商標拒絶査定不服審判
2021-014735
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- 審判番号
- 2021-014735
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-039129
- 請求日
- 2021年10月29日
- 審決日
- 2022年09月29日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】未来創造弁護士法人
- 【請求人代理人】原田 貴史
- 審判長/審判官
- 審判長 齋藤 貴博
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 綾 郁奈子
- 分類
- T18 .16 -Z (W4145) / T18 .272-Z (W4145)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項6号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第6号、特許法第150条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-39129拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「日本一裁判しない弁護士」の文字を標準文字で表してなり、第41類及び第45類に属する別掲1のとおりの役務を指定役務として、令和2年4月7日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年3月18日付けで拒絶理由の通知がされ、同年4月13日に意見書が提出されたが、同年8月24日付けで拒絶査定がされた。
これに対して令和3年10月29日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、「日本一裁判しない弁護士」の文字を標準文字にて表してなるところ、その構成中の「日本一」の文字は、「日本で第一であること。国中でもっともすぐれていること。」[広辞苑 第七版]の意味を有するので、その全体よりは、「我が国でもっとも裁判をしない弁護士」ほどの意味合いを理解させるものである。そうすると、本願商標をその指定役務のうち「弁護士による法律的事項に関する研究,弁護士による契約の交渉に関する法律業務(他人のためのこと),弁護士による知的財産権に関する助言,弁護士による法的書類の作成(法律業務),弁護士による法律的事項に関する弁護,弁護士による法律的事項の監視,弁護士による法律に関する助言のための知的財産権の監視,弁護士によるインターネットドメイン名の登録に関する法律業務,弁護士による裁判外紛争解決,弁護士による訴訟(法律)事務,弁護士による仲裁,弁護士による調停,弁護士による入国管理に関する法律業務,弁護士によるパテントマップに関する法分野における助言,弁護士による工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務,弁護士による訴訟事件その他に関する法律事務,弁護士による登記又は供託に関する手続の代理,弁護士による著作権の管理,弁護士による著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」に使用するときは、これに接する需要者等は、単に役務の特性を示す文言として一般的に使用される語の一種と理解するにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を有するものとはいえないため、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審においてした証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲2(令和4年4月14日付け)及び3(同年7月28日付け)のとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、証拠調べの結果を通知した。
4 証拠調べに対する意見
請求人は、前記3の証拠調べ通知に対して、要旨以下のように述べた。
(1)令和4年4月14日付け証拠調べに対する意見
「裁判をしない」ということは、逆に「裁判」以外のすべての方法の可能性があるということであり、直ちに「交渉で解決すること」を意味するということにはならない。弁護士の業務の中には、「裁判」での事案解決や「交渉」での事案解決のほか、「調停・仲裁などのADR(裁判外紛争解決手続)」での事案解決、予防としての事前の「契約」での事案解決といった対応方法も明確に存在している。本願商標においては、むしろ、「裁判」以外の解決方法として無限の可能性を残しつつ、あえて具体的な解決方法を明示せず、言外に余韻を残す表現方法の意外性や面白みというものに強い影響をうけ、かえって、その表現の独自性・新鮮さにより記憶・印象に残るものといえるものである。
(2)令和4年7月28日付け証拠調べに対する意見
ア 事例は、紛争解決の手段として、裁判と裁判以外の方法があること、及び、弁護士の中には、裁判という解決方法を採る弁護士もそうでない弁護士もいるという、極めて当然の事実を示すものにすぎず、これらの事実が存在するということと、「日本一裁判しない弁護士」という表現が出所標識として自他識別力を有するか否かの評価とは、全く別の問題である。
イ 出願された商標が、それが使用される商品又は役務との関係で、特定の意味を有するものとして当業界で複数用いられているなどの事情により、他の出所に係る商品又は役務との識別が不可能となっている場合には、その登録が拒絶されるということになる。
ウ 単に「裁判しない」という表現だけでは、仲裁という手続きについて強みを有する弁護士のことなのか、それとも調停、あっせんといった裁判外紛争解決手続(ADR)について強みを有する弁護士のことなのか、何ら直接的に特定するものではない。
エ 「日本一」まで付された形での使用例は、請求人による使用以外には皆無であり、請求人は「自他役務の識別標識」として本願商標を採択・使用している。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号該当性
