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商標無効審判

2020-890040

カカンドー、ハナマドー、カカン、ハナマ

審判番号
2020-890040
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2017-092121
登録番号
6026952
請求日
2020年05月12日
審決日
2021年04月22日
公報発行日
2022年11月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】布洛斯酒店投資管理(昆山)有限公司
  • 【請求人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
  • 【被請求人】曹 徳林
  • 【被請求人代理人】金井 亨
審判長/審判官
  • 審判長 中束 としえ
  • 審判官 冨澤 美加
  • 審判官 杉本 克治
分類
T111 .22 -Y (W43) / T111 .25 -Y (W43) / T111 .271-Y (W43) / T111 .222-Y (W43)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項10号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項、商標法第46条第2項、商標法第1条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6026952号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6026952号商標(以下「本件商標」という。)は、「花間堂」の文字を標準文字により表してなり、平成29年6月26日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),会議室の貸与,展示施設の貸与」を指定役務として、同30年2月13日に登録査定、同年3月16日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 本件審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第7号に該当するとして引用する商標は、「宿泊施設の提供,飲食物の提供」に使用して、中国及び我が国における取引者・需要者の間で広く知られていると主張する「花間堂」(中国語簡体字では別掲1の表記)の文字よりなる商標(以下、中国語簡体字表記とまとめて、「引用商標」という。)である。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を審判請求書及び回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由の要点 (1)商標法第4条第1項第19号について 本件商標は、その登録出願前から、請求人が「宿泊施設の提供,飲食物の提供」に使用して、中国及び我が国における取引者・需要者の間で広く知られた引用商標と実質的に同一又は類似であるところ、被請求人による本件商標の登録出願行為は、請求人が商標登録出願を行っていないことに乗じて、請求人に損害を与える等の不正の目的をもってされたものである。 (2)商標法第4条第1項第10号について 本件商標は、その登録出願前から、請求人が「宿泊施設の提供,飲食物の提供」に使用して、取引者・需要者の間で広く知られた引用商標と実質的に同一又は類似であり、かつ、その指定役務中「宿泊施設の提供,飲食物の提供」は請求人の上記役務と同一である。 (3)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は、その登録出願前から、請求人が「宿泊施設の提供,飲食物の提供」について使用して、取引者・需要者の間で広く知られた引用商標と実質的に同一又は類似であり、その指定役務中「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),会議室の貸与,展示施設の貸与」に使用された場合には、役務の出所について混同を生じるおそれがある。 (4)商標法第4条第1項第7号について 被請求人による本件商標の登録出願行為は、請求人が引用商標を商標として使用することを選択し、やがて我が国においても出願されることを予想した上で、先回りして、不正な目的をもって剽窃的に出願したものである。 したがって、被請求人による当該出願は、健全な法感情に照らし条理上許されず、商標法の目的(商標法第1条)にも反し、公正な商標秩序を乱すものである。 2 具体的理由 (1)請求人について 請求人である布洛斯酒店投資管理(昆山)有限公司(英文名称:Blossom Hill Investment Management Co.,Ltd.)は、2012年5月9日に設立された中国法人(有限責任公司)であって(甲2)、現在、中国で人気のホテルチェーン「花間堂」を運営している(甲3)。請求人は、自身の完全子会社を介して、中国において2012年にややデザイン化された引用商標を構成中に含む別掲2のとおりの商標を出願登録している(甲4)。当該登録に係る出願は、本件商標の出願よりも6年も前である。 また、日本では、2019年に関連会社である「中国住宿控股(香港)有限公司」(英文名称:China Lodging Holdings(HK)Limited)を介して、引用商標並びにややデザイン化された引用商標及び「HOTELS RESORTS」の文字を構成中に含む商標をそれぞれ出願している(甲5、甲6)。 花間堂は、中国において実際の中国式古民家を改築した宿泊施設などを提供することで知られており、麗江や周荘などといった、古い建造物が残る観光地を中心にホテル事業を展開している(甲7)。古民家を改築して整えられた部屋は、決して広くはないものの、居心地の良い快適な空間となっており、また、その庭木や中庭等は新しく作られたホテルよりも格段に風情のあるものとなっている(甲8)。 例えば、中国でも有数の水郷の町「周庄」にある花間堂の宿泊施設は、民国元年(1912年)に建てられた地元でも有名な大邸宅を改築したもので、もともとは商人の家であったことから、一階が店、二階が家、奥が水郷という造りで、風格のある建物となっている(甲9)。 また、世界文化遺産にも登録されている中国雲南省の街「麗江古城」にある花間堂の宿泊施設は、もともとの古民家を改築する際、大量の歴史資料を調べ、文化建築物保護の専門家のアドバイスを受け、家の中の柱、レンガ、木彫、石刻をすべて残し、本来の良さを復元することで、人々が独特の歴史的重厚感を感じ、心身を休め、中国の庭園文化の温かさを体験できる造りとなっている(甲10)。 さらに、中国の雲南省など地域の特色の強い地区では、花間堂はその土地の文化や風土を活かしたサービスを提供しており、利用客同士が自然に出会い、新しい交流や発見が生まれることをコンセプトとしている(甲11)。 加えて、花間堂の宿泊施設は、宿泊施設以外にカフェ施設としても営業しており、その情緒あふれる造りは宿泊客以外のカフェ利用者からも高い人気を得ている(甲7)。 