商標拒絶査定不服審判
2021-013234
- 審判番号
- 2021-013234
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-020319
- 請求日
- 2021年10月01日
- 審決日
- 2023年06月08日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オーデマ ピゲ ホールディング ソシエテ アノニム
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】森田 拓
- 【請求人代理人】松永 章吾
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】山崎 和香子
- 【請求人代理人】前川 砂織
- 審判長/審判官
- 審判長 矢澤 一幸
- 審判官 豊田 純一
- 審判官 杉本 克治
- 分類
- T18 .13 -Z (W14) / T18 .17 -Z (W14)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、特許法第150条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020- 20319拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標及び本願の手続きの経緯
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第14類「時計」を指定商品として、令和2年2月26日に登録出願されたものである。
本願は、令和2年8月27日付けで拒絶理由の通知がされ、同3年3月2日に意見書(以下「意見書1」という。)が提出されたが、同年6月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、本願商標は本願の指定商品の需要者が本願商標に接する場合、単に腕時計の形状を普通に用いられる方法で表したものと認識するにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当し、提出された証拠を参照するも、本願の指定商品の需要者間で、特定の者の業務に係る商品の出所を表示するものとして我が国において全国的に認識されるに至ったものといえないため、同条第2項の要件を具備しない旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人(出願人)(以下「請求人」という。)に対して、令和4年6月24日付け証拠調べ通知書(以下「証拠調べ通知」という。)によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)
請求人は、上記第3の証拠調べ通知に対し、令和4年8月8日付け意見書(以下「意見書2」という。)を提出し、要旨以下のとおりの意見を述べている。
1 本願商標は、八角形のベゼルを有していること、八角形のベゼルのそれぞれの角に六角形のネジを配置していること及び文字盤の表面に立体的な格子模様を施していることの3つの形状の特徴(以下「形状の3特徴」という。)の組み合わせに独自性があり、形状の3特徴のうち1又は2のみを備えたものは「本願商標と近似する形状が普通に使用されている事実」を示すものではない。
2 商品「腕時計」について、形状の3特徴を備えている例は、いずれも請求人の商品より後に販売が開始されたものであり、かかる模倣品の存在をもって「本願商標と近似する形状が普通に使用されている事実」と認定し、本願商標の登録可能性を否定する根拠とするのであれば、特許庁が模倣品の存在を認めこれを奨励するに等しい結果となりかねない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、これは、ラグ、ケース、風防、インデックスの記載がある文字盤、リューズ及びベゼル等より構成される腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の図形を表したものと認められる。
また、証拠調べ通知で提示した別掲2の事例のとおり、腕時計を取り扱う業界において、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分は、ラグ、ケース、風防、インデックスの記載がある文字盤、リューズ及びベゼル等より構成されていることが確認でき、本願商標あるいはこれに類似する図形が、請求人以外の者が取り扱う腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の形状に使用されている事例があることが認められる。
