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商標無効審判

2020-890085

スリーディーナーラム、スリーデイナーラム、サンデイナーラム、スリーディーナー、スリーデイナー、サンデイナー、ナーラム、ナー、ノア、ノール、エヌオオアアル、ラム、アアルエイエム

審判番号
2020-890085
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2019-001191
登録番号
6249338
請求日
2020年12月24日
審決日
2021年09月17日
公報発行日
2022年10月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】マイクロン テクノロジー, インク.
  • 【請求人代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
  • 【被請求人】株式会社 半導体エネルギー研究所
  • 【被請求人代理人】特許業務法人不二商標綜合事務所
審判長/審判官
  • 審判長 小松 里美
  • 審判官 豊田 純一
  • 審判官 渡邉 あおい
分類
T112 .13 -Y (W0942) / T112 .16 -Y (W0942) / T112 .272-Y (W0942)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法3条1項3号商標法3条1項6号商標法4条1項16号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第1項第6号、商標法第4条第1項第16号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6249338号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6249338号商標(以下「本件商標」という。)は、「3D NOR RAM」の文字を標準文字で表してなり、平成31年1月8日に登録出願、別掲に記載のとおりの第9類及び第42類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和2年4月14日に登録査定、同年5月1日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第9類「半導体素子,電子回路,メモリーチップ,メモリーモジュール,半導体メモリー,コンピュータメモリー装置,フラッシュメモリカード,CPUを含む半導体集積回路,画像処理用半導体チップ,プログラム可能な半導体チップ,デジタルデータ記憶装置,半導体素子を搭載した電子応用機械器具,ランダムアクセスメモリ(RAM)カード,メモリーカード用読み取り・書き込み装置,コンピュータ記憶装置,データ記憶装置,半導体記憶装置,コンピュータープログラムを記憶させた記録媒体,コンピュータ用データ記憶媒体,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。),コンピュータハードウエア,ソリッドステートドライブ」及び第42類「電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験及び研究並びに開発,半導体に関する試験及び研究並びに開発,金属酸化物・半導体・電子応用機械器具・電気通信機械器具に関する試験及び研究並びに開発,金属酸化物・半導体・電子応用機械器具・電気通信機械器具の製造・加工に関する技術研究情報の提供,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計に関する指導・助言又は情報の提供」(以下、これらをまとめて「無効請求指定商品・役務」という。)についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 (1)無効の事由 本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当し、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。 (2)本件商標について 本件商標は、「3D NOR RAM」の欧文字を標準文字で表してなるところ、半導体に関係する商品・役務である無効請求指定商品・役務との関係において、本件商標を構成する「3D」、「NOR」及び「RAM」の各語、並びに「3D NOR RAM」の全体は、記述的であって識別力のない語である。 ア 「3D」の記述性 「3D」とは3次元を意味する記述的で識別性のない語である。無効請求指定商品・役務が属する半導体の技術分野(以下「本件分野」という場合がある。)においては、常に、メモリの大容量化、低コスト化が求められているところ、一枚の基板上にメモリ・セルを3次元方向に積み上げる革新的技術が2007年頃に着想された。まず、NANDフラッシュメモリにおいて「3D NAND」が実現し(甲3)、現在「3D DRAM」の実現が待たれている(甲4)。本件分野において「3D」の語は、「3次元積層」の意味で、単独又は、半導体メモリの名称と組み合わせて、記述的に使用されている実情がある。