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商標拒絶査定不服審判

2021-003680

審判番号
2021-003680
法域
商標
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
商願2018-049709
請求日
2021年03月22日
審決日
2022年09月09日
公報発行日
2022年12月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社トンボ鉛筆
  • 【請求人代理人】特許業務法人 清水・醍醐特許商標事務所
審判長/審判官
  • 審判長 豊田 純一
  • 審判官 小田 昌子
  • 審判官 渡邉 潤
分類
T18 .13 -Z (W16) / T18 .17 -Z (W16)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法3条1項3号商標法3条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、特許法第150条第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

商願2018- 49709拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 本願商標及び手続の経緯 本願商標は、別掲1(1)のとおり、商標登録願の「商標登録を受けようとする商標」及び別掲1(2)の「商標の詳細な説明」の記載から特定される色彩のみからなるものであって、第16類「鉛筆(色鉛筆を除く。)」を指定商品として、平成30年4月18日に登録出願されたものである。 本願は、平成31年2月22日付けで拒絶理由の通知がされ、令和元年8月8日受付の意見書(以下「意見書1」という。)及び同2年11月9日受付の意見書(以下「意見書2」という。)が提出されたが、同年12月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同3年3月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は、「本願商標は、色彩のみからなる商標であり、その商標の詳細な説明の記載には、「鉛筆の軸部分を「DICカラーガイド フランスの伝統色 第5版 F288」とする構成からなる。」等と記載されているところ、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、商品の魅力向上等のため、本願商標の緑色と同系色の色彩が使用されている実情が認められることからすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品又は商品の包装に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、本願商標は、単に商品の特徴を普通に用いられる方法で表示するものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、提出された証拠を参照するも同条第2項に該当すると認めることはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 第3 当審における職権による証拠調べ 当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、別掲2の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人(出願人)(以下「請求人」という。)に通知し(令和4年1月13日付け証拠調べ通知書)、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。 第4 証拠調べの結果に対する請求人の意見(要点) 請求人は、上記第3の証拠調べ通知に対し、令和4年3月25日受付の意見書(以下「意見書3」という。)を提出し、要旨以下1及び2のとおりの意見を述べた。 1 本願商標の色彩である緑色と同系色の色彩が商品「鉛筆」に使用されている事実として第三者の使用例が挙げられているが、これらの使用例はいずれも本願商標の識別力を否定する根拠にはなり得ない。 2 本願商標が仮に商標法第3条第1項第3号に該当したとしても、永年使用の結果、本願商標を使用した鉛筆の軸色のみをもって自他商品を識別し得るものとなっているため、同条第2項の適用によって登録されるべきものである。 第5 当審の判断 1 商標法第3条第1項第3号該当性について 本願商標は、別掲1(1)及び別掲1(2)のとおり、緑色(DICカラーガイド フランスの伝統色 第5版 F288)の色彩(以下「本願緑色」という場合がある。)のみからなるものであり、第16類「鉛筆(色鉛筆を除く。)」を指定商品とするものである。 ところで、商品の色彩は、古来存在し、通常は商品のイメージや美感を高めるために適宜選択されるものであり、また、商品の色彩には自然発生的な色彩や商品の機能を確保するために必要とされるものもあることからすると、その色彩について、商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識することはないとみるのが相当である。 そして、本願商標の指定商品である「鉛筆(色鉛筆を除く。)」を取り扱う業界において、商品のイメージや美感を高めるために色彩が使用されている実情があることが認められ、別掲2のとおり、鉛筆の本体軸部分に本願緑色と近似する色彩が一般に用いられている事実がある。 そうすると、本願緑色のみからなる本願商標を、その指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品のイメージや美感を高める等、商品の魅力の向上等に資するため、通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、その色彩について、商品の出所を表示するものとして又は自他商品を識別するための標識として認識することはないというべきである。 したがって、本願商標は、商品の特徴(色彩)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。 2 本願商標の使用による自他商品の識別性について 請求人は、意見書1、意見書2、審判請求書(以下「請求書」という。)及び意見書3にて、「本願商標は永年使用の結果、請求人のみを想起させ、自他商品識別力を獲得するに至っている。よって、本願商標は、商標法第3条第2項に該当する。」旨主張しているが、その前提として、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであることは、上記1のとおりである。 そこで、請求人の主張及び同人が提出した参考資料第1号ないし参考資料第32号(枝番号を含む。)を参照し、以下、本願商標の使用による自他商品の識別性(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について検討する。 なお、本審決において、請求人が提出した参考資料第1号ないし参考資料第32号は、参考資料第1号を甲第1号証、参考資料第2号を甲第2号証、参考資料第32号を甲第32号証のように順次、読み替える。また、甲各号証の表記にあたっては、「甲○」のように省略して表示する場合があり、かつ、枝番号の全てを表示する場合は、枝番号を省略して表示する。 (1)商標法第3条第2項について 商標法第3条第2項が、同条1項3号等所定の商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品(役務)であることを認識することができるものについては、商標登録を受けることができるとする趣旨は、特定人が、当該商標を、その者の業務に係る商品(役務)の自他識別標識として、永年の間、他人に使用されることなく、独占的排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商品(役務)に係る取引界においては、事実上、当該商標の当該特定人による独占的使用が事実上容認されているといえるので、他の事業者にその使用の機会を開放しておく公益上の要請が乏しくなるとともに、当該商標が、自他商品(役務)識別力を獲得したことにより、商標としての機能を備えるに至ったことによるものと解される(平成19年4月10日判決言渡、平成18年(行ケ)10450号 知的財産高等裁判第4部判決参照)(下線は、合議体が付与)。 そこで、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するかについて、上記判決に照らし、以下、判断する。 (2)請求人の主張について ア 意見書1による請求人の主張 (ア)請求人について 請求人は、大正2年(1913年)2月に創立された文房具メーカーであり、請求人の主力商品の一つとして鉛筆を取り扱っている(甲1、甲5、甲6)。 (イ)本願商標を使用する商品について 本願商標は、「8900」という商品名の鉛筆(以下、「本件商品」という。)に使用されている。 (ウ)本願商標の使用開始時期及び使用期間について 鉛筆「8900」は、1945年に写真修整用の高級鉛筆として販売が開始され、その後、1948年に黄色いダース箱と、本願商標にかかる緑色(オリーブグリーン)の鉛筆軸にデザインを変更し、それ以降は、ダース箱や鉛筆の捺印の微細なデザイン変更を除き、本願商標等の基本デザインを変更することなく、70年以上にわたり販売されている、鉛筆としては国内で一番のロングセラー商品であり、我が国の鉛筆の「定番」となっている(甲1の1)。 2019年には、本件商品と缶ペンケースのセット品が販売され(甲2の1、甲2の2)、雑誌、業界誌及びWebの記事で70周年記念セットが写真付きで紹介されている(甲2の3~甲2の11)。 (エ)本願商標の使用地域について 請求人は、札幌店、東京店、中部店、大阪店、福岡店に支店を有しており、その支店と、主に量販店を担当する量販CS部とを通じて日本全国に商品を販売している(甲3の1)。 本件商品は、文具店のほかにも全国展開しているコンビニエンスストアや量販店でも販売している。 コンビニエンスストア等では、3本入りで、セリース(PP袋)にパックされて販売されており、セリース(PP袋)の透明部分から本願商標が視認できる(甲3の2、甲3の3)。 また、各社のオフィス向け通販を通じて、本願商品は日本全国で販売されており、オフィス通販最大手のアスクルの鉛筆のランキングでは、1位を獲得している(甲3の4~甲3の15)。 (オ)使用証拠について a 小売店での販売写真 本件商品が日本全国の小売店で販売されている証拠として店舗の写真を提出する(甲4)。 本件商品が、ダース売りだけでなく、 個包装せず什器等に陳列されて一本売りされる商品であり、鉛筆軸の色彩が自他商品を識別する役割を果たすものである。 b リーフレット、カタログ等 (a)リーフレット及びカタログ 請求人が、永年にわたり本願商標を使用している事実を示す証拠として、リーフレット(甲2、甲5)及び製品カタログ(甲6、甲3の1)を提出する。 「筆記用鉛筆 No.8900」(甲5の1)のリーフレットの記載から、この時代すでに、本件商品が軸の色彩で識別されていること、及び、「我国最大の消費量」と最も普及している鉛筆であることがうかがえる。 なお、トンボ鉛筆8900番 70周年限定セット(2018年)(甲2の1)及び「筆記用鉛筆 No.8900」(甲5の1)のリーフレット及び製品カタログ(甲6の1)においては、請求人は、本願商標にかかる鉛筆の軸色をオリーブグリーンと称している。 (b)問屋向けの価格表 トンボ鉛筆価格表という問屋向けの価格表を提出する(甲7)。 なお、この価格表の記載価格と、請求人の旧名称である「トンボ鉛筆製作所」との記載から、その発行時期は、1950年から1953年の間と推定される。 本価格表には、本願商標は掲載されていないが、価格表中、品番の欄には「#8900」そして、品種の欄には「オリーブ塗」とあり、これは鉛筆「8900」の軸色を表示したものであり、本願商標が使用されていたことがわかる。 (c)公式ホームページ及び公式SNSアカウント 請求人は1996年に開設した公式ホームページやFacebook、Twitter、InstagramなどSNSの公式アカウントを積極的に活用して情報発信・プロモーションを行っており、鉛筆「8900」に関する情報も多数発信している(甲8)。 c 展示会、イベント 請求人は展示会やイベントにおいて本願商標を使用している(甲9)。 第15回国際文具・紙製品展(期間:2004年7月1日~3日 会場:東京ビッグサイト)における写真は、鉛筆「8900」の販促物(紙バッグ)であり、請求人ブースの来場者に配布されたものであり、紙バックに本願商標が使用されている(甲9の1)。 「Tombow Cafe & Marche」(期間:2013年4月16日~30日 会場:渋谷ロフト)は、請求人の創立100周年を記念したもので、期間中、カフェの営業及び請求人の文具が販売された(甲9の3~甲9の5)。 カフェ店内を映した写真(甲9の2)には、本願商標を表示したポスターが見られる。 d 広告 本件商品の広告は、雑誌「漫画:見る時局雑誌」に掲載されている。同誌は昭和23(1948)年5月号であり、本願商標が採用された初期の広告になる(甲10の1)。 本願商標が使用されている請求人の企業広告として、2006年1月3日付日本経済新聞、2006年1月5日付中日新聞、2011年2月16日付朝日新聞に掲載された新聞広告があり、これらの広告には、請求人を代表する商品として本件商品が使用されており、実際の新聞紙上では本願の色彩商標が表されている(甲10の2~甲10の4)。 なお、2006年に中日新聞に掲載された広告は、第14回(2006年)中日新聞広告賞部門賞、2006年TCC賞、2006年JAA賞を受賞した(甲10の5、甲10の6)。 また、同時期にNTV系全国ネットで放送された請求人のテレビコマーシャルも、第46回(2006年)テレビCM部門ACCシルバー賞を受賞した。そのコマーシャルにおいて、本件商品を見ることができる(甲10の7)。 さらに、2011年に朝日新聞に掲載された広告は、第60回朝日広告賞<広告主参加の部>「準朝日広告賞」を受賞した(甲10の8)。 加えて、本件商品を題材にした作品が、朝日新聞が主催する朝日広告賞<一般公募の部>において朝日広告賞や準朝日広告賞等を受賞している(甲10の9~甲10の14)。 なお、受賞作品は、参加広告主である請求人が課題にした自社文具のブランド広告(鉛筆の商品広告ではない。)への応募作品となり、これら一般公募の広告作品において、本件商品によって請求人のブランドが表現されていることからも、本願商標が請求人のブランドを示す識別標識として需要者に認識されていることがわかる。 e 鉛筆「8900」のコラボレーション製品 請求人と他社とのコラボレーション(共同製作企画)により、本件商品をモチーフとした「ニンテンドーDS Lite専用「8900鉛筆」タッチペン(発売日:2006年12月14日)」(甲11の1、甲11の2)、「TOMBOW8900 VICTORINOX マルチツール(発売日:2009年1月28日)」(甲11の3~甲11の5)、「UNIQLO企業コラボTシャツ(発売日:2010年4月下旬)」(甲11の6)、「マルマン「図案シリーズ」スケッチブック復刻版(発売日:2008年3月10日)」(甲11の8、甲11の9)、「ロフト限定 ミニサイズ「8900」(販売:2015~2016年頃)」(甲11の10、甲11の11)及び「2020年度版 日めくり付せんカレンダー「himekuri 文房具」(発売予定日:2019年10月1日)」(甲11の12~甲11の14)のような様々な製品が商品化されている。 こうしたコラボレーションは、認知度が高く、多くの需要者に親しまれている有名ブランドと共同製作するのが一般的であることから、本願商標が使用による識別力を獲得していることは明白である。 