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商標異議申立

2020-900195

ヤハハ

審判番号
2020-900195
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2019-100632
登録番号
6252738
請求日
2020年08月07日
審決日
2022年05月26日
公報発行日
2023年02月24日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】深▲せん▼市諾克諾尓貿易有限公司
  • 【異議申立人】ヤマハ 株式会社
  • 【異議申立人代理人】平山 一幸
審判長/審判官
  • 審判長 矢澤 一幸
  • 審判官 豊田 純一
  • 審判官 杉本 克治
分類
T1651.271-Z (W28)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の3第2項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

登録第6252738号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6252738号商標の商標登録を取り消す。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6252738号商標(以下「本件商標」という。)は、「YAHAHA」の欧文字を標準文字で表してなり、令和元年7月24日に登録出願、第28類「ペット用のおもちゃ,アーチェリー用具,遊戯用ボール,運動用機械器具,ゲーム用具,スキー,保護用パッド(運動用被服の部分品),スケートボード,遊戯用風船,おもちゃ,積み木(おもちゃ),おもちゃの拳銃,人形用ベッド,あやつり人形,人形,水泳用プール(おもちゃ),人形用被服,人形用部屋,子供用片足スクーター(おもちゃ),クリスマスツリー用装飾品(装飾用照明及び菓子を除く。),業務用ゲーム機、ゲームおもちゃ,フラシ天おもちゃ,おもちゃの乗物,ジグソーパズル,遠隔操作式おもちゃの乗物,テレビゲーム機,ゲーム機用コントローラー,おもちゃの模型,おもちゃの人形,面(おもちゃ),ドローン(おもちゃ),おもちゃのロボット,幼児用三輪車(おもちゃ),ままごと用化粧品おもちゃ,チェッカー用具(ゲーム用品),チェス用具,手品用具,トランプ,釣り具,サーフボード,登山用ハーネス」を指定商品として、同2年5月8日に登録査定、同月19日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反するとして引用する登録商標は、別掲の(1)ないし(33)の登録商標(以下、この(1)ないし(33)を順次「引用商標1」ないし「引用商標33」といい、これらをまとめて「引用商標」という。)であり、いずれの商標権も現に有効に存続している。 2 申立人が、登録異議の申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反するとして引用する登録商標は、別掲の(34)及び(35)の登録商標(以下、この(34)を「引用商標34」と、(35)を「引用商標35」といい、これらをまとめて「申立人商標」という場合がある。)であり、いずれの商標権も現に有効に存続している。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは枝番号を省略する。)を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、「YAHAHA」の文字を標準文字で表してなり、第28類「ペット用のおもちゃ」等を指定商品として、令和元年7月24日登録出願、同2年5月19日に設定登録されたものである(甲1)。 (2)引用商標について 引用商標1ないし引用商標17は、いずれも「YAMAHA」の欧文字を左横書きしてなるものであり、いずれも、その指定商品又は指定役務が、本件商標の指定商品と抵触しており、いずれも現に有効に存続している。 引用商標18ないし引用商標33は、いずれも「ヤマハ」の片仮名を左横書きしてなるものであり、いずれも、その指定商品又は指定役務が、本件商標の指定商品と抵触しており、いずれも現に有効に存続している。 (3)商標法第4条第1項第11号について ア 称呼における対比 本件商標は、その構成文字をローマ字読みして「ヤハハ」の称呼が無理なく自然に生じ、一方、引用商標からは、「ヤマハ」の称呼が生じることが明らかである。そこで、本件商標から生じる「ヤハハ」と引用商標から生じる「ヤマハ」を対比すると、いずれも3音からなり、中間音の「マ」と「ハ」が相違するのみで他の音を共通にし、しかも、相違する「マ」と「ハ」は母音「ア(a)」を共通にする。 