さらに、本件分野においてメモリを3次元に積層する技術は、今後も一段と開発、展開が拡大していくことが予見される(甲5)。 イ 「NOR」の記述性 本件分野において、「NOR」は「NOR型フラッシュメモリ」を意味し(甲3、甲6)、NOR型は、最初に発明されたフラッシュメモリの方式であり、電源を切ってもデータを保持できる不揮発性メモリであることからストレージ・メモリに適しており、長期間データを保存できる点とランダムアクセスが可能な点に特長がある半導体メモリである(甲6、甲7)。 ウ 「RAM」の記述性 「RAM」とは、装置内のどこに記録されたデータも等しい時間で読み書きできる意味の「Random Access Memory」の頭文字をとったものであり(甲8)、「RAM」は、元来、電源を切るとデータが消失する揮発性メモリであることから、ワーク・メモリに適した半導体メモリである(甲7)。半導体に関係する分野においては、需要者は「RAM」の語から一義的に「ランダムアクセスメモリ」を認識するとみるのが自然であり、本件分野において、「RAM」の語は、「ランダムアクセスメモリ」を指標する記述的で識別性のない語である。 エ 「3D NOR RAM」全体の記述性 上記アないしウのとおり、「3D」、「NOR」及び「RAM」の各語が有するそれぞれの意味合いからすると、「3D NOR RAM」全体としては、「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ」の意味合いを認識させることは明白である(甲3~甲8)。 この点、本件商標の審査において、令和元年12月13日提出の意見書では、「揮発性メモリーを認識させる『3D NOR』と揮発性メモリーの対義語である不揮発性メモリーを認識させる『RAM』とが、『3D NOR RAM』と一連一体となっている場合、本願商標には対義する意味の文字が入っていますので、本願商標の指定商品又は指定役務を、普通に用いられる方法で表示したものではありません。」と述べられている(「不揮発性メモリーを認識させる『3D NOR』」と「揮発性メモリーを認識させる『RAM』」の誤りと思われる。)。 しかしながら、甲第7号証において「不揮発性RAMの品ぞろえが豊富に」と記載されているとおり、昨今、「RAM」については従来の揮発性のもののみならず、不揮発性のRAMが続々登場している。 したがって、「3D NOR RAM」の中に対義する語が包含されているとはいい難い状況となっている。 オ 無効請求指定商品・役務との関係における本件商標の記述性 本件に係る無効請求指定商品・役務は全て半導体に関係するものであるところ、本件分野において、本件商標は全体として、「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ」の意味合いを認識させるというのが相当である。 (3)本件商標の商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号該当性について ア 本件商標は、上記のとおり、無効請求指定商品・役務との関係において、「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ」の意味合いを認識させ、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質及び役務の質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するというべきであり、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。 特に、本件商標が、本件に係る無効請求指定商品・役務中、「ランダムアクセスメモリ(RAM)カード」に使用された場合には、これに接した取引者・需要者は、その商品の品質を「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ(RAM)」と認識することが必定である。 イ 本件商標は、本件分野における識別性のない記述語の単なる羅列であり、商標としての一般的、普遍的な適格性を欠如している。 したがって、本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当するものである。 ウ 本件商標は、上記アのとおり、無効請求指定商品・役務との関係において、「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ」を需要者に認識させるものである。商標法第4条第1項第16号にいう「誤認のおそれ」とは、その品質又は質が現実に存在すると否とを問わず、その商品が有する品質又は役務が有する質として需要者において誤認される可能性がある場合をいうものであるから、「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ」が現実に存在すると否とを問わず、本件商標がこれに照応する商品及び役務以外の商品及び役務に使用されるときは、商品の品質及び役務の質の誤認を生ずるおそれがあるといえる。