商標異議申立
2020-900276
オメコ
- 審判番号
- 2020-900276
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2019-139810
- 登録番号
- 6277280
- 請求日
- 2020年10月26日
- 審決日
- 2021年12月14日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社OMECO
- 【権利者代理人】藤本 英二
- 【権利者代理人】金 順雅
- 【異議申立人】オメガ・エス アー(オメガ・アーゲー)(オメガ・リミテッド)
- 【異議申立人代理人】田中 克郎
- 【異議申立人代理人】稲葉 良幸
- 【異議申立人代理人】大江 修子
- 【異議申立人代理人】廣中 健
- 【異議申立人代理人】小林 奈央
- 【異議申立人代理人】関川 淳子
- 審判長/審判官
- 審判長 平澤 芳行
- 審判官 半田 正人
- 審判官 鈴木 雅也
- 分類
- T1651.22 -Z (W14) / T1651.271-Z (W14)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の3第2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第19号、商標法第1条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6277280号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて, 次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6277280号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6277280号商標(以下「本件商標」という。)は,「OMECO」の欧文字を別掲1のとおり横書きしてなり,令和元年10月31日に登録出願,第14類「時計」を指定商品として,同2年7月10日に登録査定,同年8月5日に設定登録されたものである。
なお,本件商標の商標登録出願人は「株式会社Gerard」であったが,設定登録後,令和3年1月13日受付の登録名義人の表示変更申請により,「株式会社OMECO」が商標権者となった。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件登録異議申立ての理由において引用する登録商標(以下の引用商標1ないし5をまとめて「引用商標」という。)は,以下のとおりであり,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 国際登録第765501号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
国際商標登録出願日:2001年(平成13年)9月24日
優先権主張:Switzerland 2001年(平成13年)5月1日
設定登録日:平成14年9月27日
指定商品:第14類「Bijouterie, precious stones; horological and chronometric instruments.」
2 登録第409366号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:昭和25年12月7日
設定登録日:昭和27年3月7日
書換登録日:平成15年4月9日
指定商品:第14類「時計,時計の部品及び付属品」
3 国際登録第771475号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
国際商標登録出願日:2001年(平成13年)7月23日
優先権主張:Switzerland 2001年(平成13年)5月1日
設定登録日:平成14年12月13日
指定商品:第14類「Precious stones; horological and chronometric instruments.」
4 国際登録第1255609号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
国際商標登録出願日(事後指定):2018年(平成30年)1月9日
設定登録日:平成31年4月19日
指定商品:第9類「Spectacles, sunglasses, magnifying glasses; frames and chains for spectacles and sunglasses; cases for spectacles, sunglasses and magnifying glasses; batteries, cells, chargers, power adapters.」及び第14類「Timepieces and chronometric instruments as well as parts and accessories for the aforesaid goods, watch chains, presentation cases for timepieces, cases for timepieces.」
5 登録第6254912号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成30年11月20日
設定登録日:令和2年5月28日