ここで、相違音の「マ」と「ハ」についてさらに詳しく見ると、この2音は、音質又は音調上近似する音と言える。具体的には、「マ」の音は、響きの弱い鼻子音「m」と明確に響く母音「a」が結合した音であることから、子音「m」よりはむしろ母音「ア(a)」が強く響く音として印象に残るものである。同様に、「ハ」の音も、響きの弱い無声摩擦音「h」と明確に強く響く母音「a」が結合した音であって、子音「h」は呼気とともに発せられる力の入りにくい弱い音として発音されることから、むしろこれに帯同する母音「ア(a)」が強く響き、印象に残る。すなわち、「マ」と「ハ」の音はいずれも、響きの弱い子音「m」、「h」が明確に強く響く母音「ア(a)」に吸収されて、「ア」に近似した音として聴取されるものであり、この点において互いに近似した音である。 以上のように、本件商標と引用商標は、その称呼がいずれも3音からなり、中間音の「マ」と「ハ」が相違するのみで他の音を共通にすることと併せて、唯一の相違音の「マ」と「ハ」が母音「ア(a)」を共通にする近似音であるから、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調・語感が極めて近似したものとなり、彼此相紛らわしい。 よって、本件商標と引用商標は、称呼上類似の商標である。 イ 外観における対比 本件商標を構成する「YAHAHA」と、引用商標1ないし引用商標17を構成する「YAMAHA」は、ともに欧文字6文字からなり、第3番目の文字「H」と「M」とが異なるのみで、他の欧文字5文字は全て大文字である点も含めその配列を共通にしている。 しかも、3文字目の相違文字「M」及び「H」の文字は、文字構成が本来よく似たいずれも直線のみから構成され、左右両側に2本の縦線が平行して位置している点でも共通している。相違点は、その2本の縦線を「V」状の線で結合しているか、あるいは真っ直ぐな横線で結合しているか、という点のみであることから、一見した場合の文字の形状が近似している。実際の取引において、もし本件商標を若干図案化して表示する場合、デザインによっては縦棒に挟まれた線が「V」であるか「-」であるか一見して判別し難いことも生じ得る。このため、本件商標を目にする需要者は、周知著名商標の「YAMAHA」と勘違いして認識することも十分に考えられる。 周知商標は、商標(標章)が付された商品を一見しただけで、直ちにこれは「YAMAHA」製であることを認識するほど有名になっていること自体に価値がある。周知商標主が提供する商品に付す商標が有名であるため、これと同種の商品に対して外観上第三者が紛らわしい商標を付した場合、需要者が一見して見間違い、あるいは勘違いして当該異なる商品を購入することを防ぐことに、周知商標の機能が発揮されるのでなければ商標制度の意味と価値が減殺される。 以上のように、本件商標と引用商標1ないし引用商標17は、外観上多くの共通点を有し、近似した印象を与える相紛らわしいものであり、外観上類似の商標である。実際の取引においては、標章を標準文字そのままの書体で商品に付すことはほとんどなく、多少の書体・デザインの変更を加えて使用することを勘案すれば、本件の場合、外観上の類似度は一層高まる。 ウ 観念における対比 引用商標については、後述するように「YAMAHA」及び「ヤマハ」が申立人の著名なハウスマークであることからして、申立人の「ヤマハ株式会社」あるいは申立人の業務に係る商品やサービスを想起させると考えるのが妥当である。 一方、本件商標は、何ら特定の観念を生じない造語であるため、少なくとも、本件商標と引用商標は、その観念に基づいて区別することはできない。 エ 指定商品・指定役務の対比 本件商標は、第28類「ペット用のおもちゃ」等を指定商品としている。 一方、引用商標の指定商品又は指定役務は、本件商標の指定商品と抵触している。 (4)まとめ 以上述べたように、本件商標と引用商標は称呼において類似することに加え、本件商標と引用商標1ないし引用商標17は外観において相紛らわしく、かつ、本件商標と引用商標を区別し得るような観念上の明確な相違も存在しない。 よって、これらを総合的に勘案する場合、本件商標は、引用商標と混同を生ずるおそれのある類似の商標であり、また、その指定商品も同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)申立人商標の周知・著名性について ア 登録第4230041号商標(引用商標34、甲4)は「YAMAHA」の欧文字を、登録第4230048号商標(引用商標35、甲5)は「ヤマハ」の片仮名文字を同書同大で左横書きしてなり、いずれも第15類「楽器,演奏補助品,音さ,調律機」を指定商品とし、平成9年(1997年)7月9日登録出願、同11年(1999年)1月14日に設定登録されたものである。 