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特許拒絶査定不服審判

2021-000192

インクジェット塗布用電子デバイス用封止剤及び電子デバイスの製造方法

審判番号
2021-000192
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-158472外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年01月06日
審決日
2021年10月21日
公報発行日
2022年02月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H05B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-158472「インクジェット塗布用電子デバイス用封止剤及び電子デバイスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月29日出願公開、特開2018- 49817〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 事案の概要

1 手続等の経緯

特願2016-526251号(以下「もとの特許出願」という。)は、2016年(平成28年)4月15日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年4月17日)を国際出願日とする出願である。

特願2017-158472号(以下「本件出願」という。)は、もとの特許出願の一部を平成29年8月21日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 元年12月19日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 3月 4日 :意見書
令和 2年 3月 4日 :手続補正書
令和 2年 5月19日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 8月19日 :意見書
令和 2年10月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 3年 1月 6日 :審判請求書

2 本願発明

本件出願の請求項1に係る発明は、令和2年3月4日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの、次のものである(以下「本願発明」という。)。

「硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有し、インクジェット法による塗布に用いられるインクジェット塗布用電子デバイス用封止剤であって、
前記硬化性樹脂は、下記式(1)で表されるシリコーン化合物を含有する
ことを特徴とするインクジェット塗布用電子デバイス用封止剤。
【化1】
[図:0001381451000001.jpg]
式(1)中、R1は、炭素数1~10のアルキル基を表し、X1、X2は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、又は、下記式(2-4)で表される基を表し、X3は、下記式(2-4)で表される基を表す。mは、0~5の整数であり、nは、0であり、X1及びX2のうち少なくとも一方は、下記式(2-4)で表される基を表す。
【化2】
[図:0001381451000002.jpg]
式(2-4)中、R2は、結合手又は炭素数1~6のアルキレン基を表し、R5は、水素又はメチル基を表す。」

3 原査定の理由

原査定の拒絶の理由は、本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:特開2014-152272号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2013/0236681号明細書
引用文献3:特開2014-1341号公報
引用文献4:特開2002-348394号公報

(引用文献1及び引用文献2は、それぞれ主引例である。引用文献3及び4は、特定のシリコーン化合物の構造を示すために使用された文献である。)

第2 当合議体の判断

1 引用文献1の記載及び引用発明1

(1) 引用文献1の記載

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014-152272号公報)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。

