特許拒絶査定不服審判
2021-006402
角度調整可能な出口ポータルを有する内視鏡付属物
- 審判番号
- 2021-006402
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-052885
- 請求日
- 2021年05月19日
- 審決日
- 2022年05月31日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジーアイ・サイエンティフィック・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】須田 洋之
- 【請求人代理人】倉澤 伊知郎
- 【請求人代理人】山本 泰史
- 【請求人代理人】石崎 亮
- 審判長/審判官
- 審判長 福島 浩司
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 審判官 石井 哲
- 分類
- P18 .121-WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 52885「角度調整可能な出口ポータルを有する内視鏡付属物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月 9日出願公開、特開2018-122121〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)7月21日(パリ条約による優先権主張 2015年7月21日 米国)を国際出願日として出願した特願2018-502721号の一部を、平成30年3月20日に新たに外国語書面出願したものであって、令和2年5月15日付けで拒絶理由が通知され、同年8月19日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年1年19日付けで拒絶査定されたところ、同年5月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、同年7月19日に審判請求人から上申書の提出がなされたものである。その後当審において同年10月29日付けで拒絶理由が通知され、令和4年2月21日に意見書及び手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。
第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである(分説は当審による。)。
「 【請求項1】
構成A 力を伝達するコネクタ及びワーキング・チャンネルを含む遠位端を有する内視鏡のためのカプラー・デバイスであって、
構成B 本体を有して成り、該本体が、近位端、遠位端ならびにそれらの間に延在する上方表面および下方表面を有し、
構成C 前記本体の近位端が、内視鏡の遠位端を受けるための、また取り外し可能に係合するための開口部を有し、
構成D 前記本体が、連結可能な昇降部、および、前記本体内において前記昇降部に関節連結される関節連結要素をさらに含み、
構成E 前記内視鏡からの力を伝達して前記昇降部を関節連結するように前記本体の前記近位端が前記内視鏡の前記遠位端に係合したときに、前記関節連結要素が前記コネクタに接触するよう位置決めされ、ならびに
構成F 前記本体の上方表面が、係合される内視鏡を用いて視覚化を可能とする開口部を有し、一方で下方表面が、閉じた表面を有し、
構成G 前記本体は、開口を有し、前記開口は、前記近位端が前記内視鏡の前記遠位端に係合されたときに、当該開口を通る器具が前記昇降部に接触するように位置決めされ、
構成H 前記カプラー・デバイスは、使い捨てデバイスであり、且つシングルユース用途となっている、
構成I カプラー・デバイス。」
第3 拒絶の理由
当審において令和3年10月29日付けで通知した拒絶理由のうちの第4 理由4(第4-1 引用文献1を主引用例とした場合)は、次のとおりのものである。
本願の請求項3及び4(本件補正前の、令和3年5月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項3及び4)に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2002-17655号公報
引用文献2:特開平6-315460号公報
第4 引用文献の記載、引用発明及び引用文献2技術的事項
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同じ。)。
(引1ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、処置具類の突出方向を変えるための処置具起上片が挿入部先端に配置された内視鏡の先端部に関する。」
(引1イ)
「【0009】
【発明の実施の形態】図面を参照して本発明の実施例を説明する。図2は側方視型内視鏡の挿入部の先端部分を示しており、ステンレス鋼製の先端部本体1の側面に観察窓3と照明窓4が並んで配置されている。
【0010】先端部本体1の表面は、先端部本体1に着脱自在に取り付けられた電気絶縁性の弾力性のあるゴム材等からなる先端キャップ2によって、観察窓3と照明窓4部分を除く全ての部分が覆われている。