「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」内の「日本国周知・著名商標検索」の検索結果(甲4の2、甲5の2)に示されているように、これら2件の申立人商標は、防護標章としても登録されている。当該申立人商標を原登録商標とする防護標章の登録は、第1類から第45類の全分類について認められており、現時点に至るまで全件が更新出願・更新登録されている(甲4の3、甲5の3)。 本件商標と同じ第28類「遊戯用器具,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,運動用具,釣り具」等についても、登録第4230041号防護標章登録第1号及び第4230048号防護標章登録第1号として防護標章登録されており、特に第4230048号防護標章登録第1号は、令和2年(2020年)6月16日更新出願し、同年8月26日付けで更新登録となった(甲4の4、甲5の4)。 さらに、申立人商標のうち「YAMAHA」商標は、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集 2004」にも掲載されている(甲8)。 商標審査基準においては、商標法第4条第1項第15号について、「著名性の認定に当たっては、防護標章登録を受けている商標又は審決、異議決定若しくは判決で著名な商標と認定された商標については、その登録又は認定に従い著名な商標と推認して取り扱うものとする。」と明示されている。また、商標審査便覧には、「需要者の間に広く認識されている商標」に関する審査を円滑かつ統一的に行うために利用する資料として「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集」が挙げられている。さらに、防護標章登録出願及び防護標章更新登録出願の審査について、商標審査便覧には、「原登録商標が国民の間に広く認識されている場合においては、その登録商標に係る指定商品又は指定役務が属する産業部門を超える商品又は役務についても防護標章登録を認め得るものとする。」とされている。 以上の事実からすると、申立人商標は、最初の防護標章登録がされた約20年前には既に、長年にわたる継続的な使用の結果、申立人の業務に係る「楽器,演奏補助品,音さ,調律機」の出所を表すものとして一般の需要者に広く知られている著名な商標と認められていたものであり、その後、申立人商標に係る防護標章登録が全件更新出願・更新登録されていることからも、現在に至るまでその著名性を変わらず維持している。 すなわち、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商標は、高い著名性を維持したまま長年にわたり継続して使用し続けられている、極めて著名性の高い商標である。 イ 申立人の「ヤマハ」、「YAMAHA」のブランド名は、創業者・山葉真楠の姓に由来し、前身の日本楽器製造時代から既にこのブランド名で展開していたが、創業100年を機に、昭和62年(1987年)10月1日に、申立人の社名をヤマハ株式会社と変更した。 申立人ウェブサイト内の「ロゴの歴史」(甲9)に示すとおり、申立人がヤマハロゴを制定したのは昭和42年(1967年)であるが、その後現在まで「YAMAHA」の文字部分については書体等の大きな変更はされていない。申立人商標のうち引用商標34は、この文字部分と同一書体・同一構成である。 このように、引用商標34は、昭和42年(1967年)のヤマハロゴ制定以来、50年以上にわたって使用し続けられたものであり、特に、社名変更後は、30年以上ハウスマークとして使用され、申立人及び申立人のグループ会社の業務に係る製品及び役務を示す営業標識として重要な役割を担ってきた。 (2)本件商標と申立人商標の類似の程度について 申立人商標は、上記1で挙げた引用商標と同じ文字構成からなる。よって、本件商標と申立人商標が、全体として相紛らわしく類似する商標であることについては、上記1において詳述したとおりである。 なお、本件商標が特定の観念を何ら生じない造語であるため、観念における申立人商標との共通点はないが、同時に、観念に基づいて明確に区別することもできない。 ア 称呼における共通点 本件商標から生じる「ヤハハ」の称呼と、申立人商標から生じる「ヤマハ」の称呼は、以下の共通点を持つ。 (ア)いずれも3音の同数音からなる点。 (イ)中間音の「マ」と「ハ」以外は、構成音が完全に一致する点。 (ウ)相違音の「マ」と「ハ」は、母音「ア(a)」を共通にする点。 (エ)さらに、「マ」と「ハ」の音はいずれも、響きの弱い子音「m」「h」が明確に強く響く母音「ア(a)」に吸収されて、「ア」に近似した音として聴取される点。 