商標無効審判
2020-890081
アンブラコ
- 審判番号
- 2020-890081
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2018-136466
- 登録番号
- 6162919
- 請求日
- 2020年11月16日
- 審決日
- 2022年03月25日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ディーパック ファスナーズ (シャノン) リミテッド
- 【請求人代理人】安達 友和
- 【被請求人】檜垣 俊行
- 審判長/審判官
- 審判長 榎本 政実
- 審判官 豊田 純一
- 審判官 荻野 瑞樹
- 分類
- T111 .25 -Y (W06) / T111 .22 -Y (W06) / T111 .222-Y (W06)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項10号商標法4条1項19号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第11号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6162919号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6162919号商標(以下「本件商標」という。)は、「UNBRAKO」の文字を標準文字で表してなり、平成30年10月20日に登録出願、第6類「金属製金具」を指定商品として、同31年4月12日に登録査定、令和元年7月19日に設定登録されたものである。
第2 請求人が引用する商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、別掲のとおりの構成よりなる商標(以下「引用商標1」という。)、「アンブラコ」の片仮名と「UNBRAKO」の欧文字を上下二段に書してなる商標(以下「引用商標2」という。)及び「UNBRAKO」の欧文字からなる商標(以下「引用商標3」という、)であり、請求人が、請求人の業務に係る商品「六角穴付きボルト」(以下「使用商品」という場合がある。)について使用し、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されている商標と主張するものである。
なお、以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていう場合は、「引用商標」という。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を、審判請求書及び令和3年6月9日付け審尋に対する同年7月6日付け審判事件回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第44号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、請求人が提出した甲第32号証ないし甲第34号証は、甲第各号証に次いで、甲第各号証の2が提出されているため、以下、甲第32号証は、甲第32号の1と、甲第33号証は、甲第33号証の1と、甲第34号証は、甲第34号証の1と読み替える。
1 無効理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
2 具体的理由
(1)商標法第4条第1項第19号について
ア 本件商標と引用商標との類似性
本件商標は、「UNBRAKO」の文字を標準文字で表してなる。
一方、引用商標1は、「Unbrako」の欧文字からなり、引用商標2は「アンブラコ」の片仮名と「UNBRAKO」の欧文字を二段表記してなり、引用商標3は、「UNBRAKO」の欧文字からなる。
本件商標と引用商標とは、そのつづりから「アンブラコ」の称呼を同一にする。本件商標と引用商標とは、外観も類似する。本件商標と引用商標からは、六角穴付きボルトのブランドとして日本を含む世界中において著名かつユニークな商標「UNBRAKO」の観念を生じるため、観念も同一である。
よって、本件商標と引用商標は類似する。
なお、「UNBRAKO」は、「エスピーエステクノロジーズインコーポレイテッド(SPS Technologies,Inc.)」(後に「エスピーエステクノロジーズリミテッドライアビリテイカンパニー」に名称変更:以下「SPS社」という。)が、「unbreakable」(壊れない)をもじって創作した造語である(甲5)。
イ 引用商標の周知性・著名性
(ア)引用商標の背景
「UNBRAKO」は、引用商標2及び引用商標3の出願人であるSPS社が1911年に世界で初めて市場に紹介した六角穴付きボルトのブランドであり(甲6)、現在、日本を含む世界中で使用商品のブランドとして著名な商標である。
SPS社は、2008年に世界中の「UNBRAKO」の商標に関する権利を、請求人である「ディーパックファスナーズ(シャノン)リミテッド」(以下「ディーパック社」という。)に譲渡した(甲7)。
よって、現在、「UNBRAKO」の商標に関する正当権利者は請求人である。現在、請求人は、世界中において「UNBRAKO」の商標の商標登録(SPS社の名義のものを含む。)を有している(甲8)。
「UNBRAKO」商標は、日本においても、「エスピーエステクノロジーズリミテッドライアビリテイカンパニー」あるいは旧名称「エスピーエステクノロジーズインコーポレイテッド」の名義において、商標登録第1329512号(引用商標2:甲3)及び商標登録第605499号(引用商標3:甲4)として登録されていた。
