商標無効審判
2020-890028
プラウドライフ、プラウド、ライフ
- 審判番号
- 2020-890028
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2017-061924
- 登録番号
- 6080991
- 請求日
- 2020年03月18日
- 審決日
- 2020年12月23日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】野村不動産 株式会社
- 【請求人代理人】一色国際特許業務法人
- 【被請求人】プラウドライフ 株式会社
- 【被請求人代理人】弁護士法人GVA法律事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 正樹
- 審判官 冨澤 美加
- 審判官 鈴木 雅也
- 分類
- T112 .261-Z (W36) / T112 .262-Z (W36) / T112 .263-Z (W36) / T112 .271-Z (W36)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6080991号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6080991号の指定役務中,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」についての登録を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6080991号商標(以下「本件商標」という。)は,「プラウドライフ」の片仮名を標準文字で表してなり,平成29年5月2日に登録出願,「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を含む第36類,第35類,第41類及び第43類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として,同30年8月22日に登録査定,同年9月14日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が,本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は,以下の2件の登録商標(これら2件の登録商標をまとめていうときは,以下「引用商標」という。)であり,いずれも,現在有効に存続しているものである。
1 登録第4682402号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲1のとおり,「プラウド」の片仮名及び「PROUD」の欧文字を上下二段に横書きしてなり,平成14年10月30日に登録出願,第16類「印刷物」及び第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定商品及び指定役務として,同15年6月13日に設定登録され,その後,同25年2月26日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
2 登録第5065990号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおりの構成よりなり,平成18年11月17日に登録出願,「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を含む第36類,第16類及び第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同19年7月27日に設定登録されたものであり,その後,同29年7月11日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
第3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第37号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由の要点
本件商標は,引用商標に類似する商標であって,その登録に係る指定役務中,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」と同一又は類似する役務について使用をするものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
また,本件商標は,その指定役務に係る業界において,請求人が長年にわたって大々的に使用し,需要者・取引者の間で周知・著名となっている商標「PROUD(プラウド)」に類似し,請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。
