特許拒絶査定不服審判
2021-006847
新たなX線撮像技法
- 審判番号
- 2021-006847
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-195349
- 請求日
- 2021年05月27日
- 審決日
- 2022年11月22日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エフ イー アイ カンパニ
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 審判長/審判官
- 審判長 樋口 宗彦
- 審判官 福島 浩司
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 分類
- P18 .121-Z (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016-195349「新たなX線撮像技法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開、特開2017- 96923〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月3日(パリ条約による優先権主張 2015年11月18日 欧州特許庁)の出願であって、令和2年7月30日付けで拒絶理由が通知され、同年10月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和3年3月25日付けで拒絶査定されたところ、同年5月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和3年5月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年5月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
X線撮像装置を使って試料を撮像する方法であって、
・試料ホルダー上に前記試料を設ける段階と;
・源からのX線束を前記試料を通してX線カメラに向ける段階とを含み、
以下の段階、すなわち:
・前記源を要素源のクラスターであって、前記試料に対して狭い角度広がりをもつクラスターとして具現する段階であって、前記クラスターをなす前記要素源が、前記X線撮像装置が有する複数の要素源から選択される、段階と;
・前記カメラを使って、前記要素源からの累積的な合成画像を記録する段階と;
・前記合成画像を数学的に畳み込み解除する段階とをさらに含み、
前記要素源の少なくともいくつかが前記試料を撮像するために逐次的に動員される、
ことを特徴とする方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年10月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
X線撮像装置を使って試料を撮像する方法であって、
・試料ホルダー上に前記試料を設ける段階と;
・源からのX線束を前記試料を通してX線カメラに向ける段階とを含み、
以下の段階、すなわち:
・前記源を要素源のクラスターであって、前記試料に対して狭い角度広がりをもつクラスターとして具現する段階と;
・前記カメラを使って、前記要素源からの累積的な合成画像を記録する段階と;
・前記合成画像を数学的に畳み込み解除する段階とをさらに含み、
前記要素源の少なくともいくつかが前記試料を撮像するために逐次的に動員される、
ことを特徴とする方法。」
2 補正の適否
本件補正は、補正前の「前記源を要素源のクラスターであって、前記試料に対して狭い角度広がりをもつクラスターとして具現する段階」を「前記源を要素源のクラスターであって、前記試料に対して狭い角度広がりをもつクラスターとして具現する段階であって、前記クラスターをなす前記要素源が、前記X線撮像装置が有する複数の要素源から選択される、段階」であるとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2015/0228440号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審にて付した。以下同様である。)
(引1a)「[0014] The present invention further provides an X-ray source for X-ray imaging including: a plurality of X-ray micro-light sources, wherein the plurality of X-ray microlight sources are distributed at different known spatial locations to irradiate an object, thereby obtaining a raw image consisting of superimposed images of the object.
[0015] The invention further provides an X-ray source for X-ray imaging that includes an electron gun configured to generate an electron beam; a plate; and a plurality of metal micro-targets arranged into an array on a surface of the plate; wherein the electron beam hits a portion or all of the plurality of metal micro-targets to generate X-rays.」(当審訳:「【0014】本発明はさらに、複数のX線マイクロ光源を含み、複数のX線マイクロ光源が異なる既知の空間位置に分布して対象物を照射し、それによって対象物の重畳画像からなる生画像を得る、X線イメージング用X線源を提供する。
【0015】本発明はさらに、電子ビームを生成するように構成された電子銃と、プレートと、プレートの表面上にアレイ状に配置された複数の金属マイクロターゲットとを含み、電子ビームが複数の金属マイクロターゲットの一部又は全部に当たってX線を発生するX線イメージング用光源を提供する。」)
(引1b)「[0048] FIG. 3 illustrates another X-ray source 300 for X-ray phase contrast imaging of the present invention, which still employs a plurality of X-ray micro-light sources. The embodiment shown in FIG. 3 is different from the aforementioned two embodiments in that X-rays are generated at different spatial locations by means of scanning. As shown in FIG. 3, a pulsed electron source 301 is configured to generate an electron beam 303 which is directed to different locations at a metal target 304 by a scanning electrode 302. Thus, X-rays 305 can be generated at different locations, thereby realizing an X-ray source with a plurality of micro-light sources. In this embodiment, the X-rays are collected at the other side of the metal target 304 opposite to the side to which the electron beam 303 is incident. However, for an X-ray source with a plurality of micro-light sources realized by means of scanning, the X-rays can also be collected at the side of the metal target to which the electron beam is incident. As to other aspects to be taken into consideration for the design, such as the size of each of the plurality of micro-light sources or the spacing between any two adjacent micro-light sources, they are similar to those considered for the light sources shown in FIG. 1 and FIG. 2. The biggest difference between this embodiment employing the scanning technique and the aforementioned two embodiments is that consideration is given to the time required for capturing images. In systems for forming medical images or images of a living body, the restriction on the time required for capturing images should be taken into consideration. Obviously, a complete scanning cycle ( during which the electron beam scans each predetermined location) must be shorter than the time required for capturing images. Generally, in the practice of medical imaging, the time required for capturing images needs to be controlled within 1 second. For the X-ray source shown in FIG. 3, a complete scanning cycle of the electron beam is 1 second or shorter.
