2021-012326
炭化珪素部材の製造方法
- 審判番号
- 2021-012326
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-119870外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月14日
- 審決日
- 2022年09月07日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日本特殊陶業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人創成国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
1 手続の経緯
本件出願は、平成29年6月19日の出願であって、令和3年1月26日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年4月1日に意見書が提出されたものの、同年5月20日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年9月14日に請求された拒絶査定不服審判であって、同日付けで手続補正がなされたものである。
2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、令和3年9月14日になされた手続補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】半導体製造装置のための炭化珪素部材を製造する製造方法であって、少なくとも1つの炭化珪素焼結体の表面に中空流路用の凹部又は貫通孔が形成された複数の炭化珪素焼結体を準備する工程と、少なくとも前記中空流路用の凹部又は貫通孔を有する前記炭化珪素焼結体に対して酸素含有雰囲気で熱処理を施す工程と、続きを表示(全25行)前記熱処理が施された炭化珪素焼結体を含む前記複数の炭化珪素焼結体を互いに直接接合法により接合し、前記炭化珪素部材中の中空流路を画定する工程と、を含むことを特徴とする製造方法。【請求項2】前記熱処理を施す工程は、1000℃以上から1200℃以下の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。【請求項3】前記複数の炭化珪素焼結体を準備する工程は、炭化珪素成形体に対して前記中空流路用の凹部又は貫通孔を形成する工程と、前記炭化珪素成形体を焼成することにより前記炭化珪素焼結体を得る工程とを含み、前記熱処理の前の前記中空流路用の凹部又は貫通孔の内面を含む前記炭化珪素焼結体の表層を除去する工程を、さらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。【請求項4】前記炭化珪素部材は半導体基板が載置される載置面に複数の開口部を有する基板保持部材を構成する部材であり、前記複数の炭化珪素焼結体を準備する工程において、前記開口部と連通することとなる前記中空流路用の凹部又は貫通孔が形成された前記炭化珪素焼結体を準備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法。【請求項5】半導体製造装置のための炭化珪素部材を製造する製造方法であって、少なくとも1つの炭化珪素焼結体の表面に中空流路用の凹部又は貫通孔が形成された複数の炭化珪素焼結体を準備する工程と、少なくとも前記中空流路用の凹部又は貫通孔を有する前記炭化珪素焼結体に対してプラズマ処理を施す工程と、前記プラズマ処理が施された炭化珪素焼結体を含む前記複数の炭化珪素焼結体を、互いに直接接合法により接合し、前記炭化珪素部材中の中空流路を画定する工程と、を含むことを特徴とする製造方法。【請求項6】前記炭化珪素焼結体を準備する工程は、炭化珪素成形体に対して前記中空流路用の凹部又は貫通孔を形成する工程と、前記炭化珪素成形体を焼成することにより前記炭化珪素焼結体を得る工程とを含み、前記プラズマ処理の前に前記中空流路用の凹部又は貫通孔の内面を含む前記炭化珪素焼結体の表層を除去する工程を、さらに含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。【請求項7】前記炭化珪素部材は半導体基板が載置される載置面に複数の開口部を有する基板保持部材を構成する部材であり、前記複数の炭化珪素焼結体を準備する工程において、前記開口部と連通することとなる前記中空流路用の凹部又は貫通孔が形成された前記炭化珪素焼結体を準備することを特徴とする請求項5又は6に記載の製造方法。【請求項8】前記プラズマ処理は酸素プラズマ処理又はフッ素プラズマ処理であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の製造方法。」
3 原査定の理由
