商標拒絶査定不服審判
2021-011209
ウエルカムヨーコソチバニアンシティイチハラ、ウエルカムヨーコソチバニアン、ウエルカム、ヨーコソチバニアン、チバニアン、シティイチハラ
- 審判番号
- 2021-011209
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-094561
- 請求日
- 2021年08月23日
- 審決日
- 2022年07月25日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社風見酉
- 【請求人代理人】高橋 昌義
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 淳
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T18 .22 -Z (W30)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-94561拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年7月31日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年12月15日付け:拒絶理由通知
令和3年 1月25日 :意見書の提出
令和3年 5月20日付け:拒絶査定
令和3年 8月23日 :審判請求書の提出
第2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第30類「コーヒー,コーヒー豆」を指定商品として登録出願されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由(要点)
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、その構成中の「チバニアン」の文字は、約77万~12万9千年前までの地球における地質年代の名称を表す語であり、平成29年6月に、国立極地研究所や茨城大などの研究チームが「チバニアン」を日本の地層として国際地質科学連合に登録申請し、令和2年1月に、上記の地質年代の区切りの規準となる「国際標準模式地」の名称として、日本の地層として初めて認定されたものである。
また、チバニアンの「国際標準模式地」である千葉県市原市の「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」は、平成30年10月15日に、国の天然記念物に指定され、「チバニアン」の登録申請の際の地層及びその周辺地域は、紅葉の名所として知られる養老渓谷や温泉、小湊鉄道のトロッコ列車など様々な観光資源も存在することから、地元では、チバニアンビジターセンターをオープンさせるなどして、「チバニアン」に関連する観光振興に力を入れている実情にある。
そうすると、「チバニアン」の語は、地質年代の一名称として、我が国において広く一般に認識されており、また、「チバニアン」の登録申請の際の地層は、少なくとも我が国において著名な場所であって、当該地層及びその周辺地域が観光地として、広く一般に認識されているというのが相当である。
ところで、新たに世界遺産や国の天然記念物に指定された場所などが、新聞、ウェブサイト等の報道によって広く知られ、多くの者が当該地を訪れることにより結果として著名な観光地となることは一般的なことといえ、かつ、このような文化的所産の名称等を利用した地域興し等は盛んに行われているから、このような名称は、その知名度により強い顧客吸引力を有するものであり、それを商標として使用したいとする者も少なくない。
そして、本願の指定商品に係る食品分野においては、一般に観光名所等の名称やその地理的な名称を付した各種の土産物が販売されている実情がある。
してみれば、本願商標を、一私人である出願人に、本願の指定商品について独占使用を認めることは、「チバニアン」と称する地層に関連した観光振興や地域興しなどの公益的な施策の遂行を阻害し、また、各種の土産物を取り扱う事業者に対して無用の混乱を招くおそれがあるものというのが相当であるから、社会公共の利益に反するおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)本願商標
本願商標は、別掲1のとおり、周縁部に白色の細線が配された青色図形(以下「青色図形」という。)内の上部に、「Welcome」及び「ようこそ」の文字(両者の間には波線が表されている。)並びにその右側にカップ等と思しき図形を小さく表し、中央部に、大きく顕著に「チバニアン」の文字(「ン」の文字には、青色の化石状の図形が表されている。)の文字を表し、下部には、「City市原」の文字を「チバニアン」の文字に比して小さく、「781」の数字をより小さく表してなるものであり、「Welcome」、波線及び「781」は黄色で、その他の構成部分は白抜きで表されている。
そして、本願商標の構成中、青色図形は、背景図形の一類型として認識され、「Welcome」及び「ようこそ」の文字は、他人の訪問などを歓迎する挨拶語であって、例えば観光地の土産物等にしばしば用いられる語でもあり、「City市原」の文字は、千葉県市原市を看取させるものである。また、カップ等と思しき図形や「781」の数字は、何らかの図形や数値を表したものと認識されるにとどまるものである。