【0011】先端キャップ2の後端部分2aは内側に小さく折れ曲がった形状に形成されており、その後端部分2aが先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合することにより先端キャップ2が先端部本体1に係止され、先端キャップ2の後端部分2aを弾性変形させることにより、先端キャップ2を先端部本体1から前方にスライドさせて取り外すことができる。
【0012】観察窓3及び照明窓4と並んで、処置具起上片6が収容された処置具誘導室5が形成されている。この処置具誘導室5を形成するために、先端部本体1は、図3に単体で図示されるように、観察窓3と照明窓4の側方に沿う半部が切除された形状に形成されている。
【0013】また、先端キャップ2側も、図2におけるIV-IV断面を図示する図4に示されるように、先端部本体1との間に一定幅の溝(処置具誘導室5)ができる形状に形成されている。
【0014】図4に示されるように、観察窓3の内側には直角プリズム等を含む対物光学系13が配置されている。14は、射出端面が照明窓4の内側に配置されているライトガイドファイババンドルである。
【0015】図1は、図2におけるI-I断面を示している。ただし、理解し易いようにするために、実際にはI-I断面に現れない操作ワイヤ7を図1に含めて図示してある。
【0016】9は、処置具が挿通される処置具挿通チャンネルであり、内視鏡挿入部内に全長にわたって挿通配置され、処置具挿通チャンネル9の先端が処置具誘導室5の後端下部に連通するように先端部本体1に接続固着されている。
【0017】処置具起上片6は、先端キャップ2と一繋がりに先端キャップ2と一体に形成されている。処置具起上片6は、処置具誘導室5内を通過する処置具100の先端が外方に向かってスムーズに突出するように案内する湾曲した斜面を有している。
【0018】その斜面には、処置具100との間の摩擦抵抗を小さくするために、ステンレス鋼板材等からなる滑りのよい案内板6bが取り付けられている。ただし、必ずしも案内板6bはなくてもよい。
【0019】処置具起上片6は、薄く形成された基部6aにおいてのみ先端キャップ2と繋がっており、その部分を弾性変形させながら処置具誘導室5内において傾動することができる。
【0020】処置具起上片6の基部6aから離れた位置に、操作ワイヤ7の端部7aが係止されている。その部分は、図4に示されるように、直角に曲げられた操作ワイヤ7が処置具起上片6に形成された孔に通され、操作ワイヤ7の端部7aがテーパ状に広がった形状に形成されて、処置具起上片6からの抜け止めになっている。
【0021】操作ワイヤ7は、図1及び図2に示されるように、内視鏡挿入部内に全長にわたって挿通配置されたガイドパイプ8内から先端部本体1に形成された通過孔10内に、軸線方向に進退自在に挿通されている。
【0022】そして、図示されていない操作部側から操作ワイヤ7を牽引操作することにより、図1に二点鎖線で示されるように、処置具起上片6が起上して処置具100の突出方向を任意に変えることができる。
【0023】なお、処置具起上片6に形成された操作ワイヤ係合孔に連続してその背部側に溝6cが形成されており、操作ワイヤ7をその溝6cから抜き出して処置具起上片6と分離することができる。
【0024】このように構成された内視鏡の先端部においては、内視鏡検査が終了する毎に、先端部本体1から先端キャップ2を取り外して双方の内部を洗浄することができ、その際に、処置具起上片6が先端キャップ2と共に先端部本体1から取り外される。
【0025】したがって、処置具起上片6及び処置具誘導室5内に付着した体内汚物等を十分に洗浄して除去することができ、被検者間感染のおそれ等を大幅に低減させることができる。」
(引1ウ)
「【0026】図5は本発明の第2の実施例の内視鏡の先端部を示しており、処置具起上片6がステンレス鋼等の金属により形成されていて、支軸21により回動自在に先端キャップ2に支持されている。
【0027】また、処置具起上片6に連結された従動側フック22と操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23とを互いに引っかける状態に係合させて、処置具起上片6と操作ワイヤ7との分離を容易に行えるように構成してある。従動側フック22は、支軸25によって回動自在に処置具起上片6に連結されている。
【0028】したがって、前述の第1の実施例と同様に、先端部本体1から先端キャップ2を取り外すことにより、処置具起上片6が先端キャップ2と共に取り外され、処置具起上片6及び処置具誘導室5内に付着した体内汚物等を十分に洗浄して除去することができる。その他の構成は前述の第1の実施例と同じであり、それらの部分には第1の実施例と同じ符号を付して説明は省略する。」
(引1エ)
「【0029】
【発明の効果】本発明によれば、対物光学系等が配置された先端部本体の外表面を覆うように先端部本体に対して着脱自在に設けられた先端キャップに、処置具起上片を取り付けたことにより、内視鏡検査が終了する毎に、先端部本体から先端キャップを外して双方の内部を洗浄することができ、その際に処置具起上片が先端キャップと共に先端部本体から外れるので、処置具起上片及びその収容部分等に付着した体内汚物等を容易に洗浄して除去することができ、被検者間感染のおそれ等を大幅に低減させることができる。」
(引1オ)
