商標拒絶査定不服審判
2021-002094
- 審判番号
- 2021-002094
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2018-014257
- 請求日
- 2021年02月16日
- 審決日
- 2021年11月29日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キッコーマン株式会社
- 【請求人代理人】長谷川 芳樹
- 【請求人代理人】黒川 朋也
- 【請求人代理人】森川 邦子
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 松江
- 審判官 大森 友子
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T18 .16 -Z (W30)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項6号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第6号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2018-14257拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月5日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 2月15日付け:拒絶理由通知
令和 元年 7月 1日付け:意見書の提出
令和 元年 9月 4日付け:上申書の提出
令和 元年 9月25日付け:刊行物等提出書
令和 2年 2月12日付け:上申書の提出
令和 2年 5月 8日付け:刊行物等提出書
令和 2年11月12日付け:拒絶査定
令和 3年 2月16日付け:審判請求書の提出
令和 3年 4月 7日付け:手続補正書の提出
令和 3年 9月16日付け:刊行物等提出書
第2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第30類「ケチャップソース,トマトケチャップ」を指定商品とし、位置商標として登録出願されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由(要点)
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者、取引者は、これを、通常採択し得る商品の包装の一形態を表すにすぎないものと理解し、自他商品の識別標識としては認識しないから、需要者が、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当する。
また、出願人は、本願商標は、使用された結果、出願人の業務に係る商品であることを認識させるに至っているため、商標法第3条第1項第6号に該当しない旨主張するが、提出された資料において、本願商標は単独ではなく、識別力のある「Del monte」の文字を含む図形や、「リコピンリッチ」の文字が、需要者の目を引くように付された態様で使用されているため、本願商標がそれのみ独立して自他商品の識別標識として認識されているということはできない。そうすると、本願商標が、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至っているということはできない。
第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、商品の包装用袋の前面において、中央のやや下部に、赤い半液体状の物質を載せた金色のスプーンの図形(以下「スプーン図形」ということがある。)を表し、さらに該スプーン図形の背景に、赤色のグラデーション(なお、該グラデーションの下方において、金色の細い横線が表されている)を配し、さらに赤色グラデーションの下には、大きさの異なる複数のトマトの図形(以下「複数のトマト図形」ということがある。)を表してなる位置商標であり、「商標の詳細な説明」として「商標登録を受けようとする商標(以下『商標』という。)は、標章を付する位置が特定された位置商標であり、商品の包装用袋の前面の下部約8分の7の部分に付された図形からなる。なお、破線部分は、包装用袋の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。」旨の記載がなされ、第30類「ケチャップソース,トマトケチャップ」を指定商品とするものである。
