2021-009663
シート綴じ装置、シート処理装置およびこれらを備える画像形成装置
- 審判番号
- 2021-009663
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-128935外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年07月20日
- 審決日
- 2022年09月06日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キヤノンファインテックニスカ株式会社
- 【請求人代理人】西山 善章
- 分類
- P18 .537-Z (B65H) / P18 .56 -Z (B65H) / P18 .575-Z (B65H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月30日の出願であって、令和3年1月20日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年3月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月23日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、令和3年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和3年7月20日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年7月20日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を全文にわたって補正をするとともに、併せて明細書の記載について補正をするものであるところ、特許請求の範囲について,下記(1)に示す本件補正前の(すなわち,令和3年3月19日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1乃至13を,下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至13へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】シートに液体を加えた後に圧着して綴じるシート綴じ装置であって、前記シートの一方の面側と他方の面側に配置され、前記シートに圧接することにより前記シートを圧着して綴じる一対の加圧歯と、前記一対の加圧歯が前記シートに圧接する範囲に前記一方の面側から前記液体を加圧して加える加圧部と、続きを表示(全34行)前記一対の加圧歯の内、前記一方の面側に配置された一方の加圧歯を支持する支持部と、前記一方の加圧歯が前記シートに圧接する範囲及び前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる範囲の外側で前記一方の加圧歯とともに前記一方の面側から前記シートに圧接する圧接部を有する加圧歯支持部と、を備えたシート綴じ装置。【請求項2】前記シートの角部を綴じる場合に、前記加圧歯支持部は、前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる範囲よりも前記シートの重心位置側であって、前記液体が加えられる範囲の外側で前記シートに圧接する請求項1記載のシート綴じ装置。【請求項3】前記シートの角部を綴じる場合に、前記加圧歯支持部は、前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる範囲よりも前記シートの角部側であって、前記液体が加えられる範囲の外側で前記シートに圧接する請求項1記載のシート綴じ装置。【請求項4】前記シートの角部を綴じる場合に、前記加圧歯支持部は、前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる範囲よりも前記シートの重心位置側及び前記シートの角部側であって、前記液体が加えられる範囲の外側で前記シートに圧接する請求項1記載のシート綴じ装置。【請求項5】前記加圧部は、前記一方の面側に配置された一方の加圧歯において、前記シートに圧接する側と反対の裏面に備えられた溜り部と、前記溜り部の前記液体を加圧する加圧部材と、を備え、前記溜り部は、前記一方の加圧歯の裏面に配置された筒状のシリンダーからなり、前記加圧部材は前記シリンダーに挿入して前記液体を加圧する加圧ピストンからなる請求項1乃至4に記載のシート綴じ装置。【請求項6】前記シリンダーに前記液体が保持されている場合、前記加圧ピストンが前記シートに前記液体を加えた後、前記一対の加圧歯が前記シートを圧着し、前記シリンダーに前記液体が保持されていない場合、前記加圧ピストンが前記シートに前記液体を加えることなく、前記一対の加圧歯が前記シートを圧着する請求項5に記載のシート綴じ装置。【請求項7】前記シリンダーに前記加圧ピストンが挿入されるように前記加圧ピストンをガイドするべく、前記加圧ピストンの外側に設けられて前記加圧ピストンと共に移動するシリンダーガイドを備えた請求項6に記載のシート綴じ装置。【請求項8】前記シリンダーは、前記一方の加圧歯と一体に形成されるとともに、前記シリンダーに保持する前記液体を補充するための補充口を有する請求項7に記載のシート綴じ装置。