「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡の先端部の側面断面図(図2におけるI-I断面図)である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡の先端部の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の内視鏡の先端部の先端部本体単体の斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施例の内視鏡の先端部の正面断面図(図2におけるIV-IV断面図)である。
【図5】本発明の第2の実施例の内視鏡の先端部の側面断面図である。」
(引1カ)図1
[図:0001390138000001.jpg]
(引1キ)図2
[図:0001390138000002.jpg]
(引1ク)図3
[図:0001390138000003.jpg]
(引1ケ)図4
[図:0001390138000004.jpg]
(引1コ)図5
[図:0001390138000005.jpg]
(2)引用文献1に記載された発明
ア (引1ウ)の第2の実施例は、【0028】「前述の第1の実施例と同様に、先端部本体1から先端キャップ2を取り外すことにより、処置具起上片6が先端キャップ2と共に取り外され、処置具起上片6及び処置具誘導室5内に付着した体内汚物等を十分に洗浄して除去することができる。その他の構成は前述の第1の実施例と同じであり、それらの部分には第1の実施例と同じ符号を付して説明は省略する」ものであるから、第2の実施例の内視鏡の先端部の構造等について、処置具起上片6とその機構を除き、(引1イ)の第1の実施例の記載及び図面を参照できる。
そして、上記(1)の記載及び図面から以下の技術的事項が整理できる。
(ア)図2から「先端キャップ2は、前端面、後端部分2a及び開口部を有する後端面、前端面と後端面の間を覆い、観察窓3と照明窓4部分及び処置具誘導室5の上方に開口部を有する環状側面を有する」ことが見て取れるので、第2の実施例(図5)の「先端キャップ2」も同様であることが理解できる。
(イ)【0011】「先端キャップ2の・・・後端部分2aが先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合する」、【0012】「観察窓3及び照明窓4と並んで、処置具起上片6が収容された処置具誘導室5が形成されている」との記載や、図2から、先端キャップ2の後端部分2aが、先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合した状態のとき、先端キャップ2内に、処置具起上片6が収容された処置具誘導室5が形成されることが見て取れることを踏まえると、第2の実施例における内視鏡の先端部では、「先端キャップ2の後端部分2aが、先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合した状態のとき、先端キャップ2内に、観察窓3及び照明窓4と並んで、処置具起上片6が収容された処置具誘導室5が形成される」ことが理解できる。
(ウ)【0011】「先端キャップ2の・・・後端部分2aが先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合する」、【0027】「処置具起上片6に連結された従動側フック22と操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23とを互いに引っかける状態に係合させて、・・・構成してある」との記載や図5を踏まえると、第2の実施例における内視鏡の先端部では、「先端キャップ2の後端部分2aが、先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合した状態のとき、処置具起上片6に連結された従動側フック22と操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23とを互いに引っかける状態に係合させている」ことが理解できる。
(エ)【0021】「操作ワイヤ7は、・・・先端部本体1に形成された通過孔10内に、軸線方向に進退自在に挿通されている」、【0022】「操作部側から操作ワイヤ7を牽引操作することにより、・・・処置具起上片6が起上して処置具100の突出方向を任意に変えることができる」、【0027】「処置具起上片6に連結された従動側フック22と操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23とを互いに引っかける状態に係合させて、・・・構成してある」との記載や、図5から、操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23が、先端部本体1の通過孔内を進退することが見て取れることを踏まえると、第2の実施例における内視鏡の先端部では、「操作部側から操作ワイヤ7を牽引操作することにより、操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23が先端部本体1の通過孔10内を進退し、駆動側フック23に係合された従動側フック22に連結した処置具起上片6が起上して処置具100の突出方向を任意に変えることができる」ことが理解できる。