なお、下線は、当合議体が引用発明の認定及び判断等で活用した箇所を示す。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気や酸素等の気体のバリア性、及び、耐衝撃性に優れるバリア膜を形成できる硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物を用いてなるバリア膜の形成方法及びデバイスの封止方法に関する。
【背景技術】
続きを表示(全87行)
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子や有機薄膜太陽電池素子等の有機薄膜素子を用いた有機光デバイスの研究が進められている。有機薄膜素子は真空蒸着や溶液塗布等により簡便に作製できるため、生産性にも優れる。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された薄膜構造体を有する。この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して自己発光を行う。バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有することから、次世代ディスプレイとして着目されている。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、硬化後にレーザー光を照射することにより、水蒸気や酸素等の気体のバリア性、及び、耐衝撃性に優れるバリア膜を形成できる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物を用いてなるバリア膜の形成方法及びデバイスの封止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、分子内にシロキサン結合及び重合性基を有する硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有し、硬化後の硬化物は、レーザー光を照射されることにより表面にSiO2層からなるバリア膜を形成する硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者は、特許文献1に開示されているようなガラスフリットに代えて、硬化性樹脂を用いて被保護物を封止することにより、封止部の耐衝撃性を向上させることを検討した。その結果、硬化性樹脂を用いることにより封止部の耐衝撃性を向上させることはできたものの、水蒸気や酸素等の気体のバリア性は充分に発揮されなかった。
そこで本発明者は、硬化性樹脂として、分子内にシロキサン結合及び重合性基を有する硬化性樹脂を用いることにより、該硬化性樹脂と重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物が、硬化後の硬化物にレーザー光を照射することにより表面にSiO2層を形成し、該SiO2層は、水蒸気や酸素等の気体のバリア性、及び、耐衝撃性に優れるバリア膜となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の硬化性樹脂組成物で被保護物を封止した際、レーザー光によってSiO2変性されなかった部分は、応力緩和性に優れるものとなる。また、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物の表面にレーザー光を照射して形成されるバリア膜においても、該バリア膜はレーザー光によってシロキサン結合の側鎖が開裂してSiO2変性したものであるため、形成時に熱による応力が生じ難く、耐衝撃性に優れるものとなる。
【0011】
本発明の硬化性樹脂組成物は、分子内にシロキサン結合及び重合性基を有する硬化性樹脂を含有する。分子内にシロキサン結合及び重合性基を有する硬化性樹脂は、硬化後にレーザー光を照射することにより、レーザー光を照射した部分(表面)のシロキサン結合の側鎖が開裂し、有機基が脱離してSiO2層を形成する。このようにして表面に形成されたSiO2層は、水蒸気や酸素等の気体のバリア性に優れるバリア膜となる。
【0012】
上記分子内にシロキサン結合及び重合性基を有する硬化性樹脂としては、例えば、下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0013】
[図:0001381451000003.jpg]
【0014】
式(1)中、mは、1~100の整数であり、nは、0~100の整数であり、各R1は、それぞれ独立に、H、CH3、又は、C2H5である。R2、R3、及び、R4の少なくとも1つは重合性基を含む基であり、重合性基を含む基以外のR2、R3、及び、R4は、それぞれ独立に、H、CH3、又は、C2H5である。
【0015】
上記重合性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
上記式(1)中、R2、R3、及び、R4で表される重合性基を含む基としては、例えば、下記式(2-1)~(2-5)で表される基が好ましい。
【0016】
【化2】
・・・中略・・・
[図:0001381451000004.jpg]
【0017】
式(2-1)~(2-5)中、R5は、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~6のアルキレン基又はアルキレンエーテル結合を表す。式(2-3)中、R6は、水素、又は、直鎖状若しくは分枝鎖状の炭素数1~6のアルキル基を表す。式(2-4)中、R7は、水素、又は、メチル基を表す。式(2-5)中、R8は、水素、又は、メチル基を表す。
【0018】
上記分子内にシロキサン結合及び重合性基を有する硬化性樹脂の官能基当量の好ましい下限は100、好ましい上限は20000である。上記分子内にシロキサン結合及び重合性基を有する硬化性樹脂の官能基当量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が、硬化時に適当な架橋密度となり、接着力が強くなる。上記分子内にシロキサン結合及び重合性基を有する硬化性樹脂の官能基当量のより好ましい下限は300、より好ましい上限は15000である。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤及び/又は熱硬化剤を含有する。
上記重合開始剤及び熱硬化剤は、上記分子内にシロキサン結合及び重合性基を有する硬化性樹脂の重合性基の種類、及び、得られる硬化性樹脂組成物の用途に応じて適宜選択される。
例えば、上記重合性基が、エポキシ基、オキセタニル基、及び、ビニルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種である場合、上記熱硬化剤、及び/又は、上記重合開始剤として、カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。また、上記重合性基が、(メタ)アクリロイル基である場合、上記重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0020】
上記カチオン重合開始剤としては、加熱によりプロトン酸又はルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生する光カチオン重合開始剤等が挙げられる。
・・・中略・・・
【0025】
上記熱硬化剤としては、例えば、ヒドラジド化合物、イミダゾール誘導体、酸無水物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、変性脂肪族ポリアミン、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
・・・中略・・・
【0029】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系光化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、アゾ系化合物、ジアゾ系化合物、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
上記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、p-アミノベンゾフェノン、p,p’-ジメチルアミノベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。
上記アセトフェノン系化合物としては、例えば、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
上記ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
上記アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
上記ジアゾ系化合物としては、例えば、ジアゾアミノベンゼン等が挙げられる。
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
また、その他の上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、4,4’-ジアジドスチルベン-p-フェニレンビスアジド、アシルホスフィンオキサイド、ジフェニルエタンジオン、カンファーキノン、アントラキノン、ミヒラーケトン等が挙げられる。なかでも、溶解性が高いことから、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(市販されているものとしては、例えば、IRUGACURE184(BASF社製))が好ましい。これらの光ラジカル重合開始剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
・・・中略・・・
【0031】
本発明の硬化性樹脂組成物は、外周シール剤等の用途に用いる場合、本発明の目的を阻害しない範囲で無機充填剤を含有してもよい。
・・・中略・・・
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物の粘度は特に限定されないが、コーンローター式粘度計を用いて、25℃、2.5rpmの条件で測定した粘度の好ましい下限は10mPa・s、好ましい上限は100万mPa・sである。粘度がこの範囲である本発明の硬化性樹脂組成物は、塗工性に優れるものとなる。上記重合性組成物の粘度のより好ましい下限は100mPa・s、より好ましい上限は50万mPa・sである。
【0035】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化後の硬化物は、レーザー光を照射されることにより表面にSiO2層からなるバリア膜を形成する。
本発明の硬化性樹脂組成物を光照射及び/又は加熱により硬化させ、硬化物を得る工程、及び、上記硬化物の表面にレーザー光を照射し、上記硬化物の表面をSiO2変性させる工程を有するバリア膜の形成方法もまた、本発明の1つである。
【0036】
上記硬化物を得る工程において、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させる方法としては、用いた重合開始剤や熱硬化剤の種類に応じて、加熱する方法や光照射する方法が適宜選択される。
・・・中略・・・
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物を光照射により硬化させる際の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザー、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置、LEDランプ等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。これらの光源は、上記光カチオン重合開始剤や上記光ラジカル重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
・・・中略・・・
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物を、2枚の防湿性基材の少なくとも一方の周辺又は全面に塗布する工程、上記2枚の防湿性基材を、塗布した上記硬化性樹脂組成物及び被保護物を介して貼り合わせる工程、上記硬化性樹脂組成物を光照射及び/又は加熱により硬化させ、硬化物を得る工程、及び、上記硬化物の表面にレーザー光を照射し、上記硬化物の表面をSiO2変性してバリア膜を得る工程を有するデバイスの封止方法もまた、本発明の1つである。
また、本発明の硬化性樹脂組成物を、被保護物の周囲に塗布する工程、塗布した上記硬化性樹脂組成物を光照射及び/又は加熱により硬化させ、硬化物を得る工程、及び、上記硬化物の表面にレーザー光を照射し、上記硬化物の表面をSiO2変性してバリア膜を得る工程を有するデバイスの封止方法もまた、本発明の1つである。
以下、これらのデバイスの封止方法を併せて「本発明の封止方法」ともいう。
【0046】
本発明の封止方法において、本発明の硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、スリットコート等の方法を用いることができる。
・・・中略・・・
【0050】
本発明の封止方法において、本発明の硬化性樹脂組成物によって保護される上記被保護物としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子や有機薄膜太陽電池素子等の有機薄膜素子、発光ダイオード、半導体、真空管等が挙げられる。
【0051】
本発明の封止方法において、上記レーザー光は、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物の表面、即ち、外気と触れる部分に照射される。そのため、外気と触れる部分にSiO2層からなるバリア膜が形成され、本発明の硬化性樹脂組成物によって封止された被保護物を、水蒸気や酸素等の気体から充分に保護することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、硬化後にレーザー光を照射することにより、水蒸気や酸素等の気体のバリア性、及び、耐衝撃性に優れるバリア膜を形成できる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物を用いてなるバリア膜の形成方法及びデバイスの封止方法を提供することができる。」
イ 「【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0054】
続きを表示(全42行)
(実施例1)
(硬化性樹脂組成物の作製)
分子内にシロキサン結合及び重合性基としてエポキシ基を有する硬化性樹脂としてエポキシ系変性シリコーン樹脂(信越シリコーン社製、「KF-102」、式(1)におけるR1、R2、R3がメチル基、R4が式(2-2)で表される基(R5はエチレン基)、mが20、nが0、官能基当量が3600である硬化性樹脂)100重量部、重合開始剤として光カチオン重合開始剤(ADEKA社製、「アデカオプトマーSP170」)2重量部、及び、球状の無機充填剤としてシリカ粒子(日本アエロジル社製、「RX-200」)10重量部を混合し、ホモディスパー型攪拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、攪拌速度3000rpmで均一に攪拌混合して、硬化性樹脂組成物を作製した。
【0055】
水分のバリア性を調べるために以下の方法でカルシウムテスト用封止体を作製した。該カルシウムテストは、カルシウム金属が水分により酸化物となり白色になる性質を有することを利用するものである。
【0056】
(カルシウム蒸着)
ガラス基板(長さ25mm、幅25mm、厚さ0.7mm)を10mm×10mmの角型にくりぬいたマスクとともに真空蒸着装置の基板フォルダに固定し、素焼きの坩堝にカルシウム金属200mgを入れ、真空蒸着装置の真空チャンバー内を1×10-4Paまで減圧した。その後、カルシウム金属の入った坩堝を加熱し、ガラス基板上に金属カルシウムを20Å/sの速度で0.1μmの厚みに成膜した。窒素により蒸着器内を常圧に戻し、10mm×10mmの領域に金属カルシウムが蒸着されたガラス基板を取り出した。
【0057】
(基板貼り合わせ)
乾燥窒素中で、金属カルシウムが蒸着されたガラス基板の周辺部に、作製した硬化性樹脂組成物をディスペンスし、もう1枚のガラス基板(長さ25mm、幅25mm、厚さ0.7mm)を、金属カルシウムを挟持するように真空で貼り合せた後、超高圧水銀ランプにて波長365nm、積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射し、次いで、80℃で30分間加熱して硬化性樹脂組成物を硬化させた。
【0058】
(レーザー照射)
貼り合わせたガラス基板を真空ポンプ及び酸素ガスを供給するバルブが接続された密閉容器内に配置した。密閉容器内を4×10-5Torrに減圧し、次いで、密閉容器内の酸素ガス圧が10-1Torrとなるよう酸素ガス供給バルブから酸素ガスを供給した。その後、水晶で形成された密閉容器の入射窓よりArFレーザー装置でエネルギー密度10J/cm2のArFエキシマレーザーを、貼り合わせたガラス基板の側面から硬化性樹脂組成物の硬化物の外気と触れる部分に照射し、封止体を作製した。
【0059】
(実施例2)
分子内にシロキサン結合及び重合性基としてメタクリロイル基を有する硬化性樹脂としてメタクリル系変性シリコーン樹脂(信越シリコーン社製、「X-22-164E」、式(1)におけるR1、R2、R3がメチル基、R4が式(2-5)で表される基(R5はプロピレン基、R8はメチル基)、mが50、nが0、官能基当量3900である硬化性樹脂)100重量部、重合開始剤として光ラジカル重合開始剤(BASF社製、「IRGACURE184」)2重量部、及び、球状の無機充填剤としてシリカ粒子(日本アエロジル社製、「RX-200」)10重量部を混合し、ホモディスパー型攪拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、攪拌速度3000rpmで均一に攪拌混合して、硬化性樹脂組成物を作製した。
作製した硬化性樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止体を作製した。
【0060】
(実施例3)
エポキシ系変性シリコーン樹脂に代えて、分子内にシロキサン結合及び重合性基としてオキセタニル基を有する硬化性樹脂としてオキセタン変性シリケート樹脂(東亞合成社製、「OXT-191」、式(1)におけるR1、R2、R3が式(2-3)で表される基(R6はエチレン基)、mが5、nが0、官能基当量が3600である硬化性樹脂)100重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物を作製した。
作製した硬化性樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止体を作製した。
【0061】
(比較例1)
エポキシ系変性シリコーン樹脂に代えて、分子内にシロキサン結合を有しない樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「jER 828」)100重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物を作製した。
作製した硬化性樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止体を作製した。
【0062】
(参考例1)
実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物を作製した。
実施例1と同様にして「(カルシウム蒸着)」及び「(基板貼り合わせ)」を行い、「(レーザー照射)」を行わずに封止体を作製した。
【0063】
<評価>
(バリア性)
実施例、比較例及び参考例で得られた封止体を85℃、85%RHの環境下で100時間暴露した後のカルシウム金属の状態を観察した。カルシウム部分に変化がなかった場合を「○」、カルシウム部分に白色の変化がみられた場合を「×」としてバリア性を評価した。結果を表1に示した。
【0064】
【表1】
[図:0001381451000005.jpg]
」

