特許拒絶査定不服審判
2021-011429
内壁面の輪とその直下の底の窪みで花を支える上部が開いた三角形の花器
- 審判番号
- 2021-011429
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-029199外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年07月09日
- 審決日
- 2022年05月09日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】上村 博彬
- 分類
- P18 .121-WY (A47G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2018-29199「内壁面の輪とその直下の底の窪みで花を支える上部が開いた三角形の花器」拒絶査定不服審判事件〔令和元年8月8日出願公開、特開2019-130266、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月2日の出願であって、令和2年2月4日に手続補正書が提出され、令和3年1月28日付けで拒絶理由が通知され、令和3年3月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年5月21日付けで拒絶査定がされ、これに対して、令和3年7月12日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年5月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1に係る発明は、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<刊行物>
引用文献1:特開平8-10119号公報
第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「3つの角の内壁の上部に輪を1個ずつ水平に設けて、輪の直下の底に丸い窪みを1個ずつ設けた上部が開いた三角形の花器」
第4 引用文献1の記載事項及び引用発明
1.引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平8-10119号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)
ア 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】さらに、多くの花等を入れることができるように、細い開口部を二つ設けた花器も市販されているが、この花器もそれほど多くの花を飾ることができない。また、従来の水盤は植木鉢には併用できない。水盤を植木鉢に使用すると、排水孔がないので、根腐れしてしまう欠点がある。
【0004】本発明は、これ等の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、多くの花を立てて保持できると共に、植木鉢にも併用できる陶器製花器を提供することにある。」
イ 「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の陶器製花器は、前述の目的を達成するために下記の構成を備える。陶器製花器は、陶器で作られて上方を開口している花器本体1と、この花器本体1の底に配設されているスノコ2と、花器本体1の開口部に脱着自在に配設されて、複数個の貫通孔3Aが開口されている有孔板3と、花器本体1の開口部の内側に突出して設けられて、有孔板3を脱着自在に花器本体1の開口部に載置する載突起4とを有する。」
ウ 「【0013】花器本体1は、多くの花を飾ることができるように、さらに、植木鉢にも併用できるように、開口部を大きく開いた形状に成形している。
【0014】スノコ2は図4に示すように、花等の下端を挿入して定位置に保持できるように、線材を碁盤格子状に成形して隙間を設けたものである。スノコ2は陶器製で、花器本体1に連結して花器本体1と一緒に焼成されている。ただし、スノコ2は必ずしも陶器製とする必要はない。たとえばスノコ2は鉄製とすることもできる。スノコ2を花器本体1に固定したものは、スノコ2が底で移動するのを防止できる。ただ、鉄製のスノコ2は重いので、必ずしも花器本体1に連結する必要はない。花器本体1の底に置いて使用することもできる。図1に示すスノコ2は、中央を上に凸に湾曲させている。この形状のスノコ2は、スノコ2と花器本体1の底との間に隙間を設けることができるので、植木鉢として使用するときに、水を蓄える空隙を広くできる特長がある。
【0015】有孔板3は花器本体1の載突起4に載置されて、花器本体1の開口部に水平に装着される。有孔板3は、複数の貫通孔3Aを設けた陶器製の板である。貫通孔3Aは花を挿通できるように、好ましくは内径を約1cmとしている。ただし、貫通孔3Aは0.5~3cmの大きさにすることもできる。有孔板3もスノコ2と同じように、必ずしも陶器製とする必要はない。金属製、プラスチック製とすることもできる。有孔板3は、花器を水盤として使用するときは、載突起4に載せて花器本体1の開口部に水平に配設する。植木鉢に使用するときは、図2に示すように、花器本体1の内部に入れて底に配設する。したがって、有孔板3の外形は、載突起4の間から花器本体1の内部に挿入できる大きさに設計される。
【0016】さらに、有孔板3の下面は、スノコ2の上面とは異なる曲率半径で湾曲している。この形状の有孔板3は、図2に示すようにスノコ2の上に載せると、スノコ2に密着することがなく、スノコ2との間に広い空隙ができる。スノコ2と有孔板3との間に空隙ができる陶器製花器は、植木鉢として使用するときに、ここに多量の水が蓄えられる特長がある。このため、植木鉢として使用するときに、土の排水を良くして根腐れを効果的に防止できる特長がある」
エ 「【0018】次に、陶器製花器の使用方法を説明する。陶器製花器を水盤として使用するには、図1に示すように、花器本体1の載突起4の上に有孔板3を装着し、花器本体1に適量の水を入れる。有孔板3の貫通孔3Aに花の茎を挿入し、茎の下端をスノコ2の隙間に挿入する。この状態で花の茎は、下端と中間の二カ所が保持されて倒れることなく立てて保持される。
【0019】さらに、陶器製花器は、水盤として優れた機能を有するだけでなく、植木鉢としても極めて優れた機能を備える。陶器製花器を植木鉢として使用するには、図3に示すように、花器本体1の載突起4に載置されていた有孔板3を、花器本体1の開口部から外し、載突起4を設けた花器本体1の開口部から花器本体1の内部に挿入してスノコ2の上に載置する。有孔板3の上に培養土を入れ、花草木を栽植する。このとき、花器本体1の底部には、スノコ2と有孔板3とによって、多くの空隙ができるので、花草木の根部が気密的窒息状態になることなく、花草木は極めて健全旺盛に育成する。」
