特許拒絶査定不服審判
2021-002257
複数の湾曲可能セクションを有する医療連続体ロボット
- 審判番号
- 2021-002257
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-189423
- 請求日
- 2021年02月19日
- 審決日
- 2022年03月28日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】國分 孝悦
- 【請求人】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】國分 孝悦
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 蔵田 真彦
- 審判官 井上 博之
- 分類
- P18 .55 -WZ (A61B) / P18 .121-WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-189423「複数の湾曲可能セクションを有する医療連続体ロボット」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019- 93119〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成30年10月4日(パリ条約による優先権主張2017年10月5日 米国)の出願であって、令和2年1月8日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年10月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和3年2月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年10月4日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年12月23日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願請求項1-14に係る発明は、令和3年12月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
駆動ユニットと、
前記駆動ユニットによって湾曲可能である、第1の湾曲可能セグメント、第2の湾曲可能セグメントおよび第3の湾曲可能セグメントを含む、単一シースと、
少なくとも3つの前記湾曲可能セグメントを湾曲させるために、前記駆動ユニットに制御信号を送信するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記第1の湾曲可能セグメントの長さは10mm以下であり、前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:1から1:1.9の間であり、
前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:5から1:20の間であり、
前記第1の湾曲可能セグメントは、前記第2の湾曲可能セグメントの回転を伴わずに全方向回転するように構成される、医療装置。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
1.令和2年6月8日付け手続補正書でした補正は、下記の点で外国語書面の翻訳文(以下「翻訳文」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(以下「当審拒絶理由1」という。)。
請求項1において、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:1.5から1:3の間であり、前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:5から1:10の間である」と、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」の範囲及び「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」の範囲を特定する補正は、「1:1.5」である下限、及び「1:3」である上限、並びに、「1:5」である下限、及び「1:10」である上限の数値の点において、翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
2.本願請求項1-16に係る発明は、以下の引用文献7に記載された発明及び引用文献4-5、8に記載された技術的事項に基いて、本願の優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「当審拒絶理由2」という。)。
引用文献等一覧
4.特開平7-96479号公報
5.特開平10-258020号公報
7.特表2005-537063号公報
8.国際公開第2017/003468号
3.本願請求項6、8に係る発明は明確でなく、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(略)
第4 当審の判断
1.当審拒絶理由1について
(1)令和3年12月23日にされた手続補正について
上記補正は、以下の補正事項を含むものである。
ア 補正事項1について