以上のように、本件商標と申立人商標は称呼上多くの共通点を有し、その結果、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調・語感が極めて近似する相紛らわしいものであり、称呼上類似の商標である。 イ 外観における共通点 本件商標と引用商標34は、以下の共通点を持つ。 (ア)ともに欧文字6文字から構成される点。 (イ)第3番目の文字「H」と「M」以外は、他の欧文字5文字の配列が一致している点。 (ウ)全ての文字が大文字である点。 (エ)3文字目の相違文字「M」及び「H」の文字は、いずれも直線のみから構成されている点。 (オ)さらに、「M」及び「H」の文字は、いずれも左右両側に垂直に平行して位置する2本の縦線の中に、「V」状の線又は真っ直ぐな横線で結合したものであり、文字の形状が近似している点。 以上のように、本件商標と引用商標34は、外観上多くの共通点を有することから、近似した印象を与える相紛らわしいものであり、外観上類似の商標である。 ウ 近年の取引の実情について 近年の商取引において、オンラインショッピングによる取引が増えていることはいうまでもない。オンラインショッピングでは、需要者は、コンピュータ、タブレット、スマートフォンなどの画面上で、商品名、商品の説明、商品の写真などを見て確認して、商品を購入する。すなわち、視覚的な情報は極めて重要となる。 また、オンラインショッピングにおいて、画面上の商品情報を目で確認することには、ある程度制限があり、例えば画質によっては必ずしも鮮明ではない商品写真が掲載されている場合や、スマートフォンなど小さい画面で閲覧する際には商品名などの文字が見にくい場合がある。よって、商標がサイト上に掲載されたり、商標が付された商品の写真がサイト上に掲載される場合、外観が相紛らわしい商標は、混同の大きな原因となり得る。 こういった近年の商品の取引形態の変化を考慮し、しかも本件商標については、外国人である本件商標の権利者が、我が国で商品を販売する際にオンラインショッピングを販路として利用することは十分想定されることから、上述のような本件商標と引用商標34の外観上の類似性は、重視されるべきである。 特に、実際の商取引にあっては出願商標と全く同一書体で表示されることは少なく、多くの場合、文字表記が変更又はロゴ化されて使用される実情にあることから、その表現法によっては「H」が「M」に近づくデザインも容易に考えられる。 この場合、これを見る者をして、著名な「YAMAHA」であると認識する事態が一層多くなる。大多数の需要者は著名商標「YAMAHA」に対して既に一定の観念を蓄積しているため、6文字中、「H」と「M」だけの相違であれば、商品選択の際、需要者の多くは「ヤマハ」の製品であると見間違って認識することが容易に考えられる。 このような状況の中で、周知商標の意義ないし機能の一つは、需要者に対する長年の印象付けによって蓄積された名声の認識が、静的に観察される外観の類否判断において大きな影響を及ぼし、対比すべき商標に対して称呼、観念及び外観上に影響を与え、出所を混同する事象を一層拡大化させるということである。よって、周知著名商標の類似、すなわち一般的混同の範囲は、周知著名の程度に伴って類似範囲が拡大し、これを考慮して類否を決すべきである。 まして、申立人は、上述のとおり登録第4230041号防護標章登録第1号ないし防護標章登録第4号並びに登録第4230048号防護標章登録第1号及び防護標章登録第2号として、第28類を含む第1類ないし第45類の全類について防護標章登録を受けている(甲4の3、甲5の3)。これはとりもなおさず、第28類に属する商品についても著名であることを証することにほかならず、この事実は、本件商標との類否検討において重視されるべきで、本件商標は甲4の防護標章登録に外観上類似することを示す証左となる。 以上のとおり、称呼上及び外観上の類似性並びに近年の取引の実情に照らし、本件商標は、申立人商標と混同を生ずるおそれのある類似の商標である。 (3)申立人の多角的な事業展開について 申立人であるヤマハ株式会社は、明治20年(1887年)に創業して以来130有余年にわたり楽器業界のリーディングカンパニーとして、世界シェア1位を誇るピアノをはじめとする楽器、スポーツ用品、電子機器その他様々な製品の製造・販売を行い、その品質のよさから、我が国のみならず海外においても非常に知名度のあるブランドとして確固たる地位を築き、現在、国内に15社、海外に38社のグループ会社を有している(甲10)。 申立人及びそのグループ会社は、楽器以外にも、楽器の製造・販売で蓄積した技術とノウハウを生かし、PA機器、音楽ソフト、AV機器、半導体、ゴルフ用具、FA機器、音楽教室、リゾート施設などに事業領域を広げ、世界でも類のない総合楽器メーカーヘと発展を遂げてきた(甲11、甲12)。 