[0049] FIG. 4 illustrates a system for X-ray imaging 400. In this embodiment, an X-ray source 401 similar to the one in FIG. l or FIG. 2 is provided. The X-ray source 401 comprises a plurality of linearly aligned X-ray micro-light sources and is configured to irradiate an object 402. An X-ray sensor 403 is configured to receive X-rays that penetrate the object 402, and the X-rays penetrating the object form a raw image 404. As the X-ray source 401 comprises the plurality of X-ray microlight sources, the raw image 404 is a blurred image consisting of superimposed images of the object 402. It is to be noted that the raw image 404 contains not only information about edges enhanced by phase contrast imaging but also contrast information generated because of different amounts of X-ray absorbed by various materials ( or different tissues). Consequently, the restored image also contains these information. As shown in FIG. 4, the raw image data detected by the X-ray sensor 403 is computed by a computer 405 and restored to a clear image 406. The computation mainly includes deconvolution so that the superimposed images can coincide with each other.」(当審訳:「【0048】図3は、本発明のX線位相コントラストイメージングのための別のX線源300を示し、やはり複数のX線マイクロ光源を採用するものである。図3に示す実施形態は、走査によって異なる空間位置にX線を発生させる点で前述の2つの実施形態と異なる。図3に示すように、パルス電子源301は、走査電極302によって金属ターゲット304の異なる位置に向けられる電子ビーム303を生成するように構成されている。したがって、異なる位置にX線305を発生させることができ、これにより、複数の微小光源を有するX線源を実現することができる。なお、本実施形態では、金属ターゲット304の電子ビーム303が入射する側と反対側の他方の面においてX線を収集する。しかし、走査によって実現される複数の微小光源を有するX線源では、金属ターゲットの電子ビームが入射する側でX線を収集することも可能である。複数のマイクロ光源のそれぞれの大きさや、隣接する任意の2つのマイクロ光源間の間隔など、設計上考慮すべき他の点については、図1および図2に示す光源について考慮したものと同様である。走査技術を採用した本実施形態と前記2つの実施形態との最大の相違点は、画像の撮影に要する時間について考慮されている点である。医用画像や生体の画像を形成するシステムにおいては、画像の取り込みに要する時間の制約を考慮する必要がある。当然ながら、1回の走査(電子ビームが所定位置を走査する時間)は、画像の撮影に要する時間よりも短くなければならない。一般に、医用画像診断では、画像撮影に要する時間を1秒以内に制御する必要がある。図3に示すX線源では、電子ビームの完全な走査周期は1秒以下である。
【0049】図4は、X線撮影用システム400を示す図である。本実施形態では、図1または図2のものと同様のX線源401が設けられている。X線源401は、直線的に配列された複数のX線マイクロ光源からなり、物体402に照射するように構成されている。X線センサ403は、物体402を透過したX線を受光するように構成されており、物体を透過したX線が生画像404を形成する。X線源401が複数のX線微光源からなるため、生画像404は、物体402の画像が重畳して構成されたぼやけた画像となる。なお、生画像404には、位相差撮影によって強調されたエッジの情報だけでなく、様々な物質(または異なる組織)によって吸収されるX線の量が異なるために生じるコントラスト情報も含まれている。その結果、復元画像にもこれらの情報が含まれる。図4に示すように、X線センサ403で検出された生画像データは、コンピュータ405で計算され、鮮明な画像406に復元される。この演算には、重ね合わせた画像が互いに一致するように、主にデコンボリューションが含まれる。」)