(当合議体注:【表1】は、90度右回転し、縦横比を変更して掲記した。)

(2) 引用発明1

上記(1)によれば、引用文献1の【0012】~【0017】、【0050】、【0059】及び【0064】【表1】には、実施例2として、硬化性樹脂組成物が記載されている。そして、引用文献1の【0050】、【0052】及び【0059】等の記載によれば、当該硬化性樹脂組成物は、硬化させて、有機エレクトロルミネッセンス素子等のデバイスを被保護物とする封止方法に用いられるものと理解される。

ところで、引用文献1の【0059】には、上記硬化性樹脂組成物に含まれる「メタクリル系変性シリコーン樹脂」について、「信越シリコーン社製、「X-22-164E」、式(1)におけるR1、R2、R3がメチル基」「である硬化性樹脂」(下線は当合議体で付与したものであり、式(1)及び式(2-5)は下記のものである。)と記載されているが、信越シリコーン製の製品である「X-22-164E」は、(側鎖型、片末端型、側鎖両末端型のいずれでもない)両末端型のメタクリル系変性シリコーン樹脂であることからみて、上記下線部の記載は、少なくとも、「R2、R3が式(2-5)で表される基」の誤記であると解される。

(当合議体注:このことは、例えば、製品カタログ「信越シリコーン 反応性・非反応性 変性シリコーンオイル」の4頁及び特開2014-189760号公報の【0061】~【0063】等からも確認できる事項である。)

[図:0001381451000006.jpg]

[図:0001381451000007.jpg]