請求人は、2008年に引用商標2及び引用商標3をSPS社から譲り受けたが(甲7)、引用商標2及び引用商標3の権利者の移転登録をしておらず、引用商標2及び引用商標3は名義人が請求人に変更されることなく、また、更新を失念したことにより、それぞれ平成30年3月27日及び同25年2月15日をもって消滅してしたものである。
なお、請求人はそれに気がつき、この「UNBRAKO」の商標を再登録するために、2019年1月31日に商標登録出願(商願2019-19129) を行ったが、本件商標を引用商標として商標法第4条第1項第11号に基づいて拒絶査定となった(甲9)。
請求人は、2020年6月17日に先の登録出願と同一の商標につき再度、登録出願を行った(商願2020-74777)。
(イ)引用商標の周知性・著名性
「UNBRAKO」のブランドを付した商品(以下「UNBRAKO商品」という)は現在56か国において請求人の顧客やディーラーや代理店に直接販売されている。
さらに、請求人のディーラーや代理店が、これらの国々に加えて様々な国において様々な顧客にUNBRAKO商品を販売している。UNBRAKO商品の請求人の売り上げは年間約1億5,000万USドル(約150億円)である(甲37)。
引用商標が著名であることは、請求人のウェブサイト(甲10)、Unbrakoの広告及び販促物の写真(甲11)、Unbrakoに関する雑誌の切り抜きの写し(甲12、甲13)、Unbrakoのパンフレット(甲14)、Unbrakoのカタログの写し(甲15)、2013年にインドのムンバイで開催されたエキシビションの際の写真(甲16)、2015年にインドのムンバイで開催されたエキシビションの際の写真(甲17)、2016年にインドのムンバイで開催されたエキシビションの際の写真(甲18)、2017年にインドのムンバイで開催されたエキシビションの際の写真(甲19)、2017年5月にインドのデリーで開催されたエキシビションの際の写真(甲20)、インドのルディアーナで開催されたエキシビションの際の写真(甲21)、2013年11月28日ないし30日にインドのノイダのINDIA EXPO CENTREで開催されたエキシビション「Hand Tools and Fasteners Expo 2013」の際の写真(甲30)、2014年3月12日及び13日にメキシコのメキシコシティーのCentro Banamexで開催されたエキシビション「Fasteners Fair-Mexico」の際の写真(甲31)、来場者数が10,600人であった(甲32の2)、2015年にドイツのシュトウットガルトで開催されたエキシビション「Fasteners Fair-Stuttgart」の際の写真(甲32の1)、2017年9月20日ないし22日にインドのノイダのINDIA EXPO CENTREで開催されたエキシビション「Renewable Energy India Expo-Sept 2017」の際の写真(甲33の1)、2014年10月22日ないし24日に米国ネバダ州ラスベガスのSands Expo Centerで開催されたエキシビション「National Industrial Fastener & Mill Supply Expo」の際の写真(甲34の1)、2012年4月24日ないし26日にドイツのハノーヴァーのHall 21、Hannover Exhibition Groundsで開催されたエキシビション「HANNOVER MESSE 2012」の際の写真(甲35の1)や動画サイト「YouTube」においても引用商標が示されていることからもわかる。
上記一連の証拠により、ディーパック社が、UNBRAKO商品について世界中で広く広告・宣伝活動を行っていることがわかり、外国において需要者の間に広く認識されていることがわかる。甲第36号証は、UNBRAKO商品に関する過去に頒布されたパンフレット等であり、引用商標が周知・著名であることを立証する。甲第37号証は、UNBRAKO商品の2012年ないし2019年までの各国における売上高及び広告費を示しており、その金額が非常に大きく、ゆえに引用商標が世界各国において周知・著名性を獲得していることを立証する。
(ウ)我が国における販売
請求人の我が国における代理店は「PCCディストリビューション・ジャパン株式会社」(以下「PCC社」という。)である(甲22、甲23)。 甲第24号証は、請求人とPCC社との販売契約書(DistributionAgreement)であるが、PCC社の旧社名である「エス・ピー・エスアンブラコ株式会社」が表示されている。「エス・ピー・エスアンブラコ株式会社」がPCC社の旧社名であることは、登記情報(甲25)から分かる。UNBRAKO商品は、請求人からPCC社に卸され、その後、PCC社からその代理店(以下「PCC社代理店」という)に卸されて、ユーザに販売される。PCC社代理店の一例は、PCC社ウェブサイトに掲載されているように、中島工機株式会社(甲26)や由良産商株式会社(甲27)が含まれる。請求人から代理店(PCC社)への直接販売の販売額は年間約5,400万円であり、この販売は長年継続されている(甲28)。
よって、ディーパック社のUNBRAKO商品が日本国内においても需要者の間に広く認識されていることが分かる。
ウ 不正の目的