(オ)【0026】「処置具起上片6が・・・支軸21により・・・先端キャップ2に支持されている」、【0027】「処置具起上片6に連結された従動側フック22と操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23とを互いに引っかける状態に係合させて、処置具起上片6と操作ワイヤ7との分離を容易に行えるように構成してある。従動側フック22は、支軸25によって・・・処置具起上片6に連結されている」、【0029】「内視鏡検査が終了する毎に、・・・処置具起上片が先端キャップと共に先端部本体から外れるので、処置具起上片及びその収容部分等に付着した体内汚物等を容易に洗浄して除去することができ、被検者間感染のおそれ等を大幅に低減させることができる」との記載を踏まえると、先端部本体1から先端キャップ2を取り外す際には、駆動側フック23と従動側フック22との係合状態が解除され、処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25が、先端キャップ2と共に取り外されることは明らかであるから、第2の実施例における内視鏡の先端部では、「内視鏡検査が終了する毎に、先端部本体1から、処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25が、先端キャップ2と共に取り外され、これらに付着した体内汚物等を洗浄して除去することができ、被検者間感染のおそれ等を大幅に低減させることができる」ことが理解できる。
イ 上記アの(ア)~(オ)を含め上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「側方視型内視鏡であって、
側方視型内視鏡の挿入部の先端部では、
先端部本体1の側面に観察窓3と照明窓4が並んで配置され、
先端部本体1の表面は、先端部本体1に着脱自在に取り付けられた先端キャップ2によって覆われ、
先端キャップ2は、前端面、後端部分2a及び開口部を有する後端面、前端面と後端面の間を覆い、観察窓3と照明窓4部分及び処置具誘導室5の上方に開口部を有する環状側面を有し、
先端キャップ2の後端部分2aが先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合することにより、先端キャップ2が先端部本体1に係止され、先端キャップ2の後端部分2aを弾性変形させることにより、先端キャップ2を先端部本体1から前方にスライドさせて取り外すことができ、
先端キャップ2の後端部分2aが、先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合した状態のとき、先端キャップ2内に、観察窓3及び照明窓4と並んで、処置具起上片6が収容された処置具誘導室5が形成され、
処置具100が挿通される処置具挿通チャンネル9の先端が処置具誘導室5の後端下部に連通するように先端部本体1に接続固着され、
処置具起上片6は、支軸21により回動自在に先端キャップ2に支持され、処置具誘導室5内を通過する処置具100の先端が外方に向かってスムーズに突出するように案内する湾曲した斜面を有し、
先端キャップ2の後端部分2aが、先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合した状態のとき、処置具起上片6に連結された従動側フック22と操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23とを互いに引っかける状態に係合させており、
従動側フック22は、支軸25によって回動自在に処置具起上片6に連結され、
操作部側から操作ワイヤ7を牽引操作することにより、操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23が先端部本体1の通過孔10内を進退し、駆動側フック23に係合された従動側フック22に連結した処置具起上片6が起上して処置具100の突出方向を任意に変えることができ、
内視鏡検査が終了する毎に、先端部本体1から、処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25が、先端キャップ2と共に取り外され、これらに付着した体内汚物等を洗浄して除去することができ、被検者間感染のおそれ等を大幅に低減させることができる、
側方視型内視鏡。」
2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
引用文献2には、次の事項が記載されている。
(引2ア)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、処理具起上装置を備えた内視鏡に関する。
・・・
【0010】図4および図5に示すように、先端部5は、先端部本体36と、先端部本体36を外部から覆う先端カバー8とから構成されている。また、先端カバー8は、先端部本体36に接着固定された固定カバー8aと、先端部本体36と固定カバー8aとからなる本体部32に着脱自在に取り付けられる着脱カバー8bとから構成されている。
