商標拒絶査定不服審判
2021-010122
ヤマダウエブドットコム、ヤマダウエブコム、ヤマダウエブ、ヤマダ
- 審判番号
- 2021-010122
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2019-142804
- 請求日
- 2021年07月29日
- 審決日
- 2022年02月03日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ヤマダホールディングス
- 【請求人代理人】羽鳥 亘
- 【請求人代理人】柿原 希望
- 審判長/審判官
- 審判長 齋藤 貴博
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 綾 郁奈子
- 分類
- T18 .16 -Z (W3537)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項6号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第6号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2019-142804拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「YAMADA Web.com」の文字を標準文字で表してなり、第35類及び第37類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、令和元年11月11日に登録出願されたものであり、その後、指定役務については、同2年11月12日受付け手続補正書により、別掲1のとおりに補正されたものである。
本願は、令和2年11月16日付けで拒絶理由の通知がされ、同年12月15日に意見書が提出されたが、同3年4月26日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年7月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、『YAMADA Web.com』の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の『YAMADA』の文字は、ありふれた氏の一つであると認められる『山田』の文字をローマ字で表したものと容易に理解されるものである。また、その構成中の『Web.com』の文字は、例えば『○○web.com』の表示でウェブサイトのアドレスとして広く使用されているものを直ちに認識させるものである。そうすると、本願商標は、これをその指定役務に使用しても、これに接する需要者に、ありふれた氏の一つと認められる『YAMADA』の文字とウェブサイトのアドレスを結合したものと理解させるにとどまり、全体としても、自他役務を識別する機能を発揮せず、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。また、本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できるものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、「YAMADA Web.com」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、前半の「YAMADA」の文字部分は、ありふれた氏である「山田」の文字をローマ字で表したものと直ちに看取されるものである。また、その構成中、後半の「Web.com」の文字部分は、原審で示した事例(別掲2)に加え、別掲3のとおり、インターネットにおける情報の所在を表すURLの一部として普通に使用されている文字であり、さらに、URLの一部に氏が使用される実情も認められるところである。
そして、本願指定役務は主に各種の小売等役務及び工事、修理及び保守に関する役務であり、インターネットを通してこれらの役務が取り扱われることは容易に想定されるものである。
そうすると、「YAMADA Web.com」と表した本願商標を、その指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「YAMADA」という氏と「Web.com」の文字を含む構成からなるURLの一部であると理解、認識するにすぎないものというべきであって、本願商標は、これをその指定役務について使用しても、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであって、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標と認められる。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)本願商標の使用による識別性について
請求人は、本願商標は本願に係る指定役務について使用された結果、請求人を示すものとして、その取引者、需要者の間に広く認識されていると主張し、原審において、資料1ないし資料12を、当審において、資料13ないし資料19(枝番号を含む。)を提出している。これらの証拠は、番号を甲第1号証ないし甲第19号証と読み替える。
