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商標無効審判

2020-890067

スマホケン、スマ

審判番号
2020-890067
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2019-086417
登録番号
6201054
請求日
2020年09月17日
審決日
2021年11月08日
公報発行日
2022年10月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】三井住友海上火災保険 株式会社
  • 【請求人代理人】窪田 英一郎
  • 【請求人代理人】加藤 ちあき
  • 【請求人代理人】本阿弥 友子
  • 【被請求人】太陽生命保険 株式会社
  • 【被請求人代理人】特許業務法人T.S.パートナーズ
  • 【被請求人代理人】小川 利春
審判長/審判官
  • 審判長 冨澤 美加
  • 審判官 中束 としえ
  • 審判官 杉本 克治
分類
T111 .261-Y (W36) / T111 .262-Y (W36) / T111 .271-Y (W36) / T111 .22 -Y (W36) / T111 .222-Y (W36)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第19号、商標法第46条第2項、商標法第46条、商標法第46条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6201054号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6201054号商標(以下「本件商標」という。)は、「スマ保険」の文字を標準文字で表してなり、令和元年6月20日に登録出願、第36類「生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険の引受け,保険料率の算出,生命保険及び損害保険に関する情報の提供」を指定役務として、同年11月6日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が、本件商標の無効の理由として引用する登録第5465749号商標(以下「引用商標」という。)は、「スマ保」の文字を標準文字で表してなり、平成23年8月1日に登録出願、第36類「生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,保険に関する助言,保険情報の提供」を指定役務として、同24年1月27日に設定登録されたものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第78号証(枝番号を含む。)を提出している。 1 請求の理由 (1)理由の要点 ア 本件商標は、引用商標と、外観・称呼・観念のいずれにおいても類似するものであって、その指定役務と同一又は類似の役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 イ 引用商標は、本件商標の登録出願日である令和元年6月20日のはるか以前から、保険業界において、極めて広く知られている。本件商標と引用商標の類似性は極めて高く、長年にわたり、引用商標を使用した保険役務が一般に広く宣伝広告されていることからすれば、本件商標がその指定役務に使用された場合に、その出所につき誤認・混同を生じさせることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当する。 ウ 全国的に著名な引用商標を含んだ本件商標の使用・登録を容認することは、請求人の著名な商標が有する出所表示機能(指標力)を稀釈化するばかりでなく、請求人の著名商標に化体した業務上の信用すなわち莫大なグッドウィルに“ただ乗り”することを認めることとなり、健全な取引秩序の維持という商標法の目的に反することになるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号又は同項第19号にも該当する。 (2)無効事由 本件商標は、引用商標との関係で、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。 (3)利害関係 請求人は、引用商標「スマ保」の所有者であり、当該商標の登録出願日及び指定役務は、上記第2に記載のとおりである、 よって、本件商標は、引用商標との関係で、商標法第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)の無効理由を有するものである。 また、後述するように、請求人の所有する引用商標は、平成24年(2012年)8月より、スマートフォン用モバイルアプリケーション(以下「スマホ用アプリ」又は「アプリ」ということがある。)の商標として使用されているものであり、自動車保険、火災保険、傷害保険等の各種保険サービスを提供するスマホ用アプリの商標として我が国において全国的に周知となっており、引用商標を付したアプリは、保険会社が提供するアプリとしては破格の104万ダウンロードを記録している(甲4、甲8)。 他方、被請求人も請求人と同様、保険を業とする法人である(甲5)。 したがって、請求人が、本件審判において、法律上の利害関係人(商標法第46条第2項)であることは明らかである。 (4)本件商標と引用商標の構成 ア 本件商標について 本件商標「スマ保険」は、片仮名の「スマ」と漢字の「保険」を結合させた標準文字よりなるものであり、引用商標「スマ保」を語頭から全て含んだ外観をしている。本件商標からは「スマホケン」の称呼が生じるが、語頭の「スマ」が片仮名で書かれていることから「スマートフォンによる保険」又は「スマートな保険」といった観念が生ずる。 イ 引用商標について 引用商標の外観も、片仮名の「スマ」と漢字の「保」を結合させた標準文字の商標であり、本件商標との差異は、最後の一文字、すなわち、保険の「険」の字が無いだけである。本件商標からは、その構成に応じて「スマホ」の自然的称呼が生じ、指定役務(保険)との関係で、本件商標と同様に「スマートフォンによる保険」又は「スマートな保険」といった観念が生ずる。 (5)本件商標登録を無効とすべき理由 ア 商標法第4条第1項第11号の主張 (ア)引用商標が本件商標よりも先願に係る登録商標であること、及び、両者の指定役務が類似するものであること 上記で述べたように、引用商標が本件商標よりも先願に係る登録商標であること、及び、両者の指定役務が同一又は類似するものであることは明らかである。 (イ)外観上の類似性 本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」とは、僅か4文字の構成文字のうち3文字を共通にしており、かつ、語頭から3文字までは片仮名と漢字の配列も全く同一である。しかも、両者の差異は、最後の一文字、すなわち、保険の「険」の有無にすぎず、最後の「険」の文字は、看者の注意が届き難い語尾に位置しているから、両者を離隔的に観察した場合、本件商標と引用商標とは、外観上、見誤るおそれがある。 通常の商取引において、商標は、直接並べられて対比されるわけではなく、時と処を異にしてその人間の曖昧な記憶に基づいて認識されるものであるから、その類否の判定は、いわゆる離隔的観察によるべきものとされている。このような離隔的観察による場合、上記のとおり、本件商標と引用商標の外観は、語頭から3文字の配列を共通にし、相違する文字も印象が薄い語尾に位置しており、識別力の弱い「保険」の「険」を省略したにすぎない。 したがって、時と処を異にして両商標に接する需要者・取引者が、これらを即座に明確に区別することは極めて困難であり、両商標は、外観上極めて紛らわしいというべきである。 よって、本件商標と引用商標とは、外観上類似するというべきである。 (ウ)称呼の類似性 本件商標が、その構成文字から「スマホケン」と称呼されることは明らかであり、一方、引用商標も、その文字に相応して「スマホ」と称呼されることは明らかである。 