商標拒絶査定不服審判
2021-007938
クールジャパンビデオズ、クールジャパン、クール
- 審判番号
- 2021-007938
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2018-164878
- 請求日
- 2021年04月22日
- 審決日
- 2022年04月26日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社アルティメディア
- 審判長/審判官
- 審判長 森山 啓
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 茂木 祐輔
- 分類
- T18 .21 -Z (W0938)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項6号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第6号、商標法第4条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2018-164878拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は,「COOL JAPAN VIDEOS」の文字を横書きしてなり,第9類,第35類,第36類,第38類,第39類,第41類ないし第45類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成30年12月14日に登録出願されたものである。
本願は,令和元年11月25日付けで拒絶理由の通知がされ,同2年9月11日付けの意見書が提出されたが,同3年1月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年4月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり,指定商品及び指定役務については,審判請求と同時に提出された手続補正書により,第9類及び第38類に属する別掲1に記載のとおりの商品及び役務に補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『COOL JAPAN VIDEOS』の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ,その構成中の『COOL JAPAN』の文字は,その表音の片仮名表記『クールジャパン』の文字とともに,『日本の創造的な産業やサービスが海外で高く評価されている現象のこと。』の意味を理解させる語として一般に広く使用されているものであり,また,日本の戦略産業分野である文化産業の海外進出促進,国内外への発信等を行うなど関連産業を振興・支援する経済産業省など政府の政策や官民連携の政府の施策(事業)を表示する著名な標章である。そうすると,本願商標は,政府の施策(事業)を表示する著名な標章である『COOL JAPAN』の文字を,その構成中に含むものであることから,公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と同一又は類似する商標である。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第6号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第6号の考え方について
商標法4条1項6号は,同号に掲げる標章を一私人に独占させることは,同号所定の団体の信用や権威を損ない,国際信義に反することから,これを不登録事由としたものと解される。(知財高裁平成29年(行ケ)第10208号,平成30年4月11日判決言渡)
2 商標法第4条第1項第6号該当性について
(1)「COOL JAPAN」の文字が「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章で著名」であることについて
ア 本願商標は,「COOL JAPAN VIDEOS」の文字を横書きしてなるところ,その構成中の「COOL JAPAN」(以下,欧文字の小文字表記や片仮名表記を含む。)の文字は,「アニメや漫画,ファッションなど,海外で評価されている日本文化。また,それらの日本の文化ソフト領域が国際的に評価されている現象。」を意味する語(「現代用語の基礎知識2019」株式会社自由国民社発行)である。また,同時に,日本政府によって,日本文化の海外への発信等を目的とした施策(事業)を表示するものとして使用されていることは,原審で示した証拠(別掲2)に加え,別掲3の証拠からも確認することができる。
イ そして,それらの証拠を総合勘案すると,以下のとおりいうことができる。
(ア)2010年頃から,経済産業省によって,上記日本文化の海外発信等を目的とした「クールジャパン」事業の取組みが開始され,同年6月には新成長戦略において「クールジャパン」が「21世紀の日本復活に向けた21の国家プロジェクト」の一つとして掲げられた。2012年12月の第2次安倍内閣においては,クールジャパン戦略担当大臣が置かれ,それ以降,内閣府がとりまとめを行いつつ,関係省庁が様々な施策を実施している。なお,クールジャパン戦略担当大臣は,現在においても設置されている(https://www.cao.go.jp/minister/2111_k_wakamiya/index.html)。また,2013年2月には,日本のアニメやファッションを海外に売り出す戦略を練る「クールジャパン推進会議」が設置された。さらに,同年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」においては,「クールジャパン」を国家戦略と位置付け,官民一体となって取組みが強化されることとされた。
以上のとおり,「クールジャパン」は,内閣府や経済産業省をはじめとした関係省庁や関係機関が担う,国家戦略として位置づけられ,例えば2020年度における予算規模が総額約552億円に上るなど,政府一体の取り組みへと拡大してきたものである。
(イ)そして,別掲3(1)のとおり,日本政府や関係機関が様々な「クールジャパン」を冠した支援事業を行うと共に,それら支援事業の採択を受けた企業等が,「クールジャパン」事業の採択を受けたことを掲げ,活動している実情も見受けられるなど,「クールジャパン」及びその英語表記である「COOL JAPAN」の語が,「海外で評価されている日本文化」の意味を超え,政府による事業を表すものとしても用いられている。また,別掲3(2)のとおり,2010年頃からの日本政府による取組みや事業規模の拡大等の動きや,事業を表す語として捉えた報道等は,ことあるごとにメディアに取り上げられ,情報発信され続けており,「COOL JAPAN」に関連した政府の取り組みは,我が国において広く認識されるに至ったとみることができる。