f 受賞歴 本件商品は、2011年に「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞している(甲12)。グッドデザイン・ロングライフデザイン賞は、需要者に人気があり長期間にわたり支持されているロングセラー商品のみを対象にした賞である。その受賞の概要において、「『黄色いパッケージとモスグリーン【のパッケージ】でお馴染みの鉛筆「8900」』」(請求人注:【のパッケージ】の記載は誤記と思われる。)、「『黄色いパッケージとモスグリーンで知られる「8900」』」の記述が見られる。なお、受賞概要において、本件商品は、モスグリーンと表現されているが(甲12)、本願商標の色彩に着目して、請求人の商品であると認識していることは間違いのない事実であり、本願商標が使用による識別力を獲得していることを裏付けるものにほかならない。 g 国内における請求人の商品の市場占有率及び販売数 国内における本件商品の過去20年間(1999~2018年)の販売数量の推移は、グラフに示すとおりであり、この期間の合計販売数量は200百万本以上とパソコンやスマートフォン等の普及により、筆記用具が使用される機会が少なくなってきている現代にあっても本件商品の販売数は堅調であり、定番商品として需要者に浸透している事実を示している(甲13の1)。 次に、本願商標を使用している商品の市場占有率は、2018年度に32.2%(業界2位)、2017年度に29.1%(業界2位)、2016年度に27.4%(業界2位)、2015年度に25.9%(業界2位)、2014年度に24.4%(業界2位)、2013年度に23.5%(業界2位)、2012年度に23.0%(業界2位)、2011年度に24.4%(業界2位)、2010年度に22.8%(業界2位)、2009年度に25.7%(業界2位)、2007年度に24.5%(業界2位)である(甲13の2~甲13の12)。 なお、このシェアは色鉛筆も含めたものであり、また、請求人は、本件商品以外に、他のブランドも有しているため、「8900」の鉛筆のみのシェアではないが、長期にわたり、鉛筆市場で請求人は業界2位に位置していることに鑑みると、ロングセラーである鉛筆「8900」の売上数の高さは想像に難くないと思われる。 h アンケート調査 「週刊 ビューロウ(THE WEEKLY BURO):(株)全通発行」(甲13の13~甲13の16)に掲載の全国から無作為に抽出した500店(又は400店)の文具店を対象としたトップブランドを挙げるアンケート調査の結果によると、鉛筆について、請求人は2位に位置しており、1位との二強と評されている。また、このアンケート調査による請求人の鉛筆(色鉛筆を除く)を取扱う文具店の割合は、平成30年に86.9%、平成26年に82.7%、平成23年に81.0%、平成22年に77.8%である。 これは本件商品に限らないが、本件商品は事務用、一般筆記用の鉛筆の定番として広く普及している商品であることから、請求人ブランドの鉛筆を取扱う店舗であれば、その大多数で取扱われていると推察される。 なお、このアンケート調査は、その文具店での「売れている上位二社」を記入する方式であり、請求人のブランドの鉛筆を取扱っていても3位以下であるため記入しなかった店舗もあることを考慮すれば、実際の取扱い店舗の割合は上記パーセンテージより多いことは明らかである。 i 請求人以外の者による紹介 (a)雑誌等 本件商品は、一般紙、文房具の雑誌や新聞等の媒体で数多く紹介されている(甲2の3、甲2の4、甲14)。 (b)テレビ放送 本件商品はテレビ番組でも紹介された(甲15)。 (c)カスタマーレビュー 本件商品は、インターネット通販のサイト「amazon.co.jp」でも販売しており、そのサイトにおける本件商品についての需要者のレビューからも、本願商標は他社商品と識別するための目印として機能しており、指定商品についての使用により識別力を獲得した結果、本願商標に接した需要者、取引者は商品に通常使用される色彩を表したものと認識することは決してなく、本件商品は、平成31年2月22日付け拒絶理由の通知の引用情報で指摘の他社鉛筆とは識別されていることが裏付けられる。 イ 意見書2における請求人の主張 (ア)ツイッターについて 世間一般の声ともいえるツイッターでは、本件商品の箱の色について全く触れることなく、軸色のみに関するつぶやきが多く見られる(甲17)。 (イ)コラボレーション商品について a ユニクロ 企業コラボTシャツ 本件商品をモチーフにしたTシャツが2020年3月下旬に株式会社ユニクロより販売された。Tシャツには本件商品が描かれているが、黄色の箱は見られない(甲18の1~甲18の4)。また、このTシャツを紹介するウェブサイトニュースの記事には「子どものころ、このグリーンの鉛筆を使ってせっせと勉強した方も多いのではないでしょうか」との記載があり(甲18の4)、ユニクロ社ウェブサイト(ウェブショップ)のお客様のコメント欄にも、「トンボ鉛筆!昔よく使ったあのグリーンの鉛筆デザインがかわいい!」との声がある(甲18の3)。 b ニンテンドーDS Lite コラボレーション商品 ニンテンドーDS Lite専用アクセサリーとして、「8900」の鉛筆を模したタッチペンがコラボ商品として2006年12月に発売され、これには、黄色の箱は用いられていない(甲11の1)。 これらa及びbのコラボ商品に黄色の箱が用いられていないという事実からも、箱を伴わない鉛筆に付された本願商標が独立して識別力を有しているという出願人の主張を裏付けるものといえる。 (ウ)鉛筆をモチーフにしたミニチュア作品について インスタグラムで270万のフォロワー数を有する人気ミニチュア写真家が制作した本件商品をモチーフにした作品には黄色の箱は見られない(甲18の5)。また、同写真家はその作品に関するインタビュー記事において、「トンボ鉛筆といえば、渋い緑色ですよね。」と述べており(甲18の6)、本件商品の軸色は、請求人の略称「トンボ鉛筆」と結び付けられている。 (エ)請求人の総合カタログ等について 本件商品は、請求人の代表的な商品であるので、各種製品を紹介する総合カタログにおいて、商品カタログ部分の掲載だけでなく、企業メッセージやブランドイメージを伝える巻頭ページの写真に起用され、他にも鉛筆製品一覧ページ等に掲載されているが、当該ページには黄色の箱は見られない(甲19)。 そして、昭和時代のカタログやリーフレットの記載から、この時代既に軸のオリーブグリーンが独立して需要者に広く浸透しており、黄色の箱が注目され始めたのは、これより後であることが推認される。なお、現在においても、依然として、鉛筆の軸色とその箱はそれぞれが著名であると認識され、本願商標の色彩が独立して自他商品識別機能を発揮していることは明らかである(甲5の1、甲6の1、甲6の2、甲6の39、甲7、甲20、甲21)。 (オ)請求人の企業広告等について 本件商品を起用した企業広告では、黄色の箱は掲載せずにオリーブグリーンの鉛筆単体で表現されている(甲10の1~甲10の8)。 100周年記念イベントでのポスター(甲9の2)、出願人ウェブサイトのトップページ(甲8の1)及び請求人の公式Youtubeチャンネルの動画「自由な発想のそばに。えんぴつ」のタイトル画像やその動画内等でも本件商品のみが表示されている(甲22)。 また、朝日広告賞の一般公募の広告作品でも、黄色の箱ではなくオリーブグリーンの鉛筆のみで請求人を識別させる広告となっている(甲10の9~甲10の14)。 これらの証拠資料からも、黄色の箱の有無にかかわらず、オリーブグリーンの鉛筆が独立して請求人の商品として識別可能であることが分かる。 (カ)雑誌等について 「NIKKEI STYLE(発行:2019年10月25日)」、「まだある。今でも買える“懐かしの昭和”カタログキャラクター編(発行:2007年8月10日)」 等の資料(甲23)からも、本件商品が「トンボ鉛筆」と呼ばれ、鉛筆の軸色のみで請求人の出所標識として認識されていることがうかがえ、意見書1で挙げた雑誌等の記事でも、箱の黄色についてほぼ言及せずに軸のオリーブグリーンについて述べているものが多数あり(甲14の2、甲14の5、甲14の11、甲14の13、甲14の15、甲14の18)、さらに、意見書1で指摘した証拠の中には、箱がない鉛筆だけの写真が掲載されており(甲14の8、甲14の19~甲14の21)、箱の色がなくても鉛筆の軸色が出所表示機能を発揮している。 (キ)ウィキペディアについて フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の「トンボ鉛筆」の項目において、本願商標にかかる鉛筆については、軸色のみが特徴として記載されており、黄色の箱に関する記述は一切見られない(甲24)。 (ク)一般需要者の認識について 意見書1で指摘したとおり、SNS等における一般需要者の声でも、箱の色に触れずに軸色についてのみ述べているものが多く見られ、軸色のみでもって請求人の商品であると認識されている(甲8の13、甲16)。 ウ 請求書における請求人の主張 (ア)本願商標の色彩の識別性について a 本件商品 本願商標は箱の黄色と「共に認識されている」のではなく、それぞれが著名であり、本願商標の色彩と箱の黄色はそれぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。 現に、本件商品は、実際の店頭では黄色の箱に入れられることなく、透明セリース(PP袋)パックやバラ売りで販売されている実情がある。 例えば、コンビニエンスストアや100円ショップ等では、3本入りで、セリース(PP袋)にパックされて販売されており(甲3の2)、バラ売りと箱入りの両方を扱っている店舗では、通常、両者は陳列棚の離れた位置にあるため、バラ売り品は、黄色の箱と共に視認されることなく、箱入りよりも目立つ位置に陳列されており(甲4)、本願商標の色彩は、実際の取引において、常に黄色の箱と共に使用されるものではない。 また、請求人の企業広告やイベント等においても、黄色の箱は用いずに、本願商標を付した鉛筆のみが表示されている(甲8の1、甲9の2、甲10の1~甲10の8、甲22)ため、黄色の箱とは分離して観察され、本願商標が需要者に強い印象をもって認識されていると見ることは決して不自然ではない。 なお、カタログ等については、その性質上、鉛筆だけでなく、その箱も一緒に掲載され、慣例に従って1ダースでの価格が表示されていることが多いが、それが店頭等での小売単位を示すものではない(甲19、甲25)。 そして、古くから、商品の仕様・特徴としては専ら軸の色が強調されてきており、昭和時代のカタログやリーフレットの記載から、この時代既に軸のオリーブグリーンが独立して需要者に広く浸透しており、黄色の箱が注目され始めたのは、これより後であることが推認される(甲5の1、甲6の1、甲6の2、甲6の39、甲7、甲20、甲21)。 請求人は、SNS等の証拠のほかに、本願商標の色彩が請求人のみを想起させ、識別力を有すると判断できるような本願の緑色に言及した証拠も提出しており(甲17の23、甲18の3、甲18の4、甲18の6)、これまでに提出した証拠を総合して勘案すれば、需要者は、購入時や広告時に、本願商標の緑色の軸色のみで自他商品を識別していると認定されるべきと確信している。 また、本件商品は、「家庭や会社、さらには選挙の投票所など幅広く使われている鉛筆である。」(甲14の13)ところ、そうした場では箱に入った状態で目にすることはほとんどなく、その軸色を目印として請求人の商品であると認識されている。 b 雑誌等での紹介記事 請求人は、各種雑誌等の証拠(甲14の8、甲14の19~甲14の21、甲23等)を提出し、それらの証拠から、本願商標を付した鉛筆が「トンボ鉛筆」と呼ばれ、本件商品の軸色のみで請求人の出所標識として認識されていることをうかがうことができるが、「トンボ鉛筆8900ペンケースBOOK(発行:2021年3月19日)」(甲26)の証拠を追加、提出する。 この雑誌は、戦後の混乱期に作られた本件商品の誕生秘話などを紹介したものだが、箱がない本件商品の写真を大きく表示の上、「近代・トンボ鉛筆の出発点 日本を代表するオリーブグリーンの鉛筆」として紹介されており、本証拠も本願商標の緑色が独立して本件商品を指標するものとして認識されていることの証左になる。 c ウィキペディア フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の「トンボ鉛筆」の項目において、本件商品については、「No.8900:若草色の塗装が特徴の、トンボ鉛筆のスタンダードにして最古参。」(甲24)の通り、軸色のみが特徴として記載されており、黄色の箱に関する記述は一切見られない。 提出した証拠資料に徴すれば、本件商品は箱の黄色と結び付けられることなく独立して、本願商標の色彩のみをもって、専ら請求人の業務にかかる商品であると認識されていることを客観的に把握することができ、本願商標は、自他商品識別機能を有する商標であるといえる。 (イ)「Tombow」の文字やトンボの図形について 本件商品において、「Tombow」の文字やトンボの図形は六角軸の一面のみにごく小さく表示されており、顕著に表されているとはいえず、他方、本願商標の色彩は本件商品の六角軸全面に付されており、「Tombow」の文字や図形以上に需要者の目に付き易く、強い印象を与えている。 文字や図形が本件商品に目立つ態様で表示されておらず、需要者は商品を選択する際に、視認性の問題もあることから、小さく表示された文字や図形に必ずしも注意を払うものではなく、本件商品の軸色を目印にどのメーカーの商品であるかを確認した上で購入する場合も多いと考えられる。 また、本願の指定商品である「鉛筆(色鉛筆を除く。)」は慎重な取引がなされるような高額品ではなく、比較的安価であることもあって、簡易、迅速が尊ばれる取引の実際にあっては、必ずしも常に本件商品に付された文字や図形に着目するとは限らず、これに接する需要者は、直ちに目にすることができる本願商標の軸色に着目して取引に資する場合も決して少なくないというべきあり、かかる取引の実情に鑑みると、商品選択に際して軸色が果たす役割は大きいものといえるから、本願商標はそれ自体が独立して自他商品の識別標識として機能すると判断するのが相当であり、本件商品に「Tombow」の文字等が付されていることは、本件商品の軸色が独立して自他商品識別機能を獲得していると認める上で何ら妨げとなるものではない。 エ 意見書3における請求人の主張 (ア)本願商標の色彩の識別性について 上記第3の証拠調べ通知書において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、証拠調べの結果、本願商標の色彩である緑色と同系色の色彩が商品「鉛筆」に使用されている事実として第三者の使用例(1)ないし(10)(以下、引例(1)ないし引例(10)という。)が挙げられているが、これらの引例はいずれも本願商標の識別力を否定する根拠にはなり得ない。 上記第3の証拠調べは「本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて」実施したとのことだが、本願商標が仮に商標法第3条第1項第3号に該当したとしても、永年使用の結果、本願商標を使用した鉛筆の軸色のみをもって自他商品を識別し得るものとなっているため、商標法第3条第2項の適用によって登録されるべきものである。 なお、商標審査基準によると、商標法第3条第2項適用の可否を判断する際に、出願人以外の者による出願商標と同一又は類似する標章の使用の有無が考慮事由のひとつになるが、上記第3の証拠調べ通知書の引例(1)ないし(10)に徴しても、請求人以外の者が本願商標と同一又は類似の色彩を標章として使用している事例はないので、本願商標は商標法第3条第2項の要件を具備していることは明白である。 (イ)商品見本について 本件商品と、引例(1)、(2)、(3)、(4)、(7)、(8)の他社鉛筆を対比するために商品見本を提出する(甲27)。 商品見本を対比すると、上記各引例の鉛筆の色彩は本願商標の色彩とは全く異なり、容易に見分けられる。 文具に関する有識者であるステーショナリーディレクター土橋正氏のウェブサイトで、本願商標を使用した商品について「軸色がグリーンをしている鉛筆は数あれど、この少し淡さのある色味の8900は独特だ。」