以上総合すると、引用文献1には、次の硬化性樹脂組成物の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「分子内にシロキサン結合及び重合性基としてメタクリロイル基を有する硬化性樹脂としてメタクリル系変性シリコーン樹脂(「X-22-164E」、式(1)におけるR1がメチル基、R2、R3、R4が式(2-5)で表される基(R5はプロピレン基、R8はメチル基)、mが50、nが0、官能基当量3900である硬化性樹脂)100重量部、重合開始剤として光ラジカル重合開始剤(「IRGACURE184」)2重量部、及び、球状の無機充填剤としてシリカ粒子(「RX-200」)10重量部を混合し、均一に攪拌混合して、作製したものであって、
硬化させて、有機エレクトロルネッセンス素子等のデバイスを被保護物とする封止方法に用いられる、
硬化性樹脂組成物。
ここで、式(1)及び式(2-5)は以下のものである。
[図:0001381451000008.jpg]
[図:0001381451000009.jpg]
」

2 引用文献2の記載及び引用発明2

(1) 引用文献2の記載

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(米国特許出願公開第2013/0236681号明細書)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。

なお、下線は、当合議体が引用発明の認定及び判断等で活用した箇所を示す。

ア 「
[図:0001381451000010.jpg]
」

(参考訳:「 背景

【0002】1.分野

【0003】実施形態は、光硬化性組成物、これと同じものを含むバリア層、および、これと同じものを含む封止された装置に関するものである。」)

イ 「
[図:0001381451000011.jpg]
[図:0001381451000012.jpg]
[図:0001381451000013.jpg]
[図:0001381451000014.jpg]
」

(参考訳:「 概要

【0006】実施形態は、光硬化性モノマーとシリコーン含有モノマーまたはそのオリゴマーとを含む光硬化性組成物を対象とするもので、シリコーン含有モノマーは、(化1)で表される。

(化1)

[図:0001381451000015.jpg]

【0007】(化1)において、X1およびX2は同じであっても異なっていてもよく、O、S、N-HまたはN-R’であってもよく、R’は、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基であってもよい。R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、単結合、置換もしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルエーテル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルスルフィド基、置換もしくは非置換の炭素原子数6~30のアリーレン基、置換もしくは非置換の炭素原子数7~30のアリールアルキレン基、または、置換もしくは非置換の炭素原子数1~20のアルコキシレン基であってもよい。Y1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6は、同じであっても異なっていてもよく、水素、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルエーテル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のジアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルスルフィド基、置換もしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルコキシレン基、または、(化2)もしくは(化3)で表される化合物であってもよい。

(化2)

[図:0001381451000016.jpg]

(化3)

[図:0001381451000017.jpg]

ここで、*は、(化1)におけるSiの結合サイトを表す。R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、同じであっても異なっていてもよく、水素、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルエーテル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のジアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルスルフィド基、置換もしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または、置換もしくは非置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基であってもよい。X3は、O、S、N-HまたはN-R’であってもよい。R’は置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基であってもよい。Z1およびZ2は、同じであっても異なっていてもよく、(化4)で表される化合物である。

(化4)

[図:0001381451000018.jpg]

ここで、*は(化1)のR1またはR2の結合サイトを表し、R8は水素、または、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキル基であってもよい。nは整数であってもよく、nは0~約30、または、nの平均値は約30以下である。」)

(当合議体注:R9はR8の誤記であるため、参考訳では修正した。また、【化1】は(化1)に統一した。他の化学式を表す記号についても同様である。)

ウ 「
[図:0001381451000019.jpg]
・・・
[図:0001381451000020.jpg]
続きを表示(全15行)
・・・
[図:0001381451000021.jpg]
[図:0001381451000022.jpg]
[図:0001381451000023.jpg]
・・・
[図:0001381451000024.jpg]
・・・
[図:0001381451000025.jpg]
・・・
[図:0001381451000026.jpg]
」

(参考訳:「

【0036】一実施形態は、(A)光硬化性モノマーと、(B)シリコーン含有モノマーまたはそのオリゴマーとを含む光硬化性組成物に関する。

(A)光硬化性モノマー

【0037】一実施形態において、光硬化性モノマーとは、シリコーンを含まない非シリコーンタイプの光硬化性モノマーのことである。光硬化性モノマーは、例えば、(メタ)アクリレート基、ビニル基などの光硬化性官能基を1つまたは2つ以上有していてもよい。

・・・中略・・・

(B)シリコーン含有モノマーまたはそのオリゴマー

・・・中略・・・

【0046】一実施形態において、シリコーン含有モノマーは、(化1)で表されてもよい。

(化1)

[図:0001381451000027.jpg]

【0047】(化1)において、X1およびX2は同じであっても異なっていてもよく、O、S、N-HまたはN-R’であってもよく、R’は、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基であってもよい。R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、単結合、置換もしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルエーテル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルスルフィド基、置換もしくは非置換の炭素原子数6~30のアリーレン基、置換もしくは非置換の炭素原子数7~30のアリールアルキレン基、または、置換もしくは非置換の炭素原子数1~20のアルコキシレン基であってもよい。Y1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6は、同じであっても異なっていてもよく、水素、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルエーテル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のジアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルスルフィド基、置換もしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルコキシレン基、または、(化2)もしくは(化3)で表される化合物であってもよい。

(化2)

[図:0001381451000028.jpg]

(化3)

[図:0001381451000029.jpg]

【0048】ここで、*は、(化1)におけるSiの結合サイトを表す。R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、同じであっても異なっていてもよく、水素、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルエーテル基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のジアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキルスルフィド基、置換もしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または、置換もしくは非置換の炭素原子数7~30のアリールアルキル基であってもよい。X3は、O、S、N-HまたはN-R’であってもよい。R’は置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基であってもよい。Z1およびZ2は、同じであっても異なっていてもよく、(化4)で表される化合物であってもよい。

(化4)

[図:0001381451000030.jpg]

【0049】ここで、*は(化1)におけるR1またはR2の結合サイトを表し、R9は水素、または、置換もしくは非置換の炭素原子数1~30のアルキル基であってもよい。nは0~約30の整数であってもよく、または、nの平均値は約0~約30であってもよい。この範囲内であれば、組成物を硬化した後の水蒸気透過速度やアウトガス発生量を低くすることができる可能性があり、光硬化率を高くすることができる。実施にあたり、nは、0~約15、例えば、0~約10であってもよい。