特に、近年、本件分野においては、ランダムアクセスが可能で、かつ電源を切っても情報が消えない、不揮発性RAMの品ぞろえが豊富になったことから、不揮発性RAMが、不揮発性フラッシュメモリであるNORフラッシュメモリの代わりに使用される事例もあり(甲7)、「NOR」及び「RAM」の両語の並記は、「NOR型ランダムアクセスメモリ」が存在するかのように需要者の混乱を生じさせるおそれが高いものである。 したがって、本件商標は、明らかに商標法第4条第1項第16号に該当するというのが相当である。 2 答弁に対する弁駁 (1)本件商標中の「3D」の文字について、請求人が「3次元積層」を認識させると述べたのに対し、被請求人は、答弁書において、「『3次元』の曖昧なイメージが思い浮かぶのみという方が自然」と主張する。 しかしながら、請求人は、この点について、「3D」と「半導体」の二つの言葉をキーワードとしてインターネット検索した結果(甲9)を提出する。例えば、甲第9号証の1における1件目のウェブサイトにおいて、「回路を『3D化』するインテルの新技術が、半導体の進化の・・・」(甲9の2)では「論理回路を立体的に積層できる」等の記載があり、2件目のウェブサイト「TSMCの会長が語った3D IC技術の現状と将来展望」(甲9の3)では「12個のチップ積層に成功」との記載がある。このように、検索結果(甲9の1)では、「3D」の文字は全て「3次元積層」の意味で使用されていた。これより、無効請求指定商品・役務が属する半導体の分野においては、「3D」の文字は「3次元積層」を意味するものとして通用していることが明らかである。 (2)被請求人は、答弁書において、本件商標中の「NOR」の部分について、当該文字が「NOR型フラッシュメモリ」を意味するのは、「少なくともこれも『NOR型』や『フラッシュメモリ』と関連する文脈において使用される場合に当該意味合いが理解されるというにすぎない」と主張する。 しかしながら、無効請求指定商品・役務は、「フラッシュメモリカード」を含んでいるのであり、本件商標の無効請求指定商品・役務への使用は、まさに「『フラッシュメモリ』と関連する文脈において使用される場合」といえる。したがって、無効請求指定商品・役務との関係において「NOR」の文字が「NOR型フラッシュメモリ」の意味で理解されることは明らかである。また、甲第10号証は、「NOR」と「半導体」の二つの言葉をキーワードとしてインターネット検索した結果であるが、「NOR」の文字は、例えば「『NOR型』と『NAND型』の違いとは?」、「NORとNANDとは何ぞや」等のように、「NOR」の文字は全て「NOR型」の意味で使用されていた。これより、無効請求指定商品・役務中においても、特に「メモリーチップ」、「半導体メモリー」、「フラッシュメモリカード」等に係る商品又は役務に本件商標が使用された場合には、当該商品又は役務が「NOR型」であるという品質又は質等を記述したものと認識されるにすぎないと考えるのが自然である。 (3)「RAM」の文字について、請求人が「ランダムアクセスメモリ」を認識させるとしたのに対し、被請求人は、答弁書において、「単独の『RAM』や前記『DRAM』のような既存の表示であれば、かかる意味合いも理解されるかもしれないが、本件商標の構成にあっては、全体が未知のフレーズであるため、必ずしも同列に論じることはできない」と主張する。 しかしながら、無効請求指定商品・役務中の「ランダムアクセスメモリ(RAM)カード」との関係において、本件商標中の「RAM」の文字が「ランダムアクセスメモリ」を認識させないとは考え難いものである。なお、被請求人は、平成30年12月26日付で本件商標と同一の指定商品・役務について「3D RAM」の文字からなる商標を商標登録出願し、当該出願は令和2年4月17日(起案日)付けで、本件商標は商品の品質・役務の質を表したにすぎないものとして拒絶されたが、同査定に承服して同年7月28日付で当該出願を取下げた。このことからも、無効請求指定商品・役務との関係で「3D」及び「RAM」の文字は記述的であることを被請求人も認識していると考えるのが自然である。 (4)本件商標の自他商品等識別力について、被請求人は、答弁書において、「一見してまとまりのよい構成や簡潔な称呼により、一連一体の商標として把握される。そしてこれは既成語にはないユニークなフレーズとして、一種の造語と理解されるもの」であると主張し、被請求人所有の商標「3D OS NAND」及び「3DOSNAND」が全体としては特定の意味合いを想起させないと判断されたと主張する。 しかしながら、「3D OS NAND」においては、半導体業界において「OS」が「酸化物半導体」の略語と直ちに理解されるほど普通に使用されている事実が発見されなかったとして、全体としては特定の意味合いを想起させるものではないとされたもの(乙3)であり、また、各語を独立させていない「3DOSNAND」は本件と事案が異なるものである。 一方、本件商標においては、本件商標を構成する各文字、すなわち、「3D」、「NOR」及び「RAM」は、半導体業界においてそれぞれ「3次元積層」、「NOR型フラッシュメモリ」及び「ランダムアクセスメモリ」の略語として普通に使用され、これに接する取引者・需要者をして直ちにこれらの意味を認識させるものである。 