指定商品・役務:第9類,第14類,第28類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきである旨申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は,商標公報記載のとおり,「OMECO」の欧文字を横書きに表してなる商標であるところ,該文字は,女性器の俗称「オメコ」(おめこ)をアルファベットで表記したものであり,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような商標に該当するものである。その上,本件商標に用いられた字体は,申立人の著名な引用商標2ないし引用商標5の「OMEGA」の文字部分に使用されている字体とほぼ同一であって,本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用される商標であるから,本件商標は,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的に加え,申立人の名声を害する意図をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたものといわざるを得ず,その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,その登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべきである。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は,その出願日前の商標登録出願に係る申立人の引用商標1に類似する商標であって,その指定商品と同一又は類似の商品について使用される商標である。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は,申立人が,申立人の社名及びその製造販売に係る腕時計をはじめとする時計及びその他の精密機器並びに宝飾品等について長年にわたり我が国及び世界の多数の国々で使用した結果,世界的な周知著名性を獲得した申立人の引用商標「OMEGA」に類似し,その指定商品も互いに同一又は類似するものであるから,本件商標をその指定商品に使用するときは,これに接する取引者,需要者は,申立人及び申立人の業務に係る商品を連想,想起し,あたかも申立人又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の取り扱う業務に係る商品であるかのごとく誤って認識する可能性が極めて高く,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は,申立人の商標として世界的に著名な「OMEGA」に類似する商標であって,本件商標権者は,申立人の著名商標に化体した高い信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)することによって不当な利益を得ると共に,その名声を毀損させるという,極めて不正な目的をもって,本件商標を採択・出願し登録を受け,使用していることが明らかである。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
第4 取消理由の通知(要旨)
当審において,本件商標権者に対し,本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定に基づいて,取り消すべきものである旨の取消理由を令和3年7月30日付けで通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
第5 本件商標権者の意見
本件商標権者は,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないと主張し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標との類似の程度
ア 外観,呼称について
引用商標2ないし引用商標5は,欧文字の「OMEGA」の上段にギリシャ文字「Ω」のマークがあり,上段に何らのマークもない本件商標とは外観上異なる。
また,引用商標1,引用商標2ないし引用商標5の「OMEGA」の欧文字部分と本件商標を対比しても「OME」の文字は共通であるが,文字数の5分の2を占める「GA」と「CO」の外観において明確に区別し得る。
さらに,引用商標1の呼称(オメガ),引用商標2ないし引用商標5の「OMEGA」の欧文字部分の呼称(オメガ)と本件商標の呼称(オメコ)は,呼称の前半の「オメ」を共通とするものの,「ガ」と「コ」は母音も異なり,前者が濁音であるのに対し後者はそうでない。その上,どちらも呼称が3音以下の少数音であるため,「ガ」と「コ」の差異が全体の呼称に及ぼす影響が大きく,全体の音感も異なる。
イ 観念が大きく異なること
取消理由通知書では,本件商標について,「『オメコ』の呼称を生じるところ,当該呼称『女陰の異名。また,男女の交合をいう。』(「精選版日本国語大辞典」株式会社小学館。),『俗に,女陰の称』(「大辞林」株式会社三省堂)を意味する『おめこ』の語に通じるものであって,他に異なる意味合いを生じるような文字構成ではないから,これに接する需要者に女性器あるいは男女の性交を連想,想起させるものである。」と示している。
これに対し,引用商標からは,ギリシャ文字の最終の文字又は外国の高級ブランドである申立人の商品の観念が生じる。
本件商標が需要者に女性器あるいは男女の性交を連想,想起させるものであるのならば,本件商標は,需要者が想起する観念が引用商標と大きく異なる。
ウ まとめ
以上のとおり,本件商標と引用商標は,呼称,外観において相違している上に観念が大きく異なる。
