審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-015341

生体用電極、生体センサー、及び生体信号測定システム

審判番号
2021-015341
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-517703外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年11月10日
審決日
2022年08月22日
公報発行日
2022年10月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (A61B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-517703「生体用電極、生体センサー、及び生体信号測定システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月30日国際公開、WO2020/261774、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 16項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本件出願(以下「本願」という。)は、2020年(令和2年)5月8日(優先権主張 令和元年6月25日)を国際出願日とする出願であって、令和3年4月16日付けで拒絶理由が通知され、同年6月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月2日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたところ、同年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後、当審において令和4年4月27日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要

原査定(令和3年8月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1-12、14-15に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧

1.米国特許出願公開第2019/0073605号明細書

2.石神直哉,ゴムの工業的合成法 第10回シリコーンゴム,日本ゴム協会誌,2016年,第89巻第3号,p.68-72

3.平田好顕,プラスチック、ゴム用フィラー,Gypsum & Lime,1985年,No.198,p.22-35

第3 本願発明

本願の請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、令和4年5月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は以下のとおりである。

「【請求項1】
板状支持部と、
前記板状支持部の一面から突出した、絶縁性シリコーンゴムで構成される柱状部と、
前記柱状部の先端部を覆うように設けられており、導電性シリコーンゴムで構成された導電性樹脂層と、を備える生体用電極であって、
前記絶縁性シリコーンゴムが、非導電性フィラーおよびビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成され、
前記導電性シリコーンゴムが、導電性フィラー、非導電性フィラーおよびビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む導電性シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成される、生体用電極。」

なお、本願発明2-15は、本願発明1の構成をすべて有する発明である。

第4 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

(1)引用文献1の記載

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審によって付与した。以下同様。)。

ア

「[0002]The present disclosure is directed to systems and methods for acquiring and analyzing biosignals.・・・」

(当審訳)「[0002]本発明は、生体信号を取得し解析するためのシステムおよび方法を対象とする。・・・」

イ

「[0005] According to an embodiment, a biosignal acquisition system for transmitting context commands based on sensed biosignals is disclosed. The system may include a computer, a biosensor, and a biosignal acquisition device. The biosensor may be configured to be in contact with a scalp of an individual. ・・・」

(当審訳)「[0005]一実施形態によれば、検知された生体信号に基づいて関連コマンドを伝達するための生体信号取得システムが開示されている。システムは、バイオセンサと、生体信号取得装置を含むことができる。バイオセンサは、個人の頭皮に接触するように構成されてもよい。・・・」

ウ

「[0031] FIG. 3B is an exploded perspective view of the biosignal acquisition headset of FIG. 1;」

(当審訳)「[0031]図3Bは、図1の生体信号取得ヘッドセットの分解斜視図である。」

エ

「[0037] FIGS. 9A and 9B are a perspective views of the biosensor of the biosignal acquisition headset of FIG. 1;」

(当審訳)「[0037]図9A及び図9Bは、図1の生体信号取得ヘッドセットのバイオセンサの斜視図である。」

オ

「[0048]As illustrated in FIG. 1, a biosignal acquisition system 100 includes a headset 300, a database 102 in electrical communication with the headset 300, and a remote computing device or mobile device 103. The headset 300 is configured to be disposed on the scalp of an individual 101. While in operation, the headset 300 is configured to recognize and analyze biosignals for brain switches from the individual 101. ・・・」

(当審訳)「[0048]図1に示すように、生体信号取得システム100はヘッドセット300と、ヘッドセット300と電気通信しているデータベース102と、リモートコンピューティングデバイスまたはモバイルデバイス103を含む。ヘッドセット300は、被験者101の頭皮上に配置されるように構成される。動作中に、ヘッドセット300は、被験者101から脳波スイッチに関する生体信号を認識し、分析するように構成される。・・・」

カ

「[0055] Referring now to FIGS. 3A and 3B, illustrated is a headset 300 for sensing biosignals.・・・」

