商標異議申立
2020-900280
ヒハチ
- 審判番号
- 2020-900280
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2020-020112
- 登録番号
- 6280832
- 請求日
- 2020年10月28日
- 審決日
- 2021年06月23日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】有限会社B.BRUTE
- 【権利者代理人】小川 清
- 【異議申立人】株式会社 日立製作所
- 【異議申立人代理人】特許業務法人第一国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 冨澤 美加
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 庄司 美和
- 分類
- T1651.271-Z (W11)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項15号商標法43条の3第2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条、商標法第43条の3第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6280832号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6280832号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6280832号商標(以下「本件商標」という。)は、「hihachi」の欧文字を標準文字で表してなり、令和2年2月25日に登録出願、第11類「業務用暖冷房装置,家庭用電気火鉢,家庭用電熱用品類,家庭用加熱器(電気式のものを除く。),家庭用調理台,家庭用流し台,火鉢,ストーブ類(電気式のものを除く。)」を指定商品として、同年7月29日に登録査定され、同年8月14日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、以下のとおりの登録商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)であり、いずれも現に有効に存続している。
(1)登録第433710号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「HITACHI」
登録出願日:昭和27年12月26日
設定登録日:昭和28年10月29日
最新更新登録日:平成25年8月6日
書換登録日:平成16年12月15日
指定商品:第9類「電信機,電話機,開閉器,電流制限器,電流制御器,抵抗器,電気炉電極,電鈴,真空管,X線管,電池,蓄電器,被覆電線」、第10類「電気医療器」、第11類「電気炉,電気カーペット,電気がま,電気こんろ,電気暖房器,電気布団,電気湯沸かし器,白熱電球,アーク灯,電球類及び照明器具用の炭素棒,懐中電灯」、第17類「電気絶縁材料」
(2)登録第617079号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「HITACHI」
登録出願日:昭和37年3月3日
設定登録日:昭和38年6月12日
最新更新登録日:平成25年4月2日
書換登録日:平成16年6月16日
指定商品:第6類「金庫,金属製建具,金属製靴ぬぐいマット,金属製立て看板,金属製の可搬式家庭用温室,金属製の墓標及び墓碑用銘板」、第11類「火鉢類」、第14類「貴金属製宝石箱,貴金属製の花瓶及び水盤,記念カップ,記念たて」、第16類「紙製テーブルクロス」、第17類「農業用プラスチックフィルム」、第19類「建具(金属製のものを除く。),灯ろう,可搬式家庭用温室(金属製のものを除く。),墓標及び墓碑用銘板(金属製のものを除く。)」、第20類「家具,屋内用ブラインド,すだれ,装飾用ビーズカーテン,つい立て,びょうぶ,ベンチ,アドバルーン,木製又はプラスチック製の立て看板,食品見本模型,人工池,葬祭用具」、第21類「花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉」、第22類「日よけ,雨覆い,天幕,日覆い,よしず」、第24類「織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕」、第26類「造花の花輪」、第27類「畳類,敷物,壁掛け(織物製のものを除く。),人工芝」、第31類「生花の花輪」
(3)登録第836099号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「HITACHI」
登録出願日:昭和38年11月30日
設定登録日:昭和44年10月29日
最新更新登録日:令和元年6月4日
書換登録日:平成21年8月26日
指定商品:第11類「扇風機」
(4)登録第984592号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「HITACHI」
登録出願日:昭和43年7月24日
設定登録日:昭和47年10月11日
最新更新登録日:平成24年8月7日
書換登録日:平成15年8月13日
指定商品:別掲1のとおり