以下、請求人の主張及び同人提出の証拠について検討する。
ア 本願商標の使用状況について
(ア)請求人は、「ヤマダウェブコム」という名のオンラインショップを2013年12月3日にオープンし(甲1)、当該オンラインショップのアクセス数は、2016年から2019年までは、1月あたり250万から450万アクセス、2020年から増加し、同年10月には1000万アクセスを超えている(甲2)。
(イ)本願商標である「YAMADA Web.com」は、インターネットで注文し実店舗で受け取るなど「インターネットと店舗の融合」をコンセプトにした請求人の実店舗(以下、「実店舗」という。)の名称とされ、2019年11月から、仙台センター店、江東新砂店、つくば店、武蔵村山店、神戸北店などが順次オープンし(甲3)、看板にはデザイン化された「YAMADA」の文字、上段に「ウェブコム」の振り仮名を配した「web.com」(「web」の文字は太く表示されている)の文字(以下、「当該デザイン」という。)を一連に表示したものや、分離して表示したものが使用されており(甲15)、領収書及び保証書には、当該デザインの「YAMADA」文字や「web.com」の文字、「家電住まいる館」、「家電住まいる」などの文字がヘッダー部分に大きく表示され、店舗名の表示部分に「Web」の文字の「W」を小文字で表した「YAMADA web.com ○○店」の記載が認められる(甲16)。
そして、「Web」の文字の「W」を小文字で表した「YAMADA web.com」という名称の実店舗は、2020年12月4日時点で23店舗あり(甲3)、2021年7月20日時点で31店舗あり、この中には「YAMADA New web.com」や「家電住まいる館×web.com」と表記された店舗がある(甲13-1)。
これらの31店舗は、北海道から沖縄まで全国地域に点在している(甲13-1)。
(ウ)上記(イ)の各店舗がオープンする際にチラシが頒布されており、甲第4号証のチラシ表面左上には、当該デザインの「YAMADA」の文字や「web.com」の文字を一連に表示し、「仙台センター店 11月15日(金)あさ10時/OPEN!」などの記載が認められる。このようなオープンチラシが、2020年12月4日時点で存在していた23店舗のオープンに際し頒布された枚数は、合計411万枚強である(甲3)。
また、他の名称の店舗のチラシにおいても、「広告実施店」の一覧の中に「YAMADA web.com ○○店」の記載や(甲5、甲6)、「インターネットと店舗が融合した最新型店舗YAMADA web.comも続々拡大中!」(審決注:「YAMADA web.com」の文字部分は、当該デザインの「YAMADA」の文字や「web.com」の文字である。)の記載がある(甲7)。このようなチラシが、2019年11月から2020年12月まで、新型コロナウィルスの影響で中止した期間(2020年4月18日から同年5月30日)を除き、月に4回から5回、1回につき約144万枚ないし5,190万枚、別途、日曜版チラシが概ね各週、約30万枚ないし426万枚頒布された(甲8)。
(エ)2020年11月時点で存在していた21の実店舗のウェブサイトには、各店舗のオープン後、一月当たり少ないもので527アクセス、多いもので13,465アクセスあり、「web.com店舗特集ページ」なるウェブサイトへのアクセスは、合計16万強アクセスがあった(甲9)。当該ウェブサイトの構成内容やそこで本願商標がどのように使用されたのかは、提出された証拠からは明らかでない。
(オ)甲第14号証には、「YAMADA Web.com計30店舗の2019年12月~2021年6月までの合計売上金額」として、店頭実績が約490億円、出荷実績が約249億円、合計実績が約737億円との記載がある。
(カ)請求人は、WEB限定のオープンCMを配信したとされ、甲第17号証には、50本の動画のトップページが一覧となっており、このうち動画トップページあるいは見出しに「YAMADA web.com」と記載されたものは30本あり、動画トップページの記載は、ほとんどが当該デザインの「YAMADA」文字や「web.com」の文字からなるものである(甲17)。
そして、上記30本の動画の再生回数は、少ないもので約1,200回、多いもので約34,000回ほどあるが、当該動画の構成内容や、動画の中で本願商標がどのように使用されたのかは、提出された証拠からは明らかでない。
(キ)請求人の実店舗は、例えば、2020年5月18日(月)電波新聞、朝刊の1面において、「ネット通販とリアル店舗の融合を目指した『YAMADA Web.com』も計10店舗に拡大した。」の記載(甲18-3)、2021年5月19日(水)電波新聞の8面において、「ヤマダデンキは、・・・YAMADA Web.com宇都宮本店(宇都宮市)が5月7日に・・・リニューアル、ヤマダは改装を中心にネット通販との融合を重視した店舗展開を加速している。」の記載(甲18-10)があり、請求人が「YAMADA Web.com」という名称の実店舗の展開に注力していることがうかがえる。