(ウ)さらに,例えば「クールジャパンの司令塔」,「CJの目的や重要性」,「経産省『クールジャパン』(J-LOP)と国際交流基金の助成事業」,「クールジャパン予算」,「国策のクールジャパンや地方創生」といったように,「COOL JAPAN(クールジャパン)」の文字が戦略や事業そのものを表すように用いられている事例や,「『クールジャパン』政策」,「『クールジャパン』事業」,「『クールジャパン』プロジェクト」,「国家戦略『クールジャパン』」といったように,事業等の固有の名称として強調するかのように,報道又は使用されている事例が見られる。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)からすると,日本政府や関係機関等の取組み,メディアによる報道等により,「COOL JAPAN」の語は,日本発の文化を積極的に世界に発信し,産業育成や海外需要の取り込みを支援するといった日本政府の施策の総称としても,我が国において広く知られるようになったというべきである。また,「COOL JAPAN」に関する政府の事業の趣旨や目的からすれば,事業に公益性があること,営利目的でないことは明らかである。
ウ 「COOL JAPAN」の語は,上記イのとおり,日本政府による施策の総称として,2010年以降,事業規模を拡大しながら現在に至るまで使用され続けており,かつ,公益事業の名称を表示する語として,多数の新聞記事及びインターネット情報等に継続的に取り上げられ,広く情報発信されてきたものである。
そうすると,「COOL JAPAN」の文字は,公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であり,かつ,一般に広く知られている著名な標章と判断するのが相当である。
(2)本願商標と「COOL JAPAN」の標章(以下「引用標章」という場合がある。)の類否について
ア 本願商標の構成について
本願商標は,「COOL JAPAN VIDEOS」の文字を横書きしてなるところ,冒頭からの「COOL JAPAN」の文字部分は,上記(1)のとおり,「日本発の文化を積極的に世界に発信し,産業育成や海外需要の取り込みを支援する日本政府の施策の総称」として著名な標章である「COOL JAPAN」とその構成文字を同じくするものであるから,当該部分は,看者に対して強く支配的な印象を与えるものといえる。加えて,構成中の「VIDEOS」の文字は,「動画」等を意味する英語(「ジーニアス英和辞典第5版」株式会社大修館書店発行)として広く知られている「VIDEO」の複数形であり,指定商品及び指定役務との関係において,自他商品又は役務の出所識別標識として機能しないものか又はその機能が極めて弱い部分ということもできる。
そうすると,本願商標の構成中,「COOL JAPAN」の文字部分が,強く支配的な印象を与えるといえるから,これを要部として抽出し,当該構成部分のみを引用標章と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
イ 本願商標と引用標章の類否について
本願商標の要部である「COOL JAPAN」の文字と引用標章とを対比すると,いずれも「COOL JAPAN」の文字からなる点で外観が同一であり,また,「クールジャパン」の称呼が生じる点で,称呼が同一である。さらに,本願商標の要部及び引用標章は,共に「日本発の文化を積極的に世界に発信し,産業育成や海外需要の取り込みを支援する日本政府の施策の総称」の観念が生じることから,観念が同一である。
したがって,本願商標と引用標章は類似するというべきである。
(3)小括
以上によれば,本願商標は,公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名な「COOL JAPAN」と類似の商標である。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第6号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,「COOL JAPAN」は,「日本の魅力」を意味する語であって,既に存在する名称を日本政府が採用したものであり,政府が創作した造語ではない,また,民間事業者を選定して広く「日本の魅力」を普及させようとするものであって,政府又はこれに準ずる団体が独占して行う事業ではない旨主張する。
しかしながら,「COOL JAPAN」の文字が,「海外で評価されている日本文化」や「日本の魅力」等の意味合いで使用されている事実があるとしても,そのことが,「COOL JAPAN」の文字が「日本発の文化を積極的に世界に発信し,産業育成や海外需要の取り込みを支援する日本政府の施策の総称」として著名な標章であることをも否定する理由となるものではない。
むしろ,上記2(1)のとおり,日本政府が「COOL JAPAN」事業として様々な公益的な事業を国家戦略として推進しており,かつ,それらがメディアにおいて継続的に報道されている実情があることからすれば,「COOL JAPAN」の文字は,公益事業の名称を表示する語としても,我が国において広く知られているものということができる。
また,「COOL JAPAN」の文字が,日本政府によって独占的に使用されるものではなく,民間事業者を通じて広く使用させ,普及させるべきものであることは請求人主張のとおりであるが,そうであるからこそ,「COOL JAPAN」又はこれと類似する商標の特定人への独占使用を認めることは慎重に判断する必要があるというべきである。そして,日本政府や,「COOL JAPAN」事業の採択を受けた企業等が,実際に様々な媒体や手段を利用して日本の魅力の発信等を行っている実情が見られる(別掲2及び別掲3)ことからすれば,「COOL JAPAN」又はこれと類似する商標を,一私人が独占的に使用することは,「COOL JAPAN」事業及び当該事業を推進する政府等の信用や権威を損なうおそれがあるから,かかる商標の登録を認めるべきでないことは,商標法第4条第1項第6号の趣旨に合致するものである。
(2)請求人は,本願商標を使用した請求人のウェブサイトにおいて,日本の魅力の発信等を行う事業を実施しており,当該事業は,国や東京都,自治体から助成金や補助金の採択と経営革新計画の承認を受けており,また「クールジャパン機構」による投資の「支援基準」に沿ったものである旨主張する。
しかしながら,請求人の事業が上記各機関による助成事業の採択を受けたことと,本願商標を独占的に使用することを請求人に認めることとは,別問題である。そして,本願商標が商標法第4条第1項第6号に該当し,登録すべきものでないことは上記2のとおりである。
(3)請求人は,「COOL JAPAN」,「クールジャパン」の文字を含む過去の商標の登録例を挙げて,本願商標も登録すべき旨主張する。
しかしながら,出願された商標が商標法第4条第1項第6号に該当するか否かの判断は,査定(審決)の時点において,事案に即して個別具体的に判断されるべきものであり,過去に登録された事例に拘束されるべきでない。
(4)したがって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第6号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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