(引1c)「
[図:0001396614000001.jpg]
」
(引1d)「
[図:0001396614000002.jpg]
」
(引1e)「
[図:0001396614000003.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
(ア)上記(引1b)より、引用文献1には、
「図1または図2のものと同様のX線源401が設けられ、
X線源401は、物体402に照射するように構成され、
X線センサ403は、物体402を透過したX線を受光するように構成され、
物体を透過したX線が生画像404を形成する
X線撮影用システム400。」
が記載されており、この「X線撮影用システム400」において、「物体を透過したX線」が「形成する」「生画像404」は、「X線源401が複数のX線微光源からなるため」、「物体402の画像が重畳して構成されたぼやけた画像となる」が、「X線センサ403で検出された生画像データ」は、「コンピュータ405で」、「重ね合わせた画像が互いに一致するよう」な、「主にデコンボリューション」を「含」む「演算」を使用して「計算され、鮮明な画像406に復元されるから」、引用文献1には、「X線撮影用システム400」を使って「物体402」を撮影する方法として、以下の方法が記載されているといえる。
「図1または図2のものと同様のX線源401が設けられ、
X線源401は、物体402に照射するように構成され、
X線センサ403は、物体402を透過したX線を受光するように構成され、
物体を透過したX線が生画像404を形成する
X線撮影用システム400を使って物体402を撮影する方法において、
複数のX線微光源からなるX線源401による物体402の画像が重畳して構成されたぼやけた画像である、
X線センサ403で検出された生画像データを、
コンピュータ405で、重ね合わせた画像が互いに一致するような、主にデコンボリューションを含む演算を使用して計算することにより、鮮明な画像406に復元する
方法。」
(イ)上記(引1b)には、「X線位相コントラストイメージングのための別のX線源300」として、「走査によって異なる空間位置にX線を発生させ」「パルス電子源301は、走査電極302によって金属ターゲット304の異なる位置に向けられる電子ビーム303を生成するように構成され」「異なる位置にX線305を発生させること・・・により、複数の微小光源を有するX線源を実現することができる」旨記載されていることから、引用文献1に記載の上記(ア)で検討した「X線撮影用システム400を使って物体402を撮影する方法」には、「図1または図2のものと同様のX線源401」とは別の線源として「X線源300」を使用した場合も含まれていることから、引用文献1には、「X線源300」を使用した発明として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「走査によって異なる空間位置にX線を発生させ、
パルス電子源301は、走査電極302によって金属ターゲット304の異なる位置に向けられる電子ビーム303を生成するように構成され,
異なる位置にX線305を発生させることにより、複数の微小光源を有するX線源を実現することができるX線源300が設けられ、
X線源300は、物体402を照射するように構成され、
X線センサ403は、物体402を透過したX線を受光するように構成され、
物体を透過したX線が生画像404を形成する
X線撮影用システム400を使って物体402を撮影する方法において、
複数のX線微光源からなるX線源300による物体402の画像が重畳して構成されたぼやけた画像である、
X線センサ403で検出された生画像データを、
コンピュータ405で、重ね合わせた画像が互いに一致するような、主にデコンボリューションを含む演算を使用して計算することにより、鮮明な画像406に復元する
方法。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「X線撮影用システム400」及び「物体402」は、それぞれ、本件補正発明の「X線撮像装置」及び「試料」に相当する。そうすると、引用発明の「X線撮影用システム400を使って物体402を撮影する方法」は、本件補正発明の「X線撮像装置を使って試料を撮像する方法」に相当する。
(イ)引用発明の「X線源300」は、本件補正発明の「源」に相当する。また、「X線センサ403は、物体402を透過したX線を受光するように構成され」、「物体を透過したX線が生画像404を形成する」から、「X線センサ403」で受光した「物体を透過したX線」により「生画像404を形成する」手段は、本件補正発明の「X線カメラ」に相当するといえる。そして、引用発明の「X線源300」は、「複数の微小光源を有するX線源」であって、「異なる位置にX線305を発生させる」ものであるから、引用発明の「微小光源」及び「複数の微小光源」は、それぞれ、本件補正発明の「要素源」及び「要素源のクラスター」に相当し、引用発明の、「異なる位置」から「発生」する複数の「X線305」は、本件補正発明の「源からのX線束」に相当する。