このように、実際の古民家を改築し、その土地の文化や風土を活かしたサービスを提供する花間堂は、近代的なホテルと伝統的な旅館の良さを掛け合せ、近代的なホテルでもなく、伝統的な旅館でもない、新たな宿泊ビジネスの形を開拓した先駆者的事業として評価されている(甲12)。 そして、2010年に請求人の創設者が花間堂を創業して以来、現在では、麗江、シャングリラ(香格里拉)、束河、シーサンパンナ(西双版納)、ロウ中(「ロウ」は、門構えの中に「良」の文字よりなる。)、蘇州、同里、周庄、杭州、無錫など様々な中国の歴史的文化的土地に花間堂のホテルチェーンを展開している(甲12)。 (2)請求人の展開する花間堂の周知性について 上述のとおり、実際の古民家を改築することで、近代的なホテルと伝統的な旅館を融合させた花間堂のサービスは、内外で非常に人気となっており、遅くとも本件商標が出願される5年以上前の2012年には、中国国内で有名なホテルブランドとして認知され、多くの旅行サイトで中国の有名ホテルブランドの一つとして花間堂は紹介されている(甲13)。 また、本件商標の登録出願前である2017年4月26日には、当日に7周年を迎えた花間堂が中国の大型展覧会に招待され、展覧期間中、ニュース16件、テレビインタビュー2件、生中継プラットフォーム2か所など、多くのマスメディアに報道された(甲14)。 さらに、2017年7月4日には、日本のベンチャー企業「Le Fro」と提携して、日本の温泉を中国でも実現する取り組みを行っており、提携発表の記者会見も開かれている(甲15)。 加えて、本件商標の登録出願(2017年6月26日)前の日付で、花間堂の経営状況に関するニュースや花間堂の宿泊施設に関するレビューなど、花間堂について多くのインターネット記事を確認することもできる(甲10、甲12、甲13の1、甲13の5、甲16)。 そうすると、このような中国における花間堂の注目状況に鑑みれば、遅くとも本件商標の登録出願時には、中国国内において、引用商標は、需要者の間で請求人の役務(「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」)を示す商標として広く認識されていたものと認められる。 さらには、中国における高い人気を受けて、花間堂は、日本からの中国旅行者や中国在住の日本人の紹介により、本件商標の登録出願前から日本のウェブサイトで多く取り上げられている(甲7、甲8、甲17)。 したがって、引用商標は、中国国内のみならず、我が国においても、本件商標の登録出願時に需要者の間で請求人の役務(「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」)を示す商標として一定程度認識されていたものと認められる。 (3)引用商標について 引用商標である「花間堂」の文字は、日本においても、また中国においても辞書等に掲載されていない造語であって、請求人の創設者が2010年に独自に考案したものである。 実際、「花間堂」の文字は、請求人の展開するホテルチェーンの名称として、その創業以降、一貫して使用されている。 また、上述のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、中国及び我が国の需要者の間で請求人の役務(「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」)を示す商標として広く認知されていた。 さらに、本件商標と引用商標を比較すると、いずれも「花間堂」の文字商標であって、同一である。 (4)被請求人について 被請求人は、請求人とは何ら関係のない第三者(自然人)である。日本国内に住所を有しているものの、被請求人の名前である「曹徳林」は、「曹」が中国及び朝鮮半島に見られる漢姓であり、「徳林」が中国の名であることから、中華系自然人であるとうかがわれる。 そうすると、上述した中国における請求人のホテルチェーン「花間堂」の周知性に鑑みるならば、本件商標の登録出願当時、当然に本件商標が請求人の展開するホテルチェーンの名称と同一であることを知っていたものと推認される。 また、本件商標の指定役務中「宿泊施設の提供,飲食物の提供」は、請求人が「花間堂」のブランド名で提供する役務(「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」)と同一であることから、被請求人は、請求人のホテルチェーン「花間堂」を意識して、本件商標を出願したものとうかがわれる。 この点、本件商標は、その登録出願の際に周知であった引用商標と同一であって、引用商標は造語よりなるものであることから、本件商標が偶然に引用商標と一致したとは認め難い。 そうすると、被請求人による本件商標の登録出願には、請求人が引用商標を商標として使用することを選択し、やがて我が国においても出願されることを予想した上で、引用商標が我が国において登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせたり、請求人の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制するなどの不正の目的が推定される。 (5)無効理由の根拠法条への該当性 ア 商標法第4条第1項第19号について 商標法第4条第1項第19号は、日本国内又は外国における他人の周知商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものは、商標登録を受けることができない旨を規定する。 上述のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、中国及び我が国における取引者・需要者の間で、少なくとも「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」の役務について請求人の商標として広く知られていたと推認され、本件商標は、引用商標と実質的に同一である。 また、被請求人による本件商標の登録出願登録行為には、請求人に対して本件商標を買い取らせたり、請求人の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制するなどの不正の目的が推定される。 したがって、本件商標は、その登録出願時において、我が国又は外国で周知の引用商標と同一又は類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものと認められるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。 イ 商標法第4条第1項第10号について 商標法第4条第1項第10号は、日本国内又は外国における他人の周知商標と同一又は類似の商標であって、その役務と同一又は類似する役務について使用するものは、商標登録を受けることができない旨を規定する。 上述のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、我が国における取引者・需要者の間で、少なくとも「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」の役務について請求人の商標として広く知られていたと推認され、本件商標は、引用商標と実質的に同一である。 