ここで、「スマホケン」と「スマホ」の称呼を比較すると、差異は語尾音の「ケン」の有無であるが、これが「保険」という役務の普通名称の「険」を意味するものであり、捨象・略称可能なことは、需要者・取引者であれば容易に推測がつくものであって、その有無が称呼全体に与える影響は小さい。 したがって、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、下記するとおり、観念上の同一性とも相まって、その語感、語調は相似たものとなる。 よって、本件商標と引用商標とは、称呼上も相類似するということができる。 (エ)観念の類似性 本件商標は、その構成全体から「スマートフォンによる保険」又は「スマートな保険」といった観念が生じ、一方、引用商標からも、同様に「スマートフォンによる保険」又は「スマートな保険」といった観念が生ずるから、両者は観念を共通にする類似の商標であることが明らかである。 (オ)小括 以上述べたとおり、引用商標が本件商標よりも先願に係る登録商標であって、両者の指定役務は類似するものである。また、本件商標は、引用商標と外観及び称呼上類似するものであり、その観念を同一とする類似商標であるから、本件商標は、引用商標との関係で、商標法第4条第1項第11号に該当する。 イ 商標法第4条第1項第15号の主張 (ア)引用商標「スマ保」の周知・著名性 請求人である三井住友海上火災保険株式会社は、2001年10月、三井海上火災保険株式会社と住友海上火災保険株式会社の合併により誕生した損害保険業界のリーディングカンパニーである(資本金1,395億9,552万円、代理店数36,478店:甲6)。2019年3月期の売上高は1兆5,096億円であり、国内では業界第3位としての地位を確立している(甲7)。 なかでも、2012年8月から「保険をてのひらに。」をコンセプトに(甲30~甲32)始まった、自動車保険、火災保険、傷害保険等に関わる数多くの役務を提供する「スマートフォン用アプリ」は大変好評を博した。 そして、このアプリに引用商標「スマ保」が使用されており(一例として、甲30~甲34)、このスマートフォン用アプリ「スマ保」は、保険会社が提供するアプリとしては破格の52万ダウンロードを記録し(2015年6月末時点:甲4)、令和2年7月末時点では、104万件を超えるダウンロード数となっている(甲8)。 請求人は、本件商標の登録出願日である令和元年(2019年)6月20日より7年も前から、本件商標の指定役務と同一の役務に、引用商標「スマ保」を継続して使用しており(例えば、甲33~甲36)、引用商標は、請求人の提供に係る前記役務の商標として、保険業界において広く一般に認識されている。 上記したとおり、請求人は、2012年に役務の提供を開始して以来、引用商標を使用した多数の保険関連役務を提供している(甲4、甲9~甲36)。 当初は、保険証券をスマートフォンで確認できる機能のみを検討していたが、仕様を拡大し、事故等の緊急時に対処法を指示してくれる「緊急時ナビ」(甲14、甲30)、自分の運転傾向を診断してくれる「『運転力』診断」(甲14、甲17、甲24、甲27、甲37~甲40)、大規模自然災害に遭遇したときにサポートする「災害時ナビ」(甲14、甲16、甲26、甲41~甲47)、ゲーム感覚で手軽に運転適性をチェックできる「安全運転チェッカー」(甲14、甲17)、自転車生活で役立つ機能を搭載した「安心さいくる」(甲48、甲49)等を、提供役務の中に盛り込んでいった。 現在では、請求人が引用商標を付して提供する本件関連役務の種類は多岐にわたっている(甲4、甲18~甲74)。 このように、請求人の引用商標「スマ保」が高い評価と名声を得ている状況において、引用商標と相紛らわしい本件商標「スマ保険」を使用した同一又は類似の役務が保険市場に出回るとすれば、その役務の出所について混同を生ずることは必至である。 これまで、請求人は、広告媒体を厳選し「スマ保」に似合った効果的な宣伝広告活動を積極的に行ってきた(甲9~甲17、甲30~甲74)。特に、サービス運用開始当初から、引用商標「スマ保」を使用した役務の広告を、全国紙を中心とした新聞紙面に多数掲載し、現在に至るまで「スマ保」の宣伝活動を効果的に展開させてきた。 その一例として、甲第10号証ないし甲第17号証を示す。また、2012年12月1日より、全国放送で、テレビコマーシャルも長期間にわたり放映された(甲9)。 さらに、請求人が引用商標「スマ保」を使用して提供する役務は、保険業界で常に注目を集めており、世間的にも大きく評価され、請求人の提供するスマートフォン利用者向け保険サービス「スマ保」は、平成25年度(2013年度)「MCPC award 2013」のグランプリと総務大臣賞を受賞した(甲18)。 加えて、請求人は、サービス運用開始当初から現在に至るまで、定期的かつ継続的に、引用商標「スマ保」を使用して提供する保険役務について、適宜ニュースリリースを発行している(甲18~甲29)。 以上のとおり、引用商標「スマ保」は、本件商標「スマ保険」の登録出願日である令和元年(2019年)6月20日のはるか以前から、保険業界において、極めて広く知られている。 本件商標と引用商標とが類似することは、上記したとおりであるが、「スマ保」商標が周知・著名な商標であること、本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務との関連性が極めて強いこと、「スマ保」商標を使用した各種役務が、長年にわたり、一般に広く宣伝広告されていることからすれば、本件商標「スマ保険」がその指定役務に使用された場合に、その出所につき誤認・混同を生じさせることは明らかである。 (イ)「レールデュタン」最高裁判決 商標法第4条第1項第15号に関し、最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決(いわゆる「レールデュタン」判決)は、同号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、いわゆる「広義の混同を生ずるおそれ」がある商標を含むとの判断を示した。 上記「レールデュタン」判決は、「混同を生ずるおそれ」の判断における考慮要素として、<a>当該商標と他人の表示との類似性の程度、<b>他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、<c>当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、<d>商品等の取引者及び需要者の共通性、<e>その他取引の実状、という5つを挙げた。 この<a>ないし<e>の5つを、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」に当てはめて考えてみると、<a>については、本件商標が外観・呼称・観念のいずれにおいても、引用商標と類似する程度は高いものといわなければならない。また、<b>についていえば、引用商標の周知性ないし著名性は高く、しかも引用商標は独創性の低いものではない。 引用商標「スマ保」は、スマートフォンが急激に普及し始めていた2011年に発生した東日本大震災をきっかけに開発されたものである(甲4)。 また、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とは、ほぼ同一であるから、上記「レールデュタン」判決のいう<c>性質・用途又は目的における関連性は一致し、<d>取引者・需要者も共通する。よって、<e>の取引の実状からみても、「混同を生ずるおそれ」があることは明らかである。 すなわち、本件商標「スマ保険」が、その指定役務である保険関連役務について使用された場合には、引用商標「スマ保」との関係で、あたかも請求人、又は請求人と業務上あるいは組織上何らかの特殊な関係がある企業体が提供する商品であるかのごとく、誤認・混同されることは必至である。よって、本件商標と引用商標との間に、「広義の混同を生ずるおそれ」があることは明らかであり、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標であって、商標法第4条第1項第15号にも該当する。 