(ウ)引用発明の「X線源300は、物体402を照射するように構成され、X線センサ403は、物体402を透過したX線を受光するように構成され」ているから、「X線源300」の「異なる位置」から「発生」する複数の「X線305」は、「物体402」を通して「X線センサ403」に向けられるものであって、「X線センサ403」は、「X線センサ403」で受光した「物体を透過したX線」により「生画像404を形成する」手段の構成要素である。
そうすると、引用発明の「X線源300」の「異なる位置」から「発生」する複数の「X線305」を、「物体402」を通して「X線センサ403」で受光した「物体を透過したX線」により「生画像404を形成する」手段に向けらることは、本件補正発明の「源からのX線束を前記試料を通してX線カメラに向ける段階」に相当する。
(エ)引用発明の「複数の微小光源」を有する「X線源300は、物体402を照射するように構成され」ているから、引用発明の「複数の微小光源」を有する「X線源300」が、「物体402を照射する」ことと、本件補正発明の「前記源を要素源のクラスターであって、前記試料に対して狭い角度広がりをもつクラスターとして具現する段階であって、前記クラスターをなす前記要素源が、前記X線撮像装置が有する複数の要素源から選択される、段階」とは、「前記源を要素源のクラスターであって、前記試料に対してクラスターとして具現する段階」である点で共通する。
(オ)引用発明の「物体を透過したX線」が形成した「生画像404」は、「複数のX線微光源からなるX線源300による物体402の画像が重畳して構成されたぼやけた画像である」って、「コンピュータ405」で「計算」されるものである。コンピュータで計算する場合、通常何らかの記録媒体に記録されるものである。また、「物体を透過したX線」が形成した「生画像404」は、「X線センサ403」で受光した「物体を透過したX線」により「生画像404を形成する」手段を使って形成されるものである。
そうすると、引用発明の「複数のX線微光源からなるX線源300による物体402の」「重畳」された「生画像404」は、本件補正発明の「前記要素源からの累積的な合成画像」に相当し、引用発明の「X線センサ403」で受光した「物体を透過したX線」により「生画像404を形成する」手段を使って、「複数のX線微光源からなるX線源300による物体402の」「重畳」された「生画像404」を記録することは、本件補正発明の「前記カメラを使って、前記要素源からの累積的な合成画像を記録する段階」に相当する。
(カ)引用発明の「X線センサ403で検出された生画像データ」は、「コンピュータ405で、重ね合わせた画像が互いに一致するような、主にデコンボリューションを含む演算を使用して計算することにより、鮮明な画像406に復元」されるものであって、「重ね合わせた画像が互いに一致するような、主にデコンボリューションを含む演算を使用して計算することにより、鮮明な画像406に復元」することは、「複数のX線微光源からなるX線源300による物体402の」「重畳」された「生画像404」を「数学的に畳み込み解除する」ことであるから、引用発明の、「複数のX線微光源からなるX線源300による物体402の」「重畳」された「生画像404」を「コンピュータ405で、重ね合わせた画像が互いに一致するような、主にデコンボリューションを含む演算を使用して計算することにより、鮮明な画像406に復元する」ことは、本件補正発明の「前記合成画像を数学的に畳み込み解除する段階」に相当する。
(キ)引用発明の「X線源300」は、「異なる位置にX線305を発生させる」ための「複数の微小光源を有するX線源」であって、「走査によって異なる空間位置にX線を発生させ」るものである。そして、発生したX線は、「物体を透過し」て「生画像404を形成する」ためのものである。そうすると、引用発明の、「物体を透過したX線が生画像404を形成する」ために「複数の微小光源」を「走査によって異なる空間位置にX線を発生させ」ることと、本件補正発明の「前記要素源の少なくともいくつかが前記試料を撮像するために逐次的に動員される」こととは、「前記要素源が前記試料を撮像するために逐次的に動員される」ことで共通する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)「X線撮像装置を使って試料を撮像する方法であって、
・源からのX線束を前記試料を通してX線カメラに向ける段階とを含み、
以下の段階、すなわち:
・前記源を要素源のクラスターであって、前記試料に対してクラスターとして具現する段階と;
・前記カメラを使って、前記要素源からの累積的な合成画像を記録する段階と;
・前記合成画像を数学的に畳み込み解除する段階とをさらに含み、
前記要素源が前記試料を撮像するために逐次的に動員される、
ことを特徴とする方法。」
(相違点1)本件補正発明は、「試料ホルダー上に前記試料を設ける段階」を含んでいるのに対し、引用発明はそのような特定がない点。
(相違点2)要素源のクラスターが、本件補正発明は、「前記試料に対して狭い角度広がりをもつクラスターとして具現」しているのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点3)前記要素源が、本件補正発明は、「前記X線撮像装置が有する複数の要素源から選択される」ものであって、「前記要素源の少なくともいくつかが前記試料を撮像するために」「動員される」ものであるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
