2021-004568
感光性樹脂組成物、ポリマー、パターン、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、表示装置および撮像素子
- 審判番号
- 2021-004568
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-544958外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年04月08日
- 審決日
- 2021年05月27日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友ベークライト株式会社
- 【請求人代理人】速水 進治
- 分類
- P18 .121-Z (G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 8項目
第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2020-544958号(以下「本件出願」という。)は,2020年(令和2年)1月28日(先の出願に基づく優先権主張 平成31年1月31日)を国際出願日とする出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
2 特許請求の範囲
本件出願の請求項1~請求項27に係る発明は,令和2年11月20日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1~請求項27に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明は,次のものである(以下「本願発明」という。)。
「 以下一般式(1)で表される第一構造単位を有し,酸価が70~200mgKOH/gであり,二重結合当量が100~500g/molであるポリマーを含む,感光性樹脂組成物であって,前記ポリマーは,スチレン骨格を有するモノマーに由来する構造単位を有しない感光性樹脂組成物。【化1】一般式(1)中,RDは,重合性炭素-炭素二重結合を含む基である。」
3 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,本願発明は,先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(国際公開第2011/129182号)は,先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「技術分野[0001] 本発明は,付加共重合体,感光性樹脂組成物及びカラーフィルターに関し,特に,有機ELディスプレイ,液晶表示装置,固体撮像素子に組み込まれるカラーフィルターの製造に用いられる付加共重合体及び感光性樹脂組成物,並びにこれらの該付加共重合体及び感光性樹脂組成物を用いて製造されるカラーフィルターに関する。背景技術…省略…[0004] 一般に,フォトリソグラフィ法に用いられる感光性樹脂組成物は,アルカリ可溶性樹脂,反応性希釈剤,光重合開始剤,着色剤及び溶剤を含有する。アルカリ可溶性樹脂としては,カルボキシル基含有不飽和モノマーと,無水マレイン酸と,カルボキシル基含有不飽和モノマー及び無水マレイン酸以外の共重合可能な不飽和モノマーとを所定の比率で共重合させたものを用いることが提案されている(例えば,特許文献1参照)。また,無水マレイン酸と,無水マレイン酸と共重合可能なモノマーとにより得られる共重合体に,水酸基含有化合物を付加させたものを用いることも提案されている(例えば,特許文献2~5参照)。…省略…発明が解決しようとする課題[0006] しかしながら,従来の感光性樹脂組成物は,感度や現像性が十分でない場合や,耐熱分解性及び耐溶剤性に優れた着色パターンが得られない場合がある。従って,本発明は,上記のような課題を解決するためになされたものであり,感度や現像性が良好であると共に,耐熱分解性及び耐溶剤性に優れた着色パターンを与える感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また,本発明は,感度や現像性が良好であると共に,耐熱分解性及び耐溶剤性に優れた着色パターンを与える感光性樹脂組成物に用いられるアルカリ可溶性樹脂(付加共重合体)を提供することを目的とする。」