と紹介されており、本願商標が独特の色彩であることが裏付けられる(甲28)。 (3)事実認定 ア 請求人について 請求人は、大正2年(1913年)2月に創立された文房具メーカーであり(甲1)、請求人のリーフレット(甲5)及びカタログ(甲6)から、創業時から主力商品の一つとして鉛筆を取り扱っている企業であることがうかがえる。 イ 本件商品の使用開始時期、使用期間、使用地域及び使用状況について 本件商品は、1945年に写真修整用の高級鉛筆として販売が開始された(甲1)。 その後、本件商品は、1948年に黄色いダース箱(以下、「黄色の箱」という。)と、本願緑色の鉛筆軸にデザインを変更した以降は、基本デザインを変更することなく、70年以上にわたり販売されている(甲1の1)。 上記デザインの変更から70周年を迎えた2019年には、70周年を迎えたことを記念して、本件商品と缶ペンケースのセット品が販売され(甲2の1、甲2の2)、雑誌、業界誌及びウェブサイトの記事で70周年記念セットが写真付きで紹介されている(甲2の3~甲2の11)。 上記セット品のリーフレット(甲2の1)、プレスリリース(甲2の2)及び雑誌、業界誌及びウェブサイトの記事(甲2の3~甲2の11)には、本件商品と共に、黄色の箱に包装された本件商品が掲載されており、また、本件商品(甲2の8)及び黄色の箱(甲2)には、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字等が表示されている。 請求人は、国内の支店(甲3の1)等を通じて、本件商品を、文具店のほか、全国展開しているコンビニエンスストア、量販店で日本全国に販売しており、また、オフィス向け通販を通じて、日本全国で販売しており、オフィス通販のアスクルにおける鉛筆のランキングでは、1位を獲得している(甲3の12(更新日:2019年3月19日)、甲3の13)(更新日:2019年7月28日))。 そして、コンビニエンスストア等においては、本件商品は、透明部分から本件商品が視認できるセリース(PP袋)に3本入りでパックされて販売されており(甲3の2、甲3の3)、小売店においては、本件商品は、ダース売り及び個包装をせずに什器等に陳列する一本売りがされている(甲4)。 上記のようにして文具店等で販売されている本件商品には、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されており、また、セリース(PP袋)には、これらの図形及び文字に加え、「トンボ鉛筆」の文字が表示されているもの(甲3の2)や、黄色の箱と同じようなデザインが施されているもの(甲3の3)がある。 さらに、什器等に陳列する一本売りにおいては、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されたポップが近くに置かれているもの(甲4の1)や、「トンボ」の図形及び「Tombow」の文字が什器の上段に表示されているもの(甲4の3、甲4の4)が確認できる。 加えて、本件商品の一本売り及び本件商品を黄色の箱に包装した販売が同時に行われる際に、一本売りと黄色の箱は、一つの什器内の上段と下段に置かれる場合があることが確認できる(甲4の5、甲4の8~甲4の10、甲4の14、甲4の16)。 また、請求人の「2018/2019年度総合カタログ」(甲3の1)、リーフレット(甲5の1)、カタログ(甲6の1及び甲6の2)において、請求人は、本願緑色を、「オリーブグリーン」と表現しているところ、当該リーフレット及びカタログに掲載されている本件商品には、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されており、また、当該リーフレットの一部(甲5の1)及び当該カタログの全てにおいて、黄色の箱に包装された本件商品が掲載されている。さらに、総合カタログにおいても、黄色の箱に包装された本件商品が掲載されている部分がある(甲19の第82頁)。 ウ 市場占有率及び販売数について 国内における本件商品の1999年から2018年の合計販売数量は200百万本以上である(甲13の1)。 また、国内における請求人の販売する鉛筆の市場占有率は、「文具・事務用品マーケティング総覧」の2007年版及び2009年版ないし2019年版によると、請求人の鉛筆の市場占有率は、上記期間中、2009年度の22.8%と2017年度の32.2%の間で推移しており、請求人の業界順位は第2位である(甲13の2~12、甲29)。 ただし、上記市場占有率は、「文具・事務用品マーケティング総覧」において、「国内鉛筆市場メーカーシェア」として示されており、ここでいう請求人の「鉛筆」には、本件商品のみではなく、請求人の販売する本件商品以外の鉛筆も含まれている。 エ 広告宣伝について 1948年5月号の雑誌「漫画:見る時局雑誌」に、本願商標が採用された初期の広告が掲載されているところ、当該広告に掲載されている本件商品には、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「TOMBOW」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されており、当該広告の下部には、「トンボ鉛筆」の文字が表示されている(甲10の1)。 請求人は、2006年1月3日付日本経済新聞、2006年1月5日付中日新聞、2011年2月16日付朝日新聞に本件商品の宣伝広告を掲載しているところ、当該宣伝広告の右上には、請求人の名称を表すデザイン化された「Tombow」の文字が、また、広告の下部の文章中には「株式会社 トンボ鉛筆」の文字が表示されており(甲10の2~4)、広告に掲載されている本件商品の中には、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されているものがある(甲10の4)。 本件商品の映像が含まれている請求人のテレビコマーシャルが、2006年にNTV系全国ネットで放送され(甲10の7)、当該テレビコマーシャルにおいて、撮影に使用された本件商品には、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されている。 上記2006年1月5日付けの中日新聞及び2011年2月16日付けの朝日新聞の宣伝広告並びにテレビコマーシャルは、「第14回(2006年)中日新聞広告賞部門賞」(甲10の5)、「第60回朝日広告賞<広告主参加の部>「準朝日広告賞」」(甲10の8)、「第46回(2006年)テレビCM部門 ACCシルバー賞」(甲10の6)等の受賞をし、また、朝日新聞が主催する朝日広告賞(一般公募の部)において、本件商品を題材にした作品が、朝日広告賞や準朝日広告賞等を受賞している(甲10の9~甲10の14)。 請求人は、1996年に開設した公式ホームページやFacebook等のSNSの公式アカウントを活用して、本件商品の情報発信・プロモーションを行っており、上記公式SNSのアカウントのフォロワー数は、Facebookが9万、Twitterが7.1万、Instagramが5.9万(いずれも2019年7月30日現在)である。 そして、上記公式ホームページやFacebook等の公式SNSには、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されている本件商品(甲8)が掲載されていることに加え、黄色の箱に包装された本件商品も掲載されており(甲8の2、甲8の4~甲8の6、甲8の9、甲8の11~甲8の13)、また、Instagramには「黄色いパッケージでおなじみ「8900」」(甲8の5)、Facebookには「黄色のパッケージにオリーブグリーンの軸でお馴染みの鉛筆「8900」」(甲8の11)、「黄色い紙箱に入った鉛筆」(甲8の13)との記載がある。 請求人は、「第15回国際文具・紙製品展」(期間:2004年7月1日から3日、場所:東京ビッグサイト)において、本件商品の販促物(黄色の箱のデザインをモチーフにした紙バッグ)に、黄色の箱に包装された本件商品の写真を印刷して使用している(甲9の1)。 