(ク)甲第13号証の1によると、請求人の実店舗の品揃えとして、テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、理美容、調理家電、クリーナー、パソコン、オーディオ、おもちゃ・ゲーム、日用品・医薬品、家具・インテリア・雑貨、リフォームの記載が認められる。甲第4号証のチラシには、上記に加えて、デジタルカメラ・ビデオカメラ、ゴルフ、中古スマホ、時計の記載が認められる。
また、「セールスエンジニア」と称する者が、取付工事及びアフターサービスを提供しており(甲13-2)、「YAMADA plusプレミアム会員」に対しては、購入した商品の修理を提供している(甲13-3)。さらに、請求人は、ハウスクリーニングの役務も提供している(甲19)ことが確認できる。
イ 判断
以上認定した事実を総合すれば、本願商標は「インターネットと店舗の融合」をコンセプトにした請求人の実店舗の名称であり、当該実店舗は、2019年11月から順次オープンし(甲3)、2021年7月20日時点で北海道から沖縄まで全国地域に31店舗あり(甲13-1)、それらの実店舗の看板、領収書、保証書において本願商標あるいはデザインが施された本願商標と同じ文字が使用された(甲15、甲16)ことが認められる。また、各実店舗のオープンの際には一部にデザインが施された本願商標と同じ文字が使用された相当量のチラシが頒布され(甲3)、他の名称の関連店舗のチラシにおいても広告され(甲5、甲6)、2019年11月から2020年12月までの間に、これらのチラシが相当量頒布されたこと(甲8)、実店舗のウェブサイトへのアクセス数、オープンCMの再生回数も相当量あったこと(甲9、甲17)、計30実店舗の2019年12月から2021年6月までの合計売上金額が、店頭実績及び出荷実績の合計で約737億円とされていること(甲14)、請求人が「YAMADA Web.com」という名称の実店舗の展開に注力していること(甲18-3、甲18-10など)、請求人が一定の範囲の小売等役務及び購入した商品の取り付け工事、修理並びにハウスクリーニングを提供していることをうかがい知ることができるものの、未だ自他識別力を獲得するまでには至っていないと判断する。その理由は、以下に述べるとおりである。
(ア)本願商標と使用商標の同一性、本願商標の使用期間について
使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものに該当するか否かの判断においては、登録出願に係る商標と使用されていた商標との同一性は、厳格に判断されるべきものと解するのが相当であるところ(知財高裁 平成19年4月10日判決(平成18(行ケ)10450))、本願商標は「YAMADA Web.com」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、一方で使用商標については、実店舗の看板、領収書、保証書、チラシ、広告動画のトップページにおいては、当該デザインの「YAMADA」の文字や「web.com」の文字が使用されているものが多数見受けられ、使用商標のうち大部分は、本願商標と同一とはいい難いものである。
また、前記ア(エ)及び(カ)のとおり、実店舗のウェブサイトや広告動画において、どのような態様で本願商標が使用されていたのか明らかではないから、実店舗の看板、領収書、保証書、チラシ、広告動画のトップページにおける使用からすれば、これらの使用は、当該デザインのある「YAMADA」の文字や「web.com」の文字を、請求人の出所識別標識として取引者、需要者に印象付けていることが推測され、本願商標を、請求人の出所識別標識として取引者、需要者に印象付ける効果、すなわち、本願商標の使用による識別性獲得のための効果としては、その使用期間も約2年と決して長いとはいえないことも考慮すると、極めて限定的であるといわざるを得ない。
(イ)本願の指定役務についての著名性が証明されているとはいえないこと
本願の指定役務は別掲1のとおりであるが、例えば、第35類の「経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,ホテルの事業の管理」に係る本願商標の使用については、主張も立証もされていない。また、小売等役務についても、例えば、「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のいわゆる総合小売業、「自動車」の小売等役務、「葬祭用具」の小売等役務、「宝玉」の小売等役務などに係る本願商標の使用について、提出された証拠から確認することができない。さらに、工事、修理などの第37類の役務について、請求人が購入した商品の取付工事や修理を提供している事実は推認されるものの(甲4、甲13―2、甲13―3)、これらの役務が独立した役務として本願商標の下で提供されたことについては、当該証拠から確認することができない。加えて、ハウスクリーニングの役務については、本願商標の下で提供されたことを確認することができない(甲19)。そして、甲第14号証における売上高には、上記のような本願商標の使用が立証されていない指定役務の売上高も含まれているのか、その内訳も不明であって、当該売上高を本願商標がその指定役務について使用された結果、請求人を示すものとして、取引者、需要者の間に広く認識されているか否かを判断するにあたって考慮することは困難である。