請求項1の「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:1.5から1:3の間であり、前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:5から1:10の間であり」を、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:1から1:1.9の間であり、前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:5から1:20の間であり」と補正する(下線は補正箇所を示す。)。
イ 補正事項2について
請求項1に「前記第1の湾曲可能セグメントの長さは10mm以下であり」を追加する(下線は補正箇所を示す。)。
(2)翻訳文に記載した事項
翻訳文には、「第1の湾曲可能セグメント」、「第2の湾曲可能セグメント」及び「第3の湾曲可能セグメント」の長さに関して、次の記載がある。
ア 「一実施形態において、装置の第1の湾曲可能セグメントと第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比は、1:1から1:5の間である。」(段落【0008】)
イ 「さらに別の実施形態において、第3の湾曲可能セグメントは、第1の湾曲可能セグメントおよび第2の湾曲可能セグメントのそれぞれの少なくとも2倍の長さとすることができ」(段落【0010】)
ウ 「本開示の別の変形形態において、第1の湾曲可能セグメントおよび第2の湾曲可能セグメントの長さは、第3の湾曲可能セグメントの長さの10分の1未満である。」(段落【0013】)
エ 「さらなる実施形態において、第1の湾曲可能セグメントの長さは、第2の湾曲可能セグメントの長さ未満である。」(段落【0014】)
オ 「別の実施形態において、第2の湾曲可能セグメントと第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比は、1:2から1:20の間である。」(段落【0015】)
カ 「本開示の別の実施形態は、第1、第2、および第3の湾曲可能セグメント間の長さ比を、それぞれ1:2:17として教示する。」(段落【0016】)
キ 「一部の実施形態においては、第1の湾曲可能セグメント12および第2の湾曲可能セグメント13の長さは、それぞれ、10および20mmである。」(段落【0064】)
ク 「さらに、第3の湾曲可能セグメントは、第1および第2の湾曲可能セグメントの長さよりも長く(例えば、2倍の長さと)することができる」(段落【0069】)
ケ 「一部の実施形態は、第1および第2の湾曲可能セグメントよりも10倍以上長い、第3の湾曲可能セグメントを有する。」(段落【0072】)
コ 「第1および第2の湾曲可能セグメント間の長さ比を1:1から1:5にすると、第1および第2の湾曲可能セグメントは、肺応用に対して、動作範囲と方位をより良くバランスさせて、末端での器用さをもたらすことができる。さらに、第2の湾曲可能セグメントと第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ量は、1:2から1:20の間で最適である。肺応用における標的病変は、亜区域気道(sub-segmentalairway)に位置することが多い。第1の湾曲可能セグメントは、亜区域気道中に挿入することが可能であるのに対して、第2の湾曲可能セグメントの大部分は、区域気道内に留まり、また第3の湾曲可能セグメントの遠位端は、区域気道の近位端に配備してもよい。したがって、気道の各発生までにそれぞれに類似の長さを有することは、第1、第2、および第3の湾曲可能セグメントに対して便益があり得る。肺においての使用が意図された、この特定の実施形態において、1:2:17の第1の湾曲可能セグメント、第2の湾曲可能セグメント、および第3の湾曲可能セグメント間の長さ比は、それぞれ、理想的であると分かった。想像できるように、長さ比は、必要な/所望の長さに基づいて、様々な空隙における使用に対して調節してもよい。」(段落【0074】)
サ 「TBB処置中に肺の周辺領域にアクセスするために、シース3は、気管53を介して、この研究のためには、右主気管支(RMB:rightmainbronchus)54の始まりまで、右区域葉気管支(RSLB:rightsegmentallobarbronchus)55の方向に挿入される。RSLB55後の気管支の直径と比較して、シース3の直径が相対的に大きいために、シース3を肺内に深く挿入することは、非常に難題で困難となる。」(段落【0080】)
(3)判断
ア 補正事項1について
令和3年12月23日にされた手続補正により、「1:3」である上限は「1:1.9」の数値に、「1:10」である上限は「1:20」の数値に、各々補正され、また、「1:5」である下限はその数値に変更はないところ、それらの上下限の数値については、依然として翻訳文には記載されておらず、ましてや、これらの上下限の臨界的な技術上の意義について翻訳文に記載されているものではない。
しかしながら、請求人は、下記ウで記載するとおり、これらの上下限で特定される範囲について、「解剖学的構造に過度に接触して損傷や瘢痕を引き起こすことなく、解剖学的構造内での前進を促進する」という翻訳文には記載されていない技術的意義を主張している。