また、「Tombow Cafe & Marche」(期間:2013年4月16日から30日、場所:渋谷ロフト)においては、請求人の文具を販売しており(甲9の3~甲9の5)、カフェ店内の写真から、本件商品の写真が表示されたポスターが確認でき、当該ポスターの隣にあるポスターの下部には、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び「Tombow」の文字が表示されている(甲9の2)。 請求人と他社とのコラボレーション(共同製作企画)により、本件商品をモチーフにした様々な製品として、「ニンテンドーDS Lite専用「8900鉛筆」タッチペン」(発売日:2006年12月14日)(甲11の1、甲11の2)、「TOMBOW8900 VICTORINOX マルチツール」(発売日:2009年1月28日)」(甲11の3~甲11の5)及び「ユニクロ 企業コラボTシャツ(発売日:2010年4月下旬)」(甲11の6、甲11の7)等が商品化されている(甲11の8~甲11の14、甲18の1~甲18の4)。 上記コラボレーション(共同製作企画)に関する請求人のプレスリリースやニュース等の記事には、本件商品が包装された黄色の箱が掲載されており(甲11の3~甲11の7、甲11の10、甲11の11)、上記記事中、「ユニクロ 企業コラボTシャツ(発売日:2010年4月下旬)」には、「Tombow」の文字の表示がされていると共に、当該Tシャツに表示されている本件商品には、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されている(甲18の1~甲18の3)。 本件商品は、2011年に「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞しており、「GOOD DESIGN AWARD」のホームページには、受賞概要として、「黄色いパッケージとモスグリーン【のパッケージ】でおなじみの鉛筆「8900」」(請求人注:「【のパッケージ】の記載は誤記と思われる。」)、「黄色いパッケージとモスグリーンで知られる「8900」」との記載が見られ、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されている本件商品と共に、黄色の箱に包装された本件商品も掲載されている(甲12)。 オ 請求人以外の者による本件商品の紹介について 本件商品は、2008年2月(「Pen 3月1日号」(甲14の19))から2021年3月(「トンボ鉛筆8900ペンケースBOOK」(甲26))に発行された一般紙、文房具の雑誌や新聞等の媒体で紹介されている(甲2の3、甲2の4、甲14の1~甲14の21、甲23の1~甲23の7)。 上記媒体において、本件商品は、「緑軸の鉛筆」(甲14の7)、「オリーブグリーンの鉛筆」(甲14の9)等、鉛筆軸の色彩を示して説明されており、また、中には、黄色の箱の掲載がなく、本件商品のみの写真及びイラストが掲載されているものもあるが(甲14の11、甲14の13、甲14の18~甲14の21、甲23の1、甲23の3~甲23の7)、多くは、「トンボ鉛筆」の見出し(甲14の8、甲18~甲21、甲23の4、甲23の7)の下や、「Tombow(TOMBOW)」の文字(甲14の4、甲14の6)、「トンボ鉛筆」の文字(甲23の5)、あるいは、「トンボ」の図形や「8900」文字(甲26)とともに掲載されており、掲載されている本件商品の画像のうち、文字が視認できるものには、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されており(甲14の2、甲14の4、甲14の7、甲14の12~甲14の14、甲23の4、甲23の6、甲23の7)、黄色の箱に包装されている本件商品が掲載されているものもある(甲14の1~甲14の7、甲14の9、甲14の10、甲14の12、甲14の14、甲14の16、甲14の17)。また、上記媒体には、「半世紀も変わらない外箱デザイン」「味のある緑の木軸と山吹色のレトロな外箱」(甲14の1)、「独特な存在感の8900のパッケージ」(甲14の2)、「ダース箱のデザインはほぼ変わらず、現在ではレトロな雰囲気が人気」(甲14の3)、「黄色いパッケージ、オリーブ色の木軸でおなじみのトンボ鉛筆「8900」」(甲14の4)、「60年以上たっても変わらぬパッケージはグッドデザインのお手本といえる」(甲14の5)、「懐かしさも感じる黄色のパッケージにトレードカラーであるオリーブの色のボディ」(甲14の6)、「黄色い箱の8900 三世代徹底比較」(甲14の7)、「オリーブグリーンの軸と黄色い箱は、いつの時代もスタンダード」(甲14の12)、「黄色い箱とオリーブグリーンの軸は当時からほとんど変わらない」(甲14の17)等の黄色の箱に関する記載がある。 テレビ番組では、本件商品は、「マツコの知らない世界」(2018年2月27日放送、TBSテレビ)において「日本一のロングセラー鉛筆」として取り上げられ(甲15の1)、「お願い!ランキング」(2018年3月13日放送、テレビ朝日)においては、70年以上の鉛筆の定番として紹介され、10代男女1000人の投票による「本当に役立つ文房具総選挙」のランキングベスト30で、鉛筆では唯一のランクイン(24位)をしている(甲15の2)。 なお、上記テレビ放映された本件商品には、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されており、また、本件商標は黄色の箱と共に放映されていたことがうかがえる(甲15の1、甲15の2)。 本件商品はインターネット通販のウェブサイト「amazon.co.jp」でも販売されており、当該ウェブサイトのカスタマーレビューにおいて、「・・・黒より緑が好き、とか。」(投稿日:2018年1月28日)、「・・・緑色のトンボ鉛筆が一番です。」(投稿日:2013年4月28日)、「・・・緑1色なのがダサいと思いながら使ってました・・・。」(投稿日:2016年12月17日)との記載がある(甲16)。 上記甲16のインターネット通販のウェブサイトにおいては、黄色の箱に包装されている本件商品が掲載されている。また、商品の説明として「オリーブグリーンの鉛筆軸と、イエローとブラックにリアルなトンボが描かれた特徴的なデザインのダース箱」との記載があり、カスタマーレビューとして「・・・シリーズと迷っているならデザイン重視で選んで全く問題ないと思います。レトロなパッケージや黒より緑が好き、とか。」、「近所の文房具には、ダース売りのトンボ鉛筆が何故かないので、Amazonで注文しました。」、「美味しそうな「森永ミルクキャラメルのような箱」にグリーンで塗装された鉛筆が12本入っています。」、「最近もパッケージが一緒なのに気づきました。」との黄色の箱に関する記載がある。 ツイッター(甲17)においては、「「緑の鉛筆」と言えば8900です!」等の記載があり、ウェブショップでのお客様のコメントには「トンボ鉛筆!昔よく使ったあのグリーンの鉛筆デザインがかわいい!」(甲18の3)との記載があるように、黄色の箱に触れられることなく、本願緑色についてのみ言及がされているものがある。 上記ツイッター中には、「鉛筆はトンボの8900の2B使っています・・・自分の中で緑色の軸のスタンダードな鉛筆と言えばこれのイメージ」(甲17の1)、「選挙の鉛筆、今回はコロナの影響か手渡されたものを使う形式で、Tombow鉛筆の緑のやつでした」(甲17の3)等との記載があり、また、「ウィキペディア(Wikipedia)」には、「No.8900:若草色の塗装が特徴の、トンボ鉛筆のスタンダードにして最古参。」との記載がある(甲24)。 カ アンケート調査について 「週刊 ビューロウ(THE WEEKLY BURO):(株)全通発行」(甲13の13~甲13の16)に掲載の、全国から無作為に抽出した500店又は400店の文具店を対象とし、その文房具店で売れている上位2社を記入してもらうアンケート調査の結果によると、鉛筆について、請求人は2位であり、また、このアンケート調査による請求人の鉛筆(色鉛筆を除く)を取扱う文具店の割合は、平成30年に86.9%、平成26年に82.7%、平成23年に81.0%、平成22年に77.8%となっている。 