したがって、本件商標の構成要素「3D」、「NOR」及び「RAM」は全て特定の意味を有する独立した文字として分離して看取されるので、本件商標自体についても造語というよりは、半導体用語が単に羅列されていると認識されると考えるのが自然であり、本件商標は、商標としての自他商品等識別機能を果たし得ず商標法第3条第1項第6号に該当するものである。 (5)本件商標は、無効請求指定商品・役務との関係において「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ」を認識させるから商標法第3条第1項第3号又は同法第4条第1項第16号の無効理由に該当するとの請求理由に対して、被請求人は、答弁書において、「不揮発性のRAMの製品化は、実際のところ広く普及しておらず、請求人の挙げる証拠においても、かかる分野で本件商標が使用されているような事実は見出せないので、結局のところ、本願商標が直接的な商品の品質等表示にあたらないことに変わりはない」と主張する。 しかしながら、「商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである(東京高裁平成12年(行ケ)76号 同年9月4日判決参照。)」と判示されているとおり、仮に、本件商標が、その指定商品の品質・役務の質を表すものとして実際に使用されている事実がないとしても、取引者・需要者が、その商品の品質・役務の質を一般に認識するおそれがある場合には、本件商標が商品の品質・役務の質を表示するもの並びに商品の品質・役務の質を誤認させるおそれのあるものと考えるべきである。 (6)被請求人は、「Quick-Shift Focus System」、「888PACHINKO」、「ALL-in-ONE Bearing」及び「シネマ・アクティブ・ラーニング」の登録例を挙げ、本件商標も登録すべきものであると主張する。 しかしながら、これらは、商標の構成並びに技術分野も本件とは異なり、事案を異にするものである。本件商標は、無効請求指定商品・役務との個別具体的な関係において現状でも記述的であるうえに、取引の実情と、今後の技術進歩によってさらに品質等誤認のおそれが高まることが予見されるものである。 (7)以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号に該当することが明らかであり、無効にすべきものである。 第3 被請求人の答弁 1 答弁の趣旨 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。 2 答弁の理由 (1)商標法第3条第1項第3号について ア 請求人の主張は誤りであること (ア)請求人は、本件商標は、全体として「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ」の意味合いを認識させるとして、無効請求指定商品・役務について、これを記述的であると主張する。 しかしながら、「3D NOR RAM」などという表現はこれまでにないものであり、インターネット上に数多ある情報を検索しても、これを発見することはできないことから(乙1、乙2)、本件商標のようなユニークな表示から、直ちに商品・役務の品質等が理解されるものではない。 (イ)請求人は、その主張の前提として、本件商標中「3D」の部分については、「3次元」を意味する記述的で識別性のない語であると主張する。 しかしながら、「3D」にはそうした意味もあるが、数字とローマ字の組合せは様々なものの愛称や象徴として使用されることも多いため、「3D」も上記の一義的な意味合いを有するばかりとは限らない。 (ウ)請求人は、半導体の技術分野における事情として、「3D NAND」や「3D DRAM」に関する記事(甲3、甲4)を挙げ、「3D」は「3次元積層」の意味で記述的に使用されていると主張する。 しかしながら、それはこうした特定の表示中にあっての限られた場合にすぎず、むしろ「3D」が広く「3次元」を意味するというのであれば、「3次元積層」よりも一般的に、「3次元」の曖昧なイメージが思い浮かぶのみという方が自然であると思われる。 (エ)請求人は、本件商標中「NOR」の部分については、「NOR型フラッシュメモリ」を意味すると主張するが、少なくともこれも「NOR型」や「フラッシュメモリ」と関連する文脈において使用される場合に当該意味合いが理解されるというにすぎないものである。 (オ)請求人は、本件商標中、「RAM」の部分については、一義的に「ランダムアクセスメモリ」を認識させると主張する。 しかしながら、例えば、単独の「RAM」や前記「DRAM」のような既存の表示であれば、かかる意味合いも理解されるかもしれないが、本件商標の構成にあっては、全体が未知のフレーズであるため、必ずしも同列に論じることはできないものである。 (カ)請求人は、本件商標を「3D」、「NOR」及び「RAM」のそれぞれに分離し、個々の意味をつなぎ合わせたうえで、全体的に本件商標は記述的である旨を主張する。 しかしながら、請求人の述べる意味合いを表すことがあるとしても、それはそれぞれ文字の一面を表すにすぎないものである。「3D NAND」、「3D DRAM」、「NOR型」及び「DRAM」などといった表示に引き付けて考えれば、「3D」、「NOR」及び「RAM」の表示も、請求人の述べる意味合いに通じるかもしれないが、本件商標は「3D NOR RAM」なのであって、上に挙げる表示とは異なるものである。