商標拒絶査定不服審判
2021-008938
エイアイイゴ、アイイゴ
- 審判番号
- 2021-008938
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2019-049089
- 請求日
- 2021年07月05日
- 審決日
- 2022年09月09日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社イーフロンティア
- 【請求人代理人】林 栄二
- 審判長/審判官
- 審判長 小松 里美
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T18 .16 -Z (W0941)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項6号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第6号、特許法第150条第5項、商標法第3条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2019-49089拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、平成31年4月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年2月20日付け:拒絶理由通知書
令和2年6月29日 :意見書、手続補正書、手続補足書(資料1~資料11)の提出
令和3年3月26日付け:拒絶査定
令和3年7月5日 :審判請求書の提出
令和4年3月9日付け :証拠調べ通知書
2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第9類及び第41類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、登録出願されたものであり、指定商品及び指定役務については、上記1の手続補正書により、第9類「携帯情報端末・携帯電話機・コンピューター用の囲碁ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気カード・光磁気ディスク・光ディスク・フロッピーディスク・その他の記録媒体,業務用テレビゲーム用の囲碁ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気カード・光磁気ディスク・光ディスク・フロッピーディスク・その他の記録媒体,家庭用テレビゲーム用の囲碁ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気カード・光磁気ディスク・光ディスク・フロッピーディスク・その他の記録媒体,囲碁ゲームを内容とするダウンロード可能な業務用テレビゲーム機用プログラム,囲碁ゲームを内容とするダウンロード可能な家庭用テレビゲーム機用プログラム,電気通信機械器具,携帯情報端末,電子応用機械器具及びその部品(電子計算機用プログラムを除く。),ダウンロード可能な音声・音楽・画像・映像・文字情報,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電気又は電子楽器用フェイザー,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,囲碁ゲームに関する記録済みデータ記録媒体,電子出版物,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント」及び第41類「オンラインによる囲碁ゲームの提供,オンラインによる音楽・音声・映像・画像・文字情報の提供,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍・雑誌・定期刊行物及び電子書籍(広告物を除く。)の制作,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)ならびにこれらに関する情報の提供,囲碁ゲームに関する娯楽施設の提供,囲碁ゲームに関する娯楽の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授並びにこれらに関する情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催並びにこれらに関する情報の提供」に補正されたものである。