そうすると、本願商標は、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の形状と認められ、また、取引者、需要者において、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の構成上の特徴をもって、商品の出所を識別する標識として認識させるとはいえない。
よって、本願商標は、これをその指定商品中、「腕時計」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の図形を表したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 本願商標の使用による自他商品の識別性について
請求人は、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものではなく、仮に同条第1項第3号に該当するものであったとしても、同条第2項に該当する旨主張しているが、その前提として、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するものであることは、前述1のとおりである。
そこで、請求人の主張及び同人が令和3年3月3日付け手続補足書にて提出した第1号証ないし第248号証(なお、第223号証は重複して提出されており、第224号証が欠番となっているので、以下、2番目の第223号証を第224号証と読み替える。)、同年12月6日付け手続補足書にて提出した第247号証ないし第251号(なお、第247号証及び第248号は既に提出された証拠と証拠番号が重複するため、第247号証は249号証と第248号証は250号証と、第249号証は251号証と、第250号証は第252号証と、第251号証は第253号証と読み替える。)及び同4年8月8日付け意見書にて提出した第1号証ないし第7号証(枝番号含む。)(なお、第1号証~第7号証は既に提出された証拠と証拠番号が重複するため、第1号証~第7号証は、それぞれ、第254号証~第260号証と読み替える。)について、以下、本願商標の使用による自他商品の識別性(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について検討する。
なお、以下、第1号証ないし第260号証は、甲第1号証ないし甲第260号証と読み替え、例えば、甲第1号証を「甲1」のように、甲第○号証を「甲○」と省略して表示し、枝番号の全てを表示する場合は枝番号を省略する。
(1)商標法第3条第2項について
商標法第3条第2項が、同条1項3号等所定の商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品(役務)であることを認識することができるものについては、商標登録を受けることができるとする趣旨は、特定人が、当該商標を、その者の業務に係る商品(役務)の自他識別標識として、永年の間、他人に使用されることなく、独占的排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商品(役務)に係る取引界においては、事実上、当該商標の当該特定人による独占的使用が事実上容認されているといえるので、他の事業者にその使用の機会を開放しておく公益上の要請が乏しくなるとともに、当該商標が、自他商品(役務)識別力を獲得したことにより、商標としての機能を備えるに至ったことによるものと解される(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)10450号 平成19年4月10日判決参照)。
そこで、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するかについて、前記判決に照らし、以下、判断する。
(2)請求人の意見書1における主張について
ア 請求人について
請求人は、1875年にジュール=ルイ・オーデマ、エドワード・ピゲによって創業されたスイス連邦の腕時計メーカーであり、我が国及び米国を含む世界の高級腕時計市場において自社製品を販売している。
また、請求人は、腕時計の専門誌において「世界3大時計ブランドの一つに並び称される」(甲1)、「世界3大ブランドの一角を占めるオーデマ ピゲ」(甲2)、「時計業界で『世界3大ブランド』といえば、パテック、ヴァシュロン、オーデマ ピゲ。」(甲3)と紹介されているとおり、請求人及び同人の製品は日本国内においても極めて高い著名性を有している。
イ 腕時計「ロイヤルオーク」
請求人が1972年に発売した腕時計「Royal Oak(ロイヤルオーク)」(以下「本件製品」という。)は、当時18金よりも高価であったステンレススチールを採用した初めてのラグジュアリースポーツウォッチであり、発売以来今日に至るまでの40年以上にわたり、請求人の製品を代表するモデルとして我が国を含む世界各国の高級腕時計市場において高い評価を得ている。
そして、英国海軍の戦艦Royal Oak号の八角形の舷窓にちなんで採用された形状の3特徴は、本件製品の顕著な外観上の特徴として、日本国内はもとより、米国、カナダほかの世界の市場においても高度の著名性を獲得している。