上記アンケートにおいて、平成30年8月16日付け「THE WEEKLY BURO」に掲載のアンケート調査は、全国の文具店の中から無作為に400店を抽出し、有効回答数は138通(回答率34.5%)(甲13の13)、平成26年8月14・21日付け「THE WEEKLY BURO」に掲載のアンケート調査は、全国の文具店の中から無作為に500店を抽出し、有効回答数は148通(回答率29.6%)(甲13の14)、平成23年8月11・18日付け「THE WEEKLY BURO」に掲載のアンケート調査は、全国の文具店の中から無作為に500店を抽出し、有効回答数は117通(回答率23.4%)(甲13の15)、平成22年8月19日付け「THE WEEKLY BURO」に掲載のアンケート調査は、全国の文具店の中から無作為に500店を抽出し、有効回答数は126通(回答率25.2%)(甲13の16)であった。 (4)判断 ア 請求人及び請求人による本件商品の使用について 上記(3)アないしウのとおり、請求人は、大正2年(1913年)2月に創立された文房具メーカーであり、創業時から主力商品の一つとして鉛筆を取り扱っている企業であることがうかがえる。 また、1945年に写真修整用の高級鉛筆として本件商品を販売した後、1948年に、黄色の箱と、本願緑色の鉛筆軸にデザインを変更した以降は、基本デザインを変更することなく、本件商品の販売を継続しており、本願商標を、本願指定商品である「鉛筆(色鉛筆を除く。)」に使用してきたといえ、また、本件商品の販売地域は全国に及んでいる。 さらに、国内における本件商品の1999年から2018年の合計販売数量は200百万本以上であり、市場占有率は、「文具・事務用品マーケティング総覧」によると、2009年度の22.8%と2017年度の32.2%の間で推移しており、業界順位としては第2位であることが認められる。 しかしながら、別掲2のとおり、本願指定商品である「鉛筆(色鉛筆を除く。)」を取り扱う業界において、本願緑色と近似する色彩が、鉛筆の本体(軸部分)に使用されている実情がある。 また、本件商品には、本願緑色とともに、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow(TOMBOW)」の文字及び「8900」の文字が表示されている。 さらに、店舗販売において、コンビニエンスストア等では、本件商品は、本件商品が視認可能な透明部分があるセリース(PP袋)にパックされて販売されているが、当該セリース(PP袋)には、「トンボ鉛筆」の文字が表示されていたり、黄色の箱と同じようなデザインが施されているものがある。 加えて、小売店においては、本件商品は、ダース売り及び個包装せずに什器等に陳列する一本売りがされているが、本件商品とともに、「トンボ」の図形、「Tombow」の文字及び「8900」の文字が表示されたポップが近くに置かれていたり、「トンボ」の図形及び「Tombow」の文字が什器等そのものに表示されているものがあり、また、一本売りと黄色の箱でのダース売りで販売される場合には、両者とも一つの什器内の上段と下段に分けて置かれることが多い。 そうすると、本件商品への使用により、本願緑色のみが独立した識別標識として認識され、その機能を果たしているものとは認められない。 イ 広告宣伝について 上記(3)エのとおり、請求人は、本件商品の画像を用いた広告宣伝を、雑誌、新聞等の各種広告媒体によって、1948年以降行っており、一部の宣伝広告においては、広告賞等を受賞したものもあること、また、請求人の公式ホームページやFacebook等のSNSの公式アカウント、展示会、イベント、請求人と他社とのコラボレーション(共同製作企画)を通じた広告宣伝も行っているほか、本件商品は、2011年に「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞していることが確認できる。 しかしながら、上記広告等に掲載されている本件商品には、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow(TOMBOW)」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されているものや、黄色の箱も掲載されているものがあり、本願緑色のみが独立して、本件商品の出所を表示しているとはいえない。 また、これらの広告等の中には、本件商品が、販促物(紙バッグ)やTシャツに表示されたりするなど、デザインの一環として用いられ、広告内容が本件商品と関連付けられたものではないものも存在している。 そうすると、本件商品の宣伝広告により、本願緑色が、本件商品の出所識別標識として、需要者の間に広く認識されたとまではいえない。 ウ 需要者の認識について 上記(3)オのとおり、一般紙、文房具の雑誌や新聞等の媒体において、本件商品は、「緑軸の鉛筆」、「オリーブグリーンの鉛筆」等、鉛筆軸の色彩を示して説明されており、また、中には、黄色の箱の掲載がなく、本件商品のみの写真等が掲載されているものもある。 しかしながら、上記媒体の多くにおいて、本件商品は、「トンボ鉛筆」の見出しの下や、「トンボ鉛筆」の文字、あるいは「トンボ」の図形や「8900」文字とともに掲載されており、掲載されている本件商品の画像のうち、文字が視認できるものには、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されていることに加え、黄色の箱に包装されている本件商品が掲載されており、「独特な存在感の8900のパッケージ」、「60年以上たっても変わらぬパッケージはグッドデザインのお手本といえる」等のように、黄色の箱についての記載もされている。 また、ツイッター、ウィキペディア(Wikipedia)の本件商品に関する記載において、黄色の箱に触れられることなく、本願緑色についてのみ言及がされているものがある。 しかしながら、ツイッター、ウィキペディア(Wikipedia)における本願緑色への言及は、本件商品の需要者のうち、これらを利用して情報発信をした限定された範囲の者により行われたものであり、また、その言及は、「トンボ(鉛筆)」、「8900」、「Tombow」の文字のいずれかの記載とともに行われているものである。 そうすると、一般紙、文房具の雑誌や新聞等の各種広告媒体、ツイッター、ウィキペディア(Wikipedia)において、本件商品が、黄色の箱に触れられることなく、本願緑色のみへの言及がされていることをもって、本願緑色が、本件商品の出所識別標識として、需要者の間に広く認識されているとはいえない。 エ アンケート調査について 上記(3)カのとおり、「週刊 ビューロウ(THE WEEKLY BURO):(株)全通発行」には、全国から無作為に抽出された500店又は400店の文具店を対象とし、その文房具店で売れている鉛筆の上位2社を記入するアンケート調査の結果が掲載されている。 上記アンケート調査が、「週刊 ビューロウ(THE WEEKLY BURO)」に掲載された時期、アンケート調査において全国から無作為に抽出された文具店数、有効回答数(回答率)は、平成30年8月16日付け掲載のアンケート調査においては、400店が抽出され、有効回答数は138通(回答率34.5%)、平成26年8月14・21日付け掲載のアンケート調査においては、500店が抽出され、有効回答数は148通(回答率29.6%)、平成23年8月11・18日付け掲載のアンケート調査においては、500店が抽出され、有効回答数は117通(回答率23.4%)、平成22年8月19日付け掲載のアンケート調査においては、500店が抽出され、有効回答数は126通(回答率25.2%)である。 上記アンケート調査において、請求人は、アンケート調査に回答した文房具店で売れている鉛筆を取り扱う社の2位であり、また、上記有効回答数に占める請求人の鉛筆(色鉛筆を除く)を取り扱う文具店の割合は、平成30年が86.9%、平成26年が82.7%、平成23年が81.0%、平成22年が77.8%である。 