3 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、「AI囲碁」の文字と、その下部に白色の円図形と黒色の円図形を交互に反復して表した図形部分からなるものであり、図形部分は、本願商標の構成中の「囲碁」の文字及び本願の補正後の指定商品及び指定役務中、「携帯情報端末・携帯電話機・コンピューター用の囲碁ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気カード・光磁気ディスク・光ディスク・フロッピーディスク・その他の記録媒体,業務用テレビゲーム用の囲碁ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気カード・光磁気ディスク・光ディスク・フロッピーディスク・その他の記録媒体,家庭用テレビゲーム用の囲碁ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気カード・光磁気ディスク・光ディスク・フロッピーディスク・その他の記録媒体,囲碁ゲームを内容とするダウンロード可能な業務用テレビゲーム機用プログラム,囲碁ゲームを内容とするダウンロード可能な家庭用テレビゲーム機用プログラム,囲碁ゲームに関する記録済みデータ記録媒体,オンラインによる囲碁ゲームの提供,囲碁ゲームに関する娯楽施設の提供,囲碁ゲームに関する娯楽の提供」との関係においては、囲碁で使用する碁石を表したものと認識されるから、上記指定商品及び指定役務に使用しても、自他商品役務の識別標識としての機能を有するものではない。また、「AI」の文字は「人工知能」の意味を有する英語「artificial intelligence」の略語として、また、「囲碁」の文字は、「碁をうつこと。また、碁。」の意味を有する語として、一般に用いられ、親しまれているから、「AI囲碁」の文字部分は、「AI(人工知能)を用いた囲碁」程の意味合いを認識、理解させ、AI(人工知能)を用いた(搭載した)囲碁用のプログラムやソフトウェアが開発・提供等されていることから、「AI囲碁」の文字を上記指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する需要者は、商品の品質及び役務の質であることを認識、理解するにすぎない。加えて、出願人から提出された証拠をもって、「AI囲碁」の文字が、出願人の囲碁プログラムを表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。そうすると、本願商標は、その構成全体として、自他商品役務の識別標識としての機能を有しないものというべきであるから、上記指定商品及び指定役務に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品及び役務であることを認識することができないものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
4 当審における証拠調べ通知及びそれに対する請求人の対応
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、原審が示した事実に加え、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、上記1の証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
しかしながら、請求人は、上記証拠調べ通知に対し、所定の期間内に何ら意見を述べていない。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号の趣旨について
商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法第1条)、商標の本質は、自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり、この自他商品の識別標識としての機能から、出所表示機能、品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。同法第3条第1項第6号が、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは、同項第1号ないし第5号に例示されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10270号、知財高裁平成24年(行ケ)第10323号判決参照)。
(2)本願商標の構成について
本願商標は、別掲1のとおり、横書きした「AI囲碁」の文字(以下、「本願文字部分」という場合がある。)の下に、縦幅にして本願文字部分の約九分の一程度の、小さな白色の円輪郭によって構成された図形と黒色の円輪郭によって構成された図形を交互に横一列に反復して表した部分(以下、「本願図形部分」という場合がある。)を配置してなるものである。
また、本願文字部分を構成する「AI囲碁」の文字は、その構成中の「AI」の文字が「人工知能」の意味を有する英語「artificial intelligence」の略語として、「囲碁」の文字が「碁をうつこと。また、碁。」(いずれも「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)を意味する語として、一般に親しまれているものであるから、両語を結合したものであると容易に理解させるものである。
そして、本願文字部分は、「AI囲碁」の文字を、明朝体に属する標準的な書体で表してなるものであるから、当該文字部分の外観が、これに接する者の記憶に残るほどの特徴を有するものではない。
(3)本願文字部分の識別力について
ア 本願文字部分の本来的な識別力について