形状の3特徴を全てを備えた腕時計は、本件製品以外にはなく、その独創的な形状は本件製品独自のものである。
ウ 我が国における本件製品の販売
我が国においても本件製品が発売された1972年以前から販売されている。
1991年まではスイスのデスコ・フォンシュルテス社が、1991年から2006年まではデスコ・フォンシュルテス社の日本法人である日本デスコ株式会社が、それ以降は請求人の日本法人であるオーデマピゲ株式会社が、我が国における請求人の輸入代理店となっている。
エ 本願商標の使用開始時期及び使用期間
本願商標に係る形状は、「時計界のピカソ」と称されるイタリア人時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタによってデザインされ、1972年に最初のモデルが発売された(甲220、甲222)。
本願商標は、形状の3特徴を施した点にあるところ、その使用に係る請求人の製品は「Royal Oak(ロイヤルオーク)」の名称で知られ、請求人のブランドを代表するモデルとして取引者・需要者に認識されている。
オ 使用地域
請求人は、東京、名古屋及び大阪に直営店である「オーデマ ピゲ ブティック」を構える他、東京に2か所、札幌、神戸、岡山、高松及び福岡に各1か所ある正規代理店を通じて本件製品をはじめとする自社製品を販売している。
カ 本件製品の販売実績
本件製品は、我が国において継続的に販売されており、2015年が45,360,186スイスフラン(約5,287,183,280円)、2016年が61,294,671スイスフラン(約7,144,506,851円)、2017年が72,944,995スイスフラン(約8,502,468,617円)、2018年が94,123,405スイスフラン(約10,971,024,086円)、2019年が109,646,028スイスフラン(約12,780,341,023円)及び2020年が49,649,051スイスフラン(約5,787,093,384円)の売上げがある(甲247)。
キ 本願商標にかかる商品の宣伝広告・雑誌記事
(ア)請求人は、本件製品について積極的に宣伝・広告を行ってきており、時計雑誌の他に、全国紙、週刊誌、女性向け雑誌やウェブサイト等、多数のメディアに広告を出稿している(甲1~甲245)。
1972年から現在に至るまで、時計雑誌、ファッション誌のみならず週刊誌・全国紙を含む多種の新聞・雑誌に少なくとも160回以上その広告又は紹介記事が掲載されている。
また、本件製品をはじめとする請求人の製品を宣伝するための展示会への出展、新製品の発表会、顧客を集めてのイベントやゴルフトーナメントのスポンサーシップといったイベントも数多く行っている(甲167、甲169、甲170、甲172、甲173、甲176、甲182、甲192、甲201、甲210、甲212、甲213)ほか、著名人にも請求人の製品の愛用者が多数存在する(甲189)。
(イ)本件製品を紹介した雑誌記事では、ほぼすべての記事に本件製品の写真が併せて掲載され、読者が本件製品の特徴を認識できるような態様で紹介されている。
また、本件製品を紹介した雑誌記事においては、「8角形のケースのベゼルに、特別に設計された8本のボールトが埋めこまれていて、同じく8角形のガラスを防水にして密閉して組み立てられている。」(甲5)、「特徴的な8角形のベゼル」(甲71)、「八角形のベゼル」及び「八本のスクリューでケースに固定された…」(甲77)、「元祖八角形ウォッチにして不朽の名作」(甲230)、「ゴールドに映えるブラック文字盤の『グランドタペストリー』も特徴のひとつ。」(甲225)、「ビスどめの八角形ベゼル,(略)アイコニックなデザインで」(甲235)のように本件製品の形状の特徴に言及したものが数多く見られる。
(ウ)本件製品についての我が国における宣伝・広告費は、2015年に466,289,341円、2016年に607,824,104円、2017年に609,500,679円、2018年に541,812,520円、2019年に406,754,000円、2020年に357,336,750円である(甲248)。
(3)請求人の審判請求書における主張について
ア 本願商標の形状のみが出所識別標識として認識されていないとの認定について
請求人の製造に係る腕時計の文字盤に表示されている「AP」、「AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet)」の文字は極めて小さく、相当の注意を払わなければ看取することは困難である一方で、本願商標は、請求人の製造に係る腕時計に接した需要者であれば必ず目にする形状の3特徴を有するものであるから、形状の3特徴は、文字盤に小さく表された文字よりもはるかに看者の目をひき、形状のみで十分に出所識別標識として機能する。
イ 需要者層の認定について
「ロイヤルオーク」は高級腕時計に属する価格帯の商品ではあるが、実際に高級腕時計を購入する者のみが本願商標に係る形状の特徴を看取できるわけではない。
