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商標無効審判

2020-890080

審判番号
2020-890080
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2013-098030
登録番号
5825191
請求日
2020年11月10日
審決日
2024年02月08日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 アイエーシーインターナショナル
  • 【請求人代理人】岸本 忠昭
  • 【請求人代理人】松下 ひろ美
  • 【請求人代理人】池田 智洋
  • 【被請求人】ルイス ポールセン エイ/エス
  • 【被請求人代理人】弁理士法人MM&A
審判長/審判官
  • 審判長 豊瀬 京太郎
  • 審判官 板谷 玲子
  • 審判官 小俣 克巳
分類
T111 .22 -Y (W11) / T111 .25 -Y (W11)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項7号商標法4条1項10号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第10号、商標法第3条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第5825191号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第5825191号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなる立体商標であり、平成25年12月13日に登録出願、第11類「ランプシェード」を指定商品として、同27年12月15日に登録審決、同28年2月12日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が本件商標に係る無効審判の無効理由において、商標法第4条第1項第10号に該当するとして引用する商標(以下「引用商標」という。)は、ポール・ヘニングセン(以下「ヘニングセン」という。)によりデザインされたものとして取引者・需要者の間で広く知られているペンダントライト「PH5」(以下「本件商品」という場合がある。)の立体的形状と主張するものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効にすべきである。 2 無効原因 (1)商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、第11類の指定商品「ランプシェード」について、長年の間、被請求人により、継続的に使用された結果、需要者が商標権者の業務に係る商品であることを認識するに至ったものと判断されて商標登録されたものである。 しかしながら、かかる被請求人の継続的使用は、本件商標のデザインに関する知的権利の許諾に基づくものではなく、何らの権原も有しないものの不正使用であり、このような不正使用に基づく商標権の取得は、国際信義則及び公序良俗に反する行為であり、以下、理由を述べる。 ア 本件商標は、ヘニングセンによりデザインされたものであり、1958年に公表された後に、同じ年に製品化されたものである。本件商標とは、この商品が持つ立体的形状であり、ヘニングセンがデザインしたものとして周知である。 イ ヘニングセンは、評論家、建築家、デザイナーであり、1967年1月に死亡しており、死亡するまでの間に、各種照明器具及び各種家具などをデザインし、照明作品の代表的なものとして「PH天井ランプ」、「PHコントラスト」、「PHアンティチョーク」及び「PH-5ランプ」などがあり、家具作品の代表的なものとして「PH小引出しチェスト」、「PHグランドドレッシングチェスト」及び「PHキャビネット」などがあり、これらの照明作品及び家具作品は、ヘニングセンがデザインしたものとして知られている(甲3)。 ウ Aは、ヘニングセンと結婚し、1996年に死亡している(甲4)。 Aは、ヘニングセンの死亡時にその配偶者であったために、ヘニングセンの法定相続人として被請求人との間の契約(以下「本契約」という場合がある。)の当事者の一方になったものと思われ、被請求人が提出した本契約書の一部抜粋の英語翻訳(以下「本契約書英訳」という場合がある。)に当事者として記載されている(甲5)。 なお、本契約書英訳及びその日本語訳は、本件商標に係る無効審判2017-890023(以下「先行無効審判」という。)において提出したものである。 エ Bは、ヘニングセンの先妻との間の子であり(甲6)、1974年に死亡している(甲7)。 オ 本契約書英訳の冒頭部分で、当事者の一方が「A(現在A及びヘニングセンの相続人)」となっており、また、本契約書英訳における「第1項 契約の基礎の項目(1.1.)