2021-013378
積層型電子部品
- 審判番号
- 2021-013378
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-190193外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年10月04日
- 審決日
- 2022年10月20日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H01F)
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 9項目
第1 手続の経緯
本願は、平成30年10月5日の出願であって、令和3年2月16日付けで拒絶理由が通知され、令和3年4月19日付けで手続補正がなされたが、令和3年7月2日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和3年10月4日に拒絶査定不服審判が請求され、当審において、令和4年6月30日付けで拒絶理由が通知され、令和4年8月31日に手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和4年8月31日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】磁性粒子を含有する磁性層を含む素体と、前記素体に内蔵されたコイルと、前記素体の底面に設けられ、前記コイルの端部のいずれか1つにそれぞれ電気的に接続された外部電極とを有してなる積層型電子部品であって、前記コイルは、前記素体内に積層された複数のコイル導体が連結されてなり、前記素体は、前記外部電極と、前記外部電極に対向する前記コイル導体との間に存在する非磁性層を含み、前記非磁性層は、FeがFe2O3に換算して40mol%以上49.5mol%以下、CuがCuOに換算して6mol%以上12mol%以下、残部がZnOである、積層型電子部品。」
第3 引用発明、引用文献等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項について
当審における拒絶理由で引用した特開2018-56197号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、磁性体層と導体パターンを積層し、磁性体層間の導体パターンを接続して積層体内にコイルが形成された積層型電子部品に関するものである。
「【0017】以下、本発明の積層型電子部品の実施例を図1乃至図4を参照して説明する。図1は本発明の積層型電子部品の第1の実施例を示す分解斜視図である。図1において、10は積層体、11Aから11Gは磁性体層、12A~12Eは導体パターンである。積層体10は、積層方向に直交し外部端子が配置される底面と、底面に隣接して積層方向に平行な側面とを有する。【0018】積層体10は、磁性体層11Aから11Gと導体パターン12Aから12Eを積層して形成される。磁性体層11Aから11Gは、Fe、Si、Fe-Si-Cr、Fe-Si-Al、Fe-Ni-Al、Fe-Cr-Al、アモルファス等の金属磁性を有する粉末等の金属磁性体を用いて形成される。また、導体パターン12Aから12Eは、銀、銀系、金、金系、銅、銅系等の金属材料をペースト状にした導体ペーストを用いて形成される。」
[図:0001392676000001.jpg]
「【0024】・・・(省略)・・・また、この積層体10には、図2に示す様に、底面に1対の外部端子15、16が形成され、コイルパターンの両方の引き出し端がそれぞれ導体を介して接続されることにより1対の外部端子15、16間にコイルが接続される。」
[図:0001392676000002.jpg]
「【0033】図4は本発明の積層型電子部品の第3の実施例を示す分解斜視図である。第3の実施例では、絶縁体部がコイルと外部端子の間に設けられる。これにより、より優れた直流重畳特性と、より優れた絶縁性と耐電圧特性とを達成することができる。」
[図:0001392676000003.jpg]
