商標拒絶査定不服審判
2021-007586
エヒメユニバーシティー
- 審判番号
- 2021-007586
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-017557
- 請求日
- 2021年06月09日
- 審決日
- 2022年09月01日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】国立大学法人愛媛大学
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】久我 貴洋
- 審判長/審判官
- 審判長 岩崎 安子
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 山根 まり子
- 分類
- T18 .8 -Z (W42)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第64条、商標法第64条第1項、商標法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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商願2020-17557拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願標章
本願標章は、「EHIME UNIVERSITY」の文字を標準文字で表してなり、第42類に属する願書に記載のとおりの役務を指定役務とし、登録第6223112号商標(以下「原登録商標」という。)に係る防護標章登録出願として、令和2年2月18日に登録出願されたものである。
本願は、令和2年11月4日付けで拒絶理由の通知がされ、指定役務については、原審における同年12月21日付け手続補正書により、別掲1に記載のとおりの第42類に属する役務に補正され、同日付で意見書が提出されたが、同3年3月4日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対して令和3年6月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 原登録商標
原登録商標は、本願標章と同一の態様からなり、令和元年12月5日に登録出願、第16類、第18類、第24類、第25類、第29類ないし第33類、第41類及び第44類に属する別掲2に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同2年2月5日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
第3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願標章の原登録商標は、その指定商品及び指定役務中、「知識の教授」に使用されている事実が確認できるが、出願人が提出した資料からは、それが、自己の業務に係る指定商品又は指定役務を表示するものとして需要者間に広く認識されているものとは認められない。したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第4 当審における審尋(要旨)
当審において、請求人に対し、令和4年5月11日付け審尋で、「本願標章は、商標法第64条第1項及び同条第2項に規定する要件を具備しない。」旨の暫定的見解を通知し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。
第5 審尋に対する請求人の意見
請求人は、上記第4の審尋に対して、所定の期間内に何ら応答するところがない。
第6 当審の判断
1 防護標章登録の要件(商標法第64条)について
防護標章登録制度に係る商標法第64条第1項は、「商標権者は、商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品又は役務について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。」旨規定し、同法第64条第2項は、「商標権者は、役務に係る登録商標が自己の業務に係る指定役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定役務及びこれに類似する役務以外の役務又は指定役務に類似する商品以外の商品について他人が登録商標の使用をすることによりその役務又は商品と自己の業務に係る指定役務とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある役務又は商品について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。」旨規定する。
2 本願標章が商標法第64条に規定する要件を具備するか否かについて
(1)本願標章と原登録商標との同一性、請求人と原登録商標の商標権者との同一性
本願標章は、前記第1及び第2のとおり、原登録商標と同一の構成態様からなるものである。
また、請求人と原登録商標の商標権者とは、本願標章に係る願書における出願人の記載及び原登録商標に係る商標登録原簿における商標権者の記載に照らせば、同一人であることが認められる。
(2)原登録商標が請求人の業務に係る指定商品又は指定役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているか否かについて
請求人は、本願標章について、商標法第64条に規定する要件を具備するものである旨主張し、証拠方法として、第1号証ないし第63号証(枝番号を含む。)を提出している(本審決においては、以下、当該第1号証ないし第63号証(枝番号を含む。)を、順次、甲第1号証ないし甲第63号証(枝番号を含む。)と読み替え、例えば、第1号証は、「甲1」のように記載する。)。
そこで、請求人の主張及び同人提出に係る甲各号証についてみると、以下のとおりである。
ア 原登録商標の使用時期及びその使用に係る役務
(ア)請求人は、国立大学法人愛媛大学であるところ、その英語表記は、「EHIME UNIVERSITY」(原登録商標)であり、昭和24年5月31日に、請求人の主たる業務に係る指定役務である「知識の教授」について、原登録商標の使用を開始したと主張する(請求人の主張)。
(イ)請求人は、平成2年(1990年)に、日本語と英語で作成された「愛媛大学とエセックス大学との学術交流に関する協定書」の英語版において、原登録商標を使用している(甲3)。また、請求人の大学に所属していた者が執筆した昭和24年の学術論文の脚注において、執筆者の所属、氏名等の英語表記の一部に原登録商標が表示されている(甲2)。
イ 原登録商標の使用に係る役務の広告宣伝等
(ア)請求人は、2007年(平成19年)から2021年(令和3年)に、請求人のウェブサイトや、請求人の学部や研究室等の所属組織のウェブサイト(以下「請求人の各所属組織のウェブサイト」という場合がある。)において(甲6~甲11、甲61)、原登録商標を使用している。
そして、請求人のウェブサイトの2019年度(令和元年度)のアクセス数は、約180万回(甲12)とされている。
(イ)2021年(令和3年)の文部科学省の英語版のウェブサイトにおいて、「Program for Enhancing Employment of International Students」の見出しの下、「Program Selection University Website」の項に、また、「The International Priority Graduate Programs (PGP) -Advanced Graduate Courses for Internarional Students-」の見出しの下、「University」の項に、原登録商標の一部の文字を小文字で表記した「Ehime University」の文字が、それぞれ表示されている(甲5)。