(5)登録第1698222号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:「HITACHI」
登録出願日:昭和52年3月25日
設定登録日:昭和59年6月21日
最新更新登録日:平成26年2月25日
書換登録日:平成18年6月28日
指定商品:別掲2のとおり
(6)登録第4670241号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:「HITACHI」
登録出願日:平成14年1月9日
設定登録日:平成15年5月9日
最新更新登録日:平成25年3月5日
指定商品・役務:別掲3のとおり
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
本件商標は、「hihachi」の文字を標準文字で表してなるところ、同じ書体、同じ大きさをもって、全体として一連にまとまりよく一体的に表されているものであって、一般の辞書等に掲載がないことから、一種の造語というべきものである(甲1)。
そうすると、本件商標は、全体として一体的に看取されるものであり、「ヒハチ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標は、上記2のとおり、いずれも「HITACHI」の文字をゴシック体で横書きしてなるところ、全体として一連にまとまりよく一体的に表されているものであって、我が国においては、申立人のハウスマーク及び申立人グループ会社の冠ブランド名として、著名なものである(後記(2)参照)。
そうすると、引用商標は、「ヒタチ」の称呼を生じ、「申立人及びそのグループ会社に係るブランド」の観念を生じる。
ウ 本件商標と引用商標との類否
(ア)外観
本件商標と引用商標とは、いずれも7文字で表され「hi(HI)」と「achi(ACHI)」の6文字のつづりを共通にし、3文字目において「h」と「T」の文字の差異を有する点、及び本件商標が欧文字の小文字で表されているのに対し、引用商標は欧文字の大文字で表されている点において相違する。
しかしながら、両商標は6文字を共通にし、「h」と「T」の文字の差異が取引者、需要者の印象に残り難い中間に位置するものであって、かつ、欧文字の小文字と大文字で表されている点についても、両商標はいずれも一般的に用いられている字体であり、取引者、需要者の注意をひく特徴を有しないものであるから、両商標は、外観が極めて近似する。
(イ)称呼
本件商標から生じる「ヒハチ」の称呼と引用商標から生じる「ヒタチ」の称呼とは、いずれも3音で構成され、「ハ」と「夕」の差異音を有するものの、当該差異音は取引者、需要者の印象に残り難い中間に位置するものであり、かつ、母音「a」を共通にすることからすると、それぞれを一連に称呼した場合には、全体の語調、語感が近似したものとなり、互いに聞き誤るおそれがあるというべきである。
(ウ)観念
本件商標は、特定の観念が生じないから、引用商標とは比較することができないものである。
(エ)指定商品・指定役務について
本件商標の指定商品である第11類「業務用暖冷房装置,家庭用電気火鉢,家庭用電熱用品類,家庭用加熱器(電気式のものを除く。),家庭用調理台,家庭用流し台,火鉢,ストーブ類(電気式のものを除く。)」は、引用商標の指定商品中の以下の商品と同一又は類似する。
引用商標1:第11類「電気カーベット,電気がま,電気こんろ,電気暖房器,電気布団,電気湯沸かし器」(11A06)
引用商標2:第11類「火鉢類」(20A02)
引用商標3:第11類「扇風機」(11A06)
引用商標4:第11類「加熱器,調理台,バーベキューグリル,流し台」(19A02)
引用商標5:第11類「暖冷房装置,冷凍機械器具」(09E11)
引用商標6:第11類「暖冷房装置,家庭用電熱用品類,加熱器,調理台,流し台,火鉢類」(09E11、11A06、11A07、19A02、20A02)
エ その他
申立人は、引用商標のほかにも、本件商標の指定商品と指定商品及び指定役務が抵触する「HITACHI」の文字と他の要素を組み合わせた商標、「日立」や「ヒタチ」の文字を構成中に用いた登録商標を有している(甲8)。
オ 小括
以上よりすると、本件商標と引用商標とは、観念上、比較することができず、外観が極めて近似し、称呼も近似することを踏まえれば、両商標は相紛れるおそれのある類似の商標というべきあって、両商標の指定商品も同一又は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2) 商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人について
申立人は、1910年に創業した総合電機メーカーであり、創業当初から発電機などの国産化を目指して電機メーカーとして発展してきた。1924年には国産初の大型電気機関車を完成、1932年には電気冷蔵庫1号を完成、1942年には国産電子顕微鏡第1号製品を完成させるなどした。また、1950年代からコンピューターの開発に着手し、1960年代には他社に先駆けてコンピューター事業を本格化し、1965年には国産コンピューター「HITAC5020システム」、1975年には大型コンピューター「HITAC Mシリーズ」を完成させるなどした。結果、我が国を代表する電機メーカーとなった(甲9、甲10)。
申立人の2018年度の売上収益は9兆4,806億円、従業員数は約30万人、子会社は803社(国内181社、海外622社)に及ぶ(甲9)。申立人の2018年度(決定注:「2019年度」の誤記と思われる。)の売上高は、我が国の会社で第9位であり、電気機器メーカーとしては第1位である。