イ 「発明を実施するための形態[0018] 実施の形態1.本実施の形態の付加共重合体(A)は,炭素数10~20の橋かけ環式炭化水素基を有するモノマー(a-1)及び/又は下記の一般式(1):[0019]続きを表示(全32行)[化3][0020](式中,X及びYはそれぞれ独立して,水素原子,又は炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基を表し,R1及びR2はそれぞれ独立して,水素原子,炭素数1~20の炭化水素基又はカルボキシル基を表し,R1及びR2が連結された環状構造を形成してもよい)で示されるモノマー(a-1’),不飽和多塩基酸無水物(a-2),並びに(a-1),(a-1’)及び(a-2)以外の共重合可能なモノマー(a-3)を共重合させた共重合体に,水酸基を有するモノマー(a-4)を付加させることにより得られたものである。[0021] モノマー(a-1)は,炭素数10~20の橋かけ環式炭化水素基を有していれば特に限定されない。…省略…[0025] モノマー(a-1’)は,上記の一般式(1)で示される化学構造を有していれば特に限定されない。…省略…[0028] 不飽和多塩基酸無水物(a-2)としては,特に限定されず,当該技術分野において公知のものを用いることができる。不飽和多塩基酸無水物(a-2)の例としては,無水マレイン酸,無水イタコン酸,無水シトラコン酸などが挙げられる。これらの中でも,入手の容易さ,重合性,反応性などの観点から無水マレイン酸が好ましい。…省略…[0030] モノマー(a-3)は,(a-1),(a-1’)及び(a-2)以外の共重合可能なものであれば,特に限定されない。モノマー(a-3)は,一般にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物であり,その例としては,ブタジエン,2,3-ジメチルブタジエン,イソプレン,クロロプレンなどのジエン類;メチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,n-プロピル(メタ)アクリレート,イソ-プロピル(メタ)アクリレート,n-ブチル(メタ)アクリルレート,sec-ブチル(メタ)アクリレート,イソ-ブチル(メタ)アクリレート,tert-ブチル(メタ)アクリルレート,ペンチル(メタ)アクリレート,ネオペンチル(メタ)アクリレート,ベンジル(メタ)アクリレート,イソアミル(メタ)アクリレート,ヘキシル(メタ)アクリレート,2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート,ラウリル(メタ)アクリレート,ドデシル(メタ)アクリレート,シクロペンチル(メタ)アクリレート,シクロヘキシル(メタ)アクリレート,メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート,エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート,1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート,ロジン(メタ)アクリレート,ノルボルニル(メタ)アクリレート,5-メチルノルボルニル(メタ)アクリレート,5-エチルノルボルニル(メタ)アクリレート,アリル(メタ)アクリレート,プロパギル(メタ)アクリレート,ピペロニル(メタ)アクリレート,サリチル(メタ)アクリレート,フリル(メタ)アクリレート,フルフリル(メタ)アクリレート,テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート,ピラニル(メタ)アクリレート,フェネチル(メタ)アクリレート,クレジル(メタ)アクリレート,1,1,1-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート,パーフルオルエチル(メタ)アクリレート,パーフルオロ-n-プロピル(メタ)アクリレート,パーフルオロ-イソ-プロピル(メタ)アクリレート,トリフェニルメチル(メタ)アクリレート,クミル(メタ)アクリレート,3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート,グリセリロールモノ(メタ)アクリレート,ブタントリオールモノ(メタ)アクリレート,ペンタントリオールモノ(メタ)アクリレート,ナフタレン(メタ)アクリレート,アントラセン(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド,(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミド,(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミド,(メタ)アクリル酸N,N-ジプロピルアミド,(メタ)アクリル酸N,N-ジ-イソ-プロピルアミド,(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド,(メタ)アクリロイルニトリル,アクロレイン,塩化ビニル,塩化ビニリデン,フッ化ビニル,フッ化ビニリデン,N-ビニルピロリドン,ビニルピリジン,酢酸ビニル,ビニルトルエンなどのビニル化合物;スチレン,スチレンのα-,o-,m-,p-アルキル,ニトロ,シアノ,アミド誘導体;シトラコン酸ジエチル,マレイン酸ジエチル,フマル酸ジエチル,イタコン酸ジエチルなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル;N-フェニルマレイミド,N-シクロヘキシルマレイミド,N-ラウリルマレイミド,N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド類;N-(メタ)アクリロイルフタルイミド,(メタ)アクリル酸,クロトン酸,桂皮酸などのカルボキシル基を有する化合物などが挙げられる。これらは,単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。[0031] 特に,不飽和多塩基酸無水物(a-2)として無水マレイン酸を用いる場合,無水マレイン酸は電子受容性の強い化合物であるため,モノマー(a-3)は電子供与性モノマーであることが好ましい。このような電子供与性モノマーを用いることにより,無水マレイン酸などとの間で交互共重合が生じ,各ユニットがよりランダムに配置される結果,現像性や感度などが向上すると共に,耐熱分解性に優れた着色パターンを形成することができる。電子供与性モノマーとしては,ビニルエーテル類,ビニルスルフィド類,スチレン類などが挙げられる。これらの中でも,共重合性の観点からスチレン類が好ましく,耐分解性の観点からビニルトルエンがより好ましい。なお,ビニルトルエンを用いる場合,(メタ)アクリル酸エステル類を併用することで,現像性をより一層向上させることができる。…省略…[0036] 上記の共重合体反応で得られた共重合体は,水酸基を有するモノマー(a-4)を付加することにより,共重合体の側鎖にカルボキシル基及び二重結合が導入される。これにより,感光性樹脂組成物の感度や現像性が向上する。…省略…[0037] 特に,共重合体中の酸無水物基との反応性を考慮した場合,モノマー(a-4)は,第1級水酸基を有することが好ましい。また,感光性樹脂組成物の感度を考慮した場合,モノマー(a-4)は,付加共重合体(A)中の二重結合の量を多くするために,分子量の小さなものであるか又は多官能の(メタ)アクリレートであることが好ましい。これらの条件を満たすモノマーとしては,2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。[0038] 共重合体中の酸無水物基に対するモノマー(a-4)の付加割合は,10~100%であることが好ましい。このようなモノマー(a-4)の付加反応を行うためには,共重合体の酸無水物基のモル当量を1としたときに,モノマー(a-4)の水酸基のモル当量が0.1~1の範囲となるようにモノマー(a-4)を添加して反応させればよい。付加割合が10%未満であると,共重合体の側鎖に導入されるカルボキシル基及び二重結合の量が少なすぎ,所望の感度や現像性が得られない。…省略…[0040] 上記のようにして得られる付加共重合体(A)の酸価は,好ましくは50~400KOHmg/g,より好ましくは150~300KOHmg/gである。この酸価が50KOHmg/g未満であると,感光性樹脂組成物の現像性が低下してしまうことがある。一方,この酸価が400KOHmg/gを超えると,アルカリ現像液に対して露光部分(光硬化部分)が溶解し易くなることがある。また,付加共重合体(A)の分子量(ポリスチレン換算の重量平均分子量)は,好ましくは1000~40000,より好ましくは3000~20000である。この分子量が1000未満であると,現像後に着色パターンの欠けが発生し易くなることがある。一方,この分子量が40000を超えると,現像時間が長くなり過ぎてしまい,実用性に欠けることがある。…省略…[0042] 実施の形態2.本実施の形態の感光性樹脂組成物は,実施の形態1の付加共重合体(A)と溶剤(B)とを含有する。…省略…[0044] 本実施の形態の感光性樹脂組成物は,上記の成分に加えて,反応性希釈剤(C),光重合開始剤(D)及び着色剤(E)を含有することができる。…省略…[0055] 実施の形態3.本実施の形態のカラーフィルターは,上記の感光性樹脂組成物から得られる着色パターンを有する。…省略…[0060] このようにして製造されるカラーフィルターは,感度や現像性に優れると共に,耐熱分解性及び耐溶剤性に優れた着色パターンを与える感光性樹脂組成物を用いて製造しているため,耐熱分解性及び耐溶剤性に優れた着色パターンを有する。」
