審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
商標異議申立

2020-900083

ヌラクシー、ヌラキシー、ニューラクシー、ニューラキシー、ヌーラクシー、ヌーラキシー

審判番号
2020-900083
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2019-119165
登録番号
6211723
請求日
2020年03月19日
審決日
2021年10月20日
公報発行日
2022年01月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】WES株式会社
  • 【権利者代理人】越場 洋
  • 【権利者代理人】越場 隆
  • 【異議申立人】香港億泰徳科技有限公司
  • 【異議申立人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 榎本 政実
  • 審判官 豊田 純一
  • 審判官 山根 まり子
分類
T1651.18 -Z (W09) / T1651.22 -Z (W09) / T1651.25 -Z (W09) / T1651.271-Z (W09) / T1651.222-Z (W09)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法3条1項商標法4条1項10号商標法43条の3第2項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第1項、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

登録第6211723号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6211723号商標の商標登録を取り消す。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6211723号商標(以下「本件商標」という。)は、「Nulaxy」の文字を標準文字により表してなり、令和元年9月7日に登録出願、第9類「電子応用機械器具並びにその部品及び附属品,タブレット型コンピュー夕用スタンド,ノートブック型コンピュータ用スタンド」を指定商品として、同年11月28日に登録査定、同年12月27日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、引用する商標は、「nulaxy」の欧文字を横書きにしてなる商標及び別掲1に示すとおりのブランドロゴからなる商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)であり、申立人が、申立人の業務に係る商品「スマートフォン用スタンド、タブレット型コンピュータ用スタンド」に使用し、当該商品の取引者、需要者の間に広く認識されているとするものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、また、同法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 具体的理由 (1)申立人について ア 申立人である「香港億泰徳科技有限公司」(英語名:YTD Co.,Ltd.)は、2015年1月6日に設立された中国法人(有限責任公司)であって(甲3)、トランスミッター、スマートフォン用スタンド、タブレット型コンピュータ用スタンドなどの商品に代表される「nulaxy」という電子機器ブランド(以下「nulaxy」という。)を展開している(甲4)。「nulaxy」のブランドロゴは、別掲1のとおりのものであって、ホームページを始め、商品自体やその包装、取扱説明書などに使用されており、「nulaxy」の文字の造語性ともあいまって、商品購入者の記憶に強く印象付けられる。 商標登録に関しては、商標「nulaxy」について、当初の主な市場であった米国において2015年1月に出願を行い、同年8月に登録されている(甲2)。また、その後も2018年までに欧州、オーストラリア、インドにおいて商標「NULAXY」の出願を行い、各国で商標登録されている(甲5~甲7)。なお、オーストラリアでは、申立人の関連会社「Shenzhen Yitaide Technology Co.,Ltd.」(以下「Shenzhen社」という。)の名義で登録されている。 「nulaxy」商品(以下「申立人商品」という。)は、申立人の関連会社であるShenzhen社及び「TOMIGHT CO.,LIMITED」(以下「TOMIGHT社」という。)を正規販売店として、主にECサイト「Amazon」を通じて、世界各国で販売されている。我が国ではAmazon上のECショップ「Dynamic Gears JP」(申立人の関連会社であるTOMIGHT社が運営するECショップ)が正規販売店として申立人商品を販売している(甲8)。この点、申立人はこれら関連会社に対して「nulaxy」商標の使用に関するライセンスを無償で付与している(甲9)。 そして、申立人商品は、タブレット型コンピュータ用スタンド、スマートフォン用スタンド、ワイヤレス受信機、無線式コンピュータマウス、トランスミッターなど、様々な電気通信機器及び電子応用機器にわたり、我が国では遅くとも2018年7月に販売が開始されている(甲10)。 また、申立人は、商品の品質管理を徹底しており、正規販売代理店から購入された申立人商品については、比較的リーズナブルな価格の商品であるにも関わらず、1年間の商品保証を行っている。 イ 申立人商品は、その機能性、デザイン性、コストパフォーマンスの高さ等から、優れた商品として話題となり、日本のECサイト「Amazon」でも高評価を獲得し、インターネット上では申立人商品について多くの商品レビュー記事が投稿されている(甲11)。たとえば、2019年のスマートフォン用スタンドのおすすめ人気ランキングを紹介したインターネット記事では、厳選された10個の商品のうち2つが申立人商品である(甲11の1)。また、日本に先行して販売された米国においても申立人商品は非常に人気があり、16年以上にわたり米国の消費者向け商品のレビューを行っている米国の有名レビューサイト「Top Ten Reviews」でも、本件商標の登録出願前である2018年3月の時点で「nulaxy」の「トランスミッター」は高く評価されている(甲12)。そのため、本件商標の登録出願前から申立人商品は米国の需要者の間で注目されていたことが推認できる。 さらに、動画投稿サイト「YouTube」でも、本件商標の登録出願前から申立人商品のレビュー動画が多数投稿されており(甲13)、たとえば2016年3月に公開されたレビュー動画は41万回以上再生されている(甲13の1)。 これまで日本では、ECサイト「Amazon」において、合計133,383個の申立人商品が販売され、総売上は約1億9千万円にも上る(甲20)。現在は、一日に150個以上の「nulaxy」のスマートフォン用スタンドが販売されており、申立人商品全体としては、一日に300個以上が販売されている。