(ウ)請求人は、2020年(令和2年)の請求人の大学のパンフレットにおいて(甲1)、2019年(令和元年)及び2020年(令和2年)にその教育等に関する情報を外部に発信するために発行した広報誌において(甲15、甲16)、それぞれ原登録商標を使用している。
そして、2020年(令和2年)の請求人のパンフレットは、5500部印刷したとされる(請求人の主張)。また、2019年(令和元年)及び2020年(令和2年)の請求人の広報誌は、18000部ずつ印刷され(請求人の主張)、全国に所在する、170程度の官公庁、地方公共団体等、160程度の大学、高等学校等、740程度の企業に配布したとされる(甲14)。
(エ)2020年(令和2年)6月3日付け及び同年11月25日付け日本経済新聞が発表した調査(以下、それぞれ「調査1」及び「調査2」という。)において、約800の企業採用担当者による有効回答があった「採用を増やしたい大学」の10位に「愛媛大学」が、また、約3000の中国・四国地方に在住する中学生以上の子供がいる者等による有効回答があった「大学ブランド・イメージ調査2020-2021」において、中国・四国地方の主要59校のうち、4位に「愛媛大学」が選定されている(甲20、甲21)。
ウ 小括
上記ア及びイによれば、請求人は、原登録商標を、自己の業務に係る指定役務中、主に「知識の教授」について、昭和24年頃に使用を開始し、同年の学術論文の脚注、平成2年の学術交流に関する協定書(英語版)、令和元年度の各所属組織のウェブサイト、令和2年のパンフレット、令和元年及び令和2年の広報誌などにおいて、請求人の英語表記として使用し、また、令和3年の文部科学省の英語版のウェブサイトにおいて、原登録商標の一部の文字を小文字で表記した「Ehime University」の文字が表示されていることがうかがえる。
しかしながら、令和元年度の各所属組織のウェブサイトのアクセス数は約180万回とされている一方、当該年度以外の回数は不明であるし、その他の請求人の各所属組織のウェブサイトの各年におけるアクセス数は不明であって、需要者がどの程度、閲覧しているかが明らかではない。
また、令和2年のパンフレットの印刷部数(5500部)、令和元年及び令和2年の広報誌の印刷部数(18000部)や配布先(170程度の官公庁等、160程度の大学等、740程度の企業)などを客観的に裏付ける証拠の提出はないし、その頒布時期(期間)や令和2年分以外の数量等の詳細は不明である。
そして、令和2年の日本経済新聞が発表した調査記事(調査1及び調査2)に、「愛媛大学」が選定されているが、各記事には、原登録商標は表示されていない。また、その他、請求人が、その著名性を裏付ける証拠として提出した平成28年から令和2年の約5年間の請求人に関する各新聞記事の写しには、「愛媛大学(愛媛大)」の文字の記載はあるものの、原登録商標は表示されていないし、それ以外の年における記事(原登録商標が表示されたもの)は提出されていない。
さらに、調査1の回答者である企業採用担当者は、請求人の主な役務である「知識の教授」の需要者であるとはいい難く、また、調査2は中国・四国地方に限定されたものであって、請求人の主な役務である「知識の教授」の需要者の認識を示しているものとはいえない。
そして、提出された証拠によっては、昭和25年から平成元年の約39年間、平成3年から平成19年の約16年間における原登録商標の使用の状況を確認することができない。
以上を踏まえると、提出された証拠によっては、原登録商標が、請求人の業務に係る指定商品又は指定役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至っているとは認められない。
(3)商標法第64条に規定する要件との関係について
上記(1)のとおり、本願標章は、原登録商標と同一の構成態様からなるものであり、また、請求人と原登録商標の商標権者とが同一人であることは認められる。
しかしながら、上記(2)のとおり、本件の審決時において、原登録商標が、請求人の業務に係る指定商品又は指定役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至っていると認められないものである。
そうすると、他人が、原登録商標を、それに係る指定商品又は指定役務とは非類似の本願の指定役務に使用したとしても、その役務と、請求人の業務に係る指定商品又は指定役務とが出所の混同を生ずるおそれがあるものとはいえない。
したがって、本願標章は、商標法第64条第1項及び同条第2項に規定する要件を具備するものではない。
3 請求人の主張について
請求人は、請求人が長きにわたって原登録商標を使用していること、請求人自体が全国的に広く認識されているといえること、原登録商標(「EHIME UNIVERSITY」)は、請求人の大学名である「愛媛大学」の唯一の英語表記であって、「愛媛大学」と「EHIME UNIVERSITY」は表裏一体の関係にあることから、原登録商標は、「愛媛大学」の文字と同様に、請求人の出所表示として、請求人の主たる業務に係る「知識の教授」の需要者の間で全国的に広く認識されている旨を主張する。
しかしながら、防護標章登録に係る商標法第64条の規定については、「同項の規定は、原登録商標が需要者の間に広く認識されるに至った場合には、第三者によって、原登録商標が、その本来の商標権の効力(商標法第36条、同法第37条)の及ばない非類似商品又は役務に使用されたときであっても、出所の混同をきたすおそれが生じ、出所識別力や信用が害されることから、そのような広義の混同を防止するために、『需要者の間に広く認識されている』商標について、その効力を非類似の商品又は役務について拡張する趣旨」で設けられたものである。(知財高裁平成21年(行ケ)第10189号、平成22年2月25日判決言渡)
そうすると、防護標章登録出願の標章は、原登録商標と同一の標章であることが前提になるものの、「愛媛大学」の文字と原登録商標とは、明らかに構成文字が相違するものであるから、「愛媛大学」の文字の使用と原登録商標の使用とを同一視することはできない。
そして、請求人提出に係る証拠のうち、昭和24年の学術論文の脚注や平成2年の学術交流に関する協定書(英語版)等において、原登録商標の記載があることから、請求人は、原登録商標を使用していることはうかがえるものの、上記2(2)のとおり、原登録商標は、請求人の業務に係る指定商品又は指定役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至っていると認めることはできないものであって、上記2(3)のとおり、他人が、原登録商標をそれに係る指定商品又は指定役務とは非類似の本願の指定役務に使用したとしても、その役務と請求人の業務に係る指定商品又は指定役務とが出所の混同を生ずるおそれがあるものとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、本願標章は、商標法第64条第1項及び同条第2項に規定する要件を具備しないものであるから、防護標章として登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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