したがって、申立人及びそのグループ会社は、我が国有数の企業である(甲11、甲12)。
現在の申立人及びそのグループ会社の業務範囲は、非常に広範囲に及んでいる。
申立人及びそのグループ会社は、成長分野として、IT(ITプロダクツ(ストレージ、サーバ)、システムインテグレーション、制御システム、クラウドサービス、ATM、ソフトウェア等)、エネルギー(エネルギーソリューション等)、インダストリー(産業・流通システム、水・環境システム、産業用機器)、モビリティ(ビルシステム(エレベーター、エスカレーター、ビルサービス)、鉄道システム)、ライフ(医療機器、生活・エコシステム(冷蔵庫、洗濯機、ルームエアコン、業務用空調機器)、オートモティブシステム(パワートレインシステム、シャシーシステム、先進運転支援システム)を提供しているほか、その他の製品サービスとして、医用・サイエンス製品、分析機器、半導体製造装置、製造・検査装置、先端産業部材、油圧ショベル、ホールローダ、マイニング機械、土木施工ソリューション、鉱山運行管理システム、特殊鋼製品、素形材製品、磁性材料、パワーエレクトロニクス、電線材料、機能材料(電子材料、配線板材料、電子部品)、先端部品・システム(モビリティ部材、蓄電デバイス、ライフサイエンス関連製品)、光ディスクドライブ、不動産管理・売買・賃貸等を提供している(甲9)。
イ 引用商標の著名性
(ア)申立人及びそのグループ会社は、我が国において、遅くとも1950年代より「HITACHI」の欧文字からなる商標(当該「HITACHI」の欧文字からなる商標は、引用商標と同じく欧文字の大文字で「HITACHI」と書してなるものであるから、以下、合わせて「引用商標」と表記する。)を様々な商品及び役務について使用を開始しており、以降、現在に至るまで、申立人のハウスマーク及び申立人グループ会社の冠ブランド名として、その業務に係る商品・役務について継続して使用している。
(イ)申立人及び申立人グループの業務に係る商品は、2020年において、業務用エアコン(業務用冷暖房装置)の分野で業界シェアが第3位、家庭用エアコンのランキングでは第20位までに3つ機器がランクイン(2位、12位、18位)、及び冷蔵庫・洗濯機ほか白物家電の売れ筋ランクインでは3位、4位、10位、14位、17位にランキングされている(甲15~甲17)。
また、家電売上ランキング(2018年~2019年)において18位、売上高は4,850億円にのぼる(甲18)。
(ウ)申立人及びそのグループ会社は、以下のとおり、申立人及びそのグループ会社に係る商品及び役務の宣伝広告をしている。
a テレビ広告
申立人及びそのグループ会社は、多くのテレビCMを放送しており、その冒頭に引用商標を表示している(甲21の1~甲21の3)。
b 新聞による広告
申立人及びそのグループ会社は、例えば、日本経済新聞に2015年から2018年にかけて総計25回の広告を掲載している。
c 商品カタログ
申立人及びそのグループ会社が製作するカタログ等には、必ずその表紙に「HITACHI」の文字を表示している(甲14)。
d プロサッカークラブのメインスポンサー
申立人及び申立人グループ会社は、プロサッカークラブ「柏レイソル」のメインスポンサーである。そして、当該プロサッカークラブの歴代のユニホームには、当初から現在に至るまで、その胸元部分に引用商標が表示されている(甲23~甲25)。
(エ)申立人に係る防護標章登録
申立人は、「HITACHI」の文字を含む防護標章登録を有している(甲26)。
なお、申立人の有する防護標章登録中、登録第433710号の防護標章登録番号第8号及び第18号には、それぞれ、第11類「火鉢類」及び「加熱器,調理台,流し台」が含まれ、本件商標の指定商品と同一又は類似のものが含まれている(甲27、甲28)。
(オ)以上のとおり、引用商標は、申立人のハウスマーク及び申立人グループ会社の冠ブランド名として、非常に幅広い商品・役務について使用されており、我が国において著名であることは明らかである。
ウ 混同を生ずるおそれの有無
(ア)本件商標と引用商標の類否
引用商標は、欧文字の大文字で「HITACHI」と書してなるものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、上記(1)のとおり、観念上、比較することができないものであって、外観上、極めて近似し、称呼も近似することを踏まえれば、両商標の類似性は高いというべきである。
(イ)引用商標の周知著名性及び独創性の程度
引用商標は、申立人のハウスマーク及び申立人グループ会社の冠ブランド名として、我が国において著名であることは明らかである。
遅くとも1950年代より、「HITACHI」の欧文字を申立人及び申立人グループ会社が一貫して使用してきたことを踏まえれば、引用商標は、相当程度独創性の高いものというべきである。
(ウ)本件商標の指定商品と申立人及び申立人グループ会社の業務に係る商品等との関連性の程度
本件商標は、上記1のとおり、その指定商品を第11類「業務用暖冷房装置,家庭用電気火鉢,家庭用電熱用品類,家庭用加熱器(電気式のものを除く。),家庭用調理台,家庭用流し台,火鉢,ストーブ類(電気式のものを除く。)」とするものである。
一方、申立人及びそのグループ会社は、総合電機メーカーとしての技術を基礎として幅広い事業を行い、現在、引用商標を使用し、本件商標の指定商品を含め、幅広い分野の事業を行っている。