【0011】図2および図3に示すように、先端部5の内部には、操作部4の鉗子口80から挿入部3内の処置具挿通チャンネル25を通じて案内された処置具2を所望の方向に突出させるための処置具起上台9が配設されている。図3に示すように、処置具起上台9は先端カバー8の着脱カバー8bに対して回転軸10により回転自在に軸支されている。処置具起上台9にはワイヤ接続部13を介して起上操作ワイヤ12が回転自在に接続されている。つまり、処置具起上台9と回転軸10と起上操作ワイヤ12とワイヤ接続部13とを有する着脱カバー8bは、これらをセットとして、内視鏡本体の先端部を形成する前記本体部32(先端部本体36と固定カバー8aとからなる。)に対して着脱自在となっている。なお、着脱カバー8bと一体に設けられたこのセットは、独立して扱われ、ピ―ルパックに入れられた状態で放射線滅菌された後にユ―ザ―に使用される。また、固定カバー8a、着脱カバー8b、処置具起上台9、回転軸10はすべてプラスチックによって形成されている。
・・・
【0045】着脱カバー8bと処置具起上台9と起上操作ワイヤ12とを取外す際は、まず、先尖り蝶ねじ74を取外し、着脱カバー8bを軸方向先端側に強く引張る。その際、着脱カバー8bが使い捨てである時は、クリック部64,64が破壊してもよい。そして、ワイヤ栓33とワイヤ接続部材19とを取外して、内視鏡1とワイヤ栓33とワイヤ接続部材19とを洗浄消毒する。」
(引2イ)図3
[図:0001390138000006.jpg]
(引2ウ)図4
[図:0001390138000007.jpg]
(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「処置具起上台9と回転軸10と起上操作ワイヤ12とワイヤ接続部13とを有する着脱カバー8bは、これらをセットとして、内視鏡本体の先端部を形成する本体部32に対して着脱自在となっている内視鏡において、着脱カバー8bが使い捨てであること。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 構成A及び構成I
(1)引用発明の「操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23」は、本願発明の「力を伝達するコネクタ」に相当し、引用発明の「処置具挿通チャンネル9」は、本願発明の「ワーキング・チャンネル」に相当し、引用発明の「側方視型内視鏡」の「先端部本体1」は、本願発明の「内視鏡」の「遠位端」に相当する。
また、引用発明では、「操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23が先端部本体1の通過孔10内を進退し」、「処置具挿通チャンネル9の先端が」「先端部本体1に接続固着され」るから、「先端部本体1」は、「操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23」及び「処置具挿通チャンネル9」を含むといえる。
すると、引用発明の「操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23」及び「処置具挿通チャンネル9」を含む「先端部本体1」を有する「側方視型内視鏡」は、本願発明の「力を伝達するコネクタ及びワーキング・チャンネルを含む遠位端を有する内視鏡」に相当するといえる。
(2)引用発明では、「先端部本体1から、処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25が、先端キャップ2と共に取り外され」るので、「処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25」を有する「先端キャップ2」は、一体的なユニットといえるから、引用発明の「処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25」を有する「先端キャップ2」は、本願発明の「カプラー・デバイス」に相当するといえる。
(3)上記(1)及び(2)から、引用発明の「操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23」及び「処置具挿通チャンネル9」を含む「先端部本体1」を有する「側方視型内視鏡」の「処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25」を有する「先端キャップ2」は、本願発明の「力を伝達するコネクタ及びワーキング・チャンネルを含む遠位端を有する内視鏡のためのカプラー・デバイス」に相当するといえる。
2 構成B
引用発明の「先端キャップ2」は、本願発明の「本体」に相当する。
引用発明の「後端面」は、本願発明の「近位端」に相当し、引用発明の「前端面」は、本願発明の「遠位端」に相当する。また、引用発明の「先端キャップ2」は、「上方に開口部を有する環状側面を有する」ことから、引用発明の「環状側面」のうち「開口部」がある「上方」側「環状側面」は、本願発明の「上方表面」に相当し、引用発明の「環状側面」のうち「開口部」がない下方側「環状側面」は、本願発明の「下方表面」に相当するといえる。
すると、引用発明の「先端キャップ2」を有し、「先端キャップ2」が、「後端面」、「前端面」、並びに「前端面と後端面の間を覆い」、「上方に開口部を有する環状側面を有する」ことは、本願発明の「本体を有して成り、該本体が、近位端、遠位端ならびにそれらの間に延在する上方表面および下方表面を有」することに相当する。
3 構成C