また、米国では一日に2,000個以上の、イギリス(2015年12月に販売開始)では一日に290個以上の、ドイツ(2016年7月に販売開始)では一日に450個以上の申立人商品が、それぞれ販売されるなど、日々、世界中で大量の申立人商品が販売されている。なお、申立人は申立人商品を日本で流通させるに当たり、特定の販売代理店のみが「nulaxy」の商標を独占することを許していない。 (2)引用商標について 引用商標「nulaxy」は、辞書等に掲載されていない造語であって、申立人が独自に考案したものであり、大文字と小文字の違いはあるものの、本件商標と引用商標は実質的に同一である。 そして、申立人は、本件商標の登録出願前より、米国及び日本において、「nulaxy」ブランドの各種電気通信機器及び電子応用機器を販売しており、特に「nulaxy」のトランスミッター、スマートフォン用スタンド及びタブレット型コンピュータ用スタンドは、両国において、本件商標の登録出願前から多くの注目を集め、高い人気となっていた。 そうすると、引用商標「nulaxy」は、本件商標の登録出願時において、米国及び我が国における取引者、需要者の間では、少なくともトランスミッター、スマートフォン用スタンド及びタブレット型コンピュータ用スタンドについて、申立人の商標として広く知られていたと推認される。 また、インターネット検索エンジンで「nulaxy」を検索すると、その検索結果は、申立人商品が上位に表示される(甲14)。 (3)本件商標権者について 本件商標の商標権者である「WES株式会社」(以下「本件商標権者」という。)は、平成28年5月16日に設立された日本の会社であって(甲15)、申立人とは何ら関係のない第三者である。また、本件商標権者は、オンラインショップ「WES PREMIUM STORE」を運営しており、当該オンラインショップにおいて、モバイルバッテリー、キーボード、無線機といった電気通信機器及び電子応用機器を販売している(甲16)。そのため、申立人の事業とは、オンライン販売という商的流通が共通しており、商品も同じ電気通信機器及び電子応用機器を取り扱っていることから、申立人と本件商標権者は競合関係にあるといえる。さらに、現在は確認できないものの、本件商標権者は過去に申立人の「nulaxy」商品を前記オンラインショップ「WES PREMIUM STORE」において転売していた(甲17)。 そして、特にトランスミッター、スマートフォン用スタンド及びタブレット型コンピュータ用スタンドについて、申立人の「nulaxy」商品が本件商標の登録出願前から注目されていたことを考えると、自ら申立人商品を転売していた本件商標権者は、本件商標の登録出願時に「nulaxy」が他人の有名ブランドであることを当然に知っていたものと推認される。 さらに、本件商標権者は、過去に他人に対して、登録商標の高額な金額での買取りを要求したことがあり、買取りに応じられない場合には、市場からの撤退を求めていた。本件においても、本件商標権者は、単に申立人の商品を転売したのみで、自らの出所表示標識としては一度も本件商標を使用していない。 そうすると、本件商標権者は「nulaxy」が他人のブランドであることを知りつつ、無断で商標登録を行っていることからして、本件商標権者による本件商標の登録出願及び登録行為は、申立人に対して本件商標を買い取らせる目的を有しており、申立人の商標使用を制限することで事業上の優位性を得る目的を有していたものと考えられる。 なお、本件商標は、その登録出願の際に周知であった引用商標と社会通念上同一であり、引用商標は造語よりなるものであることから、本件商標が偶然に引用商標と一致したとは認め難い。 (4)商標法第3条第1項柱書について 商標法第3条第1項柱書は、商標登録要件として、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを規定するところ、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいはその使用意思がある商標と解される。 本件では、本件商標権者によって本件商標が自己の出所識別標識として使用された事実は確認できない。そして、本件商標権者は、他人の商標を含む70件もの商標の登録出願を行っており、申立人に対して本件商標を買い取らせる目的及び申立人の事業活動を阻害する目的がある。 そうすると、本件商標権者は、申立人の使用する引用商標について登録出願し、登録された商標を収集しているにすぎないというべきであって、本件商標は、登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標に当たらない上、本件商標権者にはその使用意思も認められない。ゆえに、本件商標は商標法第3条第1項柱書の要件を具備していない。 なお、他人の使用する商標ないし商号についての登録出願であって、登録された商標を収集しているにすぎず、対象となる商標が、登録査定時において使用されておらず、その使用意思が認められないとして、商標法第3条第1項柱書に違反すると判示した過去の裁判例として、平成24年(行ケ)第10019号がある。 (5)商標法第4条第1項第7号について 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定するところ、ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(平成17年(行ケ)第10349号に同旨)。 上述のとおり、本件では、本件商標は、造語である引用商標と社会通念上同一である。また、引用商標が申立人の商品ブランドとして取引者・需要者の間において注目されている状況において、本件商標権者は本件商標の登録出願を行っている。そして、本件商標権者は本件商標以外にも、他人の使用する商標を含む70件もの商標の登録出願を行っている。その上、申立人に対して本件商標を買い取らせる目的又は申立人の事業活動を阻害する目的さえも推認される。 そうすると、本件商標は、不正な目的をもって剽窃的に登録出願されたものと認められるから、公序良俗に反することは明らかであり、商標法第4条第1項第7号に該当する。 仮に、本件商標権者のような転売業者による剽窃的な商標登録が認められることになれば、真正な商標所有者による商標の使用が妨げられ、真正な商品の流通が阻害されることになり、商標法の法目的に反する事態となる。また、本件では、申請人が商品の品質管理を徹底し、商品の1年保証を行っていることに対する需要者の信頼も害する。 したがって、本件商標権者のような転売業者による剽窃的な商標登録は決して許されるべきではない。 そもそも、申立人は申立人商品を日本で流通させるに当たり、特定の販売代理店のみが「nulaxy」の商標を独占することは許しておらず、本件商標権者が申立人に何ら断りもなく、勝手に本件商標の登録を行ったことは、申立人が日本の販売業者に対して「nulaxy」商標の使用を広く開放した善意を踏みにじる行為である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第19号について 商標法第4条第1項第19号は、日本国内又は外国における他人の周知商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものは、商標登録を受けることができない旨を規定する。 