以上よりすると、本件商標の指定商品と申立人及びそのグループ会社の業務に係る商品は、共通するものを含むものであるから、両者に密接な関連性があることは明らかである。
(エ)商品の取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品中「業務用暖冷房装置」は一般のオフィス等に設置されるものであって、また、同じく指定商品中「家庭用電気火鉢,家庭用電熱用品類,家庭用加熱器(電気式のものを除く。),家庭用調理台,家庭用流し台,火鉢,ストーブ類(電気式のものを除く。)」は家庭用のものであるから、一般需要者を対象としている商品である。
一方、申立人及びそのグループ会社の業務に係る商品は、一般需要者を対象としている商品を多く含むから、本件商標の指定商品と申立人及びそのグループ会社の業務に係る商品とは、その取引者、需要者において共通する。
エ 小括
上記認定のとおり、引用商標は、申立人のハウスマーク及び申立人グループ会社の冠ブランド名として、本件商標の指定商品を含め、幅広い商品・役務について使用されており、我が国において著名なものである。
そして、本件商標は、引用商標と類似性の高い商標であること、引用商標が相当程度独創性の高い商標であること、本件商標の指定商品は申立人及び申立人グループ会社の業務に係る商品と共通するもの並びに関連性の高い商品であること、また、その需要者もともに一般需要者であることなどを併せ考慮すると、本件商標をその指定商品について使用するときは、その取引者、需要者に引用商標を想起、連想させ、当該商品が、申立人及び申立人グループ会社との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信され、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、「本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。」旨の取消理由を令和3年4月28日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。
5 商標権者の意見
商標権者は、上記4の取消理由に対する意見を要旨以下のように述べた。
(1)上記4の通知書には、本件商標と引用商標とは、「いずれも同じ文字数で構成されている中で、語頭部分の『hi』と『HI』及び後半部分における『achi』と『ACIHI』(決定注:『ACHI』の誤記と思われる。)の計6文字のつづりを共通にする」と記載があるが、「つづり」とは、「文字の並び、スペリング、スペル、文字の並べ方」をいうのであり、これらは大文字と小文字のつづりであって異なるものであるから、上記の通知書に記載された内容は誤りである。
(2)本件商標は英小文字、引用商標は英大文字で表されているから、本件商標と引用商標の外観は全く異なるものである。
(3)日立製作所は、多数の商品、広告に登録商標を付しているが、その使用している商標は、全て英大文字の「HITACHI」であって、英小文字の「hitachi」を使用している例は皆無である。
消費者の頭の中には、英大文字「HITACHI」の商標が付してあるものが日立製作所の商品、広告であるとの認識、判断が染み付いているから、「hitachi」の文字を見た場合に、その商品が日立製作所の商品であると判断することはあり得ない。
「hitachi」のマークを付した商品ですら、消費者には日立製作所の商品とは判断されないことからすれば、文字が違う本件商標の英小文字商標「hihachi」を付した商品が、日立製作所の商品であると消費者が連想、想起することはあり得ない。
(4)まとめ
以上からすれば、本件商標は、引用商標と出所の混同を生じるものではないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
6 当審の判断
(1)商標法4条1項15号について
商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は、当該商標をその指定商品等に使用したときに、当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ、すなわち、いわゆる広義の混同を生ずるおそれがある商標をも包含するものであり、同号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の関連性の程度、取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。
(2)引用商標の周知著名性について
ア 申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人は、1910年に創業した総合電機メーカーであり、申立人及びそのグループ会社の2018年度の売上収益は9兆4,806億円、従業員数は約30万人、子会社は803社(国内181社、海外622社)に及んでいる(甲9)。
また、申立人及びそのグループ会社の業務に係る商品は、「Strainer」のウェブサイトにおける2019年電気機器売上高ランキングにおいて第1位(甲12)、「業界動向サーチ」のウェブサイトにおける家電業界の売上高ランキング(2018年-2019年)においては第18位(甲18)に位置している。また、「Strainer」のウェブサイトにおける、2019年の我が国の企業における売上高ランキングでは第9位となっている(甲11)。