雑誌・ウェブメディア等で「ロイヤルオーク」を目にした需要者は、その特徴ある形状に強く印象づけられ、本願商標に係る形状の特徴を以て請求人の商品を認識することができるのである。
このことは、「ロイヤルオーク」の形状を模倣した商品が実際に製造・販売されている事実や、税関において「ロイヤルオーク」の模倣品が数多く差し止められている実績があることからも明らかである(甲247)。
(4)事実認定
ア 請求人について
請求人は、1875年にジュール=ルイ・オーデマ、エドワード・ピゲによって創業されたスイス連邦の腕時計メーカーであり、我が国及び米国を含む世界の高級腕時計市場において自社製品を販売し、我が国では、東京、名古屋及び大阪に直営店である「オーデマ ピゲ ブティック」を構える他、東京に2か所、札幌、神戸、岡山、高松及び福岡に各1か所ある正規代理店を通じて本件製品をはじめとする自社製品を販売している。
ただし、我が国における請求人の直営店は3店舗、正規代理店も7店舗にすぎず、決して多数の店舗数とはいえない。
イ 本件製品について
請求人が1972年に発売した本件製品は、ステンレススチールを採用したスポーツウォッチであり、高級腕時計の価格帯の商品であることは確認できる。
なお、本件商標は、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の形状であるところ、請求人が本件製品と主張する商品は、バンド及び針(時針等)を含む腕時計であり、バンド及び針(時針等)を除く部分のみで取引されていることは請求人提出の全証拠からは確認することができない。
ウ 使用開始時期・使用期間及び使用地域
本件製品は、「Royal Oak(ロイヤルオーク)」の名称で1972年に最初のモデルが発売され(甲219~甲221)、現在は、請求人の直営店(3店舗)及び東京、名古屋、大阪、札幌、神戸、岡山、高松及び福岡の正規代理店で販売されていることは確認できる。
しかしながら、本件製品が販売される請求人の店舗の数は、国内で11店舗にすぎず、その店舗数は決して多数とはいえない。
エ 販売数量及び売上高
請求人は、本件製品の2015年ないし2020年の売上げが、2015年が45,360,186スイスフラン(約5,287,183,280円)、2016年が61,294,671スイスフラン(約7,144,506,851円)、2017年が72,944,995スイスフラン(約8,502,468,617円)、2018年が94,123,405スイスフラン(約10,971,024,086円)、2019年が109,646,028スイスフラン(約12,780,341,023円)及び2020年が49,649,051スイスフラン(約5,787,093,384円)の売上げがある(甲247)旨主張するが、甲第247号証は、請求人自身が作成し、売上げの数字のみが記載されているにすぎず、これを裏付ける証拠は何ら提出されていない。
また、請求人が主張する本件製品の売上げ規模が、「腕時計」を取り扱う業界においてどの程度の市場占有率であるのかが明らかではなく、他社の同種製品との比較もできない。
なお、本願商標は、腕時計のバンド及び針(時針等)を含まないものであるが、本件商標のようなバンド及び針(時針等)を含まない商品が実際に販売された事実を証明する資料は何ら提出されていない。
オ 宣伝広告について
請求人が提出した証拠によると、「Royal Oak(ロイヤルオーク)」の名称の本件製品が、1972年ないし2020年に発行された出版物やインターネット記事等で紹介されていることは確認できる(甲1~甲245)。
しかしながら、これらの紹介記事には、「Royal Oak」や「ロイヤルオーク」の文字、ややデザイン化された「AP」の文字や請求人の名称の一部である「AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet)」の文字が記載されていることが確認でき、本願商標のみが、実際に宣伝広告されていることは確認することができない。
また、請求人は、本件製品についての我が国における宣伝・広告費は、2015年に466,289,341円、2016年に607,824,104円、2017年に609,500,679円、2018年に541,812,520円、2019年に406,754,000円、2020年に357,336,750円である(甲248)と主張するが、他社の宣伝・広告費との比較ができないため、請求人の宣伝・広告費の多寡を確認することができない。
カ 需要者の認識
本件製品に関する需要者の認識度を示したアンケート調査等に関する証拠は提出されておらず、本件製品に関する需要者の認識度を客観的に評価することができない。
