2021-002426
対称性創造原則及び対称性論の理論的基礎構築
- 審判番号
- 2021-002426
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-021911外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年02月24日
- 審決日
- 2021年10月11日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】谷口 卓弥
- 分類
- P18 .113-Z (G99Z) / P18 .121-Z (G99Z) / P18 .14 -Z (G99Z) / P18 .536-Z (G99Z) / P18 .537-Z (G99Z)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条、特許法第2条第1項、特許法第2条、特許法第30条、特許法第131条の2第1項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯について
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本願は、令和2年1月24日を出願日とする特許出願です。
その手続の経緯の概略は、次のとおりです。
同年10月 9日 :意見書の提出
(同月12日 :意見書の受付け)
(同年12月 8日 :拒絶査定の謄本の送達)
同年 3月11日付け:手続補正指令書(方式)
同年 4月 8日 :手続補正書(方式)の提出
第2 請求の趣旨について
令和3年4月8日に提出された手続補正書により、請求の趣旨は、
「(特許法第2条第1項)自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」への整合及び準拠のための技術的な問題の解決。」から、
「原査定を取り消す。本願の発明は特許をすべきものとする、との審決を求める。」に補正されました。この補正は、令和3年3月11日付けの手続補正指令書(方式)において指摘された方式上の不備を解消するためにしたものですから、特許法131条の2第1項ただし書3号の規定に適合します。
第3 本願の請求項の記載について
本願の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は次のとおりです。
【請求項1】
対称性創造原則
【請求項2】
対称性論の理論的基礎構築
(本概念論解析手法の基本的枠組み全般)
第4 原査定の拒絶の理由の概要
1 原審における令和2年9月17日付け拒絶理由通知の内容
原審において、審査官は、令和2年9月17日付け拒絶理由通知において、概略、以下の(1)~(5)を内容とする拒絶の理由を通知しました。
(1) 理由1(発明該当性)
本願の請求項1及び2に記載されたものは、下記の点で特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができません。
記
請求項1、2に記載された概念(請求項1:対称性創造原則、請求項2:対称性論の理論的基礎構築)は、本願明細書及び本願出願時の技術常識を考慮したとしましても、自然法則との関係が判然としません。
ここで、特許法29条1項柱書でいう「発明」に該当するためには、特許法2条1項において規定されている「自然法則を利用した技術思想の創作」との定義を満たす必要があります。
しかしながら、上記しましたとおり、請求項1、2に記載された概念(請求項1:対称性創造原則、請求項2:対称性論の理論的基礎構築)は自然法則との関係が判然としませんので、全体として、人間の精神活動の域を出ていないと判断せざるを得ず、自然法則を利用しているとまで認めることができません。
以上から、請求項1、2に記載された概念が特許法29条1項柱書でいう発明に該当するとはいえません。
なお、仮に、請求項1、2に記載された概念が自然法則そのものである場合、自然法則自体は、自然法則を利用したものとはいえませんので、この場合も、特許法29条1項柱書でいう発明に該当するとはいえません。
(以下の理由2~4につきましては、請求項1、2に記載された概念(請求項1:対称性創造原則、請求項2:対称性論の理論的基礎構築)が特許法29条1項柱書でいう発明に該当すると仮定して検討します。)
(2) 理由2(明確性)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
記
特許法2条3項では、発明の実施を「物」の発明、「方法」の発明及び物を生産する「方法」の発明に区分して定義しています。
したがいまして、発明は「物」、「方法」の何れかにカテゴリーされる必要があります。
しかしながら、請求項1、2に記載された概念は、その記載から、「物」の発明であるのか、「方法」の発明であるのかを把握することができません。
したがいまして、請求項1、2に記載された概念は明確でありません。
(3) 理由3(実施可能要件)
本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
記
本願明細書の発明の詳細な説明には、請求項1の対称性創造原則、請求項2の対称性論の理論的基礎構築が、具体的にどのような原則、理論的基礎であるかについて、具体的な説明が記載されていません。
したがいまして、この出願の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」といいます。)が請求項1、2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえません。
(4) 理由4(新規性)
本願の請求項1の「対称性創造原則」及び請求項2の「対称性論の理論的基礎構築(本概念論解析手法の基本的枠組み全般)」は、下記の引用例1に記載された事項です。
よって、これらは、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができません。
(5) 理由5(進歩性)
本願の請求項1の「対称性創造原則」及び請求項2の「対称性論の理論的基礎構築(本概念論解析手法の基本的枠組み全般)」は、下記の引用例1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものです。
よって、これらは、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができません。
記
インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20170119213435/https://ameblo.jp/a75653/entry-12133627820.html>
<URL:https://ameblo.jp/a75653/entry-12133627820.html>
請求項1について
引用例1の「1.完全な対称性からのスペクトル解析」の項には、「対称性創造原則」との記載があります。