ところで、本願の指定商品である「ケチャップソース,トマトケチャップ」を取り扱う業界においては、商品の魅力向上や需要者の関心を引くなどといった目的のため、(a)商品の原材料であるトマトの赤色を基調とした包装用袋とすること(包装用袋を彩色する際に赤色を使用する方法と、商品の赤色が視認できるように透明の包装用袋を使用する2つの方法が確認できる。)、(b)商品の原材料であるトマトの図形を包装用袋に付すこと、(c)商品であるトマトケチャップをスプーンに乗せた図形を包装用袋に付すこと、といった手法が、単独で又は組合せて、一般に広く用いられている実情が認められる(甲2、甲3、甲12、別掲2ないし別掲4参照)。
そうすると、本願商標は、その構成要素である図形の形状及び位置について子細にみれば、上記用例のトマトケチャップの包装用袋に付された図形の形状及び位置とは異なる点があるとはいえるものの、上記(a)、(b)及び(c)とその手法を共通にするものであり、本願商標をその指定商品に使用するときは、需要者をして、その商品の包装用袋に通常採用され得る位置に付された図形の一類型として認識される(金色のスプーンに乗せた赤い半液体状の物質についても、指定商品との関係から、トマトケチャップを表したものと容易に理解できるものである。)にとどまり、それ自体が単独で商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識されることはないとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である。
(2)本願商標が使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているかについて
請求人は、本願商標について、2014年夏、「リコピンリッチ」と称するトマトケチャップの包装袋のデザインを一新して以来、本願商標を使用しており、その継続的かつ大々的な使用と莫大な宣伝広告によって、本願商標それ自体が文字商標部分に匹敵する自他商品の識別力を獲得するに至っている旨主張し、その主張の裏付けとして、当審において、甲第1号証ないし甲第109号証を提出している(なお、請求人は原審においても資料1ないし資料109を提出しているが、書証が共通するので当審において提出された書証を採用する。)。
そこで、請求人の主張及び同人提出の証拠について、以下検討する。
ア 請求人の使用に係るトマトケチャップについて
(ア)使用開始時期及び使用態様
請求人は、1963年に、世界80カ国以上で販売されている米国のブランド「デルモンテ」と提携し、当該ブランドの下、トマトケチャップを中心とした商品を生産、販売してきた(甲31、甲42)。
請求人は、2013年8月に、「デルモンテ トマトケチャップ」と称するトマトケチャップに比べ、リコピンが1.5倍含まれる「デルモンテ リコピンリッチ トマトケチャップ」と称する商品の販売を開始した(甲32)。
販売開始時(2013年)の上記商品の外観は、包装用袋の上部に、トマトと思しき赤色図形(縁は黄色と緑色の細線からなる。)内に「Del Monte」及び「Quality」の文字が白抜きで表されたもの(以下「デルモンテロゴ」という。)が配され、中央に、赤色略四角形(縁は白色と黄色の細線からなる。)内に「デルモンテ」、「リコピン・リッチ」及び「トマトケチャップ」の文字が白抜き及び黄色で表されたものが配されており、該略四角形の左下端に重なるように写実的な2つのトマトの図形(一部)が表されているほか、包装用袋の下部には「kikkoman」の文字が緑色で表され、それらの背景として、複数のトマト図形が全面に配されていた(甲13、甲32)。
上記商品発売1年後の2014年には、包装用袋のデザインがリニューアルされたところ、「一番の差別化要素の『リコピン』を立たせる」ために、「『リコピン』の文字を大きくする」、「『リコピンたっぷり1.5倍』の印象を強める」といった手法や、「『リコピン』という機能的な印象を払拭する、食品としての美味しさ表現を最大に」するために、「スプーンを入れる」、「トマト(審決注:発売開始時の包装用袋に表されていた写実的なトマトの図形を指す。)を大きくする」といった手法、また、「ラインナップ感を最低限継承する」ために、「背景のトマトの地紋(審決注:複数のトマト図形を指す。)を少なくしつつ残す」、「デルモンテロゴを縮小しつつ位置は変えずに入れる」といった手法が採用された(甲13)。該リニューアル後の「デルモンテ リコピンリッチ トマトケチャップ」(以下「請求人商品」という。)の外観は、包装用袋の上部にデルモンテロゴが、中央に「デルモンテトマトケチャップ」、「リコピン」、「リッチ」の文字が白抜き及び金色で表されたものがそれぞれ配され、該文字の左下に写実的な大きなトマトの図形(一部)が、該文字の真下にスプーン図形が表されているほか、包装用袋の下部には「kikkoman」の文字等が表され、背景として、デルモンテロゴから写実的な大きなトマトの図形までの部分は赤色のグラデーション(なお、該グラデーションの下方において、緑色の太い横線及び金色の細い横線が表されている)を付し、それ以外の包装用袋の上端及び下端には、複数のトマト図形が配されていた(甲13、甲33)。
