前記掃除機本体および前記情報処理装置の少なくとも一方は、前記周囲情報および前記位置情報に基づいて清掃対象空間のマップを作成するマップ作成部を備え」ることに、それぞれ相当する。
4 引用発明における「前記清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式で表示する」ことは本願発明における「マップを表示する」ことに相当し、同様に、「表示手段25」は「マップ表示部」に相当する。
5 引用発明における「清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報をマップ形式でリアルタイムで作成する」ことは本願発明における「清掃対象空間のマップをリアルタイムで作成する」ことに相当し、同様に、「マップ形式の清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報を順次拡大して表示する」ことは「清掃対象空間のマップを順次拡大して表示」することに相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「床面に沿って自走しつつ床面を清掃可能な掃除機本体と、この掃除機本体から送信された情報を処理する情報処理装置と、を備えた自走式掃除機であって、
前記掃除機本体は、清掃対象空間の対象物に関する周囲情報を取得する周囲情報取得手段と、清掃対象空間における当該掃除機本体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、を備え、
前記掃除機本体および前記情報処理装置の少なくとも一方は、前記周囲情報および前記位置情報に基づいて清掃対象空間のマップを作成するマップ作成部を備え、
前記情報処理装置は、前記マップを表示するマップ表示部を備え、
前記掃除機本体が自走しつつ前記周囲情報および前記位置情報を取得する都度、前記マップ作成部が当該掃除機本体を含む前記清掃対象空間のマップをリアルタイムで作成するとともに、前記情報処理装置のマップ表示部が前記掃除機本体の走行の継続に伴って前記清掃対象空間のマップを順次拡大して表示する自走式掃除機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明においては、情報処理装置は、「使用者の操作入力を受け付けることによって前記マップ中の位置を指定して目的地を設定する目的地設定部」と、「前記目的地に向かって移動させるための移動指令を前記掃除機本体に送信する送信司令部」とを備え、前記掃除機本体は、「前記情報処理装置から受信した移動指令に基づき、前記マップ中の目的地に対応した清掃対象空間中の目的地に向かって移動する」構成を備えているのに対し、引用発明においては、そのような構成を備えていない点。
第6 判断
1 上記相違点について、判断する。
上記「第4 4」に記載したとおり、引用文献2には、「スマートフォンは、ユーザがスマートフォンの画面上に表示された室内のマップの複数の指定位置を選択して重点的に掃除を行わせたい位置を目的位置として設定するとともに、当該目的位置のデータを自走式掃除機に送信し、自走式掃除機は、スマートフォンから受信した目的位置のデータに基づき、目的位置まで移動すること。」が記載されている。
そして、引用発明と引用文献2記載事項とは、自走式掃除機という同一の技術分野に属しており、また、引用発明における無線情報端末部2と引用文献2記載事項におけるスマートフォンとは、清掃領域内での自走式掃除機の状態をマップ形式で表示することでユーザに視覚的に認識させるという共通の機能を有しているところ、引用発明においても、ユーザが重点的に掃除を行わせたい位置などの所望の位置に自走式掃除機を移動させるという課題は当業者であれば当然想起する課題であるから、引用発明に引用文献2記載事項を適用して、引用発明における無線情報端末部2に、引用文献2記載事項におけるスマートフォンのような、ユーザが設定した目的位置のデータを自走式掃除機に送信する機能を付加するとともに、自走式掃除機を無線情報端末部2から受信した目的位置のデータに基づき、目的位置まで移動するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
2 そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 請求人は、令和4年11月4日付けの意見書において、「そして、本願発明は、「前記掃除機本体の走行の継続に伴って前記清掃対象空間のマップを順次拡大して表示する」こと、および「情報処理装置は、使用者の操作入力を受け付けることによって前記マップ中の位置を指定して目的地を設定する目的地設定部と、前記目的地に向かって移動させるための移動指令を前記掃除機本体に送信する送信司令部とを備え、前記掃除機本体は、前記情報処理装置から受信した移動指令に基づき、前記マップ中の目的地に対応した清掃対象空間中の目的地に向かって移動する」ことを備えているので、使用者は、順次拡大して表示されるマップをリアルタイムに確認し、このリアルタイムで作成または更新されたマップ中の位置を指定して目的地を設定することによって、マップの作成中または更新中であっても使用者の要求に応じて即座にマップ中の任意の場所に掃除機本体を移動させて掃除を実行させることができるという格別の作用効果を奏することができます。(4ページ11~21行)」と主張している。
請求人が主張する「使用者は、順次拡大して表示されるマップをリアルタイムに確認し、このリアルタイムで作成または更新されたマップ中の位置を指定して目的地を設定することによって、マップの作成中または更新中であっても使用者の要求に応じて即座にマップ中の任意の場所に掃除機本体を移動させて掃除を実行させることができるという格別の作用効果を奏すること」は、本願の明細書には記載されていない事項であるところ、引用発明は、「前記無線情報端末部2の表示手段25が前記本体部1の走行の継続に伴ってマップ形式の清掃領域の輪郭レイアウトや障害物の位置の情報を順次拡大して表示する」ものであり、また、引用文献2記載事項は、「スマートフォンは、ユーザがスマートフォンの画面上に表示された室内のマップの複数の指定位置を選択して重点的に掃除を行わせたい位置を目的位置として設定するとともに、当該目的位置のデータを自走式掃除機に送信し、自走式掃除機は、スマートフォンから受信した目的位置のデータに基づき、目的位置まで移動する」ものである以上、引用発明に引用文献2記載事項を組み合わせれば、ユーザは、順次拡大して表示されるマップ形式の情報をリアルタイムに確認し、このリアルタイムで作成または更新されたマップ形式の情報中の位置を指定して目的位置を設定するものとなるから、請求人が意見書において主張する作用効果を奏することは、当業者にとって予測し得る事項であるといわざるを得ない。
よって、請求人の上記意見書における主張は採用できない。
4 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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