具体的にいつ頃からどのような商品が展開されてきたのかは、統合報告書「成長の軌跡」(甲13)及び申立人ウェブサイト内の「製品の歴史」(甲14)によると、既に1950年代から、ヤマハ音楽教室の前身となるオルガン実験教室を開講し、FRP素材を利用したスポーツ用品の開発に着手している。その後、1960年代にはスキー用具、バスタブなど、1970年代にはアンプ、スピーカー、テニスラケット、アーチェリー用具など、1980年代にパソコン、ゴルフクラブ、産業用ロボットなど、楽器や電子楽器と平行して、着実に取扱商品・サービスの種類を増やし、事業領域を広げてきたことが分かる。 このように、約70年も前から、楽器以外にも様々な商品やサービスを提供してきた実績を積み重ねた結果、申立人は単なる楽器製造会社としてではなく、楽器を中心に多角的に事業を展開する企業として認識されるに至っている。 (4)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性の程度について ア 本件商標の指定商品の「運動用機械器具,おもちゃ,人形」等と、申立人の業務に係る商品「楽器,演奏補助品」等とは、日常生活において趣味・学習等の用途に使用されるものであること、広く一般消費者により使用されるものであること、使用に際し必ずしも専門的な知識を必要としないものであること、など性質・用途又は目的において幾つかの共通点を有している。特許庁での取り扱いを見ても、商標の審査や実務において指定商品・指定役務の45の類別を数個の産業部門に分ける場合が見られるが、上記の両商品はいずれも「雑貨繊維部門」に属するものである(甲15)。 特に、本件商標の指定商品中の「おもちゃ」については、取引の実情においては「楽器玩具」というカテゴリーも見られるように、子供を対象とする商品の場合、おもちゃでもあり楽器でもある商品が多数存在する(甲16~甲18)。このように、「おもちゃ」と「楽器」の線引きが難しい商品が多数存在することからも、両者は互いに密接な関連性を有する商品と言えるものである。 イ さらにいうと、申立人は、本件商標の指定商品中に含まれる「運動用機械器具」を、実際に製造・販売している。具体的には、上述の「製品の歴史」(甲14)に示されるように、申立人は、スキー用具、テニスラケット、アーチェリー用具、ゴルフクラブなどの運動用具を過去製造・販売してきているが、特にゴルフ用具については、昭和57年(1982年)の販売以来、現在に至るまで継続して製造・販売しており、申立人の主力製品の一つとなっている(甲19、甲20)。 そうとすると、本件商標の指定商品中の「運動用機械器具」については、上述のように、そもそも申立人の業務に係る商品「楽器,演奏補助品」等と同じ「雑貨繊維部門」に属し、性質・用途又は目的において一定の関連性を有するものであるが、さらに、申立人が実際に「ゴルフ用具」を長年にわたり製造・販売している実績があることから、取引者・需要者が、本件商標が付された「運動用機械器具」に接した場合、申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の提供する商品であると混同するおそれがある。 (5)まとめ 以上述べたように、申立人商標は、申立人及びそのグループ会社のハウスマークとして、あるいは、申立人の業務に係る商品「楽器,演奏補助品,音さ,調律機」を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者・需要者の間に極めて広く認識されていた商標であり、また、本件商標とは称呼及び外観において近似する、類似性の高い商標である。 そして、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とが密接な関連性を有するものであることに加え、申立人は、「楽器,演奏補助品,音さ,調律機」の他にも、本件商標指定商品に属する「ゴルフ用具」を始め、音楽ソフト、AV機器、半導体、FA機器、音楽教室、リゾート施設など幅広い分野の商品・役務に申立人商標を使用していること、さらには第28類を含む全類について申立人は二つの防護標章登録を有することを併せて考慮すると、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者は、申立人商標又は申立人を想起、連想し、これらの商品が申立人又は申立人と経済的・組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれが極めて高い。 したがって、本件商標は、申立人の業務にかかる商品と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 取消理由の通知 当審において、本件商標権者に対し、「本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨の取消理由を、令和3年9月30日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。 