したがいまして、請求項1に係る「対称性創造原則」は、引用例1に記載されていますから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができません。
また、請求項1に係る「対称性創造原則」は、引用例1の上記記載に基づき、当業者であれば容易に想到し得たものですから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができません。
請求項2について
引用文献1の「はじめに」の項には、「対称性という概念アプローチから理論的基礎の構築を試み」との記載があります。
したがいまして、請求項2に係る「対称性論の理論的基礎構築」は引用例1に記載されていますから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができません。
また、請求項2に係る「対称性論の理論的基礎構築」は、引用例1の上記記載に基づき、当業者であれば容易に想到し得たものですから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができません。
2 原査定
原審において令和2年11月19日付けで拒絶査定がされているところ、審査官は、令和2年10月9日に提出された意見書の主張1~7を踏まえた上で、概略、以下の検討内容を備考欄に示しています。
(1) 理由1(特許法29条1項柱書)について
ア 意見書の主張
(主張1)
「本特許申請は、創造課程における意識上の概念構築(享楽(思いが満たされる)世界の設定となっております。二元世界の設定→二元世界https://note.com/a75653/n/n694de55890a8享楽世界の設定→享楽世界https://note.com/a75653/n/nfc69ab6a1c3f)であり、理由1における意味での「自然法則」との関係は問われません。」
(主張2)
「「自然法則」につきましては、本特許申請人の創造概念が自然法則になることは考えられますが、逆ではありません。本特許申請人が齎したものです。又、すべてのものはあるという概念があります。そのような観点からしますと全て自然法則の範疇ということになり特許は存在しないことになりますが、その点よろしいでしょうか。」
(主張3)
「あくまで、本特許申請人による創造方法の創造ないし発見(及び対称性の解析手法の創造)、「音節分離」でいえば「音節分離」方法の創造ないし発見です。又、理由1における「精神活動の域」、これは直接の理由となっているのでしょうか。まず、すべての認識は、どこまでいっても人間意識把握上の問題と思われ、理由1における「精神活動の域」の範疇ということではないのでしょうか。」
(主張4)
「上記特許「音節分離」は、単に音の塊で区切るのみの概念となっております。こちらが先に特許取得となっており、本特許申請概念が当理由で不可となることも判然としません」
イ 上記主張の検討
(主張1)につきまして、「・・・理由1における意味での「自然法則」との関係は問われません」との主張は、特許法における「発明」の定義のうちの「自然法則を利用した」ものであることと相反するものです。
したがいまして、主張1を採用することはできません。
(主張2)及び(主張3)につきまして、令和2年9月17日付け拒絶理由通知における理由1は、請求項1、2に記載された概念が、特許法における「発明」の定義のうちの「自然法則を利用した」ものであることとの要件を満たしていないことに関するものです。
そのため、理由1の拒絶理由が解消されるためには、本願の請求項1、2に記載された概念が「自然法則を利用した」ものということができなければなりません。
しかしながら、上記主張2、3は、請求項1、2に記載された概念が自然法則を利用していることに関する主張であるとは認められません。
したがいまして、主張2、3を採用することはできません。
(主張4)につきましては、「上記特許「音節分離」」の請求項の記載がどのようなものであるかが明らかでないため、詳細に検討することができませんが、いずれにしましても、請求項1、2に記載された「対称性創造原則」、「対称性論の理論的基礎構築」が自然法則を利用していることを直接説明するものであるとはいえません。
したがいまして、主張4を採用することはできません。
以上から、上記主張1~4を踏まえましても、請求項1、2に記載された概念が自然法則を利用しているとはいえませんので、特許法29条1項柱書でいう発明に該当するとは認められません。
(2) 理由2(特許法36条6項2号)について
ア 意見書の主張
(主張5)
「意識上の創造方法イメージ(ないし概念)の構築であり、「方法」の発明になります。又、方法を創造したという意味では創造物ということですが、この観点からしますと全て創造物ということになりますし、「方法」の発明ではありますが、創造方法の発明という性質上、当然に物を生産する「方法」の発明の概念も含まれてくるものとなります。」
イ 上記主張の検討
特許法36条6項2号についての拒絶理由(理由2)は、本願明細書の「特許請求の範囲の記載」に関するものですが、上記主張5は、特許請求の範囲(請求項1、2)の記載に基づく主張ではありません。
したがいまして、上記主張5を採用することはできません。
以上から、上記主張を踏まえましても、請求項1、2に記載された「対称性創造原則」、「対称性論の理論的基礎構築」が、その記載から、「物」の発明であるのか、「方法」の発明であるのかが明確であるとはいえませんので、特許法36条6項2号の拒絶理由が解消すると認めることができません。
(3) 理由3(特許法36条4項1号)について
ア 意見書の主張
(主張6)
「対称性創造原則についての回答創造する上における創造方法の原則イメージ、あくまで原則であり、応用可能ということであり、対称性創造原則という呼び名となっています。理論的基礎についての回答創造対称性(創造全て)が破れる所から、無数(無限を想定)に破れていく対称性の解析手法の理論的基礎構築になります。光のスペクトル、プリズムによる光の屈折をイメージとし、対称性スペクトル解析の理論的基礎構築という名称となっております。こちらも、解析手法であり、自然法則がどうこうという話ではありません。」
イ 上記主張の検討
特許法36条4項1号についての拒絶理由(理由3)は、「発明の詳細な説明の記載」に関するものですが、上記主張6は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に基づく主張ではありません。
したがいまして、上記主張6を採用することはできません。
以上から、上記主張を踏まえましても、本願明細書の発明の詳細な説明に、本願の請求項1、2に記載された「対称性創造原則」、「対称性論の理論的基礎構築」が、具体的にどのような原則、理論的基礎であるかについて、具体的な説明が記載されているとはいえませんので、特許法36条4項1号の拒絶理由が解消すると認めることができません。
(4) 理由4(特許法29条1項3号)、理由5(特許法29条2項)について
ア 意見書の主張
(主張7)