したがって,本件商標の指定役務中,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」(以下「無効請求役務」という。)についての登録は,同法第46条第1項第1号により,無効とされるべきである。
2 本件商標を無効とすべき理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標の概要
本件商標は,「プラウドライフ」の片仮名よりなり,その指定役務に第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を含むものである。
一方,引用商標1は,別掲1のとおりの構成態様からなり,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定役務に含むものである。
また,引用商標2は,別掲2のとおりの構成態様からなり,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定役務に含むものである。
イ 本件商標と引用商標の指定役務の類似性
本件商標及び引用商標とも第36類のいわゆる不動産業に係る役務をカバーする商標であり,本件商標と引用商標は,指定役務において同一又は類似するものである。
ウ 本件商標と引用商標の対比
本件商標を観察すると,その構成全体「プラウドライフ」なる成語がないため,知られた既成語である「プラウド」と「ライフ」の2語を結合した構成と容易に把握される。
「ライフ」については,「命,生命,生活,暮らし,人生」といった意味で我が国でも日常的に使われている言葉であって,商標的な特徴が強い言葉とはいえない。
他方,「PROUD(プラウド)」の語については,「誇りに思う,自慢にする,尊大な」といった意味のある言葉であるが(甲7),不特定多数に一般的な意味で使用されているといった事情にはない。それ故,本件商標中「プラウド」は,「ライフ」と比較して商標としての特徴は強いと見るべきであり,双方の識別性について,両語の間には大きな差異があるといえ,不動産役務との関係で広く用いられている一般語「ライフ」に比べて,周知・著名商標である「プラウド」の識別力は圧倒的であるから,本件商標において「プラウド」の部分こそ識別標識として強く支配的といえる。
したがって,本件商標は,「プラウド」の部分のみでの比較が免れないものである。
エ まとめ
以上のように,本件商標は,「プラウド」の部分が商標の要部となって取引に資されるものであり,当該要部と称呼,外観及び観念を共通にする引用商標に類似であり,かつ,引用商標の指定役務に同一又は類似の役務について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人商標「PROUD(プラウド)」の著名性について
(ア)総論
請求人は,マンション・戸建分譲やビル賃貸などの不動産事業等を営む企業であって,半世紀以上もの長期間にわたって大々的に事業を展開してきた業界大手である。
そして,「PROUD(プラウド)」は,請求人による住宅事業の中核ブランドであり,2002年12月のブランドリリース以来,今日に至るまで首都圏・関西・名古屋・仙台といった大都市圏において大規模に事業展開しており,その結果,「PROUD」ブランドは,請求人の建築物件を表示する商標として,不動産業界はもちろんのこと,一般需要者の間でもあまねく知られるに至っている。
(イ)請求人の「PROUD(プラウド)」に係る事業について
「PROUD」は,請求人による住宅事業の基幹ブランドであり,主に分譲マンションシリーズの物件名として用いられている。
具体的には,「プラウド中目黒」(甲11)のように,「PROUD(プラウド)」に物件の所在地を後続させた構成か,「プラウド鷺宮エアリーコート」(甲11)のように同所在地の物件が二軒目以降になる等の理由から,その後ろにさらにサブネームを付加して物件名として使用している。
請求人は,「PROUD」を高級マンション(住宅)と呼ぶにふさわしい同社最上級の物件に一貫して使用している。
なお,前述の「プラウド中目黒」や「プラウド鷺宮エアリーコート」は,標準的な中層階の物件であり,これらと同様の物件については基本的に「プラウド」を単独で使用しており,大規模物件については物件自体が一種の街をなすとの考えから「プラウドシティ」を主に使用し,また,高層階の物件には「プラウドタワー」,戸建分譲住宅には「プラウドシーズン」,さらには賃貸物件に「プラウドフラット」を使用して全体のブランドコンセプトを統一しつつ,様々な種類の物件を展開している。
「PROUD」をシリーズ化して幅広く事業展開することで,消費者への効果的な浸透を図っており,前記いずれのシリーズ名称も請求人が商標登録を確保している。
請求人の手掛ける「PROUD」ブランドの物件は,ブランド立ち上げから今日まで既に数百件を数え,住宅物件のシリーズ名称として,国内最多規模を誇っている。