ウ 商標法第4条第1項第7号に関する主張 本件商標「スマ保険」の指定役務(保険)と請求人の業務に係る役務との関連性が極めて強いこと、及び、引用商標「スマ保」を使用した保険関連役務が一般に広く宣伝広告されていることは、上記したとおりであるが、このように全国的に著名な商標を含んだ本件商標の使用・登録を容認することは、請求人の著名な商標が有する出所表示機能(指標力)を稀釈化するばかりでなく、請求人の著名商標に化体した業務上の信用、すなわち莫大なグッドウィルに“ただ乗り”することを認めることとなり、健全な取引秩序の維持という商標法の目的に反することになる。 さらに、引用商標「スマ保」には、これまで7年以上にもわたり培ってきた「イメージ(印象)のよさ」が備わっている。 したがって、本件商標「スマ保険」が同一の保険関連役務について使用されると、その内容の善し悪しを問わず、引用商標「スマ保」の持つ「良いイメージ」は損なわれ、これが、引用商標の標識としての機能の弱化につながる。 仮に、本件商標「スマ保険」が粗悪な役務について使用されることになれば、請求人の周知商標「スマ保」に化体した上記イメージや業務上の信用(グッドウィル)は著しく汚染されることになる。 本件商標「スマ保険」が請求人の商標「スマ保」の顧客吸引力へ“ただ乗り”し、当該顧客吸引力を不当に利用するものであることは、上記の諸事情からみて客観的に明白である。 以上のとおり、本件商標「スマ保険」は、保険関連役務を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている引用商標「スマ保」と類似の商標であって、取引秩序を乱すものというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。 エ 商標法第4条第1項第19号に関する主張 請求人が保険会社としてこれまで蓄積してきたノウハウを結集した「スマ保」は、これまでにない画期的な保険のアプリとして、サービス開始以降、各方面から高い評価を受けた。しかし、アプリの世界では、評価が高ければ高いほど、追随する競合が次々と現れるのも事実であり、本件商標「スマ保険」が使用される保険関連役務は、まさに、そのような「後発」である。 このように競合他社の著名な商標をそっくりそのまま構成要素とする商標が請求人と関連する事業に使用されると、「スマ保」標章に化体した信用、名声、顧客吸引力等のグッドウィルは損なわれる一方で、本件商標権者は、そのことにより不正の利益を得ることになる。 付言すれば、請求人がその提供等について何らの関連性若しくは責任を持たない役務について本件商標が使用され、さらに、その内容が悪質又は低品質なものであれば、商標「スマ保」に対して有する請求人の業務上の責任及び信用が損なわれ、他方、同商標に寄せる需要者・取引者の信頼を失う結果を招来することは明らかである。加えて、本件商標権者が本件商標を使用すれば、これに接した者は、あたかも本件商標権者が請求人の許可のもと、保険関連役務の提供を行っているかのごとく誤認するのは必至であり、その信頼の下に役務の提供を受ける取引者及び需要者は不測の損害を被ることになる。 本件商標「スマ保険」が、請求人の「スマ保」と無関係に採択されたとは考えられず、その顧客吸引力を利用しようとするものであることは極めて容易に看取されるというべきである。 よって、本件商標の使用は、客観的に不正の利益を得、若しくは請求人に損害を加える目的を持つことは明白である。 特許庁商標課編「商標審査基準」商標法第4条第1項第19号に関する記載を本件に当てはめて考察するに、<a>引用商標「スマ保」は、日本国内で全国的に知られており、本件商標「スマ保険」は、引用商標「スマ保」と酷似している。また、<b>引用商標は、スマートフォンの略称である「スマホ」の「ホ」の部分を「保険」の「保」に置き換えた一種の言葉遊びとなっており、構成上顕著な特徴を有する。 よって、この審査基準に鑑みても、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものであり、仮に同号に該当しない場合であっても、同第7号に該当するものとして、その登録は排除されるべきである。 (6)結語 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであり、その登録は、商標法第46条の規定によりにより無効とされるべきである。 2 弁駁の要旨 (1)商標法第4条第1項第11号に関する答弁について ア 称呼が類似することについて 被請求人は、審判請求書を引用し、「いくら『保険』が普通名称であっても、『保険』の語をあえて『保』と『険』に分離し、『険』のみを捨象することはいかにも不自然であり、そのような手法が需要者・取引者に容易に推測がつくとはいい難い。また、請求人は、そのような『保険』の語をわざわざ『保』と『険』に分断し、『険』を捨象して略称することが需要者・取引者が容易に推測できることに関して、何ら理由を説明していない。また、請求人は『捨象・略称可能である』と述べているが、実際にそのような捨象、略称された例を被請求人は見たことがない。」と述べている。 しかしながら、被請求人(太陽生命保険株式会社)は、その名が示すとおり、生命保険を業とする法人であり、生命保険は往々にして「生保」と省略される。他方、請求人(三井住友海上火災保険株式会社)が業とする損害保険もまた同様に「損保」と略称されることは顕著な事実であり、広辞苑にも掲載されている(甲75、甲76)。また、保険業界では、他にも「国保」「健保」など、「○○保」と記載するだけで保険を意味する言葉は多数存在する。 「被請求人は見たことがない」とまで述べているが、答弁書で「『生保』(生命保険)、『損保』(損害保険)のように慣用された言葉であれば格別」との記載もあるので、この主張は真実ではないと思われる。 イ 外観が類似することについて 被請求人は、「商標の外観というのは、商標全体を視覚上どのように認識するのかが問題となるのであり、商標の称呼の判断要素のような対象語が語尾(右端)に位置するか否かや文字が有する識別力の有無が、外観の類否に影響を及ぼすことは考えられない」と述べる。しかしながら、実際の市場において、時と処を異にして両商標に接する需要者・取引者は、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」とを即座に明確に区別することは極めて困難といわなければならない。「○○保」の「保」が保険を意味する業界の客観的状況を総合的に考察すれば、外観類似という結論を自ずと導き出せることは明らかである。 また、被請求人は「需要者が同書同大同間隔に一連一体に書された『スマ保険』の文字に接し、右端に書された『険』のみを見過ごして『スマ保』の文字と認識することは全く考えられない。(中略)むしろ外観からいえば『険』は、その他の『ス』『マ』『保』と比べて最も画数が多く圧倒的な存在感のある漢字である」とも述べている。 しかしながら、請求人及び被請求人が属する保険業界とその需要者の間では、「険」を省略することが常態化しているから、本件商標「スマ保険」の右端に置かれた「険」の文字が簡単に省略され需要者の記憶に残り難いことは、既に述べたとおりである。 しかも、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」とは、僅か4文字の構成文字のうち、語頭から3文字目までを共通にし、片仮名と漢字の配列もすべて同一であるから、相紛らわしいことこの上ない。 ウ 観念が類似することについて さらに、被請求人は、本件商標「スマ保険」から「何かしらの保険という意味を想起し得るが、全体として明確な観念が生じることはない」とし、「『スマ』の文字から「スマートフォン」又は「スマート」の意味を想起するというのは、単に請求人の希望的・独善的な主張にすぎない」とまで述べている。 ここで、被請求人が提出した乙第8号証(2頁目)の文章を検証すると、「スマホ+保険を意味し、且つゴロもよい『スマ保険』というネーミング&商標登録は、太陽生命にとって非常に価値あるものです。」