「創造対称性という概念自体が本特許申請人が考案したものであり、今までの人類の波動領域にあったかは定かではないものです。(※理由1に対する回答で既述享楽(思いが満たされる)世界の設定となっております。二元世界の設定→二元世界https://note.com/a75653/n/n694de55890a8享楽世界の設定→享楽世界https://note.com/a75653/n/nfc69ab6a1c3f)所謂「悪魔の証明」という概念もありますし、ここでは、理由1に対する回答同様、「音節分離」を例に、音の塊で区切るという行為自体、人類であれば言語理解の課程で当然に把握している内容と思われますが「音節分離」方法ないし手法として、特許となっております。又、そもそも当業者という用語自体「同レベルのものであれば」という意味としか受け取れません。つまり、同程度のレベルであれば容易に想到し得たものですからということになりますが、その点よろしいでしょうか。「音節分離」は可であり、享楽世界の設定構築たる本特許申請が不可である理由として適切な回答とは到底思われません。」
イ 上記主張の検討
特許法29条1項3号、特許法29条2項についての拒絶理由(理由4、5)は、請求項1、2に記載された「対称性創造原則」、「対称性論の理論的基礎構築」が、引用例1に記載されていること(理由4)、引用例1に記載された事項から当業者が容易に発明できたものであること(理由5)に関するものですが、上記主張7は、引用文献1に記載された事項に基づく主張ではありません。
したがいまして、上記主張7を採用することはできません。
以上から、上記主張を踏まえましても、請求項1、2に係る「対称性創造原則」、「対称性論の理論的基礎構築」について、特許法29条1項3号、特許法29条2項についての拒絶理由が解消すると認めることができません。
第5 当審の判断
1 新規性(特許法29条1項3号)の判断
(1) 当審の判断の概要
当審は、以下に詳述するとおり、本願の請求項1の「対称性創造原則」は、発明該当性(特許法29条1項柱書)の要件を満たしたとしても、特許法29条1項3号に該当するものであり、特許を受けることができないと判断しました。
(2) 引用例1が本願出願前に公衆に利用可能となったこと
令和2年11月19日付け拒絶査定において引用した「スピリチュアルメッセージのような(6/15更新),a75653のブログ」(以下「引用例1」といいます。)に開示された内容は、以下の(3)アに示したように「2016-02-28 10:21:57」と記載されています。
また、この内容は、非営利団体インターネットアーカイブのウェイバックマシンにも保存されており、ウェイバックマシンでウェブページ等を検索した場合に表示される以下のURLのうち数字部分「20170119213435」の記載から、この内容を含むウェブページが、ウェイバックマシンによりインターネットを通じて公衆に利用可能となった日時が2017年1月19日21時34分35秒であることが読みとれます。
<URL:https://web.archive.org/web/20170119213435/https://ameblo.jp/a75653/entry-12133627820.html>
以上から、引用例1の内容が本願の出願日である令和2年1月24日よりも前にインターネットを通じて公衆に利用可能となったことは、明らかです。
(3) 引用例1の記載事項
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上記引用例1には、以下の記載があります(下線は当審が付与しました。)。
なお、符号ア~ウは、引用箇所を特定しやすくするための区切りとして当審が便宜上付与したもので、文意に沿って付したものではありません。また、「○1」などは、○の中に数字の1などが記載されているものを示しています。
ア 「スピリチュアルメッセージのような(6/15更新)2016-02-28 10:21:57テーマ:論文的なもの対称性スペクトル解析の理論的基礎の構築と展望」
イ 「はじめに現代物理学では量子論や超弦理論等、ミクロ(微視的な)視点については兎も角としても、宇宙初期以前の状態に主にマクロ(巨視的な)視点からの理論的基礎が与えられていない。一方スピリチュアル形而上学(として捉えると)では二元性分離パラダイム及びその統合等ということが以前から言われており、ゼロポイント、ワンネス、今ここ等概念理論的基礎が与えられているとも把握出来る。このような状況に鑑みて、ここでは対称性という概念アプローチから理論的基礎の構築を試み、導かれる大まかな展望ないし見解を述べる。又、対称性論は次の事象概念の論理整合論的な性質も有する。○1 量子もつれ共鳴原理等、量子論と相対論の融和○2 ニュートン絶対時空間と特異点等相対論上位概念の考察可能性(タイムリープ論を含む)○3 二元論及び三元論以上の世界観への対応○4 物質的顕現概念を超える意志等指向性の物理的表現」
ウ 「1.完全な対称性からのスペクトル解析対称性の分離と統合のスペクトルというアプローチにより解析を試みる。ここで、対称性アプローチより導き出した創造原則は次の通りである。「対称性創造原則創造存在、存在共鳴、共鳴収束、収束顕現(還元永久循環)」波と粒子は共鳴収束、収束顕現で説明出来る(共鳴、収束、顕現の種類)。」
(4) 本願の請求項1の新規性について
本願の請求項1の記載は「対称性創造原則」です。
一方、引用例1にも「対称性創造原則」という記載があります(上記(3)ウの記載事項を参照してください。)。
そうすると、本願の請求項1の「対称性創造原則」は、引用例1に記載されていますので、特許法29条1項3号に該当するものです。
(5) 請求人の主張
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ア 請求人は、審判請求書において、次の主張をしています。
「請求項1及び請求項2について、「引用文献1に記載された事項」については、a75653のブログとは、本申請人のブログであり、本申請人(本審判請求人)である証拠として、同時期にPhysical Reviewにレター論文「Unification theory of symmetry and Recognition of the world」を投稿している(つまり、投稿のみ、未掲載)という意味しかない。この説明のみでは足らず、引用文献としておくこと自体特許法上問題があれば、引用文献1を取り下げる。」
イ しかしながら、特許法29条1項は、以下のとおり規定していますので、本願の特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものを取り下げること(すなわち、なかったことにすること)はできません。
「29条1項産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」
(「電気通信回線」とは、有線又は無線により双方向に通信可能な電気通信手段を意味し、インターネットはこれに含まれます。また、「公衆に利用可能」とは、開示された情報が公衆(不特定多数の者)にアクセス可能な状態におかれることをいいます。なお、「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」が、その後に利用不可能とされたとしても、一度3号に該当することとなった事実は変わらないので、3号に該当することから外れることはありません。)