(ウ)したがって、本願商標は自他役務識別力を獲得していると認めることはできない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、ウェブサイトのアドレス(URL)を表記する場合、「https://」や「https://www」から記載するのが一般的であり、これらがない場合、社名や屋号等と認識することもあると考えられ、需要者が直ちにURLであると認識するとはいえず、本願商標は、商標として把握することのできるものである旨主張する。
しかしながら、前記(1)のとおり、本願商標は、ありふれた氏である「山田」の文字をローマ字で表したものと直ちに看取される「YAMADA」の文字と、インターネットにおける情報の所在を表すURLの一部として普通に使用されている「Web.com」の文字からなり、URLの一部に氏が使用される実情も認められることから、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「YAMADA」という氏と「Web.com」の文字を含む構成からなるURLの一部であると理解、認識するにすぎないものというべきである。そして、本願商標をURLの全体であると認識しなくとも、URLの一部であると理解、認識するにすぎないのだから、本願商標は、これをその指定役務について使用しても、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないというべきである。
イ 請求人は、「ヤマダウェブコム」の文字からなる登録商標を有しており(商標登録第5680796号)、オンラインショップの名称として、2013年12月3日から現在に至るまで約7年間使用し続けている旨(甲1)、当該登録商標と本願商標は同一ではないが、類似範囲ともいえるものであり、当該登録商標が獲得した周知性を実店舗でも活かしている旨主張し、「ヤマダウェブコム」という名称のオンラインショップへのアクセス数を示す資料を提出している(甲2)。
しかしながら、前記(2)イ(ア)のとおり、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものに該当するか否かの判断においては、登録出願に係る商標と使用されていた商標との同一性は、厳格に判断されるべきものと解するのが相当であり、仮に、類否判断において、当該登録商標と本願商標が類似であると判断される場合があるとしても、そのことと本願商標の使用による識別力獲得の証明過程において、当該登録商標の使用が本願商標の使用と同一視できるかどうかは、別の問題であって、「ヤマダウェブコム」という名称のオンラインショップへのアクセス数をもって、本願商標の著名度を直接的に推し量ることはできない。
ウ 請求人は、第35類の全ての指定役務を提供していることは出願時に援用した証拠により既に証明していること、本願商標が付される店舗においては通常の店舗の約2倍の品揃えを誇っていること(甲13-1)、第37類の役務に関しては、本願商標が付される店舗内でリフォーム工事を受け付けていること(甲13-1)、「セールスエンジニア」と呼ばれるスタッフが商品の販売から取付工事を行っていること(甲13-2)、本願商標が付される店舗内では電化製品の修理も受け付けていること(甲13-3)、「YAMADA plusプレミアム会員」になると各種商品の修理を受け付けていること(甲13-3)、ハウスクリーニングも業として行っており(甲19)、本願商標が付される店舗内でも受付が可能であり、本願商標を付した店舗において、第35類、第37類の全ての役務を提供している旨主張する。
しかしながら、前記(2)イ(イ)のとおり、提出及び援用された証拠からは、本願の全ての指定役務について、本願商標の下で使用されてきたことが確認できないのであって、例えば、請求人が主張するハウスクリーニングについてみても、甲第19号証には本願商標が表示されておらず、むしろ「ヤマダデンキのハウスクリーニング」の記載が認められるばかりか、ハウスクリーニングについて本願商標がどのような態様で、どの程度、何を媒体として使用されて著名性を獲得するに至っているのか主張も立証もなく、電話やWEBからの申込みについて記載はあるが、店舗内で受付が可能であることは主張のみで立証もなく、請求人が単に当該役務を提供している蓋然性を証明しているにすぎないものである。なお、請求人が出願時に援用したと主張する証拠は、商標の使用の蓋然性を証明するための証拠であって、本願商標を採択した2019年11月以前の、本願商標とは異なる商標の出願に係る商標の使用の蓋然性を証明するための証拠、すなわち、業務を行っていることを証明する証拠であるから、本願商標の使用による識別力獲得を証明する証拠となるものではない。
エ したがって、請求人の上記主張はいずれも採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
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