引用発明では、「先端部本体1の表面は、先端部本体1に着脱自在に取り付けられた先端キャップ2によって覆われ、先端キャップ2の後端部分2aが先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合することにより、先端キャップ2が先端部本体1に係止され、先端キャップ2の後端部分2aを弾性変形させることにより、先端キャップ2を先端部本体1から前方にスライドさせて取り外すことができ」るので、「先端キャップ2」の「後端面」が有する「開口部」は、「先端部本体1の表面」を「覆」い、また「先端部本体1に着脱自在に」「係合する」ためのものであるといえるから、引用発明の「先端キャップ2」の「後端面」が、「先端部本体1の表面」を「覆」い、また「先端部本体1に着脱自在に」「係合する」ための「開口部」を有することは、本願発明の「前記本体の近位端が、内視鏡の遠位端を受けるための、また取り外し可能に係合するための開口部を有」することに相当する。
4 構成D
引用発明の「従動側フック22」に「連結され」る「処置具起上片6」は、本願発明の「連結可能な昇降部」に相当する。
また、引用発明の「先端キャップ2に支持され」る「処置具起上片6」に、「支軸25によって回動自在に」「連結され」る「従動側フック22」は、「先端キャップ2」内において「処置具起上片6」に対して「動」ける(関節の)ように「連結され」るから、本願発明の「前記本体内において前記昇降部に関節連結される関節連結要素」に相当する。
すると、引用発明の「先端キャップ2」が、「従動側フック22」に「連結され」る「処置具起上片6」、及び、「先端キャップ2に支持され」る「処置具起上片6」に、「支軸25によって回動自在に」「連結され」る「従動側フック22」を有することは、本願発明の「前記本体が、連結可能な昇降部、および、前記本体内において前記昇降部に関節連結される関節連結要素をさらに含」むことに相当する。
5 構成E
引用発明では、「先端キャップ2の後端部分2aが、先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合した状態のとき」、「支軸25によって回動自在に」「処置具起上片6に連結された従動側フック22と操作ワイヤ7に連結された駆動側フック23とを互いに引っかける状態に係合させて」いるから、引用発明は、「操作ワイヤ7に連結され」、「処置具起上片6」を「支軸25によって回動自在に」「連結され」るように、「先端キャップ2」の「後端面」が「先端部本体1」に「係合した状態のとき」、「従動側フック22」が「駆動側フック23」に「引っかける状態に係合させて」いるといえる。
よって、引用発明の「操作ワイヤ7に連結され」、「処置具起上片6」を「支軸25によって回動自在に」「連結され」るように、「先端キャップ2」の「後端面」が「先端部本体1」に「係合した状態のとき」、「従動側フック22」が「駆動側フック23」に「引っかける状態に係合させて」いることは、本願発明の「前記内視鏡からの力を伝達して前記昇降部を関節連結するように前記本体の前記近位端が前記内視鏡の前記遠位端に係合したときに、前記関節連結要素が前記コネクタに接触するよう位置決めされ」ることに相当するといえる。
6 構成F
引用発明の「先端キャップ2」は、「係合」される「先端部本体1」における「観察窓3と照明窓4部分」「の上方に開口部を有する環状側面を有」することから、「先端キャップ2」の「上方」側「環状側面」には、「係合」される「先端部本体1」における「観察窓3と照明窓4部分」の「開口部」があり、一方で「先端キャップ2」の下方側「環状側面」には、「開口部」がない表面であることは、明らかである。
よって、引用発明の「先端キャップ2」は、「係合」される「先端部本体1」における「観察窓3と照明窓4部分」「の上方に開口部を有する環状側面を有」することは、本願発明の「前記本体の上方表面が、係合される内視鏡を用いて視覚化を可能とする開口部を有し、一方で下方表面が、閉じた表面を有」することに相当する。
7 構成G
(1)引用発明では、「先端キャップ2内に」「処置具誘導室5が形成され」るので、「先端キャップ2」は、「処置具誘導室5」を有するといえるから、引用発明の「先端キャップ2」は、「処置具誘導室5」を有することは、本願発明の「前記本体は、開口を有」することに相当するといえる。
(2)引用発明では、「先端キャップ2の後端部分2aが、先端部本体1の外周面に形成された円周溝1aに係合した状態のとき」、「処置具挿通チャンネル9の先端が処置具誘導室5の後端下部に連通」し、「処置具誘導室5」に「収容された」「処置具起上片6は」、「処置具誘導室5内を通過する処置具100の先端が外方に向かってスムーズに突出するように案内する」ので、「処置具起上片6が収容された処置具誘導室5」は、その「後端下部」から挿入された「処置具100」を、「処置具起上片6」が「案内する」ことで、「外方」へ「誘導」するための「室」といえることから、引用発明の「処置具誘導室5」は、「先端キャップ2」の「後端面」が「先端部本体1」に「係合した状態のとき」、「処置具誘導室5」の「後端下部」から挿入された「処置具100」が「処置具起上片6」に「案内」されるように、「処置具起上片6」を「収容」していることは明らかである。