また,取消理由通知書を前提にすると,引用商標はギリシャ文字の最終の文字又は外国製の高級ブランドである申立人の商品の観念が生じるの対し,本件商標は「女陰の異名。また,男女の交合をいう。」(前掲書),「俗に,女陰の称」(前掲書)といった特定の観念を有するものである。このように意味・観念の全く異なる語にあっては,仮に呼称,外観の相違がわずかなものであっても,呼称,外観において容易に区別が可能であることは,日常の経験に照らしても明らかである。
(2)取引の実態について
申立人が製造販売する時計は店頭,インターネット等あらゆる販売形態により70万円を超える高価で販売されているのに対し,甲第14号証の1ないし甲第14号証の3の腕時計(以下,これらをまとめて「本件腕時計」という。)はインターネットのみで2万円以下の廉価で販売されており,取引の実態は全く異なる。
また,取消理由通知書での認定を前提とすると,本件腕時計は,女性器あるいは男女の性交を意味する俗語といった特定の観念をもつ本件商標を使用し,販売ページには本件商標以外に女性器を模したいわゆる「おめこマーク」様の円状図形及び「変態高級腕時計」の文字が共に表示されているなど(甲14の1~3),申立人が製造販売する時計とは指向性を全く異にするものであって,取引者や需要者が双方の商品を混同するとは到底考えられない。
さらに,申立人は,過去に販売されていたコレクションを含め,自ら製造販売する時計が紹介された多数の書籍,雑誌の記事等を証拠として提出しているが,これらの証拠にある時計は,いずれも上段にギリシャ文字の「Ω」(オメガ),下段に「OMEGA」の欧文字を二段に書してなる構成の商標が表示され,この構成以外の商標が表示された例はない。
(3)まとめ
本件商標の指定商品の第14類「時計」と申立人商品の「腕時計をはじめとする時計」は同一又は類似の商品であるが,時計は,100円で販売しているものから数千万円で販売する高級品も存在し,どこのブランドが製造販売しているかという点で機能や質感,価格が大きく異なる商品である。したがって,通常の日用品の需要者と異なり,時計の需要者は,その商品が自らの対象とするもので間違いないかそれなりの注意力をもって観察することが一般的である。
そして,本件商標は,申立人商品に必ず付されている「Ω」(オメガ)マークもなく,引用商標と呼称,外観において相違している上に観念が大きく異なる。また,女性器あるいは男女の性交を意味する俗語という特定の観念をもつ本件商標を,高級ブランドとして著名な申立人又は申立人と一定の緊密な営業上の関係若しくは申立人と同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主が商品に使用するとは需要者にとっても考えられない上,申立人が製造販売する時計と本件腕時計はその販売方法,価格などの取引実態,指向性も異なる。
以上の理由から,本件商標を「時計」に使用したときに,当該商品が申立人又は申立人と一定の緊密な営業上の関係若しくは申立人と同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれはなく,本件商標は,「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号について
(1)本件商標の構成について
本件商標は平仮名や片仮名で書したものではなく,「OMECO」の欧文字を横書きに書したものである。仮に「オメコ」の呼称が女性器を示す俗語であったとしても,かかる俗語は日本国内で使用されているものである以上,一般的に平仮名や片仮名で表記されるものである。欧文字で表記された「OMECO」から,申立人のいうところの女性器が連想,想起されることはない。公序良俗に反する単語を用いた会社名は定めることができないとされているが(乙1),商標権者の「株式会社Gerard」から「株式会社OMECO」への会社名変更(乙2)が法務局からの指摘を受けることなく問題なく認められたことからも,欧文字で表記された「OMECO」から,女性器が連想,想起されることはないといえる。
したがって,欧文字で表記された「OMECO」から,女性器が連想,想起されることはない以上,本件商標の構成は,非道徳的,卑わい,差別的,矯激,若しくは他人に不快な印象を与えるような文字に該当しない。
(2)本件腕時計について
取消理由通知書では,本件腕時計が「SPEEDMASTER ムーンウォッチ プロフェッショナル」(甲15の1,2。以下「申立人腕時計」という。)と酷似した特徴を備え,本件腕時計と申立人腕時計が酷似していると認定しているが,以下のア及びイのとおり,本件腕時計と申立人腕時計は多岐にわたる相違点があり,全体的に比較した場合でも類似するものと認められない。
また,「スピードマスター プロフェッショナル」には多数のバージョンがあり,これらの商品間においては,ベゼルの色,ベゼル上の数字の内容,タキメーターの有無,タキメーターの設置された位置,「TACHYMETRE」の1つ目のEにグレイヴアクセントが付されているか否か,12時の位置のバーインデックスの下部両サイドに配された白色の小さな丸の有無,文字盤の外周に記載された分を表す目盛りの数(300分割で表示されているかそれ以外の分割数か),積算計の有無・数・位置,積算計内部の数字の内容,針の数,オメガマークや「OMEGA」の文字の位置,プッシュボタンの数,ケース,ベルトの形状・サイズ等の多岐にわたって相違点がみられる。バージョンの一つにすぎない甲第15号証の1及び甲第15号証の2の形態が「特別顕著性」,「周知性」を有しているか申立人の主張,証拠からは明らかにされていない以上,仮に本件腕時計と甲第15号証の1及び甲第15号証の2の腕時計に類似点があったとしても,スピードマスターのうちの一つにすぎない形態(甲15の1,2)との類似をもって,商標権者が不正な目的で本件商標を採択・出願し登録を受け,かつ使用しているということはできない。