以降2021年まで、請求人商品の外観は、おおむね同様の態様であることがうかがえる(甲51~甲58)。
(イ)販売状況及び市場占有率
請求人は、全国のスーパーマーケットやドラッグストアといった小売店を通じて請求人商品を販売しているとするところ、2019年6月における請求人商品の定番率は、前者が90.8%、後者が67.3%とされる(甲45、甲46)。また、請求人商品は、「楽天市場」及び「Amazon.co.jp」を通じた通信販売がされていることが認められる(甲47、甲48)。
また、請求人は、請求人商品(485g)の出荷実績推移について、2014年度ないし2019年度の期間において、約6万8千ケースないし約44万ケースであったとし、該期間における累計出荷ケース数は約157万ケース、累計本数は約3千148万本であったとしている(甲43)。
さらに、請求人は、請求人商品の市場占有率について、「対象カテゴリー:トマト加工品」、「データソース:SCI(審決注:全国消費者パネル調査)(60代まで)」、「集計期間:2016/9/1-2019/2/28(積上)-年齢ウェイトつき」とする調査結果によれば、「リコピンリツチ トマトケチヤツプ T485G(日本デルモンテ)(審決注:請求人商品を指す。)」、「ノウコウリコピントマトケチヤツプ T300G(カゴメ)」及び「カゴメコウリコピンシヨウケチヤツプ T300G」の3品において請求人商品が占める割合(金額)は、いずれの期間においても、80%を超えるとしている(請求人の主張、甲44)。
なお、本願の指定商品は、「ケチャップソース,トマトケチャップ」であるところ、株式会社インテージの小売店販売データ(SRI)を用いた調査結果(トマトケチャップ市場 メーカー・単品別シェア、2018年7月~2019年6月)によれば、「メーカー別シェア(金額シェア)」として、「カゴメ 60%」、「キッコーマン 20%」、「ハインツ 4%」、「その他 16%」の記載があり、また、「単品別シェア(金額シェア)」として、「カゴメトマトケチヤツプ T500G 36%」、「カゴメトマトケチヤツプ T300G 8%」、「リコピンリツチ トマトケチヤツプ T485G 6%」等の記載がある(原審における令和元年9月25日付け刊行物等提出書により提出された第45号証)。
(ウ)広告宣伝等
a テレビCM
請求人は、請求人商品について、2016年から2020年にかけて継続的にテレビCMを出稿しており、関東地区、関西地区及び名古屋地区における出稿総計は2,807本(甲63)、GRP(延視聴率)は、15,628.9である(甲64)とし、2018年に「オムライス篇」と称するテレビCM(甲61)が、2019年に「ホットドッグ篇」と称するテレビCM(甲60)が、2020年に「リッチ革命起こせるって篇」と称するテレビCM(甲62)がそれぞれ関西地区及び名古屋地区において放映され、その内容の一部として、請求人商品の映像が含まれていることはうかがえるものの、その全体の内容は明らかでなく、また、それらの放映に係る具体的な時期及び時間帯等も明らかでない(甲59~甲64)。
なお、2016年以降の請求人商品に係るテレビCMに係る広告費は、約16.6億円とされる(請求人の主張)。
b WEB広告
請求人は、「ホットドッグ篇」及び「オムライス篇」と称するWEB広告(甲49)を行ったとするところ、「2017年度 WEB広告出稿 管理表(2017年3月~2018年3月)」及び「2018年度 WEB・交通広告出稿 管理表(2018年4月~2019年3月)」(甲50)の「出稿内容」からは、その事実を確認することができない。なお、該管理表に掲載された請求人商品に係るWEB広告として、3月26日ないし3月31日(表の記載から、2018年と推測される。)の期間に「出稿内容 リコピンリッチトマトケチャップ」とするWEB広告が、「YouTube」及び「LINE」の媒体を通じて行われたことがうかがえるものの、その内容は明らかでない。
c 交通広告
請求人は、2018年3月26日ないし同年4月1日の期間に、JR東日本の横浜線、相模線、京浜東北・根岸線、埼京線、南武線・鶴見線、りんかい線において、請求人商品の前面の写真を表示した中づり広告を行ったほか、「TOKYO MARU―VISION」(東京駅)、恵比寿駅線路脇大型LEDビジョン等や、横浜線、京葉線、京浜東北・根岸線、埼京線、常磐線各駅停車、中央線快速、南武線のトレインチャンネルにおいて、請求人商品に係るデジタルサイネージ広告を行ったことがうかがえるものの、該デジタルサイネージ広告の全体の内容は明らかでない(甲66)。
また、請求人は、2018年10月29日ないし同年11月4日の期間に、JR東日本、京急線、東京メトロ、京成線、東武線(伊勢崎線北部・宇都宮線を除く。)、西武線、京王線、小田急線、東急線(世田谷線を除く。)、都営地下鉄、相鉄線各線において、請求人商品の写真を表示した中づり広告を行ったとしている(甲66、甲67)。