そして、上記のような請求人の主張を踏まえれば、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」について、翻訳文には記載されていない「1:1.9」である上限の数値とし、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」について、翻訳文には記載されていない「1:5」である下限の数値、及び「1:20」である上限の数値とすることには、翻訳文には記載されていない技術上の意義があると認められ、これらの上下限の数値を特定する補正は、翻訳文のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるといえる。
よって、補正事項1は、翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
イ 補正事項2について
補正事項2は、令和3年12月23日にされた手続補正により追加されたものであるから、上記当審拒絶理由1の対象とはなっていないものの、これについても検討しておく。
上記(2)キには、「第1の湾曲可能セグメントの長さ」は「10mm」であることは記載されているが、「10mm以下」であることは記載されていない。そして、「第1の湾曲可能セグメントの長さ」の上限を「10mm」とし短い方がよいとする技術的事項は翻訳文の記載から読み取ることはできず、ましてや、上限の臨界的な技術上の意義について翻訳文に記載されているものではない。
そうすると、補正事項2についても、翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
ウ 請求人の主張について
請求人は、令和3年12月23日提出の意見書において、「請求項1の補正は、例えば、出願当初の明細書(翻訳文)の段落[0064]、[0074]及び[0080]等に記載された事項を根拠とするものです。」(「(3-2)補正の根拠」)と主張している。
しかしながら、翻訳文の段落【0064】、【0074】及び【0080】(上記(2)のキ、コ、サ)を参照しても、補正事項1の、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」について「1:1.9」である上限の数値とし、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」について、「1:5」である下限の数値、及び「1:20」である上限の数値とすることは、記載も示唆もされていない。
また、請求人は、同意見書において、当審拒絶理由2に関してではあるが、「本願発明の医療装置では、肺の小結節等の解剖学的構造へのアクセスを可能にするのに十分に小さい外径を有するために、本願の補正後の請求項1に記載されるような湾曲可能セグメントの長さの比が非常に重要になります。このような長さの比は、解剖学的構造に過度に接触して損傷や瘢痕を引き起こすことなく、解剖学的構造内での前進を促進するために、必然的に必要になります。したがって、本願発明において技術的意義のある湾曲可能セグメントの長さの比は、引用文献4、5、7、8に開示も示唆もされておらず、これらの引用文献に記載の発明を組み合わせても本願発明に至ることは困難であると考えます。」(「(4-2)拒絶理由2(進歩性)について」)と主張している(下線は当審が付した。)。
しかしながら、翻訳文には、補正事項1で特定される湾曲可能セグメントの長さ比の範囲について、「解剖学的構造に過度に接触して損傷や瘢痕を引き起こすことなく、解剖学的構造内での前進を促進する」という技術的意義があることは、記載されていない。
よって、これらの請求人の主張によって、上記アで述べた上記補正事項1についての判断が変わることはない。
エ 小括
よって、補正事項1を含む令和3年12月23日にされた手続補正は、翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでないことから、依然として特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(4)付記
なお、補正事項1及び補正事項2で特定される数値範囲について何ら技術上の意義はないものとして、補正事項1及び2の補正を受け入れた場合には、以下のとおり、本願発明について進歩性を認めることはできない。
2.当審拒絶理由2について
(1)引用文献7、引用発明
ア 引用文献7の記載事項
引用文献7には次の記載及び図面がある(下線は当審が付した。)。
(ア)「【0003】
[0003]内視鏡は、患者の身体内部を視覚化するための医療機器である。内視鏡は、結腸鏡検査、気管支鏡検査、胸腔鏡検査、腹腔鏡検査及びビデオ内視鏡検査を含む種々の診断方法及びインターベンショナルな処置(介入処置)のために用いられることができる。」
(イ)「【0027】
[0047]図2は、本発明のテンドン駆動式(tendon driven)内視鏡20の変型例を示す。内視鏡20は細長い本体21を有し、本体21は、手動で又は選択的に操舵可能な遠位部24、自動制御部28、及び、柔軟で受動的に操作される近位部22を有し、近位部22は装置から任意に省かれ得る。操舵可能な遠位部24は、手操作により、又は、アクチュエータによる機械的補助を用いて関節運動されることができる。自動制御部28はセグメントに分割されており、各セグメントは、操縦可能な運動の全範囲に曲がることができる。遠位部24も1つの制御可能なセグメントである。」
(ウ)「【0030】