ウ 「実施例[0061] 以下,実施例を参照して本発明を詳細に説明するが,本発明はこれらの実施例により限定されない。なお,この実施例において,部及びパーセントとあるのは特に断らない限り,全て質量基準である。<感光性樹脂組成物の調製>攪拌装置,滴下ロート,コンデンサー,温度計及びガス導入管を備えたフラスコに,426.1gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤1)及び176.4gの無水マレイン酸(a-2)を入れた後,窒素置換しながら攪拌し,120℃に昇温した。次に,66.0gのジシクロペンタニルメタクリレート(a-1)及び106.2gのビニルトルエン(a-3)からなるモノマー混合物に,24.4gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤)を添加したものを滴下ロートから前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後,120℃で2時間攪拌して共重合反応を行い,共重合体を生成させた。続きを表示(全26行)次に,前記フラスコ内を空気に置換した後,139.2gの2-ヒドロキシエチルアクリレート(a-4),1.5gのトリエチルアミン(触媒),及び1.5gのメチルハイドロキノン(重合禁止剤)を加え,120℃で6時間付加反応を行い,付加共重合体(A)を生成させた。次に,この付加共重合体(A)に,305.6gのプロピレングリコールモノメチルエーテル(溶剤2)を加え,感光性樹脂組成物(試料No.1)を得た。[0062] 原料の種類及び量を変えたこと以外は,上記と同様にして数種類の感光性樹脂組成物(試料No.2~19)を調製した。感光性樹脂組成物(試料No.1~19)の調製に用いた原料及びその配合量を表1に示す。[0063][表1][0064] 表1において,(a-1),(a-1’),(a-2)及び(a-3)の各原料のモル%は,(a-1),(a-1’),(a-2)及び(a-3)の原料の合計を100モル%としたときの,各原料のモル%を意味する。また,(a-4)のモル当量とは,共重合体の酸無水物基のモル当量を1としたときの,モノマー(a-4)の水酸基のモル当量を意味する(当合議体注:表1には,この記載に反して,単に共重合体に対するモル%が記載されている。)。また,酸価とは,JIS K6901 5.3に従って測定された付加共重合体(A)の酸価であって,付加共重合体(A)1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を意味する。また,分子量(Mw)とは,ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより,以下の条件下で測定された標準ポリスチレン換算重量平均分子量を意味する。<分子量測定条件>カラム:ショウデックス LF-804+LF-804(昭和電工株式会社製)カラム温度:40℃試料:付加共重合体(A)の0.2%テトラヒドロフラン溶液展開溶媒:テトラヒドロフラン検出器:示差屈折計(ショウデックス RI-71S)(昭和電工株式会社製)流速:1mL/分[0065]試料No.1~19の感光性樹脂組成物を用いて,透明レジスト…省略…を調製した。<透明レジストの調製>試料No.1~19の感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して,ペンタエリスリトールテトラアクリレート(反応性希釈剤)30質量部,2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(光重合開始剤)4質量部を添加し,透明レジストを調製した(実施例1~14及び比較例1~5)。[0066] <透明レジストによる硬化塗膜の形成>調製された透明レジストを,5cm角ガラス基板(無アルカリガラス基板)上に,最終の硬化塗膜の厚さが2.5μmとなるようにスピンコートした後,90℃で30分間加熱することで溶剤を揮発させた。次に,得られた塗膜の全面を露光(露光量50mJ/cm2)して光硬化させた後,さらに230℃で30分間ベーキングすることで硬化塗膜を得た。…省略…[0085] 以上の結果からわかるように,本発明によれば,感度や現像性が良好であると共に,耐熱分解性及び耐溶剤性に優れた着色パターンを与える感光性樹脂組成物の製造に用いられるアルカリ可溶性樹脂(付加共重合体)を提供することができる。また,本発明によれば,感度や現像性が良好であると共に,耐熱分解性及び耐溶剤性に優れた着色パターンを与える感光性樹脂組成物を提供することができる。」