・・・中略・・・

【0058】この組成物は、さらに反応開始剤を含んでいてもよい。

(C)反応開始剤

【0059】反応開始剤としては、光硬化反応を引き起こす、好適な光重合反応開始剤を用いてもよい。例えば、光重合反応開始剤は、トリアジン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ベンゾイン、亜リン酸、オキシム系反応開始剤などから選択される1つまたは2つ以上を含んでいてもよい。

・・・中略・・・

【0071】実施にあたり、光硬化性組成物は、フレキシブルディスプレイ装置の密閉または封止に使用される有機バリア層を形成するために使用されてもよい。

・・・中略・・・

【0074】バリア層は、光硬化性組成物の硬化物を含んでいてもよい。」)

エ 「
[図:0001381451000031.jpg]
[図:0001381451000032.jpg]
[図:0001381451000033.jpg]
続きを表示(全11行)
[図:0001381451000034.jpg]
[図:0001381451000035.jpg]
・・・
[図:0001381451000036.jpg]
[図:0001381451000037.jpg]
[図:0001381451000038.jpg]
」

(参考訳:「【0102】図1は、一実施形態に係る封止された装置の断面を示す図である。

【0103】図1において、封止された装置100は、基板10と、基板10上の装置の部材20と、装置の部材20上に形成され、無機バリア層31および有機バリア層32を含むバリアスタック30とを含んでもよく、ここでは、無機バリア層31が装置20の部材20に接触している。

(当合議体注:「装置20」は、「装置100」の誤記である。)

【0104】図2は、別の実施形態に係る封止された装置の断面を示す図である。

【0105】図2において、封止された装置200は、基板10と、基板10上の装置の部材20と、装置の部材20上に形成され、無機バリア層31および有機バリア層32を含むバリアスタック32とを含み、ここでは、無機バリア層31は、装置の部材が収められている内部空間40を封止してもよい。

【0106】図1および図2は、単一の無機バリア層と単一の有機バリア層が形成された構造を示す。しかしながら、無機バリア層および有機バリア層は、複数回堆積させてもよい。さらに、無機バリア層および有機バリア層を含む複合バリア層の側部および/または上部に、シール材および/または基板(図1および図2には示さず)がさらに形成されていてもよい。

【0107】装置は、好適な方法で製造することができる。例えば、基板上にデバイスを配置し、その上に無機バリア層を形成してもよい。光硬化性組成物が、スピンコート、スリットコートなどにより約1μm~約5μmの厚さに塗布されていてもよく、これに光を照射して有機バリア層を形成してもよい。無機バリア層および有機バリア層の形成を、例えば、10回以下だけ繰り返し実施してもよい。

【0108】一実施形態において、封止された装置の例として、有機発光ダイオードを含む有機発光ディスプレイ、液晶ディスプレイ、太陽電池などを挙げることができる。

【0109】以下の例および比較例は、1つまたは2つ以上の実施形態の特徴を強調するために提示されるが、例および比較例は、実施形態の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、また比較例は、実施形態の範囲外であると解釈されるべきではないことが理解されるであろう。さらに、実施形態は、例および比較例に記載された特定の詳細な説明に限定されないことが理解されるであろう。

【0110】例および比較例で使用する要素の詳細は以下の通りである。

【0111】(A)光硬化性モノマー:(A1)ヘキシルアクリレート、(A2)ヘキサンジオールジアクリレート、(A3)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、(A4)トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート(アルドリッチ)

【0112】

(B)シリコーン含有モノマー:(B1)1,3-ビス(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、(B2)1,3-ビス(3-メタクリロキシプロピル)テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン(ゲレスト)、(B3)X-22-164A(信越)((化5)で表されるモノマー。ここで、R1およびR2はプロピレン基(-CH2CH2CH2-)であり、Z1およびZ2はメタクリレート基であり、nの平均値は6である)。

(化5)

[図:0001381451000039.jpg]

(C)反応開始剤:ダロキュアTPO(BASF AG)

例および比較例

【0113】(A)光硬化性モノマー、(B)シリーコン含有モノマー、および、(C)反応開始剤を、表2(単位:重量%)に列挙した量に従って125mlの褐色ポリプロピレン容器に入れ、シェーカーを用いて3時間混合し、組成物を調製した。

【実験例】

【0114】例および比較例で製造した組成物の物性を評価した。結果を表2に示す。

【0115】物性の評価

【0116】1.水蒸気透過速度:水蒸気透過速度試験装置(PERMATRAN-W 3/33、MOCON製)を用いた。光硬化性組成物をAl試料ホルダにスプレー塗布し、100mW/cm2の紫外線を10秒間照射して紫外線硬化させ、厚さ5μmの層を有する硬化試料を作製した。水蒸気透過速度は、水蒸気透過速度試験機(PERMATRAN-W 3/33、MOCON製)を用いて、37.8℃、100%RHで24時間、層厚5μmの条件で測定した。

【0117】2.有機バリア層のアウトガス発生量:光硬化性組成物をガラス基板上にスプレー塗布し、100mW/cm2の紫外線を10秒間照射して紫外線硬化させ、20cm×20cm×3μm(幅×長さ×厚さ)のサイズの有機バリア層試料を作製した。GC/MS試験装置(パーキンエルマーClarus600)を用いて、アウトガス発生量の測定を実施した。GC/MSにおいて、カラムとしてDB-5MSカラム(長さ30m、直径0.25mm、固定相の厚さ0.25μm)、移動相としてヘリウムガス(流量1.0mL/min、平均速度32cm/s)を用いた。さらに、スプリット比は20:1とし、温度が40℃で3分間保持され、10℃/分の速度で加熱され、その後、320℃で6分間保持されるように、温度条件を設定した。アウトガスの回収は、ガラスサイズ20cm×20cmに対して、回収容器としてテドラーバッグを用い、回収温度は90℃、回収時間は30分、流量300mL/分でN2パージを実施し、吸着剤としてテナックスGR(5%フェニルメチルポリシロキサン)を用いて実施した。検量線を、ノルマルヘキサンで希釈した濃度150ppm、400ppm、800ppmのトルエン溶液を標準溶液としてプロットしたところ、R2値0.9987が得られた。