(当審訳)「[0055]図3Aおよび図3Bを参照すると、生体信号検知のためのヘッドセット300が示されている。・・・」

キ

「[0068] The biosensor 320 may be any suitable electrode which is configured to detect biosignals on any animal. The biosensor 320a may be a pronged electrode having a length configured to extend through the hair of the individual 101. The length of the prongs 320b of the biosensor 320a may be any length, (e.g., from 1 mm to 50 mm) determined to be long enough to place the biosensor 320a in contact with the scalp of the individual 101 (FIG. 1). As illustrated, the biosensor 320a (FIGS. 9A and 9B) may, in embodiments, rest flat against the head of the individual 101 when the individual 101 has little to no hair which would impede contact between the biosensor 320a and the scalp of the individual 101. The biosensor 320a may be made of a plurality of different materials such as chopped carbon fiber randomly interspersed silicone or graphene mixed with plastic to transfer ion currents to connector 319. The portion of biosensor 320a that configured to contact the scalp of the individual 101 may be made of any bio-compatible material such as, without limitation, silver (Ag) or gold (Au) or silver/silver-chloride (Ag/AgCl), which improves the ion to electron conversion needed to digitize biosignals on biosignal acquisition device 314. 」

(当審訳)「[0068]バイオセンサ320は、任意の動物の生体信号を検出するように構成された任意の適切な電極であってよい。バイオセンサ320aは、被験者101の毛髪の間を通って延びるように構成された長さを有する突起状の電極であってもよい。バイオセンサ320aのプロング320bの長さは、バイオセンサ320aを被験者101(図1)の頭皮に接触して配置するのに十分な長さとなるように決定された任意の長さ、(例えば、1mmから50mm)であってよい。図示されているように、バイオセンサ320a(図9A及び9B)は、実施形態において、被験者101が、バイオセンサ320aと被験者101の頭皮との間の接触を妨げるような毛をほとんど有さない場合、被験者101の頭に対して平らになってもよい。バイオセンサ320aは、イオン電流をコネクタ319に伝達するために、刻んだ炭素繊維をランダムに散りばめたシリコーン又はプラスチックと混合したグラフェンなど、複数の異なる材料で作られてもよい。被験者101の頭皮に接触するように構成されたバイオセンサ320aの部分は、限定されないが、銀(Ag)又は金(Au)又は銀/塩化銀(Ag/AgCl)などの任意の生体適合材料で作られてよく、これにより、生体信号取得装置314上で生体信号をデジタル化するために必要なイオン-電子変換が改善される。」

ク

「[0143] Referring to FIGS. 9A and 9B, an electrode 900 is illustrated according to aspects of the present disclosure. The electrode may be made of various materials which at least partially encase conductive components therein (described below). It is contemplated that the electrode 900, and more particularly the electrode housing, may be formed of a non-conductive polymer silicone rubber, or any suitable biocompatible material known in the art.
[0144] Connectors 905 are operably coupled electrically by wires 901 to prong tips 904, respectively. The prong tips 904 are disposed on arms or prongs 903 extending from a bottom portion 902a of the electrode housing 902. The wires 901 may be physically connected via an electromechanical connection such as a soldered connection. In embodiments, the connectors 905 and wires 901 may be cast into a mold (FIG. 10).
[0145] The electrode housing 902 comprises a biocompatible substrate forming the top portion 902b and a bottom portion 902a. More particularly, the electrode housing 902 is formed of a non-conductive material such as silicone. ・・・
[0146] The prongs 903 extend from the bottom portion 902a of the electrode housing 902 and have a wire 901 disposed along a bore extending through the prong therein. ・・・
[0147] A prong tip 904 is coupled to the distal portion of the wire 901 extending through the prong 903. The prong tip 904 may be made of a material different than wire 901, the material comprising an ion-to-electron charge carrying conversion desirable for receiving and transferring bio-signals to the biosignal acquisition device 314. Prong tip 904 may also be made of a bio-safe material that will not cause medical problems for an individual. While shown as having a rounded tip, the prong tip 904 may be any suitable shape configured to enable electrical contact with the scalp of the individual 101.・・・
[0149] Referring now to FIG. 10, an electrode mold 1000 is illustrated according to aspects of the present disclosure. The electrode mold 1000 may be formed of any rigid or semi-rigid material capable of receiving material to form the electrode 900 of FIG. 9. The electrode mold 1000 may be made of a rigid polymer or metal (for injection molding), the material configured to receive pliable substrates used to form the electrode 900 during manufacturing.
[0150] A bottom portion 1006 forms a recess extending from a top portion of the electrode mold 1000, the top portion of the electrode mold 1000 corresponding to the bottom portion of the electrode 900. The recess extending through the bottom portion 1006 defines an aperture 1002 having a diameter equal to a diameter of the electrode base 902. A plurality of prong cavities 1004 extend downward from a bottom portion 1006 of the recess of extending downward from the top portion of the electrode mold 1000. More particularly, the prong cavities 1004 extend downward and outward and mate with a plurality of openings 1016 disposed along a bottom portion of the electrode mold 1000.」