【請求項9】前記一方の加圧歯の前記シート側に配置され、前記一方の加圧歯の周囲を囲う弾性体を備えた請求項1に記載のシート綴じ装置。【請求項10】前記シリンダーの側方に設けられ、前記弾性体を前記シートに押圧する弾性スプリングを備え、前記弾性スプリングにより前記弾性体を前記シートに圧接してから前記加圧ピストンにより前記シリンダーの前記液体を前記シートに加える請求項9に記載のシート綴じ装置。【請求項11】前記一方の加圧歯は、前記弾性体で囲われた範囲内において、前記シリンダーの前記液体を前記シートに加えるための孔を有する請求項10に記載のシート綴じ装置。【請求項12】搬送されるシートを載置する処理トレイと、前記処理トレイに載置されたシートを綴じる請求項1乃至11のいずれかに記載のシート綴じ装置を備えたシート処理装置。【請求項13】シートに画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によって画像形成されたシートに処理を施す請求項12に記載のシート処理装置を備えた画像形成装置。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】シートに液体を加えた後に圧着して綴じるシート綴じ装置であって、前記シートの一方の面側と他方の面側に配置され、前記シートに圧接することにより前記シートを圧着して綴じる一対の加圧歯と、前記一対の加圧歯が前記シートに圧接する範囲に前記一方の面側から前記液体を加圧して加える加圧部と、続きを表示(全34行)前記一対の加圧歯の内、前記一方の面側に配置された一方の加圧歯を支持する支持部と、前記一方の加圧歯が前記シートに圧接する圧接範囲及び前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる付加範囲の外側において前記圧接範囲及び前記付加範囲と重複することなく配置され、前記一方の加圧歯とともに前記一方の面側から前記シートに圧接する圧接部を有する加圧歯支持部と、を備えたシート綴じ装置。【請求項2】前記シートの角部を綴じる場合に、前記加圧歯支持部は、前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる範囲よりも前記シートの重心位置側であって、前記液体が加えられる範囲の外側で前記シートに圧接する請求項1記載のシート綴じ装置。【請求項3】前記シートの角部を綴じる場合に、前記加圧歯支持部は、前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる範囲よりも前記シートの角部側であって、前記液体が加えられる範囲の外側で前記シートに圧接する請求項1記載のシート綴じ装置。【請求項4】前記シートの角部を綴じる場合に、前記加圧歯支持部は、前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる範囲よりも前記シートの重心位置側及び前記シートの角部側であって、前記液体が加えられる範囲の外側で前記シートに圧接する請求項1記載のシート綴じ装置。【請求項5】前記加圧部は、前記一方の面側に配置された一方の加圧歯において、前記シートに圧接する側と反対の裏面に備えられた溜り部と、前記溜り部の前記液体を加圧する加圧部材と、を備え、前記溜り部は、前記一方の加圧歯の裏面に配置された筒状のシリンダーからなり、前記加圧部材は前記シリンダーに挿入して前記液体を加圧する加圧ピストンからなる請求項1乃至4に記載のシート綴じ装置。【請求項6】前記シリンダーに前記液体が保持されている場合、前記加圧ピストンが前記シートに前記液体を加えた後、前記一対の加圧歯が前記シートを圧着し、前記シリンダーに前記液体が保持されていない場合、前記加圧ピストンが前記シートに前記液体を加えることなく、前記一対の加圧歯が前記シートを圧着する請求項5に記載のシート綴じ装置。【請求項7】前記シリンダーに前記加圧ピストンが挿入されるように前記加圧ピストンをガイドするべく、前記加圧ピストンの外側に設けられて前記加圧ピストンと共に移動するシリンダーガイドを備えた請求項6に記載のシート綴じ装置。【請求項8】前記シリンダーは、前記一方の加圧歯と一体に形成されるとともに、前記シリンダーに保持する前記液体を補充するための補充口を有する請求項7に記載のシート綴じ装置。【請求項9】前記圧接部は、前記一方の加圧歯の周囲を囲う弾性体から成る請求項1に記載のシート綴じ装置。【請求項10】前記シリンダーの側方に設けられ、前記弾性体を前記シートに押圧する弾性スプリングを備え、前記弾性スプリングにより前記弾性体を前記シートに圧接してから前記加圧ピストンにより前記シリンダーの前記液体を前記シートに加える請求項9に記載のシート綴じ装置。【請求項11】前記一方の加圧歯は、前記弾性体で囲われた範囲内において、前記シリンダーの前記液体を前記シートに加えるための孔を有する請求項10に記載のシート綴じ装置。【請求項12】搬送されるシートを載置する処理トレイと、前記処理トレイに載置されたシートを綴じる請求項1乃至11のいずれかに記載のシート綴じ装置を備えたシート処理装置。【請求項13】シートに画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によって画像形成されたシートに処理を施す請求項12に記載のシート処理装置を備えた画像形成装置。」