また、本件商標の指定役務中「宿泊施設の提供,飲食物の提供」は、請求人の上記役務と同一である。 したがって、本件商標は、その登録出願時において、周知の引用商標と同一の商標であって、同一又は類似の役務に使用されるものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。 ウ 商標法第4条第1項第15号について 商標法第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標は、商標登録を受けることができない旨を規定する。 引用商標は、本件商標の登録出願時において、我が国の需要者の間で、少なくとも「宿泊施設の提供」及び「飲食物の提供」の役務についての請求人の商標として広く知られていたと認められ、本件商標は、当該引用商標と実質的に同一である。 また、引用商標を構成する「花間堂」の文字は、請求人が独自に考案した造語であって、請求人が運営するホテルチェーンの名称として、その創業以降、一貫して使用されている。 さらに、請求人は花間堂のホテルチェーンを運営しているところ、当該ホテルチェーンの運営の一環として、チェーン店のオーナーのために本件商標の指定役務中「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」がなされる場合があり、加えて、花間堂の宿泊施設は、本件商標の指定役務中「動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),会議室の貸与,展示施設の貸与」に転用することも可能である。 そのため、昨今の経営の多角化の傾向も考慮すれば、請求人の提供役務「宿泊施設の提供,飲食物の提供」と本件商標の指定役務中「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),会議室の貸与,展示施設の貸与」は、同一人か経済的又は組織的に何らかの関係がある者によって提供される可能性がある。 そうすると、本件商標の登録出願時において、被請求人によって本件商標が使用された場合には、その役務に接する取引者・需要者は、取引上要求される一般的な注意をもってしても、その役務が請求人による役務であるとか、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、まして被請求人が中華系自然人であることからも、役務の出所について混同を生ずることが予想される。 したがって、本件商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。 エ 商標法第4条第1項第7号について 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定するところ、ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(平成17年(行ケ)第10349号に同旨)。 上述のとおり、(ア)本件商標は、造語である引用商標と同一である。(イ)引用商標が中国及び我が国の需要者の間で請求人の商標として認知されている状況において、被請求人が本件商標の登録出願を行っている。(ウ)被請求人は本件商標の登録出願時において、引用商標の存在を当然知っていたと推認される。(エ)被請求人には、請求人に対して本件商標を買い取らせたり、請求人の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制するなどの不正の目的が推認される。 そうすると、本件商標は、不正な目的をもって剽窃的に出願されたものと認められるから、公序良俗に反することは明らかであり、商標法第4条第1項第7号に該当する。 さらに付言すれば、上述のとおり、請求人は2010年より一貫してグローバルな視点を含め花間堂のホテルチェーンの普及に努め、近代的なホテルと伝統的な旅館を融合させた新たな価値の創出に多大な努力を注いできた。 特にホテルビジネスは、サービス品質についての信用が重要であるところ、請求人と何ら関係のない被請求人が、引用商標と同一の本件商標を用いて、劣悪なサービスを提供した場合には、請求人がこれまでに築き上げてきた信用を害するばかりか、請求人による評判通りのサービスを期待した需要者の信頼を裏切り、商標法の目的の一つである需要者の利益を損なう結果となる。 よって、被請求人による本件商標の使用は許されるべきではない。 (6)むすび 以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号、同第10号、同第15号及び同第7号に該当するから、本件商標は同法第46条第1項第1号の規定により、その登録は無効にされるべきものである。 3 回答書における主張 (1)請求人が本件無効審判を請求するに当たり利害関係を有していることの説明 ア 「上海布洛斯酒店管理有限公司」及び「中国住宿控股(香港)有限公司」と請求人(「布洛斯酒店投資管理(昆山)有限公司」)の関係について 本件審判における引用商標に係る中国商標登録第9019818号商標の商標権者「上海布洛斯酒店管理有限公司」(以下「S社」ということがある。)は、請求人である「布洛斯酒店投資管理(昆山)有限公司」(以下「K社」ということがある。)が100%出資する完全子会社である(甲18の1、甲18の8、甲18の9)。 また、我が国における商願2019-152482号商標の出願人「中国住宿控股(香港)有限公司」(以下「H社」ということがある。)は、 請求人であるK社を間接保有する親会社である(甲18の1、甲18の4~甲18の9)。 K社は、子会社のS社と共に、2018年8月の買収によって、中国の大手ホテルチェーン「華住」グループに加わった(甲20の1、甲20の2)。 そして、 現在は、 K社が「花間堂」ホテルの現場での運営を担い、S社が中国での「花間堂」の商標権を管理している。 また、H社は、「華住」グループの日本事業を管理しており、その一環として「花間堂」の日本での商標権を取得すべく、商願2019-152482号商標の出願人となった。 イ 「布洛斯酒店投資管理(昆山)有限公司」(K社)が本件無効審判事件の請求人であることについて K社が実際に「花間堂」ホテルの現場での運営を担い、「花間堂」に関する実情を最もよく把握していることから、主張立証のための証拠収集の容易性などを考慮して、K社が今回の無効審判事件の請求人となった。 ウ 「布洛斯酒店投資管理(昆山)有限公司」(K社) が本件無効審判を請求するに当たり利害関係を有していることについて K社は、S社及びH社と資本提携の関係があり、実際に「花間堂」ホテルを運営している。 そして、その運営にあたっては、H社及びS社から、「花間堂」の商標権についてライセンスを受ける立場にある。 そのため、K社は、「花間堂」ホテルの日本での展開にあたり、H社による商標登録出願(商願2019-152482号)についても将来的に使用権の設定を受けることが予定されており、当該商標登録出願の帰趨について利害関係を有している。 