原査定の理由は、次のとおりである。
この出願の請求項1~8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1~2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(刊行物)
1 特開2009-78943号公報(以下、「引用文献1」という。)
2 特表2007-511911号公報(以下、「引用文献2」という。)
4 引用刊行物の記載事項及び引用発明
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(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の記載がある。なお、引用文献1記載の発明の認定に関する箇所に、当審で下線を付した。
「【技術分野】【0001】本発明は、炭化ケイ素セラミックス材同士をロウ材を介して接合する方法に関する。」
「【0003】従来、前記炭化ケイ素セラミックス材同士の接合は、両者の接合面間に、粒状、ペースト状または粉末状等のシリコンや銀ロウ等からなる接合材を介して、該接合材の融点以上の温度で熱処理することにより行われていた・・・(略)・・・【発明が解決しようとする課題】【0004】続きを表示(全18行)しかしながら、炭化ケイ素セラミックス材を細孔や溝等を有する面で接合させる場合は、上記のような従来の接合方法では、前記細孔や溝等の微細空間が、溶融したシリコンや銀ロウ等の侵入によって閉塞するため、このような細孔や溝等を維持した状態の接合体を得ることが困難であった。【0005】本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、細孔や溝等を有する複雑な形状の炭化ケイ素セラミックス材であっても、前記細孔や溝等を接合材により閉塞させることなく、接合体を得ることができる炭化ケイ素セラミックス材の接合方法を提供することを目的とするものである。【課題を解決するための手段】【0006】本発明に係る炭化ケイ素セラミックス材の接合方法は、炭化ケイ素セラミックス材同士を、シリコンを含むロウ材を用いて接合させる際、前記炭化ケイ素セラミックス材の非接合面に、予め、酸化膜を形成しておくことを特徴とする。上記接合方法によれば、細孔や溝等を有する複雑な形状の炭化ケイ素セラミックス材であっても、非接合面を酸化膜で被覆する工程を経るのみで、形成前記細孔や溝等をロウ材による接合材により閉塞することのない接合体を簡便に得ることができる。【0007】上記接合方法において、前記酸化膜は、炭化ケイ素セラミックス材の表面よりもロウ材が付着しにくい、すなわち、炭化ケイ素セラミックス材表面よりも濡れにくい、干渉色を示すような酸化膜として形成させるため、接合面をマスキングし、CVD法により、非接合面にのみ形成することが好ましい。あるいはまた、熱酸化法、CVD法またはプラズマ酸化法により、炭化ケイ素セラミックス材全体に酸化膜を形成した後、接合面の酸化膜のみ、研削またはエッチングにより除去して形成してもよい。【発明の効果】【0008】上述したとおり、本発明に係る炭化ケイ素セラミックス材の接合方法によれば、細孔や溝等を有する複雑な形状の炭化ケイ素セラミックス材であっても、前記細孔や溝等を接合材により閉塞させることなく、接合体を得ることができる。したがって、本発明に係る接合方法は、細孔や溝等を有するような接合面形状が複雑な定盤やエッチャー用チャンバ、真空チャック、ラッププレート等の半導体製造装置用部材の製造にも好適に適用することができる。」
「【実施例】【0014】以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。[実施例1]50mm×50mm×厚さ10mmの常圧焼結炭化ケイ素セラミックス材に、幅2mm、深さ2.5mmの溝1を3本形成し、図1に示すような形状の試料片を作製した。この試料片を熱酸化処理し、全面に厚さ200~250nmの酸化膜を形成した。そして、接合面2(図1の試料片の上面)を、平面研削盤で表面から厚さ0.5mm研削した。この試料片2枚を、接合面間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、0.01Torrの真空雰囲気中、1500℃で0.5時間熱処理し、図2に示すような接合体を作製した。上記のような接合体を50個作製し、それぞれについて、超音波画像装置により、シリコン(ロウ材)による溝の閉塞の有無を調べた結果、接合体50個のうち、溝がシリコンにより閉塞しているものは認めらなかった。」
「【図1】[図:0001389001000001.jpg]【図2】[図:0001389001000002.jpg]」
(2)引用文献1に記載された発明