と書かれている。 加えて、被請求人の引用する「ネーミング大賞」(乙6、乙7)の受賞に当たり、被請求人はニュースリリースを発出し(甲77)、「『スマ保険』のネーミングは、保険加入手続きについて、いつでもどこでも自分のタイミングで、スマホでスマートに手続きできる新チャネルの特長を表現したものです。」と書いている。 以上の事実を総合的に勘案するに、被請求人が、本件商標を構成する「スマ」の文字を「スマホでスマートに」という意味合いから採択したことは疑いようのない事実であり、被請求人の答弁こそ失当である。 本件商標「スマ保険」が引用商標「スマ保」と外観及び称呼上類似し、観念を同一とすることは明白であるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号に関する答弁について ア 両商標が類似することについて 被請求人は、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」とでは、類似性が全くなく、役務について出所の混同を生ずるおそれは全くないと述べている。しかしながら、上記(1)で詳述したとおり、本件商標と引用商標とが類似することは紛れもない事実であり、両商標は外観・称呼・観念のいずれの点でも相紛らわしい類似の商標というべきである。 よって、被請求人の答弁には理由がない。 イ 引用商標「スマ保」の著名性について 被請求人は、株式会社日刊工業新聞社(以下「日刊工業新聞社」という。)が主催する「2019年度第30回読者が選ぶネーミング大賞」(以下、単に「ネーミング大賞」という。)の生活部門で第1位を受賞したことをもって本件商標が周知だと主張し、「引用商標と類似する商標であって、引用商標と混同を生じるようなものであれば、そもそも受賞の対象外とされるものであり、受賞は考えられない。」と主張する。 「ネーミング大賞」とは、日刊工業新聞社発行の「日刊工業新聞」に掲載された過去の記事の中から、日刊工業新聞社側があらかじめ選択をし、各企業に対して「ネーミング大賞」にエントリーしませんかと呼びかけて行われる一つのイベントである。 ネーミング大賞は、一企業がいわばその顧客に対して賞を贈るイベントであり、請求人が引用商標「スマ保」に関して受賞した平成25年度(2013年度)の「MCPC award 2013」グランプリや総務大臣賞(甲18)といった賞とは異なる。 ネーミング大賞の選出基準は、商標の周知性とは一切関係がなく、ましてや他の類似商標の存在によって対象外とされるようなものでもない。同年に入賞したネーミングを一覧しても、すべてが世間に浸透しているとは到底思われず、偏りがあるように思われる。 なお、被請求人は、引用商標の周知・著名性について疑問を呈し縷々述べているが、請求人が引用商標「スマ保」を使用して保険に関わる多くの役務を提供する「スマートフォン用アプリ」は、保険会社が提供するアプリとしては異例の104万件を超えるダウンロード記録となっている(甲4、甲8、甲30~甲32)。 また、請求人が作成・発行した数々のパンフレットの類は、年間それぞれ約1万部が製作・発行され、日本全国(47都道府県)に所在する代理店等を通して頒布されている。代理店の数は、2020年3月31日時点で36,478店である(甲78)。発行されるパンフレットは数種類にわたるから、本件商標の登録出願日から遡って単純計算したとしても、数十万部の各種パンフレットが日本全国で頒布されたことになる。 保険商品というものは、発売開始当初から数年間にわたって集中的に精力的に販売促進活動を行い、ある程度の認知度が固まってきてからは、継続的かつ効果的な宣伝活動に切り替える。 したがって、引用商標「スマ保」の宣伝広告活動が、2012年から2015年に集中していたとしても何の不思議もない。 引用商標を付した保険関連役務は開始当初の範囲を超えて大きく広がっており、このように請求人の引用商標「スマ保」が高い評価と名声を得ている状況下において、引用商標と相紛らわしい本件商標「スマ保険」を使用した同一・類似の役務が保険市場に出回るとすれば、その役務の出所について混同を生ずることは必定である。 ウ 両商標の間に「混同のおそれ」が存することについて なお、請求人は、本件商標と引用商標との間には「狭義の混同のおそれ」が存すると思料しているが、「広義の混同のおそれ」の該当性を検討しなければならない場合に備えて、念のため、最高裁「レールデュタン」判決に言及した。 すなわち、本件商標「スマ保険」が、その指定役務について使用された場合に、引用商標「スマ保」との関係で、あたかも請求人、又は請求人と業務上あるいは組織上何らかの特殊な関係がある企業体が提供する役務であるかのごとく誤認・混同されることは必至である。 特に保険業界の統合・吸収・合併・提携といった再編の動きは著しく、同一の企業グループが損害保険業と生命保険業を行うことも可能である。 よって、本件商標と引用商標との間に、たとえ「狭義の混同を生ずるおそれ」がなくても「広義の混同を生ずるおそれ」があることは明らかであり、本件商標は、他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれのある商標であって、商標法第4条第1項第15号にも該当する。 (3)商標法第4条第1項第7号に関する答弁について 被請求人は、本件商標には公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標には当たらない旨を主張するが、同号が問題とするのはそれだけではない。商標審査基準が正当に示すとおり、当該出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合にも同号は適用される。 本件商標「スマ保険」は、保険関連役務を表示するものとして日本国内の需要者に既に広く認識されていた引用商標「スマ保」の顧客吸引力に「ただ乗り」するものであるから、保険業界の取引秩序を乱すものであり、商標法第4条第1項第7号にも該当する。 (4)商標法第4条第1項第19号に関する答弁について これまで述べてきたとおり、引用商標「スマ保」をそっくりそのまま構成要素とする本件商標「スマ保険」を被請求人が使用すれば、これに接した需要者は、あたかも被請求人が請求人の許可のもと、保険関連役務の提供を行っているかのごとく誤認するのは必至である。ましてや超高齢化社会での保険の重要性が叫ばれる今日、引用商標「スマ保」への信頼の下に、誤って役務の提供を受ける取引者及び需要者がいるとするならば、それらの者は不測の損害を被ることになる。 請求人の引用商標「スマ保」は、スマートフォンの略称である「スマホ」の「ホ」の部分を「保険」の「保」に置き換えた一種の言葉遊びとなっており、構成上顕著な特徴と強い識別力を有する。本件商標に関する前記ネーミングの経緯(「スマホでスマートに」甲77)を考え併せれば、本件商標「スマ保険」が、請求人の「スマ保」と無関係に採択されたとは考えられず、その顧客吸引力を利用しようとするものであることは極めて容易に看取されるというべきである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にも該当するものであり、仮に同号に該当しない場合であっても、同項第7号に該当するものとして、その登録は排除されるべきである。 (5)結語 以上述べたとおり、被請求人の答弁には何ら合理的な根拠がないから、本件商標の登録は、商標法第46条第1項の規定により無効にされるべきである。 第4 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。 1 本件商標と引用商標の特定 本件商標「スマ保険」は、その構成から「スマホケン」の称呼が自然に生じ、特定の観念が生じるものではない造語である。 一方、引用商標「スマ保」からは「スマホ」の称呼が自然に生じ、特定の観念が生じるものではない造語である。 2 本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない 請求人は、本件商標が引用商標と類似するため、商標法第4条第1項第11号に該当すると主張するが、本号には該当しない。 (1)称呼の類否について 本件商標から生じる「スマホケン」の称呼は5音にすぎない短い称呼であり、引用商標から生じる「スマホ」の称呼は僅か3音にすぎないごく短い称呼であり、いずれもよどみなく一連に称呼されるものである。 両商標の称呼を比較すると、本件商標の「スマホケン」は5音節、引用商標「スマホ」は3音節と音節数に相違があり、両商標とも非常に短い音節数からなる。そもそも、3ないし5音節のようなごく短い音節の商標で2音を異とする場合、両商標が称呼上類似することはない。 本件商標の称呼「スマホケン」と引用商標の称呼「スマホ」とでは、本件商標の語末にある「ケン」の2音が引用商標にはない。「ケン」の「ケ(ke)」の音は、舌の後部を口蓋の奥の部分に押し当てて閉鎖した上で破裂させながら母音の「エ」を発音することで発声する音であり、破裂音特有の空気が弾けるような力強い響きを有する。このような強い音である「ケン」の2音が引用商標には含まれないから、「スマホケン」と「スマホ」の音声を聞き誤る需要者がいるなど全く考えられない。 以上のとおり、本件商標の称呼「スマホケン」と引用商標の称呼「スマホ」は、語韻語調が全く異なり明瞭に聴別される非類似の称呼であることは明らかである。 請求人は、本件商標の称呼の「スマホケン」の「ケン」が普通名称である「保険」の「険」を意味するものであり、捨象・略称可能であることは需要者・取引者であれば容易に推測がつくものであり、その有無が称呼全体に与える影響は小さいと主張している。しかしながら、いくら「保険」が普通名称であっても、「保険」の語をあえて「保」と「険」に分離し、「険」のみを捨象することはいかにも不自然であり、そのような手法が需要者・取引者に容易に推測がつくとはいい難い。また、請求人は、そのような「保険」の語をわざわざ「保」と「険」に分断し、「険」を捨象して略称することが需要者・取引者が容易に推測できることに関して、何ら理由を説明していない。 また、請求人は「捨象・略称可能である」と述べているが、実際にそのような捨象、略称された例を被請求人は見たことがない。単に「可能である」というだけで、称呼を特定することは論外である。 さらに、本件商標及び引用商標の両者をそれぞれ一連に称呼するときは、観念上の同一性とも相まって、その語感、語調は相似たものとなると主張しているが、両商標が観念上同一であることはない。 そうすると、本件商標は一連に称呼した場合「スマホケン」であり、上述したとおり「保険」から「険」のみを捨象して「スマホ」の称呼が生じるということはあり得ない。 よって、本件商標からは「スマホケン」の称呼が生じ、引用商標から生じる「スマホ」とは「ケン」の2音の有無により称呼において全く類似しないものであることは論ずるまでもなく明らかである。 したがって、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」は称呼において非類似である。 (2)外観の類否について 本件商標は「スマ保険」の文字から構成されており、引用商標は「スマ保」の文字から構成されている。 そもそも、外観の類似というのは、商標の構成態様が似通っており、商標の外観において近似した印象で互いに相紛らわしい場合をいう。 両商標の外観を検討すると、本件商標に含まれている「険」の文字が引用商標には含まれていない。僅か3文字と4文字で構成されている本件商標と引用商標の外観において、「険」の有無によって与える構成態様の差異は判然としており、外観上全体として異なる印象を与えていることは明らかである。 すなわち、本件商標「スマ保険」を観察するとき、「険」の文字の存在を一見して看取することが可能であり、本件商標と引用商標の外観の印象が互いに紛らわしく見誤ることはあり得ない。さらに、「険」の文字を捨象して外観を観察すべき理由も全くない。 したがって、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」は、外観において著しく異なり、類似するものではない。 請求人は、両商標の前半3文字の「スマ保」が共通するので、両者を離隔的に観察すれば見誤るおそれがあり、語尾にあって識別力の弱い「保険」の「険」は省略して観察する旨を述べている。 しかしながら、商標の外観というのは、商標全体を視覚上どのように認識するのかが問題となるのであり、商標の称呼の判断要素のような対象語が語尾(右端)に位置するか否かや文字が有する識別力の有無が、外観の類否に影響を及ぼすことは考えられない。需要者が同書同大同間隔に一連一体に書された「スマ保険」の文字に接し、右端に書された「険」のみを見過ごして「スマ保」の文字と認識することは全く考えられない。 また、請求人は、本件商標からなぜ「険」の文字のみを省略して観察するかについて「保険」に識別力がなく、「険」が印象の薄い語尾に位置していると述べている。しかし、むしろ外観からいえば「険」は、その他の「ス」、「マ」、「保」と比べて最も画数が多く圧倒的な存在感のある漢字であるため、「険」の有無が外観上の差異に大きく寄与している。 したがって、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」は、外観上非類似であることは明らかである。 (3)観念の類否について 本件商標「スマ保険」からは、何らの観念が生じず、引用商標「スマ保」からも何らの観念は生じないから、両商標の観念は、比較するまでもなく非類似である。 本件商標「スマ保険」は、片仮名「スマ」と漢字の「保険」を結合させた文字構成よりなるものである。「スマ(すま)」は辞書に「隅、須万(サバ科の海産の硬骨魚)、須磨(神戸市南西部の海岸の地)」等の意味が掲載されている(乙1)。しかし、本件商標「スマ保険」の片仮名「スマ」からこれらの意味合いを需要者が想起するとはいい難く、特段の意味が生じない語である。本件商標の「保険」の文字は、「火災・死亡・病気等の偶然の事故による損害を補償するため、多数者が一定の資金(=保険料)を出し合い、実際に事故があった時その者に一定金額(=保険金)を与える制度」を意味し、通常の需要者であれば容易に認識できる平易な単語である(乙2)。 したがって、本件商標から何かしらの保険という意味を想起し得るが、全体として明確な観念が生じることはない。 一方、引用商標「スマ保」の「スマ」は、本件商標と同様に特段の意味を想起しない語である。「保」には「律令制における末端の行政組織、平安京の条坊制の一単位」等の意味があるが、これらの意味は歴史等に通じている者なら想起することがあっても、一般的な需要者に親しまれている語とまではいえず(乙3)、「保」からは特段の意味を想起することはない。 そうすると、引用商標「スマ保」全体からは、需要者が何らの意味を認識し得ない。引用商標の称呼が「スマホ」であり、「スマホ」の語が「スマートフォン」の略称として親しまれている事実はある(乙4)。しかしながら、引用商標「スマ保」が「スマートフォン」をもじった造語であるとは認識できても、「スマ保」が「スマートフォン」を指す語として一般に理解認識されているわけではないため、「スマートフォン」の観念を生じることはあり得ない。 したがって、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」は、いずれも特定の意味は生じず、観念において類似するものではない。 請求人は、本件商標及び引用商標は、ともに「スマートフォンによる保険」又は「スマートな保険」といった観念が生じ、両者は観念が共通すると主張している。 しかしながら、本件商標及び引用商標に共通する「スマ」の文字は、「隅、須万(サバ科の海産の硬骨魚)、須磨(神戸市南西部の海岸の地)」を意味するものであり、たまたま「スマートフォン」、「スマート」の頭二文字であることにすぎず、「スマ」の文字から「スマートフォン」又は「スマート」の意味を想起するというのは、単に請求人の希望的・独善的な主張にすぎない。また、「スマ」から「スマートフォン」又は「スマート」の観念が生じることについての何らの説明がない。 