本願文字部分を構成する「AI囲碁」の文字の使用状況についてみると、上記4の証拠調べ通知書において開示した別掲2(1)の事実によれば、本願の指定商品及び指定役務のうち、囲碁に関する商品及び役務の業界においては、請求人以外の者によって、例えば、「人工知能(AI)搭載の囲碁ソフト」について「AI囲碁ソフト」の文字(別掲2(1)ア)、「AIを使ったコンピューター囲碁」、「日本発の人工知能(AI)囲碁ソフト」又はAIの新技術で判断力を大幅に高めた「囲碁のコンピューターソフト」について「AI囲碁」の文字(同イ、ウ、オ)、「次に打つべき推奨手をAIが思考判断」するパソコン用ソフトウェアについて「AI囲碁検討ソフト」の文字(同ク)、「囲碁ゲーム」用のアプリケーションソフトウェアについて「人工知能AI囲碁ゲーム」の文字(同ケ)が用いられていることが認められ、「AI囲碁プログラム」を用いた「コンピューター囲碁トーナメント」の開催や(同キ)、プロ棋士と「AI(人工知能)囲碁」のコンピュータプログラムとの対戦(同エ、カ)が行われていることが認められる。
これらを総合すると、「AI囲碁」の文字は、「AI(人工知能)を用いた囲碁」程の意味合いで、請求人以外の者によって、AI(人工知能)を用いた囲碁に関するゲーム用ソフトウェア・ゲーム用プログラム・ゲーム用アプリケーションソフトウェアやそれに関する役務の提供について用いられていることが認められるから、「AI囲碁」の文字は、本願の指定商品及び指定役務のうち、囲碁に関する商品及び役務の業界において、「AI(人工知能)を用いた囲碁」の意味合いを表す語として一般に理解されているものといえる。
してみれば、本願商標の構成中の「AI囲碁」の文字部分は、その指定商品及び指定役務中、囲碁に関する商品及び役務に使用されたときには、その取引者、需要者によって、これらが「AI(人工知能)を用いた囲碁」に関するものであるという商品及び役務の品質(内容)等を表示したものとして一般に認識されるものというのが相当である。
加えて、上記(2)のとおり、本願商標の構成中の「AI囲碁」の文字部分は、明朝体に属する標準的な書体で表してなるものであって、特徴を有するものではないから、本願文字部分は、本願の指定商品及び指定役務中、囲碁に関する商品及び役務との関係において、自他商品及び自他役務の識別力を欠くというべきである。
イ 「AI囲碁」の文字の使用による識別力の獲得について
請求人は、本願文字部分を構成する「AI囲碁」の文字は、使用をされた結果、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして周知、著名であるため、自他商品及び自他役務の識別力を獲得した旨主張し、証拠方法として、請求人の令和2年6月29日提出に係る手続補足書(資料1~資料11(枝番号を含む。))を提出しているので、以下、検討する。
(ア)請求人の提出に係る各証拠及びその主張の全趣旨によれば、請求人の前身とされる企業(株式会社サムシンググッド、株式会社アスキーサムシンググッド、株式会社アイフォー)及び請求人(以下、両者をまとめて「請求人等」という場合がある。)は、囲碁用のプログラムを記憶させた商品を販売してきたとされ、囲碁用のプログラムのパッケージや広告には、「AI囲碁」又は当該文字を含むものの記載がある(資料3、資料5)。
もっとも、「AI囲碁」の文字のみが目立つ態様で記載されたもの(資料3の14~18、資料3の22)のみならず、「ブルースウィルコックスの/AI囲碁3」、「ブルースウィルコックスの/AI囲碁4」、「デビッドフォットランドの/AI囲碁5」、「デビッドフォットランドの/AI囲碁6」(資料3の3~6)、「AI囲碁2001」の文字とその文字の上下に横線が配置され一体的に表示されているもの(資料3の8、資料5の3)、「e!SELECTシリーズAI囲碁 GOLD2」(資料5の5)のように、「AI囲碁」の文字と他の文字や図形要素が組み合わされ一体的に表示されたものも用いられている。
なお、資料3の1、資料3の2、資料3の7、資料3の9ないし資料3の13、資料3の19ないし資料3の21は、証拠上、それが請求人等の業務に係る囲碁用のプログラムのパッケージや広告であることが確認できない。
(イ)1991年から2004年までに発行された新聞において、「AI囲碁」の文字を用いた請求人等の業務に係る囲碁用のプログラムを記憶させた商品(以下「請求人等商品」という場合がある。)に関する記事が掲載された(資料6)。
もっとも、当該記事が掲載された新聞の多くは、いわゆる専門紙であり(日刊工業新聞、日経産業新聞、日本経済新聞、日本工業新聞等)、一般紙のうち全国紙に掲載されたことはない。
(ウ)請求人が日経テレコンによる検索によって入手したとされる、POS実売情報の「PCゲーム」に関する「半期売れ筋ランキング」(2016年から2019年まで)の一覧において、請求人等商品がいずれも20位以内に記載されている(資料7)。
もっとも、資料7の2ないし資料7の24は、いずれも当該一覧の「エリア」が「大阪圏」、「名古屋圏」、「その他」、「東京圏」とされており、これらがそれぞれ具体的に我が国のどの地域を対象としたものであるのか、証拠上、明らかではない。
また、資料7の25は「エリア」が「全国」とされているところ、これが日本全国を対象としたものであるとみた場合、請求人等商品の、2019年下半期(7月から12月)の日本全国における「PCゲーム」のランキング及び「販売数量シェア」は、16位で約0.6パーセントである(資料7の25)。