・・・中略・・・

【0118】3.光硬化率:光硬化性組成物の吸収ピークの強度は、FT-IR(NICOLET 4700、Thermo)を用いて、1635cm-1(C=C)および1720cm-1(C=O)付近で測定した。まず、光硬化性組成物をガラス基板上にスプレー塗布し、次いで、100mW/cm2の紫外線を10秒間照射して紫外線硬化させ、20cm×20cm×3μm(幅×長さ×厚さ)のサイズの試料を作製した。硬化した膜を試料として切り出し、これを用いて、FT-IR(NICOLET 4700、Thermo)で1635cm-1(C=C)および1720cm-1(C=O)付近の吸収ピークの強度を測定した。光硬化率は、次に示す【数1】により算出した。

【数1】

光硬化率(%)=|1-(A/B)|×100

【0119】ここで、Aは、硬化膜の1635cm-1付近の吸収ピークの強度の1720cm-1付近の吸収ピークの強度に対する比であり、Bは、光硬化性組成物の1635cm-1付近の吸収ピークの強度の1720cm-1付近の吸収ピークの強度に対する比である。

表2

[図:0001381451000040.jpg]

」)

(当合議体注:便宜のため、上記表の縦横比を変更して掲記した。)

(2) 引用発明2

上記(1)によれば、引用文献2の【0113】~【0119】表2には、例8として、(A)光硬化性モノマー、(B)シリコーン含有モノマー、および、(C)反応開始剤を、表2(単位:重量%)に列挙した量に従って入れ、混合し、調製した、光硬化性組成物が記載されている。

ここで、表2の記載によれば、例8の光硬化性組成物は、(A1)、(A2)、(A3)、(B3)及びC)からなり、(A1)、(A2)、(A3)、(B3)及びC)は、それぞれ引用文献2の【0110】~【0112】に記載されたものである。

また、同文献の【0071】等の記載から、前記光硬化性組成物は、フレキシブルディスプレイ装置の密閉または封止に使用される有機バリア層を形成するために使用されることが想定されたものであると理解される。

以上によれば、引用文献2には、以下の光硬化性組成物の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「(A)光硬化性モノマー、(B)シリコーン含有モノマー、および、(C)反応開始剤を、混合し、調製した、光硬化性組成物であって、
使用する要素の詳細は、
(A)光硬化性モノマー:(A1)ヘキシルアクリレート、(A2)ヘキサンジオールジアクリレート、(A3)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、(B)シリコーン含有モノマー:(B3)X-22-164A(信越)((化5)で表されるモノマー。ここで、R1およびR2はプロピレン基(-CH2CH2CH2-)であり、Z1およびZ2はメタクリレート基であり、nの平均値は6である)及び(C)反応開始剤:ダロキュアTPO(BASF AG)
(化5)
[図:0001381451000041.jpg]
であり、
フレキシブルディスプレイ装置の密閉または封止に使用される有機バリア層を形成するために使用される、
光硬化性組成物。」

3 引用発明1を主引用発明とした場合

(1) 対比

本願発明と引用発明1を対比すると、以下のとおりとなる。

ア 重合開始剤及び/又は熱硬化剤

引用発明1の「光ラジカル重合開始剤(「IRGACURE184」)」は、重合開始剤の一種である。

(当合議体注:本件出願の明細書の【0030】及び【0046】の記載からみても明らかである。)

そうしてみると、引用発明1の「光ラジカル重合開始剤(「IRGACURE184」)」は、本願発明において「重合開始剤及び/又は熱硬化剤」とされる、「重合開始剤」に相当する。

イ 硬化性樹脂

引用発明1の「硬化性樹脂」は、その文言上の意味及び役割からみて、本願発明の「硬化性樹脂」に相当する。

また、引用発明1の「硬化性樹脂」(「X-22-164E」)は、「分子内にシロキサン結合及び重合性基としてメタクリロイル基を有する」「式(1)におけるR1がメチル基、R2、R3、R4が式(2-5)で表される基(R5はプロピレン基、R8はメチル基)、mが50、nが0、官能基当量3900である硬化性樹脂」である。

(当合議体注:引用発明1における「式(1)」及び「式(2-5)」は、上記「第2 1(2) 」に示したとおりである。)

上記構造から、引用発明1の「硬化性樹脂」は、本願発明の「硬化性樹脂」における「式(1)」及び「式(2-4)」(式(1)及び式(2-4)は、以下のものである。)において、

[図:0001381451000042.jpg]

[図:0001381451000043.jpg]

「R1」が、メチル基(本願発明の「炭素数1~10のアルキル基」に相当)であって、

「X1、X2」が、上記「式(2-4)」で表され、R2がプロピレン基(本願発明の「炭素数1~6のアルキレン基」に相当)、R5がメチル基であって、「n」が、0である上記「式(1)」で表されるシリコーン化合物に該当する。

以上によれば、引用発明1の「硬化性樹脂」は、本願発明の「硬化性樹脂」における、「下記式(1)で表されるシリコーン化合物を含有する」「式(1)中、R1は、炭素数1~10のアルキル基を表し、X1、X2は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、又は、下記式(2-4)で表される基を表し、X3は、下記式(2-4)で表される基を表す。」「nは、0であり、X1及びX2のうち少なくとも一方は、下記式(2-4)で表される基を表す。式(2-4)中、R2は、結合手又は炭素数1~6のアルキレン基を表し、R5は、水素又はメチル基を表す。」との要件を満たす。

ウ 封止剤

引用発明1の「硬化性樹脂組成物」は、「分子内にシロキサン結合及び重合性基としてメタクリロイル基を有する硬化性樹脂としてメタクリル系変性シリコーン樹脂」「100重量部、重合開始剤として光ラジカル重合開始剤(「IRGACURE184」)2重量部、及び、球状の無機充填剤としてシリカ粒子」「10重量部を混合し、均一に攪拌混合して、作製したものであって、硬化させて、有機エレクトロルネッセンス素子等のデバイスを被保護物とする封止方法に用いられる」。