すると、引用発明の「処置具誘導室5」は、「先端キャップ2」の「後端面」が「先端部本体1」に「係合した状態のとき」、「処置具誘導室5」の「後端下部」から挿入された「処置具100」が「処置具起上片6」に「案内」されるように、「処置具起上片6」を「収容」していることは、本願発明の「前記本体は、開口を有し、前記開口は、前記近位端が前記内視鏡の前記遠位端に係合されたときに、当該開口を通る器具が前記昇降部に接触するように位置決めされ」ることに相当するといえる。
(3)上記(1)及び(2)から、引用発明の「先端キャップ2」は、「処置具誘導室5」を有し、「処置具誘導室5」は、「先端キャップ2」の「後端面」が「先端部本体1」に「係合した状態のとき」、「処置具誘導室5」の「後端下部」から挿入された「処置具100」が「処置具起上片6」に「案内」されるように、「処置具起上片6」を「収容」していることは、本願発明の「前記本体は、開口を有し、前記開口は、前記近位端が前記内視鏡の前記遠位端に係合されたときに、当該開口を通る器具が前記昇降部に接触するように位置決めされ」ることに相当するといえる。
第6 一致点・相違点
よって、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
(一致点)
「力を伝達するコネクタ及びワーキング・チャンネルを含む遠位端を有する内視鏡のためのカプラー・デバイスであって、
本体を有して成り、該本体が、近位端、遠位端ならびにそれらの間に延在する上方表面および下方表面を有し、
前記本体の近位端が、内視鏡の遠位端を受けるための、また取り外し可能に係合するための開口部を有し、
前記本体が、連結可能な昇降部、および、前記本体内において前記昇降部に関節連結される関節連結要素をさらに含み、
前記内視鏡からの力を伝達して前記昇降部を関節連結するように前記本体の前記近位端が前記内視鏡の前記遠位端に係合したときに、前記関節連結要素が前記コネクタに接触するよう位置決めされ、ならびに
前記本体の上方表面が、係合される内視鏡を用いて視覚化を可能とする開口部を有し、一方で下方表面が、閉じた表面を有し、
前記本体は、開口を有し、前記開口は、前記近位端が前記内視鏡の前記遠位端に係合されたときに、当該開口を通る器具が前記昇降部に接触するように位置決めされる、
カプラー・デバイス。」
(相違点)
本願発明では、「カプラー・デバイスは、使い捨てデバイスであり、且つシングルユース用途となっている」のに対し、引用発明では、「内視鏡検査が終了する毎に、先端部本体1から」「取り外され」た「処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25」を有する「先端キャップ2」は、「洗浄」される点。
第7 判断
上記相違点について検討する。
引用発明では、「処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25」を有する「先端キャップ2」の「洗浄」は、再使用するにあたり「被検者間感染のおそれ等を大幅に低減させる」ためである。
そして、引用文献2技術的事項(上記第4の2(2)参照。)において、「着脱カバー8b」を「使い捨て」とすることは、再使用する場合より感染リスクを低減させるためであって、「使い捨て」にあたりシングルユース用途とした方が、より感染リスクが低減されることは明らかである。
すると、引用発明において、より感染リスクを低減させるために引用文献2技術的事項を適用し、「先端キャップ2」をシングルユース用途の「使い捨て」とすることは、当業者が容易になし得ることである。
また、引用発明は、「内視鏡検査が終了する毎に、先端部本体1から、処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25が、先端キャップ2と共に取り外され」る一体的なユニットを「洗浄」対象としているから、引用発明において、引用文献2技術的事項を適用して「先端キャップ2」をシングルユース用途の「使い捨て」とする際に、「先端キャップ2と共に取り外される」「処置具起上片6、支軸21、従動側フック22、及び支軸25」も併せて、シングルユース用途の「使い捨て」とすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
したがって、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用文献2技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2技術的事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
第8 請求人の主張
請求人は、令和4年2月21日の意見書(5.理由3、4(新規性、進歩性)について)において、「引用文献2には、新請求項1、7に係る本願発明における「前記カプラー・デバイスは、使い捨てデバイスであり、且つシングルユース用途となっている」という特徴については、何らの記載も示唆もされていないと言える。したがって、新請求項1、7に係る本願発明は、引用文献1、2に対して新規性及び進歩性を有するものと考える。」と主張しているが、当該主張が採用できないことは、上記第7において検討したとおりである。
第9 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項については論じるまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-006402