(6) 発明の新規性の喪失の例外の参考としての補足説明
ア 特許法30条は、29条1項各号の規定(新規性の規定)の例外について、以下のとおり規定しています。
「特許法30条(発明の新規性の喪失の例外)1 特許を受ける権利を有する者の意に反して第29条第1項各号のいずれかに該当するに至った発明は、その該当するに至った日から1年以内にその者がした特許出願に係る発明についての同項及び同条第2項の規定の適用については、同条第一項各号のいずれかに該当するに至らなかつたものとみなす。2 特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第29条第1項各号のいずれかに該当するに至った発明(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項各号のいずれかに該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から1年以内にその者がした特許出願に係る発明についての同項及び同条第2項の規定の適用については、前項と同様とする。3 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第29条第1項各号のいずれかに該当するに至った発明が前項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を特許出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。4 証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなった日から14日(在外者にあつては、2月)以内でその期間の経過後6月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。」
イ 本願については、請求人自身によるブログ掲載という行為に起因して29条1項3号に該当するに至ったものであると認められますから、30条1項の適用はされませんが、30条2項の規定の適用の可能性は考えられるものではありました。
しかしながら、30条2項の規定の適用を受けるためには、ブログ掲載行為により29条1項3号に該当するに至った日から1年以内に特許出願をしなければなりません。(この条件を満たしたとしても、さらに、30条2項の規定の適用を受ける旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、29条1項各号のいずれかに該当するに至った発明が30条2項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を特許出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければなりません。)
本願の出願日は令和2年1月24日ですが、上記(2)において述べたとおり、ブログ掲載行為が2017年1月19日以前に行われていますから、請求人は、ブログ掲載行為を行った日から1年以内に特許出願をしておりません。
したがいまして、30条2項の規定の適用を受けることにより29条1項3号の規定(新規性の規定)の例外とすることもできないことを、補足させていただきました。
(7) 小括
以上検討したとおりですから、本願の請求項1の「対称性創造原則」は、発明該当性(特許法29条1項柱書)の要件を満たしたとしても、特許法29条1項3号に該当するものであり、特許を受けることができません。
2 発明該当性(特許法29条1項柱書)の判断
(1) 当審の判断の概要
ア 審査基準
特許庁が特許審査のガイドラインとして公開している「特許実用新案 審査基準」(以下、単に「審査基準」といいます。)においては、「発明」に該当しないものの類型として、次のものを例示しています。
(i)自然法則自体
(ii)単なる発見であって創作でないもの
(iii)自然法則に反するもの
(iv)自然法則を利用していないもの
(v)技術的思想でないもの
(vi)発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの
(審査基準の第III部 特許要件、第1章 発明該当性及び産業上の利用可能性(特許法第29条第1項柱書)、2.発明該当性の要件についての判断、2.1「発明」に該当しないものの類型の欄をご参照ください。)
イ 当審の判断の概要の要点
当審は、以下に詳述するとおり、請求項1の「対称性創造原則」は、高度に抽象的すぎて、上記類型の「技術的思想でないもの」には該当しないこと、かつ、「自然法則自体」にも該当しないことについて、判然とせず、断定できないので、特許法29条1項柱書の「発明」に該当しないと判断せざるを得ません。
(2) 明細書の記載の参酌
ア 明細書の記載
本願の請求項1の「対称性創造原則」について、当該語句は確立した学術用語ではないので、まず、明細書の記載を参照します。
明細書には以下の記載があります(下線は当審が付与しました。)。
「【発明の名称】対称性創造原則及び対称性論の理論的基礎構築【技術分野】【0001】本発明は、享楽世界に対応する世界法則の創造及び世界法則をそのように定義付け・運用するための特許申請。続きを表示(全40行)【背景技術】【0002】量子コンピューティング技術の発達により、量子AI等、膨大な量の対称性の破れの推察可能性が高まる中、対称性論の理論的基礎構築をしたもの。【先行技術文献】【0003】2016/6/10 Physical ReviewManuscript es2016jun14_791TitleUnified theory of symmetry and world recognition※但し、[0003]は刊行物ではない。【0004】対称性統一理論と世界認識まとめ(6/15更新)https://ameblo.jp/a75653/entry-12142525848.html?frm=theme関連事項地球評議会構想https://ameblo.jp/a75653/entry-12334792334.htmlブログ見所と創造原則https://ameblo.jp/a75653/entry-12317439881.html?frm=theme現世一切浄格浄静https://ameblo.jp/a75653/entry-12134315426.html※本発明は概念フレームワークであり、図面などはありませんが、[0004]を参考資料として添付します。【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0005】世界創造全般、享楽世界創造への寄与。【課題を解決するための手段】【0006】世界法則の構築。【発明の効果】【0007】神聖による享楽世界創造。自身の世界においては自身が世界創造主である事を明確化、アファメーション(宣言)の意味を含む。【発明を実施するための形態】【0008】意図が実現するということです。」