2008年から本件商標の登録時までの分譲開始物件に限ってみても,首都圏442件,関西96件,名古屋(愛知)69件,仙台33件と数多く存在する(甲12)。
かかる精力的な事業展開により,請求人は,2012年には,全国のマンション供給戸数ランキングで業界首位となっているが(甲13),そのほとんどは「PROUD」を冠した物件である。
(ウ)個別物件の広告実績
モデルルームでは,「PROUD」ブランドを随所に表示して宣伝広告しているが,来場者・購入希望者に配布される個別物件のパンフレット類一式もその一例である(甲14の1~甲14の12)。このようなパンフレット類は,分譲マンションの販売に際して重要であるため,おおむね全ての物件について作成している。
また,請求人は,各「PROUD」物件の発売時期に合わせ,その物件の近隣を中心にチラシ広告を行っている。典型的な配布方法は,新聞紙の折込チラシ,及び投函であり,1物件につき数種類の折込チラシを配布することも珍しくないが,代表的なチラシを提出する(甲15の1~甲15の19)。
各チラシの配布枚数は,2008年には,首都圏の物件だけで約1億2,400万部,全国合計では約1億2,700万部もの大量のチラシを作成・配布しており,以降,全国で,2009年は約7,500万部,2010年は約6,800万部,2011年は約1億部,2012年は約1億5,400万部,2013年は約9,000万部,2014年は約7,300万部,2015年は約8,600万部,2016年は約6,300万部,2017年(9月まで)は約1,900万部にも上っている。
個別物件の広告では,不動産情報誌における雑誌広告を行っており,「株式会社リクルート」が発行し,不動産情報誌として最大の発行部数を誇る「SUUMO(スーモ)(首都圏版)」において,「PROUD」の宣伝広告を大量に行っている(甲17の1~甲17の25)。
前述のとおり,「PROUD」の物件数は非常に多く,常にいずれかの物件が分譲販売中の状況にあるため,毎号のように「PROUD」の物件情報が掲載されている。
また,請求人はインターネットを活用した広告も積極的に展開しており,「PROUD」では,分譲販売中の全ての物件について,専用のホームページを製作し一般公開している(甲19の1~甲19の27)。
そして,様々なサイトにバナー広告を貼って「PROUD」を露出すると共に(甲20),各物件のホームページに誘導することで物件情報の提供を行っている。
物件別のバナー広告の表示回数は,物件リスト「WEB広告(バナー)の表示回数」の列に示すとおりであり,現状確認できるものだけでも,全国合計で,2011年は約3億9,000万回,2012年には13億回超,2013年14億回超,2014年20億回超,2015年34億回超,2016年16億回超,12017年18億回超,2018年22億回超といった膨大な閲覧回数に上っている(甲12)。
以上のように,請求人は様々なメディアを通じて,「PROUD」物件を大々的に宣伝広告している。これら広告物には引用商標と実質的に同一の標章が顕著に表示されているから,需要者が引用商標を目にする機会は極めて多い。
(エ)「PROUD」のイメージ広告の実績
請求人は,「PROUD」ブランドのリリース以降,毎年ほぼ定期的に新春と夏の2季,東京・大阪・愛知・宮城及びその近郊で大々的にテレビCMを行っており,請求人の「PROUD」ブランドは,テレビという強力な情報伝達媒体を介して大々的に宣伝されている。
CMの内容は,放映時期によって異なるものの,請求人商標「PROUD」が大きく表示されるとともに,印象的な「プラウド」の音声が用いられているといった点では一貫している(甲21)。
してみれば,請求人商標の露出が莫大であることは想像に難くない。
「PROUD」ブランドのイメージ広告は,新聞紙上でも大々的に行われており,請求人は,これまで日本経済新聞,朝日新聞をはじめとする全国紙及び有力紙に多数広告を出稿しているが(甲25),特に日本経済新聞には,2008年ないし2017年の毎年少なくとも新春の時期に,全面広告(15段サイズ)を掲載している。
2008年以降の日本経済新聞における新聞広告の実施概要(甲26)と,代表的な広告例(甲27の1~甲27の7)及び広告原稿写しを提出する(甲28の1~甲28の10)が,広告例(甲27の1~甲27の7)から分かるように,請求人の広告が紙面全体,あるいは見開きの全体を占めており,かつ,「PROUD」が紙面の目立つ箇所に顕著に表示されていることから,「PROUD」ブランドが読者の記憶に鮮明に残ることは確実である。
数百万部の発行部数を誇る日本経済新聞等の全国紙に,「PROUD」の全面広告がカラーで,かつ,全国通しで出稿されており,毎年数億円もの広告費用を費やしているが,これによる一般需要者に対する請求人商標「PROUD」の露出と影響は絶大なものといわなければならない。