本件商標とは異なる表示を引き合いに個々の文字の意味を見出し、さらにこれらをつなげて本件商標全体の意味合いを論ずることは、迂遠かつ間接的な手法であって、本件商標を適切に把握したことにはならず、むしろ、こうした主張は、本件商標がその全体として、せいぜい暗示的で間接的な表示であることを裏付けるものといえる。 (キ)請求人は、被請求人が本件商標の登録出願における意見書において、不揮発性メモリーを認識させる「3D NOR」と、その対義語である揮発性メモリーを認識させる「RAM」とが一連に表示される本件商標は、商品の品質等を普通に用いられる方法で表示したものではないと述べた点につき、不揮発性のRAMが続々登場しているために(甲7)、そのような状況とはいい難いとの趣旨を主張する。 しかしながら、請求人のいう不揮発性RAMの製品化は、実際のところ広く普及しておらず、請求人の挙げる証拠においても、かかる分野で本件商標が使用されているような事実は見出せないので、結局のところ、本件商標が直接的な商品の品質等表示にあたらないことに変わりはないものである。 イ 本件商標が自他商品役務の識別力を有すること (ア)本件商標は、「3D NOR RAM」の数字及び欧文字を標準文字で表してなるもので、一見してその全体が目に飛び込んでくる態様からなる。途中の字間にスペースが設けられているものの、これは欧文字表記において一般に用いられる単語間のスペースであって、それぞれ1文字分にすぎないため、全体でひとまとまりのフレーズとして容易に把握が可能でなものである。それぞれの単語に相当する部分も、2文字又は3文字でバランスがとれており、これらの間に軽重や強弱もないものであるから、本件商標はその全体をもって一連一体で捉えられるものである。 次に、本件商標からは、英語風の発音に従えば、「スリーディーノアラム」「スリーディーノーラム」(あるいは「サンディーノアラム」「サンディーノーラム」)の称呼が生じる。いずれにせよ、わずか9音または8音の簡潔な称呼であり、中間にある長音によってリズムもよいため、容易に全体を一息で発音でき、この点においても本件商標は一体的に捉えられるものである。 さらに、前記のとおり、本件商標はこれまでにないフレーズで、特定の内容を表す既成語ではないため、ここから特定の意味合いが生じることはない。「3D」、「NOR」及び「RAM」の各文字をばらばらに捉えて、それぞれの意味を見出せば、その中に請求人のいう意味も含まれるのかもしれないが、本件商標はあくまでも全体でひとまとまりの商標であり、このようなフレーズは一般に見慣れないものであるから、特定の意味合いが直感されることはない。 本件商標は、一見してまとまりのよい構成や簡潔な称呼により、一連一体の商標として把握される。そして、これは既成語にはないユニークなフレーズとして、一種の造語と理解されるものであるから、十分に自他商品等織別力を有するものである。 (イ)上記のとおり、本件商標はひとまとまりの造語であるから、識別力の有無もその全体をもって検討されるべきである。 半導体の技術分野においては、「3D NAND」、「3D DRAM」、「NOR型」及び「DRAM」などといった表示があるとしても、本件商標はこれらとは異なるものであり、同列に論ずることはできない。本件商標の構成にあっては、これを素直に「3D NOR RAM」の一連のフレーズと理解するのが最も自然であり、これが見慣れないユニークなものである以上、直接具体的な品質等がここから理解されることはない。 仮に、「3D」、「NOR」及び「RAM」のそれぞれから、請求人のいうような意味合いが想起されたとしても、それらは依然としてばらばらな存在としてイメージがされるのみで、これらの文字が結合したからといって、その意味合いが自動的に特定の内容に向かって結合するものではなく、全体で意味が直感されるようになるものではない。例えば、本件商標の個々の文字につき、既存の言葉からある程度の意味合いが想起されても、それは個々の文字の意味合いに止まるのであって、依然として本件商標全体としては、特定の商品の品質等を理解ざせるとはいえない。これは請求人のいう「ランダムアクセスメモリ(RAM)カード」についても同様で、特定の内容が直感されない以上、商品の品質を表示したことにはならない。 本件商標は、部分的な意味合いから全体として曖昧、漠然としたイメージは浮かぶかもしれないが、それは暗示的なものにすぎず、直接具体的な品質等表示ということはできないものである。 (ウ)ところで、当該指定商品・役務の分野において、これにある程度関連した意味を有する文字や言葉が結合し、これらがひとつの商標を形成する場合がある。しかし、そうした場合でも、商標の全体的な構成から特定の商品の品質等が直感されないものにあっては、当然ながら自他商品等の識別機能を有し、登録性を有するものとなる。 例えば、本件と同じ分野における被請求人所有の商標「3D OS NAND」についての異議決定では、「3D NAND(フラッシュメモリ)」と称されるフラッシュメモリがあること、また「OS」が「酸化物半導体」の略語として用いられる場合があることは認められるとしても、全体としては特定の意味合いを想起、認識させることのない一種の造語として把握されるとして、自他商品役務の識別標識としての機能を果たし得ると判断されている。