特許拒絶査定不服審判
2021-004367
自転車用ギア板
- 審判番号
- 2021-004367
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-154814外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年04月05日
- 審決日
- 2021年11月26日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社スギノエンジニアリング
- 【請求人代理人】臼井 尚
- 【請求人代理人】吉田 稔
- 【請求人代理人】田中 達也
- 分類
- P18 .121-WY (B62M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016-154814号「自転車用ギア板」拒絶査定不服審判事件〔平成30年2月8日出願公開、特開2018-20739号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月5日の出願であって、令和2年6月16日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月24日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、令和3年4月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項 1~4
・刊行物等 1~6
刊行物等一覧
1.中国実用新案第201362333号明細書
2.特開2005-009516号公報
3.中国実用新案第2701740号明細書(周知技術を示す文献)
4.米国特許出願公開第2006/0211529号明細書(周知技術を示す文献)
5.中国実用新案第203888985号明細書(周知技術を示す文献)
6.中国実用新案第201049725号明細書(周知技術を示す文献)
以下、刊行物1~6を引用文献1~6という。
第3 本願発明
本願請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、令和3年4月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
リング部と、当該リング部の外周において各々が歯間部を挟んで周方向に等ピッチで配列され、チェーンへの駆動力伝達時にローラが接触する圧力伝達側面、および歯先部を挟んで上記周方向において上記圧力伝達側面の反対側に位置する非圧力伝達側面を各々が有する、複数の歯と、を備えた自転車用ギア板であり、当該自転車用ギア板よりも多い複数の歯をもつアウタギアと組み合わせて自転車用ギアクランクにおけるインナギアとして使用される自転車用ギア板において、
上記複数の歯は、上記リング部の厚さ方向視における軸線を中心として上記周方向に連続する上記歯のピッチ径が相対的に大きい長径領域と、上記リング部の上記軸線を中心として上記周方向に連続する上記歯のピッチ径が相対的に小さい小径領域と、を含むとともに、上記長径領域は、ペダルに対して大きな踏力が掛かるときにチェーンが掛け回る上位位置となるように設定され、
上記複数の歯は、上記チェーンへの駆動力伝達時、上記圧力伝達側面における、上記ローラの中心がピッチ径上にある場合に予定される圧力点における圧力角が、25~35°に設定された圧力角最大領域を含み、
上記圧力角最大領域は、少なくとも上記長径領域に設けられており、
上記長径領域における上記各歯の上記圧力伝達側面は、当該歯の高さ方向について、上記圧力点付近において、上記ローラの外周曲率より小の曲率をもって凹に湾曲させられているとともに、上記各歯における歯底部は、上記ローラの外周曲率より大の曲率をもって凹に湾曲させられている、自転車用ギア板。
【請求項2】
上記長径領域は、上記リング部の外周のうち、上記軸線を中心として上記周方向において反対側に位置する2箇所に設けられる、請求項1に記載の自転車用ギア板。
【請求項3】
上記長径領域においては、上記周方向に連続する上記歯のピッチ径が楕円状をなす、請求項1または2に記載の自転車用ギア板。
【請求項4】
上記圧力角最大領域における上記圧力角が、28~32°に設定されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の自転車用ギア板。」
第4 引用発明
引用文献1には、以下の図面が示されており、引用文献1の記載内容(特に、2頁24行~3頁8行を参照。)及び技術常識から、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
【図1】
[図:0001380833000001.jpg]
【図2】
[図:0001380833000002.jpg]
【図3】
[図:0001380833000003.jpg]
「各々が歯間部を挟んで周方向に等ピッチで配列され、チェーン7への駆動力伝達時にローラが接触する圧力伝達側面、および歯先部を挟んで上記周方向において上記圧力伝達側面の反対側に位置する非圧力伝達側面を各々が有する、複数の歯4と、を備えた楕円形チェーンプレート1において、
上記複数の歯4は、上記楕円形チェーンプレート1の厚さ方向視における軸線を中心として上記周方向に連続する長軸付近の領域と、上記楕円形チェーンプレート1の上記軸線を中心として上記周方向に連続する短軸付近の領域と、を含むとともに、上記楕円形チェーンプレート1の長軸とステップフロア3を有するキックアーム8の夾角aは、15°<a<45°に設定されている、楕円形チェーンプレート1。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
ア 後者の「各々が歯間部を挟んで周方向に等ピッチで配列され、チェーン7への駆動力伝達時にローラが接触する圧力伝達側面、および歯先部を挟んで上記周方向において上記圧力伝達側面の反対側に位置する非圧力伝達側面を各々が有する、複数の歯4」と、前者の「当該リング部の外周において各々が歯間部を挟んで周方向に等ピッチで配列され、チェーンへの駆動力伝達時にローラが接触する圧力伝達側面、および歯先部を挟んで上記周方向において上記圧力伝達側面の反対側に位置する非圧力伝達側面を各々が有する、複数の歯」とは、「各々が歯間部を挟んで周方向に等ピッチで配列され、チェーンへの駆動力伝達時にローラが接触する圧力伝達側面、および歯先部を挟んで上記周方向において上記圧力伝達側面の反対側に位置する非圧力伝達側面を各々が有する、複数の歯」の点で共通し、後者の「楕円形チェーンプレート1」は、前者の「自転車用ギア板」に相当する。
イ 後者の「長軸付近の領域」は、【図3】等を参照すると、歯4のピッチ径が相対的に大きい長径領域といえるから、後者の「上記楕円形チェーンプレート1の厚さ方向視における軸線を中心として上記周方向に連続する長軸付近の領域」と、前者の「上記リング部の厚さ方向視における軸線を中心として上記周方向に連続する上記歯のピッチ径が相対的に大きい長径領域」とは、「上記自転車用ギヤ板の厚さ方向視における軸線を中心として上記周方向に連続する上記歯のピッチ径が相対的に大きい長径領域」において共通する。同様に、後者の「短軸付近の領域」は、【図3】等を参照すると、歯4のピッチ径が相対的に小さい小径領域といえるから、後者の「上記楕円形チェーンプレート1の厚さ方向視における軸線を中心として上記周方向に連続する短軸付近の領域」と、前者の「上記リング部の厚さ方向視における軸線を中心として上記周方向に連続する上記歯のピッチ径が相対的に小さい短径領域」とは、「上記自転車用ギア板の上記軸線を中心として上記周方向に連続する上記歯のピッチ径が相対的に小さい小径領域」において共通する。
また、後者の「上記楕円形チェーンプレート1の長軸とステップフロア3を有するキックアーム8の夾角aは、15°<a<45°に設定されている」構成は、【図3】を参照すると、後者の「長軸付近の領域」が、ステップフロア3に対して大きな踏力が掛かるときにチェーン7が掛け回る上位位置の領域といえるから、前者の「上記長径領域は、ペダルに対して大きな踏力が掛かるときにチェーンが掛け回る上位位置となるように設定され」る構成に相当する。
そうすると、両者は、本願発明1の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「各々が歯間部を挟んで周方向に等ピッチで配列され、チェーンへの駆動力伝達時にローラが接触する圧力伝達側面、および歯先部を挟んで上記周方向において上記圧力伝達側面の反対側に位置する非圧力伝達側面を各々が有する、複数の歯と、を備えた自転車用ギア板において、
上記複数の歯は、上記自転車用ギヤ板の厚さ方向視における軸線を中心として上記周方向に連続する上記歯のピッチ径が相対的に大きい長径領域と、上記自転車用ギア板の上記軸線を中心として上記周方向に連続する上記歯のピッチ径が相対的に小さい小径領域と、を含むとともに、上記長径領域は、ペダルに対して大きな踏力が掛かるときにチェーンが掛け回る上位位置となるように設定された自転車用ギア板。」
そして、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明1は、「リング部」を備え、歯が「当該リング部の外周において」配列されているのに対し、
引用発明は、かかる「リング部」が特定されていない点。
[相違点2]
本願発明1は、「当該自転車用ギア板よりも多い複数の歯をもつアウタギアと組み合わせて自転車用ギアクランクにおけるインナギアとして使用される自転車用ギア板」であるのに対し、
引用発明の「楕円形チェーンプレート1」は、「アウタギア」及び「インナギア」の明示がない点。
[相違点3]
本願発明1は、「上記複数の歯は、上記チェーンへの駆動力伝達時、上記圧力伝達側面における、上記ローラの中心がピッチ径上にある場合に予定される圧力点における圧力角が、25~35°に設定された圧力角最大領域を含み、上記圧力角最大領域は、少なくとも上記長径領域に設けられており、上記長径領域における上記各歯の上記圧力伝達側面は、当該歯の高さ方向について、上記圧力点付近において、上記ローラの外周曲率より小の曲率をもって凹に湾曲させられているとともに、上記各歯における歯底部は、上記ローラの外周曲率より大の曲率をもって凹に湾曲させられている」のに対し、
引用発明は、かかる「圧力角」、並びに「圧力点付近」及び「歯底部」の曲率について特定されていない点。
(2)判断
事案に鑑み、上記相違点3を先に検討する。
ア 引用文献2には、自転車の駆動用スプロケットにおいて、ローラチェーンのかみ合い時、あるいは離脱時における騒音の発生を抑制するために(段落【0009】を参照。)、複数の歯が、チェーンへの駆動力伝達時、圧力伝達側面における、ローラの中心がピッチ径上にある場合に予定される圧力点における圧力角が、25~35°に設定され、各歯の上記圧力伝達側面は、当該歯の高さ方向について、上記圧力点付近において、ゆるやかに凹に湾曲させられているとともに、上記各歯における歯底部は、上記ローラの外周曲率より大の曲率をもって凹に湾曲させられていることが記載されている(段落【0026】~段落【0028】を参照。)。また、引用文献3には、オートバイスプロケットにおいて、駆動騒音を小さくするために、圧力点における圧力角が28°~32°に設定することが記載されている(第1/2頁10~14行を参照。)。
引用文献2及び3から、駆動騒音を抑制するために、駆動用スプロケットの歯において、ローラの中心がピッチ径上にある場合に予定される圧力点における圧力角が、25~35°程度に設定することは、従来周知の技術といえるとしても、ペダルに対して最大の踏力を掛ける位置にバラつきが生じても、当該バラつきに対応させるために、楕円形チェーンプレートの長径領域において、歯の圧力点における圧力角が、25~35°に設定することまでは周知の技術とはいえない。また、引用文献4~6には相違点2に係るアウタギアとインナギアの組み合わせについては記載されているが、歯の圧力点における圧力角が28°~32°に設定することは記載されていない。
以上、検討したとおり、引用発明、周知技術(引用文献2、3)及び引用文献4~6に記載の技術に基いて、上記相違点3に係る本願発明1の構成とすることは容易想到といえるものでない。
イ したがって、上記相違点1、2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、周知技術(引用文献2、3)及び引用文献4~6に記載の技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。
2.本願発明2~4について
本願発明2~4は、本願発明1の全ての構成を含み、さらに限定を加えたものであるから、上記1において本願発明1に対して説示したのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明、周知技術(引用文献2、3)及び引用文献4~6記載の技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。
第6 原査定について
本願発明1~4は、上記相違点3に係る構成を含んでいるので、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1~6に基いて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1~4は、当業者が引用発明、周知技術(引用文献2、3)及び引用文献4~6に記載の技術に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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