ア 上記(1)の記載より、実施例1の接合体に注目すると、引用文献1(特に、【0014】参照。)には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「50mm×50mm×厚さ10mmの常圧焼結炭化ケイ素セラミックス材に、幅2mm、深さ2.5mmの溝1を3本形成して試料片を作製し、この試料片を熱酸化処理して全面に厚さ200~250nmの酸化膜を形成し、そして、接合面2を、平面研削盤で表面から厚さ0.5mm研削し、この試料片2枚を、接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、0.01Torrの真空雰囲気中、1500℃で0.5時間熱処理する、接合体の作製方法。」
5 対比・判断
5-1 請求項1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「常圧焼結炭化ケイ素セラミックス材」は、本件発明1の「炭化珪素焼結体」に相当する。
イ 引用発明の「接合体」は、「常圧焼結炭化ケイ素セラミックス材に、」「溝1を3本形成して試料片を作製し、」「この試料片2枚を、接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、」「熱処理」するもの、すなわち、「常圧焼結炭化ケイ素セラミックス材」の「試料片2枚」を「接合」したものであるから、本件発明1の「炭化珪素部材」に相当する。
ウ 引用発明の「接合体の作製方法」と、本件発明1の「半導体製造装置のための炭化珪素部材を製造する製造方法」とは、「炭化珪素部材を製造する製造方法」で共通する。
エ 引用発明の「幅2mm、深さ2.5mmの溝1」は、本件発明1の「凹部又は貫通孔」に相当する。また、引用発明の「試料片」は「2枚」あることから、「試料片」は少なくとも2枚(複数枚)「作製」されることは明らかである。
そうすると、引用発明の「50mm×50mm×厚さ10mmの常圧焼結炭化ケイ素セラミックス材に、幅2mm、深さ2.5mmの溝1を3本形成して試料片を作製」する事項と、本件発明1の「少なくとも1つの炭化珪素焼結体の表面に中空流路用の凹部又は貫通孔が形成された複数の炭化珪素焼結体を準備する工程」「を含む」事項とは、「少なくとも1つの炭化珪素焼結体の表面に」「凹部又は貫通孔が形成された複数の炭化珪素焼結体を準備する工程」「を含む」事項で共通する。
オ 引用発明は、「常圧焼結炭化ケイ素セラミックス材に、」「溝を」「形成し」た後に、「熱酸化処理」するものであるから、引用発明の「試料片を熱酸化処理して全面に厚さ200~250nmの酸化膜を形成」する事項と、本件発明1の「少なくとも前記中空流路用の凹部又は貫通孔を有する前記炭化珪素焼結体に対して酸素含有雰囲気で熱処理を施す工程」「を含む」事項とは、「少なくとも前記」「凹部又は貫通孔を有する前記炭化珪素焼結体に対して酸素含有雰囲気で熱処理を施す工程」「を含む」事項で共通する。
カ 引用発明の「試料片2枚を、接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、0.01Torrの真空雰囲気中、1500℃で0.5時間熱処理する」工程は、上記イで検討したとおり、「試料片2枚」を「接合」する工程である。
また、引用発明の「接合体の作成方法」は、「試料片を熱酸化処理し、全面に厚さ200~250nmの酸化膜を形成し」た後に、「接合面2を、平面研削盤で表面から厚さ0.5mm研削し、この試料片2枚を、接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、0.01Torrの真空雰囲気中、1500℃で0.5時間熱処理する」ものであるから、熱処理が施された「試料片2枚」を「接合」するものであるといえる。
そうすると、引用発明の「試料片2枚を、接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、0.01Torrの真空雰囲気中、1500℃で0.5時間熱処理する」事項と、本件発明1の「熱処理が施された炭化珪素焼結体を含む前記複数の炭化珪素焼結体を互いに直接接合法により接合し、前記炭化珪素部材中の中空流路を画定する工程」「を含む」事項とは、「熱処理が施された炭化珪素焼結体を含む前記複数の炭化珪素焼結体を互いに」「接合」「する工程」「を含む」事項で共通する。
キ 上記ア~カより、本件発明1と引用発明とは、
「炭化珪素部材を製造する製造方法であって、少なくとも1つの炭化珪素焼結体の表面に凹部又は貫通孔が形成された複数の炭化珪素焼結体を準備する工程と、少なくとも前記凹部又は貫通孔を有する前記炭化珪素焼結体に対して酸素含有雰囲気で熱処理を施す工程と、前記熱処理が施された炭化珪素焼結体を含む前記複数の炭化珪素焼結体を互いに接合する工程と、を含むことを特徴とする製造方法。」で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点1)