そして、その要素として、視覚上の一体性についても述べられている(乙3)。 同様に、「3DOSNAND」という商標についても、やはり各文字についての用例等はあるとしても、全体としては特定の意味合いを想起、認識させることのない造語と判断されている(乙4)。 さらに、「Quick-Shift Focus System」という商標についての審決では、「カメラ」等の「レンズを使用する商品」を指定商品に含み、構成全体から「レンズ等を素早く平行移動させ、焦点を合わせるシステム」程の意味合いが理解される場合があるとされながら、特定の商品の機能、品質を直接的かつ具体的に表したものと認識されるとはいい難いと判断されている(乙5)。 その他、「888PACHINKO」、「ALL-in-ONE Bearing」及び「シネマ・アクティブ・ラーニング」の各商標に係る審決の判断(乙6~乙8)の例からすれば、複数の言葉が結合した商標にあっては、それぞれの意味が当該指定商品・役務の分野において一定の内容を想起させる場合があるとしても、商標全体として特定の商品の品質等を直ちに理解させるものでなければ、十分に自他商品等の識別力を有するものである。仮に個々の言葉や文字から、ある程度の内容が理解されても、それはせいぜい個々の文字等についてのことであって、商標全体としては、そこから暗示的なイメージが思い浮かぶことはあるとしても、直接具体的な品質等表示となるものではないのである。 本件商標は、以上のような例に照らし、その全体において十分に自他商品等の識別機能を発揮するものであり、仮に個々の文字から漠然とした意味合いが想起されたとしても、それは依然として曖昧で暗示的なイメージを想起させるにすぎないものである。 したがって、本件商標は、特定の商品の品質等を直接的に表示するものとはいえず、商標法第3条第1項第3号に該当するものではない。 (2)商標法第3条第1項第6号について 請求人は、本件商標は、識別性のない記述語の羅列であり、商標としての一般的、普遍的な適格性が欠如するとして、これは需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないと主張する。 しかしながら、上述のとおり、本件商標は十分に自他商品等の識別機能を発揮するものであるから、請求人の主張は誤りである。 識別性のない記述語の羅列という点についても、これは請求人における独自の見解である。個々の語それ自体は記述的であるとしても、結合全体で識別力を発揮する商標は容易に想定でき、このことは前記審決例などに照らしても明らかである。 そもそも、人は複数の語が結合されたフレーズを見れば、そこに何らかの意味や関連を見出そうとするのが自然であるといえ、そこから特定の具体的内容を理解することができない場合でも、ひとつのまとまりとして理解することは十分に可能である。 本件商標についていえば、これは「3D NOR RAM」という一連一体の構成において、視覚上ひとまとまりのフレーズとして把握することは容易で、「スリーディーノアラム」及び「スリーディーノーラム」といった称呼も一息で発音でき、リズムもまとまりもよいものである。そして、ここから特定の具体的内容が理解できないとしても、その全体でひとつの造語であると認識することは容易であるから、個々の文字をばらばらに捉え、商標としてのまとまりを敢えて無視するかのような請求人の主張は誤りである。 したがって、本件商標は、その構成において十分に自他商品等識別力を有する商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当するものではない。 (3)商標法第4条第1項第16号について ア 請求人は、本件商標が「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ」を理解させることを前提に、これに照応する商品等以外について本件商標が使用されるときは、商品の品質等の誤認を生ずるおそれがあると主張する。 しかしながら、本件商標が請求人のいうような意味合いを直ちに理解させるものでないことは上述のとおりであり、特定の品質等を具体的に表示するものでない以上、本件商標が商品の品質等の誤認を生じさせるおそれはないものである。 イ 請求人は、「誤認のおそれ」は、その商品の品質等が現実に存在するかは問わないとし、不揮発性RAMの品揃えが豊富になったことより、「NOR」及び「RAM」の並記は、NOR型ランダムアクセスメモリが存在するかのように需要者が混乱を生じるおそれが高いと主張する。 しかしながら、本件商標が直接具体的な品質等を直感させるものでないことは上述のとおりであるから、品質等の誤認も生じない。不揮発性RAMの品揃えという点についても、本件商標は直接的に不揮発性RAMを指称するものではないから、品質等の誤認は生じない。 そもそも、不揮発性のRAMといっても、製品化の試みはなされているのかもしれないが、いまだ一般に普及しているものではなく、しかも、そこでNOR型の製品が生まれるべき必然性もない。「NOR」や「RAM」が並記されているからといって、需要者が直ちに特定の商品の品質等を認識し、あるいは誤認するものではないのであって、そのような具体的な背景も存在しないものである。 