請求人は,さらに,前記リクルート社が発行する有力な住宅情報誌「SUUMO新築マンション」などに「PROUD」のイメージ広告や特集記事を掲載している(甲29の1~甲29の21)。リクルート社の各種雑誌に掲載した各年の広告回数は,2008年については毎月欠かさず計56回,2009年は計20回,2010年8回,2011年8回,2012年11回,2013年9回,2014年6回,2015年6回,2016年7回といった具合であり,2010年以降は減少傾向にあるが,これはインターネット広告に重点をシフトしているためである。
また,需要者におけるインターネット利用とその影響力の拡大に伴い,昨今,請求人は,インターネット広告を重視している。
「PROUD」に関する年次別の広告宣伝費実績(甲31)を見ると,全体では毎年80億円から100億円超もの莫大な巨費を投下して,積極的に「PROUD」の宣伝広告を実施しているが,それに占めるインターネット広告費の割合は年々増加しており,現在では30億円から40億円超となっている。
その他,「PROUD」の公式ウェブサイトを開設して,ブランドの浸透を図っているほか,住宅情報サイト「SUUMO」の公式サイトや,「Yahoo!JAPAN」のような知られたポータルサイトに,物件別若しくは「PROUD」ブランドのバナー広告を貼ることで,不動産の需要者にとどまらず一般需要者にとっても,同ブランドを目にする機会は極めて多い。
さらに,請求人の「PROUD」物件はデザインにおいても高く評価されており,毎年のようにグッドデザイン賞を受賞している(甲33)。
グッドデザイン賞受賞により,世間の注目はより一層「PROUD」物件に集まったといえるから,その受賞歴は「PROUD」ブランドの浸透や名声の高揚に多大な貢献をしている。
(オ)請求人の「PROUD」に対する一般認識
上述したような請求人の積極的な広告戦略と企業努力により,「PROUD」ブランドは請求人の住宅事業の中核ブランドとしての地位を確立すると共に,その名声は同業大手の主力マンションブランドを凌駕するほどに,日本全国にあまねく知れわたっており,需要者・取引者の間で請求人の「PROUD」が周知・著名であることに疑いの余地はない。
2009年に日本経済新聞社が実施したマンションブランドに関するアンケートにおいて,請求人の「PROUD」の認知度は,「ライオンズマンション」に続く第2位を獲得しており,回答者の69.3%が「PROUD」を知っていると回答している(甲34の1)。
また,同アンケートでは,「PROUD」のブランドイメージについて,「安心感がある」「高級感がある」「一流である」「信頼性がある」「洗練されている」「センスがよい」「個性がある」といった項目で第1位を獲得しており,「PROUD」に対する信用の蓄積がうかがえる。
このアンケートは毎年継続して実施されており,2010年以降の「PROUD」の認知度(甲34の2~甲34の10)からも,継続的に8割前後の需要者が「PROUD」を知っていると回答しており,マンションブランドとして「PROUD」が周知・著名であることは明らかである。
また,新聞・雑誌において,請求人の「PROUD」が記事になった事例(甲35の1~甲35の509)を見ても,請求人の「PROUD」が需要者・取引者の間で高い信用と人気のほどが容易にうかがい知れる。
このことからも首肯されるように,「PROUD」ブランドヘの信用と人気は非常に高く,需要者・取引者一般において,「PROUD」が既に広く知られていたことは明らかであり,その名声は今なお高まり続けている。
(カ)周知・著名性に関するまとめ
以上のような長年にわたる請求人による事業活動や広告戦略により,本件商標の登録日前の段階において,「PROUD(プラウド)」が請求人の不動産事業に係る商標として,周知・著名であったことに疑いの余地はない。
イ 混同のおそれについて
請求人の商標「PROUD(プラウド)」が不動産分野において周知著名であることや,「プラウドシーズン」「プラウドタワー」「プラウドシティ」「プラウドクラブ」などを含む「PROUD」ブランドがシリーズ化して大々的に事業展開されていることは,さきに述べたとおりである。
そして,本件商標は,「プラウド」と「ライフ」を結合した構成である。「ライフ」の語には「生活,暮らし」といった意味があり,まさに暮らしの場を提供する不動産業務との関係では,その住居における生活・暮らしとの意味が看取され,取引において用いられることが少なくないところ,不動産業において周知著名となっている「プラウド」と結合した場合には,「請求人『プラウド』での生活・暮らし」との意味合いが容易に看取される。
実際,請求人はイベントで設営した「プラウド」での暮らしを体感できる場所を「プラウドライフスタイルゾーン」と名付けて用いており(甲35の165),前記した数々の請求人「PROUD」シリーズ,若しくは関連する派生ブランドの一つのように把握されている。
それ故,「プラウドライフ」が不動産業務について使用された場合には,あたかも請求人「PROUD」に関係する業務であるかの如く誤認混同するであろうことは想像に難くない。