エ 「請求の範囲[請求項1] 炭素数10~20の橋かけ環式炭化水素基を有するモノマー(a-1)及び/又は下記の一般式(1):[化6](式中,X及びYはそれぞれ独立して,水素原子,又は炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基を表し,R1及びR2はそれぞれ独立して,水素原子,炭素数1~20の炭化水素基又はカルボキシル基を表し,R1及びR2が連結された環状構造を形成してもよい)で示されるモノマー(a-1’)2~60モル%,不飽和多塩基酸無水物(a-2)30~88モル%,並びに(a-1),(a-1’)及び(a-2)以外の共重合可能なモノマー(a-3)10~68モル%を共重合させた共重合体に,水酸基を有するモノマー(a-4)を付加させた付加共重合体(A)と,溶剤(B)とを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。[請求項2] 前記モノマー(a-1)は,ジシクロペンタニルメタクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。[請求項3] 前記不飽和多塩基酸無水物(a-2)は,無水マレイン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。[請求項4] 前記モノマー(a-3)は,ビニルトルエン10~40モル%を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。[請求項5] 前記モノマー(a-4)は,2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート,及びペンタエリスリトールトリアクリレートからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。[請求項6] 反応性希釈剤(C),光重合開始剤(D)及び着色剤(E)からなる群から選択される1種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。」
(2) 引用発明
ア 試料1発明
引用文献1の[0061]には,「試料No.1」の「感光性樹脂組成物」として,次の発明が記載されている(以下「試料1発明」という。)。
「 攪拌装置,滴下ロート,コンデンサー,温度計及びガス導入管を備えたフラスコに,426.1gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤1)及び176.4gの無水マレイン酸(a-2)を入れた後,窒素置換しながら攪拌し,120℃に昇温し,次に,66.0gのジシクロペンタニルメタクリレート(a-1)及び106.2gのビニルトルエン(a-3)からなるモノマー混合物に,24.4gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤)を添加したものを滴下ロートからフラスコ中に滴下し,滴下終了後,120℃で2時間攪拌して共重合反応を行い,共重合体を生成させ,次に,フラスコ内を空気に置換した後,139.2gの2-ヒドロキシエチルアクリレート(a-4),1.5gのトリエチルアミン(触媒),及び1.5gのメチルハイドロキノン(重合禁止剤)を加え,120℃で6時間付加反応を行い,付加共重合体(A)を生成させ,次に,付加共重合体(A)に,305.6gのプロピレングリコールモノメチルエーテル(溶剤2)を加えて得た,試料No.1の感光性樹脂組成物。」
イ 引用発明
引用文献1の[0062]には,「原料の種類及び量を変えたこと以外は,上記と同様にして数種類の感光性樹脂組成物(試料No.2~19)を調製した」ことが記載され,その原料の種類及び量については,[0063]の[表1]に記載のとおりである。そして,引用文献1の[0065]には,「試料No.1~19の感光性樹脂組成物」を用いて,「透明レジストを調製した」ことが記載されている。
また,[0064]及び[0040]によれば,[0063]の[表1]の「酸価」及び「分子量(Mw)」は,それぞれ「付加共重合体(A)の酸価」及び「付加共重合体(A)」の「分子量(Mw)」を意味すると理解できる。
そうしてみると,引用文献1には,実施例4として,次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して,ペンタエリスリトールテトラアクリレート(反応性希釈剤)30質量部,2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(光重合開始剤)4質量部を添加して調製した透明レジストであって,感光性樹脂組成物は,139.2gの2-ヒドロキシエチルアクリレート(a-4)を357.6gのペンタエリスリトールトリアクリレートに変え,プロピレングリコールモノメチルエーテル(溶剤2)の分量を305.6gから633.2gに変えた以外は,試料1発明と同様にして得たものであり,付加共重合体(A)の酸価は143mgKOH/g,分子量(Mw)は7000である,透明レジスト。」