本件商標は欧文字で「UNBRAKO」と書してなるところ、当該商標に関する正当な権利を有する者は、請求人であるディーパック社である。この商標は、日本において、SPS社の名義において、商標登録第1329512号(引用商標2:甲3)及び登録第605499号(引用商標3:甲4)として登録されていたが、商標権者の失念による存続期間満了により、それぞれ平成30年3月27日及び同25年2月15日をもって抹消されたものである。請求人は、譲渡証(甲7)に示されるように、2008年に引用商標2及び引用商標3をSPS社から譲り受けた。
しかしながら、日本国特許庁に対して移転登録をしておらず、引用商標2及び引用商標3は名義人が請求人に変更されることなく、また、更新を失念したことにより、消滅してしまったものである。
なお、請求人はそれに気がつき、この「UNBRAKO」の商標を再登録するために2019年1月31日に登録出願を行っている。
また、請求人は、世界中においてこの商標の商標登録を有している(甲8:SPS社の名義のものも含む。)。引用商標2及び引用商標3の商標登録は消滅してしまったものの、その著名性については維持されている。
よって、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、引用商標2及び引用商標3の商標登録が消滅してしまったことを奇貨として、その著名な商標を自己のものとするために登録出願し、登録しようとしたことは明らかである。
なお、商標審査基準改定第13版に照らすと、本件商標は、「日本及び外国において周知な商標(すなわち引用商標)と同一であること」、「その周知な商標が非常にユニークな『UNBRAKO』という造語よりなるものであること」から、不正の目的をもって使用するものと推認される。
また、本件商標権者は、第6類「金属製金具」のみを指定してきており、偶然の一致とは考えられない。
本件商標権者は、「中島工機株式会社」の代表取締役である(甲29)。 「中島工機株式会仕」は、PCC社代理店である(甲23)。よって、本件商標権者は、本件商標に関する正当な権利を有する者が請求人であるディーパック社であることは当然知っているはずである。
しかもディーパック社には何らの断りも入れずに本件商標を登録出願しているのである。よって、この事実からも不正の目的が推認される。
請求人は、2020年6月22日に本件商標権者に対し書簡(甲38の1)を内容証明郵便で送り、本件商標を登録した意図及び目的を尋ねた。配達記録によると、2020年6月25日に本人に配達されているが(甲38の2)、その後、なんらの返答もない。よって、この事実からも不正の目的が推認される。
また、甲第39号証としてPCC社の代表取締役が本件商標を無効とすることを依頼する特許庁長官あての書簡を添付する。その書簡において、「Unbrako(アンブラコ)」製品は顧客に高い信頼を得ているとし、本件商標権者による「Unbrako(アンブラコ)」の商標登録は、当社が半世紀を超えて継続する健全な事業に対し、脅威と不利益、また顧客に対しては混乱を与える可能性を秘めるとしており、引用商標が国内においても著名であることを証明し、また、本件商標が不正の目的をもって使用されるものであることを証明する。
したがって、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもつて使用をするもの」であり、商標法第4条第1項第19号に違反して登録しようとするものである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 本件商標と引用商標の類似性
本件商標は引用商標と類似する。
イ 引用商標が国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標であることについて
引用商標は、国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標である。
ウ 本件商標の指定商品と引用商標の商品との類似性
本件商標は、ボルトを含む金属製金具に使用するものであり、一方、引用商標は六角穴付きボルトに使用するものであるため、本件商標の指定商品と引用商標の商品は類似する。
エ 小括
以上アからウからすると、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」であり、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、引用商標と同一又は類似である。
引用商標は、国内及び外国において周知・著名な商標である。
また、本件商標権者は、請求人と我が国における販売契約を結ぶPCC社の代理店である「中島工機株式会社」の代表取締役である。
よって、本件商標権者は、引用商標がその指定商品につき我が国において商標登録されていないことを奇貨として、先取り的に登録出願し、商標権を取得したものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標権者が本件商標を登録出願し商標権を取得した行為は、公正な商取引の秩序を乱すおそれがあり、ひいては公の秩序を害するおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」であり、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(4)回答書による請求人の主張
請求人のウェブサイト(甲10)が本件商標の登録出願前から存在している事実を確認できる書面として、インターネットアーカイブサイトにおいて保存されている2018年9月21日時点の請求人ウェブサイトのホームページのスクリーンショットを提出する(甲44の1)。甲第44号証の1には、商標「UNBRAKO」が刻印された商品「六角穴付きボルト」の写真が確認でき、左上には引用商標1が確認できる(甲44の2) 。