したがって,業界における請求人商標の高い周知著名性にかんがみると,本件商標の使用が,請求人の業務との関係で出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかであり,請求人の長年にわたる真摯な事業活動とブランドマネジメントにより築いてきた「PROUD(プラウド)」の信用や顧客吸引力を毀損又は希釈化させるおそれもあるといわざるを得ない。
ウ まとめ
以上のことからすれば,本件商標に接する需要者・取引者は,その指定役務である不動産業界で周知著名な請求人の「PROUD(プラウド)」を捉えて,請求人の業務に係る商品・役務であるかのように誤認し,あるいは,請求人と経済的ないし組織的に何らかの関係を有する者の提供する商品・役務であるかのように誤認して,出所の混同を生ぜしめるおそれがある。
したがって,本件商標が無効請求役務について使用された場合には,請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 結語
以上のように,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し,商標登録を受けることができないものであるから,その登録は同法第46条第1項第1号により,無効とされるべきである。
第4 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証及び乙第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)引用商標1との類否について
ア 外観
本件商標は,片仮名表記にて「プラウドライフ」と記載され,7文字から構成されている。引用商標1は,「プラウド」及び「PROUD」と記載され,それぞれ4文字及び5文字から構成されている。
本件商標と引用商標1とを片仮名表記で比較した場合,その文字数が大きく異なり,取引者,需要者において両商標を誤認混同するおそれはない。また,本件商標は,「ライフ」という引用商標1には全く登場しない文字を含んでおり,この点からも取引者,需要者が両商標を誤認混同するおそれはない。
両商標をアルファベット表記で比較した場合には,なおさら外観の類似性は乏しい。
以上から,両商標は,外観の点において,出所につき誤認混同のおそれが生ずるものとして類似であるということはできない。
イ 観念
引用商標1の「PROUD(プラウド)」は,英語で「誇りに思う,自慢にする,満足に思う」等という意味を有する形容詞である(甲7)。これに対して,本件商標「プラウドライフ」の「ライフ」は,英語で「命,生命,生活,暮らし」等の意味を有する。
引用商標1は,単に「誇りに思う」等といった意味を有する形容詞であり,修飾する語句が存在しないため,取引者,需要者からしても,当該形容詞としての意味以上の観念を連想することはない。これに対して,本件商標は,「プラウドライフ」というように,「プラウド」という形容詞と,「プラウド」という形容詞が修飾する「ライフ」という被修飾語が存在しており,「誇りある生活」,「誇りある暮らし」,「誇りある命」等というように,取引者,需要者により想起されるイメージは具体的・特定的であり,単なる「プラウド」と比べて異なる概念を指し示すものである。
以上のように,両商標から取引者,需要者が想起するイメージは大きくかけ離れており,観念の点においても,両商標は,出所につき誤認混同のおそれが生ずるものとして類似であるということはできない。
ウ 称呼
称呼については,本件商標は「プラウドライフ」であるのに対し,引用商標1は「プラウド」である。本件商標は,「ライフ」という「プラウド」とは全く異なる単語が音素として含まれており,両商標の称呼を聞き比べた場合に,取引者,需要者が誤認混同するおそれはない。
また,引用商標1の音素は4つであるのに対して,本件商標は7つの音素から構成されている。両商標は3つの音素分の差があり,聞き比べた際に取引者,需要者が誤認混同するおそれはない。
以上から,称呼の点においても,両商標は,出所につき誤認混同のおそれが生ずるものとして類似であるということはできない。
エ 取引の実情等
本件審判における無効請求役務は,「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」である。これらの役務における「建物」及び「土地」については,家屋か商業施設かといった用途の違い,価格帯の違い,売買か賃貸かの違い,需要者の属性の違いなど,その種類や用途は多様かつ無制限である。
したがって,無効請求役務における「建物」及び「土地」には,あらゆる建物及び土地が含まれいその需要者にも建物又は土地を売買又は賃貸しようとする,あらゆる年代,資産状況,利用目的等を備えるあらゆる属性の者が含まれる。
これに対し,請求人が主張する引用商標1が用いられているのは「高級分譲マンション」というごく一部の「商品」にとどまり,高級分譲マンション以外の数多の「建物」及び「土地」には用いられておらず,そもそも「役務」に用いられているものでもない。