第5 本件商標権者の意見 上記第4の取消理由に対し、本件商標権者は、何ら意見を述べるところがない。 第6 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標は、上記第1のとおり「YAHAHA」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は、辞書等に載録がなく、造語と認められる。 そうすると、本件商標は、当該文字に相応した「ヤハハ」の称呼が生じ、特定の観念を生じない。 イ 引用商標1ないし17は、「YAMAHA」の欧文字を横書きしてなり、また、引用商標18ないし32は、「ヤマハ」の片仮名を横書きしてなるところ、当該文字は、いずれも辞書等に載録がなく、造語と認められるものであり、当該文字に相応した「ヤマハ」の称呼が生じ、特定の観念を生じない。 ウ そこで、本件商標と引用商標の類否を検討すると、本件商標と引用商標1ないし17とは、いずれも欧文字6文字から構成されており、第3番目の文字「H」と「M」以外の欧文字5文字の配列が一致していること、全ての文字が大文字であること、異なる文字である「M」及び「H」は、中間である3文字目に位置し、当該差異が看者の注意を強く惹くものとはいえないことからすれば、両者は、外観において、近似した印象を与える。 また、本件商標と引用商標18ないし34とは、構成文字種の差異があることから、両者は外観において相違する。 次に、本件商標から生じる「ヤハハ」の称呼と引用商標から生じる「ヤマハ」の称呼を比較すると、両称呼は、3音中2音を共通にし、中間音において「ハ」と「マ」の音に差異を有するものであり、3音という短い音構成である称呼全体に与える影響は少なくなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても聴別し得る。 さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから、比較できないものである。 そうすると、本件商標と引用商標1ないし17は、外観において近似した印象を与えるもので、観念において比較できないものの、称呼において区別できるものであり、また、本件商標と引用商標18ないし32は、観念において比較できないものの、外観及び称呼において区別できるものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 エ 以上のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似の商品を含むとしても、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)申立人商標(引用商標34)の周知著名性について 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張並びに職権調査によれば、以下のとおりである。 ア 申立人であるヤマハ株式会社は、明治20年(1887年)に創業し、昭和42年(1967年)から「YAMAHA」の文字の使用を開始、ピアノを始めとする楽器、スポーツ用品、電子機器その他様々な製品の製造・販売を行っており、現在、国内に15社、海外に38社のグループ会社を有している(甲9、甲10、甲12~甲14)。 イ 申立人及びそのグループ会社は、楽器以外にも、PA機器、音楽ソフト、AV機器、半導体、ゴルフ用具、FA機器、音楽教室、リゾート施設などの事業を行っており(甲11、甲12)、特にゴルフ用具については、平成7年(1995年)から「YAMAHA」の文字よりなる商標を継続して使用している(甲19、甲20)。 ウ 東洋経済ONLINEのウェブサイトには、「成熟した楽器市場を主戦場としているヤマハの健闘が光っている。・・・上期(2016年4月~9月)の営業益は前年同期比16.1%増の246億円で着地した。・・・国内のアコースティックピアノにおけるシェアは、ヤマハが約6割、河合楽器製作所が同4割で長らくこの比率は変わっていない。・・・電子ピアノで、ヤマハは世界シェアで5割と圧倒的な競争力を誇る。」の記載がある(職権調査:https://toyokeizai.net/articles/-/145120)。 エ 会社四季報ONLINEのウェブサイトには、「直近決算発表日 2021/08/04」の表示で「7951 ヤマハ」の項に、「【特色】ピアノや管楽器など楽器総合。電子ピアノでは世界首位。音響機器を拡大中。」の記載がある(職権調査:https://shikiho.jp/stocks/7951)。 オ 山野楽器のウェブサイトには、「ピアノ 主要ブランド」の見出しの下、「ヤマハ YAMAHA 1887年に創業した日本が世界に誇る楽器メーカー。