において、本契約は2010年1月1日付で有効となり、1978年4月6日付基本ライセンス契約(付表Aおよび追加文書I~XIVを含む)に取って代わるものである。」との記載がある。 (ア)本契約書英訳によれば、ヘニングセンがデザインした照明作品(ランプ類)に関する知的財産のライセンス契約は1978年4月6日付けで基本ライセンス契約(以下「1978年の基本ライセンス契約」という。)が締結されたことになっており、この1978年の基本ライセンス契約締結時には、Bは既に死亡しているために、ヘニングセン側の当事者は、その配偶者であるAとなったものと思われる。 また、本契約書英訳によれば、現在の本契約が2010年1月1日付で有効となり、この本契約が1978年の基本ライセンス契約に取って代わるもの、すなわち差し替えて適用するものとなっている。 (イ)本契約書英訳に示された契約時期とヘニングセン、A及びBの死亡時期とを照らし合わせると、時期的な事項において次の疑問が生じる。一つ目の疑問は、ヘニングセンが死亡してから1978年の基本ライセンス契約が締結されるまでの第1の期間(すなわち、1967年7月~1978年4月の約10年間:以下「第1の期間」という。)において有効なライセンス契約が存在していたかどうかであり、二つ目の疑問は、Aが死亡した後本契約が有効となるまでの第2の期間(すなわち、1996年~2010年の約15年間:以下「第2の期間」という。)において有効なライセンス契約が存在していたかどうかである。 特に、1978年の基本ライセンス契約については、Aとの間で締結されたと思われるが、上記第2の期間においては、先妻との子であるBが死亡し、また、配偶者であるAも死亡し、ヘニングセンの知的財産を承継する法定承継人が存在しない状態となっている。 さらに、この本契約書英訳によれば、契約当事者の一方がA(現在A及びヘニングセンの相続人)と示されているが、本契約はその相続人との間で締結されているはずと思われるが、その相続人の名義が示されておらず、誰との間で結ばれたか全く不明である。 このように疑問点、不明点が多い契約は、当事者間で締結されて50年以上も継続して有効に存在していたかは疑問であるが、この疑問を解消するために、被請求人側から本契約の原本が示されたこともない。 このような場合、一般に、相続人不存在の知的財産は権利が消減し、パブリックドメインになるものと思われる。 (ウ)一方、被請求人は、ヘニングセン、A及びその相続人との間でライセンス契約を締結して本件商標の立体的形状の照明器具を独占的に販売し、この販売実績をベースに商標法第3条第2項の適用を受けて商標登録を得たと主張するが、本件商標の立体的形状の照明器具のレプリカ商品(リプロダクト商品)については、インターネットを通して世界中で販売されている。 ヨーロッパ地域における例えば英国では、モベラリス社が「レプリカ デザイナー照明」としてヘニングセンのPH5のレプリカ商品を販売し(甲8)、スイヴェル社が「ポール・ヘニングセンレプリカ」としてこのPH5のレプリカ商品を販売し(甲9)、ディイイズ社が「フライングペンダントライト」としてこのPH5のレプリカ商品を販売している(甲10)。 また、オセアニア地域の例えばオーストラリアにおいては、ルクレチアショップ社が「PH5 現代ペンダントライトレプリカ」としてこのPH5のレプリカ商品を販売し(甲11)、レプリカライト社が「ポール・ヘニングセン」としてこのPH5のレプリカ商品を販売している(甲12)。 さらに、北米地域の例えば米国においては、アマゾン社が「ルイスポールセンph5」としてこのPH5のレプリカ商品を販売している(甲13)。 そのうえ、アジア地域の例えば中国においては、イイライティング社が「クラシックモダンスタイル ミニ/ラージ デザイナーPH5ペンダントライトレプリカ」としてこのPH5のレプリカ商品を販売している(甲14)。 このように本件商標の立体的形状を施した商品(PH5)のレプリカ商品は世界中で広く販売されている。 このような事実からしても、ヘニングセンの照明作品に関する知的財産が既に消滅していて、この知的財産に関する本契約が被請求人との間で有効に存続しているとは到底思えない。 (エ)本契約が有効に存続していないとすれば、被請求人は、本件商標についての商標権を不正に取得したことになる。 被請求人は、本件商標について商標権を取得する際に商標法第3条第2項の適用を受け、この適用を受けるに際して各種の使用を示す書面を提出している。 そして、これら使用を示す書面において、ヘニングセン(又はその相続人)との間に特別な関係が存在しているかのように思わせるものが多数含まれている。 例えば、本件商標の立体的形状を施した商品を紹介するに際して、照明のデザイナーとして有名なヘニングセンの氏名を用いて商品デザインを紹介し、この商品とともに被請求人を表示しており(例えば、甲15~甲25)、商品紹介におけるこのような表記は、ヘニングセンの氏名を不正に利用したことになる。 また、この使用を示す書面において、本件商標を表した商品とヘニングセンの氏名しか表示されていないものも多数存在し(例えば、甲26~甲35)、このような使用を示す書面の提出は、特許庁を欺いて不正に権利を取得したことになる。 