「【0039】このように、磁性体層間の導体パターン42Aから42Eを螺旋状に接続することにより積層体内にコイルパターンが形成される。この積層体40では、コイルパターンの第一端部および第二端部が接続されたそれぞれの導体の表面の一部が底面に露出する。この時、コイルパターンの第二端部に接続された導体は、積層体40の底面と第二端部との間において磁性体層の積層方向に延在する。また、この積層体30は、図2に示す様に、底面に1対の外部端子15、16が形成され、コイルパターンの2つの引き出し端(第一端部および第二端部)がそれぞれ導体を介して接続されることにより1対の外部端子15、16間にコイルが接続される。また、この積層体40内において、コイルパターンと外部端子との間に絶縁体部が形成される。【0040】以上、本発明の積層型電子部品の実施例を述べたが、本発明はこの実施例に限られるものではない。例えば、実施例において、外部端子は、積層体の底面において側面側から見える様に形成した場合を説明したが、側面から見えない様に積層体の底面において側面に接する辺から離間して形成されても良い。また、実施例において、積層体の底面に、ガラス、ガラスセラミックス等の誘電体、フェライト等の磁性体、非磁性体等の絶縁性を有するものを用いて絶縁体層が形成され、絶縁体層上に外部端子が形成されても良い。この場合、絶縁体層は、積層体を構成する材料よりも体積抵抗率、耐電圧が高いものが用いられると良い。」
(2)引用文献1に記載された発明について
引用文献1の段落【0018】の技術内容は、図4に示された第3の実施例にもあてはまることは明らかであるから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「磁性体層と導体パターンを積層し、磁性体層間の導体パターンを接続して積層体内にコイルが形成された積層型電子部品であって、磁性体層は、金属磁性を有する粉末等の金属磁性体を用いて形成され、磁性体層間の導体パターンを螺旋状に接続することにより積層体内にコイルパターンが形成され、コイルパターンの第一端部および第二端部が接続されたそれぞれの導体の表面の一部が底面に露出し、底面に1対の外部端子が形成され、コイルパターンの2つの引き出し端(第一端部および第二端部)がそれぞれ導体を介して接続されることにより1対の外部端子間にコイルが接続され、積層体の底面に、非磁性体等の絶縁性を有するものを用いて絶縁体層が形成され、絶縁体層上に外部端子が形成される、積層型電子部品。」
2 周知の技術事項
(1)当審における拒絶理由で引用した特開2014-22426号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0001】本発明は、各種電子機器に用いられる面実装型の積層インダクタに関するものである。」
「【0012】ここで磁性体層11の厚みは約20μmとし、銀からなるコイルパターン17の厚みは約30μm、幅を約200μmとしている。なお、重畳特性の改善のために、積層体の中央付近の磁性体層の一部を、Zn-Cu系フェライトからなる非磁性体層に置き換えてもかまわない。」
(2)国際公開2018/143114号(国際公開日:平成30年8月9日)には、次の事項が記載されている。
「[0042] 絶縁層に非磁性フェライトとして使用するフェライトには、焼結体の体積固有抵抗が108 Ωcm以上になるようなZn系フェライト組成を選択するとよい。例えば、Fe2O3が45.0~49.5mol%、ZnOが17.0~45.0mol%、CuOが4.5~15.0mol%である組成が好ましい。」
「[0078] また、Zn-Cuフェライト仮焼粉(Fe2O3 46.5mol%、ZnO 42.0mol%、CuO 11.5mol%)100重量部、ブチラール樹脂8重量部、可塑剤5重量部、溶剤80重量部をボールミルで混合しスラリーを製造した。出来たスラリーをドクターブレードでPETフィルム上に磁性層(5)用グリーンシートと同様のサイズと厚みでシート成型して、絶縁層(6)用グリーンシートとした。」
(3)国際公開第2009/130935号には、次の事項が記載されている。
「[0025] 次に、非磁性体層11となるべきセラミックグリーンシートは、以下のようにして作製される。酸化第二鉄(Fe2O3)を49mol%、酸化亜鉛(ZnO)を41mol%、及び、酸化銅(CuO)を10mol%の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、2μmの粒径のフェライトセラミック粉末を得る。」
(4)特開2003-124028号公報には、次の事項が記載されている。
「非磁性体層にこの積層型トランスの使用温度(例えば-55℃~125℃)における透磁率がほぼ1となるCu-Zn系フェライト(例えば、ZnOが40.5mol%、CuOが10.5mol%、残部がFe2O3のフェライト」(第3頁第4欄第13~17行)
