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商標拒絶査定不服審判

2021-011555

審判番号
2021-011555
法域
商標
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
商願2020-120003
請求日
2021年08月30日
審決日
2025年02月14日
公報発行日
2025年05月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】東宝株式会社
  • 【請求人代理人】菊池 徹
  • 【請求人代理人】菊池 新一
  • 【請求人代理人】松本 英俊
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 雅也
  • 審判官 吉田 聡一
  • 審判官 馬場 秀敏
分類
T18 .13 -WY (W28) / T18 .17 -WY (W28)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法3条1項3号商標法3条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、商標法第10条第1項、商標法第4条第1項第15号
データ出所
審決公報(XML)

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商願2020-120003拒絶査定不服審判事件についてした令和6年3月29日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和6年(行ケ)第10047号、令和6年10月30日判決言渡)があったので、更に審理の上、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。

理由

理 由 第1 本願商標及び手続の経緯 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第28類「縫いぐるみ,アクションフィギュア,その他のおもちゃ,人形」を指定商品とし、令和元年10月10日に登録出願された商願2019-131821に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同2年9月29日に立体商標として登録出願されたものである。 本願は、令和2年10月7日付けで拒絶理由の通知がされ、同年12月18日付けで意見書が提出されたが、同3年5月21日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年8月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 原査定の拒絶の理由の要旨 原査定は、本願商標は立体的形状よりなるところ、本願の指定商品との関係において、当該商品の形状を立体的に表したものであり、同種の商品がその形状として採用し得る立体的形状の範囲を超えているとはいえないものであるから、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、その商品の形状を表示したものと認識するにとどまり、単に商品の品質・形状を普通に用いられる方法で表示するものといえるため、商標法第3条第1項第3号に該当し、提出された証拠によっても、同条第2項に規定する要件を具備しない旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 第3 当審の判断 請求人が提出した甲第1号証ないし甲第39号証(枝番号を含む。)、請求人が裁判所に提出した甲第40号証ないし甲第80号証(枝番号を含む。)、検甲第1号証ないし検甲第3号証及び請求人の主張によれば、以下のとおり判断できる。 1 認定事実 (1)映画「ゴジラ」シリーズについて(甲52) 請求人は、昭和29年から令和5年までの69年間に、下記の映画「ゴジラ」シリーズ30作品を日本において製作・配給してきた(年の記載は公開年)。 ・昭和29年「ゴジラ」(第1作) ・昭和30年「ゴジラの逆襲」(第2作) ・昭和37年「キングコング対ゴジラ」(第3作) ・昭和39年「モスラ対ゴジラ」(第4作) ・昭和39年「三大怪獣 地球最大の決戦」(第5作) ・昭和40年「怪獣大戦争」(第6作) ・昭和41年「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」(第7作) ・昭和42年「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」(第8作) ・昭和43年「怪獣総進撃」(第9作) ・昭和44年「ゴジラ・ミニラ・ガバオラ オール怪獣大進撃」(第10作) ・昭和46年「ゴジラ対ヘドラ」(第11作) ・昭和47年「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」(第12作) ・昭和48年「ゴジラ対メガロ」(第13作) ・昭和49年「ゴジラ対メカゴジラ」(第14作) ・昭和50年「メカゴジラの逆襲」(第15作) ・昭和59年「ゴジラ」(第16作) ・平成元年「ゴジラ VS ビオランテ」(第17作) ・平成3年「ゴジラ VS キングギドラ」(第18作) ・平成4年「ゴジラ VS モスラ」(第19作) ・平成5年「ゴジラ VS メカゴジラ」(第20作) ・平成6年「ゴジラ VS スペースゴジラ」(第21作) ・平成7年「ゴジラ VS デストロイア」(第22作) ・平成11年「ゴジラ 2000 ミレニアム」(第23作) ・平成12年「ゴジラ×メガギラスG消滅作戦」(第24作) ・平成13年「ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃」(第25作) ・平成14年「ゴジラ×メカゴジラ」(第26作) ・平成15年「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ東京SOS」(第27作) ・平成16年「ゴジラ FINAL WARS」(第28作) ・平成28年「シン・ゴジラ」(第29作) ・令和5年「ゴジラ-1.0」(第30作) (2)ゴジラ・キャラクターの形状等(甲51、甲62~甲69、甲78~甲80) ア シリーズ第1作の「ゴジラ」は、ビキニ環礁での核実験による被ばく事故が社会問題化していた時代背景の下、近くの海底で眠っていた恐竜が目を覚まし、水爆の影響で異常発達し特殊な能力を得た「怪獣」となって日本に上陸するという想定で製作されたものである。 そこに登場するキャラクター「ゴジラ」は、概ね別掲2「フィギュア写真1」(甲78の1、甲78の2)の形状を有するものであり、体形、顔・頭部等の特徴は、請求人の主張する映画「ゴジラ」シリーズに登場するゴジラ・キャラクターに共通する特徴(以下「本件特徴」という。)を全て備えており、特に、複雑な陰影を醸し出す全身に刻まれたゴツゴツした岩肌のような無数のヒダは、水爆によって変異した深い傷跡を想起させる顕著な特徴であり(甲65)、背中から尻尾にかけて続くヒイラギの葉のような棘状の背びれ、眼光鋭い怒りの表情、太く盛り上がった眉などとともに、同種の怪獣キャラクター(甲58、甲76等)の中でも際立った特色となっている。 イ 第2作以降、「シン・ゴジラ」前までのシリーズに登場するゴジラ・キャラクターは、少しずつ形状を変えているものの、本件特徴を全て備える点を含め、上述した基本的な形状は踏襲されている。例えば、平成3年公開の「ゴジラ VS キングギドラ」(第18作)に登場するゴジラは概ね別掲3「フィギュア写真2」(甲79の1、甲79の2)の、平成16年公開の「ゴジラ FINAL WARS」(第28作)に登場するゴジラは概ね別掲4「フィギュア写真3」(甲80の1、甲80の2)の形状を有している。 ウ 映画「シン・ゴジラ」に登場するゴジラ・キャラクターは、劇中で数段階の形態変化を遂げているところ、本願商標は、そのメイン・キャラクターというべき第4形態の立体的形状を表したものである(以下、その形状を単に「シン・ゴジラの立体的形状」ということがある。)。 シン・ゴジラの立体的形状は、それ以前のゴジラ・キャラクターと比較すると、主な相違点として、頭部が小さくなり、前脚(腕)の細さが一層際立つ一方、尻尾はより太く長くなっているなど、全体のプロポーションに違いが生じているほか、背中から尻尾にかけての部分を中心に赤みがかった色彩が加わっている等の違いは見てとれるものの、本件特徴を全て備える点を含め、その基本的な形状はほぼ踏襲されているといえる。 なお、デザイン担当者自身、シン・ゴジラでは「原点回帰のデザイン」を採用したと述べている(甲7の9、甲7の12)。 (3)「ゴジラ」シリーズの商業的成功等(甲52、甲53、甲77) ア 昭和29年に始まった映画「ゴジラ」シリーズは、人間が中に入る縫いぐるみ(着ぐるみ)とビル街等のミニチュアセットを使って、迫力のある映像的リアリティを演出する特殊撮影技術が用いられ、「特撮映画」の草分けとして国民的人気を博した。観客動員数は、第1作「ゴジラ」の961万人を始めとして、多くの作品で数百万人を記録しており、全30作の累計観客動員数は令和6年6月時点で約1億2000万人に達している。 なお、これら映画の広告等には、請求人の「製作・配給」であること、「東宝系」の映画館で公開されていることが明記されていた(第1作の広告につき甲67参照)。 イ 令和元年7月までの映画「ゴジラ」シリーズのビデオグラムの売上数量(レンタルを除く)は、合計で約180万本、売上金額(卸値)は、約161億円である。また、令和2年1月~5月の映画「ゴジラ」シリーズのビデオグラムの売上数量(レンタルを除く)は、合計で約44万6000本に達しており、請求人の売上金額(卸値)は、約14億円に達している。