「炭化珪素部材」について、本件発明1は、「半導体製造装置のための」ものであるのに対し、引用発明は、「接合体」の用途が不明である点。
(相違点2)
「凹部又は貫通孔」について、本件発明1は、「中空流路用」のものであって、「複数の炭化珪素焼結体を互いに」「接合」することにより、「炭化珪素部材中の中空流路を画定する」ものであるのに対し、引用発明は、「幅2mm、深さ2.5mmの溝1」がどのような目的で形成されているかが不明である点。
(相違点3)
「複数の炭化珪素焼結体」の「接合」について、本件発明1は、「直接接合法により接合」するのに対し、引用発明は、「試料片2枚を、接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、0.01Torrの真空雰囲気中、1500℃で0.5時間熱処理する」ものである点。
(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
イ 引用発明は、「接合」について、「接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させ」るものであるから、本件発明1のように「直接接合法により接合」するものではない。
ウ ここで、新たに引用する特開2014-187213号公報に、「半導体集積回路の製造工程に用いられる露光装置や検査装置等の各種装置において、半導体ウェハ等の対象物2を真空吸着する真空チャック(吸着手段)として用いられる」「吸着部材1」(【0019】)における「例えば炭化珪素質焼結体等のセラミック焼結体からなる」「第1基体15」(【0024】)、及び、「第1基体15と同様のセラミック焼結体からなる」「第2基体18」(【0027】)の「接合」について、「接合剤10を介して」「接合した構成を例に説明したが」、「他の接合方法で接合されていてもよく、例えば、拡散接合で接合されていても構わない」(【0075】)と記載されているように、複数の炭化珪素焼結体の接合について、炭化珪素質焼結体を、接合剤を用いて接合することも、直接接合(特開2014-187213号公報の「拡散接合」がこれに相当。)により接合することも周知技術である。
エ 一方、引用発明は、「酸化膜」が、「炭化ケイ素セラミックス材の表面よりもロウ材が付着しにくい」(【0007】)ことを利用して、「炭化ケイ素セラミックス材同士を、シリコンを含むロウ材を用いて接合させる際、前記炭化ケイ素セラミックス材の非接合面に、予め、酸化膜を形成してお」(【0006】)き、「細孔や溝等を有する複雑な形状の炭化ケイ素セラミックス材であっても、前記細孔や溝等を接合材により閉塞させることなく、接合体を得ることができる」(【0005】)ようにしたものである。
オ すなわち、引用発明は、「炭化ケイ素セラミックス材同士」を「ロウ材を用いて接合する」こと、すなわち「ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて」接合することが前提となるものであって、当該「接合」にロウ材、すなわちペースト状のシリコンを用いることが必須である。
カ そうすると、上記ウのとおり、複数の炭化珪素焼結体の接合について、炭化珪素質焼結体を、接合剤を用いて接合することも、直接接合により接合することも周知技術であったとしても、引用発明において、「試料片2枚を、接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、0.01Torrの真空雰囲気中、1500℃で0.5時間熱処理する」事項に代えて、試料片2枚を直接接合法により接合することは、阻害要因があるといわざるを得ない。
キ したがって、引用発明において、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。そして、この点は、引用文献2を参酌しても変わりはない。
ク よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5-2 請求項2~4について
ア 請求項2~4は請求項1を引用するものであって、本件発明2~4は本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。
イ そうすると、本件発明2~4と引用発明とは、少なくとも相違点3と同様の相違点で相違するから、上記5-1で検討した理由と同様の理由により、本件発明2~4は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5-3 請求項5について
(1)対比
本件発明5と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「常圧焼結炭化ケイ素セラミックス材」は、本件発明5の「炭化珪素焼結体」に相当する。