上述のとおり、本件では、引用商標は、本件商標の登録出願時において、我が国及び米国における取引者・需要者の間で、少なくとも「トランスミッター,スマートフォン用スタンド,タブレット型コンピュータ用スタンド」について申立人の商標として広く知られていたと推認され、本件商標は、引用商標と社会通念上同一である。また、本件商標権者による本件商標の登録出願及び登録の行為には、申立人に対して本件商標を買い取らせる目的、又は申立人の商標使用を制限することにより事業上の優位性を得る目的が推定される。 よって、本件商標は、その登録出願時において、我が国又は外国で周知の引用商標と同一又は類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものと認められる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (7)商標法第4条第1項第10号について 商標法第4条第1項第10号は、他人の業務に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品等又はこれらに類似する商品等について使用をする商標は登録しない旨を規定する。 上述のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、我が国における取引者・需要者の間で、少なくとも「スマートフォン用スタンド,タブレット型コンピュータ用スタンド」について申立人の商標として広く知られていたと推認され、本件商標は、引用商標と社会通念上同一である。また、本件商標の指定商品「電子応用機械器具並びにその部品及び附属品,タブレット型コンピュータ用スタンド,ノートブック型コンピュータ用スタンド」(第9類)は、申立人の使用に係る商品「スマートフォン用スタンド,タブレット型コンピュータ用スタンド」と同一又は類似である。 よって、本件商標は、その登録出願時において、我が国で周知の引用商標と同一又は類似する商標であって、その指定商品も申立人の業務に係る商品と同一又は類似するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (8)商標法第4条第1項第15号について 商標法第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標は、商標登録を受けることができない旨を規定する。 上述のとおり、本件では、引用商標は、本件商標の登録出願時において、我が国における取引者・需要者の間で、少なくとも「スマートフォン用スタンド,タブレット型コンピュータ用スタンド」についての申立人の商標として広く知られていたと推認され、本件商標は、引用商標と社会通念上同一である。また、引用商標を構成する「nulaxy」の文字は、申立人が独自に考案した造語である。 さらに、申立人は、様々な電気通信機器及び電子応用機器を製造販売しており、本件商標の指定商品「電子応用機械器具並びにその部品及び附属品,タブレット型コンピュータ用スタンド,ノートブック型コンピュータ用スタンド」は、申立人が取り扱う電子応用機器の部類に属するものであり、商品の需要者が一致する。 そうすると、本件商標の登録出願時において、本件商標権者によって本件商標が使用された場合には、その商品に接する取引者、需要者は、取引上要求される一般的な注意をもってしても、その商品が申立人の商品であるとか、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる可能性は十分に予想され、需要者がその出所について混同を生じることは明らかである。 よって、本件商標は、本件商標の登録出願時において、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 2 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、また、同法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するため、商標登録を受けることができないものであることから、本件商標は同法第43条の2第1号の規定により、その登録が取り消されるべきものである。 第4 当審における取消理由の要旨 当審において、商標権者に対し、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである旨の取消理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。 第5 本件商標権者の意見 上記第4の取消理由に対して、本件商標権者は、要旨次のように意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 引用商標の周知性について (1)地理的範囲 申立人は、申立人商品が、我が国において、申立人の関連会社であるTOMIGHT社を通じて、ECサイト「Amazon」を通じて販売しているとして、甲第8号証を提出した。 ここにいう「Amazon」とは、「Amazon.co.jp」(以下、単に「Amazon」という。)を指すと思料されるところ、Amazonは、日本語で提供され、日本国内に商品を発送するECサイトであり、一方で、日本国内の特定の地域のみを対象としているわけではない。 そうすると、申立人商品は、主にAmazonで販売されるものであることから、引用商標の周知性判断における地理的範囲は、日本全国である。 (2)需要者の範囲 申立人商品は、「トランスミッター」、「スマートフォン用スタンド」、「タブレット型コンピュータ用スタンド」等である。これら各商品の売上金額(内訳)は、申立人による提出証拠からは不明であるが、提出証拠及び別掲2(1)ないし別掲2(3)における、我が国におけるランキング情報のほとんどは、「スマートフォン用スタンド」についてである。 そこで「スマートフォン用スタンド」について検討してみると、本件商標の登録出願の直後である平成31年2月時点の、我が国におけるスマートフォン普及率は、85.1%であり(乙1)、スマートフォン所有者の層と、スマートフォン用スタンドの需要者は一致すると考えられることから、申立人商品の需要者は、少なくとも、日本国民の約85%である。 さらに、申立人商品は、日用品や雑貨のカテゴリーに属するものであり、スマートフォンを所有していなくても、家族、友人、恋人等が贈り物として購入することもあり得ることから、これらも当然に需要者に含まれる。そうすると、申立人商品の需要者は、我が国のほぼ全国民ということになる。 (3)各証拠等の検討 ア 甲第11号証の1について 同証拠は、「ランク王」なるサイトにおける、2019年の「おすすめ人気ランキング10選」であると推察されるところ、このうち2つが申立人商品であることが述べられている。 