なお,申立人は,商標権者に対し,2020年12月15日付け通知書(乙4),別途郵送した資料(乙5)にて,申立人が製造販売する乙第5号証の2枚目の左側の時計の外観と商標権者が製造販売する乙第5号証の2枚目の右側の時計の外観が酷似しているとの通知を行ったが,乙第5号証の2枚目の左側の時計のバージョンすら明らかにしておらず,スピードマスターのどのバージョンとの比較を主張しているかについていまだ明らかにしていない。
ア 「OMECO 潮FUKIMASTER」(甲14の2,3)との比較
・甲第14号証の2及び甲第14号証の3の本件腕時計(甲14の2,3。以下同じ。)の標章と申立人腕時計のマーク,標章の記載は全く異なるものであり類似しないこと,
・申立人腕時計では文字盤に「Speedmaster」の記載があるのに対し,本件腕時計では文字盤にそのような記載はなくそれとは異なる「潮fukimaster」との記載があること,
・申立人腕時計が手巻き式であるのに対し,本件腕時計は電池式であること,
・申立人腕時計のベゼルには275,250,225の表記があるが,本件腕時計にはこれらの記載はなく代わりに申立人腕時計にはない260,240,220の記載があること,
・申立人腕時計のケースサイズが42ミリメートルであるのに対し,本件腕時計のケースサイズが46ミリメートルであること,
・積算計の針を留めている中央部分のサイズが異なること,
・申立人腕時計の積算計の目盛りの表記が一部太字になっているのに対し,本件腕時計の腕時計の目盛りの表示のサイズは均一であること,
・申立人腕時計の重量が155グラムであるのに対し,本件腕時計の重量は128グラムであること,
・申立人腕時計にはリューズガードがあるのに対し,本件腕時計にはなくリューズが剥き出しの状態であること,
・申立人腕時計の文字盤の下部に「SWISS MADE」の記載があるのに対し,本件腕時計には当該記載がないこと,
・申立人腕時計と本件腕時計ではプッシュボタンのサイズが異なること,
・申立人腕時計のベルトのパーツが3コマに分かれているのに対し,本件時計は一体型となっておりベルトの形状自体も異なること,
・申立人腕時計ではベルトの中央のコマがクラスプ側に出る向きで繋げられているのに対し,本件腕時計ではベルトの両端のコマがクラスプ側に出るように構成されていること,
・ベゼル右上記載について,申立人腕時計は「TACHYMETRE」なのに対し,本件腕時計は「TACHIMETRE」であること,
・申立人腕時計と本件腕時計の裏蓋のデザインが全く別物であること,
イ 「OMECO 潮FUKIMASTER 極-KIWAMI」(甲14の1)との比較
・申立人腕時計の標章と甲第14号証の1の本件腕時計(甲14の1。以下同じ。)のマーク,標章の記載は全く異なるものであり類似しないこと,
・申立人腕時計では文字盤に「Speedmaster」の記載があるのに対し本件腕時計では文字盤にそのような記載はなくそれとは異なる「潮fukimaster」との記載があること,
・申立人腕時計の「Ω」マーク,「OMEGA」ロゴ,「Speedmaster」ロゴはいずれも同色であるのに対し,本件腕時計は「潮fukimaster」部分のみ赤色で漢字が含まれていること。また,申立人腕時計の「PROFESSIONAL」のフォントと,本件腕時計の「PROFESSIONAL」のフォントは明らかに違う形状であること,
・申立人腕時計が手巻き式であるのに対し,本件腕時計は電池式であること,
・申立人腕時計の文字盤の下部に「SWISS MADE」の記載があるのに対し,本件腕時計には当該記載がないこと,
・申立人腕時計のアワーマークはアワーマーク自体が蓄光になっているのに対し,本件腕時計はステンレスでアワーマークを設置し,その外側に丸い形状で蓄光をつけていること,
・ベルトのコマ連結部分について,申立人腕時計はねじ式であるのに対し,本件腕時計は割ピン式であること,
・申立人腕時計はケースのプッシュボタン部分が丸くプッシュボタンの形に囲まれているのに対し,本件腕時計は四角く切り取られていること,
・バックルの形状について,申立人腕時計は外側サイドに調整用の穴が2つついており,ロゴマークが立体であるのに対し,本件腕時計は外側サイドに穴はなく,ロゴがレーザー刻印されていること,
・申立人腕時計は内側の小さなコマが艶無しなのに対し,本件腕時計は艶ありになっていること,
・申立人腕時計のラグ幅は20ミリメートルなのに対し,本件腕時計は19ミリメートルであること。また,ラグ部分の縦の長さについては本件腕時計の方が長いこと,
・申立人腕時計のラグ取り付けパーツが凹型なのに対し,本件腕時計は凸型であること,
・針取り付け部について,申立人腕時計と本件腕時計を比べると本件腕時計の方が各針との取り付け部の大きさの差が少ないこと,
・申立人腕時計のうち甲第15号証の1の腕時計は小窓に溝がないのに対して,本件腕時計の小窓には溝があること。また,甲第15号証の2の腕時計は小窓に溝があるが,本件腕時計の方が溝が太く間隔が広いこと,
・ベゼル右上記載について,申立人腕時計は「TACHYMETRE」なのに対し,本件腕時計は「TACHIMETRE」であること。また,フォントの間隔が違うこと,
・申立人腕時計はケース裏面に刻印があるのに対し,本件腕時計には刻印がないこと。また,裏蓋のデザインも全く別物であること,