なお、甲第15号証ないし甲第35号証の証書は、先行無効審判において被請求人から提出された証書であって、本件商標に係る不服2015-764(商願2013-98030:以下「本件商標不服審判事件」という。)において識別力を獲得したことを証明するために提出されたものである(甲36)。 (オ)被請求人が、本件商標に関する、適正な所有権の使用権限を有しておらず、本件商標の登録を行う地位にないことは、被請求人が、自国であるデンマークを中心として、アメリカ合衆国、オーストラリア、フランス、スイス、シンガポール等で、本件商標以外の商標登録行為を行っておリ、欧州連合知的財産庁にも、一部、本件商標以外の商標が商標登録されていることから、本件商標の登録も試みたと思料されるところ、本件商標の登録は、全く認められておらず、デザイナーの故国であるデンマーク特許庁及び、その近隣のEU加盟国を管轄する欧州連合知的財産庁は、当該商標の登録を拒否していることからも、明らかである。 (カ)上述したように、ヘニングセンの照明商品に関する知的財産について被請求人が締結した本契約の原本の存在が明らかにならない限り、被請求人は、本件商標を日本において不正に使用し、また審査・審判手続において特許庁を欺いて権利取得したことになり、これらの行為は国際信義則及び公序良俗に反するものであり、商標法第4条第1項第7号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により、無効にすべきものである。 (2)商標法第4条第1項第10号について ア 本件商標の立体的形状は、建築家、デザイナーなどとして有名なヘニングセンがデザインした照明作品の一つであることで知られている(甲3)。 このことは、被請求人が照明商品を紹介するときにヘニングセンの氏名を利用していること(甲15~甲24)、また商標法第3条第2項の規定の適用を受けるときにヘニングセンの氏名しか表示されていないものを提出していること(甲25~甲35)などからも明らかであり、仮に被請求人の名称「ルイスポールセン」の方が有名であるとすればヘニングセンの氏名を使用することなく、被請求人の名称を用いているはずである。 このようなことからすれば、本件商標の立体的形状は、デザイナーであるヘニングセンの知的財産であり、ヘニングセンの立体的形状として周知であることは明かである。 イ 被請求人がヘニングセンの知的財産に関する本契約を適正に締結して有効である場合、この本契約(及び1978年の基本ライセンス契約)に基づいて本件商標を使用したことになるが、本契約(及び1978年の基本ライセンス契約)が過去又は現在において有効に存続していないとすれば、被請求人(ルイスポールセン)の本件商標の立体的形状の使用は、本件商標の立体的形状をデザインしたヘニングセンとは何ら関係のない第三者の使用となる。 このような場合、本契約の原本を示してヘニングセンの知的財産についてライセンスを得ていることが証明されない限り、被請求人が本件商標について商標登録出願をしたとしても、本件商標の立体的形状がヘニングセンの知的財産であることが周知であることから、商標法第4条第1項第10号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により、無効にすべきものである。 3 被請求人の答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、これまで請求人の間で先行無効審判、先行無効審判に係る審決取消訴訟(令和元年(行ケ)第10086号審決取消請求事件)及びその上告審(令和2年(行ツ)第64号、令和2年(行ヒ)第55号)などと多くの係争があり、すべての案件において、被請求人が勝訴していると主張しているが、本件無効審判は、上記先行無効審判及び上記先行無効審判に係る審決取消訴訟(令和元年(行ケ)第10086号審決取消請求事件)において、被請求人とヘニングセン及びその相続人との間のライセンス契約書の原本が提出されていないため、ヘニングセン及びその相続人との間のライセンス契約がヘニングセンの死後から現在に至るまで継続して有効に存続していたか、また、被請求人は、本件商標の商標権を取得する権利の譲渡を受けていたかの立証を求めて請求したものであり、被請求人が主張するような不毛な係争を起こすようなものには該当しない。 (2)被請求人は、1978年の基本ライセンス契約およびその抄訳(乙1)と現在有効な2010年10月5日付ライセンス契約(以下「現ライセンス契約」という。)及びその抄訳(乙2)の2つの契約書を提出し、これら2つの契約書により、ヘニングセン及びその相続人と被請求人との間のライセンス契約が有効であることを主張している。 しかし、この2つの契約書でもっても、ヘニングセンの死後、現在に至るまでの間継続して、ヘニングセン及びその相続人と被請求人との間のライセンス契約が有効に存在していたかは全く不明であり、これらの期間にわたって継続してライセンス契約が有効であったことを証明していない。 