イ 上記5-1の(1)のイと同様の理由により、引用発明の「接合体」は、本件発明5の「炭化珪素部材」に相当する。
ウ 引用発明の「接合体の作製方法」と、本件発明5の「半導体製造装置のための炭化珪素部材を製造する製造方法」とは、「炭化珪素部材を製造する製造方法」で共通する。
エ 上記5-1の(1)のエと同様の理由により、引用発明の「50mm×50mm×厚さ10mmの常圧焼結炭化ケイ素セラミックス材に、幅2mm、深さ2.5mmの溝1を3本形成して試料片を作製」する事項と、本件発明5の「少なくとも1つの炭化珪素焼結体の表面に中空流路用の凹部又は貫通孔が形成された複数の炭化珪素焼結体を準備する工程」「を含む」事項とは、「少なくとも1つの炭化珪素焼結体の表面に」「凹部又は貫通孔が形成された複数の炭化珪素焼結体を準備する工程」「を含む」事項で共通する。
オ 引用発明の「試料片2枚を、接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、0.01Torrの真空雰囲気中、1500℃で0.5時間熱処理する」工程は、上記上記5-1の(1)のイで検討したとおり、「試料片2枚」を「接合」する工程である。
そうすると、引用発明の「試料片2枚を、接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、0.01Torrの真空雰囲気中、1500℃で0.5時間熱処理する」事項と、本件発明5の「プラズマ処理が施された炭化珪素焼結体を含む前記複数の炭化珪素焼結体を互いに直接接合法により接合し、前記炭化珪素部材中の中空流路を画定する工程」「を含む」事項とは、「炭化珪素焼結体を含む前記複数の炭化珪素焼結体を互いに」「接合」「する工程」「を含む」事項で共通する。
カ 上記ア~オより、本件発明5と引用発明とは、
「炭化珪素部材を製造する製造方法であって、少なくとも1つの炭化珪素焼結体の表面に凹部又は貫通孔が形成された複数の炭化珪素焼結体を準備する工程と、前記複数の炭化珪素焼結体を、互いに接合する工程と、を含む製造方法。」で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点4)
「炭化珪素部材」について、本件発明5は、「半導体製造装置のための」ものであるのに対し、引用発明は、「接合体」の用途が不明である点。
(相違点5)
「凹部又は貫通孔」について、本件発明5は、「中空流路用」のものであって、「複数の炭化珪素焼結体を互いに」「接合」することにより、「炭化珪素部材中の中空流路を画定する」ものであるのに対し、引用発明は、「幅2mm、深さ2.5mmの溝1」がどのような目的で形成されているかが不明である点。
(相違点6)
本件発明5は、「少なくとも前記」「凹部又は貫通孔を有する前記炭化珪素焼結体に対してプラズマ処理を施す工程」「を含」み、その後「前記プラズマ処理が施された炭化珪素焼結体を含む前記複数の炭化珪素焼結体を」「接合」するのに対し、引用発明は、そのような工程を有することが特定されていない点。
(相違点7)
「複数の炭化珪素焼結体」の「接合」について、本件発明5は、「直接接合法により接合」するのに対し、引用発明は、「試料片2枚を、接合面2間に、ペースト状のシリコン(純度99%以上)を介在させて、0.01Torrの真空雰囲気中、1500℃で0.5時間熱処理する」ものである点。
(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑み、まず、相違点7について検討する。
イ 相違点7は相違点3と同様の相違点であり、引用発明において、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえないことは、上記5-1の(2)で検討したとおりである。
ウ そうすると、上記5-1の(2)で検討した理由と同様の理由により、引用発明において、相違点7に係る本件発明5の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
エ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5-4 請求項6~8について
ア 請求項6~8は請求項5を引用するものであって、本件発明6~8は本件発明5の発明特定事項を全て含むものである。
イ そうすると、本件発明6~8と引用発明とは、少なくとも相違点7と同様の相違点で相違するから、上記5-3で検討した理由と同様の理由により、本件発明6~8は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
6 むすび
以上のとおり、請求項1~8に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-012326