雑誌にDVDの付録が付く「東宝特撮映画DVDコレクション」の「ゴジラ」シリーズ全65号に係る累積発行部数は約280万部に達している。 ウ 請求人は、多くの企業にゴジラ・キャラクターの商品化を許諾しているところ、平成28年3月以降の「ゴジラ」シリーズ全作品のゴジラのフィギュアの売上数量及び売上(上代ベース)は、それぞれ約551万個、約110億8000万円に上る(甲53)。なお、請求人は、商品化を許諾するに際して、被許諾者との間で、商品の仕様・デザイン等について請求人の監修・承認を受け、使用・デザインの改変を行う場合は改めて請求人の監修を受けるべきこと、商品及び宣伝・販売促進材料の一つ一つに著作権等表示「TM&(C)TOHO CO.,LTD.」。(審決注:(C)は「○」の中に「C」の文字を表したもの。以下「本件著作権等表示」という。)を付すべきこと等を内容とする使用許諾契約を締結し(一例として甲36)、量産品の商品本体(足の裏や尾など)や商品タグには、当該表示が付されている(甲78~甲80)。 このほか、「ゴジラ」シリーズのフィギュアの部品が付録につく雑誌「東宝怪獣コレクション」も販売され、テレビCM(甲38)やウェブサイト(甲39)で宣伝されている。 エ 請求人のシンボル的なモニュメントとなっている巨大なゴジラ像は、平成7年に日比谷シャンテ前に設置され、平成30年にTOHOシネマズ日比谷(1年の入場者約181万人)のロビーに移設されたもの、東京都世田谷区の東宝スタジオに平成19年に設置されたもの、平成17年に新宿東宝ビルの屋上に設置され話題を呼んだ巨大ゴジラの頭部など、一般人の目に触れる請求人の関連施設に恒常的に設置されてきた(甲54)。 オ 請求人が、国立国会図書館サーチキーワードを「ゴジラ」、書籍のタイトルを「ゴジラ」で検索したところ、令和6年5月31日時点で1469件の検索結果がヒットした。これら書籍の中には、ゴジラ・キャラクターの写真が掲載されているものも多く含まれている(甲56)。 (4)映画「シン・ゴジラ」について(甲5~甲7) ア 映画「シン・ゴジラ」は、往年のファミリー・子供向け路線から一転して政治色を前面に出した群像劇として、平成28年7月29日に公開された。新聞において全面広告が展開され(甲6)、その予告編は請求人の公式サイトで500万回に迫る再生回数を上げた(甲2)。 そうした結果、観客動員数569万人、興行収入82.5億円(同年の実写邦画部門第1位、日本映画の歴代でも第22位)という記録的な大ヒットとなり、同年の流行語大賞候補にも「シン・ゴジラ」がノミネートされた。 イ 同映画は平成29年11月12日に初めて地上波放送(テレビ朝日)でテレビ放映され、15.2%という高い視聴率を上げ、その後も現在まで、地上波放送、BS放送及びCS放送で繰り返し放送されてきた(甲55)。なお、テレビ朝日では、上記初めての地上波放送に合わせ、「ゴジラ総選挙2017」として、ゴジラ・シリーズに登場する怪獣の人気投票をウェブサイトで行い、その結果を特集番組で放映したが、この特集番組を紹介する記事では「日本人なら誰でも知る映画『ゴジラ』シリーズ」と紹介されている(甲9の7)。 ウ 映画「シン・ゴジラ」は、サブスクリプションサービス、レンタル型動画配信(TVOD)及び購入型配信(EST)など様々な形態の配信サービスで広く視聴されてきた(甲55)。また、同映画の宣伝のために、映画に登場するゴジラの模型が、毎日放送、パルコ、JRの駅等の公共の場や、請求人の実店舗で展示されていた(甲24、甲25)。 (5)本願商標に係る使用商品の状況 ア シン・ゴジラの立体的形状をかたどったキャラクター商品(すなわち、本願の指定商品「縫いぐるみ,アクションフィギュア,その他のおもちゃ,人形」につき、本願商標の立体的形状が使用されていると認められる商品。以下、「使用商品」という。)は、請求人自身又は請求人からライセンスを受けた複数の企業により販売され、平成28年から令和6年までの売上数量及び売上額(上代ベース)は、それぞれ約102万個、約26億5000万円である(甲53、甲77)。使用商品は、メーカーのサイトで直販されるほか、インターネットのショッピングサイトや、全国に展開する玩具専門店で販売され、また、全国的に有名な展示即売会に出品されることもある。これらの中には「東宝30cmシリーズ」や「東宝大怪獣シリーズ」と題するシリーズに属するものもある(甲1、甲15、甲16、甲17の1~9、甲21、甲26~甲32、甲35)。 イ 上記使用商品の中には、映画「シン・ゴジラ」に使用されたひな形のレプリカフィギュアを10万円近い高価格で受注販売するものもあり、こうしたものについては、量産品におけるような本件著作権等表示が付されているか明らかでないものの、少なくとも、販売サイトには、本件著作権等表示に準じた表示が付されている(甲1の4、甲1の5)。 ウ 使用商品の写真は「シン・ゴジラ」の劇場パンフレットのほか、一般情報誌、映画雑誌、エンターテインメント総合誌、フィギュア専門誌の広告や本文記事で紹介されている。