2 補正の適否について
本件補正により、本件補正前の請求項1の「シート綴じ装置」の発明特定事項である「加圧歯支持部」について、「前記一方の加圧歯が前記シートに圧接する圧接範囲及び前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる付加範囲の外側において前記圧接範囲及び前記付加範囲と重複することなく配置され、」と補正する(以下「補正事項1」という。)。
補正事項1により、「加圧歯支持部」について、その配置を「前記一方の加圧歯が前記シートに圧接する圧接範囲及び前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる付加範囲の外側において前記圧接範囲及び前記付加範囲と重複することなく」と限定するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、補正事項1は、本願の願書の最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0061】の「この圧縮状態図は、それぞれ回動アーム134によって押え板102は受け歯支持部128に当接状態であり、案内バー94に巻回された圧縮スプリング96が圧縮され、案内バー94が押え板102の案内孔114が突出している。図8(b)は、この状態を受け歯支持部128側から見た図であり、給水孔(給水管)86が設けられた加圧歯82の周囲は、ゴム板などからなる弾性部材92で囲っている。これは、まず、シート束にこの加圧歯支持部84が押圧してから、水溜り部88の水を加圧ピストン104で加水するが、その際に加圧歯82で圧着する範囲以外に加水した水が広がるのを防ぐためである。」との記載、【図8】及び【図20】に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
(2)補正事項2
本件補正により、本件補正前の請求項9の「シート綴じ装置」の発明特定事項である「弾性体」について、「一方の加圧歯の周囲を囲う」と補正するとともに、当該「弾性体」が「圧接部」を構成すると補正する(以下「補正事項2」という。)。
補正事項2により、「弾性体」について、その機能を「一方の加圧歯の周囲を囲う」と特定するとともに、「圧接部」を構成するものと特定するものである。
そして、補正前の請求項9に記載された発明と補正後の請求項9に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そして、補正事項2は、令和3年1月20日付けの拒絶理由通知の明確性違反の拒絶理由に対して補正したものである。
そうすると、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
また、補正事項2は、当初明細書の段落【0061】の「この圧縮状態図は、それぞれ回動アーム134によって押え板102は受け歯支持部128に当接状態であり、案内バー94に巻回された圧縮スプリング96が圧縮され、案内バー94が押え板102の案内孔114が突出している。図8(b)は、この状態を受け歯支持部128側から見た図であり、給水孔(給水管)86が設けられた加圧歯82の周囲は、ゴム板などからなる弾性部材92で囲っている。これは、まず、シート束にこの加圧歯支持部84が押圧してから、水溜り部88の水を加圧ピストン104で加水するが、その際に加圧歯82で圧着する範囲以外に加水した水が広がるのを防ぐためである。」との記載、【図8】及び【図20】に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
上記2のとおり、本件補正における補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正後の請求項1に係る発明(令和3年7月20日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1(2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】乃至【請求項13】(以下、それぞれ「本件補正発明1」乃至「本件補正発明13」という。))における本件補正発明1が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正発明1は、前記1(2)に示した本件補正後の【請求項1】に記載された事項により特定されるものと認められる。
ア 本願の明細書の記載