よって、K社は、H社の商標登録出願(商願2019-152482号)で引用された本件商標に対する本件無効審判事件についても当然に利害関係を有する。 (2)答弁に対する弁駁 ア 「請求人は、中国において引用商標権者でもなく、日本において引用商標を出願しているわけではないから、商標法第46条第2項に定める利害関係人には当たらず、本件審判請求をする適格を有さない。」について 上述のとおり、請求人は、本件審判事件について利害関係を有する。 イ 「本件商標を出願した2017年6月26日当時・・・この時点では、被請求人は、中国において『花間堂』というホテルチェーンがあることすら知らなかった。」について 請求人の「花間堂」ホテル(以下「花間堂」という。)は、麗江や周荘などの古都にある中国古民家を改修したブティックホテルであり、 同様のブティックホテルの分野では中国及び日本において周知のホテルブランドとなっている。 古都にある古民家風のブティックホテルは、その士地独自の文化に触れ、情緒ある雰囲気を楽しめることから、旅行通の人や古都を好む人などの需要者層に強い人気がある一方、通常、都市部に位置するラグジュアリーホテルとは異なり、個人経営されているものが多く、たとえば日本における同様の宿泊施設の売上高は、年間2,500万円に満たないものが多い(甲19の1、甲19の2) 。 しかしながら、「花間堂」の売上高は、2013年度が2,036万人民元(約3.2億円)、2014年度が4,848万人民元(約7.7億円)、2015年度が8,264万人民元(約13.2億円)、2016年度が9,340万人民元(約15億円)、2017度が10,221万人民元(約16.3億円)、2018年度が9,219万人民元(約14.7億円)、 2019年度が9,208万人民元(約14.7億円)と推移しており、同様のブティックホテルと比較して、非常に高い売上高を記録している。 なお、前記売上高の数字は、行政庁へ提出した会計書類で公表されており、必要に応じて、証拠を提出することも可能である。 また、2020年現在、「花間堂」は、中国国内で13軒の直営店、14軒のフランチャイズ店と合計で27軒のチェーン店を展開しており、新たに25軒のチェーン店の開店も準備している。 さらに、「花間堂」は、2018年8月に中国の大手ホテルチェーン「華住」グループに買収され、その際の買収額は約4.63億人民元 (約74億円)であった(甲20の1、甲20の2)。 この買収額は、たとえば日本の同様の宿泊施設の買収額が1億円に満たないことが多いなど(甲19の1、甲19の2)、 同様のブティックホテルの買収額と比較して非常に高額であったため、当時、中国国内で非常に注目され、中国最大のインターネットポータルサイト「新浪(sina)」でも取り上げられた(甲20の2)。 そして、2018年8月以降、「花間堂」は、中国の大手ホテルチェーン「華住」グループの主要ブランドの一つとして展開されており、中国を旅行する需要者に対して広く訴求されている(甲20の3)。 さらに、「花間堂」は、これまでに数多くの賞を受賞しており (甲21の1~甲21の5)、2016年には江蘇省で「有名商標」の認証も獲得している(甲21の5)。 加えて、「花間堂」は、日本から中国への旅行者も利用することから、日本でも注目され、知られている。 したがって、「花間堂」は、遅くとも2016年までには、中国及び日本において、中国の大手ホテルチェーン「華住」グループに属する中国国内有数の人気ブティックホテルとして認知されており、著名となっていたと考えられる。 このような状況において、被請求人が旅行関係の仕事を目指し、民宿の経営を考えた際、故郷である中国のホテル事業に関心を持つことは当然であり、本件商標の登録出願当時、被請求人は、中国国内外で広く知られていた「花間堂」の存在を知っていたと考えられる。 また、被請求人は、日本に移住後も中国の遼陽市に時折帰省しており、その際にも、中国国内のホテル事情に触れる機会があり、本件商標の登録出願当時、中国国内外で人気であった「花間堂」の存在を知っていたと考えるのが自然である。 仮に、被請求人が「華住」グループによる「花間堂」の買収当時(2018年8月)、日本に居住していたとしても、故郷である中国のホテル事業への関心や、帰省の際に中国の民宿事情に触れる機会があったこと等を考えると、本件商標の登録出願当時、被請求人が中国の「花間堂」を知らなかったとの主張は到底受け入れられない。 また、被請求人は、中国の富裕層向けに日本のツアー旅行を主催していることから、被請求人の民宿事業も同じく来日した中国人をターゲットにするものとうかがわれる。 そうすると、被請求人は、中国国内有数の人気ブティックホテル「花間堂」を認識した上で、日本で商標登録されていないことを奇貨として、「花間堂」の名声にフリーライドしつつ、請求人等の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的(不正の目的)で本件商標の登録出願を行ったものと推認される。 ウ 「花間堂が2010年に創業されて、被請求人が本件商標を申請する2017年までの7年間で、中国国内でのインターネット記事はわずか5件しかなく・ ・ ・、2017年6月26日当時、引用商標が需要者の間で請求人の役務を示す商標として広く認識されていたなどとは到底いえない。」及び「さらに日本においては、同じ7年間でわずか6件の個人的な旅レポートがなされているだけで,ほとんど無名といっても過言ではない。」について 提出した中国国内でのインターネット記事は一例であり、他の多くのインターネット記事でも 「花間堂」は取り上げられていることから(甲22)、被請求人の主張は事実を誤認したものである。 また、提出した日本のインターネット記事は一例であり、他の多くのインターネット記事でも「花間堂」は取り上げられていることから(甲23の1~甲23の4)、被請求人の主張は事実を誤認したものである。 なお、上述したとおり、遅くとも2016年には、中国国内外で「花間堂」は周知となっており、日本でも「花間堂」はインターネット上で多く紹介されている。実際、「Google」のインターネット検索エンジンで「花間堂」を検索すると、請求人等が運営する「花間堂」についてのウェブサイトが検索結果の上位を占めている(甲23の5)。 エ 「すなわち、『花間堂』という単語は辞書に掲載されていないとしても、華やかで温かいプラスのイメージを有する『花間』という語と『堂』を結合させて、旅館・ホテル・レストラン等の商標として使用する発想はごくありふれたもので、請求人の創設者でなければおよそ思いつかないほどの新規性、珍奇性を有しているものではない。」、「なお、2017年には、スキンケア商品ではあるが、『花間堂』のブランドの商品が発売されており(乙9の1、乙9の2)、このことも『花間堂』という単語がありふれた造語であることを表している。」及び「『花間堂』という造語方法はありふれており、『花間堂』という言葉に接した日本の需要者が請求人の業務と混同することはあり得ない。」について 被請求人は、主観的な見解を述べているにすぎず、「花間堂」の言葉が、数ある文字の中から「花」、「間」、「堂」の三文字を採択して組み合わせた造語であって、「花間堂」という言葉は日本でも中国でも存在せず、一般的に使用されていない言葉であることに変わりはない。 