一方、本願商標の構成中、中央部に大きく顕著に表された「チバニアン」の文字は、別掲2(1)のとおり、約77万4千年前から12万9千年前までの地球における地質年代の名称を表す語であって、当該文字は、視覚上、その他の構成部分に比して、太字で大きく表されていることから、取引者、需要者に対して、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部であるとみるのが自然である。
(2)我が国における「チバニアン」の語の周知性
ラテン語で「千葉時代」を意味する「チバニアン」の語は、遅くとも、国立極地研究所や茨城大学などの研究チームが、2017年6月7日に、千葉県市原市の養老川沿いにある地層(以下「養老川流域地層」という。)を、地質年代の区切りの基準となる「国際標準模式地」として国際地質科学連合(以下「IUGS」という。)に登録申請した頃から、地質年代の一名称ないしその名称の候補として、新聞報道やウェブサイト上の記事等によって広く報じられた。IUGSにおいて上記申請を審査中の2018年10月15日には、養老川流域地層は、「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」の名称で、我が国の天然記念物に指定され、その後、2020年1月に、IUGSで、約77万4千年前から12万9千年前までの地質年代を「チバニアン」と命名することが決まり、養老川流域地層は、日本の地層として初めて「国際標準模式地」に認定された。
「チバニアン」命名の由来となった養老川流域地層を擁する市原市では、国の天然記念物指定や、「チバニアン」命名を受けて、養老川流域地層を新たな観光資源と捉え、その周辺地域に存在する養老渓谷や温泉、小湊鉄道のトロッコ列車等の様々な観光資源や、2019年12月にオープンした「チバニアンビジターセンター」などと共に、「チバニアン」に関連する観光振興に力を入れており、千葉県も観光振興の効果に期待を寄せている実情がある。
そうすると、「チバニアン」の語は、地質年代の一名称として、我が国において広く一般に認識されており、また、養老川流域地層は、我が国において著名な場所であって、養老川流域地層及びその周辺地域は、観光地として、広く一般に認識されているというのが相当である(以上、別掲2及び別掲3参照。)。
(3)我が国における「チバニアン」の語の使用の実情
新たに世界遺産や国の天然記念物に指定された場所などが、新聞、ウェブサイト等の報道によって広く知られ、多くの者が当該地を訪れることにより、結果として著名な観光地となることは一般的であり、このような観光資源を利用した地域興し等が各地で行われていることも、一般に知られているところである。そして、これらの地では、観光名所の名称やその地理的な名称を付した各種の土産物が販売されており、本願の指定商品に係る食品分野においても、同様の実情がある。
そして、養老川流域地層を擁する千葉県市原市及びその周辺地域でも、請求人以外の者により、バームクーヘン、パン、ピーナッツ及びキムチといった各種の食品に「チバニアン」の語が使用されていることが認められる(別掲4参照)。
(4)「チバニアン」の語と本願の指定商品との関係
「チバニアン」の語は、上記(2)のとおり、地質年代の一名称として、我が国において広く一般に認識されているため、強い顧客吸引力を有するといえる。
そして、上記(3)のとおり、千葉県においても、複数の他人が、「チバニアン」の語をバームクーヘン、パン、ピーナッツ及びキムチといった各種の食品に付し、使用している事実が認められるところ、本願の指定商品も、食品分野のものである。
上記事情を考慮すると、養老川流域地層を擁する千葉県市原市及びその周辺地域の食品を始めとする各種商品を取り扱う事業者が、「チバニアン」の語を、それぞれの商品について使用を欲するものと考えられる。
(5)請求人による本願商標の出願の目的
請求人の主張によれば、請求人は、市原市に所在し、観光振興の公益的な施策に積極的に寄与している事業者であって、株式会社JTBが開催するチバニアンの観光プラン「チバニアンプライベートガイドプラン」の記念品として、本願商標が付されたコーヒーが提供されているとしている。
(6)判断
以上によれば、「チバニアン」の語は、約77万4千年前から12万9千年前までの地球における地質年代の名称を表す語であり、当該名称は、2020年1月にIUGSで認定されたものであるところ、認定を受けるための申請の段階から、「チバニアン」に関する内容の新聞報道等が多数行われており、当該語は、地質年代の一名称として、我が国において広く一般に認識されているため、強い顧客吸引力を有するといえる。そして、千葉県市原市の養老川流域地層は、「チバニアン」命名の由来となった地として、我が国において著名な場所であって、観光地として、広く一般に認識されているものと認められる。
また、市原市では、養老川流域地層を新たな観光資源と捉え、「チバニアン」に関連する観光振興に力を入れているところ、一般的に観光地では、食品を含めた各種の土産物が販売されており、市原市及びその周辺地域でも、既に請求人以外の者によって、各種の食品に、「チバニアン」の語が使用されている実情が認められる。