上記用途からみて、引用発明1の「硬化性樹脂組成物」は、本願発明の「電子デバイス用封止剤」に相当する。

そして、上記ア~イの対比結果及びその組成からみて、引用発明1の「硬化性樹脂組成物」は、本願発明の「電子デバイス用封止剤」における、「硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有し」という要件を満たす。

(2) 一致点及び相違点

ア 一致点

本願発明と引用発明1は、次の構成で一致する。

「硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する、電子デバイス用封止剤であって、

前記硬化性樹脂は、下記式(1)で表されるシリコーン化合物を含有することを特徴とする電子デバイス用封止剤。

式(1)中、R1は、炭素数1~10のアルキル基を表し、X1、X2は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、又は、下記式(2-4)で表される基を表し、X3は、下記式(2-4)で表される基を表す。nは、0であり、X1及びX2のうち少なくとも一方は、下記式(2-4)で表される基を表す。

式(2-4)中、R2は、結合手又は炭素数1~6のアルキレン基を表し、R5は、水素又はメチル基を表す。

[図:0001381451000044.jpg]

[図:0001381451000045.jpg]

イ 相違点

本願発明と引用発明1は、次の点で相違する。

(ア)相違点1

「電子デバイス用封止剤」が、本願発明は、「インクジェット法による塗布に用いられるインクジェット塗布用電子デバイス用封止剤であ」るのに対して、引用発明1は、このように特定されたものではない点。

(イ)相違点2

「式(1)で表されるシリコーン化合物」が、本願発明では、「式(1)」において「mは、0~5の整数であ」る化合物とされているのに対して、引用発明1では、「mが50」である化合物とされている点。

(3) 判断

技術的関連性に鑑み、相違点1及び2をまとめて検討する。

引用文献1の【0046】には、「本発明の封止方法において、本発明の硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、スリットコート等の方法を用いることができる。」と記載されている。

上記記載に接した当業者は、引用発明1の硬化性樹脂組成物を用いてデバイスの封止を行うに際し、インクジェット印刷の使用(相違点1に係る構成の採用)を試みると考えられる。

ところで、当業者は、先の出願当時の技術常識として、以下の事項を心得ている。

[A]インクジェット印刷に供されるインク(組成物)に対しては、低粘度であることが一般的に求められること。

[B]インク(組成物)を低粘度にする方法として、インクの主成分として分子量が小さいものを用いること。(例えば、特開2005-187596号公報(【請求項1】、【0006】~【0007】及び【0039】)及び特開2008-37898号公報(【請求項1】、【0016】及び【0020】)等を参照。)

[C]両末端型のメタクリル変性シリコーンオイルにおいては、シロキサン分子鎖が短いほど(分子量が小さいほど)低粘度であること(例えば、信越化学工業株式会社の製品カタログ,「信越シリコーン 反応性・非反応性 変性シリコーンオイル」4頁の一番下の表を参照。)

加えて、引用発明1の「式(1)」で表される「メタクリル系変性シリコーン樹脂」に該当するものであって、m=4かつn=0であるオルガノシロキサン(引用文献3の【0093】~【0094】及び【0097】【表1】(実施例8))、m=0かつn=0であるシリコーンモノマー(引用文献4の【0021】【表1】(1)の「TSL9705」)やシリコーン含有モノマー(引用文献2の【0112】に記載された「(B1)1,3-ビス(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン)」)は、いずれも先の出願当時において、当業者が入手可能であり、電子デバイス用封止剤の硬化性樹脂としての用途も知られていたと認められる。

そうしてみると、引用発明1の「硬化性樹脂組成物」を用いた封止において、インクジェット印刷の使用を試みる際に、上記技術常識を熟知した当業者が、メタクリル変性シリコーン樹脂としての「X-22-164E」に替えて、先の出願当時に入手可能であった、より低分子量かつ低粘度のメタクリル変性シリコーン樹脂(本願発明の相違点2に係る化合物に相当)を採用してみることは容易に想到し得たことである。

4 引用発明2を主引用発明とした場合

(1) 対比

ア 重合開始剤及び/又は熱硬化剤

引用発明2の「反応開始剤:ダロキュアTPO(BASF AG)」は、技術的にみて、重合開始剤の一種である。

そうしてみると、引用発明2の「反応開始剤:ダロキュアTPO(BASF AG)」は、本願発明において「重合開始剤及び/又は熱硬化剤」とされる、「重合開始剤」に相当する。

イ 硬化性樹脂

引用発明2の「(B3)X-22-164A(信越)」は、構造及び機能からみて、本願発明の「硬化性樹脂」に相当する。

また、引用発明2の「(B3)X-22-164A(信越)」は、「(化5)で表されるモノマー。ここで、R1およびR2はプロピレン基(-CH2CH2CH2-)であり、Z1およびZ2はメタクリレート基であり、nの平均値は6である」。

(当合議体注:引用発明2における「(化5)」は、上記「第2 2(2) 」に示したとおりである。)

上記構造から、引用発明2の「(B3)X-22-164A(信越)」は、本願発明の「硬化性樹脂」における「式(1)」及び「式(2-4)」(式(1)及び式(2-4)は、以下のものである。)において、

[図:0001381451000046.jpg]

[図:0001381451000047.jpg]

「R1」が、メチル基(本願発明の「炭素数1~10のアルキル基」に相当)であって、

「X1、X2」が、「式(2-4)」で表され、R2が「プロピレン基(-CH2CH2CH2-)であり」(本願発明の「炭素数1~6のアルキレン基」に相当)、R5がメチル基であって、mの平均値は6、nは0であり、その側鎖には、「式(2-4)で表される基」は存在しない、「式(1)」で表されるシリコーン化合物に該当する。

以上によれば、引用発明2の「(B3)X-22-164A(信越)」は、本願発明の「硬化性樹脂」における、「下記式(1)で表されるシリコーン化合物を含有する」「式(1)中、R1は、炭素数1~10のアルキル基を表し、X1、X2は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、又は、下記式(2-4)で表される基を表し、X3は、下記式(2-4)で表される基を表す。」「nは、0であり、X1及びX2のうち少なくとも一方は、下記式(2-4)で表される基を表す。式(2-4)中、R2は、結合手又は炭素数1~6のアルキレン基を表し、R5は、水素又はメチル基を表す。」との要件を満たす。