また、同日時点の請求人ウェブサイトの「連絡先」サイトのスクリーンショットには、請求人の名称及び住所が確認できる(甲44の3)。
よって、2018年9月21日時点の請求人のウェブサイトのスクリーンショットから使用商標、使用商品、請求人の名称及び住所、並びに使用の年月日が同時に確認でき、本件商標の登録出願前から、請求人が「Unbrako」からなる引用商標1を、商品「六角穴付きボルト」について使用していた事実を確認できる。
なお、念のため、2018年9月13日時点の請求人のウェブサイトの「Products(製品)」サイトのスクリーンショットも提出する(甲44の4)。商品「六角穴付きボルト」を取り扱っていることが明確に確認できる。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、令和3年1月27日付け審判事件答弁書において、その理由を要旨以下のように述べた。
1 引用商標の周知性について
(1)我が国での周知性について
請求人は、甲第28号証を根拠に、UNBRAKO商品の我が国における年間販売額を約5,400万円であると述べているが、当該証拠で示されている約2年間(2017年6月23日~2019年5月24日)の販売金額合計は、12,616.91ユーロ(約1,240万円)でしかなく、しかも明細には「UNBRAKO」以外の商品やボルト以外の商品が含まれている。
そのため、甲第28号証を根拠に、引用商標が付されたUNBRAKO商品の我が国における年間販売額が5,400万円であるとは認められない。 また、仮に、請求人から我が国の代理店(PCC社)への販売額が、請求人の主張のとおり、年間5,400万円であったとしても、かかる販売額は、我が国におけるねじの総生産額(2017年、推定約8,930億円、一般社団法人日本ねじ工業協会)と比較して著しく小さな額にすぎず、年間輸入額(2017年、約900億円、財務省貿易統計)と比較しても、わずか0.06%程度にすぎない。
そのため、請求人が主張する販売額を前提に考えたとしても、UNBRAKO商品が我が国において周知であるとは考えられない。
さらに、請求人が販売しているボルトには「UNBRAKO」の表示はなく、JISB1176標準規格品と一見して違いが分からないうえ、一般的な12.9ソケットスクリューとしても販売されていることを考慮すれば、周知性がより低いであろうことがうかがえる。
また、審判請求書によると、請求人の全世界における宣伝広告費は約500万ドル(甲37)とのことであるが、国内の宜伝広告費は示されていない。一方で、ほとんどのボルトに関する宣伝広告が掲載される金属産業新聞とファスニングジャーナルという2大業界紙において、少なくとも2004年以降、請求人の商品の広告は掲載されていない(両社調べ。金属産業新聞には2014年頃にSPS社(現PCC社)の社長がコラムを投稿していたにもかかわらず、UNBRAKOの広告は行われていない。)。
これらの媒体を含めて国内での宣伝広告がほぼ行われていないことや国内での展示会への参加もないことなどに鑑みると、国内において宣伝広告費がほとんど支出されていないと推測される。
加えて、請求人が提出した全証拠をみても、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知性の度合いを客観的に判断するための証拠は一切存在しない。
以上の点に鑑みると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られているとは考えられない。
(2)外国での周知性について
ア UNBRAKO商品の売上げ
請求人は、甲第37号証を根拠に、UNBRAKO商品の全世界における売上高は、年間約1億2,000万ないし1億5,000万USドルとの主張をしている。
しかしながら、甲第37号証は、単に国毎の年間の売上合計金額をまとめた資料にすぎず、何ら客観性がない証拠であるし、この売上高がUNBRAKO商品によるものであることの裏付けもない。
また、甲第37号証に記載の売上額が、請求人による令和元年10月8日の異議申し立て(異議2019-900290)時の主張(約92億3,000万円)から、何らの説明もなく大きく増額されていること、甲第37号証に示される我が国における年間販売金額と甲第24号証の年間販売金額が著しく相違していることから見ても、甲第37号証は、証拠としての信憑性を著しく欠くものといわざるを得ない。
さらに、UNBRAKO商品は、ボルト自体に「UNBRAKO」との表示がなく、ISO4762、ISO1247規格の一般ソケットヘッドキャップスクリューなどと同等品としても販売されているものであり、仮に、UNBRAKO商品の販売額が大きいものであったとしても、そのことが、引用商標の周知性と直ちに結びつくものではない。
なお、仮に、甲第37号証の記載を前提に考えたとしても、売上の約45%はインドでの売上であり、残り55カ国での売上高は非常に少なくインド以外の国での周知性の低さがうかがえる。
また、インドにおいても、インドの全ボルトの年間販売金額に比較すると請求人の販売額は極めて小さく、甲第37号証に記載の販売額から、引用商標の周知性が裏付けられるとはいえない。
イ 宣伝広告
請求人は、甲第37号証を根拠に、UNBRAKO商品の宜伝広告費が大きいと主張しているが、当該証拠には、宣伝広告費の国毎の内訳や媒体、内容等の証拠が示されておらず、どのような宣伝広告がどの国でなされたのかは不明である。