実際、被請求人を除き、これまでホテルや民宿、飲食店について請求人以外に「花間堂」の商標を採択したことは確認できず、「花間堂」の言葉が使用される必然性もない。 そもそも、被請求人は、福井市内の「花堂」(ハナンドウ)という地区と京都市東山区の「三十三間堂」という観光名所を合体させて「花間堂」を考案した等と主張するが、京都市東山区には多くの観光名所が存在し、その中から「三十三間堂」を選び、「花堂」と組み合わせる理由もなく、単につじつまを合わせた説明にすぎない。 また、スキンケア商品において、「花間堂」のブランドの商品が発売されているとしても、ホテル業や飲食業とは全く異なる分野において偶然一致しただけであり、「花間堂」がありふれた造語であることの証左とはならず、そもそも本件無効審判事件は、古都に所在する古民家風ブティックホテルの市場における争いであり、被請求人が指摘する化粧品ブランドは関係ない。 さらに、造語方法がありふれていることと混同が生じることは直接関係なく、我が国で一般的に使用されていない造語が無関係の第三者により使用された場合、これにより商品又は役務の出所に混同が生じることは明らかである。 とりわけ、被請求人は、中国の富裕層向けの日本のツアー旅行を主催しており、被請求人の民宿事業も同じく来日した中国人をターゲットにするものとうかがわれるところ、被請求人が本件商標により民宿事業を行った場合には、来日した中国人は、中国国内有数の人気ブティックホテル「花間堂」と被請求人の運営する民宿を混同する。 また、商標法第4条第1項第15号の「混同のおそれ」は、「他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ」を含み(平成12年7月11日(最高裁同10年(行ヒ)第85号)「レール・デュタン事件」)、中華系自然人である被請求人が本件商標により古都「京都」において民宿事業を行った場合には、少なくとも、同じく古都において民宿事業を営む請求人と緊密な営業上の関係があると誤認されるおそれがあり、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。 オ 「被請求人は、今年中にも、『花間堂』の商標で民泊をオープンする予定ですが、新型コロナウイルスの影轡によりオープン時期が遅れる可能性がある。」について 被請求人は、旅館業の手続きを調査して、物件を探し回ったなどと主張しているものの、実際に旅館業を行うために必要な許可の申請は一切確認できず、商標を使用する準備は全くされていない。 したがって、被請求人の上記主張は事実に反し、むしろ請求人等の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的(不正の目的)がうかがわれる。 カ 乙第15号証ないし乙第22号証について 被請求人代理人は、乙第15号証ないし乙第22号証により、被請求人代理人が検索した国内旅行サイトでは「花間堂」の該当がなく、現時点で請求人の「花間堂」は検索されないことから、本件商標の登録出願当時、本件商標は中国及び日本で周知でなかった等と主張している。 しかしながら、乙第22号証より、国内大手旅行業者のエイチ・アイ・エスのホームページで「花間堂」の英語名称「BLOSSOM HILL」の施設が検索されており、かつ、「ブロッサム ヒル トンリ」の紹介ページでは、「花間堂」の文字が映った施設の写真が掲載されている。 また、実際に国内大手の旅行比較サイト「LINEトラベル」や「トラベルコ」など、多くの旅行サイトで「花間堂」は紹介されおり(甲24)、今日において、「花間堂」は日本の多くの旅行サイトで確認できる。 そもそも被請求人代理人が検索した旅行サイトで「花間堂」が検索されなかったからといって、本件商標の登録出願当時、本件商標が中国及び日本で周知でなかったとは必ずしも推定されず、被請求人代理人の主張には論理の飛躍があり、失当である。 商標法第4条第1項第19号の「需要者の間に広く認識されている商標」とは、必ずしも「著名」であることを要せず(東京高判平成14年8月22日判決(同14年(行ケ)第97号)、かつ、商標審査基準上、商標法第4条第1項第10号及び同第19号の「需要者の間に広く認識されている商標」は、「最終消費者まで広く認識されている商標のみならず、取引者の間に広く認識されている商標を含む」とされている。そうすると、上述したとおり、本件商標の登録出願前から「花間堂」は中国で様々な賞を受賞し、日本及び中国の多くのメディアでも取り上げられ、今日でも国内大手旅行業者のエイチ・アイ・エスのホームページや国内大手の旅行比較サイトなどで紹介されていること等を考えれば、遅くとも本件商標の登録出願時において、「花間堂」は商標法第4条第1項第10号及び同第19号の「需要者の間に広く認識されている商標」に該当していたものと考えられる。 キ 小括 上述したとおり、被請求人の主張は失当であり、本件商標の登録出願時において、請求人の「花間堂」は中国及び日本において周知であって、かつ、被請求人による本件商標の出願登録行為には不正の日的が推認される。 加えて、被請求人により、本件商標がその指定役務に使用された場合、請求人等の業務との混同が生じることも明らかである。 よって、請求人は、請求の趣旨のとおりの審決を求める。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第22号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 答弁の理由 (1)請求人について 請求人が2012年5月9日に設立された中国法人であること、及び、現在ホテルチェーン「花間堂」を運営していることは知らない。中国において、引用商標の商標権者は「上海布洛斯酒店管理有限公司」であり(甲4の1)、日本において、引用商標を出願しているのは「中国住宿控股(香港)有限公司」である(甲6の1)。 請求人は、「上海布洛斯酒店管理有限公司」は請求人の完全子会社で、「中国住宿控股(香港)有限公司」は請求人の関連会社であると主張するが、中国における引用商標の出願は2011年1月4日であり(甲4の1)、請求人自身が設立されたのは2012年5月9日である(甲2)。また、関連会社の意味も不明である。 請求人は、中国において引用商標権者でもなく、日本において引用商標を出願しているわけではないから、商標法第46条第2項に定める利害関係人には当たらず、本件審判請求をする適格を有さない。 よって、請求人は請求人適格を有さないから、本件請求の却下を求める。 (2)「花間堂」の周知性について ア 請求人は、遅くとも本件商標の登録出願時である2017年6月26日には、中国においては、引用商標は、需要者の間で請求人の役務を示す商標として広く認識されていたと主張するが、否認する。 イ 請求人はいくつかの証拠を提出しているが、そのうち2017年6月26日より前の証拠を、証拠説明書も踏まえて抽出し、中国国内外に分けて年代順に並べると以下のようになる。 (ア)中国国内 a 甲第16号証の2:2016年7月8日 周荘食記 「花間堂」桔梗レストランと・・・ b 甲第16号証の3:2016年8月25日 杭州西渓「花間堂」民宿 c 甲第10号証:2016年11月5日 「杭州酉渓花間堂」花間堂は、「麗江古城」の古民家を改築したホテルであって、・・・ d 甲第16号証の1:2017年4月9日 「花間堂」の創始者の張ハイ(「ハイ」は、くさかんむりに「倍」の文字からなる。)は・・・民宿ビジネスの一線から突然退いた。 e 甲第14号証:2017年4月25日~5月8日 「花間堂」7周年、人文休日生活の美を上海に初リリース他 「花間堂」モデルルーム展覧の生中継、オンライン閲覧人数18万他 (イ)中国国外 a 甲第8号証:2012年4月(日本) 「ブラッサム ヒル ブティック イン」(麗江花間堂高級私人客棧棧植夢院)このホテルは麗江に5件くらいあるようです。 b 甲第13号証の1:2012年10月31日(台湾) 中国大陸で有名な高級チェーンホテル「花間堂」 c 甲第17号証の1:2012年5月8日(日本) 麗江の癒し場-「花間堂」この宿は麗江の古城の中にあります。 d 甲第17号証の3:2014年12月31日(日本) 雲南麗江の古民家ホテル「花間堂隠泉」 e 甲第17号証の2:2015年6月21日(日本) 杭州西渓「花間堂」 f 甲第17号証の4:2016年5月3日(日本) ろう中:「花間堂」ろう苑 g 甲第7号証:2016年9月4日(日本) 中国のデザインホテル「ブロッサムヒル」 ロウ中市の中心エリアにあるのが、「blossom hill 花間堂」です。 「花間堂」は中国のリノベーションが得意なデザインホテルのチェーンです。 麗江、周荘という古い建物が残ってそうな観光地にホテルをつくっています。 ウ 花間堂が2010年に創業されて、被請求人が本件商標を申請する2017年までの7年間で、中国国内でのインターネット記事はわずか5件しかなく(イ(ア)a~e)、2017年4月に上海に初リリースし、オンライン閲覧人数18万という実績が事実だとしても(イ(ア)e)、広大な面積と莫大な人口を抱える中国において、その程度の実績で、2017年6月26日当時、引用商標が需要者の間で請求人の役務を示す商標として広く認識されていたとは到底いえない。 エ さらに、日本においては、同じ7年間でわずか6件(イ(イ)a、c~g)の個人的な旅レポートがなされているだけで、ほとんど無名といっても過言ではない。 (3)引用商標について ア 請求人は、「花間堂」の文字は、日本においても中国においても辞書等に掲載されていない造語であって、請求人の創設者が2010年に独自に考案したものであると主張する。 イ 確かに、「花間堂」という単語は辞書には掲載されていないが、「花間」という単語は辞書に掲載されている。三省堂デジタル「大辞林」を検索すると、「花間」(かかん)とは「花が咲いているなか」と説明されている(乙1)。 また、「花間集」という中国の歌謡文学である唐末・五代の詞の代表的詞集があり(乙2)、李白の「月下独酌」という詩は「花間一壷酒」から始まり(乙3)、慕寒という歌手が「花間事」というタイトルのアルバムを出している(乙4)。 さらに、「○○堂」と「堂」の字がつく旅館・ホテル・レストランは珍しくない(乙5~乙8)。 すなわち、「花間堂」という単語自体は辞書に掲載されていないとしても、華やかで温かいプラスのイメージを有する「花間」という語と「堂」を結合させて、旅館・ホテル・レストラン等の商標として使用する発想はごくありふれたもので、請求人の創設者でなければおよそ思いつかないほどの新規性、珍奇性を有しているものではない。 ウ 2017年には、スキンケア商品ではあるが、「花間堂」のブランドの商品が発売されており(乙9の1、乙9の2)、このことも「花間堂」という単語がありふれた造語であることを表している。 (4)被請求人について ア 被請求人は、1968年8月、中国遼寧省遼陽市に生まれ育ち、1992年10月日本語を勉強するために福岡市に移り住んだ。1994年4月福井大学に入学し、以後現在に至るまで福井市に居住しており、遼陽市の実家には短期間帰省することはある。その後、旅行関係の仕事を目指すようになり、2016年3月には、旅程管理業務を行う主任(国内)の資格を取得した(乙10の1、乙10の2)。 イ 本件商標を登録出願した2017年6月26日当時、京都市東山区で民宿を経営しようと考え、当時の京都市における旅館業の手続きを調査し(乙11)、東山地区の物件を探し回った(乙12)。 そして、商標は、福井市内には「花堂」(ハナンドウ)という地区があり、京都市東山区には「三十三間堂」という観光名所があることと、「花が咲いているなか」という意味の「花間」も踏まえて、「福井から創立し、お釈迦様に守られている、花に囲まれる宿舎」という意味で、両者を合体させて「花間堂」とした。 この時点では、被請求人は、中国において「花間堂」というホテルチェーンがあることすら知らなかった。被請求人は、2010年には日本に移り住んでおり、2010年以降「花間堂」ホテル所在地に旅行したことすらない。 ウ 被請求人の民宿事業は、2018年6月に施行された、営業日数の上限を180日とする民泊新法によって軌道修正を余儀なくされ、2019年には「花間堂先端医学検測中心」と銘打って、中国の富裕層をターゲットに、日本の医療検診サービスと日本観光をミックスしたツアーを主催している(乙13)。 なお、「花間堂」の呼称は、音読みの「カカンドウ」と訓読みの「ハナマドウ」を想定していたが(甲1)、今は両者をミックスして「ハナカンドウ」と呼んでいる。 エ 被請求人は、「花間堂」の商標で民泊をオープンする予定であるが、新型コロナウイルスの影響によりオープン時期が遅れる可能性がある。 (5)無効理由の根拠法条への該当性について ア 商標法第4条第1項19号 本件商標の登録出願時、引用商標は、日本においても中国においてすら周知商標とはいえず、被請求人は、中国において「花間堂」というホテルチェーンがあることすら知らなかった。 よって、本号には該当しない。 イ 商標法第4条第1項10号 本件商標の登録出願時、引用商標は、日本においても中国においてすら周知商標とはいえない。 よって、本号には該当しない。 ウ 商標法第4条第1項15号 本件商標の登録出願時、引用商標は、日本においても中国においてすら周知商標とはいえない。 しかも、「花間堂」という造語方法はありふれており、「花間堂」という言葉に接した日本の需要者が請求人の業務と混同することはあり得ない。 よって、本号には該当しない。 エ 商標法第4条第1項7号 本件商標の登録出願時、被請求人は、中国において「花間堂」というホテルチェーンがあることすら知らなかったから、登録出願の経緯に公序良俗に反するところはない。 よって、本号には該当しない。 (6)結語 以上、請求人には本件請求を求める資格がなく、また、本件請求には理由がないから、本件請求は却下又は棄却されるべきである。 第5 当審の判断 1 請求人適格について 本件審判の請求に関し、当事者間において、利害関係の有無につき争いがあることから、まず、この点について判断する。 