ア 1978年の基本ライセンス契約そのものについて ライセンス契約を締結するに際に、その当事者双方がその契約書に署名するが、この1978年の基本ライセンス契約書(乙1)には、被請求人である被請求人側(ライセンシー側)の名称とその署名は記載されているが、ヘニングセンの法定相続人であるA側(ライセンサー側)の氏名とその署名は記載されていない。 ライセンス契約の場合、A側(ライセンサー)の意向が重要であるにもかわらず、このA側の氏名及び署名が全く存在しないということは、A側の同意を得ていないものとなり、この1978年の基本ライセンス契約でもってA側との間でライセンス契約が有効に存続していたとの被請求人の主張は、誤ったものであり、この1978年の基本ライセンス契約の期間、すなわち1978年4月6日から2017年12月31日までの期間においてライセンス契約が有効であることを証明するものではない。 イ ライセンス契約の契約期間について ヘニングセンが生存していたときには、ヘニングセン側(ライセンサー側)と被請求人側(ライセンシー側)との間にライセンス契約(以前のライセンス契約)が存在していたと推測されるが、仮にこの1978年の基本ライセンス契約(乙1)が有効であったとしても、ヘニングセン(1894年9月9日~1967年1月31日)(甲3)が死亡してから1978年の基本ライセンス契約が締結されるまでの期間、すなわち1967年2月1日から1978年4月6日までの約10年間の期間(以下「第1空白期間」ともいう。)においてヘニングセン側(A)と被請求人側との間にライセンス契約が有効に存在していたことを証明するものではない。 この1978年の基本ライセンス契約の§1において「・・・本日からのこの契約が以前のライセンス契約に取って代わることは、当事者間で合意されています。」(乙1の抄訳3)との内容が記載されているが、以前のライセンス契約に取って代わるものとなるためには、以前のライセンス契約が有効に存在していることが前提となる。 しかし、この1978年の基本ライセンス契約の締結当時、ヘニングセン(死亡:1967年1月31日)は既に死亡していて以前のライセンス契約は終了していることは明らかである。このような状況においては、以前のライセンス契約はヘニングセンが死亡したときに一旦終了し、その後1978年6月4日にAとの間で新たにこの1978年の基本ライセンス契約が締結されたことになり、以前のライセンス契約とこの1978年の基本ライセンス契約との間に、ライセンス契約の存在しない空白期間が存在していたことは明らかである。 加えて、仮に1978年の基本ライセンス契約(乙1)が有効であったとしても、この現ライセンス契約は、A(1904年6月24日~1996年6月12日)が死亡してから現基本ライセンス契約(乙2:審決注「現ライセンス契約」の誤記と思われる。)が締結されるまでの間、すなわち1996年6月13日から2009年12月31日までの約13年間の期間(以下「第2空白期間」ともいう。)においてA側と被請求人側との間にライセンス契約が有効に存在していたことを証明するものではない。 第1空白期間及び第2空白期間において、ライセンス契約の当事者の一方側(ライセンサー側)は、ヘニングセンの死後において法定相続人としてのA以外の人物の氏名がでてきておらず、相続人の氏名が出てくるのは現ライセンス契約(乙2)において初めてでてくる8名のみである。 このように相続人の氏名が全く不明な契約状態において、被請求人(ライセンシー)は、1978年の基本ライセンス契約に基づくライセンス料(1978年の基本ライセンス契約に添付のライセンス料)の支払いなどの義務をどのように果たしていたか全く不明であり、このような状況において、この現ライセンス契約は、へニングセンの相続人との間でライセンス契約が有効に継続していたことを証明するものではない。 ウ 審決への影響 1978年の基本ライセンス契約に関連して、1978年の基本ライセンス契約自体が存在しない、あるいは仮に存在していても第1空白期間及び第2空白期間が存在するとすれば、本件商標不服審判事件において、被請求人は虚偽の主張をしておりこの虚偽の主張による不正でもって権利を取得したことになる。 本件商標不服審判事件の審決において、「・・・本願商標は、ヘニングセンが1958年にデザインし、出願人が、現在に至るまで55年以上、ヘニングセン及び同氏の子息との協約に基づき、世界中の市場において、本願商標に係る立体的形状のランプシェード(以下「出願人製品」という。)に独占して使用してきたものである(甲6、甲66、甲197等)。・・・」と認定され、また商標法第3条第2項の適用を受けるために提出された資料に関し、「・・・出願人の販売代理店であった株式会社YAMAGIWA(名称変更時の「株式会社ヤマギワ」の時期を含む。)が、1972年から2007年までの定期的に発行する商品カタログ(甲158~甲178、甲180~甲182)・・・で紹介し、輸入販売している。