また、甲第16号証ないし甲第21号証及び甲第30号証ないし甲第35号証によれば、本件商標の登録出願前の2012年頃から、請求人は、インドを中心とした諸外国においてエキシビションに出展していたことがうかがえるものの、出展ブースへの来訪者数やそこでのパンフレット及びカタログ等の配布数等を明らかにする証拠はない。
さらに、請求人は、請求人のウェブサイトとして甲第10号証を示しているが、当該証拠には請求人のウェブサイト以外の写真も含まれるうえ、サイトの訪問者数や期間あたり表示回数等を示す証拠はない。
加えて、請求人は、甲第14号証、甲第15号証及び甲第36号証でカタログやパンフレットを示し、請求人のサイトからカタログや資料をダウンロードできると述べているが、カタログや資料の配布期間、配布地域及び頒布数、ダウンロード数等を示す証拠はない。
以上を総合すると、請求人が提出した証拠によっては、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、外国において需要者の間に広く知られていると認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められないものである。
また、被請求人は、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的を持って本件商標を登録出願し、登録を受けたのではない。あわせて、本件商標は、引用商標の出所表示機能を希釈化し又は名声を毀損させるなど不正の目的をもって使用をするものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る使用商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、本件商標は、引用商標の信用、名声に便乗するものといえず、かつ、引用商標の顧客吸引力を希釈化させ、その信用、名声を毀損するなど不正の目的をもって使用をするものではない。
また、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり、さらに、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべきものではない。
さらに、請求人は、2008年に引用商標2及び引用商標3をSPS社から譲り受けたと主張しているが、請求人が提出した証拠(甲7)によると、引用商標3のみが譲渡の対象となっており、引用商標2は譲渡対象となっていない。
さらにまた、甲第7号証の譲渡契約書には秘書のサインしか記載がなく、会社代表者のサインがなされていないため、譲渡の事実すら疑わしい。
加えて、仮に、譲渡がなされていたとしても、請求人は、2008年に引用商標3の商標権を譲り受けた後、4年以上にわたり、移転登録申請の手続を行わないまま、商標権を消滅させているものであるから、請求人が、引用商標に関し、正当な権利を有する者であるとはいえない。
以上の点に鑑みると、本件商標権者が、引用商標と類似する本件商標の登録出願をし、登録を受ける行為が「公の秩序又は善良の風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものでないことは明らかである。
第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 引用商標の周知著名性について
(1)請求人提出の証拠及び請求人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 「UNBRAKO」は、SPS社が1911年に市場に紹介した商品「六角穴付きボルト」の商標であり、同社は、2008年に世界中の「UNBRAKO」の商標に関する権利を、請求人に譲渡した(甲6、甲7)。
イ 請求人は、UNBRAKO商品は、現在56か国において請求人の顧客やディーラーや代理店に直接販売し、請求人のディーラーや代理店は、これらの国々の他、様々な国の様々な顧客にUNBRAKO商品を販売している旨主張するが、この主張の裏付けとなる証拠は提出されていない。
ウ 請求人は、2019年のUNBRAKO商品の世界各国における総売上は、約1億5,000万USドル(約150億円)であり、うち我が国は、557,222USドル(約560万円)である(甲37)と主張しているが、甲第37号証は、数字が羅列されているのみで、裏付けとなる証拠は提出されていない。
エ 請求人のウェブサイト(甲10)、雑誌の切り抜き、パンフレット及びカタログ等の写し(甲11~甲15)、2013年ないし2017年のインドにおけるエキシビションの写真の写し(甲16~甲21)、2012年ないし2017年のインド、メキシコ、ドイツ及び米国におけるエキシビションの写真の写し(甲30~甲35)には、いずれも引用商標3が商品「ボルト」とともに表示されており、請求人のウェブサイトに掲載されている商品「ボルト」には引用商標1が付されている。
(2)上記(1)によれば,本件商標の登録出願前の2012年頃から、請求人は、インドを中心とした諸外国において商品「ボルト」に引用商標1及び引用商標3を使用していたことがうかがえる。
しかしながら、請求人が提出した全証拠をみても、引用商標を表示した商品「ボルト」の我が国及び外国における売上高、宣伝広告費、宣伝地域、市場占有率等に関する証拠、また、パンフレット及びカタログ等の配布期間、配布地域及び頒布数等、さらに、エキシビションの来場者数等を明らかにする証拠の提出はない。
その他、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知著名性の度合いを客観的に判断するための証拠の提出はない。