(当審訳)「[0143]図9A及び図9Bを参照すると、本開示の態様にしたがって示されている電極900を形成する。電極は、少なくとも部分的に導電性構成要素をその中に包む様々な材料で作られてもよい(以下に説明する)。電極900、より詳細には電極ハウジングは、非導電性ポリマーシリコーンゴム、または当該技術分野で知られている任意の適切な生体適合性材料で形成されてもよいことが企図される。

[0144]コネクタ905は、ワイヤ901によってプロング先端904にそれぞれ動作可能に電気的に結合される。プロング先端904は、電極ハウジング902の底部902aから延びるアーム又はプロング903上に配置される。ワイヤ901は、半田付け接続のような電気機械的接続を介して物理的に接続されてもよい。実施形態において、コネクタ905及びワイヤ901は、鋳型(図10)に鋳造されてもよい。

[0145]電極ハウジング902は、頂部902bと底部902aを形成する生体適合性基材を含む。より具体的には、電極ハウジング902は、シリコーンのような非導電性材料で形成されている。・・・

[0146]プロング903は、電極ハウジング902の底部902aから延び、そこにプロングを貫通して延びるボアに沿って配置されたワイヤ901を有する。・・・

[0147]プロング先端904は、プロング903を通って延びるワイヤ901の遠位部分に結合される。プロング先端904は、ワイヤ901とは異なる材料で作られてもよく、その材料は、生体信号を受信して生体信号取得装置314に転送するために望ましいイオン-電子電荷運搬変換を構成するものである。プロング先端904はまた、被験者に医学的問題を引き起こさない生物学的に安全な材料で作られてもよい。丸みを帯びた先端を有するものとして示されているが、プロング先端904は、被験者101の頭皮との電気的接触を可能にするように構成された任意の適切な形状であってよい。・・・

[0149]ここで図10を参照すると、本開示の態様による電極鋳型1000が図示されている。電極鋳型1000は、図9の電極900を形成するための材料を受け取ることができる任意の剛性または半剛性材料で形成されてもよい。電極鋳型1000は、剛性ポリマーまたは金属(射出成形用)で作られてもよく、材料は、製造中に電極900を形成するために用いられる柔軟な基材を受け取るように構成される。

[0150]底部1006は、電極鋳型1000の上部から延びる凹部を形成し、電極鋳型1000の上部は、電極900の底部に対応する。底部1006を貫通して延在する凹部は、電極底部902の直径に等しい直径を有する開口1002を画定する。複数のプロングキャビティ1004は、電極鋳型1000の上部から下方に延びる凹部の底部1006から下方に延びている。より具体的には、プロングキャビティ1004は、下外方に延びており、かつ電極鋳型1000の底部に沿って配置された複数の開口部1016と係合する。」

ケ

Fig.3B(当審訳)図3B

[図:0001389126000001.jpg]

コ

FIG.9B(当審訳)図9B

[図:0001389126000002.jpg]

サ

FIG.10(当審訳)図10

[図:0001389126000003.jpg]

シ

上記クにおける「底部1006は、電極鋳型1000の上部から延びる凹部を形成し、電極鋳型1000の上部は、電極900の底部に対応する。底部1006を貫通して延在する凹部は、電極底部902の直径に等しい直径を有する開口1002を画定する。」という記載と、上記図10の記載、および、上記図9Bの符号902によって示される部材の記載から、「電極ハウジング902」は円板状であることがみてとれる。

ス

上記クにおける「電極900、より詳細には電極ハウジングは、非導電性ポリマーシリコーンゴム」「で形成されてもよい」、「電極鋳型1000は、図9の電極900を形成するための材料を受け取ることができる任意の剛性または半剛性材料で形成されてもよい。電極鋳型1000は、剛性ポリマーまたは金属(射出成形用)で作られてもよく、材料は、製造中に電極900を形成するために用いられる柔軟な基材を受け取るように構成される。底部1006は、電極鋳型1000の上部から延びる凹部を形成し、電極鋳型1000の上部は、電極900の底部に対応する。底部1006を貫通して延在する凹部は、電極底部902の直径に等しい直径を有する開口1002を画定する。複数のプロングキャビティ1004は、電極鋳型1000の上部から下方に延びる凹部の底部1006から下方に延びている。」という記載と、上記図9B,10の記載、および、シリコーンゴムが硬化工程を経て成型されるものであるという技術常識を考慮すると、「電極900を形成するために用いられる柔軟な基材」として「非導電性ポリマーシリコーンゴム」を「電極鋳型1000の上部から延びる凹部」及び「プロングキャビティ1004」に入れて、「電極ハウジング902」及び「プロング903」を成型していると読み取れるから、「プロング903」は「非導電性ポリマーシリコーンゴム」で形成されているものであり、該「非導電性ポリマーシリコーンゴム」は硬化物であるといえる。