[0050]制御可能な部分28は、少なくとも1つのセグメント30から、好ましくは幾つかのセグメント30から構成され、これらのセグメント30は、内視鏡20から或る距離を有して配置されたコンピュータ及び/又は電子制御器(コントローラ)を介して制御可能である。セグメント30の各々は、セグメント30の空間での制御された運動を可能にするようにアクチュエータに機械的に連結されたテンドン(引張り材)を有する。」
(エ)「【0032】・・・ポリマーカバーリング又はシース39も、制御可能な部分28及び操舵可能な遠位部24を含む内視鏡の本体21上に延在し得る。」
(オ)「【0033】
[0053]ハンドル32が内視鏡の近位端に取り付けられ得る。」
(カ)「【0034】
[0054]ハンドル32は、コントローラケーブル46を介して運動コントローラ45に接続され得る。操舵コントローラ47を、第2ケーブル48を介して運動コントローラ45に接続することができ、又は、操舵コントローラ47をハンドル32に直接連結してもよい。・・・操舵コントローラ47は、本体21の選択的に操舵可能な遠位部24をユーザが所望の方向26に選択的に操舵し、又は曲げることを可能にする。操舵コントローラ47は、図示されているようにジョイスティックコントローラであっても、又は、他の操舵制御機構、例えば、慣用の内視鏡に用いられているような2重ダイアル又は回転ノブ、トラックボール、タッチパッド、マウス若しくは感覚グローブであってもよい。運動コントローラ45は、本体21の、セグメント化された自動制御近位部28の運動を制御する。このコントローラ45は、マイクロコンピュータ上で実行される運動制御プログラムを用いて、又は、用途に特定の運動コントローラを用いて作動され得る。」
(キ)「【0035】
[0055]テンドンに力を加えるアクチュエータは、図示されているように運動コントローラユニット45に含まれてもよく、又は、別個に配置されて制御ケーブルにより接続されてもよい。操舵可能な遠位部24及び制御可能なセグメント30を制御するテンドンが内視鏡本体21の長さにわたって延在し、アクチュエータに連結している。」
(ク)「【0039】
[0059]図3Aは、操舵可能な遠位部分を含む制御可能なセグメントを関節運動させるための2つ又は3つのテンドンを用いて行われ得るセグメント関節運動の例を示す。図3Aは、本発明の制御可能なセグメントの可動範囲の一例を示し、セグメントは、この例においては3つのテンドンにより作動される。弛緩直立位置におけるセグメント301は、x-y面に対してほぼいずれの方向にも曲げられることができる。例として示されている図は、元の位置301に対して下方に或る角度に曲げられたセグメント302を示す。角度α及びβは、セグメントが成した屈曲を示す。角度βは、x-y面における角度を示し、角度αは、x-z面における運動を示す角度である。一変型例において、内視鏡の制御可能なセグメントは、角度βにおいては360度全てにわたって曲がることができ、角度αにおいては90度まで曲がることができる。」
(ケ)「【0049】
[0069]図5は、セグメントを屈曲させる1本のテンドンの部分概略図である。明瞭化のために、完全な内視鏡のその他の部分(他のテンドン及びセグメントを含む)は図5から省かれている。テンドンケーブルに加えられた張力はセグメント全体にわたって伝達され、屈曲をもたらす。スリーブ314がセグメントの底部322に取り付けられ、且つ近位側のアクチュエータ端403に固定されているボーデンケーブル310を用いることにより、テンドン312に張力を加えると、意図されたセグメント401のみが曲がり、より近位側のセグメントは作用を受けない。」
(コ)「【0066】
[0086]図10は、様々な長さのセグメントを有する、テンドン駆動式内視鏡の別の変型例を示す。様々な長さのセグメントを用いることにより、同等の長さの関節運動可能な内視鏡を構成するのに必要なセグメント900の全体の個数を少なくし得る。図10に示されているように、より近位のセグメント901は、より遠位のセグメント、例えばセグメント902,903よりも徐々に長くなっている。例えば、セグメントの長さは、近位の或るセグメントにおける20cmから、最も遠位のセグメントにおける6cmまで減少され得る。長さは、セグメントからセグメントへ一定の率で徐々に減少され得る。或いは、長さは、望ましい関節運動に応じて幾何学的に、指数関数的に、又は任意に減少され得る。実際、これが、屈曲及びターンが近位方向に伝搬されるときの、より遠位のセグメントによるカーブの「平均化」をもたらす。これを達成するために、運動コントローラは、様々な寸法のセグメントに対応するように形成され得る。或いは、内視鏡は、用途に応じて様々な長さ及び厚さのセグメントの組合せから構成され得る。」
(サ)「【0087】
[0107]本発明の内視鏡を結腸鏡として用いるように記載してきたが、この内視鏡を、他の多数の医療用途及び産業上の用途のために構成することができる。」
(シ)【図2】
[図:0001387843000001.jpg]
(ス)【図3A】
[図:0001387843000002.jpg]
(セ)【図5】
[図:0001387843000003.jpg]
(ソ)【図10】
[図:0001387843000004.jpg]
イ 引用文献7の記載から自明な事項
上記ア(シ)より、「操舵可能な遠位部24」は、「自動制御部28」を構成する「セグメント30」の湾曲を伴わずに湾曲可能であることが看取される。