以上を総合すると、引用商標は、請求人が提出した証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして、我が国及び外国において需要者の間に広く知られていると認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「UNBRAKO」の文字を標準文字により表してなるものであるから、その構成文字に相応して、「アンブラコ」の称呼を生じるものであり、また、当該文字は、辞書等に載録されている成語とは認められないことから、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標1は、別掲のとおり、オレンジ色の横長長方形の内側に白抜きで「Unbrako」の欧文字を横書きした構成からなるものであるから、これよりは、「アンブラコ」の称呼を生じ、上記(1)のとおり、当該文字は、辞書等に載録されている成語とは認められないことから、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標2は、前記第2のとおり、「アンブラコ」の片仮名及び「UNBRAKO」の欧文字を上下二段に横書きした構成からなるものであるから、これよりは、「アンブラコ」の称呼を生じ、「アンブラコ」の片仮名及び「UNBRAKO」の欧文字は、辞書等に載録されている成語とは認められないことから、特定の観念を生じないものである。
ウ 引用商標3は、前記第2のとおり、「UNBRAKO」の欧文字を横書きした構成からなるものであるから、これよりは、「アンブラコ」の称呼を生じ、上記(1)のとおり、当該文字は、辞書等に載録されている成語とは認められないことから、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標は、「UNBRAKO」の文字からなるのに対し、引用商標1は、その構成中に「Unbrako」の欧文字を有するものであり、引用商標2は、その構成中に「UNBRAKO」の欧文字を有するものであり、引用商標3は、「UNBRAKO」の欧文字よりなるものであるから、これらは、引用商標1におけるオレンジ色の背景図形の有無、引用商標2における「アンブラコ」の片仮名の有無を有するとしても、これらは、いずれも欧文字のつづりを同一にすることから、外観上近似した印象を与えるものである。
また、本件商標と引用商標は、いずれも「アンブラコ」の称呼を共通にするものである。
そして、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観において近似し、称呼を共通にする類似の商標である。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の使用商品及び指定商品との類否
本件商標の指定商品と、引用商標1の使用に係る商品「ボルト」並びに引用商標2及び引用商標3の指定商品とは、同一又は類似の商品である。
(5)小括
上記(3)及び(4)のとおり、本件商標と引用商標とは類似の商標であり、かつ、その使用商品及び指定商品も同一又は類似の商品であるとしても、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号該当性について
上記2(3)及び(4)のとおり、本件商標と引用商標とは、類似の商標であり、かつ、その使用商品及び指定商品も同一又は類似の商品であるとしても、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると、本件商標は、引用商標の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
また、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事情は見いだせず、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当するものではない。
4 請求人の主張について
請求人は、「本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれをも共通にする同一又は類似の商標であり、引用商標は国内及び外国における需用者の間に広く認識され、本件商標は不正の目的をもって使用されるものである。また、本件商標は、公の秩序又を害するおそれがある商標である。したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第19号及び同項第7号に違反してされたものである。」旨主張する。
しかしながら、上記2(3)及び(4)のとおり、本件商標と引用商標とは、類似の商標であり、かつ、その使用商品及び指定商品も同一又は類似の商品であるとしても、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品「ボルト」を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、上記3のとおり、本件商標は、不正の目的をもって使用されるものとは認められず、また、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とも認められない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第19号及び同項第7号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-890081