(2)引用文献1に記載された発明

上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「円板状の電極ハウジング902およびプロング903は、非導電性ポリマーシリコーンゴムで形成され、
プロング903は、電極ハウジング902の底部902aから延び、プロングを貫通して延びるボアに沿って配置されたワイヤ901を有し、
プロング先端904は、プロング903上に配置され、プロング903を通って延びるワイヤ901の遠位部分に結合され、ワイヤ901とは異なる材料であって、生体信号を受信して生体信号取得装置314に転送するために望ましいイオン-電子電荷運搬変換を構成する材料で作られ、丸みを帯びた先端を有するものであり、
前記非導電性ポリマーシリコーンゴムは、硬化物である、
生体信号を検出するように構成された電極。」

2 引用文献2について

(1)引用文献2の記載

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。ここで、下記アにおける「1」乃至「7」、および「1」乃至「3」は、引用文献2では、数字を丸で囲む丸数字で記載されている。

ア

「3.2 シリコーンゴムの原料
シリコーンゴムの配合原料は、一般に、以下に示す7種類に分類される。
1シリコーンポリマー,シリコーンガム
2補強充填剤,準補強充填剤
続きを表示(全16行)
3増量充填剤
4可塑剤,処理剤
5添加剤
6硬化剤
7着色剤
1 シリコーンポリマー,シリコーンガム
一般に使用されているポリマーとしては、主として、ジメチルシリコーンポリマー、ビニルシリコーンポリマー、フェニルシリコーンポリマー、フロロシリコーンポリマーがあり、それぞれ、特有な性質を示す。
・・・
ビニルシリコーンポリマーは、現在市販されている過酸化物硬化、付加反応硬化タイプのシリコーンゴムの大部分に用いられている。ビニル基には硬化特性、反発弾性、圧縮永久歪み特性などを改良する効果がある。
・・・
2 補強充填剤,順補強充填剤,3 増量充填剤
分子間凝集力が小さいシリコーンポリマーのみだけでは引張強さが0.3-0.5MPaと非常に低いため、主要なシリコーンゴムには補強充填剤が添加されおり、乾式シリカ、湿式シリカなどの補強性シリカが主に使用されている。・・・」(第70頁右欄下から8行~第71頁左欄下から14行)

イ

「3.3 シリコーンゴムの製造工程
シリコーンゴムの配合原料は3.2で述べたように7種類に分類されるが、ゴムそれぞれに要求される最終製品としての特性から、必要な原料が組み合わされて配合される。
ベースはシリコーンポリマーに補強充填剤と可塑剤を加え混練したものである。補強充填剤としては乾式シリカ、湿式シリカなどの補強性シリカが主に使用されている。・・・」(第71頁右欄下から9行~下から2行)

(2)引用文献2に記載された技術的事項

上記(1)から、引用文献2には、「シリコーンゴムの配合原料として、ビニルシリコーンポリマーと補強性シリカとを使用する。」という技術的事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているといえる。

3 引用文献3について

(1)引用文献3の記載

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。ここで、下記アにおける「1」乃至「3」は、引用文献3では、数字を丸で囲む丸数字で記載されている。

ア

「2 フィラー配合の目的
プラスチック,ゴムにフィラーを配合する目的は,1)物性改善,2)加工性改良,3)経済性,4)廃棄物のカロリー低減などに分けられる。物性改善には1補強性あるいは強化といわれる機械的性質の向上,熱変形性改良のような高性能化,2電気絶縁性,導電性,圧電性,磁性,熱伝導性,難燃性,遮音性,放射線遮蔽性などの機能性付与,3耐候性,耐熱性,耐油性,耐水性,耐薬品性などの耐久性がある。・・・」(第22頁左欄下から9~1行)