また、上記オのとおり、1972年ないし2020年に発行された出版物やインターネット記事等による本件製品の紹介記事は、「Royal Oak」や「ロイヤルオーク」の文字、ややデザイン化された「AP」の文字や請求人の名称の一部である「AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet)」の文字等とともに紹介されていることからすると、本願商標の形状のみが独立した識別標識として認識され、その機能を果たしているものとは認められない。
キ 類似する同種商品の存否
請求人が主張する形状の3特徴は、請求人以外の者においても、腕時計の機能や美感を向上させる目的で採用されているといえ、形状の3特徴を有する腕時計は、本件製品以外にも存在する。
ク 腕時計以外の時計に関する使用事実について
請求人が提出した証拠は、本願商標を商品「腕時計」について使用している事実のみを証明するものであって、本願商標が、腕時計以外の時計に使用されたことは確認することができない。
(5)判断
以上のとおり、請求人は、1875年に創業されたスイス連邦の腕時計メーカーであり、1972年に発売した本件製品は、ステンレススチールを採用したスポーツウォッチであり、国内11店舗で、本件製品をはじめとする自社製品を販売していること、本件製品は、1972年ないし2020年に発行された出版物やインターネット記事等で紹介されていることは確認できる。
しかしながら、本件製品が販売される請求人の店舗の数は、国内で11店舗にすぎず、その店舗数は決して多数とはいえないこと、バンド及び針(時針等)を有さない本願商標のみの構成よりなる腕時計が実際に取引された事実は確認できないこと、本件製品の売上げを裏付ける証拠は何ら提出されていないこと、また、本件製品の売上げ規模が、「腕時計」を取り扱う業界においてどの程度の市場占有率であるのかが明らかでなく、他社の同種製品との比較もできないこと、出版物やインターネット記事における本件製品の紹介記事には、「Royal Oak」や「ロイヤルオーク」の文字、ややデザイン化された「AP」の文字や請求人の名称の一部である「AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet)」の文字が記載されていることから、本願商標のみの構成よりなる腕時計が、実際に宣伝・広告されている事実を確認することができないこと、他社の宣伝・広告費との比較ができないため、請求人の宣伝・広告費の多寡を確認することができないこと、本件製品に関する需要者の認識度を示したアンケート調査等に関する証拠は提出されておらず、本件製品に関する需要者の認識度を客観的に評価することができないこと、本願商標が腕時計以外の時計に使用されていることが確認できないこと等からすると、本願商標が、指定商品「時計」に使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標は、形状の3特徴の組み合わせに独自性があり、形状の3特徴のうち1又は2のみを備えたものは「本願商標と近似する形状が普通に使用されている事実」を示すものではない旨主張する。
しかしながら、商品「腕時計」について、請求人が主張する形状の3特徴は、腕時計の機能や美感を向上させる目的で採用されたにすぎず、腕時計に施される形状の3特徴が自他商品の識別標識としての機能を有するとはいえないものである。
(2)請求人は、商品「腕時計」について、形状の3特徴を備えている例は、いずれも請求人の商品より後に販売が開始されたものであり、かかる模倣品の存在を以て「本願商標と近似する形状が普通に使用されている事実」と認定し、本願商標の登録可能性を否定する根拠とするのであれば、特許庁が模倣品の存在を認めこれを奨励するに等しい結果となりかねない旨主張する。
しかしながら、請求人以外の者の取り扱う腕時計に採用された形状の3特徴が、本件製品の模倣品であると客観的に判断し得る証拠は何ら提出されていない。
また、上記(1)のとおり、商品「腕時計」について、請求人が主張する形状の3特徴は、商品の機能や美感を向上させる目的で採用されるものと判断するのが相当であり、請求人以外の者が、形状の3特徴を腕時計に採択したとしても、これに接する需要者等が、本件製品の模倣品と認識するとは直ちにはいい難い。
そして、本願商標は、これをその指定商品中、「腕時計」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の図形を表したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであって、本願商標が、指定商品「時計」に使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできないことから、登録することができないと判断するのであって、「本願商標と近似する形状が普通に使用されている事実」のみをもって、本願商標の登録を否定するものではない。
(3)請求人の上記主張は、いずれも採用することができず、その他の請求人の主張も、採用するべき事情はない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-013234