劇場パンフレットの部数は43万6387部、雑誌の部数は5000部~20万部である(甲19~甲21)。 このほか、上記(3)ウの雑誌「東宝怪獣コレクション」第3号から第7号には、使用商品の部品が付録としてついており、これらを全て購入すると完成する仕組みになっている(甲39)。 (6)「ゴジラ」の文字商標 請求人と関係のない第三者が「ゴジラ」又はこれに類似する文字商標(「ゴジラ/GODZILLA」、「GUZZILLA/ガジラ」)の商標登録を受けていたところ、請求人の請求に係る複数の無効審判事件において、「『ゴジラ』の文字は請求人に係る映画のタイトル及び当該映画に登場する怪獣の名称として著名である」との判断が示され、商標法第4条第1項第15号の適用により無効審判請求を認容する審決がされている(無効2001-35302号(甲72)、無効2019-890045号(甲73))。また、同趣旨の拒絶査定例も存在する(甲74、甲75)。 (7)アンケート ア 請求人は、令和3年9月2日から同月3日にかけて、調査対象エリアを全国、調査対象を15歳~69歳の男女に設定した上で、有効回収規模1000サンプルとするアンケート(甲22、甲23)を実施した。 調査の方法は、本願商標の写真を見せて、当該写真の立体的形状を見たことがあるか(質問1)、質問1の写真の立体的形状は、何をモデルにしたフィギュアだと思うか(質問2)、フィギュアを購入するとして、何を一番の目安に選ぶか(質問3)、シン・ゴジラやゴジラがどのような姿・形の怪獣か知っているか(質問4)を質問し、回答させるものである。 イ 同アンケートによれば、自由回答である質問2において、「ゴジラ」又は「シン・ゴジラ」と答えた者が64.4%に及び、特に男性では70.8%となっている。また、選択式である質問4において、「映画(TV放映やDVD、配信を含む)を見たのでどんな姿、形かはわかる」とする回答1を選んだ者が35.4%、「映画は見ていないが、雑誌やCM、ウェブサイトでみて知っているので、どんな姿・形かはほぼわかる」とする回答2を選んだ者が21.3%に及んでいる。 2 商標法第3条第1項第3号該当性について (1)商標法第3条第1項第3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。・・・)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない旨を規定しているが、これは、同号掲記の標章は、商品の産地、販売地、形状その他の特性を表示、記述する標章であって、取引に際し必要な表示として誰もがその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合、自他商品・役務識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないことから、登録を許さないとしたものである。 商品の形状は、本来、商品の機能をより効果的に発揮させたり、美観を向上させるために選択されるものであるから、商品の形状からなる商標は、その形状が、需要者において、その機能又は美観上の理由から選択されると予測し得る範囲を超えたものである等の特段の事情のない限り、商品等の形状そのものの範囲を出るものでなく、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとして、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される。 (2)これを本件についてみるに、本願商標は、シン・ゴジラの立体的形状を表したものであり、請求人の主張する本件特徴を全て備えるものである(上記1(2)ウ)。 しかし、本願の指定商品を取り扱う業界においては、恐竜や怪獣(恐竜等をモチーフにした想像上の動物)をかたどった立体的形状からなる様々な商品が製造、販売されている実情が存在するところ、これらの立体的形状の中には、本願商標の形状が有する上記特徴にも劣らない際立った特徴的な造形を備えるものもみられる。こうした造形は、際立った特徴を有するものであっても、「縫いぐるみ、アクションフィギュア、その他おもちゃ、人形」としての機能又は美感上の理由から選択されたと解されるものであって、換言すれば、怪獣又は恐竜に係る商品自体の形状として採用されたにすぎないと認識されるものである。 本願商標の立体的形状に係る本件特徴も、世上一般的にみられる、恐竜や怪獣をかたどった立体的形状が有する上記特徴と本質的に異なるものではなく、指定商品に係る商品の形状そのものの範囲を出るものとまで認めることはできない。 そうすると、本願商標は、「縫いぐるみ、アクションフィギュア、その他おもちゃ、人形」という本願の指定商品の機能や、美観の発揮の範囲において選択されるものにすぎないというべきであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。 