・・・出願人の日本法人であるルイスポールセン ジャパン株式会社・・・は、同社の1992年から2014年まで定期的に発行する商品カタログ(甲184~甲189、甲191~甲195、甲197~甲204、甲206~甲210、甲212、甲214)・・・で出願人商品を紹介し、輸入販売している。・・・出願人製品は、世界で50万台を超すセールスを記録しているロングセラー製品であり(甲6)、日本においては、1999年から2014年の間に、約7万5千台が販売されている(甲217)。・・・」と認定されて商標法第3条第2項の使用による識別性が認められ、これによって、商標登録が認められている(甲37)。 しかしながら、上述したように、本件商標不服審判事件において使用による識別性が認められた証拠資料については、基本ライセンス契約の契約期間内のものが多く含まれており、この基本ライセンス契約自体が法的に締結された状態になっていなかったときには、これらの提出された証拠資料は虚偽のものとなり、本件商標の登録は本来認められるものではない。 また、これらの証拠資料については、基本ライセンス契約に関連する第1空白期間及び第2空白期間のものも多く含まれており、第1空白期間及び第2空白期間が存在するときには、このときにおいてもこれらの証拠資料は虚偽の資料となり、本件商標の登録は認められるものではない。それ故に、この基本ライセンス契約自体が存在しないことにより、あるいは基本ライセンス契約に関連して第1空白期間及び第2空白期間が存在することにより、本件商標は無効とされるべきものである。 (3)本件商標の「ランプシェードの立体的形態」は、ヘニングセンがデザインしたものとして著名なものであり(甲38)、この立体的形態についての権利は、ヘニングセン及びその相続人(ライセンサー)が所有し、被請求人は実施許諾を受ける側(ライセンシー側)であってこの立体的形態についての権利を有するものではない。 本件商標は、平成25年(2013年)12月13日に被請求人により登録出願されており、この出願時においては、現ライセンス契約(2010年1月1日から有効)が適用されることになる。この現ライセンス契約においては、ヘニングセンの相続人側(ライセンサー)から被請求人(ライセンシー)に付与される権利は、「ライセンサーは、契約の対象とする製品の開発、製造、販売、マーケティングの権利をLPに譲渡します。・・・」(乙2の抄訳)と記載されているように、契約対象の製品を開発、製造、販売する権利である。 この現ライセンス契約においては、ランプシェードの立体的形態に関する権利をライセンシー側に譲渡することについては何も規定されておらず(甲39)、この立体的形態についての権利は、へニングセンの相続人側(ライセンサー)に残っているものといえる。かくすると、被請求人のランプシェードの立体的形態についての商標登録出願は、ライセンサー側の同意を得ずに、ヘニングセンのデザインを盗用して出願手続を行ったものであり、このようにヘニングセンのデザインを盗用した出願は無効にされるべきものであり、また、へニングセンがデザインした周知形態に同一又は類似するものであるとして無効にされるべきものである。 なお、念のために、1978年の基本ライセンス契約においてこの立体的形態に関する権利をライセンシー側に譲渡することが規定されているかを確認したところ見当たらなかった(甲40)。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)において、要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 1 請求人は、ヘニングセン及びその相続人と被請求人との間の契約が過去又は現在において有効に存続していないと主張し、本件商標は、被請求人が虚偽の陳述をして商標登録を取得したものであるから商標法第4条第1項第7号に該当し、また、本件商標はヘニングセンの立体的形状として周知であるため商標法第4条第1項第10号に該当すると主張している。 (1)本件商標に関しては、被請求人はこれまで、被請求人製品の模倣品を製造販売する請求人及び請求人子会社(株式会社R&MJaPan)との間で、先行無効審判、先行無効審判に係る審決取消訴訟(令和元年(行ケ)第10086号審決取消請求事件)、上告審(令和2年(行ツ)第64号、令和2年(行ヒ)第55号)、侵害訴訟(平成29年(ワ)第22543号商標権侵害行為差止等請求事件)、税関輸入差止認定手続き(簡第164I-00037号)と多くの係争があり、すべての案件において、被請求人が勝訴している。 本件商標は、被請求人商品「PH5」(本件商品)の立体的形状であるが、いずれの案件においても、被請求人が1976年から本件商標の登録出願日である2013年12月13日までの約40年の長期間にわたり、日本国内において本件商品を継続して販売したことにより、本件商標は被請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されていたことが認められている。 