2 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりである。
ア 感光性樹脂組成物
引用発明の「透明レジスト」は,「感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して,ペンタエリスリトールテトラアクリレート(反応性希釈剤)30質量部,2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(光重合開始剤)4質量部を添加して調製した」ものである。
上記組成からみて,引用発明の「透明レジスト」は,溶剤を揮発させて得られた塗膜を露光すると硬化塗膜となる性質の,樹脂を含む組成物といえる(当合議体注:引用文献1の[0066]の下線部の記載からも確認できる事項である。)。
そうしてみると,引用発明の「透明レジスト」は,本願発明の「感光性樹脂組成物」に相当する。
イ ポリマー
引用発明の「感光性樹脂組成物」は,「2-ヒドロキシエチルアクリレート(a-4)139.2gをペンタエリスリトールトリアクリレート357.6gに変え,プロピレングリコールモノメチルエーテル(溶剤2)の分量を305.6gから633.2gに変えた以外は,試料1発明と同様にして得たものであ」る。ここで,「試料1発明」は,前記1(2)アに記載のとおりである。また,「付加共重合体(A)の酸価は143mgKOH/g」である。
上記構成からみて,引用発明の「感光性樹脂組成物」は,「無水マレイン酸(a-2)」,「ジシクロペンタニルメタクリレート(a-1)」及び「ビニルトルエン(a-3)」が「共重合反応」してなる「共重合体」に,「ペンタエリスリトールトリアクリレート」を「付加反応」させた「付加共重合体(A)」,すなわちポリマーを含むものと理解される。また,上記「付加反応」は,技術的にみて,上記「共重合体」のうち「無水マレイン酸(a-2)」に由来する酸無水物基と,「ペンタエリスリトールトリアクリレート」の水酸基が反応するものであって,この反応により,引用発明の「感光性樹脂組成物」における,上記「共重合体」の側鎖にカルボキシル基及び二重結合が導入されてなる,次の構造を具備するものと理解される。
加えて,引用発明の「付加共重合体(A)」は,[A]「176.4gの無水マレイン酸(a-2)」,「66.0gのジシクロペンタニルメタクリレート(a-1)」,「106.2gのビニルトルエン(a-3)」及び「357.6gのペンタエリスリトールトリアクリレート」からなり,合計で176.4(g)+66.0(g)+106.2(g)+357.6(g)=706.2(g)と計算されること,[B]「ペンタエリスリトールトリアクリレート」は298.29g/モルであるから,「357.6g」は357.6(g)÷298.29(g/モル)=約1.2(モル)と計算されること,[C]「ペンタエリスリトールトリアクリレート」は三官能であることを考慮すると,引用発明の「付加共重合体(A)」の二重結合当量は,706.2(g)÷1.2(モル)÷3=約196(g/モル)と計算される。
以上勘案する,引用発明の「付加共重合体(A)」は,本願発明の「ポリマー」に相当する。また,引用発明の「付加共重合体(A)」は,本願発明の「ポリマー」における,「一般式(1)で表される第一構造単位を有し,酸価が70~200mgKOH/gであり,二重結合当量が100~500g/molである」という要件を満たす。
ウ 感光性樹脂組成物
引用発明の「透明レジスト」は,「感光性樹脂組成物」中に,前記イで述べた「付加共重合体(A)」を含む。
そうしてみると,引用発明の「透明レジスト」は,本願発明の「感光性樹脂組成物」における,「ポリマーを含む」という要件を満たす。
(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「 以下一般式(1)で表される第一構造単位を有し,酸価が70~200mgKOH/gであり,二重結合当量が100~500g/molであるポリマーを含む,感光性樹脂組成物。【化1】一般式(1)中,RDは,重合性炭素-炭素二重結合を含む基である。」
イ 相違点
本願発明と引用発明は,次の点で相違する。
(相違点)
「ポリマー」が,本願発明は,「スチレン骨格を有するモノマーに由来する構造単位を有しない」のに対して,引用発明は,「ビニルトルエン(a-3)」,すなわちスチレン骨格を有するモノマーに由来する構造単位を有する点。
(3) 判断