(イ)創業以来、申立人及びそのグループ会社は、例えば、電動機、変圧器、発電機、電気機関車、東海道新幹線用電車、原子力発電設備、電子顕微鏡、全自動洗濯機、冷蔵庫やルームエアコンなどの家電製品、電子計算機、大型コンピューター(スーパーコンピューター)、大容量ファイル記憶装置、銀行オンラインシステム、新幹線運転管理システム等、数多くの分野の商品・役務の開発を手がけ、現在においては、例えば、IT事業として、ITプロダクツ(ストレージ、サーバ)、システムインテグレーション、制御システム、クラウドサービス、ATM、ソフトウェア等)の提供、エネルギー事業として、太陽光発電所(メガソーラー)及び高電圧絶縁開閉装置等のエネルギーソリューション等の提供)、インダストリー事業として、産業・流通システム、海水淡水化RO(Reverse Osmosis;逆浸透)システム等の水・環境システムの提供、産業用機器等の提供、モビリティ事業として、ビルシステム(エレベーター、エスカレーター、ビルサービス)、鉄道システムの提供、及びライフ事業として、粒子線治療システム等の医療機器、生活・エコシステム(冷蔵庫、洗濯機、ルームエアコン、業務用空調機器)、オートモティブシステム(パワートレインシステム(駆動装置)、シャシーシステム(運転支援システム)、自動ブレーキ装置や急発進防止装置などを含む先進運転支援システム)を提供している。また、その他の製品及び役務としては、医用・サイエンス製品、分析機器、半導体製造装置、製造・検査装置、先端産業部材、油圧ショベル、ホールローダ、マイニング機械、土木施工ソリューション、鉱山運行管理システム、特殊鋼製品、素形材製品、磁性材料、パワーエレクトロニクス(電力を変換するための技術)、電線材料、機能材料(電子材料、配線板材料、電子部品)、先端部品及びシステム(モビリティ部材、蓄電デバイス、ライフサイエンス関連製品)、光ディスクドライブ、不動産管理・売買・賃貸等を提供している(甲9、甲10、甲13)。
(ウ)申立人は、我が国において、遅くとも1950年代より、引用商標を各種商品・役務に使用しており、当該商標は、現在に至るまで、申立人及びそのグループ会社のブランド又はハウスマークとして、その業務に係る商品・役務について継続して使用されている(甲13、甲14)。
(エ)申立人及びそのグループ会社は、本件商標の登録出願前から、テレビCM、新聞による広告、商品カタログ等に引用商標を表示し、また、柏レイソルプロサッカークラブのメインスポンサーとなり、ユニホームに引用商標を表示している(甲21~甲25)。
イ 上記アによれば、申立人は、我が国で有数の総合電機メーカーであって、申立人及びそのグループ会社の取扱いに係る業務は、ルームエアコン、洗濯機、掃除機などを始めとする家電製品、業務用空調機器、医療機器、オートモティブシステム等のライフ事業、クラウドサービス、ATM、ソフトウェア等のIT事業、太陽光発電所(メガソーラー)等のエネルギー事業、産業・流通システム、水・環境システム等のインダストリー事業、ビルシステム、鉄道システム、またその他、医用・サイエンス製品、分析機器、半導体製造装置、製造・検査装置、先端産業部材、光ディスクドライブ、不動産管理・売買・賃貸等、多岐にわたっているといえる。
そして、引用商標は、本件商標の登録出願前から、現在に至るまで、申立人及びそのグループ会社のブランド又はハウスマークとして、その業務に係る商品及び役務に継続的に表示されている。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時前から、登録査定時はもとより現在においても継続して、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであり、周知著名性の程度は、極めて高いものというべきである。
(3)本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標は、上記1のとおり、「hihachi」の欧文字を標準文字で表してなるところ、引用商標である「HITACHI」とは、外観において、小文字と大文字の差異を有し、3文字目に位置する「h」と「T」の一文字のみ、つづりが相違するものの、いずれも7文字という同じ文字数で構成されている中で、語頭部分の「hi」と「HI」及び後半部分における「achi」と「ACHI」の計6文字のつづりを共通にするものであるから、外観において近似した印象を与える、相紛らわしいものといえる。
そうすると、本件商標と引用商標とは、比較的高い類似性を有するものであるというべきである。
(4)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、上記1のとおりであるところ、その指定商品中、「業務用暖冷房装置,家庭用電気火鉢,家庭用電熱用品類」は、総合電機メーカーである申立人の業務に係る商品と同一又は類似の商品であるから、極めて密接な関連性を有しており、両商品の需要者の範囲を共通にするものである。
(5)出所の混同を生ずるおそれ