願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「明細書等」という。)には、以下のとおり記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】【0010】しかしながら、特許文献1のものは、水のタンクから加圧歯の一本の水用孔と通して表面張力によりシート表面に水のかたまりを形成するもので、水がシートに馴染み繊維をほぐすまで浸透することが十分にできなかった。【0011】続きを表示(全11行)また、特許文献2にあっては、シート一枚一枚のシートに布目状のベルトによって水分を塗布するもので、上記の特許文献1同様に水がシートに馴染み繊維をほぐすまで浸透にくいものであった。【0012】この点、特許文献3のものは圧着綴じを行うための範囲にインクジェットヘッドを利用しているので、上記の特許文献1や2に比べれば比較的水分のシートへの浸透を図ることできるが、依然として十分な浸透を得るには至っていない。しかもこの特許文献3では、シートに水を塗布するインクジェットヘッドがシート束まで移動したり退避したりすることが必要となり構成が複雑となる。【0013】また、特許文献4も加水する範囲を限定するためにマスキングを行ってインクジェットによって加水した後に圧着するようになっているので、上記特許文献3同様に水分のシート浸透が不十分であり、インクジェットヘッドがシート束まで移動したり退避したりすることが必要となっていた。【0014】加水範囲が広すぎたり加圧範囲が狭すぎたりするなど、加水範囲と加圧範囲の差が大きくなると、綴じ処理の品位が低下する虞がある。」
「【0060】(圧縮状態での加水加圧部)上記のように構成された加水加圧部80が、回動アーム134によって圧縮された状態を図8および図9に示してある。図8(a)はやや上方、図8(b)は下方からの斜視図である。この圧縮状態にする回動アーム134の動作については、追って図14から図19で説明する。【0061】この圧縮状態図は、それぞれ回動アーム134によって押え板102は受け歯支持部128に当接状態であり、案内バー94に巻回された圧縮スプリング96が圧縮され、案内バー94が押え板102の案内孔114が突出している。図8(b)は、この状態を受け歯支持部128側から見た図であり、給水孔(給水管)86が設けられた加圧歯82の周囲は、ゴム板などからなる弾性部材92で囲っている。これは、まず、シート束にこの加圧歯支持部84が押圧してから、水溜り部88の水を加圧ピストン104で加水するが、その際に加圧歯82で圧着する範囲以外に加水した水が広がるのを防ぐためである。」
「【0097】上記の内容は図22にある線Scで断面とした図が、図23(a)に示されている。これによれば加圧歯82と受け歯130による範囲でかつ加水領域L1を略中央として、シートの角部よりL3分外側で、加水領域よりもL2分シート重心側でシートを加圧歯支持部84と受け傾斜部130cで押圧している。【0098】一方、図23(b)は、加水した範囲L2がシートの押圧範囲をシート重心側にL2分入り込んでいる。このため、加水よりシートの繊維が解れた状態のままになってしまい、加圧歯82からシート重心側の位置で千切れやすくなるとの課題が生じた。また、押圧しない状態で放置されるとシート表面に加水した範囲にしわが寄ってしまい見栄えも良くない。したがって、加水範囲を超えて図23(a)に示すように押圧することで千切れにくくなる。【0099】また、図23(c)では、加水領域L1がシートを押圧する領域L4よりも大きく、さらに角部が押圧位置から外側にL5分はみ出している。この場合には、押圧されない部分にも加水されているので、特に角部にあってはその位置が上下にバラバラになり易くなる。このため端部を加圧歯支持部84と受け歯支持部128の範囲内で押圧する図23(a)の形態であると加水位置も押圧されてバラバラにならず、見栄えが良くなる。【0100】なお、以上の説明では、図3で説明した処理トレイ58のフロント側を示したが、リア側でも同様にシートの角部を超え、かつ加水位置よりもシート重心位置側で押圧すれば、同じ効果が奏することは言うまでもない。」
イ 本件補正発明の課題について
上記アの記載からすると、加水範囲と加圧範囲の差を大きくしないことにより、綴じ処理の品位の低下を回避することが、本件補正発明が解決しようとする課題であると認める。
ウ 本件補正発明の課題を解決するための手段について
上記アの記載を見ると、上記本件補正発明が解決しようとする課題に対して、明細書等には、「加圧歯82の周囲は、ゴム板などからなる弾性部材92で囲っている。…その際に加圧歯82で圧着する範囲以外に加水した水が広がるのを防ぐためである。」と記載されていることからすると、本件補正発明が解決しようとする課題の解決手段は、「加圧歯支持部」が“一方の加圧歯が前記シートに圧接する圧接範囲及び前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる付加範囲の外側において前記圧接範囲及び前記付加範囲と重複することなく、前記圧接範囲及び前記付加範囲の周囲を囲う”ことであると認められる。
エ 本件補正発明1について
前記1(2)のとおり、本件補正発明1は、「加圧歯支持部」が“一方の加圧歯が前記シートに圧接する圧接範囲及び前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる付加範囲の外側において前記圧接範囲及び前記付加範囲と重複することなく配置され”ているものの、圧接範囲及び付加範囲の周囲を囲っていることまでは特定されていないから、圧接範囲及び付加範囲の周囲の一部のみにしか加圧歯支持部が設けられず、圧接範囲及び付加範囲の周囲に加圧歯支持部が設けられていない部分が存在するものも包含するものと認められる。
そうすると、加圧部によって加えられた液体が、付加範囲以外に広がることを必ずしも防ぎ得るものとはいえない。