しかしながら、該サイトの掲載基準は一切不明であり、販売数量や売上高への言及が一切ないことから、少なくともこれら情報に基づいたものではなく、選定者の主観によるところが大きいものと考えられる。しかも、例えば、広告費用を支払ったり、該サイトにバナー広告を掲載することで優先的に選定される可能性もある。 加えて、該サイトは、Amazon等のECサイトヘのリンクを張り、読者がそれをクリックするか、訪間先で実際に商品を購入することで広告収入を得る、いわゆるアフィリエイトサイトであり、必ずしも有名な商品を選定するわけではなく、むしろ同種のサイト間での差別化を図る目的から、未だ知られていない商品を探し出して紹介することが多いという実情がある。 選定の経緯や基準が明らかにされない限り、このようなアフィリエイトサイトにて商品が紹介された事実があったとしても、引用商標が周知であったということはできない。 イ 甲第11号証の2について 同証拠は、インターネット上のレビュー記事と思われるところ、その執筆者や投稿者、記事内容すら一切不明であることから、この記事の存在をもって、引用商標が周知性を獲得していたことは証明されない。 一般に、このようなレビュー記事も、いわゆるアフィリエイトサイトであり、必ずしも有名な商品を選定するわけではなく、例えば同種の商品間で価格が安いなど、よりリンクボタンがクリックされ、あるいは訪問先で購入されやすい商品を探し出して紹介することが多い。このようなアフィリエイトサイトを運営する者は、同種の他のサイトとの差別化を図るために、様々な要素に基づいて商品を選定するプロフェッショナルであり、彼ら/彼女らが発見した商品が、その時点で有名であったとする根拠はない。 ゆえに、このようなアフィリエイトサイトにて商品が紹介された事実があったとしても、引用商標が周知であったということはできない。 ウ 甲第11号証の3について 同証拠は、「G-Ranking」なるサイトにおいて、申立人商品を紹介するウェブページであると推察されるところ、その紹介内容は、単に商品写真と商品名を掲載し、販売サイトヘリンクを張っているのみであり、選定基準が一切不明であり、かつ、アフィリエイト報酬目的で紹介されているにすぎず、引用商標の周知性を立証する資料とはならない。 加えて、当該商品に寄せられたコメントは、わずか6件にすぎない。 これら事実に鑑みれば、同証拠によって、引用商標の周知性が証明されることはない。 エ 甲第11号証の4について 同証拠は、「R.U.I.」のペンネームで活動する人物が、自ら購入した商品等を紹介するブログサイトにおいて(乙2の1)、申立人商品を紹介するウェブページである。 しかしながら、該ページを含むブログサイトは、商品等を紹介することでアフィリエイト報酬を得ることを目的としてするものであり、平成30年7月18日(乙2の2)から令和2年10月11日の期間に、494件もの記事が掲載されている(乙2の3)。すなわち、該サイトでは、運営者が購入した商品を輻広く紹介しており、そのうちの1つに申立人商品が含まれていたにすぎない。実際に、甲第11号証の4のウェブページにおいて、申立人商品と思われる商品の販売ページヘのリンクボタンが、3箇所において配置されている(乙2の4)。 しかも、該サイトは、運営者の好みの商品を紹介しているものであり、有名な商品や、よく売れている商品を選んでいるわけではないのだから、このようなウェブページがひとつ存在する事実をもって、申立人商品が周知であったということはできない。 オ 甲第11号証の5について 同証拠は、申立人商品を紹介するウェブ記事であるが、該記事は本来、「Android Smart」というサイトに掲載されたものである。記事タイトルの右下付近にある「Android Smart」のロゴは、記事の提供元を表すものである。 そこで、「Android Smart」を見てみると、該サイトは、Androidに関連する商品等を紹介するものである。 そして、ここに掲載される記事は、必ずしもサイト運営者により執筆されるわけでなく、外部ライターによるものであることもあり、さらに、広告費用を支払うことで記事掲載してもらうこともできる(乙3の17)。 本件商標権者の調査によると、平成30年1月1日から令和元年12月31日の期間に、該サイトにおいて、スマートフォン用スタンドやこれに類する商品について、少なくとも16件の記事が掲載されており(乙3の1~乙3の16)、甲第11号証の5の記事は既に該サイトから削除されていることから、実際はより多くの関連記事が執筆、掲載されたものと推察される。 そして、現存する記事にて紹介されている商品の商標を見てみると、「FACEVER」、「Lecone」、「Andobil」、「Worthown」、「NPET」、「Apona」、「GAZE」、「EAYHM」、「Lomicall」、「Zenoplige」、「PlumRiver」、「SooPii」及び「Miuly」(乙3の1~乙3の13)であり、必ずしも周知な商標の商品が選ばれているわけではない。これは外部ライターが、他の記事との差別化を図るために、あまり知られていない商品を発掘して紹介しているか、各記事が広告費用を支払うことで掲載される、いわゆる広告記事であるかのいずれであると推察され、甲第11号証の5の記事についても、同様である。 したがって、甲第11号証の5の記事の存在によって、引用商標が周知であったということはできない。 カ 甲第11号証の6について 同証拠は、「みんカラ」なる、自動車に関連するレビューサイト(乙4)における、申立人商品のレビュー記事である。ここで紹介される申立人商品は、「Bluetoothレシーバー」であり、申立人が提出した証拠の中で、Bluetoothレシーバーに関するものは、同証拠のみである。 申立人が、他にどのようなBluetoothレシーバーを販売しているか、それぞれの売上金額(内訳)がいかほどであるか、不明であるが、いずれにせよ、申立人商品がレビューされたのは同証拠における1件のみであり、この事実をもって、引用商標が周知であったとも、同証拠により周知性を獲得したともいうことができない。 キ 甲第13号証の1ないし甲第13号証の5について 同証拠らは、動画投稿サイト「YouTube」における、申立人商品を紹介する動画であると考えられる。 しかしながら、これら動画は、確かに、平成28年から平成30年にかけて投稿された動画であると思料されるものの、これらが日本国民によって視聴された事実や、本件商標の登録出願時及び登録査定時における視聴回数についての証拠は、一切提出されていない。 そうすると、同証拠らによって、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、周知であったということはできない。 そもそも、同証拠らの動画の、提出時における視聴回数は、せいぜい179回(甲13の3)、377回(甲13の5)、2,557回(甲13の2)、6,522回(甲13の4)であり、最も多いものでも、41万2,430回(甲13の1)にすぎない。 甲第13号証の3の動画は、平成30年6月7日に投稿されたものであり、約2年間で179回しか視聴されていない。甲第13号証の5の動画は、平成28年8月19日に投稿されたものであり、約4年間で377回しか視聴されていない。 