ウ 引用発明
上記ア、イから、引用文献7には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「細長い本体21を有する内視鏡20であって、
本体21は操舵可能な遠位部24、自動制御部28を有し、
操舵可能な遠位部24は、アクチュエータによる機械的補助を用いて関節運動されることができる、制御可能なセグメントであり、
自動制御部28は、幾つかのセグメント30から構成され、
より近位のセグメント901は、より遠位のセグメント902,903よりも徐々に長くなっており、
操舵可能な遠位部24及び制御可能なセグメント30を制御するテンドン(引張り材)が、内視鏡本体21の長さにわたって延在し、アクチュエータに連結され、
操舵可能な遠位部分を含む制御可能なセグメントは弛緩直立位置においてx-y面に対してほぼいずれの方向にも曲げられることができ、角度βはx-y面における角度を示すとき、角度βにおいて360度全てにわたって曲がることができ、
テンドン312に張力を加えると、意図されたセグメント401のみが曲がり、
操舵可能な遠位部24は、自動制御部28を構成するセグメント30の湾曲を伴わずに湾曲可能であり、
シース39が、制御可能な部分28及び操舵可能な遠位部24を含む内視鏡の本体21上に延在し、
内視鏡の近位端にハンドル32が取り付けられ、
ハンドル32はセグメント化された自動制御近位部28の運動を制御する運動コントローラ45に接続され、
操舵可能な遠位部24をユーザが所望の方向26に選択的に操舵することを可能にする操舵コントローラ47が運動コントローラ45に接続され、
テンドンに力を加えるアクチュエータは運動コントローラユニット45に含まれる、
内視鏡20。」
(2)対比・判断
ア 対比
(ア)本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
a 引用発明の「アクチュエータ」は、本願発明の「駆動ユニット」に相当する。
b 引用発明の「操舵可能な遠位部24」は、本願発明の「第1の湾曲可能セグメント」に相当し、また、引用発明の「自動制御部28」を構成する「セグメント30」のうち最も遠位に位置する「セグメント30」、当該「セグメント30」に対して近位側に隣接する「セグメント30」は、それぞれ、本願発明の「第2の湾曲可能セグメント」、「第3の湾曲可能セグメント」に相当する。そして、引用発明において「本体21は、操舵可能な遠位部24、自動制御部28を有し」、「シース39が、制御可能な部分28及び操舵可能な遠位部24を含む内視鏡の本体21上に延在し」ていることから、引用発明の「本体21」及び「シース39」は、本願発明の「前記駆動ユニットによって湾曲可能である、第1の湾曲可能セグメント、第2の湾曲可能セグメントおよび第3の湾曲可能セグメントを含む、単一シース」に相当する。
c 引用発明の「運動コントローラ45」は、「セグメント化された自動制御近位部28の運動を制御」し、「操舵可能な遠位部24をユーザが所望の方向26に選択的に操舵することを可能にする操舵コントローラ47」が接続され、「テンドンに力を加えるアクチュエータ」を含むものであるから、本願発明の「少なくとも3つの前記湾曲可能セグメントを湾曲させるために、前記駆動ユニットに制御信号を送信するように構成されたコントローラ」に相当する。
d 引用発明の「より近位のセグメント901は、より遠位のセグメント902,903よりも徐々に長くなって」いることと、本願発明の「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:1から1:1.9の間であり、前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:5から1:20の間であ」ることとは、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」が1:X(Xは1以上の値)であり、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」が1:Y(Yは1以上の値)である点で共通する。
e 引用発明の「内視鏡20」は、本願発明の「医療装置」に相当する。
(イ)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次の通りである。
【一致点】
「駆動ユニットと、
前記駆動ユニットによって湾曲可能である、第1の湾曲可能セグメント、第2の湾曲可能セグメントおよび第3の湾曲可能セグメントを含む、単一シースと、
少なくとも3つの前記湾曲可能セグメントを湾曲させるために、前記駆動ユニットに制御信号を送信するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:X(Xは1以上の値)であり、
前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比が、1:Y(Yは1以上の値)である、医療装置。」
【相違点1】
「1:X(Xは1以上の値)」、「1:Y(Yは1以上の値)」は、
本願発明は、それぞれ、「1:1から1:1.9の間」、「1:5から1:20の間」であるのに対し、
引用発明は、「X」、「Y」の具体的な値は不明である点。
【相違点2】
本願発明は、「前記第1の湾曲可能セグメントは、前記第2の湾曲可能セグメントの回転を伴わずに全方向回転するように構成される」のに対し、