イ 明細書の記載を参酌した上での検討
特許法における「発明」は、2条1項において「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されており、この定義にいう「発明」に該当しないものは特許付与の対象となっていないところ、前記(2)アにおいて説明しましたように、審査基準は「技術的思想」でないものを特許法上の「発明」には該当しないとしております。
この点に関連して、最高裁判所は次のように判示しています。
「特許法(以下「法」という。)2条1項は、「この法律で『発明』とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定め、「発明」は技術的思想、すなわち技術に関する思想でなければならないとしているが、特許制度の趣旨に照らして考えれば、その技術内容は、当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていなければならないものと解するのが相当であり」(昭和52年10月13日最高裁判所第一小法廷判決。下線は当審による。)。
本願の明細書の【発明が解決しようとする課題】や【発明の効果】の欄の記載を参照すると、「発明が解決しようとする課題」は「世界創造全般、享楽世界創造への寄与。」とされ、「発明の効果」は「神聖による享楽世界創造。自身の世界においては自身が世界創造主である事を明確化、アファメーション(宣言)の意味を含む。」とされていることころ、これらは形而上のものを指していると考えられ、形而下のものに属する技術効果は記載されておらず、技術効果が何であるのか不明といわざるを得ません。
また、上記明細書の記載において、「対称性創造原則」という文言は【発明の名称】にありますが、それ以外の箇所にはありません。そして、明細書の【課題を解決するための手段】や【発明を実施するための形態】の欄の記載を参照すると、「課題を解決するための手段」は「世界法則の構築」であるとされ、「発明を実施するための形態」は「意図が実現するということです。」と記載されているのみで、請求項1で特定された、発明の技術手段に相当すべき事項である「対称性創造原則」は、明細書の記載を参酌しても、高度に抽象的すぎて、前記最高裁判決がいうところの「具体的・客観的なものとして構成されて」いるとはいえないと判断せざるを得ません。
なお、段落【0003】において【先行技術文献】の欄に挙げられた
「2016/6/10 Physical ReviewManuscript es2016jun14_791TitleUnified theory of symmetry and world recognition」は、アメリカ物理学会が発行する学術雑誌へ投稿した事実を主張するものであり、これには技術的な内容が含まれているかもしれませんが、「刊行物ではない」とのことですから、本願の出願時に一般人が入手可能な情報ではないので、これに記載された内容は参酌することが許されないものです。
したがいまして、明細書の記載を参酌しても、請求項1の「対称性創造原則」は、形而上のものを扱っているため、又は、高度に抽象的であるため、「技術的思想でないもの」という類型に該当しないと断定するには、十分な材料がないといわざるを得ません。
(3) 明細書で引用された参考資料1の検討
段落【0004】において挙げられている参考資料のうち、次のブログ掲載記事(以下「参考資料1」といいます。)には、「対称性創造原則」という文言があるため、当審はこの内容を参照して、さらに検討します。
「対称性統一理論と世界認識まとめ(6/15更新)」
ア 明細書で引用された参考資料1の記載
明細書で引用された参考資料1には、次の記載があります(下線は当審が付与しました。)。
「まとめ(6/15更新)2016-03-24 08:06:20テーマ:論文的なもの対称性統一理論と世界認識続きを表示(全81行)論点1時空間座標概念アプローチ及び既存数式概念アプローチの限界と世界概念1.既存概念アプローチの限界既存の物理学では空間次元概念を論じるに当たって巻き上がるという概念を持ち出し、座標概念(但し、ここでは空間の歪みを含む)と併せ論じている。しかしながら、本質的には座標概念は座標概念なのであり、3次元であれば(a,b,c)、10次元であれば(a,b,c,d,e,f,g,h,i,j)ということであり、即ちそれは座標概念の次元であって空間そのものの次元ではない。ここで、宇宙空間という概念を例に空間を考えると内在する全ての要素によって宇宙空間が構成されているのであって、元々空間は座標と巻き上がるという概念要素のみでないのは一見して明らかであり、色、音、透明度等様々な要素が内在している。巻き上がるという概念のように、空間を座標概念以外の概念要素を用いて表すということであれば、それら全ての要素を考慮に入れると時空間は座標と巻き上がるという概念だけではごく一部しか表現なされていない事は明らかである。同様に、既存の数式に至っても時空間概念は元より、上位概念を思索するに当たっては、位置情報等イコールレベルを精査したものでなければ正しい洞察は得られないのである。2.世界概念既存の宇宙・世界認識論のみではなく、例えばプログラム上の世界観であってもそれが想定し得るものであればイデア論として論じる事により新たな洞察が得られるであろう(可能世界論を含む)。これは又、グラハム数を始めアッカーマン関数やハイパー演算子といった巨大数概念がある中、超弦理論の10の500乗程度の宇宙の想定で全事象を扱う物理学の想定として十分といえるのか、まず、可能な限り全事象を想定すべきではないのかということである。量子宇宙、ある量子一つを中心として(我々が認識する宇宙全体の大きさまで)展開されていく宇宙(便宜上、ここではこれを「量子中心展開宇宙」という。)、量子だけではなくある生命を中心に展開される宇宙(「生命中心展開宇宙」)、地球中心に展開される宇宙(「地球中心展開宇宙」)とそれぞれについて、それぞれの視点からの宇宙(「万物中心展開宇宙」)があると把握する事も出来る(他、座標軸無限展開、パラレル展開、ツイン展開、存在次元別展開等、諸種の展開宇宙を想定)。なお、これは地動説・天動説両者の正当性を論じるに当たっても思慮されるべき内容である。スペクトル展開宇宙このようにある中心を元に展開、スペクトル分離統合展開とすると、それぞれの視点も分離統合展開のスペクトルとして説明出来る、突き詰めると全事象はある一点のスペクトル分離統合展開(便宜上、ここではこれを「スパークル宇宙」という。)によるものとも把握出来るのである。又、均衡の顕れであったり、意図の顕れであったりという認識、様々な概念アプローチがあるということである。論点2対称性スペクトル解析の理論的基礎の構築と展望はじめに現代物理学では量子論や超弦理論等、ミクロ(微視的な)視点については兎も角としても、宇宙初期以前の状態に主にマクロ(巨視的な)視点からの理論的基礎が与えられていない。一方スピリチュアル形而上学(として捉えると)では二元性分離パラダイム及びその統合等ということが以前から言われており、ゼロポイント、ワンネス、今ここ等概念理論的基礎が与えられているとも把握出来る。