甲第13号証の2の動画は、平成30年7月29日に投稿されたものであり、約2年間で2,557回しか視聴されていない。 甲第13号証の4の動画は、平成29年11月2日に投稿されたものであり、約3年間で6,522回しか視聴されていない。 最も視聴回数の多い甲第13号証の1の動画についても、平成28年3月24日に投稿された動画であり、約4年間で、41万2,430回視聴されたにすぎない。これは、平均すれば年間約10万回再生されたにすぎず、さらにいえば、仮に本件商標の登録出願時に41万回視聴されていたとしても、申立人商品の需要者は広く日本国民であることから、わずか41万回程度再生された(すなわち、最大で約41万人に視聴された)動画がひとつあったとしても、その事実によって、申立人商品が周知性を獲得していたことを証明することはできない。 加えて、申立人商品は、我が国において平成30年7月より販売されているとされているところ、甲第13号証の1及び甲第13号証の3ないし甲第13号証の5の動画は、いずれもそれ以前に投稿されたものである。甲第13号証の1にいたっては、これよりも2年以上も前に投稿されているものであるから、これらの動画で紹介される商品は、申立人商品ではないか、少なくとも申立人商品が紹介されている事実は、立証されていない。結局のところ、これらの動画投稿の事実によって、引用商標の周知性が立証されることはない。 ク 甲第14号証の1及び甲第14号証の2について 同証拠らは、インターネット検索エンジン「Google」及び「YAHOO!JAPAN」における「nulaxy」の検索結果である。申立人は、申立人商品が上位に表示されていると述べるが、これら検索結果に現れた商品が申立人商品であることについての立証はなされていない。 また仮に、これらがすべて申立人商品であるとしても、申立人は、引用商標が造語であると主張するものであり、そうであるとすると、検索結果に引用商標が多く現れるのは、他者による商標の使用例が少ないからにほかならず、引用商標が我が国の需要者に広く知られていたかとは、無関係である。 そもそも、同証拠らの検索日時は不明であり、本件商標の登録出願時及び登録査定時における検索結果がどうであったかも、一切不明である。 したがって、同証拠らをもって、引用商標の周知性を立証することはできない。 ケ 甲第20号証について 申立人は、「(ア)これまで日本では、ECサイト『Amazon』において、合計133,383個の『nulaxy』商品が販売され、総売上は約1億9千万円にも上る(乙20)。(イ)現在では、一日に150個以上の『nulaxy』のスマートフォン用スタンドが販売されており、『nulaxy』商品全体としてとしては、一日に300個以上が販売されている。」と述べる。 これらについて、以下それぞれ検討する。 (ア)について 申立人は、販売数量及び売上金額を立証する証拠として、甲第20号証を提出した。確かに、同証拠には、総販売数が133,383個であること、及び、総売上が187,303,544円であることが記載されている。 しかしながら、同証拠は、その集計期間が不明であることから、本件商標の登録出願時及び登録査定時における、販売数量及び売上金額は、一切不明である。 また、同証拠で対象とされる商標の内容も不明であり、引用商標が付されていた商品であるかすら明らかにされていない。例えば、同証拠の「商品名」には、引用商標が記載されていないものが多数含まれており(乙5)、これら商品が本件異議申立とどのように関係するのか、不明である。 そもそも、同証拠は誰がどのような根拠に基づいて作成したのか不明であり、かつ、売上金額等を示す帳簿等の客観的資料は提出されておらず、しかも、前述のとおりその内容自体に疑義があるものであるから、引用商標の周知性の判断の基礎として用いることは、許されない。 (イ)について 申立人のスマートフォンスタンドが、一日150個以上販売されていること、及び、申立人商品全体で一日330個以上が販売されていることについては、なんらの証拠も提出されていない。また、同種の他社商品の販売情報等と比較しない限り、これらの販売数量の多寡を判断することはできない。 そもそもこれらの情報は、「現在」、すなわち本件商標の登録出願時及び登録査定時から1年間以上も経過した時点での情報にすぎず、前記両時点での周知性の立証には寄与しない。 コ 別掲2(1)について 指摘されたサイトは、ビッグローブ株式会社及び株式会社ティーイーウェブが共同運営するレビューサイトである(乙6の1)。該サイトも、アフィリエイトサイトの一種であり、商品の販売サイトヘリンクを張り、広告収入を得るものである(乙6の2)。また、このランキングも、販売数量や売上金額に基づいたものではない。 このようなランキング形式のアフィリエイトサイトは、その性質上、ECサイトで販売される商品しか紹介することができない。ここで、我が国におけるEC化率を調べてみると、平成30年において6.22%であり、令和元年において6.76%である(乙6の3)。すなわち、それぞれ、93.78%及び93.24%は、ECサイト以外の店舗(要するに実店舗)で購入されていることになる。 スマートフォン用スタンドは、多くの大手企業によっても製造されており、例えば家電量販店最大手のヨドバシカメラでは、「エレコム」、「サンワサプライ」、「ミヨシ」、「オウルテック」、「日本トラストテクノロジー」、「スクウェア・エニックス」、「1-0DATA」、「Anker」、「Belkin」、「Moft」及び「ASUS」等の商品が販売されている(乙6の4)が、申立人のような、実店舗への販路を有しない企業は、ECサイトにおいて販売するのみである。 そして、我が国において、前者が約93%の売上を占めるのに対して、後者はわずか6~7%でしかない。その結果、アフィリエイトサイトは、我が国においてわずか数%しかシェアを有しないECサイトの商品のみをターゲットにして、ランキング等を作成せざるを得ないのであるから、そもそも日本国民の数%しか購入しない商品の中から候補を選定しているものであり、引用商標の需要者は全日本国民であることを考え合わせると、このようなレビューサイト(アフィリエイトサイト)のいくつかに掲載されたとしても引用商標が周知性を獲得していたとはいえない。 そもそも、指摘されたランキングは、令和2年5月4日のものであり(乙6の2)、本件商標の登録出願日から約8ヶ月経過後の情報にすぎないものであり、本件商標の登録出願時における、引用商標の周知性を立証することはできない。 また、該ウェブページは、令和2年10月11日に本件商標権者がアクセスした時点において、わずか278回閲覧されたのみであり(同前)、ここに掲載された事実をもって、引用商標が周知性を獲得したともいえない。 サ 別掲2(2)について 指摘されたサイトは、RESKY(リスキー)なるペンネームで活動する人物が運営するブログサイトであり、そのサイト名称も「RESKY」である(乙7)。 取消理由通知書において、該サイト中、「リスキー読者が選んだ2019年に最も売れたものランキングTOP20」のブログ投稿において、申立人商品が掲載されていることが指摘された。 