d キャンペーン
請求人は、2019年4月1日ないし同年5月31日、同年6月1日ないし同年7月31日、同年10月1日ないし同年11月30日、及び同年12月1日ないし2020年1月31日に、請求人商品に係る販売促進キャンペーンをWEB及び実店舗において行ったとしている(甲68~甲70)。該キャンペーンは、請求人商品又は「デルモンテ ベジタブルリッチケチャップ485g」1本を購入して応募すると、電子マネーギフト千円分が当たるというもので、その告知ツールとして、請求人商品の前面の写真を表示した告知ポスター、音声POP、パネル及びスイングPOP(請求人商品に係るものと、「デルモンテ ベジタブルリッチケチャップ485g」に係るものがある。)等が使用されたとしているが、実店舗における販売促進キャンペーンについて、その具体的な地域や態様等は不明である。
e ホームページ、商品カタログ
請求人は、自社ホームページ(甲33)及び商品カタログ(甲51~甲58)において、請求人商品を含む「リコピンリッチシリーズ」について、「濃厚なトマトの味、リッチなおいしさ」等の記載とともに、請求人商品を含む複数の商品(トマト飲料、トマト鍋スープ、トマトソース、トマトピューレー、ピザソース、ソース等)の外観前面の写真を掲載した。請求人商品以外の商品の外観は、赤色を基調としたもののほか、緑色や白色、茶色を基調とした包装用袋(容器)が採用され、それぞれ、写実的なトマトの表現の相違や、複数のトマト図形の有無、商品の内容物を乗せたスプーンが木製である(スプーンの表現がないものもある。)など、請求人商品の外観との相違点はあるものの、包装用袋(容器)の上部にデルモンテロゴが配されている点、及び該ロゴの下に「リコピンリッチ」の文字が一段又は二段に表記されている点は、全商品において共通している。
イ 判断
上記アを総合勘案すれば、請求人は、2014年以降、請求人商品を継続して販売しており、2014年度ないし2019年度の期間の累計出荷本数は約3千148万本であって、テレビCM、WEB広告、交通広告等の方法によって、広告宣伝がなされてきたことがうかがえる。
そして、請求人商品の包装用袋の前面には、本願商標を構成する図形と同一視し得る図形、すなわち、スプーン図形及びその背後の赤色のグラデーション並びに赤色グラデーション下方の複数のトマト図形が、本願商標に係る位置と同一視し得る位置に付されているとは言い得るものの、そのほかに(a)写実的な大きなトマトの図形が表されている、(b)赤色グラデーションの下方に表された金色の細い横線の上に、緑色の太い横線が表されている、(c)複数のトマト図形が包装用袋の上端にも付されている、といった相違点がある。さらに、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識され得る(d)「デルモンテ」のブランドを表すデルモンテロゴ及び請求人を示す「kikkoman」の文字や、(e)商品の内容物及び商品名を表す「デルモンテトマトケチャップ」、「リコピン」及び「リッチ」の文字が付されていることが認められる。
そうすると、本願商標と、それに上記(a)ないし(c)の図形等を付加したものとは、看者における印象や認識において、大きく異なるというべきである。また、請求人商品の包装用袋の態様においては、上記(d)及び(e)のとおりの、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識され得るデルモンテロゴや「kikkoman」の文字、「リコピンリッチ」という商品名が、看者に強く支配的な印象を与えるとみるのが相当であるし、デルモンテロゴ、「kikkoman」の文字、「リコピンリッチ」の文字や、写実的なトマト図形等を捨象した本願商標のみが分離して観察され、需要者において商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識されているとはいい難い。
さらに、請求人商品に係る広告宣伝において、「味」や「おいしさ」に関する言及は見受けられるものの、該広告宣伝に接する需要者に対し、本願商標を商品ないしその包装用袋に係る特徴としてうたうなど、それを商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような告知や表示が存在したとは認められないことからも、請求人商品に接した需要者が、その包装用袋の前面に表されている図形及び文字から、本願商標のみを分離して観察し、それを商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識するのは困難であると言わざるを得ない。