さらに、引用商標の「保」の部分からも「保険」の観念が生じると何らの理由の説明もなく主張しているが、「生保」(生命保険)、「損保」(損害保険)のように慣用された言葉であれば格別、「保」の文字単独で「保険」と理解されているような実情もない。 よって、請求人の主張は理由がなく、失当である。 (4)小括 上述のとおり、本件商標「スマ保険」及び引用商標「スマ保」は、称呼、外観及び観念のいずれにおいても互いに類似しない商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するとした請求人の主張には理由がない。 3 本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない 請求人は、本件商標と引用商標の類似を前提に商標法第4条第1項第15号の主張を展開しているが、上記の請求人の主張が根拠のないことは、上記2で述べたとおりであるから、類似しない商標についての請求人の主張は失当であることは明らかである。 (1)商標の類似性について 本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」とでは、上記2で詳述したとおり、類似性が全くなく、役務について出所の混同を生ずるおそれが全くない。 本号に該当するか否かにおいては、商標が類似することが要件になってはいないが、全く近似しない商標同士であれば、そもそも出所の混同が生ずることはないから、少なくとも需要者が出所について混同するおそれがある程度近似する必要がある。 上記2でも述べたように、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」は、両商標とも一連一体にまとまりよく構成されており、「スマホケン」及び「スマホ」の称呼がそれぞれ生じるが、「ケン」の2音の有無により明瞭に聴別される。 また、外観においても構成文字が異なるため明確な差異があり、類似しないことは明らかである。観念においても互いに特に意味を有さない造語であって類似しない。 このように、類似する点が全くなく、需要者が明確に本件商標と引用商標を区別できるため、出所の混同が生じる余地が全くないことが明らかである。 (2)本件商標及び引用商標の周知・著名性について 請求人は、引用商標が2012年からスマートフォン用アプリの名称として使用されており、日本国内で周知・著名であると主張し、種々の証拠資料を提出している。 しかしながら、これらの提出資料で引用商標が記載されているものは、請求人自身のウェブサイトや、請求人自らが作成した報告書、広報誌、テレビコマーシャルや新聞広告等の広告宣伝物、ニュースリリース、パンフレット等であり、引用商標の周知・著名性を客観的に証明する第三者の作成した資料ではない。 また、テレビコマーシャルに関しては、放映回数、放映地域、時間帯等の情報が何らなく、これだけの提出資料で周知・著名性を確認することはできない。 さらに、請求人自身が作成・発行したパンフレットに関しても発行部数、配布地域、配布方法等について明らかにされていないから、パンフレットが発行されたであろうことは認めることはできるが、これによって周知性、著名性を得ていたものかを確認することはできない。 加えて、新聞広告、テレビコマーシャルを行っていた期間としては、2012年ないし2015年であって、2015年以降については請求人が発行したパンフレットしか提出されていない状況からすると、本件商標の商標法第4条第1項第15号該当可否の判断基準時である登録査定時に引用商標が周知・著名であるかは疑問であり、特に2015年以降に引用商標が周知・著名性を有しているかについては大いに疑わしい。 その他、請求人会社が業界第3位の売上であることや、東日本大震災の困難な状況に、スマートフォンを活用したサービスに目を付け、引用商標を付したサービスを開始した等と述べているが、引用商標の周知・著名性を裏付ける主張とはなり得ない。 したがって、引用商標が我が国で周知・著名な商標であるとは信ずることはできない。 一方、本件商標「スマ保険」は、インターネットで保険の見積りから申込みが完結できるサービスの名称として、2019年10月21日より標章の使用を開始している。保険加入の手続きは一般的に複雑・難解になりがちである中で、本件商標を付したサービスは、インターネットで初めて保険を申し込む場合でも簡単に手続きができるよう、分かりやすさを追求した専用ウェブページを用意し、顧客の利便性を図っている(乙5)。 本件商標「スマ保険」は、日刊工業新聞社が主催する「2019年度第30回読者が選ぶネーミング大賞」の生活部門で第1位を受賞している。「読者が選ぶネーミング大賞」は、新サービスの中で世間を賑わした商品・サービスのネーミングの中から、内容を的確に、感性豊かに表現しているものについて募集して表彰するものである(乙6)。 本件商標は、なじみ深い言葉で覚えやすいとの評価が多いとあり、幅広い世代の需要者に認知され評価されていることが分かる(乙7)。 また、このネーミング大賞について、商標の専門家である特許法人も注目しており、本件商標について語呂が良く価値が高いと評価する記事を掲載したウェブページを発信している(乙8)。 30回に及ぶ歴史のある賞である「読者が選ぶネーミング大賞」を受賞している事実は、本件商標の周知性を示すものである。引用商標と類似する商標であって、引用商標と混同を生じるようなものであれば、そもそも受賞の対象外とされるものであり、受賞は考えられない。 「読者が選ぶネーミング大賞」の選考者が、引用商標について不知であったから、本件商標が賞を受賞することができたと考えることは、請求人の本件審判請求の主張を信ずるなら、あり得ないことになる。 そして、「読者が選ぶネーミング大賞」の選考者が本件商標に賞を授与したという事実は、引用商標との混同の可能性がないことを示すものである。 このように、本件商標は、ネーミング大賞の受賞を始めとして高い周知性ないし著名性を獲得し、被請求人の商標として広く認識されているので、引用商標とは出所の混同が生じないことは明白である。 (3)レールデュタン最高裁判決について 請求人は、最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決(レールデュタン事件)を引用し、本件商標がいわゆる「広義の混同」を生ずるおそれがある商標であり、同判決の「混同のおそれのある商標」の判断基準の要件に本件商標が該当する旨を主張している。 しかしながら、同判決は、使用商品(香水)と非類似の商品(化粧用具、身飾品、頭飾品等)について混同のおそれが生じるかが争われた際に、「混同のおそれのある商標」には、その商品が他人の商品に係るものと誤信されるおそれがある商品のみならず(いわゆる「狭義の混同」)、その商品が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の商品であると誤信されるおそれ(いわゆる「広義の混同」)がある商標を含むと判示されたものである。 本件の場合、本件商標の指定役務である「損害保険契約の締結の代理,損害保険の引受け」等は、引用商標の使用役務と同一であり、何をもって「狭義の混同」ではなく「広義の混同」を生ずるおそれがあると主張しているのか理解することができない。 そもそも、被請求人が請求人の子会社であるように需要者に認識されるというようなことは、全く想像することもできない。 また、「混同のおそれのある商標」の判断基準の要件についてみると、<a>当該商標と他人の表示との類似性の程度については、本件商標と引用商標との類似性が全くないことは、上記2で詳述したとおりであり、本要件には該当しない。また、<b>他人の表示の周知著名性及び独創性の程度についても、周知著名であることが証明されておらず該当しない。<a>及び<b>を含む基準を総合的に判断しても、本件商標は請求人の業務に係る役務と混同を生じるおそれがない商標であることが明らかである。 (4)小括 上述のとおり、引用商標は周知・著名であるかは疑問があり、また、そもそも本件商標と引用商標は類似性がなく、出所の混同が生ずるおそれが全くないため、商標法第4条第1項第15号に該当するとした請求人の主張には理由がない。 