オ 引用文献1には、下に示す【図1】(左側の図)、【図2】(中央の図)、【図4】(右上の図)及び【図5】(右下の図)が記載されている。
[図:0001385033000001.jpg]
カ 上記ウの【0015】、エの【0018】の記載事項、上記オの【図1】及び【図5】の図示内容から、有孔板3に、花の茎を挿入するための複数の円形の貫通孔3Aを設けていることが理解できる。
キ 上記ウの【0014】、エの【0018】の記載事項、上記オの【図1】及び【図4】の図示内容から、有孔板3の複数の円形の貫通孔3Aの下方に配置されて花器本体1の底に固定されたスノコ2に、花の茎の下端を挿入するための複数の貫通孔を設けていることが理解できる。
2.引用発明
上記1.を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「花器本体1の開口部の内側に突出して設けられた載突起4に、花の茎を挿入するための複数の円形の貫通孔3Aを設けた有孔板3を脱着自在に載置し、
前記有孔板3の前記複数の円形の貫通孔3Aの下方に配置されて前記花器本体1の底に固定されたスノコ2に、花の茎の下端を挿入するための複数の貫通孔を設けた、
前記花器本体1の上方が開口している陶器製花器」
第5 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「花器本体1の開口部」は本願発明の「上部」に相当し、以下同様に、「花器本体1の底」は「底」に、「花器本体1の上方が開口している」は「上部が開いた」に、それぞれ相当する。
引用発明の「花器本体1の開口部の内側に突出して設けられた載突起4に、花の茎を挿入するための複数の円形の貫通孔3Aを設けた有孔板3を脱着自在に載置し」との事項と、本願発明の「3つの角の内壁の上部に輪を1個ずつ水平に設けて」との事項とは、「上部に複数の丸孔を設けて」という限りにおいて一致する。
引用発明の「前記有孔板3の前記複数の円形の貫通孔3Aの下方に配置されて前記花器本体1の底に固定されたスノコ2に、花の茎の下端を挿入するための複数の貫通孔を設けた」との事項と、本願発明の「輪の直下の底に丸い窪みを1個ずつ設けた」との事項とは、「前記丸孔の下方に複数の窪み又は孔を設けた」との事項という限りにおいて一致する。
引用発明の「花器本体1の上方が開口している陶器製花器」と、本願発明の「上部が開いた三角形の花器」とは、「上部が開いた花器」という限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「上部に複数の丸孔を設けて、前記丸孔の下方に複数の窪み又は孔を設けた上部が開いた花器」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
丸孔、窪み又は孔、花器が、
本願発明では、それぞれ、「3つの角の内壁の」上部に「1個ずつ水平に」設けた「輪」、「輪の直下の底」に「1個ずつ」設けた「丸い窪み」、「三角形の」花器であるのに対して、
引用発明では、それぞれ、花器本体1の開口部の内側に突出して設けられた載突起4に脱着自在に載置された有孔板3に設けられた花の茎を挿入するための複数の円形の貫通孔3A、前記有孔板3の前記複数の円形の貫通孔3Aの下方に配置されて前記花器本体1の底に固定されたスノコ2に設けられた花の茎の下端を挿入するための複数の貫通孔、三角形とはいえない陶器製花器である点。
2.判断
上記相違点について検討する。
引用文献1には、陶器製花器を「三角形の」花器とすること、この三角形の「3つの角の内壁の」上部に「輪を1個ずつ水平に」設けること、及び、この「輪の直下の」底に「丸い窪みを1個ずつ」設けることについて記載も示唆もされておらず、これらの事項が周知技術や技術常識であったと認め得る証拠もないことから、引用発明から、直ちに、「三角形の」花器とすること、この三角形の「3つの角の内壁の」上部に「輪を1個ずつ水平に」設けること、及び、この「輪の直下の」底に「丸い窪みを1個ずつ」設けることとする動機は見あたらない。
また、引用発明の有孔板3に設けられた花の茎を挿入するための複数の円形の貫通孔3Aについて検討するに、引用発明は、「植木鉢にも併用できる陶器製花器を提供する」(上記「第4」1.ア)という課題の解決手段として、陶器製花器を水盤として使用するときに「花器本体1の載突起4の上に」装着し、植木鉢に使用するときに「花器本体1の内部に挿入してスノコ2の上に載置する」(上記「第4」1.エ)という2通りの使用形態が可能な有孔板3を採用したものであり、この有孔板3は、陶器製花器を植木鉢に使用するときに「スノコ2の上に載せると、スノコ2に密着することがなく、スノコ2との間に広い空隙ができ」、「植木鉢として使用するときに、ここに多量の水が蓄えられる」(上記「第4」1.ウの【0016】)という効果を奏するものである。そうすると、引用発明において、花の茎を挿入するための複数の円形の貫通孔3Aを、有孔板3に設けることに代えて、花器本体1の開口部の内側の内壁に設けるようにした場合、陶器製花器を植木鉢にも併用できなくなることから、そのような改変を引用文献1に接した当業者が試みることには阻害要因があるといえる。
さらに、引用発明のスノコ2に設けられた花の茎の下端を挿入するための複数の貫通孔について検討するに、引用文献1には、「スノコ2と花器本体1の底との間に隙間を設けることができるので、植木鉢として使用するときに、水を蓄える空隙を広くできる」(上記「第4」1.ウの【0014】)ことが記載されていることから、引用発明において、花の茎の下端を挿入するための複数の貫通孔を、複数の窪み(互いに独立した有底の凹部)に変更した場合や、さらに、スノコ2を使用せずに花器本体1の底に複数の窪みを直接設けるようにした場合には、花器本体1の底の上方に所定の大きさの隙間を設けることができず、植木鉢として使用するときに、水を蓄える空隙を広くできなくなることから、そのような改変を引用文献1に接した当業者が試みることにも阻害要因があるといえる。
そして、本願発明は、引用発明にない上記相違点に係る本願発明の特定事項を備えることで、「下の輪がなくなり楽に洗える」ようになるという特有の作用効果を奏するものである。
したがって、本願発明は、原査定で引用された引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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