X線撮影用システムを用いて、物体等の試料を撮影する際に、試料は通常何らかの手段によって支持されるものであって、試料を支持するために試料ホルダーを使用することは、当該技術分野において常套手段に過ぎないから、上記相違点1は実質的な相違点であるとはいえないし、たとえ相違点であるとしても、当業者が容易に想到できたことであるといえる。
イ 相違点2について
本件補正発明の「前記試料に対して狭い角度広がり」に関し、本件明細書の詳細な説明の段落【0034】に、「・・・本発明では、要素源のクラスターの角度スパン(分散、広がり)は、θ≪180°という意味で「狭い」。・・・」と記載されていることから、本件補正発明の「前記試料に対して狭い角度広がり」の「狭い角度」は「θ≪180°」であると理解することが妥当であるといえる。そして、上記(引1e)より、「X線源401」の複数の微小光源からのX線の角度拡がりの角度は、180°より極めて狭い角度である点が見て取れ、「X線源300」の「複数のマイクロ光源のそれぞれの大きさや、隣接する任意の2つのマイクロ光源間の間隔など、設計上考慮すべき他の点については、図1および図2に示す光源について考慮したものと同様である」ことから、「X線源300」の「複数の微小光源」からの「X線305」の角度拡がりも180°より極めて狭い角度であることは明らかである。
そうすると、相違点2は実質的な相違点であるとはいえず、仮に相違点であったとしても、当業者が容易に想到できたものであるといえる。
ウ 相違点3について
上記(引1a)に「電子ビームを生成するように構成された電子銃と、プレートと、プレートの表面上にアレイ状に配置された複数の金属マイクロターゲットとを含み、電子ビームが複数の金属マイクロターゲットの一部又は全部に当たってX線を発生するX線イメージング用光源を提供する。」旨記載されていることから、引用文献1には、「電子ビームが複数の金属マイクロターゲットの一部・・・に当たってX線を発生するX線イメージング用光源」が記載されている。また、引用発明において、「X線撮影用システム400を使って物体402を撮影する」際に、どのようなX線源を使用するかは、撮影する物体の種類や撮影する条件等により適宜設定されるものであって、引用発明の「X線源300」に、上記「電子ビームが複数の金属マイクロターゲットの一部・・・に当たってX線を発生するX線イメージング用光源」を適用し、「複数の微小光源」の一部の微小光源の一部を使用することにより、上記相違点3にかかる構成とすることは、当業者が、容易に想到できたことであるといえる。
エ 効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、引用文献1に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ 請求人の主張について
令和3年5月27日に提出した審判請求書において出願人は、「「前記源を要素源のクラスター……として具現する段階」において、「前記クラスターをなす前記要素源が、前記X線撮像装置が有する複数の要素源から選択される」ことは、引用文献1~4のいずれにも記載されておらず、引用文献1または引用文献2または引用文献3を変更してそのような構成にすることは、不可能であるか、あるいは少なくとも容易に想到できたことではないと思料します。」旨主張しているが、上記ウで検討したとおり、引用文献1には、「電子ビームが複数の金属マイクロターゲットの一部・・・に当たってX線を発生するX線イメージング用光源」が記載されており、該「X線イメージング用光源」を引用発明に適用し、「X線源300」を「複数の微小光源」から一部を選択される光源とすることは、当業者が容易に想到できたことであるといえるから、この請求人の主張は採用されない。
カ 小括
上記ア~エより、本件補正発明は、引用発明に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年5月27日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年10月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の補正前の特許請求の範囲の請求項1に対する拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献4に記載された技術事項に基づいて、引用文献2に記載された発明及び引用文献4に記載された技術事項に基づいて若しくは引用文献3に記載された発明及び引用文献4に記載された技術事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.米国特許出願公開第2015/0228440号明細書
引用文献2.特表2012-522332号公報
引用文献3.特開2015-077289号公報
引用文献4.特開2011-151021号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記クラスターをなす前記要素源が、前記X線撮像装置が有する複数の要素源から選択される、段階」を含む旨の限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-006847