4 本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない 請求人は、本件商標「スマ保険」の登録を容認することが、自己の著名商標の出所表示機能を希釈化し、また、著名商標に化体した業務上の信用にただ乗りすると主張している。 しかしながら、上記2で述べたように、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」とでは全く類似しない別異の商標であり、そもそも請求人の利益を害するおそれはないことは明らかである。 また、引用商標が著名商標であることは前述のとおり甚だ疑問であり、指標力・顧客吸引力の希釈化が生じること自体があり得ない。 さらに、請求人は、「本件商標『スマ保険』が粗悪な役務に使用されることになれば」、引用商標に化体した良質なイメージや顧客吸引力を汚染するなどと主張している。 しかしながら、本件商標が粗悪な役務に使用されている事実は全くない。請求人の、「本件商標『スマ保険』が粗悪な役務に使用されることになれば」の主張は、保険の同業者である被請求人に対する侮辱であり、到底許されるものではない。被請求人は、前述のとおり、本件商標をインターネットで保険商品の見積りから申し込みが完結するウェブサービスについて使用しているのであり、このような請求人の主張は、本件商標の使用が社会公共の利益に反するものであるように恣意的に主張しているにすぎない。 そのうえ、請求人は、本件商標「スマ保険」と引用商標「スマ保」が類似の商標であるから、取引秩序を乱すと結論付けているが、そもそも両商標は全く類似せず、取引秩序を乱すような状況を想定することはできない。 上述のとおり、本件商標はその使用が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ではなく、商標法第4条第1項第7号に該当するとした請求人の主張には理由がない。 5 本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない 上記3で述べたとおり、引用商標は請求人の業務に係る役務を表示するものとして広く認識されているかは疑問である。 また、本件商標とは引用商標は、上記2で述べたとおり、互いに全く類似しない商標である。かつ、本件商標を使用することについて、不正の利益を得る目的や他人に損害を加える目的等の不正の目的は全くない。 したがって、同号のいずれの要件にも該当しておらず、本件商標は同号に該当することはない。 請求人は、本件商標と引用商標が構成文字の一部を共通することを意図的に「そっくりそのまま構成要素とする」などと述べて、本件商標の使用が不正の利益を得る目的であるかのように述べているが、本件商標と引用商標は構成文字の一部が共通していても、前述のとおり商標全体では称呼・外観・観念において全く類似する部分がない非類似の商標である。 したがって、そもそも本号に該当しない。 さらに、請求人は、本件商標が悪質又は低品質な役務について使用され、引用商標の信頼を失い、役務の提供を受ける需要者に不測の損害を被る等と主張しているが、本件商標が悪質又は低品質な役務について使用されている事実は全くない。また、本件商標が悪質又は低品質な役務について使用されている事実やおそれがあることを請求人は全く証明していない。むしろ、被請求人は、インターネットで保険申込みを完結できる良質なサービスについて本件商標を使用して需要者より好評を得ており、請求人の主張は事実無根である。 加えて、請求人は、「他人の著名商標を一部に有する商標」が他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うものの基準として、特許庁商標課編「商標審査基準」上の2つの基準を示している(乙9)。しかしながら、上記の審査基準では、まず「他人の著名商標を一部に有する商標」などという要件が規定されていない点で、請求人の主張は誤っている。請求人は、本件商標があたかも請求人の商標を一部に有する商標であるかのように強弁し、被請求人に不正の目的があるかのように恣意的に述べているにすぎない。また、2つの基準の少なくとも「一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は《極めて類似》するものであること」について、引用商標が全国的に知られているかは疑わしく、かつ、引用商標と本件商標は全く類似点がないため「同一又は《極めて類似》するものである」という要件も充足していない。 したがって、「不正の目的をもって使用するものと推認する」ことはできない。 上述のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をする商標ではなく、商標法第4条第1項第19号に該当するとした請求人の主張には理由がない。 6 結語 以上のとおり、請求人の主張は失当であり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第7号又は同項第19号のいずれにも該当するものではない。 第5 当審の判断 請求人が本件審判を請求することについて、請求人が利害関係を有することに争いはないから、以下、本案に入って審理する。 1 引用商標の周知性について (1)請求人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。 ア 請求人である三井住友海上火災保険株式会社は、2001年10月、三井海上火災保険株式会社と住友海上火災保険株式会社の合併により誕生した株式会社であり、その代理店数は、2020年3月末時点で、36,478店(甲6)、2019年3月期の売上高は1兆5,096億円、損害保険会社の売上ランキングでは国内第3位である(甲7)。 イ 請求人は、2012年8月から「保険をてのひらに。」をコンセプトにスマートフォン用モバイルアプリケーション(以下「請求人アプリ」という。)の提供を開始した(甲4、甲8、甲10~甲13)。請求人アプリには、「スマ保」の文字が使用されており(甲30~甲33 ほか)、請求人アプリの2015年6月末時点でのダウンロード数は、52万であり(甲4)、2020年7末時点では、約104万件とされている(甲8)。 ウ 請求人アプリは、提供開始当初は、契約内容確認及び契約内容の変更手続きができる「契約確認・変更」、事故等の緊急時に対処法を指示してくれる「緊急時ナビ」(甲14、甲30)、自分の運転傾向を診断してくれる「『運転力』診断」(甲14、甲17、甲24、甲27、甲37~甲40)、運転適性をチェックできる「安全運転チェッカー」(甲14、甲17)等の機能であったが、その後、自転車生活で役立つ機能を搭載した「安心さいくる」(甲48、甲49)など請求人アプリで提供する内容を増やしていった(甲4、甲18~甲74)。 エ 請求人は、請求人アプリのTVコマーシャルを2012年12月から開始したことがうかがえ(甲9)、2012年7月ないし2015年9月に新聞に広告を掲載し(甲10~甲16)、2013年に請求人の広報誌で紹介し(甲17)、2012年7月以降に配付されたパンフレットやチラシには、「スマ保」がスマートフォン向けアプリケーションとして紹介されている(甲30~甲74)。 オ 請求人の2013年4月22日付けのニュースリリースには、「スマートフォン利用者向けサービス『スマ保』が『MCPC award 2013 グランプリ(大賞)、総務大臣賞』を受賞」、及び「3.『スマ保』について」の見出しの下、「『保険をてのひらに。』をコンセプトとして開発した、当社の契約者以外も利用可能な当社独自のスマートフォンアプリであり、自動車保険の『契約の管理』、『緊急時ナビゲート』、『安全運転診断』等のサービスを提供しています。」の記載がある(甲18)。 また、請求人の2012年5月1日付けのニュースリリース(甲19)には、「スマートフォンご利用者向け新サービス『スマ保』について」の見出しの下、「1.『スマ保』の概要」として、「(4)機能:ご自身のスマートフォンにアプリをダウンロード頂くことにより、以下の機能がご利用いただけます。」