引用発明は、「第1の湾曲可能セグメント」は「第2の湾曲可能セグメント」の湾曲を伴わずに湾曲可能であり、「第1の湾曲可能セグメント」は360度全てにわたって曲がることができる点。
【相違点3】
「第1の湾曲可能セグメントの長さ」は、
本願発明は、「10mm以下」であるのに対し、
引用発明は、具体的な値は不明である点。
イ 判断
(ア)上記相違点1、3について検討する。
引用文献7には、上記(1)ア(ア)のとおり「内視鏡は、結腸鏡検査、気管支鏡検査、胸腔鏡検査、腹腔鏡検査及びビデオ内視鏡検査を含む種々の診断方法及びインターベンショナルな処置(介入処置)のために用いられることができる。」と記載されており、引用発明の内視鏡を気管支鏡検査に用いることが記載されていることから、引用発明の内視鏡を気管支鏡検査に用いるべく、上記「X」、「Y」の値を、それぞれ、1から1.9の間、5から20の間として、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」の範囲、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」の範囲を、それぞれ、「1:1から1:1.9の間」、「1:5から1:20の間」とし、また、「第1の湾曲可能セグメントの長さ」を10mm以下とすることは、当業者が容易に設計し得たことである。
(イ)上記相違点2について検討する。
a まず、本願発明の「前記第1の湾曲可能セグメントは、前記第2の湾曲可能セグメントの回転を伴わずに・・・回転する」という点について、本願明細書及び図面には次の記載及び図面がある(下線は当審が付した。)。
(a)「図4において、第1の湾曲可能セグメント12は、3次元空間において1つの一定曲率で湾曲する。湾曲面18は、第1の湾曲可能セグメント12の湾曲した形状を含む面である。」(段落【0044】)
(b)「その後に、シース3は、図6(b)~図6(e)に示されるように、矢印Dで示される経路に沿って、湾曲面18を回転させる。」(段落(【0049】)
(c)「例えば、1つの操作は、全方向性定位であり、これが図8Bに示されている。第1の湾曲可能セグメント12は、シース3のその他の部分を回転させることなく、回転することができる。」(段落【0059】)
(d)図8B
[図:0001387843000005.jpg]
b これらの記載及び図8Bより、本願発明における「回転」とは、第1の湾曲可能セグメントのみを全方向性定位に湾曲させることにより行われているものであり、第1の湾曲可能セグメント12と第2の湾曲可能セグメント13とを互いに別体に構成して、両セグメント部分は回転軸のみで連結するというような構造で行われるものではない。
c 一方、引用発明は、上記図2で示されているように、「第1の湾曲可能セグメント」は「第2の湾曲可能セグメント」の湾曲を伴わずに湾曲可能であり、「第1の湾曲可能セグメント」は360度全てにわたって曲がることができるものである。
そうすると、上記相違点2について、本願発明と引用発明とは「回転」という文言上の違いはあるものの、それを実現する機構は同じであることから、両者に技術上の差異はなく、上記相違点2は実質的な相違点ではない。
(ウ)効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(エ)請求人の主張について
請求人は、令和3年12月23日付け意見書において、「本願の補正後の請求項1に記載されるような第1~第3の湾曲可能セグメントの長さ(又はその比)は、引用文献4、5、7、8のいずれにも開示も示唆もされていないと考えます。・・・本願発明において技術的意義のある湾曲可能セグメントの長さの比は、引用文献4、5、7、8に開示も示唆もされておらず、これらの引用文献に記載の発明を組み合わせても本願発明に至ることは困難であると考えます。よって、本願発明は、引用文献4、5、7、8に記載の発明に対して進歩性を有すると考えます。」(「(4-2)拒絶理由2(進歩性)について」)と主張している。
しかしながら、上記イ(ア)で説示したとおり、引用発明の内視鏡を気管支鏡検査に用いるとすると、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第2の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」の範囲、「前記第1の湾曲可能セグメントと前記第3の湾曲可能セグメントとの間の長さ比」の範囲を、それぞれ、「1:1から1:1.9の間」、「1:5から1:20の間」とし、また、「第1の湾曲可能セグメントの長さ」を10mm以下とすることは、当業者が容易に設計し得たことであるから、審判請求人の主張は採用することができない。
なお、請求人の主張するとおり本願発明において特定されている湾曲可能セグメントの長さ及びその比に特段の技術的意義がある場合には、上記「1.当審拒絶理由1について」の判断のとおりである。
(オ)したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、令和3年12月23日付け手続補正書でした補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、特許法第29条第2項の規定についてはその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-002257