そのため,無効請求役務における取引の実情において,取引者,需要者が本件商標と引用商標1の出所につき誤認混同をするおそれがあるとはいえない。
現に,被請求人が本件商標を用いている取引の実情と,請求人が引用商標1を用いている取引の実情は,大きく異なっており,出所の誤認混同が生じるおそれはない。
被請求人は,ソニー・ライフケア株式会社のグループ会社であり(乙1),主に有料老人ホーム事業を営んでいる(乙2)。被請求人は,現在,有料老人ホームを30施設展開しており,令和2年1月の時点で国内第31位の規模にまで成長している(乙3)。本件商標も,主に有料老人ホーム事業において用いられる。
これに対し,請求人の「PROUD(プラウド)」は,分譲マンションのブランドとして使用されている。
有料老人ホームは,老人を入居させ,入浴,排せつ若しくは食事の介護,食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜の供与(以下「介護等」という。)をする事業を行う施設である。これに対し,分譲マンションは,二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるもの並びにその敷地及び附属施設である。
両者は,介護等のサービスが付されているか否か,取引の際に区分所有権の譲渡がなされるか否か等といった点で明確な違いがある。一般的なイメージとしても,終の住処となり,スタッフによる介護等や老人の仲間と共に暮らす場となる有料老人ホームと,区分所有権内において外部と遮断され,自らのプライバシーを確保した生活拠点となる分譲マンションとは大きな乖離がある。想定される取引者,需要者も,老人ホームは介護を必要とする老人であるのに対し,分譲マンションは将来の生活を考える(老人と比べて)若い層である。
以上のとおり,有料老人ホームと分譲マンションとでは,商品・役務の性質も,取引者,需要者の層も明確に異なる。
よって,請求人及び被請求人における取引の実情にかんがみても,有料老人ホームに関する役務に使用する本件商標と,分譲マンションという商品に使用する引用商標1は,出所につき誤認混同のおそれが生ずるものとして類似であるということはできない。
オ 「プラウド」の部分のみを比較すべきとの主張に対して
(ア)判例に基づく主張
請求人は,本件商標について,「プラウド」の部分が,取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものである旨を主張し,「プラウド」の部分のみでの比較をすべきであると主張するが,「プラウド」の部分が取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいえない。
a 本件商標の構成
本件商標は,「プラウドライフ」の文字を標準文字で横書きしてなるものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「プラウド」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。
したがって,本件商標の「プラウド」の部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるとはいえない。
よって,本件商標のうち「プラウド」の部分のみを抽出して,当該部分だけを引用商標1と比較して類似性を判断することは許されない。
b 「プラウド」は形容詞にすぎないこと
(a)「プラウド(PROUD)」は,「誇りに思う,自慢にする,満足に思う」等という意味を有する形容詞である(甲7)。
形容詞とは,品詞の一つで,名詞等を修飾する機能を有する。すなわち,形容詞は,名詞等を修飾するものとして,他の名詞と共に使用されることが予定されているものである。
仮に,単なる形容詞にすぎない単語が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとし,当該形容詞と当該形容詞によって修飾される単語を組み合わせた標章について,当該形容詞の部分のみの比較によって類似性を判断するとすれば,元々他の被修飾語と共に使用されることが予定されている形容詞を本来の用法によって標章として使用することが不可能となる。しかし,このような事態を是認することは,商標権者に不当に広い権利範囲を有することになることは明らかであり,産業の発展に寄与するという商標法の目的に照らしても許されない。
(b)本件商標のうち「プラウド」は形容詞であり,単独では意味が取りにくく,さらに,「プラウドライフ」は「誇りある人生」といった観念を有することは明らかであるから,「プラウド」の部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとか,「ライフ」の部分から出所識別標識としての称呼,観念を生じないなどということはできず,引用商標1との類似の判断において,「プラウドライフ」から「プラウド」の部分を抽出して,同部分と引用商標1とを比較することは相当でない。