しかも、本件商品はヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であることに加えて、被請求人が製造販売元であることを示す広告宣伝が継続して繰り返し行われた結果、本件商標の登録出願時までには、本件商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具、インテリアの取引業者及び照明器具、インテリアに関心のある一般消費者の間で被請求人が製造販売するランプシェードとして広く知られるようになり、本件商品の立体的形状は周知著名となった結果、自他商品識別機能ないし自他商品識別力を獲得するに至ったものと認められている。 (2)このように、いずれの案件においても、本件商標が被請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されていたことが認められていること、請求人が主張しているように被請求人は契約書の重要な部分をこれまでに訳文とともに提出していること(甲5)、加えて、ヘニングセン及びその相続人と被請求人との間に契約に関する争いが全くないこと等から、あえて当事者間の契約書を提出する必要はないと考えている。 しかしながら、上述のとおり、本件商標に対して、請求人が無効審判(及び上級審)を繰り返すため、ここに1978年の基本ライセンス契約(乙1)、及び、現ライセンス契約(乙2)を提出する。 これにより、被請求人とヘニングセン及びその相続人との間のライセンス契約が有効であることは明らかである。 (3)請求人が提出した甲第5号証は、これまでに被請求人が特許庁に提出したものであり、現ライセンス契約(乙2)の第1項及び第3項を抜粋したものであるので、この部分の抄訳は今回省略する。 (4)なお、請求人は、現ライセンス契約1頁目の当事者に関する記載を読み違えているが、当事者の一方は、現在はA及びヘニングセンの相続人であり、当該相続人が「ライセンサー」である旨は甲第5号証にすでに明記されている。 なお、現ライセンス契約(乙2)の付属書2に相続人がリストされている。 (5)当事者間の契約内容に関して、第三者である請求人の疑問を解消する必要は毛頭ないが、これらの契約書の提出により審判請求書に記載された請求人の疑問はすべて解消されると考えている。 (6)なお、請求人は、世界中で本件商品のレプリカが販売されているため、契約が被請求人との間で有効に存続しているとは到底思えないと主張している。 これについても、特に反論する必要はないと考えるが今後の無用な争いを末然に防ぐため敢えて申し添えると、被請求人は本件商品を含め、被請求人商品のレプリカに対しては世界的に、常に権利を行使している。 係争中であるため詳細は記載しないが、モベラリス社に対しては2020年から権利を行使しており、訴訟の段階に入っている。 ディイイズ社及びその他の英国のレプリカ販売業者に対しても同様である。 アマゾン社は、レプリカ商品の削除に協力的なので、ブランド保護事業や著作権侵害対策事業を行っているオプセクセキュリティ社を介して常にレプリカ商品をアマゾンから削除している。 2 以上のとおり、請求人の主張はいずれも事実とはかけ離れており、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号の無効理由を有するものではない。 第5 当審の判断 1 本件審判の請求の利益 請求人が、本件審判を請求する利害関係を有することについて、被請求人はこれについて争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。 よって、以下本案に入って審理し、判断する。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について 請求人は、上記第3のとおり主張するところ、要するに、ヘニングセンの照明商品に関する知的財産について、ヘニングセンの相続人と被請求人が締結した有効なライセンス契約の原本の存在が明らかにならない限り、被請求人は、本件商標を日本において不正に使用し、また審査・審判手続において特許庁を欺いて権利取得したことになり、これらの行為は国際信義則及び公序良俗に反するものであり、商標法第4条第1項第7号に該当すると主張する。 しかしながら、商標法上、他人の著作権と抵触する商標について、商標登録を受けることができない旨を定めた規定は存在しない。一方で、商標権と著作権が抵触する場合の規律に関し、同法第29条は、商標権者は、指定商品又は指定役務についての登録商標の使用がその使用の態様によりその商標登録出願前に生じた他人の著作権又は著作隣接権と抵触するときは、指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により使用することができない旨を定めており、同条の規定は、他人の著作権と登録商標が抵触する場合があることを前提とするものであるから、商標法上、他人の著作物について商標登録出願を行うことを禁止するものではないものと解される。 