3 商標法第3条第2項該当性について (1)商標法第3条第2項該当性の判断に当たり、本願商標を使用したものと評価できる商品の対象範囲を最初に確定しておく必要がある。 上記1(2)ウで認定したとおり、シン・ゴジラの立体的形状は、それ以前のゴジラ・キャラクターと比較して、頭部が小さくなり、前脚(腕)の細さが一層際立つ一方、尻尾はより太く長くなっているなど、全体のプロポーションに違いが生じているほか、背中から尻尾にかけての部分を中心に赤みがかった色彩が加わっている等の違いがあり、両者を同一(実質的に同一)と認めることは相当でない。 しかし、商標法第3条第2項の「使用」の直接の対象はシン・ゴジラの立体的形状に限られるとしても、その結果「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる」に至ったかどうかの判断に際して、「シン・ゴジラ」に連なる映画「ゴジラ」シリーズ全体が需要者の認識に及ぼす影響を考慮することは、必要なことというべきである。 (2)以上の枠組みに従って判断する。 ア まず、映画「シン・ゴジラ」は、平成28年7月に公開されると、日本映画の歴代第22位にランクされる興行収入を上げる記録的な大ヒットとなり、本願商標に係る使用商品だけでも、売上数量102万個、売上額約26億5000万円を記録する(上記1(5)ア)など、本件審決時までの約8年間に、本願の指定商品に集中的に使用された事実が認められる。 イ 加えて、シン・ゴジラの立体的形状は、本件特徴を全て備える点を含め、それ以前のゴジラ・キャラクターの基本的形状をほぼ踏襲しているところ、当該基本的形状は、映画「シン・ゴジラ」の公開以前から、本願の指定商品の需要者である一般消費者において、請求人の提供するキャラクターの形状として広く認識されていたことが認められる。 すなわち、昭和29年に始まった映画「ゴジラ」シリーズは、その後60年以上の長きにわたり全30作にわたる新作を次々と公開し、累計観客動員数約1億2000万人を記録するなど、圧倒的な商業的成功を収めていること、これらの映画の広告等には、請求人の「製作・配給」であること等が明記されていたこと、この間の映画「ゴジラ」シリーズのビデオグラム及びゴジラのフィギュア商品の売上金額は、それぞれ百億円を大きく超えていること、上記フィギュア商品については、請求人から商品化の許諾を受けた第三者企業によって販売されているものも多いが、請求人が商品化の主体であることを示す本件著作権等表示が付されていたこと、請求人のシンボル的なモニュメントとなっている巨大なゴジラ像は、繁華な商業施設を含む都内の複数の場所に恒常的に設定されていることは、上記1で認定したとおりである。 ウ さらに、「ゴジラ」の文字商標は、請求人に係る映画のタイトル又は当該映画に登場する怪獣の名称として著名となっているところ(上記1(6))、「シン・ゴジラ」を含む「ゴジラ」シリーズでは、登場する怪獣のキャラクターに一貫して「ゴジラ」の名称が使用されている。 エ 本願の指定商品の需要者は一般消費者であると解されるところ、そうした需要者の認識としても、令和3年9月実施の全国の15歳~69歳の男女を対象とするアンケート調査において、本願商標の立体的形状の写真を示して「何をモデルにしたフィギュアだと思うか」との質問に対する自由回答で、「ゴジラ」又は「シン・ゴジラ」と回答した者が64.4%とされ、極めて高い認知度が示された(上記1(7))。この調査の対象者の選定、質問方法等に特段の問題は見当たらず、その回答結果は、シン・ゴジラの立体的形状の著名性を示すものといえる。 オ なお、出願人から許諾を受けた者による使用も、第三者による当該商標の使用態様が出願人によって適切に管理されており、需要者が出願人の商品であると認識し得るような場合には、商標法第3条第2項にいう「使用」に含まれると解すべきところ、請求人は上記1(3)ウのとおりライセンシーとの間に使用許諾契約を締結し、使用商品の形態も含めて監修するとともに、フィギュア類の出所が請求人であることを示す適切な管理をしている。本件著作権等表示が、当該商品が請求人の許諾に基づき製造されたことを示すことは特段の困難なく理解できるものである。 カ 以上を総合すれば、本願商標については、その指定商品に使用された結果、需要者である一般消費者が請求人の業務に係る商品であることを認識できるに至ったものと認めることができる。 4 まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものの、同法第3条第2項の要件を具備するものであり、商標登録を受けることができるものであるから、原査定は取消しを免れない。 その他、本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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