このような状況に鑑みて、ここでは対称性という概念アプローチから理論的基礎の構築を試み、導かれる大まかな展望ないし見解を述べる。又、対称性論は次の事象概念の論理整合論的な性質も有する。○1量子もつれ共鳴原理等、量子論と相対論の融和○2ニュートン絶対時空間と特異点等相対論上位概念の考察可能性(タイムリープ論を含む)○3二元論及び三元論以上の世界観への対応○4物質的顕現概念を超える意志等指向性の物理的表現1.完全な対称性からのスペクトル解析対称性の分離と統合のスペクトルというアプローチにより解析を試みる。ここで、対称性アプローチより導き出した創造原則は次の通りである。「対称性創造原則創造存在、存在共鳴、共鳴収束、収束顕現(還元永久循環)」波と粒子は共鳴収束、収束顕現で説明出来る(共鳴、収束、顕現の種類)。又、あらゆるものは創造であり、創造対称性の範疇にあり、制限を加え様々な視点からその新たな側面を知るという試み、本対称性解析による概念論は物理学の本論(対称性と物理法則ないし物理現象は、次の例のように密接に関連している。時間の平行移動(並進)対称性:エネルギー保存則空間の平行移動対称性:運動量保存則空間の回転対称性:角運動量保存則空間反転(パリティ)対称性:ニュートリノによる対称性の破れ)であり、対称性モデルの構築それ自体に意義があるのであって、計算重視の視点からの正確性に重点を置くものではなく、概念補正なりその都度適宜修正して頂きたい。従って、例えば次の時間対称性の破れについて、他数種類の破れ方があるかもしれないし、ニュートリノ振動に速度対称性はないかもしれない。その場合においても、時間対称性はないが速度対称性はある現象とは何か、自然界にあるのか(円偏光等が考えられる)、なければどのように作り出せるのか等ということである。○1創造対称性 創造(に対する完全な対称性)対称性の自発的な破れは、古くは『古事記』における伊邪那岐・伊邪那美その階層的な破れとして見られるものであるが、本論では、まず第一に完全な対称性、その対称性が破れるとどのような状態に移行するのか、又、順次どのような状態に移行するのかを物理現象、つまり、実際のいわゆるインテリジェントデザインと整合する状態になるように考察を与える。○1自発的創造対称性の破れ(創造存在)○2存在対称性現れた全状態は存在対称性を持つ。全て重なり合う(重ね合わせ)状態(全状態)、無が無限に重なり合い同時に存在するようなイメージ。ゼロポイントに近い状態かもしれない。○2自発的存在対称性の破れ(存在共鳴)○3共鳴対称性いわゆるワンネスがこれに該当する。○3自発的共鳴対称性の破れ(共鳴収束)○4現世対称性(ないし収束対称性)ある状態のみ 今(ファノン音量子共鳴等※注1)あるいは時無限の重ね合わせからある状態に共鳴収束(重ね合わせの収束)させたもので、全無限の重ね合わせ全状態から、ある無限の重ね合わせのある状態というイメージ。我々の実在は次の共鳴収束の顕現であり、上位視点(存在共鳴)からみると過去・今・未来は同時に存在し共鳴する。a.過去量子共鳴収束、b.今量子共鳴収束、c.未来量子共鳴収束○4自発的現世対称性の破れ(収束顕現)○5次元対称性(ないし顕現対称性)特異点 ある状態の存在 空特異点は現世対称性の破れ、ブラックホールはブラックホールからの重力波とX線等を抜かしスペクトル統合されたものと表現出来る。光速超の量子スピン想定。○5自発的次元対称性の破れ(顕現空間)○6空間対称性原始重力波(スピン2群) 渦 空間(階層分離※注1)反重力は空間膨張、重力は空間収縮の質量エネルギー(あるいはエネルギー)に対する空間対称性の破れのキャリア。重力波のみの初期状態、あるいはブラックホールなどの特異点を超え行き来する。○6自発的空間対称性の破れ(空間時間)○7時間対称性光子等(スピン1群) 熱エネルギー(移動) 時間(位相分離※注1)対称性の破れは枝分かれするかもしれない(特に熱エネルギー移動後(電弱力、CP対称性等))。又、異なる宇宙では異なる破れ方をするかもしれない。物質(ないし重力場)形成前は任意のA地点B地点間の時間差は無いが空間の膨張収縮は有るものと想定(反重力が一様に在る状態等)。○7自発的時間対称性の破れ(時間速度)○8速度対称性(ニュートリノ振動、円偏光等)○8自発的速度対称性の破れ(群速度)(その他、非可換ゲージ対称性、超対称性等)強い力 電弱力 電子スピンペア 質量(マイナス温度(絶対零度未満の低温)、マイナス質量、反重力、反光子、暗黒物質)ここまで検証したものではない(数式による検証にはイコールレベルの精査が必要)が、このように対称性についてどのような破れ方をして、その破れ方によりどのような状態に移行するのか等の解析を試みようというものである。昨今の遺伝子解析を例に見るように、京などによりコンピュータ解析が進めば対称性の破れによって現れた対称性及びその破れの現象等の正確な把握が可能となり、対称性分離統合アプローチによる統一理論が組み上がるのではないだろうか。又、引力全般に空間対称性の破れとなる現象があるのか等、対称性の視点から各力の詳細な分析なども可能となり、分析結果、(例えば、ラグランジアンのような解析法を用いて)対称性の破れの組み合わせ等から上位概念となる対称性(スペクトル統合)や新たな対称性が現れる可能性を指摘しておきたい。※注1 スピリチュアル概念(量子:フォトン光量子、グラビトン闇量子(重力-超重力)想定、ファイ色量子、ファノン音量子、ソフィア質量子、アメンディ無量子)、参考「空の真法 ディヴァインガーディアン情報」創造存在、意志、アメンディ無量子存在共鳴、愛、ソフィア質量子共鳴収束、魔力(実現化)、ファノン音量子収束顕現、姿形(具現化)、ファイ色量子顕現空間、闇、グラビトン闇量子(重力-超重力)想定空間時間、光、フォトン光量子時間速度(etc.)、物質、質量、電子スピンペア」
イ 参考資料1の記載の参酌と検討
(ア) 上記参考資料1の記載をみると、素粒子物理学において通常用いられる学術用語が多く使われております。
(イ) この点につきまして、当審が職権にて調査したところによれば、「大槻義彦、大場一郎編「ブルーバックス 新・物理学事典」講談社、2009年6月20日第1刷発行」の11~14頁の「第1章 素粒子物理学」「4.時空の対称性と素粒子の性質」藤川和男の著作部分には、次の記述内容がありました。
時空間における時間の並進に対する一様性(すなわち、時間の流れにおいて特殊な瞬間というものはないということ)の帰結としてエネルギー保存則が定式化されること、空間の並進に対する一様性(すなわち、空間には特別な意味を持つ位置というものがないこと)から運動量保存則が導かれること、空間の回転に関する一様性(すなわち、特別な方向というものはないこと)から角運動量保存則が導かれること。
(ウ) 上記(イ)に挙げられた保存則は参考資料1においても言及されておりますので、請求項1の「対称性創造原則」の「対称性」は、おそらく素粒子物理学において通常議論される時空の対称性と関連する可能性があるとも考えられ、参考資料1の「対称性アプローチより導き出した創造原則は次の通りである。」という記載から、「対称性創造原則」の「創造原則」とは、素粒子物理学において通常議論される時空の対称性という観点から導き出される原則であるようにも理解されると考えます。