イ

「4 粒子の大きさ(比表面積)
・・・
ポリマー中でフィラーの基本粒子に分散することが望ましいが,かならずしも単一粒子に分散しているとは限らない。シリカ補強シリコンゴムの光散乱および光学顕微鏡の観察から,シリカが複雑な形態で分散していることがあきらかになり,多くは数μmの大きさの粒子として凝集し,これらの粒子が寄り集まり,直径約20μmの大きな凝集体を形成している9)。
・・・」(第23頁右欄第26~32行)

(2)引用文献3に記載された技術的事項

上記(1)から、引用文献3には、「補強性といわれる機械的性質の向上を目的としてシリカを配合したシリコンゴム。」という技術的事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されているといえる。

第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明1とを対比する。

ア

引用発明1の「円板状の電極ハウジング902」は、板状であり、「電極ハウジング902の底部902aから延び」る「プロング903」を支えているから、本願発明1の「板状支持部」に相当する。

イ

引用発明1の「電極ハウジング902の底部902a」と本願発明1の「前記板状支持部の一面」とは、「前記板状支持部の一面」である点で一致する。そして、引用発明1の「プロング903」は、「電極ハウジング902の底部902aから延び」ているから、本願発明1の「前記板状支持部の一面から突出した、絶縁性シリコーンゴムで構成される柱状部」と「前記板状支持部の一面から突出した」「柱状部」である点で共通する。

さらに、引用発明1の「非導電性ポリマーシリコーンゴム」は、本願発明1の「絶縁性シリコーンゴム」と、「絶縁性」の「シリコーンゴム」である点で共通し、引用発明1の「プロング903」は、当該「非導電性ポリマーシリコーンゴムで形成され」ているから、引用発明1の「プロング903」は、本願発明1の「前記板状支持部の一面から突出した、絶縁性シリコーンゴムで構成される柱状部」に相当する。

ウ

引用発明1の「プロング先端904」は、「プロング903」の先端「上に配置され」ているから、本願発明1の「前記柱状部の先端部を覆うように設けられており、導電性シリコーンゴムで構成された導電性樹脂層」と、「前記柱状部の先端部を覆うように設けられて」いる点で共通する。

さらに、引用発明1の「プロング先端904」は、該「プロング先端904」に「結合され」る「ワイヤ901とは異なる材料であって、生体信号を受信して生体信号取得装置314に転送するために望ましいイオン-電子電荷運搬変換を構成する材料で作られ」ているから、本願発明1の「前記柱状部の先端部を覆うように設けられており、導電性シリコーンゴムで構成された導電性樹脂層」と、「前記柱状部の先端部を覆うように設けられて」いる「導電」部である点で共通する。

エ

引用発明1の「前記非導電性ポリマーシリコーンゴムは、硬化物である」ことは、本願発明1の「前記絶縁性シリコーンゴムが、非導電性フィラーおよびビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成され」ることと、「前記絶縁性」の「シリコーンゴムが、」「硬化物で構成され」る点で共通する。

オ

引用発明1の「生体信号を検出するように構成された電極」は、生体の体内から発せられる信号を検出するために使用する電極であるから、本願発明1の「生体用電極」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。

(一致点)

「板状支持部と、
前記板状支持部の一面から突出した、絶縁性シリコーンゴムで構成される柱状部と、
前記柱状部の先端部を覆うように設けられている導電部と、を備える生体用電極であって、
前記絶縁性シリコーンゴムが、硬化物で構成される、
生体用電極。」

(相違点1)

柱状部の先端部を覆うように設けられている導電部が、

本願発明1は、「導電性シリコーンゴムで構成された導電性樹脂層」であり、「前記導電性シリコーンゴムが、導電性フィラー、非導電性フィラーおよびビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む導電性シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成される」のに対し、

引用発明1は、「プロング903を通って延びるワイヤ901の遠位部分に結合され、ワイヤ901とは異なる材料であって、生体信号を受信して生体信号取得装置314に転送するために望ましいイオン-電子電荷運搬変換を構成する材料で作られ、丸みを帯びた先端を有する」「プロング先端904」である点。

(相違点2)

絶縁性シリコーンゴムを構成する硬化物が、

本願発明1は「非導電性フィラーおよびビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む絶縁性シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物」であるのに対し、