(3)以上のとおり,本件腕時計と申立人腕時計には複数の相違点があり,類似するものと認められない。また,上記1のとおり,本件商標と引用商標とは,外観においても呼称や観念においても異なるものであり,本件商標及び引用商標が同一又は類似の商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがないのであるから,本件商標が,引用商標の顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させ,又はその名声を毀損させるおそれがあるとか,そのような目的をもって出願されたということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標1は,外観,呼称,観念が異なるため,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号について
本件商標と引用商標の外観,呼称,観念は異なる。したがって,本件商標は,引用商標と「同一又は類似の商標」に当たらず,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
第6 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の提出した証拠及びその主張によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 申立人は,1848年,スイスにある時計産業の都市,ラ・ショー=ド=フォンにおいて,時計職人ルイ・ブランが自宅に時計工房を開設したことに始まり,スイスを代表する時計メーカーとなった(甲3の1~7)。
イ 「OMEGA(オメガ,Ω)」の名前は,1903年の社名変更の際,「ルイ・ブラン&フレールSAオメガ時計会社」と,申立人の社名に取り入れられ,それ以来現在に至るまで127年以上の間,申立人により継続して使用された(同上)。
ウ 1932年に米国ロサンゼルスで開かれた第10回オリンピック大会において,申立人は,史上初の「公式計時」(オフィシャルタイムキーパー)の役割を担った(甲3の1,3,7,10,甲7の98,135,139)。
エ 申立人の製造に係る腕時計は,アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士が月面で着用した唯一の腕時計としても広く知られている(甲3の1~12,甲5の1~4,甲7の2)。
オ 申立人は,1983年,世界最大の時計製造グループであるスウォッチ・グループの傘下に入り,スイス及びドイツの時計産業を代表する12のブランドの一つとして,時計宝飾ブランド部門に属し,各ブランドの2006年における申立人の売上高は,12ブランド中最多の13億2500万スイスフラン(約1470億円)であり,グループの時計売上全体の約3分の1を占めている(甲6の1,2)。また,世界の時計ブランド上位10社の概算売上高(2011年)をみると,申立人は,ロレックス,カルティエに続き,第3位の売上高22億3000万スイスフラン(約2480億円)である(同上)。
カ 引用商標を使用した申立人の腕時計は,本件商標の登録出願時である令和元年(2019年)10月31日及びその登録査定時である同2年(2020年)7月10日を含め,我が国において,長年にわたり,継続的に,多数の新聞,雑誌,各種刊行物,ウェブサイト等において報道,紹介されるに至っている(甲7の1~139)。また,継続的に新聞や雑誌等での広告活動が行われている(甲8の1~60)。
キ 引用商標を使用した申立人の腕時計は,我が国の需要者を対象とした2000年から2017年にかけて,各種ブランド調査ないしブランドランキングにおいて上位にランキングし,20代以上の働く男女から高い支持を得ている(甲7の28,130,甲9の1~8)。
ク 引用商標を構成する「OMEGA」の欧文字ないしその片仮名表記である「オメガ」の語は,我が国で発行されている一般的な辞書に「スイスのオメガ時計社の製品名」,「『商標』オメガ(スイスの時計メーカー)」と記載されている(甲10の1,2)。
(2)上記(1)によれば,引用商標は,1903年の社名変更以来,127年にわたりスイスに生産拠点を置く時計メーカーである申立人の名称,また同人が製造する腕時計の名称(商標)として使用され,引用商標を付した時計は,スイスを代表する製品として,オリンピックの公式計時やNASAの公式時計及び時計雑誌,業界誌,新聞記事等において取り上げられ,近時においても我が国の需要者において注目度の高い存在であり,また,一般的な辞書においても申立人の業務に係る製品を示す商標である旨記載されるに至っている。
そうすると,引用商標は,長年継続して使用された結果,本件商標の登録出願時には,申立人の業務に係る腕時計をはじめとする時計を表示するものとして,我が国の一般の取引者,需要者間においても広く認識されていたものであって,かつ,本件商標の登録査定時にもその著名性は継続していたものと認められ,加えて,その著名性の程度は極めて高いものであるというべきである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性
引用商標は,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,申立人の業務に係る腕時計をはじめとする時計(以下「申立人商品」という。)を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識されていたものであり,その著名性の程度は極めて高いものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標は,前記第1のとおり,「OMECO」の欧文字からなるところ,その構成文字は「フーツラ(Futura)」風の書体(「目的で探すフォント見本帳」株式会社ビー・エヌ・エヌ新社,「Font Style Book 2009」株式会社ワークスコーポレーション。以下同じ。)で統一されており,また,当該欧文字は,一般的な英語辞書等に掲載のない語であり,特定の語義を有しない欧文字からなる商標については,我が国において広く親しまれている英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから,その構成文字に相応して「オメコ」の称呼を生じるものである。