(エ) そうすると、このような素粒子物理学において通常議論される時空の対称性という観点から導き出される原則には、エネルギー保存則、運動量保存則、角運動量保存則が含まれますところ、参考資料1の記載を考慮すると、請求項1の「対称性創造原則」は、エネルギー保存則、運動量保存則、角運動量保存則等の自然法則の集合体や部分集合等であると解釈することも可能であると考えられます。
すなわち、参考資料1の記載を考慮すると、請求項1の「対称性創造原則」は、「自然法則そのもの」という類型に該当しないことが判然としないので、「発明」に該当すると断定することができないといわざるを得ません。
(4) 請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において、次の主張をしています(下線は当審が付与しました。)。
「(2)補正の根拠の明示第一に、理由1発明該当性 自然法則を利用という概念範囲内での申請ということであった。ここで、令和2年10月10日意見書回答では、対称性解析論及び創造プロセスにおける対称性の破れのパターンが必ずしも自然法則通りであるのかを問題にしたのであって、それだけを持って既存の自然法則を全く利用していないかというとそれは適切ではない。故に、上記はじめにc.の特許申請上の創造プロセスは(請求項2のものは時空間プロセスを問わない)純然たる自然法則である時間法則及び空間法則を利用した、時空間の流れを利用した意識顕現上の創造プロセスとしての申請であることを明確化する。創造プロセスを掻い摘んで説明すると、上記のように「創造プロセス:存在が全範囲から任意選択し意識顕現するプロセス」と言える(なお、ここでいう意識顕現は、いわゆる潜在意識・顕在意識・夢意識すべてを含んだ表現である)。つまり、意識顕現は潜在意識・夢意識を含む全意識を指すのであって、全意識とは何であるのか及び時空間顕現、時空間上に現れたものであるかを必ずしも問わないのではないのかという概念・哲学上の問題も含まれているとも把握出来るが、申請上のものは既存の自然法則たる時空間顕現プロセスの申請である事を明確化するのである。」
イ しかしながら、上記主張を検討しても、請求項1の「対称性創造原則」が、自然法則自体(自然法則の集合体も含む)に該当しないことを排除できません(特に、上記下線部の主張は、「既存の自然法則たる時空間顕現プロセスの申請である」としていますので、自然法則そのものを特許として請求しているように読めます。)。
したがって、請求人の上記主張を参酌しても、前記(2)及び(3)の判断を左右するものではないといわざるを得ません。
(5) 小括
以上検討のとおりですから、請求項1の「対称性創造原則」は、特許法29条1項柱書の「発明」に該当すると断定することはできない、といわざるを得ません。
3 実施可能要件(特許法36条4項1号)の判断
(1) 請求人の主張
折りたたみ中(クリックで表示)
ア 請求人は、審判請求書において、次の主張をしています。
「以上を踏まえ、理由3実施可能要件については、上記本願発明の説明より明らか、「音節分離学習法」では、英単語を音節毎に分離・理解する学習法であったが、本創造プロセスは、4段階の創造プロセスに分離・理解する創造方法である。創造プロセスでは創造全体に対する対称性解析手法を独自創作し、自ら構築した世界創造プロセスの一環なのであり、享楽(思いが満たされる)世界の設定の構築(創作)が大枠・主題であり、その技術的思想の構築(創作)が創造プロセス・対称性解析論である。」
(2) 当審の判断
本願の明細書の記載は、前記2(2)アにおいて摘記したとおりです。
上記明細書の記載において、「対称性創造原則」という文言は【発明の名称】にありますが、それ以外の箇所にはありません。
段落【0003】において【先行技術文献】の欄に挙げられたものは、刊行物ではなく、その内容を参酌することは許されません。
そうすると、本願の発明の詳細な説明には、請求項1の「対称性創造原則」が、具体的にどのような原則であるかについて、具体的な説明が記載されていないといわざるを得ません。
なお、段落【0004】の参考資料1の記載内容を参酌すると、前記2(3)イにおいて検討したとおり、「対称性創造原則」は、素粒子物理学において通常議論される時空の対称性という観点と関連する可能性があるといえますが、素粒子物理学の専門家(例えば、博士号取得者)のような高度の知識を有する者を想定したとしても、明細書の記載は、高度に抽象的で、具体的な実施例の開示がないので、どのようにして「対称性創造原則」の実施をすることができるのか理解困難といわざるを得ません。
したがいまして、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1の「対称性創造原則」を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえませんので、本願の請求項1の「対称性創造原則」について、発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないと判断せざるをえません。
4 明確性(特許法36条6項2号)の判断
(1) 審査基準
審査基準では、請求項に係る発明の属するカテゴリー(物の発明、方法の発明、物を生産する方法の発明のいずれか)が不明確であるとき、又はいずれのカテゴリーともいえないときには、発明は不明確であると扱うこととなっています。
(審査基準の第II部 明細書及び特許請求の範囲、第2章 特許請求の範囲の記載要件、第3節 明確性要件(特許法第36条第6項第2号)、2. 明確性要件についての判断、2.2 明確性要件違反の類型、(3) 請求項に係る発明の属するカテゴリーが不明確であるため、又はいずれのカテゴリーともいえないため、発明が不明確となる場合の欄の記載もご参照ください。)
(2) 請求人の主張
折りたたみ中(クリックで表示)
請求人は、審判請求書において、次の主張をしています。
「次に、理由2明確性については、上記本願発明の説明より明らかである。つまり、無形、物質化を要しない意識顕現までのプロセスの場合は「方法」の発明であることが明らか、有形、物質化までのプロセスの場合についても、「方法」の発明であることは明らかであり、個別的な物を生産する「方法」の発明ではないが、創造における方法論である以上全ての個別的な物の生産に利用可能である。」
(3) 当審の判断
「対称性創造原則」が、「物」の発明でないことは明らかですが、具体的手順の段階があるのか不明ですので、「方法」の発明であるということもできません。
したがって、本願の特許請求の範囲の請求項1の「対称性創造原則」は、発明のカテゴリーが不明確であるから、発明が明確であるとはいえませんので、本願の特許請求の範囲の請求項1の「対称性創造原則」という記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないと判断せざるをえません。
5 請求人のその他の主張
(1) 音節分離学習法について
ア 請求人は、審判請求書において、次の主張をしています。