引用発明1は、どのような組成の硬化物であるのか特定されていない点。

(2)判断

ア 上記相違点1について検討する。

引用発明1の「プロング先端904」は、「ワイヤ901の遠位部分に結合され」、「イオン-電子電荷運搬変換を構成する材料で作られ」るものである。

そして、引用文献1の段落[0144]に、「ワイヤ901は、半田付け接続のような電気機械的接続を介して物理的に接続されてもよい。」との記載があり、半田付け接続が、通常、金属同士を接続させる技術であること、さらに、引用文献1の段落[0068]に、イオン-電子変換が改善される、被験者の頭皮に接触する部分の材料として、銀(Ag)又は金(Au)又は銀/塩化銀(Ag/AgCl)を使用する旨が記載されていることから、引用文献1には、「ワイヤ901の遠位部分に結合され」る「プロング先端904」の材料として、金属を用いることが示唆されているといえる。

また、引用文献1の段落[0147]には、「丸みを帯びた先端を有するものとして示されているが、プロング先端904は、被験者101の頭皮との電気的接触を可能にするように構成された任意の適切な形状であってよい。」との記載があることから、引用文献1には、「プロング先端904」の形状を、「丸みを帯びた先端を有する」形状以外の「被験者101の頭皮との電気的接触を可能にするように構成された任意の適切な形状」としてもよいことが示唆されているといえる。

しかしながら、引用文献1には、「ワイヤ901の遠位部分に結合され」る「プロング先端904」を、「導電性シリコーンゴムで構成された導電性樹脂層」とし、「前記導電性シリコーンゴムが、導電性フィラー、非導電性フィラーおよびビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む導電性シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成される」ものとすることについて、何ら記載されていないし、そのようなものとすることが本願の優先日前において周知の技術であるということもできない。

さらに、引用文献2技術事項、及び引用文献3技術事項にも、上記相違点1に係る技術は開示されていないから、当業者であっても、引用発明1、引用文献2技術事項、及び引用文献3技術事項から、上記相違点1に係る技術事項を導き出すことはできない。

そして、本願発明1は、上記相違点1に係る技術事項を備えることによって、柱状部と導電性樹脂層との「密着性が高まるため、繰り返し使用時においても、剥離を抑制できるとともに、導通性を維持できる」(段落【0005】)という有利な効果を奏するものである。

イ したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1、引用文献2技術事項、及び引用文献3技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし15について

本願発明2ないし15は、本願発明1を直接又は間接的に引用する発明であり、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、上記「1」で検討したのと同じ理由により、引用発明1、引用文献2技術事項、及び引用文献3技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 当審拒絶理由について

1.当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(明確性)本件出願は、特許請求の範囲の請求項9-15の記載が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.当審拒絶理由についての判断

令和4年5月12日提出の手続補正書による手続補正により、補正前の請求項9の「100質量」が「100質量%」と補正されたことにより、当審拒絶理由は解消した。

第7 原査定についての判断

上記「第5」で検討したとおり、本願発明1ないし15は、引用発明1、引用文献2技術事項、及び引用文献3技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-015341

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決180件(住友ベークライト株式会社)
  • 2025-001259拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)多層フィルム、包装体、及び包装体の製造方法
    同じ当事者: 住友ベークライト株式会社
  • 2025-000351拒絶査定不服審判 / 2026-06-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)センサデバイス、及びモニタリング装置
    同じ当事者: 住友ベークライト株式会社
  • 2025-002118拒絶査定不服審判 / 2026-06-16 / 原査定取消(特許/登録すべき)積層フィルム
    同じ当事者: 住友ベークライト株式会社
  • 2024-010929拒絶査定不服審判 / 2026-06-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)シリコーンゴム系硬化性組成物、ブレード部材
    同じ当事者: 住友ベークライト株式会社
  • 2024-008724拒絶査定不服審判 / 2026-05-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)医療用コネクタ、及び冠状動脈バイパス術用処置具
    同じ当事者: 住友ベークライト株式会社
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,956件(121・A61B)
  • 2024-014320拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)生理学的データのモニタリング方法
    共通の審決分類: 121・A61B
  • 2025-010743拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)乳房の病変を同定する方法及びモデル
    共通の審決分類: 121・A61B
  • 2024-019207拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)少なくとも1つの呼吸パラメータを決定するための測定装置及び方法
    共通の審決分類: 121・A61B
  • 2025-016546拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)診断デバイス
    共通の審決分類: 121・A61B
  • 2025-015249拒絶査定不服審判 / 2026-08-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)感情推定装置
    共通の審決分類: 121・A61B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存