請求人の主張及び提出に係る証拠(甲18)を総合すれば、本件審判における引用商標に係る中国商標登録第9019818号商標の商標権者であるS社、我が国における商願2019-152482号商標の出願人であるH社及び請求人との間には、親子会社等の関連性がうかがえるものであり、また、商願2019-152482号商標の審査過程において、本件商標を引用して拒絶理由通知が発せられていることからすれば、請求人は、本件商標の登録の存在によって、何らかの影響を受けることもあり得るとみられ、本件審判の請求について、何らの利害関係も有しないとはいい難い。 そうすると、請求人は、本件審判を請求することについて、利益を有するものと解するのが相当である。 したがって、本件審判の請求は、その請求を不適法なものとして却下することはできない。 2 引用商標の周知性について (1)請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。 ア 請求人は、2012年5月9日に設立された中国法人(有限公司)であって(甲2)、現在、中国でホテルチェーン「花間堂」を運営している(甲3)。 イ 請求人は、S社を介して、中国において2012年にややデザイン化された引用商標を構成中に含む別掲2のとおりの構成からなる商標(甲4)を登録出願し、登録を受けている。 また、我が国においては、H社が引用商標及びややデザイン化された引用商標を構成中に含む商標を登録出願(甲6)している。 ウ 甲第7号証によれば、麗江や周荘などといった、古い建造物が残る観光地を中心に「花間堂」という標章でホテル事業が展開されていることがうかがえるものの、これは、個人が「花間堂」に宿泊したことをブログにおいて記載しているにすぎない。 エ 中国語による旅行サイトにおいて、「花間堂」が中国の有名ホテルブランドとして紹介されていること(甲13)がうかがえるものの、当該旅行サイトの全容が不明であり、当該記事がどのように扱われているのかを把握することはできない。また、請求人が提出した甲第22号証は、中国国内でのインターネット記事の一覧と主張するものであるが、「URL」、「題名」、「記事の抄訳」及び「発表日」を記載した一覧表にすぎず、実際にどのようなインターネット記事が掲載されていたのかを把握することはできない。 オ 請求人は、2017年4月26日に7周年を迎えた「花間堂」が中国の大型展覧会に招待され、展覧期間中、ニュース16件、テレビインタビュー2件、生中継プラットフォーム2か所など、複数のマスメディアに報道されたとして甲第14号証を提出しているが、「メディア名」、「公開時間」及び「テーマ」を記載した一覧表にすぎず、実際にどのように報道されたのかを把握することはできない。さらに、本件商標の登録出願(2017年6月26日)前の日付で、「花間堂」についてのインターネット記事をいくつか確認することができる(甲10、甲13の1、甲13の5、甲16)ものの、さほど多いものではなく、その全容も明らかでない。 また、その他に、花間堂に関する記事は、日本からの中国旅行者等により、本件商標の登録出願前に、日本のウェブサイトにおいて、いくつか取り上げられていることがうかがえる(甲7、甲8、甲17、甲23の1~甲23の4)ものの、さほど多いものとはいえないし、そもそも閲覧者が多いとはいい難い個人のブログ記事等も散見される。 さらに、「花間堂」は「LINEトラベル」や「トラベルコ」等の日本の旅行予約サイト(甲24)で紹介されているものの、一般に、これらの旅行予約サイトには、多数の宿泊施設の情報が掲載されているものであり、「花間堂」に係る掲載内容をみても、当該サイトにおいて、他の宿泊施設と同様の宿泊に関する情報が掲載されているにすぎないといわざるを得ない。 カ 請求人は、「花間堂」の売上高は、2013年度が2,036万人民元(約3.2億円)、2014年度が4,848万人民元(約7.7億円)、2015年度が8,264万人民元(約13.2億円)、2016年度が9,340万人民元(約15億円)、2017度が10,221万人民元(約16.3億円)、2018年度が9,219万人民元(約14.7億円)、 2019年度が9,208万人民元(約14.7億円)と推移しており、必要に応じて、売上高に関する証拠を提出することも可能である旨主張している。 しかしながら、たとえ、これらの売上高が事実であったとしても、中国における市場シェアや同業者の売上高等が不明であることに加え、中国におけるホテル事業に係る取引実情と我が国におけるホテル事業に係る取引実情が同様であるともいい難いことからすれば、中国国内及び我が国における同業者との比較という観点から、「花間堂」の売上高の多寡について判断することはできない。 キ 請求人は、「『花間堂』は、これまでに数多くの賞を受賞しており (甲21の1~甲21の5)、2016年には江蘇省で『有名商標』の認証も獲得している(甲21の5)」旨主張しているが、これらの証拠は、表彰の記念品とおぼしき盾等の画像にすぎず、どのような選定理由に基づいて、どれ程の数の宿泊施設から選ばれたのか等の具体的な表彰理由は何ら明らかにされていない。 ク 「花間堂」は、2018年8月に中国の大手ホテルチェーン「華住」グループに、約4.63億人民元 (約74億円)で買収され(甲20の1、甲20の2)、以降、「華住」グループの主要ブランドの一つとして展開されていることがうかがえる(甲20の3)。 しかしながら、これは、本件商標の登録出願の日(平成29年(2017年)6月26日)より後のことである。 (2)上記(1)よりすれば、請求人は、本件商標の登録出願日以前から、請求人の業務に係る役務「宿泊施設の提供」に引用商標を使用していたということができる。 しかしながら、請求人提出のウェブサイト記事のうち中国語で記載されているものは、我が国に向けた情報の発信とみることはできない。また、日本語によるウェブサイト記事は、それ程多いものではなく、それらのアクセス数等も不明であることに加え、日本の旅行予約サイトにおける掲載内容も、他の多くの宿泊施設と同様の宿泊に関する情報が掲載されているにすぎないものであるから、これらによっては、我が国において、請求人に係る「花間堂」が広く知られていると認めることはできない。 さらに、7周年を迎えた花間堂が、複数のマスメディアに取り上げられたとしても、具体的にどのように報道されていたのかは不明であり、その報道時期も2017年4月下旬頃の一時期にすぎないものである。 また、請求人の主張する花間堂の売上高が事実であったとしても、中国における市場シェアや同業者の売上高等が不明であることに加え、中国におけるホテル事業に係る取引実情と我が国におけるホテル事業に係る取引実情が同様であるともいい難いことからすれば、中国国内及び我が国における同業者との比較という観点から、「花間堂」の売上高の多寡について判断することはできないし、「花間堂」の受賞に関する証拠は、表彰の記念品とおぼしき盾等の画像にすぎず、具体的な表彰理由は何ら明らかにされていない。 そうすると、上述のような、請求人の主張するウェブサイト記事、花間堂の売上高や受賞歴等によっては、中国及び我が国において、請求人に係る「花間堂」が広く知られていると認めることはできない。 加えて、請求人は、「花間堂」は、2018年8月に中国の大手ホテルチェーン「華住」グループに、高額で買収され(甲20の1、甲20の2)、以降、「華住」グループの主要ブランドの一つとして展開されているとして、「『花間堂』は、遅くとも2016年までには、中国及び日本において、中国の大手ホテルチェーン『華住』グループに属する中国国内有数の人気ブティックホテルとして認知されており、著名となっていたと考えられる。」