仮に、本件商標から商品等の性質につき、曖昧で漠然としたイメージが思い浮かぶ場合があるとしても、それは暗示的なものにすぎず、誤認には至らない。そして、そのような場合であっても、半導体の技術分野にあっては、例えば多様なメモリが存在し、これが多く利用され、関連する技術を用いた商品・サービスにも広がりがあるため、この分野は商標の暗示的イメージにもともと近しいともいえ、誤認が生じる基礎に欠ける。また、かかる暗示的イメージとかけ離れた商品等が存在するかは不明であるが、仮に存在したとしても、専門的な半導体の技術分野の需要者らは、そうした商品等については本件商標を無意味な造語と捉えるのみであるから、やはり誤認は生じない。 したがって、本件商標は、品質等の誤認を生じさせるものではなく、商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標は、十分に自他商品役務の識別機能を発揮し得る顕著な商標であり、商品又は役務の品質又は質の誤認を生じさせるおそれもないものである。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号に該当するものではなく、本件審判請求は成り立たない。 第4 当審の判断 請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては当事者間に争いがないから、本案に入って審理し、判断する。 1 商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号該当性について 本件商標は、上記第1のとおり、「3D NOR RAM」の文字を標準文字で表してなるものである。そして、請求人が提出した証拠によれば、本件商標を構成する「3D」の文字が、無効請求指定商品・役務との関係では「3次元集積」の意味合いで使用されることのある語であり(甲3、甲4、甲5、甲9の2)、「NOR」の文字が、フラッシュメモリの形式を表す語として使用される語であり(甲3、甲5、甲6、甲10)、「RAM」の文字が、「コンピュータのメモリ装置の一種で、データの消去・書き換えが可能で、装置内のどこに記録されたデータも等しい時間で読み書き(ランダムアクセス)することができる性質を持ったもの。」を意味する「Random Access Memory」の略語であること(甲8)が認められるとしても、これらを結合した「3D NOR RAM」の文字が「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ」の意味を直ちに理解させるものといえる証拠は見いだせない。 また、当審において職権をもって調査するも、本件商標の登録査定時に、無効請求指定商品・役務を取り扱う業界において、「3D NOR RAM」の文字が、無効請求指定商品・役務との関係で、「3次元に積層したNOR型ランダムアクセスメモリ」のような、具体的な商品の品質や役務の質を直接的に表示するものとして一般に使用されていたと認めるに足る事実は発見できず、さらに、当該文字が、本件商標に接する取引者、需要者に、具体的な商品の品質や役務の質を表示したものとして直ちに理解、認識されていたというべき事情も発見できなかった。 そうすると、本件商標は、これを無効請求指定商品・役務に使用しても、これに接する取引者、需要者に、構成全体をもって特定の意味合いを認識させることのない一種の造語として認識、把握されるものと判断するのが相当である。 してみれば、本件商標は、無効請求指定商品・役務との関係において、商品の品質又は役務の質を表示するものとはいえず、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならない。 さらに、本件商標は、無効請求指定商品・役務との関係において、上記のとおり、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものであるから、需要者が何人かの業務に係る商品及び役務であることを認識することができない商標とはいえないものである。 加えて、本件商標は、上記のとおり、商品の品質又は役務の質等を表示したものと認識されるものではないから、無効請求指定商品・役務との関係において、商品の品質及び役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標とはいえないものである。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号に該当しない。 2 結論 以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中の無効請求指定商品・役務について、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号に違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきでない。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-890085

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