一方,引用商標は,前記第2のとおり,いずれも「OMEGA」の欧文字を有するもの(引用商標2ないし引用商標5の構成文字は「フーツラ(Futura)」風の書体(前掲書)で統一されている。)であるから,その構成文字に相応して「オメガ」の称呼を生じるものである。
そうすると,本件商標と引用商標は,ギリシャ文字「Ω」(オメガ)の有無において相違するものがあるとしても,外観においていずれも欧文字全体が5文字で構成される点において共通する上,語頭を含め「OME」の3文字までが共通し,4文字目の「C」と「G」は視覚上近似した文字であること,特に引用商標2ないし引用商標5とは書体も同一であること,また,称呼において3音中最初の2音である「オメ」も共通することから,両商標の類似性の程度は決して低いとはいえないものである。
(3)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性並びに商品の取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品の第14類「時計」と申立人商品の「腕時計をはじめとする時計」とは,同一又は類似の商品であって用途・目的・販売場所等を同じくし,商品の関連性は高いものであり,またその取引者及び需要者層も共通するものといえる。
(4)ハウスマークとしての使用
引用商標中の「OMEGA」の欧文字は,上記1のとおり,申立人の著名商標であると共に,1903年以来,申立人の社名として継続して用いられているものであり,申立人の著名なハウスマークといえる。
(5)出所の混同を生ずるおそれ
上記(1)のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人商品を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識されていたものであり,その著名性の程度は極めて高いものである。また,上記(2)のとおり,本件商標と引用商標とは,外観及び称呼において類似性の程度は決して低いとはいえないものである。
そして,上記(3)のとおり,本件商標の指定商品の「時計」と申立人商品の「腕時計をはじめとする時計」とは,同一又は類似の商品であって,その取引者及び需要者層も共通することなどを併せ考慮すれば,本件商標をその指定商品である第14類「時計」について使用する場合,これに接する取引者,需要者は,申立人のハウスマーク及びその製造販売に係る腕時計をはじめとする時計について高い周知著名性を獲得した申立人の引用商標を連想,想起するものといえるから,本件腕時計が申立人腕時計とは品質,価格,指向性等に違いがあるとしても,本件商標権者は引用商標の存在を承知の上で,それと極めて近似した商標を登録出願したものであり,引用商標の周知性へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や稀釈化(いわゆるダイリューション)を意図していたものといわざるを得ず,本件商標を使用した商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し,その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(6)小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号の趣旨
商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれかある商標」には,a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号,同18年9月20日判決参照)。
かかる観点から,本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであるか否かについて,以下に検討する。
(2)本件商標の称呼について
本件商標は,前記第1のとおり,「OMECO」の欧文字を横書きしてなり,その構成文字に相応して「オメコ」の称呼を生じるところ,当該称呼は「女陰の異名。また,男女の交合をいう。」(前掲書),「俗に,女陰の称」(前掲書)を意味する「おめこ」の語に通じるものであって,他に異なる意味合いを生じるような文字構成ではないから,これに接する需要者に女性器あるいは男女の性交を連想,想起させるものである。
そうすると,本件商標は,その称呼が女性器あるいは男女の性交を意味する俗語を連想,想起させ,卑わいな印象を与えるような商標といえる。
(3)引用商標の周知著名性について
さらに,上記1のとおり,申立人がスイスを代表する時計メーカーとして著名であること及び引用商標が申立人の業務に係る腕時計ないし時計を表示する商標として取引者,需要者の間に広く認識されていることを考慮すると,本件商標権者が引用商標ないし申立人の存在を知らなかったものとはいい難く,本件商標の構成文字が引用商標2ないし引用商標5と同一の「フーツラ(futura)」風の書体が採択されている事実もそのことを裏付けるものである。
そして,引用商標の著名性が極めて高いこと,本件商標と引用商標の類似性の程度は決して低いとはいえないこと,本件商標の指定商品は「時計」であり申立人商品との関連性は高いこと等に照らせば,本件商標をその指定商品について使用する場合には,需要者に引用商標を強く連想,想起させるものあって,本件腕時計と申立人腕時計が品質,価格,指向性等で異なるとしても,商品の出所について混同を生じるおそれがあることを否定することはできない。