なお、当該資料7の25には、請求人等商品のうち「AI囲碁 GOLD4 Windows10対応版」のみが記載されている。
(エ)請求人等商品は、「ヨドバシ.com」の「PCゲーム」の「囲碁のベストセラーランキング」(2020年6月15日更新)の4位、18位、22位、31位、89位、98位に記載されているが、そのうち4位、22位、89位、98位に記載された商品名は、例えば「AI囲碁 GOLD4[Windows]」のように、「AI囲碁」の文字と「GOLD4」又は「GOLD3」の文字が組み合わされ一体的に表示されたものである(資料8)。
また、「囲碁ゲーム・ソフトの一覧」とされる資料9の1には、請求人等商品の名称が複数記載されているが、その中には、上記のように、「AI囲碁」の文字と「GOLD4」、「GOLD3」、「GOLD2」又は「GOLD」の文字が組み合わされ一体的に表示されたものも多数あり、さらに、「みんなで対戦AI囲碁6/サイバーフロント」、「AI囲碁BEST・・・/サイバーフロント」、「AI囲碁6/サイバーフロント」及び「新撰AI囲碁/メディアカイト」のように、請求人等とは異なる事業者の名称とみられるものを表示した、「AI囲碁」の文字を商品名に含む商品も記載されており、これら商品に関し、請求人等を示す記載はない。
この点、請求人は、「サイバーフロント」に係る商品も請求人の業務に係るものであるとして、「サイバーフロント」が囲碁・将棋ソフトでは「アイフォー」が開発した「AI」シリーズの過去の作品だけを販売していることがうかがえる、日経産業新聞の記事2件を提出しているが、当該記事はいずれも、1999年に発行された新聞に係るものである(資料9の2、3)。
(オ)上記(ア)ないし(エ)によれば、請求人等商品は、1991年頃から販売されてきたことがうかがえるものの、
a 当該商品のパッケージや広告には必ずしも「AI囲碁」の文字のみが目立つ態様で記載されてきたものではなく、当該文字と他の文字や図形要素が組み合わされ一体的に表示されたものも用いられてきたこと、
b 新聞における請求人等商品に関する記事についても、広く一般の目に触れる全国紙への掲載は一度もなかったこと、
c 2019年下半期の日本全国におけるパソコン用ゲームソフトウェアの売れ筋ランキングや販売数量シェアとされるものについては、請求人等商品の数値が高いものとはいえず、対象となる請求人等商品の名称も「AI囲碁」の文字のみからなるものではなく、当該文字と「GOLD4」の文字が組み合わされ一体的に表示されたものであること、
d インターネット通販サイトの囲碁用ソフトウェアのランキングにおいて、請求人等商品が複数ランクインしたものの、その中には、商品の名称が「AI囲碁」の文字のみからなるものではなく、当該文字と「GOLD4」等の文字が組み合わされ一体的に表示されたものも相当数あること、
e 「AI囲碁」の文字を用いた囲碁用のソフトウェア等の商品は、請求人等を示す表示がなく、請求人等とは異なる複数の事業者の名称(「メディアカイト」、「サイバーフロント」)を表示したものも販売されてきたことがうかがえるところ、請求人の提出した証拠のみをもってしては、これら商品に接する需要者が、当該商品を請求人等の業務に係る商品であると認識するものとは認められないこと、
f 請求人の提出に係る各証拠からは請求人等商品の宣伝広告実績が明らかではないこと、
g 請求人の提出に係る各証拠及び主張はいずれも本願の指定商品及び指定役務中の囲碁用のプログラムを記憶させた商品に関するものであり、それ以外の商品及び役務については、請求人の業務に係る商品及び役務としての「AI囲碁」の文字の周知、著名性に関する証拠の提出及び主張がされていないこと、
h 上記アのとおり、現時点で「AI囲碁」の文字は、「AI(人工知能)を用いた囲碁」程の意味合いで、請求人以外の者によって、AI(人工知能)を用いた囲碁に関するゲーム用ソフトウェア・ゲーム用プログラム・ゲーム用アプリケーションソフトウェアやそれに関する役務の提供について広く用いられていること、
が認められ、上記aないしhを総合して勘案すれば、「AI囲碁」の文字は、使用をされた結果、本件審決の時点までに、本願の指定商品及び指定役務の取引者、需要者の間で、請求人等商品ないし、請求人の業務に係る商品及び役務を表示したものとして全国的な周知、著名性を獲得したとはいえず、自他商品及び自他役務の識別力を有するに至っているものということはできない。
ウ 「AI囲碁」の文字の使用による識別力の獲得に関する請求人の主張について
請求人は、ゲーム用ソフトウェアは趣味嗜好が強いという特質を有するものであり、囲碁ゲーム用のソフトウェアの周知、著名性については、囲碁用のゲームソフトウェアに限定したランキングやシェアで判断すべきであるから、「AI囲碁」の文字が請求人の囲碁用ゲームソフトウェアを表すものとして周知、著名である旨主張する。