そこで、該ブログ投稿の内容を見てみると、「2019年に最も売れたモノ」の上位20位を紹介するものとされ、第16位に、申立人商品と思料される商品が掲載されている。 しかしながら、「最も売れた」かどうかは、販売数量や売上金額に基づいて客観的に判断されるものであるのに、それを「リスキー読者が選ぶ」というのは、どのような内容をいうのか不明である。 また仮に、この部分を無視するとしても、これら商品が「最も売れた」とされるのは、どのような場所や範囲において、どのような基準に基づくものか一切不明であるし、申立人ですらそのような主張をしていないのであるから、文字どおり「最も売れた」と理解することは正しくなく、あくまで執筆者(RESKY氏)の主観に基づくランキングであると理解するのが妥当である。 そして、このサイトも、要するに一種のアフィリエイトサイトであり、ECサイトヘリンクを張って広告報酬を得るものである(乙7)から、運営者が広告報酬を得やすい商品を選んだにすぎず、ここに掲載された事実をもって、引用商標が周知であったとはいえない。 そもそも、該ブログ投稿は、令和2年4月3日のものであり(同前)、本件商標の登録出願日から約7ヶ月経過後の情報にすぎないものであるから、本件商標の登録出願時における、引用商標の周知性を立証することはできない。 シ 別掲2(3)について 指摘されたサイトは、「やまち」なるペンネームで活動する人物が、自らが購入した商品等を紹介するブログサイトである(乙8の1)。すなわち、該サイトで紹介される商品は、運営者の個人的な趣向等に基づいて購入されたものであり、有名だから購入したとは限らない。 そして、指摘された、申立人商品と思料される商品についてのブログ記事を見てみると、申立人商品による使用感等が紹介されるとともに、ECサイトヘのリンクが張られている(乙8の2)。 すなわち、このサイトも、要するに一種のアフィリエイトサイトであり、運営者がアフィリエイト報酬を得やすい商品を選定して紹介しているものであり、引用商標が周知であったから選択されたとする根拠はない。アフィリエイト報酬を目的とするサイトである以上、前述コと同様に、そもそも日本国民のわずか数%しか購入しない商品の中から、効率よくアフィリエイト報酬を獲得できる商品を選択したにすぎず、このブログ記事の存在をもって、引用商標が周知であったということはできない。 ス 本件商標権者の使用事実について 取消理由通知書において、職権調査の結果、本件商標権者が、申立人による引用商標の使用とは別個に、本件商標を指定商品について使用していると認めるに足りる事実は発見できなかった旨が指摘された。 しかしながら、本件商標権者は、令和元年頃、ECサイト「楽天市場」における自らが運営する店舗において、本件商標を付した商品を販売していた(乙9の1、乙9の2)。この事実から、仮に「nulaxy」なる商標が何らかの顧客吸引力を獲得していたとしても、必ずしも申立人による使用とはいえず、申立人による提出証拠によって、引用商標が周知となっていたとはいえない。 (4)周知性についてのまとめ ア 申立人商標の周知性判断における地理的範囲は、日本全国である。 イ 申立人商品の需要者は、全日本国民である。 ウ 甲第11号証の1ないし甲第11号証の5、甲第13号証の1ないし甲第13号証の5、甲第14号証の1及び甲第14号証の2、甲第20号証、及び、別掲2(1)ないし別掲2(3)に基づいて、本件商標の登録出願時及び登録査定時における、申立人商品が我が国の需要者の間で広く知られている商標となっていたとはいえない。 申立人商品は、主にAmazonで販売されるものであり、日本国内における売上高ベースのシェアは、多くとも6~7%にすぎない。各証拠のランキング等は、この中からアフィリエイト報酬を獲得しやすい商品を選定したにすぎず、ランキング掲載の事実は、引用商標の周知性とは無関係である。そもそも、申立人により提出された証拠及びランキング等の情報は、合わせてわずか8件にすぎず(甲11の1~甲11の5、及び、別掲2(1)~別掲2(3))、しかも、別掲2(1)及び別掲2(2)に至っては、本件商標の登録出願時より長期間経過後の情報である。 エ 本件商標権者は、本件商標を自ら使用しており、本件商標の顧客吸引力を獲得している。 オ 以上から明らかなとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び/又は登録査定時において、我が国において周知とはなっていなかった。 2 商標法第4条第1項第10号該当性についてのまとめ 以上述べたとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び/又は登録査定時において、我が国において周知とはなっていなかったのであるから、商標及び指定商品の類否を検討するまでもなく、本件商標が、商標法第4条第1項第10号に該当することはない。 3 その他の不登録事由について (1)商標法第4条第1項第15号について 申立人は、本件商標権者が本件商標を登録し使用すると、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認する、いわゆる広義の混同が生じる旨を述べる。 しかしながら、引用商標は周知性を獲得していないのだから、需要者においてそのような混同は生じないし、また申立人が述べるような利益は、法的に保護されるに値しないものである。 ゆえに、本件商標は、商標法第4条第1項第15号には該当しない。 (2)商標法第4条第1項第19号について 申立人は、本件商標の登録出願が不正の目的をもって行われた旨を種々述べるが、いずれも失当である。 申立人は、本件商標権者が登録出願する商標に、Amazon内で流通する商品に係る他人のブランドが含まれるとして5件の登録出願を挙げるが、Amazon内で流通することをもって、不正の目的を有することにはならない。 また、本件商標権者の過去の登録出願例で、「不正の目的」を有するか又は他人の周知商標と同一又は類似するものとして拒絶された6件の事例を挙げるが、「不正の目的」があることと、他人の商標が周知であったことは本質的に別個の要件であるのに、これを同列に検討しようとする姿勢は、合理性を欠く。そもそも、これらの登録出願は、本件異議申立とは事案を異にするものであるから、これら事実をもって、本件商標の登録出願が不正の目的をもって行われたことの根拠とはならない。 さらに、申立人は、引用商標が造語であるから、本件商標の不正の目的が推定される旨を述べるが、これは引用商標が周知であることが前提であるので、本件異議申立では適用することができない。 以上より、本件商標の登録出願は、不正の目的をもってなされたものではないので、商標法第4条第1項第19号には該当しない。 (3)商標法第3条第1項柱書について 本件商標権者は、本件商標を使用する意思を有しているし、実際に使用していた事実もあるから(乙9の1、乙9の2)、本件商標は、商標法第3条第1項の要件を具備するものである。 (4)商標法第4条第1項第7号について 申立人は、(ア)本件商標は、造語である引用商標と社会通念上同一であり、(イ)引用商標が申立人の商品ブランドとして取引者、需要者間において注目されている状況において、(ウ)本件商標権者は、本件商標以外にも、他人の使用する商標を含む70件もの登録出願を行っており、(エ)申立人に対して本件商標を買い取らせる目的又は申立人の事業活動を阻害する目的が推認される、ことを述べ、本件商標の登録出願が商標法第4条第1項第7号に該当すると主張する。 しかしながら、(ア)はともかく、(イ)引用商標は日本国内で周知性を獲得しておらず、(ウ)本件商標権者が他の登録出願を行っていることは本件異議申立とは無関係であるし、(エ)本件商標権者が商標を買い取らせようとしていることなどについては何らの証拠も提出されていないのだから、申立人の勝手な想像にすぎない。 したがって、本件商標は、その登録出願の過程になんらの間題をも有しないものであるので、公序良俗に違反することはなく、商標法第4条第1項第7号に該当することはない。 4 むすび 以上検討したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当することはない。また、商標法第3条第1項柱書の要件を具備し、かつ、同法第4条第1項第7号、同第15号及び同第19号のいずれにも該当しない。 第6 当審の判断 1 商標法第3条第1項柱書該当性について 商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は商品について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は商品に使用をしている商標、あるいは、将来、自己の業務に係る商品又は商品に使用する意思のある商標と解される(平成24年5月31日 知財高裁 平成24年(行ケ)第10019号)。 そうすると、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、本件商標を自己の業務に係る指定商品について現に使用をしていなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本件商標は、同法第3条第1項柱書の要件を具備するといえるところ、申立人が提出する全証拠によっては、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定商品に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するものである。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)事実認定 申立人の提出した甲第1号証ないし甲第31号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)及び同人の主張並びに職権調査によれば、以下の事実を認めることができる。 ア 申立人である「香港億泰徳科技有限公司」(英語名:YTD Co.,Ltd.)は、2015年(平成27年)1月6日に設立された中国法人(有限責任公司)であって(甲3)、申立人商品について「nulaxy」という電子機器ブランドを展開している(甲4)。 イ 引用商標のブランドロゴは、別掲1のとおりであり、申立人のウェブサイトを始め、申立人商品、その包装、取扱説明書などに使用されている。 ウ 申立人は、2015年(平成27年)1月に、米国において、「nulaxy」の欧文字を商標出願し、同年8月に登録されており(甲2)、その後も2018年(平成30年)までに欧州、オーストラリア、インドにおいて「NULAXY」の欧文字を登録出願し、各国で登録されている(甲5~甲7)。 エ 申立人商品は、申立人の関連会社であるShenzhen社及びTOMIGHT社を正規販売店として、主にECサイト「Amazon」を通じて、世界各国で販売されている。 我が国では、ECサイト「Amazon」における「Dynamic Gears JP」(申立人の関連会社であるTOMIGHT社が運営するECショップ。現在の店名は「Nulaxy Direct JP」。以下「申立人ECショップ」という。)が正規販売店として申立人商品を販売している(甲8、甲10)。 申立人はこれらの関連会社に対して「nulaxy」商標の使用に関するライセンスを無償で付与している(甲9)。 オ 引用商標が付された商品は、「タブレット型コンピュータ用スタンド、スマートフォン用スタンド、ワイヤレス受信機、無線式コンピュータマウス、トランスミッター」など、様々な電気通信機器及び電子応用機器にわたり、我が国では遅くとも2016年(平成28年)11月に、引用商標が付された商品の販売が開始されている(甲10、甲25)。 カ 引用商標が付されたスマートフォン用スタンドの価格は、950円、1,599円(甲26)、1,499円(甲10)、1,899円や1,350円(甲11の1)であり、タブレットPC用スタンドの価格は1,850円や2,250円(甲26)であって、いずれも約1,000円から2,000円程度と比較的安価である(甲26)。 キ 我が国のECサイト「Amazon」において、今まで、引用商標が付された商品が合計133,383個販売され、総売上は約1億9千万円である(甲20)。 そして、引用商標が付された商品の申立人ECショップにおける2018年11月の販売数量は180個、売上高は約298万円、2019年8月の販売数最は6,751個、売上高は約980万円であって、日本全国の顧客に販売されている(甲21、甲22)。 また、本件商標の登録出願日である2019年9月7日には、申立人の「nulaxy」のスマートフォン用スタンドは、合計136個が販売され、本件商標の登録査定日である2019年12月2日には、合計139個が販売されている(甲23、甲24)。 ク 我が国のECサイト「Amazon」における申立人の広告費は、当該ウェブサイトの閲覧者のクリック数に応じて発生するものであって、1クリック当たりの単価は広告対象(キャンペーン)毎に異なる金額が設定されているところ、2016年11月16日から2020年11月6日までの約4年間の「nulaxy」のスマートフォン用スタンド及びパソコン用スタンドの広告費の合計は、約2,992万円であった(甲25)。 ケ 引用商標が付された商品は、我が国のECサイト「Amazon」でも高評価を獲得し(甲10)、インターネット上では多くの商品レビュー記事が投稿されているところ(甲11)、例えば、「ランク王」のウェブサイトにおいて「【2019年】iphoneスタンドのおすすめ人気ランキング10選!」の見出しの下、引用商標が付されたスマートフォン用スタンドが2点紹介されている(甲11の1)。その他、当審において職権をもって調査すると(別掲2)、引用商標が使用された申立人商品は、需要者の評価も高いことがうかがえる。 コ 本件商標権者は、楽天市場のショッピングサイト中の「WES STORE」において2019年12月16日又は同月17日に注文されたNulaxyの欧文字が記載されたパソコン用スタンド又はワイヤレス充電器を、1個ずつ販売した実績があるが(乙9の1、乙9の2)、申立人は、本件商標権者に対して引用商標の使用を許諾しておらず、販売の委託を目的として商品の供給も行っていない(甲27)。 