引用発明の「ビニルトルエン(a-3)」は,引用文献1に記載された「モノマー(a-3)」のうち,「耐分解性の観点から」「より好ましい」([0031])とされたものであるが,引用文献1の[0030]及び[0031]には,「ビニルトルエン(a-3)」以外の「モノマー(a-3)」も列挙されている。また,引用文献1の請求の範囲には,[請求項1]~[請求項3]に係る発明や,[請求項4]を引用しない[請求項5]及び[請求項6]に係る発明のように,「ビニルトルエン(a-3)」を必須成分として含まない発明も明示されている。そして,引用発明(実施例4)を,「ビニルトルエン(a-3)」を必須成分とする発明として,理解しなければならない特段の事情があるともいえない(当合議体注:引用発明(実施例4)は,「ビニルトルエン(a-3)」を含むことによる,特段の優位性を示すために設けられた実施例ではない。)。
以上勘案すると,当業者であれば,引用発明の「ビニルトルエン(a-3)」を,引用文献1記載全体から理解される技術思想の範囲内で,他の「モノマー(a-3)」に変更する(例:引用文献1の[0030]に記載された「塩化ビニル」等の「ビニル化合物」に変える)余地があることを理解するといえる。すなわち,当業者ならば,引用文献1の[0063][表1]の「(a-3)」の「質量部(モル%)」欄の記載を参考に, 引用発明の「ビニルトルエン(a-3)」を,30モル%の,例えば,「塩化ビニル」(56.2g)に変更すると考えられるところ,このようにしてなる「付加共重合体(A)」は,「スチレン骨格を有するモノマーに由来する構造単位を有しない」という,相違点3に係る本願発明の要件を満たしたものとなる。また,このように変更しても,前記2(1)において一致点とされた事項が相違点になることはない(当合議体注:(a-3)成分の質量部が小さくなった分,酸価は高くなり(154mgKOH/gと計算され),二重結合当量は小さくなる(182g/モルと計算される)が,依然として,本願発明の範囲から外れるとまではいえない。)。
あるいは,引用文献1の[0031]には,「特に,不飽和多塩基酸無水物(a-2)として無水マレイン酸を用いる場合,無水マレイン酸は電子受容性の強い化合物であるため,モノマー(a-3)は電子供与性モノマーであることが好ましい。このような電子供与性モノマーを用いることにより,無水マレイン酸などとの間で交互共重合が生じ,各ユニットがよりランダムに配置される結果,現像性や感度などが向上すると共に,耐熱分解性に優れた着色パターンを形成することができる。電子供与性モノマーとしては,ビニルエーテル類,ビニルスルフィド類,スチレン類などが挙げられる。」と記載されている。この記載に接した当業者ならば,引用発明の「ビニルトルエン(a-3)」を,例えば,「2-エチルヘキシルビニルエーテル」に変えることを試みるといえる(当合議体注:このモノマーが電子供与性であり,無水マレイン酸との交互共重合に適したものであることは,その化学構造からみて,あるいは「Chemiway Products Guide」,[online],2010年,[令和2年4月24日検索],インターネット<https://www.chemiway.co.jp/development/dl/dev01_data02b.pdf>の2及び6頁に記載のとおり,明らかである。)。そして,引用発明の「ビニルトルエン(a-3)」を,30モル%の「2-エチルヘキシルビニルエーテル」(140.5g)に変えてなる「付加共重合体(A)」も,相違点3に係る本願発明の要件を満たしたものとなる。また,このように変更しても,前記2(1)において一致点とされた事項が相違点になることはない(当合議体注:酸価は136mgKOH/gと計算され,二重結合当量は206g/モルと計算される)。
(4) 発明の効果について
本願発明の効果に関して,本件出願の明細書の【0013】には,「本発明によれば,感度と現像性が両立された感光性樹脂組成物が提供される。」と記載されている。
しかしながら,このような効果は,引用発明も具備する効果である。
なお,本願発明の「感光性樹脂組成物」は,「以下一般式(1)で表される第一構造単位を有し,酸価が70~200mgKOH/gであり,二重結合当量が100~500g/molであるポリマーを含む」ものである限り,「酸価が70~200mgKOH/gであり,二重結合当量が100~500g/molである」とはいえない,他の「ポリマー」を相当量含んでもよいものである。したがって,本願発明の範囲には,上記【0013】に記載の効果を奏さないものも含まれる。
また,本願発明は,「前記ポリマーは,スチレン骨格を有するモノマーに由来する構造単位を有しない」という発明特定事項を具備するものである。しかしながら,これによって,先の出願時に本願発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかった何らかの効果や,当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果が奏せられるということもできない。