そして、結果として、付加範囲は圧接範囲よりも広い範囲となることから、加水範囲と加圧範囲の差が大きくなることを回避し得ない。
してみると、本件補正発明1の特許請求の範囲の記載は、課題を解決する手段が記載されたものとはいえない。
よって、本件補正発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
4 補正の却下の決定についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであって、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
上記第2の補正の却下の決定のとおり、本件補正は却下されことから、本審決において判断する対象となる本願の特許請求の範囲は、上記「第2 1(1)」の令和3年3月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至13(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)であり、本願の明細書は、同補正書により補正された明細書である。、
第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、令和3年1月20日付けの拒絶理由通知書により通知された理由であり、そのうちの次に示す理由を含むものである。
1 原査定の理由
(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
・請求項 1-13
仮に、請求項1に記載の「前記加圧歯支持部は前記加圧歯とともにシートを圧着し、前記加圧歯がシートと接する面積及び前記加水部材によって加水される範囲よりも広い面積を圧着すること」が、「加圧歯支持部の圧着する面積」の数字的な大きさが「加圧歯がシートと接する面積及び前記加水部材によって加水される範囲」の数字的な大きさよりも大きいことを指しているであれば、加圧歯支持部がシートのどの箇所を圧着するのかが不明確であり、本願の図23(b)、図23(c)となるような構成を含み得るものであるから、請求項1-13に係る発明は、明細書の[0016]に記載の作用効果と対応するのかどうかが明らかでない。
よって、請求項1-13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
第5 請求人の応答内容について
請求人は、上記拒絶理由についての応答として、令和3年3月19日に提出の意見書で次のように主張している。
“本願の本請求項1における『前記一方の加圧歯が前記シートに圧接する範囲及び前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる範囲の外側で前記一方の加圧歯とともに前記一方の面側から前記シートに圧接する圧接部(92)を有する加圧歯支持部』により、「液体がシートの綴じ位置を超えた広い範囲に浸透してしまうことを防止することができ、これにより、綴じ処理に必要な液体が綴じ位置で不足することがありません。液体が不足することで綴じ位置が加圧歯により過度に擦れて棄損したり、綴じ位置以外の部分を液体で変形してしまうことを防止する」との作用効果を奏します。”
第6 当審の判断
上記「3 (1)エ」で述べたことと同様に、本願発明も、圧接範囲及び付加範囲の周囲を囲っていることまでは特定されていないから、圧接範囲及び付加範囲の周囲の一部のみにしか加圧歯支持部が設けられず、圧接範囲及び付加範囲の周囲に加圧歯支持部が設けられていない部分が存在するものも包含するものと認められる。
これに対し、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載からすると、本願発明が解決しようとする課題も本件補正発明が解決しようとする課題と同様に「加水範囲と加圧範囲の差を大きくしないことにより、綴じ処理の品位の低下を回避すること」であると認められ、本願発明が解決しようとする課題の解決手段も、「加圧歯支持部」が“一方の加圧歯が前記シートに圧接する圧接範囲及び前記加圧部によって前記シートに前記液体が加えられる付加範囲の外側において前記圧接範囲及び前記付加範囲と重複することなく、前記圧接範囲及び前記付加範囲の周囲を囲う”ことであると認められる。
そうすると、本願発明の特許請求の範囲の記載からすると、加圧部によって加えられた液体が、付加範囲以外に広がることを必ずしも防ぎ得るものとはいえない。
そして、上記第5の請求人の主張を参酌しても、本願発明の特許請求の範囲の記載が、課題を解決する手段を反映しているとは認められない。
してみると、本願発明の特許請求の範囲の記載は、課題を解決する手段が記載されたものとはいえない。
よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
第7 まとめ
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないものであるから、本願は、特許を受けることができない。
よって、その他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
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