そうすると、請求人商品は、2014年から継続して使用されており、一定程度の販売実績があり、様々な広告宣伝がなされてきたことを考慮しても、請求人商品については、包装用袋の前面に、常に表されたデルモンテロゴ、「kikkoman」の文字や、大書された商品名「リコピンリッチ」が、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として需要者に認識されているとみるのが相当であり、本願商標のみが、自他商品の識別標識としての機能を果たしているとみることはできない。
したがって、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標を構成する図形中、(a)赤色のグラデーションは、あえて彩度と明度を落とした「ディープトーン」及び「ダークトーン」を基調とすることにより、一種特有な、商品らしさを越えた出所標識として看取される、(b)スプーン図形は、複数の既登録例(図形商標)と構成の軌を同一とするものであるから、自他商品の識別機能を発揮することは明らかであり、「金色のスプーンの上に乗った、凹凸により質感を強めたケチャップ図形」と同一・類似の図形が使用されている事実は何ら示されていない、(c)複数のトマト図形は、横長で粒の大きさの異なる二種類のトマトが、間隔を広くあけて配している点に独創性を有しており、盛んに広告を行っていることも相まって、需要者は、複数のトマトの図形を目印に、商品を識別し、購入しているといっても過言ではないことから、高付加価値トマトケチャップのシンボルマークとして、独自に創作した本願商標は、高い独創性を有する旨主張する。
しかしながら、(a)については、たとえ彩度や明度が低いとしても、色相としては「赤」であり、看者をして無理なく「赤色」のグラデーションと認識させることに加え、上記1(1)のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界において、商品の原材料であるトマトの赤色は、本願の指定商品と同種の商品に係る包装用袋の基調色として一般に広く使用されていることをも併せ考慮すれば、本願商標を構成する赤色のグラデーションは、商品の出所を表示する標識として認識されるというよりはむしろ、商品の包装用袋の基調色(背景色)として看取、把握されるにとどまるものである。また、(b)については、請求人が挙げる既登録例は、いずれも本願商標とはその構成、態様を異にするものであって、本件とは事案を異にするものであるし、本願商標が包装用袋の前面に付された図形からなる位置商標として登録出願されたものであることをも併せ考慮すれば、同一に論ずることができないものである。そして、請求人が主張する「凹凸により質感を強めたケチャップ図形」と全く同一の図形が、請求人商品以外に使用されていなかったとしても、上記1(1)のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界において、トマトケチャップをスプーンに乗せた図形を包装用袋に付す手法は、普通に採択されているものであるから、本願商標を構成するスプーン図形は、看者をして、その一類型として認識されるにとどまるものである。さらに、(c)については、上記1(1)のとおり、商品の原材料であるトマトの図形を包装用袋に付す手法は、一般に広く採用されているところ、その中には、例えば別掲2(3)ないし(5)のように、地模様のように複数のトマトの図形を商品の包装用袋に付すものも多く存在することから、本願商標を構成する複数のトマト図形は、看者をして、その一類型として認識されるにとどまるものである。
したがって、請求人による上記主張は、いずれも採用することができない。
(2)請求人は、請求人商品の市場占有率について、「高付加価値トマトケチャップ」という新たなカテゴリーにおける市場占有率が、80%以上と突出している旨主張する。
しかしながら、前記第2のとおり、本願の指定商品は、第30類「ケチャップソース,トマトケチャップ」であることから、市場占有率の算出方法は、我が国における「ケチャップソース,トマトケチャップ」全体の生産数量や販売金額を分母として、請求人商品の販売数量や販売金額を分子として算出すべきであるところ、請求人が主張する市場占有率(金額シェア)は、請求人商品及びカゴメ株式会社の製造販売に係る2商品の僅か3品に基づいて算出された値であって、算出方法が適正とはいえない。なお、上記1(2)ア(イ)のとおり、2018年7月ないし2019年6月の期間における、トマトケチャップ市場の単品別シェア(金額シェア)によれば、請求人商品の市場占有率は6%であることがうかがえる。
したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。
3 まとめ
以上によれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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