なお,本件出願が開示する技術思想は,明細書の【0064】に記載のとおり,ポリマーの構造単位として「スチレン,ビニルトルエン,ヒドロキシスチレン,アセトキシスチレン,α-メチルスチレン等のスチレン骨格を有するモノマー」を含んでもよいというものである。
(5) 請求人の主張について
請求人は,審判請求書の(5.1.2)において,一般に,特許文献における実施例は,種々の性能バランスを考慮したベストモードが記載されるものであり,引用発明(実施例4)の「付加共重合体(A)」を改変するに際して,スチレン骨格を有するモノマーである「ビニルトルエン(a-3)」に換えて塩化ビニル等を用いるような改変は,その性能バランスを崩す可能性が高いものであると主張する。
確かに,引用発明の「ビニルトルエン(a-3)」は,引用文献1に記載された「モノマー(a-3)」のうち,「耐分解性の観点から」「より好ましい」([0031])とされたものであり,「モノマー(a-3)」の選択肢としては,ベストモードのものと理解される。また,引用発明の「共重合体」は,「不飽和多塩基酸無水物(a-2)として無水マレイン酸を用いる」ものであるから,この観点に照らしてみても,「ビニルトルエン(a-3)」は,「好ましい」ものといえる([0031])。したがって,引用発明の「ビニルトルエン(a-3)」を他のモノマーに変えることは,引用文献1に記載されたベストの性能を損なうことになる。
しかしながら,引用文献1の請求の範囲には,[請求項1]~[請求項3]に係る発明や,[請求項4]を引用しない[請求項5]及び[請求項6]に係る発明のように,「ビニルトルエン(a-3)」を必須成分として含まない発明も明示されている。また,引用発明の「ビニルトルエン(a-3)」を他のものに変えたならば,耐分解性の観点から劣るものになることは,引用文献1の[0031]の記載が示唆するところであるが,そうであるからといって,引用文献1の[0030]の記載を無視することはできないし,[0031]に記載された「ビニルエーテル類」や「ビニルスルフィド類」といった選択肢を無視することもできない。そして,引用発明(実施例4)を,とりわけ「モノマー(a-3)」として「ビニルトルエン(a-3)」を採用したことに特徴がある実施例として,理解しなければならない特段の事情も見当たらない。むしろ,引用文献1の[0037]には,「感光性樹脂組成物の感度を考慮した場合,モノマー(a-4)は,付加共重合体(A)中の二重結合の量を多くするために,分子量の小さなものであるか又は多官能の(メタ)アクリレートであることが好ましい。」と記載されているところ,引用発明(実施例4)は,「モノマー(a-4)」として「多官能の(メタ)アクリレート」を採用した唯一の実施例である。したがって,「モノマー(a-4)」として「多官能の(メタ)アクリレート」を採用することを前提に創意工夫する当業者ならば,引用発明を参考にして,引用文献1において示唆された種々の改変を試みると考えられる。
したがって,審判請求人の主張は,採用することができない。
(6) 備考
ア 二重結合当量について
引用文献1の[0038]の記載や付加反応の温度及び時間([0061])からみて,引用発明は,「モノマー(a-4)」である「ペンタエリスリトールトリアクリレート」の全量を付加反応させることを前提とした発明と理解される。ただし,仮に,未反応モノマーがあったり,あるいは,「メチルハイドロキノン(重合禁止剤)」の機能が不十分ならば,その分,二重結合当量は大きくなる。
しかしながら,仮にそうなるとしても,本願発明の二重結合当量の上限値(500g/mol)を超えるとまではいえない。
仮にそうでないとしても,引用発明は,「176.4gの無水マレイン酸(a-2)」(1.8モル)に対し「357.6gのペンタエリスリトールトリアクリレート」(1.2モル)を付加反応させる(付加割合を67%とする)ことを意図した発明であるから,当業者ならば,設計どおりの付加割合となるよう,「ペンタエリスリトールトリアクリレート」の分量を調整するといえる。
イ 酸価について
引用発明の酸価は,JIS K6901 5.3により測定されたもの([0064])であるのに対し,本願発明の酸価は,請求項1に記載がないものの,NMRにより測定されたもの(【0176】)である。そして,前者は,測定時に水酸化カリウム溶液中のエタノール又はメタノールと無水マレイン酸が反応するため,無水マレイン酸の全量に対応する酸価が測定される。
しかしながら,仮にこの影響を排除しても(「付加共重合体(A)」に含まれるカルボキシル基の量のみで酸価を測る(67%程度の値が測定される)としても),引用発明の酸価が本願発明の酸価の下限値(70mgKOH/g)を下回るとまではいえない。
第3 まとめ
本願発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2021-004568