「最後に、理由3実施可能要件、理由4新規性及び理由5進歩性、ここで「音節分離学習法」の創作(特許取得済)、「創造プロセス」の創作(特許未取得)である。「(特許法第2条第1項)自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」とは何であるのか。例えば野球の投球方法のみでは「技術」的思想には該当しないということであるが、音節分離学習法では、言語を扱う者であれば音節毎に区切るという概念は極めて常識のはずであるが、学習用アプリ創作で特許取得となっている。学習アプリのようにアプリ化しさえすれば特許取得、他は不可では話にならない。」
イ 上記「音節分離学習法」の創作が特許取得済みであるという主張につきましては、その具体的な特許出願番号等が明示されていないため、当審はその内容を確認することができません。
念のため、当審が職権にて調査したところによれば、特願2012-524661号(特表2013-501961号公報)「英語学習システム」及びその分割出願である特願2014-192591号(特開2015-34993号公報)「英語学習システム」が、請求人の主張する「音節分離学習法」の創作に該当する可能性があると思います。
しかしながら、上記2つの特許出願はいずれも拒絶査定されており、日本国においては、これらの出願に係る発明は特許付与されておりません。
なお、これらの特許出願は「英語学習システム」の発明として出願されており、学習アプリ(プログラムの発明)ではありません。
請求人の主張する「音節分離学習法」の創作が、これらの特許出願を指しているのか不明ですが、念のためお知らせいたします。
(2) 補正案について
ア 請求人は、審判請求書において、次の主張をしています。
「(1)本願発明の説明少なくとも令和2年10月10日意見書回答時には、令和2年1月22日出願時の記憶媒体破損のため、その点も踏まえ下記のように補正するものである。請求項1 対称性創造原則第1プロセス 創造-存在続きを表示(全23行)第2プロセス 存在-共鳴第3プロセス 共鳴-収束第4プロセス 収束-顕現純然たる自然法則である時間法則及び空間法則を利用した、時空間の流れを利用した創造プロセス。創造プロセスを掻い摘んで説明すると、「創造プロセス: 存在が全範囲から任意選択し意識顕現するプロセス」と言える(なお、ここでいう意識顕現は、いわゆる潜在意識・顕在意識・夢意識すべてを含んだ表現である)。それは、意識想像上のものであるかクリスタライズされたものであるかを、換言すると有形・無形であるかを問わない、加えて補足すると、有形・無形は意識認識上の問題なのであり、その意味を含み、有形・無形物を意識認識上に顕現(意識顕現)するまでのプロセス、又、勿論創造プロセスは、無形までの創造プロセス、有形までの創造プロセス等、最終的な顕現に至るまでには、無数の段階が想定される。その他、任意選択とは、任意というからには、例えば自動化設定、ランダムプロセス設定の任意選択といった内容を含んだものであることは明らかであるが、上記の通り、時空間顕現プロセスを考慮する必要がある。ここで、「音節分離学習法」(特許取得済)では、英単語を音節毎に分離・理解する学習法であったが、本創造プロセスは、4段階の創造プロセスに分離・理解する創造方法である。つまり、時空間の流れの中、創造(存在、非存在全てを含む)、存在全て、共鳴全て、収束(個別共鳴)、顕現(特許申請上のものは、時空間内意識顕現であることを明確化)という4段階のプロセスにより、意識顕現する創造方法の創作である。請求項2 対称性論の理論的基礎構築量子方式による創造(創造は創造であり量子方式によらなくてよい、全て)第1プロセス 創造存在 アイアムプレゼンス界創造(ゼロ量子、存在のゼロポイント)第2プロセス 存在共鳴 プライムパーティクル共鳴界創造(一量子、ワンネス)第3プロセス 共鳴収束 Ω(オーン)世界創造(音量子共鳴Ω(オーン)、今)第4プロセス 収束顕現 イデアクリスタル結晶世界創造(イデア量子、アカシック界創造を含む、ここ)第5プロセス 顕現空間 陰陽二元世界創造(空間形成 闇 階層分離)第6プロセス 空間時間 エナジー界創造(時間形成 光 位相分離)第7プロセス 時間速度(etc.) 物質界(レプトングリッドホログラム)創造なお、請求項2の第4プロセスは、請求項1の第4プロセスとは範囲が異なる。請求項2の第4プロセスは、少なくともいわゆる量子重ね合わせ状態にある全ての状態を含むものである。又、補足として、対称性の破れの段階・順序等は無数なのであり、7段階の対称性の破れにおける創造プロセスを示したものである。こちらは、解析手法として請求項2としたが、請求項1の創造プロセスの補足的事項としての位置付けであるため、請求項1が本出願の本筋と理解してもらって差し支えない。」
イ 請求人の上記主張は、請求項1及び2を補正したことを意図しているように思われますが、特許請求の範囲の補正をするには、手続補正書を提出しなければならないと規定されているため(特許法17条4項)、この主張により、請求項1及び2が補正されたことにはなりません。
(請求人は、このような補正内容を含む、特許請求の範囲を補正対象書類名とした手続補正書を提出しておりません。)
もっとも、この主張は、補正案を提示したものであると解する余地がありますので、当審はこれを補正案として検討しました。
ウ 請求項1を具体的にどのように補正する案であるのか特定するのが困難ではありますが、文意からみて、
請求項1の「対称性創造原則」を
「対称性創造原則第1プロセス 創造-存在第2プロセス 存在-共鳴第3プロセス 共鳴-収束第4プロセス 収束-顕現」
と補正する趣旨であると解しました。
エ しかしながら、前記引用例1には次の記載があります(第5の1(3)ウ参照)。
「対称性創造原則創造存在、存在共鳴、共鳴収束、収束顕現」
そうすると、補正案の請求項1は、引用例1に記載されていますので、特許法29条柱書の要件を満たすことになったとしても、特許法29条1項3号に該当するものであることに変わりないので、当審決の結論を左右するものではありません。
第6 むすび
以上検討のとおりですから、本願の請求項1の「対称性創造原則」は、特許法29条1項3号に該当するので、特許を受けることができません。
また、本願の請求項1の「対称性創造原則」は、特許法29条1項柱書の「発明」に該当しないため、特許を受けることができません。
また、本願の請求項1の「対称性創造原則」について、発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていません。
さらに、本願の特許請求の範囲の請求項1の「対称性創造原則」という記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていません。
したがって、請求項2について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものです。
よって、結論のとおり審決します。
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2021-002426