ウ 封止剤

引用発明2の「光硬化性組成物」は、「(A)光硬化性モノマー、(B)シリコーン含有モノマー、および、(C)反応開始剤を、混合し、調製した、光硬化性組成物であって、

使用する要素の詳細は、

(A)光硬化性モノマー:(A1)ヘキシルアクリレート、(A2)ヘキサンジオールジアクリレート、(A3)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、(B)シリコーン含有モノマー:(B3)X-22-164A(信越)」「及び(C)反応開始剤:ダロキュアTPO(BASF AG)」「であり、フレキシブルディスプレイ装置の密閉または封止に使用される有機バリア層を形成するために使用される」。

上記用途及びその組成からみて、引用発明2の「光硬化性組成物」は、本願発明の「電子デバイス用封止剤」に相当する。

そして、上記ア~イの対比結果及び組成から、引用発明の「光硬化性組成物」は、本願発明の「電子デバイス用封止剤」における、「硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有し」という要件を満たす。

(2) 一致点及び相違点

ア 一致点

本願発明と引用発明2は、次の構成で一致する。

「硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する、電子デバイス用封止剤であって、
前記硬化性樹脂は、下記式(1)で表されるシリコーン化合物を含有することを特徴とする電子デバイス用封止剤。
式(1)中、R1は、炭素数1~10のアルキル基を表し、X1、X2は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、又は、下記式(2-4)で表される基を表し、X3は、下記式(2-4)で表される基を表す。nは、0であり、X1及びX2のうち少なくとも一方は、下記式(2-4)で表される基を表す。
式(2-4)中、R2は、結合手又は炭素数1~6のアルキレン基を表し、R5は、水素又はメチル基を表す。」

イ 相違点

本願発明と引用発明2は、次の点で相違する。

(ア)相違点1’

「電子デバイス用封止剤」が、本願発明は、「インクジェット法による塗布に用いられるインクジェット塗布用電子デバイス用封止剤であ」るのに対して、引用発明2は、このように特定されたものではない点。

(イ)相違点2’

「式(1)で表されるシリコーン化合物」が、本願発明では、「式(1)」において「mは、0~5の整数であ」る化合物とされているのに対して、引用発明2では、「nの平均値は6である」点。

(当合議体注:引用発明2の「n」は、本願発明の「m」に相当する。)

(3) 判断

相違点1’及び 2’について、まとめて検討する。

引用発明2の「光硬化性組成物」は、ジメチルシロキサン骨格を主鎖とするシリコーン化合物を主成分とする電子デバイス用封止剤である点で、引用発明1の「硬化性樹脂組成物」と共通する。

そして、上記「3(3)」で述べたとおり、引用文献1の【0046】には、「本発明の封止方法において、本発明の硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、スリットコート等の方法を用いることができる。」と記載されている。

してみると、当業者は、引用発明2の「光硬化性組成物」を用いてデバイスの封止を行うに際し、インクジェット印刷の使用を試みる(相違点1’に係る本願発明の構成を採用する)と考えられる。

さらに、引用発明1の「式(1)」で表される「シリコーン含有モノマー」に該当するものであって、m=0かつn=0であるもの(例えば、引用文献2の【0112】に記載された「(B1)1,3-ビス(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン」等)は、先の出願当時において、当業者が入手可能であり、電子デバイス用封止剤の硬化性樹脂としての用途も知られていたと認められる。(上記「3(3)」参照。)

そうすると、上記「3(3)」で述べた理由と同様の理由により、引用発明2の「光硬化性組成物」を用いた封止において、インクジェット印刷の使用を試みる際に、当業者が、「(B)シリコーン含有モノマー」としての「(B3)X-22-164A(信越)」に代えて、先の出願当時に入手可能であった、より低分子量かつ低粘度のシリコーン含有モノマー(本願発明の相違点2’に係る化合物に相当)を採用することは容易に想到し得たことである。

5 本願発明の効果について

本件出願の明細書には、発明の効果に関して、明示の記載はないが、【0011】及び【0124】の記載からみて、その効果は、「インクジェット法により容易に塗布することができ、かつ、インクジェット装置のダメージを低減できる電子デバイス用封止剤を提供すること」ができることと一応認められる。

しかしながら、上記効果は、上記技術常識を熟知する当業者が、引用発明1又は引用発明2から容易に想到し得る構成(封止剤)が奏する効果であって、当業者が予測可能な範囲にとどまるものであって、格別顕著なものでもない。

あるいは、次のように考えることもできる。

本願発明は、「式(1)で表されるシリコーン化合物」の配合量を何ら特定していない発明である。そうすると、例えば、本件出願の明細書の【0123】【表2】に記載された比較例4において、「1,6-ヘキサンジオールジアクリレート」(100質量部)のうち、きわめて少量を「X-22-164」に変更してなる電子デバイス用封止剤が、本件出願の明細書の【0116】に記載された、「接着剤片の膨潤性(装置ダメージ)」の評価において「○」以上の結果が得られるとは必ずしもいえない。

したがって、上記効果(特に、装置ダメージの点)は、本願発明が必ずしも奏する効果とはいえない。

6 請求人の主張について

審判請求人は、令和3年1月6日の審判請求書において、引用文献1~4のいずれにも上記効果及び評価について何ら示唆されていない点を指摘する。また、同請求書の5頁では、「引用文献1又は2に記載された発明において、本願における式(1)のmが範囲外である化合物(「X-22-164E」や「X-22-164A」)に代えて、単に引用文献3、4の実施例の一部に記載されただけの化合物を用いる動機付けとなる記載は、これらの引用文献にはなく、本願発明は、各引用文献からは予測できない顕著な効果を奏するものであると言えます。」と主張する。

しかしながら、上記主張については、上記「3(3)」や上記「4(3)」に示したとおりであって、採用の限りでない。

7 小括

本願発明は、引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-000192

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