そうすると、仮に本件商品の立体的形状について本件商標の登録出願日前にヘニングセンの著作権が成立していたとしても、商標法上、本件商品の立体的形状についてヘニングセン以外の第三者が商標登録出願を行うことが禁止されるものではない。 してみると、ヘニングセンの照明商品に関する知的財産について、ヘニングセンの相続人と被請求人が締結した有効なライセンス契約の原本の存在の有無が本件商標の登録出願及び商標登録に影響を及ぼすものではないといえるものである。 なお、本件商標は、本件商標に係る不服審判事件の審決時(平成27年12月15日)において、被請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして、日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから、商標法第3条第2項の要件を具備するものとして、商標登録されたものであるところ、請求人の主張及び同人の提出した証拠からは、被請求人とA、B及びその他のヘニングセンの相続人との間において、本件商標の登録出願に関して具体的なトラブルがあった等、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合というべき事情は見いだせない。 また、本件商標は、他の法律によって当該商標の使用等が禁止されているものではなく、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。 さらに、本件商標は、別掲のとおりの構成からなるものであって、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかである。その他、本件商標が、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべき証左も見あたらない。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)引用商標の周知性 請求人が提出した甲第15号証ないし甲第35号証は、被請求人が本件商標不服審判時に、商標法第3条第2項の規定の適用を受ける目的で提出した証拠であると主張するところ、これらの証拠中には、被請求人が本件商標(本件商品)を紹介するに際して、被請求人の名称の記載とあわせてヘニングセンの氏名が記載されているもの(甲15~甲24)に加え、被請求人の名称の記載がなくヘニングセンの氏名のみが記載されているものも含まれているが、これらは、本件商品の形状をデザインした者がヘニングセンであることを紹介した記事にすぎない(甲25~甲35)。 そして、請求人の提出した証拠からは、引用商標(本件商標)が、ヘニングセンの業務に係る商品を表示するものとして周知であることを裏付ける、例えばヘニングセンの業務に係る商品の商標としての使用期間、商品の売上高、売上個数などの周知性の基礎となる客観的な数値が把握できる証拠の提出はない。 したがって、本件商標は、上記2のとおり、被請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして、日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるとしても、ヘニングセンの業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されている商標であるとは認められない。 (2)請求人の主張 請求人は、引用商標(本件商標)の立体的形状は、ヘニングセンの知的財産であり、ヘニングセンのデザインした立体的形状として周知であることは明らかであるから、被請求人が、ヘニングセンの知的財産についてライセンスを得ていることが証明されない限り、被請求人が本件商標について商標登録出願をしたとしても、商標法第4条第1項第10号に該当すると主張する。 しかしながら、引用商標(本件商標)の立体的形状は、上記(1)のとおり、ヘニングセンの業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されているとは認められないものであり、また、上記2のとおり、ヘニングセンの照明商品に関する知的財産について、ヘニングセンの相続人と被請求人が締結した有効なライセンス契約の原本の存在の有無が本件商標の登録出願及び商標登録に影響を及ぼすものではないことからすれば、上記請求人の主張は採用することはできない。 (3)小括 以上のとおり、引用商標(本件商標)は、ヘニングセン(他人)の業務を表示する商品として、需要者の間に広く認識されている商標であるとは認められないものであるから、本号のその他の要件を判断するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号に違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-890080

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