現在は世界一の生産台数並びに世界最大の楽器メーカー。」の記載がある(職権調査:https://www.yamano-music.co.jp/instrument/piano/brand.html)。 カ 以上を総合すると、「YAMAHA」の文字は、申立人がピアノを始めとする楽器に継続して50年以上使用していること、平成28年(2016年)には我が国におけるアコースティックピアノにおけるシェアは6割、電子ピアノの世界シェアは5割で、本件商標の設定登録後ではあるものの、令和3年(2021年)においても、電子ピアノでは世界首位であることなどからすれば、申立人商標(引用商標34)は、申立人の業務に係るピアノを始めとする楽器(以下「申立人商品」という。)を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものといえる。 (2)本件商標と申立人商標(引用商標34)との類似性の程度について 本件商標は、「YAHAHA」の欧文字からなるものであり、他方、申立人商標(引用商標34)は、「YAMAHA」の欧文字からなるものである。 そこで、本件商標と申立人商標(引用商標34)とを比較すると、両商標は、いずれも欧文字6文字から構成されていること、第3番目の文字「H」と「M」以外は、他の欧文字5文字の配列が一致していること、全ての文字が大文字であること、異なる文字である「M」及び「H」は、中間である3文字目に位置し、当該差異が看者の注意を強く惹くものとはいえないことからすれば、両者は、外観において、近似した印象を与えるものであり、また、本件商標からは「ヤハハ」の称呼が生じ、申立人商標(引用商標34)からは「ヤマハ」の称呼が生じるところ、両称呼は3音中の2音を共通にし、異なる音である「ハ」及び「マ」は母音を同じくするものであるから、本件商標と申立人商標(引用商標34)とは、類似性の程度が高いというべきである。 (3)申立人商標(引用商標34)の独創性について 申立人商標(引用商標34)は、「YAMAHA」の文字からなるところ、当該文字は一般の辞書等に掲載されていないものであるから、その独創性は高いといえる。 (4)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性並びに取引者及び需要者の共通性について 本件商標の指定商品中の「おもちゃ」に含まれる「おもちゃ楽器」と申立人商標(引用商標34)に係る楽器は、いずれも楽器であり、その製造者を共通にする場合があるといえ、また、本件商標のその他の指定商品である、「ペット用おもちゃ,人形,ジグソーパズル」等の商品の需要者は一般需要者といえるところ、楽器の需要者には一般需要者が含まれることから、両者は需要者を共通にする場合があるといえる。 (5)申立人の事業について 申立人は、上記(1)のとおり、我が国の楽器の製造・販売の事業の市場においてトップクラスのシェアを占める大企業であり、楽器の製造・販売のほかにも、PA機器、音楽ソフト、AV機器、半導体、ゴルフ用具、FA機器、音楽教室、リゾート施設などの事業を行っており、特にゴルフ用具については、平成7年(1995年)から申立人商標(引用商標34)と同じ「YAMAHA」の文字よりなる商標を継続して使用している。 (6)判断 上記(1)ないし(5)によれば、申立人商標(引用商標34)は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間において広く認識されていること、申立人商標(引用商標34)の独創性が高いこと、本件商標と申立人商標(引用商標34)の類似性の程度が高いこと及び本件商標の指定商品と申立人の取扱いに係る商品は需要者の一部を共通にすること、並びに、申立人は、楽器以外にも、PA機器、音楽ソフト、AV機器、半導体、ゴルフ用具、FA機器、音楽教室、リゾート施設などの事業を行っていることから、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品に使用した場合、これに接する需要者が申立人商標(引用商標34)を想起、連想し、当該商品を申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 (7)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号には該当しないものの、同項第15号に該当する。 そうすると、本件商標の登録は、商標法第4条第1項の規定に違反してされたものと認められるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-900195

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