本願商標は、「日本一裁判しない弁護士」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「日本一」の文字は、「日本で第一であること。国中でもっともすぐれていること。」等を、「裁判」の文字は、「裁判所・裁判官が具体的事件につき公権に基づいて下す判断。」等を、「弁護士」の文字は、「当事者その他の関係人の依頼または官公署の委託によって、訴訟に関する行為、その他一般の法律事務を行う者。」等を意味する、極めて親しまれた語であるから、本願商標全体としてみると、「日本一裁判をしない弁護士」の意味合いを容易に理解させ、それ以外の意味を理解し得ないものである。
また、交渉、仲裁、調停、あっせんなど、裁判によらず法的なトラブルを解決する方法があること(別掲3の1)は広く知られており、実際に、弁護士の業務として、裁判をしない解決方法が提供されている事実(別掲3の2)、それらの役務の説明において、「裁判をしない」という表現が用いられている実情(別掲2の1、別掲3の2)、裁判をしない解決方法を採る弁護士を「裁判(を)しない弁護士」と称している事実(別掲3の3)も認められる。
さらに、「日本一・・・」のフレーズが、企業理念・経営方針等として多用されている事実(別掲2の2)が認められる。
そして、本願商標全体から理解される意味、裁判によらず法的なトラブルを解決する方法があり、実際にそれらの役務が「裁判をしない」という表現を用いて提供され、裁判をしない解決方法を採る弁護士を「裁判(を)しない弁護士」と称している事実、「日本一・・・」のフレーズが、企業理念・経営方針等として多用されていることを踏まえれば、本願商標をその指定役務のうち、弁護士によって提供される「契約の交渉に関する法律業務,裁判外紛争解決,仲裁,調停」及びこれに関連する役務に使用した場合、本願商標は、当該役務の説明、特性、優位性、特徴(日本一裁判をしない弁護士による役務であるという説明、特性、優位性、特徴)を表すものといえるから、本願商標に接する取引者、需要者は、これを「日本一裁判をしない弁護士」による役務という、当該指定役務の宣伝広告、企業理念、経営方針等であると認識するにとどまるというべきである。
そうすると、本願商標を前記指定役務に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、本願商標を、自他役務の識別標識としてではなく、指定役務の宣伝広告、企業理念、経営方針等として認識するにとどまるから、本願商標は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、「日本一裁判しない弁護士」の語が表す意味合いに照応する役務以外の役務に使用するときは、役務の内容(質)の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、「裁判をしない」ということは、逆に「裁判」以外のすべての方法の可能性があるということであり、「裁判」以外の解決方法として無限の可能性を残しつつ、あえて具体的な解決方法を明示せず、言外に余韻を残す表現方法の意外性や面白みというものに強い影響をうけ、かえって、その表現の独自性・新鮮さにより記憶・印象に残るものといえる旨、また、単に「裁判しない」という表現だけでは、仲裁という手続きについて強みを有する弁護士のことなのか、それとも調停、あっせんといった裁判外紛争解決手続(ADR)について強みを有する弁護士のことなのか、何ら直接的に特定するものではない旨を主張する。
しかしながら、商標の識別性は、指定役務との関係で判断されるものであるところ、本願の指定役務のうち、「契約の交渉に関する法律業務,裁判外紛争解決,仲裁,調停」の役務との関係において、解決方法として無限の可能性は残されておらず、具体的な解決方法は、本願商標の指定役務によって明示されているのであって、請求人の主張は、本願商標を構成する文字のみを捉え、指定役務との関係を考慮していないものといわざるを得ない。
イ 請求人は、証拠調べで示した事例は、紛争解決の手段として、裁判と裁判以外の方法があること、及び、弁護士の中には、裁判という解決方法を採る弁護士もそうでない弁護士もいるという、極めて当然の事実を示すものにすぎず、これらの事実が存在するということと、「日本一裁判しない弁護士」という表現が出所標識として自他識別力を有するか否かの評価とは、全く別の問題である旨主張する。
しかしながら、本願商標全体から理解される意味に加え、証拠調べ通知において示した、裁判によらず法的なトラブルを解決する方法があること、実際にそれらの役務が「裁判をしない」という表現を用いて提供されていること、裁判をしない解決方法を採る弁護士を「裁判(を)しない弁護士」と称していることは、本願商標に接する取引者、需要者の認識を推し量る上で考慮されて然るべきであり、極めて当然の事実であればなお、当該認識の認定に寄与するものである。
ウ 請求人は、出願された商標が、使用される商品又は役務との関係で、特定の意味を有するものとして当業界で複数用いられているなどの事情により、他の出所に係る商品又は役務との識別が不可能となっている場合には、その登録が拒絶されるということになる旨主張する。
しかしながら、当業界で複数用いられているなどの事情により、他の出所に係る商品又は役務との識別が不可能となっている場合にのみ登録が拒絶されるとの主張は、請求人の独自の見解であり、本願商標は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるというのが相当であることは、前記(1)のとおりである。
エ 請求人は、「日本一」まで付された形での使用例は、請求人による使用以外には皆無であり、請求人は「自他役務の識別標識」として本願商標を採択・使用している旨主張する。
しかしながら、請求人が出所識別標識として使用すると、ただちに識別力が獲得されるわけではないから、請求人が本願商標を出所識別標識として使用している事実を理由として、本願商標が、何人かの業務に係る役務であることを認識することができる商標であると判断することはできない上、請求人自身も、出所識別標識というよりは、「「裁判になる前にトラブルを解決する予防法務こそが依頼者を幸せにする」というスタンスを貫く」(別掲3の4)として、スタンス(ある行動をとる際の、姿勢や立場。)を示して「日本一裁判しない弁護士」と称している事実も見受けられる。
オ したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであって、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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