しかしながら、囲碁用ゲームソフトウェアの需要者が、他のゲーム用ソフトウェアの需要者とならないことを裏付ける事情はなく、両者の需要者はいずれもゲーム用ソフトウェアを求める者として、重複する場合があるというべきであるから、囲碁用ゲームソフトウェアの周知、著名性を検討するに当たり、比較対象を、囲碁用ゲームソフトウェアに限定した上で、そのランキングやシェアのみを参酌すべきとする合理的理由はない。また、請求人の提出に係る各証拠において、我が国におけるすべての囲碁用ゲームソフトウェアの総販売数量に占める請求人等商品の販売数量の割合などを示す、客観的かつ具体的な資料はみあたらないから、比較対象を、囲碁用ゲームソフトウェアに限定して検討するとしても、提出された各証拠から、「AI囲碁」の文字が請求人の囲碁用ゲームソフトウェアを表すものとして周知、著名であると認めることはできない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
エ 小括
以上によれば、本願文字部分を構成する「AI囲碁」の文字は、本願の指定商品及び指定役務中、囲碁に関する商品及び役務との関係において、自他商品及び自他役務の識別力を欠くというべきである。
(4)本願図形部分の識別力について
本願図形部分は、上記(2)のとおり、小さな白色の円輪郭によって構成された図形と黒色の円輪郭によって構成された図形を交互に横一列に反復して表してなるところ、上記4の証拠調べ通知書において開示した別掲2(3)の事実によれば、本願の指定商品及び指定役務のうち、囲碁に関する商品及び役務の業界においては、本願図形部分の上記構成に通じる、白色の円輪郭によって構成された図形と黒色の円輪郭によって構成された図形を交互に表したものが、囲碁ゲーム用ソフトウェア(別掲2(3)ア、エ)、囲碁ゲーム用アプリケーションソフトウェア(同イ、ウ)、囲碁教室(同オ~コ)の宣伝広告に用いられていることが認められる。そして、これらの事例における色の円輪郭によって構成された図形と黒色の円輪郭によって構成された図形は、それが用いられている商品や役務が囲碁に関するものであることからして、囲碁の碁石をモチーフとした図形であるとみるのが自然である。
そうすると、本願図形部分は、その上に配置された「AI囲碁」の文字とも相まって、囲碁の碁石をモチーフとした図形を横一列に反復して表したものとみるのが相当であり、しかも、当該図形やそれを反復して表すことは、囲碁に関する商品及び役務の業界においては一般的であることから、本願図形部分は、本願の指定商品及び指定役務中、囲碁に関する商品及び役務との関係において、商品及び役務の出所識別標識としての印象を取引者又は需要者に与える機能がないものというべきである。
したがって、本願図形部分は、本願の指定商品及び指定役務中、囲碁に関する商品及び役務との関係において、自他商品及び自他役務の識別力を欠くというべきである。
(5)本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標全体の識別力について検討するに、本願図形部分は、上記(2)及び(4)のとおり、縦幅にして、本願文字部分の約九分の一程度の小さな囲碁の碁石をモチーフとした図形を横一列に反復してなるものである。
そして、上記4の証拠調べ通知書において開示した別掲2(2)の事実によれば、我が国の文字のデザイン等の分野においては、文字とそれを強調又は装飾するためのアンダーラインの組合せが一般に用いられており、当該アンダーラインには、様々な形状や特定の事象をモチーフとした図を反復したタイプのものがあることが認められ、また、文字を親しみやすい表現にするために、文字とそれが表す特定の事象を単純な図形にした部分との組合せも、一般に用いられていることが認められる。
このような文字のデザインに関する実情に照らすと、囲碁の碁石をモチーフとした図形を横一列に反復してなる本願図形部分は、その大きさや配置からして、本願文字部分を構成する「AI囲碁」の文字を、強調・装飾するためのアンダーラインの一類型、又は「AI囲碁」の文字を親しみやすい表現にするため、その文字が表す内容を単純な図形にしたものとして理解されるものというのが相当である。
してみれば、本願商標は、本願の指定商品及び指定役務中、囲碁に関する商品及び役務との関係において、いずれも自他商品及び自他役務の識別力を欠くというべき本願文字部分と本願図形部分とを、文字とそれを強調又は装飾するためのアンダーラインの組合せ、又は、文字とその内容を単純な図形にしたものとの組合せのような、一般的な組み合わせかたで表してなるにすぎないものといえるから、上記(1)の商標法第3条第1項第6号の趣旨をも踏まえて判断すれば、本願商標は、本願の指定商品及び指定役務中、囲碁に関する商品及び役務について特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、自他商品及び自他役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって、本願商標は、本願の指定商品及び指定役務中、囲碁に関する商品及び役務との関係において、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」として、商標法3条1項6号に該当する。
(6)まとめ
以上のとおり、本願商標は、本願の指定商品及び指定役務中、囲碁に関する商品及び役務との関係において、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-008938