(4)本件商標権者のウェブサイト及び職権調査について
ア 2019年(令和元年)10月25日付け「SankeiBis」のウェブサイトにおいて,「全裸監督モデルの村西とおるが完全プロデュースしたオリジナル腕時計『OMECO駅弁マスター』が予約販売を開始!」の見出しの下,「株式会社Gerard(本社:東京都台東区,:決定注:本件商標の商標登録出願人)は,Netflixで話題の全裸監督のモデル 村西とおるに完全プロデュースを依頼した完全オリジナル腕時計ブランド『OMECO』第3弾として『OMECO駅弁マスター』の予約販売を10月24日からオフィシャルサイト(https://omeco.buyshop.jp)にて開始いたしました。」の記載がある(職権調査)。
https://www.sankeibiz.jp/business/news/191025/prl1910251802181-n1.htm
イ 「村西とおる ナイスですね!ONLINE SHOP」において,「OMECO 駅弁MASTER PROFESSIONAL 【ブラック】」の見出しの下,「大ヒットドラマ『全裸監督』のモデルとなった『AVの帝王』こと村西とおる監修の腕時計 OMECO 駅弁 マスター 村西とおるが世に広めた49手目の>>駅弁<<をフューチャーし,性への飽くなき探究心を唄う“ナイス”な腕時計です。」,「■盤面デザイン ブランドロゴは関西弁で女性器を指すオメコ,そのマークを堂々とあしらいました。」の記載がある(職権調査)。
https://muranisi.base.shop/items/24175468
ウ 本件商標権者のウェブサイト「【公式】変態高級腕時計 OMECO(オメコ)オンラインショップ」(https://omeco.buyshop.jp/:以下「本件オンラインショップ」という。)のプリントアウト(印刷日:令和2年11月10日)には,ウェブページの左上部に,二重丸とその中心を縦断する縦線及び円の外側の放射状の短い線で構成される,女性器を模したいわゆる「おめこマーク」様の円状図形及び「変態高級腕時計」の文字と共に本件商標の表示がある(甲14)。
また,本件オンラインショップは,「OMECO 潮FUKIMASTER 極-KIWAMI- オメコシオフキマスターキワミ クロノグラフ メンズ 腕時計 日本製ムーブメント[送料全国一律0円]」の表示,「最極のOMECOがここにある」の文字の下,文字盤に本件商標が付された当該腕時計の画像の表示,「【商品名】 OMECO 潮FUKIMASTER 極 -KIWAMI-」,「【ブランド名】 OMECO」の記載がある(甲14の1)。
さらに,「OMECO オメコ 潮FUKIMASTER 【シルバー】 シオフキマスター クロノグラフ メンズ 腕時計 日本製ムーブメント 銀時計[送料全国一律0円]」の表示,文字盤に本件商標が付された当該腕時計の画像の表示,「【商品名】 OMECO 潮FUKIMASTER(カラー:シルバー)」,「【ブランド名】 OMECO」の記載がある(甲14の2)。
加えて,「OMECO オメコ 潮FUKIMASTER 【ゴールド】 シオフキマスター クロノグラフ メンズ 腕時計 日本製ムーブメント 金時計[送料全国一律0円]」の表示,文字盤に本件商標が付された当該腕時計の画像の表示,「【商品名】 OMECO 潮FUKIMASTER(カラー:ゴールド)」,「【ブランド名】 OMECO」の記載がある(甲14の3)。
エ そして,本件オンラインショップに表示された本件腕時計は,申立人の製造販売に係る腕時計であって,NASAの宇宙飛行士用標準装備として正式に採用され,1969年に人類が初めて月面着陸した際に着用されたモデルである「SPEEDMASTER ムーンウォッチ プロフェッショナル」(申立人腕時)の形態と酷似した特徴(時計側の全体の形状,文字盤の色,針の形状,文字盤上部の「・・・master/PROFESSIONAL」の文字構成,外側の円図形中に表示された「TACHIMETRE」(最初の「E」にはアクセント記号が付されている。)及び「TACHYMETRE」(最初の「E」にはアクセント記号が付されている。)の文字並びに目盛りの構成,12時の目盛りの横に配置した2つの点,3つのリューズの配置及び形状等)を備えている(甲14の1~3,甲15の1~2)。
オ 以上の事実からすれば,本件商標権者は,自身が取り扱う腕時計「OMECO駅弁マスター」について,ブランドロゴが関西弁で女性器を指すオメコ,そのマークをあしらったものであり,本件商標の登録査定時において,「OMECO」が女性器あるいは男女の性交を意味する俗語を連想,想起させることを十分認識していたものといわざるを得ない。
そして,本件商標権者は,本件商標の設定登録を受けた令和2年8月5日後の同年11月10日には,本件オンラインショップにおいて,女性器を連想,想起させるような図形や,「変態高級腕時計」,「潮FUKIMASTER」,「シオフキマスター」等の文字と共に,本件商標を申立人腕時計と酷似した形態の本件腕時計に使用し,その広告に使用していたことが認められる。
(5)判断
上記(1)ないし(4)を踏まえれば,本件商標権者は,女性器あるいは男女の性交を意味する俗語を連想,想起させ,卑わいな印象を与えるような称呼が生じる商標について,引用商標が腕時計ないし時計について著名であることを知った上であえて引用商標2ないし引用商標5と同一の書体を採択し,指定商品「時計」について商標登録出願し,設定登録を受けたものといえる。そして,本件オンラインショップにおいて,引用商標と商品の出所について混同を生ずるおそれのある本件商標を,申立人腕時計と酷似した形態の本件腕時計に使用し,本件腕時計を広告していることからすれば,本件商標は,これに接する取引者,需要者に引用商標を連想,想起させ,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受け,かつ使用しているものというのが相当である。