と主張しているが、「華住」グループによる買収は、本件商標の登録出願日以降のことであるから、本件商標の登録出願日前の「花間堂」の周知性を裏付けるものということはできない。 その他、請求人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、中国及び我が国の需要者の間で、請求人の業務に係る役務を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。 したがって、請求人提出の甲各号証によっては、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務であることを表示するものとして、外国及び我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 3 商標法第4条第1項第10号該当性について 本号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」と規定している。 引用商標は、上記2(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、外国及び我が国における需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。 してみれば、本件商標は、引用商標と類似し、かつ、請求に係る指定役務と引用商標の使用役務が同一又は類似するものであるとしても、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知性について 引用商標は、上記2(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、外国及び我が国における需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。 イ 本件商標と引用商標との類似性の程度について 本件商標は、「花間堂」の文字を標準文字で表してなるものであり、引用商標は、「花間堂」の文字よりなるものである(中国語簡体字表記を含む。)ところ、その構成文字が同じであることから、類似性の程度は高いものである。 ウ 本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務の関連性、需要者の共通性について 本件商標の指定役務には、請求人が引用商標の周知性を主張する「宿泊施設の提供,飲食物の提供」が含まれており、また、本件商標の指定役務中「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,動物の宿泊施設の提供」と「宿泊施設の提供」とは、その需要者を共通する場合があり、役務の関連性はあるものといえる。 エ 引用商標の独創性について 引用商標は、「花の間。花の中。花の咲きほこるところ。」の意味を有する「花間」の語(広辞苑第7版)に、「商店の屋号または人の雅号などに添えていう語。」の意味を有する「堂」の文字(広辞苑第7版)を結合させたものであり、「○○堂」のように「堂」の字がつく旅館・ホテル・レストランも存在する(乙5~乙8)ことからすれば、その独創性は、さほど高いものとはいえない。 オ 小括 上記アないしエのとおり、本件商標と引用商標の類似性の程度が高く、本件商標の指定役務は、請求人の業務に係る役務の一部と関連性を有し、その需要者の範囲を共通にする場合があるとしても、引用商標の独創性は、さほど高いとはいえないものであることに加え、何より引用商標は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたとはいえないものである。 そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第19号該当性について 本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定している。 引用商標は、上記2(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、外国及び我が国における需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。 また、請求人が提出した証拠からは、本件商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。 してみれば、本件商標と引用商標が類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第7号該当性について 請求人は、「本件商標は、造語である引用商標と同一であり、また、引用商標が中国及び我が国の需要者の間で請求人の商標として認知されている状況において、被請求人が本件商標の登録出願を行っている。そして、被請求人は本件商標の登録出願時において、引用商標の存在を当然知っていたと推認され、加えて、被請求人には、請求人に対して本件商標を買い取らせたり、請求人の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制するなどの不正の目的が推認され、本件商標は、不正な目的をもって剽窃的に出願されたものと認められるから、公序良俗に反することは明らかであり、商標法第4条第1項第7号に該当する」旨主張する。 しかしながら、上記2(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、外国及び我が国における需要者の間に広く認識されているものとは認められないものであるから、本件商標をその指定役務について使用をすることが、引用商標の周知性による信用及び顧客吸引力に便乗するものであるということはできない。 また、請求人の提出に係る証拠からは、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的を持って剽窃的に本件商標を登録出願し、登録を受けたというような、本件商標の出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く事実は見いだせない。 その他、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないし、本件商標をその指定役務について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されている等の事情も見いだせないことから、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 7 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第7号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-890040

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