その他、申立人及び本件商標権者以外の者による引用商標と同一又は類似する標章の使用は確認できない(甲14の2、職権調査)。 サ スマートフォン用スタンドやパソコン用スタンドの需要者は、スマートフォンやパソコンを所有する全ての者とはいえず、スマートフォンやパソコンを立てかけて使用する者又は立てかけて使用することを欲している者に限られるものである(申立人の主張、職権調査)。 シ 引用商標を構成する「nulaxy」の文字は、我が国の一般的に使用されている英和辞典等への載録は確認することができないものであり、申立人が独自に考案した造語であって(申立人の主張)、本件商標権者が偶然に発想するとは考え難いものである。そして、本件商標は、引用商標と欧文字のつづりを同じくする構成からなるものであり、かつ、本件商標の指定商品は、申立人商品と同一又は類似の商品であって、そのように商標と指定商品の双方が一致した組み合わせにおいて、申立人と関係を有しない第三者によって、偶然に登録出願されたとは考え難いものである(職権調査)。 (2)引用商標の周知性について 上記(1)において認定した事実によれば、申立人は、我が国において、遅くとも2016年(平成28年)11月より自己の製造する「スマートフォン用スタンド、タブレット型コンピュータ用スタンド」について引用商標を使用しており、申立人のウェブサイトを始め、商品自体やその包装、取扱説明書などに、申立人が独自に考案した造語を構成文字とする引用商標を統一的に使用している。 そして、本件商標の登録出願日である2019年9月7日には、申立人の「nulaxy」のスマートフォン用スタンドは、合計136個が販売され、本件商標の登録査定日である2019年12月2日には、合計139個が販売され、2018年11月の1ヶ月の販売数量は180個、売上高は約298万円、2019年8月の販売数最は6,751個、売上高は約980万円であって、申立人の今までの販売個数は、合計133,383個であり、総売上は約1億9千万円である。 また、スマートフォン用スタンドやパソコン用スタンドの需要者は、スマートフォンやパソコンを所有する全ての者とはいえず、スマートフォンやパソコンを立てかけて使用する者又は立てかけて使用することを欲している者に限られるものであり、引用商標が付された商品の価格が、約1,000円から2,000円程度と比較的安価であることを鑑みると、その販売個数や売上げは、相当程度に高いものであると認められ、我が国のおける申立人の、2016年11月16日から2020年11月6日までの約4年間の「nulaxy」のスマートフォン用スタンド及びパソコン用スタンドの広告費の合計は、約2,992万円である。 さらに、申立人商品は、本件商標の登録出願日前からスマートフォン用スタンドの人気ランキングを紹介するサイトなど、各種のインターネット記事で紹介されている。 加えて、当審において職権をもって調査するも、少なくとも、本件商標権者が、申立人による引用商標の使用とは別個に、本件商標をその指定商品について使用していると認めるに足る事実は発見できなかった。 以上を総合すると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたとみるのが相当である。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標は、「Nulaxy」の欧文字を標準文字で表してなり、引用商標は、「nulaxy」の欧文字からなるところ、外観においては、語頭の「N」の大文字と「n」の小文字の違いはあるものの、その構成文字のつづりを同一にするものであるから、外観上、同一又は類似のものである。 次に、両商標からは「ヌラクシー」の同一の称呼を生じるものであり、観念において、両商標は構成文字を同一にするものであるから、生じる観念が異なることはない。 そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのある同一又は類似の商標というべきである。 (4)本件商標の指定商品と申立人商品との類否について 本件商標の指定商品「電子応用機械器具並びにその部品及び附属品、タブレット型コンピュー夕用スタンド、ノートブック型コンピュータ用スタンド」と申立人商品とは、同一又は類似の商品である。 (5)小括 以上のとおり、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた引用商標と同一又は類似の商標であって、その指定商品は、申立人商品と同一又は類似の商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。 3 本件商標権者の主張について (1)本件商標権者は、引用商標の周知性の判断における申立人商品の需要者は、全日本国民であって、それらの者によって、本件商標の出願時及び登録査定時における、申立人商品が我が国の需要者の間で広く知られている商標となっていたとはいえない旨を主張する。 しかしながら、スマートフォンやパソコンを所有する全ての者とはいえず、スマートフォンやパソコンを立てかけて使用する者又は立てかけて使用することを欲している者に限られるものであると考えるのが自然である。 したがって、本件商標権者の上記主張を採用することはできない。 (2)本件商標権者は、申立人商品は、主にAmazonで販売されるものであり、日本国内における売上高ベースのシェアは、多くとも6ないし7%にすぎないところ、各証拠のランキング等は、この中からアフィリエイト報酬を獲得しやすい商品を選定したにすぎず、ランキング掲載の事実は、引用商標の周知性とは無関係であるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時における、申立人商品が我が国の需要者の間で広く知られている商標となっていたとはいえない旨を主張する。 しかしながら、上記2のとおり、申立人による引用商標が付された商品の販売、広告の実績は相当程度に高いものと認められ、また、インターネットの各サイトにおいても、人気ランキング等に選定されるなど、広く紹介されていたことが認められ、同商品の顧客や顧客になりうる者に広く知られているものというのが相当である。 そして、本件商標は、申立人が独自に考案した造語であり、また、本件商標の指定商品も申立人の取扱いに係る商品と同一又は類似するものであるとすると、本件商標権者は、本件商標の登録出願に当たり、「nulaxy」ブランドの周知性を認識していたと推認し得るものである。 したがって、本件商標権者の上記主張を採用することはできない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するとしても、同法第4条第1項第10号に該当し、その登録は同条第1項に違反してされたものであるから、その他の登録異議の申立ての理由について判断するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2020-900083

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存