加えて,本件オンラインショップにおけるような態様で,本件商標を本件腕時計について使用する場合には,引用商標の良質なイメージが損なわれ,その出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力,ひいては申立人の業務上の信用を毀損させるおそれがあるというべきである。
そうすると,本件商標は,その称呼が卑わいな印象を与える文字である上,これを指定商品「腕時計」に使用する場合には,引用商標と商品の出所について混同を生ずるおそれがあり,かつ,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る目的に加え,申立人の名声を害する意図をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたものといえるから,商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もつて産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法第1条)に反し,公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するものというべきであって,その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,その登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるというのが相当である。
(6)小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 本件商標権者の主張について
(1)本件商標権者は,「本件腕時計と申立人腕時計には複数の相違点があり,類似するものと認められない。また,本件商標と引用商標とは,外観においても呼称や観念においても異なるものであり,本件商標及び引用商標が同一又は類似の商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがないから,本件商標が,引用商標の顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能を希釈化させ,又はその名声を毀損させるおそれがあるとか,そのような目的をもって出願されたということはできない。」旨主張する。
しかしながら,本件オンラインショップに表示された本件腕時計は,「SPEEDMASTER ムーンウォッチ プロフェッショナル」とされる申立人腕時計とは,文字盤にやや小さく「Speedmaster」又は「潮fukimaster」の記載等の細部において相違点があり厳密に同一の商品形態ではないとしても,上記3(4)エのとおり,主要な部分で共通点を有するから,商品の全体的な外観において,酷似した印象を看者に与えるものである。また,本件商標と引用商標とは,外観,呼称及び観念において異なるところがあるとしても,上記2(2)のとおり,商標の類似性の程度は低いとはいえず,かつ,引用商標の周知著名性及び本件商標権者のウェブサイトにおいて,本件商標を申立人腕時計と酷似した形態の本件腕時計に使用し,その広告に使用していることも考慮すれば,本件商標は,上記2(5)及び3(5)のとおり判断するのが相当である。
(2)本件商標権者は,「公序良俗に反する単語を用いた会社名は定めることができないとされているところ(乙1),「株式会社Gerard」から「株式会社OMECO」への会社名変更(乙2)が法務局から指摘を受けることなく認められたことから,欧文字で表記された本件商標「OMECO」は,女性器を連想,想起させることはなく,商標法第4条第1項第7号に該当しない。」旨主張する。
しがしながら,商号選定自由の原則に対する制限として,公序良俗に反する商号の禁止に関し,「商号が公序良俗に反するか否かについては,会社の事業目的との関連をも考慮して,個別に判断する必要がある。」(乙1)との記載があるように,公序良俗に反する商号か否かの判断は,会社の事業目的との関連をも考慮して判断されるものである。また,商標法で規定する商標は,商品又は役務を識別するための標識(文字・図形・立体的形状等)であるのに対し,会社法で規定する商号は,会社を識別するための名称(会社名)であって,その定義は大きく異なる。そして,商標登録における商標法第4条第1項第7号の趣旨は,上記3(1)のとおりであって,本件商標については,その趣旨を踏まえて上記3(2)ないし(5)のように判断するものであるから,法務局から公序良俗に反する商号であるとの指摘がなく,「株式会社Gerard」から「株式会社OMECO」へ会社名の変更が認められたとしても,それにより直ちに本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当しないということはできない。
(3)したがって,本件商標権者の主張を採用することはできない。
5 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に該当し,その登録は同条第1項の規定に違反してされたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
付言するに,当審は,本件商標は,申立人が主張する商標法第4条第1項第11号及び同項第19号には該当しないものと判断する。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-900276