の記載があり、その後、請求人アプリの機能の追加やリニューアルについて、請求人のニュースリリースに掲載されている(甲20~甲29)。 カ 請求人アプリに係る売上高、市場シェアなど販売実績に係る主張はなく、その証左も見いだせない。 (2)上記(1)によれば、請求人の代理店数、売上高及び損害保険会社の売上ランキングの国内における順位、並びに請求人アプリのダウンロード数、ニュースリリース及びパンフレットにおける掲載状況などからすれば、請求人アプリは、請求人の顧客の間において、ある程度知られていることはうかがえるとしても、請求人アプリのTVコマーシャルの具体的な放映地域及び回数などの詳細は明らかではないこと、新聞への広告回数は3年間に7回しかないこと、「MCPC award 2013 グランプリ(大賞)、総務大臣賞」の受賞によっては請求人アプリの周知性を推し量ることはできないこと、及び請求人アプリに係る売上高、市場シェアなど販売実績に係る主張はなく、その証左も見いだせないことからすれば、請求人アプリは需要者の間に広く知られていると認めることができないものである。 その他、請求人の提出に係る甲各号証を総合してみても、「スマ保」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。 したがって、請求人提出の甲各号証によっては、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、「スマ保険」の文字を標準文字で表したものであるところ、当該文字は、辞書等に載録されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「スマホケン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標は、「スマ保」の欧文字よりなるころ、当該文字は、辞書等に載録されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「スマホ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標との類否について検討するに、両商標はそれぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成よりなるところ、両者は、末尾の「険」の文字の有無の差異を有するものであり、この差異が、4文字と3文字という短い文字構成からなる両者の外観の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、両者は外観において判然と区別し得るものである。 次に、称呼についてみるに、本件商標から生じる「スマホケン」の称呼と引用商標から生じる「スマホ」の称呼とは、「スマホ」の音を同じくするとしても、3音と5音いう短い音構成であることからすれば、語尾における「ケン」の音の有無が称呼全体に及ぼす影響は小さいものとはいえず、両者は、称呼において明瞭に聴別し得るものである。 さらに、本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することができないものである。 してみれば、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観において顕著に相違し、称呼において明瞭に聴別し得ることから、外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 なお、請求人は、本件商標の構成中、語尾の「険」の文字は、「保険」という役務の普通名称の「険」を意味し、捨象・略称可能である旨及び請求人及び被請求人が属する保険業界とその需要者の間では、「険」を省略することが常態化しているから、本件商標「スマ保険」の右端に置かれた「険」の文字が簡単に省略され需要者の記憶に残り難い旨を主張するが、本件商標は、同書同大等間隔で一体に表されており、その構成中「険」の文字のみが捨象されるべき特段の理由は見いだせないものである。また、請求人は、本件商標及び引用商標からは、いずれも「スマートフォンによる保険」又は「スマートな保険」の観念を生じる旨主張するが、「スマ」の文字が「スマートフォン」又は「スマート」の語の略称として一般に使用されている実情も見いだせない。 したがって、上記請求人の主張は採用することができない。 その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。 (4)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定役務が引用商標の指定役務と同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知性 引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間で広く認識されているものと認めることができないものである。 (2)引用商標の独創性の程度 引用商標は、「スマ保」の文字からなるところ、当該文字は辞書等に掲載されている成語ではないから、その独創性は高いものといえる。 (3)本件商標と引用商標の類似性の程度 「スマ保険」の文字からなる本件商標は、「スマ保」の文字からなる引用商標の構成文字を全て含むものの、上記2(3)に記載のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、両者の類似性の程度は高いものとはいえない。 (4)役務の関連性及び需要者の共通性 請求人が引用商標を使用する役務と本件商標の指定役務とは、いずれも保険に関するものであって、同一又は類似の役務といえるものである。 (5)上記(1)ないし(4)によれば、引用商標の独創性の程度は高く、本件商標の指定役務と引用商標の使用に係る役務とは同一又は類似の役務であるとしても、両商標の類似性の程度は高いものとはいえず、何より、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表すものとして需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものである。 そうすると、本件商標は、これをその指定役務に使用しても、取引者、需要者をして、引用商標を想起させることはなく、その役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表すものとして我が国及び外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることができないものである。 そして、請求人が提出した証拠を総合してみても、被請求人が、引用商標の名声と信用にフリーライドする意図など、不正の目的をもって本件商標の使用をするものと認めるに足る具体的事実を見いだすことはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、「スマ保険」の文字からなり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。また、その商標登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、その出願の経緯などに公序良俗に反するおそれがあることを認めるに足る証拠は見いだせない。 その他、本件商標が、「指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」や「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」など、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 6 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-890067

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