そして、本願の指定商品は食品であること、及び上記の実情を踏まえれば、本願の指定商品の分野において、今後更に同地域の多くの事業者が、「チバニアン」の語の使用を欲する可能性は極めて高いというのが相当である。
そうすると、たとえ、請求人が市原市の観光振興に寄与している事業者であって、本願商標が付されたコーヒーがチバニアンに係る観光の記念品として提供されているとしても、上記事情を総合的に勘案すれば、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部である「チバニアン」の文字を含む本願商標を、一私人が自己の商標として登録し、独占的に使用することは、「チバニアン」を活用した観光振興等の公益的遂行を阻害するおそれがあり、さらに、「チバニアン」に係る観光地に関連した各種の土産物を取り扱う事業者や、今後「チバニアン」の語の使用を欲するであろう多くの事業者に対して、無用の混乱を招くおそれがあると判断するのが相当である。
してみれば、このような事情を招くおそれがある本願商標を、請求人の商標として登録を認めることは、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものというべきである。
したがって、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標は「チバニアン」の文字を含むものの、これ以外の要素が多数入っていることから、本願商標を請求人が商標権として取得したとしても、単なる「チバニアン」の文字のみの商標とは明確に異なるものであり、「チバニアン」の文字を独占するものではないこと、それゆえ、観光振興等の公益的な施策の遂行を阻害することはなく、各種土産物を取り扱う事業者に対して混乱を招く恐れもない旨主張する。
しかしながら、商標権は、指定商品又は指定役務について登録商標を独占的に使用することができる権利であるとともに、第三者に対しても、同一又は類似の商標の使用を禁止することができる権利でもある。上述のとおり、本願商標は、強い顧客吸引力を有する「チバニアン」の文字を要部とするものであることからすれば、これを、特定の者に、商標権として商標登録を認めることは、「チバニアン」を活用した観光振興に注力する千葉県市原市をはじめ、各種の土産物を取り扱う事業者や、今後、当該語の使用を欲するであろう事業者に係る商品(コーヒー、コーヒー豆)について、「チバニアン」の語の使用を制限することとなる。
そうすると、本願商標をその指定商品について登録することは、指定商品についての使用の独占をもたらすことになり、観光振興等の公益的遂行を阻害するおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては社会公共の利益に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。
(2)請求人は、コーヒー、コーヒー豆の類似群コードを有するとする過去の商標登録の存在を挙げ、いずれの出願の経過を見ても、商標法第4条第1項第7号の拒絶理由は通知されておらず、現状のチバニアンよりも極めて著名な観光地であるにも関わらず登録になっており、本願商標のように、一部でも観光名所等の名称が入ってしまっていれば「観光振興や地域おこしなどの公益的な施策の遂行を阻害し、また、各種の土産物を取扱事業者に対して無用の混乱を招くおそれがある」と認定するのであれば、極めて不合理な判断である旨主張する。
しかしながら、請求人の挙げる「富士山\ありがとう」(登録第5886551号商標)及び「池間島\ハート岩」(登録第5595954号商標)の登録例は、いずれも役務を指定するものであり、「南極点」(登録第1978981号商標)の登録例は、指定商品が「菓子及びパン」であり、それぞれ本願の指定商品とは相違する。
また、指定商品に「コーヒー」又は「コーヒー豆」を含む登録例(「鬼の洗濯板」(登録第5681431号商標)、「富士山」(登録第5050829号商標)、「富士五湖」(登録第5224834号商標)、「日本海」(登録第5402358号商標))についても、それぞれ、宮崎県宮崎市青島をとりまく波状岩の通称、山の名称、山梨県側の富士山麓に位置する5つの湖の総称、及び海の名称である。一方で、本願商標の要部である「チバニアン」の文字は、地質年代の名称であるし、それぞれの名称が我が国において広く一般に認識されるようになった経緯等の事情が異なることに加え、商標法第4条第1項各号所定の商標登録を受けることができない商標に当たるかどうかを判断する基準時は、原則として登録査定時である(最三小平成16年6月8日判決 裁判集民事214号373頁)。
よって、請求人の挙げる上記の登録例は、本願商標の商標法第4条第1項第7号の該当性を判断する上で参考とすべき事例としては適切とはいえず、同号に該当するか否かは、個別かつ具体的に判断されるべきものであるから、上記の登録例の存在によって本件の判断が左右されるものではない。
(3)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり、審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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