(5)上記(1)ないし(4)によれば、非磁性フェライトとして、「Zn-Cuフェライト」を用いることは周知事項といえる。
第4 対比・判断
1 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1における「金属磁性を有する粉末等の金属磁性体を用いて形成され」た「磁性体層」を「積層し」たものが、本願発明1における「磁性粒子を含有する磁性層を含む素体」に相当する。
(2)引用発明1における「コイル」は、「磁性体層と導体パターンを積層し、磁性体層間の導体パターンを接続して」「形成された」ものであるから、上記(1)で述べた「磁性体層」を「積層し」たものに内蔵されていることは明らかであって、本願発明1における「前記素体に内蔵されたコイル」に相当する。
(3)引用発明1における「底面に」「形成され」、「コイルパターンの2つの引き出し端(第一端部および第二端部)がそれぞれ導体を介して接続され」た「1対の外部端子」が、本願発明1における「前記素体の底面に設けられ、前記コイルの端部のいずれか1つにそれぞれ電気的に接続された外部電極」に相当する。
(4)引用発明1における「積層型電子部品」は、上記(1)ないし(3)のとおり、「素体」「コイル」「外部電極」を備えているから、本願発明1における「積層型電子部品」に相当する。
(5)引用発明1における「コイル」が「磁性体層と導体パターンを積層し、磁性体層間の導体パターンを接続して積層体内に」「形成され」ていることは、本願発明1における「前記コイルは、前記素体内に積層された複数のコイル導体が連結されてな」ることに相当する。
(6)引用発明1における「積層体の底面に、非磁性体等の絶縁性を有するものを用いて絶縁体層が形成され、絶縁体層上に外部端子が形成される」ことは、これにより「1対の外部端子」とこれに対向する、コイルを形成する「導体パターン」(つまりコイル導体)との間に「非磁性体等の絶縁性を有するものを用い」た「絶縁体層」が存在することになるから、本願発明1における「前記素体は、前記外部電極と、前記外部電極に対向する前記コイル導体との間に存在する非磁性層を含」むことに相当する。
(7)本願発明1では「前記非磁性層は、FeがFe2O3に換算して40mol%以上49.5mol%以下、CuがCuOに換算して6mol%以上12mol%以下、残部がZnOである」のに対し、引用発明1では、「非磁性体等の絶縁性を有するものを用い」た「絶縁体層」の組成が特定されていない点で相違する。
よって、本願発明1と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである、
(一致点)
「磁性粒子を含有する磁性層を含む素体と、前記素体に内蔵されたコイルと、前記素体の底面に設けられ、前記コイルの端部のいずれか1つにそれぞれ電気的に接続された外部電極とを有してなる積層型電子部品であって、前記コイルは、前記素体内に積層された複数のコイル導体が連結されてなり、前記素体は、前記外部電極と、前記外部電極に対向する前記コイル導体との間に存在する非磁性層を含む、積層型電子部品。」
(相違点)
本願発明1では「前記非磁性層は、FeがFe2O3に換算して40mol%以上49.5mol%以下、CuがCuOに換算して6mol%以上12mol%以下、残部がZnOである」のに対し、引用発明1では、「非磁性体等の絶縁性を有するものを用い」た「絶縁体層」の組成が特定されていない点。
2 判断
上記相違点について検討すると、上記「第3 2」で記載したとおり、非磁性フェライトとして「Zn-Cuフェライト」は周知のものである。
また、その組成としては、上記「第3 2(2)」に「Fe2O3 46.5mol%、ZnO 42.0mol%、CuO 11.5mol%」、「第3 2(3)」に「酸化第二鉄(Fe2O3)を49mol%、酸化亜鉛(ZnO)を41mol%、及び、酸化銅(CuO)を10mol%」、「第3 2(4)」に「ZnOが40.5mol%、CuOが10.5mol%、残部(当審注:49.0mol%)がFe2O3」と記載されているとおり、本願発明1で特定された範囲のものが一般的である。
よって、引用発明1における「非磁性体等の絶縁性を有するものを用い」た「絶縁体層」として、一般的な組成の「Zn-Cu系フェライト」を用い、上記相違点に係る本願発明1の要件を満足する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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