上記(2)ないし(4)のとおり、引用商標は、申立人及びそのグループ会社のブランド又はハウスマークとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、一般に広く認識されていた著名な商標であって、本件商標と引用商標は比較的高い類似性を有するものであり、また、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とは、極めて密接な関連性を有し、その需要者を共通にするものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用した場合には、これに接する需要者は、引用商標を連想、想起して、当該商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
(6)小括
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(7)商標権者の主張について
ア 商標権者は、上記4の通知書には、本件商標と引用商標とは、「いずれも同じ文字数で構成されている中で、語頭部分の『hi』と『HI』及び後半部分における『achi』と『ACIHI』(決定注:『ACHI』の誤記と思われる。)の計6文字のつづりを共通にする」と記載があるが、「つづり」とは、「文字の並び、スペリング、スペル、文字の並べ方」をいうのであり、これらは大文字と小文字のつづりであって異なるものであるから、上記の通知書に記載された内容は誤りである旨、及び本件商標は小文字、引用商標は大文字で表されているから、本件商標と引用商標とは、外観は全く異なるものである旨主張している。
しかしながら、「つづり」の語については、「広辞苑(第7版)」(株式会社岩波書店)において、「つづり【綴り】・・・(3)(spelling)印欧語などの単語を構成する字母の配列」とあり、また、「字母」の語については、「じぼ【字母】 (1)仮名・梵字・ローマ字など、音を表記する母体となる字 (2)中国音韻学で、一つ一つの声母を表すのに用いる漢字をいう語。・・・通常36の字母を認める。」とあるところ、ローマ字における「つづり」とは、音を表記する母体となる字の配列を意味する語であると解される。
そうすると、本件商標は小文字、引用商標は大文字で表されているとしても、いずれも7文字という同じ文字数で構成されている中で、3文字目に位置する「h」と「T」の一文字のみ、つづりが相違するものの、それ以外の残りのすべて6文字のつづりを共通にするものであるから、本件商標と引用商標は、外観において近似した印象を与える、相紛らわしいものというべきであって、本件商標と引用商標とは、比較的高い類似性を有するものであること、上記(3)のとおりである。
イ 商標権者は、日立製作所は、多数の商品、広告に登録商標を付しているが、その使用している商標は、全て英大文字の「HITACHI」であって、小文字の「hitachi」を使用している例は皆無であるところ、消費者の頭の中には、大文字「HITACHI」の商標が付してあるものが日立製作所の商品、広告であるとの認識、判断が染み付いているから、「hitachi」の文字を見た場合に、その商品が日立製作所の商品であると判断することはあり得ないことからすれば、文字の違う本件商標の小文字商標「hihachi」を付した商品が、日立製作所の商品であると消費者が連想、想起することはあり得ない旨主張する。
しかしながら、本件商標は小文字、引用商標は大文字で表されており、また、両者は3文字目に位置する「h」と「T」の一文字のつづりが相違するものの、いずれも7文字という同じ文字数で構成されている中で、語頭部分の「hi」と「HI」及び後半部分における「achi」と「ACHI」の計6文字のつづりを共通にするものであること、上記(3)のとおりであるし、さらに、両者は共に態様上の特徴が認められない普通に用いられる書体で表されていることに加え、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、デザイン化したりすることが一般的に行われていることを考慮すれば、両者は比較的高い類似性を有するというべきである。そして、上記(2)のとおり、引用商標は、申立人及びそのグループ会社のブランド又はハウスマークとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、一般に広く認識されていた著名な商標であり、また、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とは、極めて密接な関連性を有し、その需要者を共通にするものであること、上記(4)のとおりである。
以上からすれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用した場合には、これに接する需要者は、引用商標を連想、想起して、当該商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきであること、上記(5)のとおりである。
なお、商標権者は、消費者が「hitachi」の文字を見た場合に、その商品が日立製作所の商品であると判断することはあり得ないことからすれば、「hihachi」の文字を付した商品が、日立製作所の商品であると消費者が連想、想起することはあり得ない旨主張しているが、当該主張を裏付ける証拠は提出されていない。
ウ 小括
したがって、商標権者の主張は、いずれも採用することはできない。
(8)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は、同項の規定に違反してされたものと認められるから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-900280