しかしながら、上記アンケート調査には、アンケート調査に回答した一部の文房具店において販売数の多い鉛筆を取り扱っている店が挙げられているにすぎず、これをもって、本件商品についての需要者の認識を推し量ることはできないから、本願緑色が、本件商品の出所識別標識として、需要者の間に広く認識されているとはいえない。 オ 小括 以上のとおり、本件商品の使用や宣伝広告の態様及び需要者の認識に照らすと、本願緑色が、需要者に対して独立した出所識別標識として周知されているとまではいえない。 そして、本願緑色は、輪郭のない単一の色彩であり、これと近似する色彩を請求人以外の者が使用している実情があることからすれば、色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるという公益にも配慮すべきである。 そうすると、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。 したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。 3 請求人の主張について (1)請求人は、意見書2及び請求書において、「本願緑色と黄色の箱はそれぞれが著名であり、本件商品は黄色の箱に入れられることなく、透明セリース(PP袋)パックやバラ売りで販売されている実情があり、バラ売りと箱入りの両方を扱っている店舗では、通常、両者は陳列棚の離れた位置にあるため、バラ売り品は、黄色の箱と共に視認されることなく、箱入りよりも目立つ位置に陳列されており、本願緑色は、実際の取引において、常に黄色の箱と共に使用されるものではない。また、請求人の企業広告やイベント等においても、黄色の箱は用いずに本件商品のみが表示されており、カタログ等については、その性質上、鉛筆だけでなく、その箱も一緒に掲載され、慣例に従って1ダースでの価格が表示されていることが多いが、それが店頭等での小売単位を示すものではなく、また、SNS、雑誌等の記載から、本件商品は箱の黄色と結び付けられることなく独立して、本願緑色の色彩のみをもって、専ら請求人の業務にかかる商品であると認識されている。」旨主張する。 しかしながら、上記2(4)アのとおり、本件商品の店舗販売において、本件商品は一本売りだけでなく黄色の箱でのダース売りもされており、本件商品の一本売りと黄色の箱でのダース売りは、それぞれ陳列棚の離れた位置にあるとはいえ、一つの什器内の上段と下段に置かれることが多く、需要者が商品を選択する際に、同じ視界に入る程度の位置にあると認められることに加え、本件商品及び黄色の箱と共に、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow(TOMBOW)」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されていることから、本件商品が、黄色の箱と共に使用されていないことをもって、本願緑色のみが独立して、本件商品の出所を表示しているとはいえないものと判断するのが相当であり、また、カタログ等の表示が店頭等での小売単位を示すものではないとしても、小売店では、本件商品は上記のとおり販売されているのであり、上記判断に影響を及ぼすものではない。 また、上記2(4)ウのとおり、本件商品に関するツイッターでの言及や雑誌等の記載があるからといって、本願緑色が、本件商品の出所識別標識として、需要者の間に広く認識されているとはいえないものであるところ、雑誌等において、「独特な存在感の8900のパッケージ」、「60年以上たっても変わらぬパッケージはグッドデザインのお手本といえる」等の黄色の箱に関する記載がされていること、「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」の受賞概要において、「黄色いパッケージとモスグリーン【のパッケージ】でおなじみの鉛筆「8900」」(請求人注:「【のパッケージ】の記載は誤記と思われる。」)、「黄色いパッケージとモスグリーンで知られる「8900」」との記載がされていること、請求人の公式ホームページやFacebook等のSNSにおいて、黄色の箱に包装された本件商品が掲載されており、「黄色いパッケージでおなじみ「8900」」、「黄色のパッケージにオリーブグリーンの軸でお馴染みの鉛筆「8900」」、「黄色い紙箱に入った鉛筆」との記載がされていること、本件商品のテレビ放映において黄色の箱も放映されていたことがうかがえること、インターネット通販のウェブサイト「amazon.co.jp」のカスタマーレビューにおいて、「・・・レトロなパッケージや黒より緑が好き、とか。」、「美味しそうな「森永ミルクキャラメルのような箱」にグリーンで塗装された鉛筆が12本入っています。」、「最近もパッケージが一緒なのに気づきました。」との記載がされていることからも、本願緑色のみが、本件商品の出所識別標識として、需要者の間に広く認識されているとはいえない。 (2)請求人は、請求書において、「本願緑色は、本件商品の六角軸全面に付されており、六角軸の一面のみにごく小さく表示されている「Tombow」の文字や「トンボ」の図形以上に需要者の目に付き易く、強い印象を与えており、需要者は商品を選択する際に、視認性の問題もあることから、小さく表示された文字や図形に必ずしも注意を払うものではなく、本件商品の軸色を目印にどのメーカーの商品であるかを確認した上で購入する場合も多いと考えられ、さらに、本願指定商品の「鉛筆(色鉛筆を除く。)」は慎重な取引がなされるような高額品ではなく、比較的安価であることもあって、簡易、迅速が尊ばれる取引の実際にあっては、必ずしも常に本件商品に付された文字や図形に着目するとは限らず、これに接する需要者は、直ちに目にすることができる本願商標の軸色に着目して取引に資する場合も決して少なくないというべきである。」旨主張する。 しかしながら、別掲2のとおり、本願指定商品の「鉛筆(色鉛筆を除く。)」を取り扱う業界において、本願緑色と近似する色彩を請求人以外の者が使用している実情があることからすれば、本願緑色のみが、独立して自他商品を識別するための標識として認識されるものとは認められない。 そして、コンビニエンスストア等において、本件商品のパックのために使用されているセリース袋(PP袋)には、「トンボ鉛筆」の文字が表示されていたり、黄色の箱と同じようなデザインが施されていることに加え、小売店においては、本件商品は黄色の箱に包装されることによっても販売されており、また、什器等に陳列する一本売りでは、請求人のコーポレートマークである「トンボ」の図形及び請求人の名称を表す「Tombow」の文字及び本件商品の商品名である「8900」の文字が表示されたポップが近くに置かれていたり、「トンボ」の図形及び「Tombow」の文字が什器の上段に表示されているものも確認できることから、需要者は、本願緑色ではなく、上記文字によって本件商品を識別しているというのが相当であり、本願緑色のみが独立して、本件商品の出所を表示しているとはいえない。 (3)請求人は、意見3において、「別掲2の鉛筆の色彩は本願商標の色彩とは全く異なり、容易に見分けられるから、請求人以外の者が本願商標と同一又は類似の色彩を標章として使用している事例はないので、本願商標は商標法第3条第2項の要件を具備している。」旨主張する。 しかしながら、仮に、別掲2の鉛筆の色彩が、本願緑色と異なるものであるとしても、別掲2の鉛筆の色彩は、視覚上、緑色ないし緑色と近似する色彩と認識され得るものといえ、本件商品の需要者により、本願緑色と区別し得るほどに別異のものとして認識されることはないとみるのが相当であり、上記2(4)のとおり、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていることを認めることはできない。 (4)請求人の上記主張は、いずれも採用することができず、その他、請求人の主張は、採用するべき事情はない。 4 まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-003680

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