(c)以上のとおり,本件商標のうち,単なる形容詞にすぎない「プラウド」という単語のみでは,取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるとはいえず,本件商標のうち「プラウド」の部分のみを抽出して,当該部分だけを引用商標1と比較して類似性を判断することは許されない。
c 小括
以上のとおり,本件商標のうち,「プラウド」の部分が取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいえない。
よって,本件商標のうち「プラウド」の部分のみを抽出して,当該部分だけを引用商標1と比較して類似性を判断することは許されない。
(イ)「商標審査基準」に基づく主張
a 第3の十 4.(2)(ア)
「PROUD(プラウド)」は,一般の形容詞として広く使用される言葉であり,まさに既成語である。よって,商標審査基準に照らしても,本件商標は引用商標1と類似であるとはいえない。
また,基準の該当箇所に例として掲げられているのは,「ロレアル」,「グッチ」,「JAL」,「東宝」,「SONYWALKMAN」である。これらは,それ自体ブランドとして著名で,かつ,ブランド名としての意味以外に特別な意味を持たないものばかりである。これに対し,「PROUD(プラウド)」は,「誇りある」などといった意味を有する形容詞であり,広く一般的に用いられる言葉である。すなわち,「プラウドライフ」については,その言葉自体が有する意味のとおり,「誇りある人生」等の意味が容易に想起できる。
したがって,引用商標1は,同基準にいう「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標」には該当しない。
b 第3の十 4.(1)(ア)及び(イ)
本件商標は,「プラウド」と「ライフ」との間に大小の差はなく,色彩及び書体は同一であり,共に片仮名であり,構成上の相違点は全くない。 また,「プラウドライフ」は,「プラウド」と「ライフ」の間に空白や「・」等はなく著しく離れて記載されておらず,無理なく一気に発音され長い称呼を有するものでもなく,形容詞と被修飾語の組合せで「誇りある人生」等と意味することから観念上のつながりもある。
よって,商標審査基準に照らしても,本件商標は,「プラウド」と「ライフ」の結合は強いといえ,あくまでも一体として捉えるべきである。すなわち,本件商標は「プラウド」の部分「だけ」から称呼,観念が生じ得るものとはいえず,「プラウド」の部分のみを抽出して,当該部分だけを引用商標1と比較して類似性を判断することは許されない。
c 第3の十 4.(2)(ア)
本件商標において,「ライフ」の部分は,本件商標の指定役務である不動産関係において普通に使用される文字,慣用される文字でもなく,不動産の品質,原材料,質等を表示するものでもない。
よって,結合商標の類否判断について掲げる以上の要素に照らしても,本件商標は,「プラウド」の部分のみを抽出して,当該部分だけを引用商標1と比較して類似性を判断することは許されない。
(ウ)小括
以上のとおり,本件商標のうち,「プラウド」の部分が取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいえない。
よって,本件商標のうち「プラウド」の部分のみを抽出して,当該部分だけを引用商標1と比較して類似性を判断することは許されない。
カ 結論
よって,本件商標と引用商標1は,類似する商標であるとはいえない。
(2)引用商標2について
引用商標2は,アルファベット表記の「PROUD」という文字を主体としたロゴであって,その外観は本件商標と全く異なる。その他,観念,称呼や取引の実情等を総合しても,本件商標と引用商標2が出所につき誤認混同のおそれは生じない。
よって,本件商標と引用商標2が類似する商標であるとはいえない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と「プラウド(PROUD)」という表示の類似性の程度
本件商標と「プラウド(PROUD)」という表示は類似しない。
(2)「プラウド(PROUD)」の表示の周知著名性及び独創性の程度
ア 仮に「プラウド(PROUD)」の表示が周知著名であったとしても,高級分譲マンションという限られた「商品」においてのみ周知著名なのであって,不動産の売買等の「役務」において周知著名であるわけではない。
したがって,取引者及び需要者は,本件商標から,第36類の各指定役務の出所が請求人であると混同することは考えにくい。
イ また,仮に「プラウド(PROUD)」の表示が周知著名であったとしても,「プラウド(PROUD)」は単なる形容詞にすぎず,独創性は全く認められない。
このような独創性のない単なる形容詞にすぎない表示について,形容詞と被修飾語を組み合わせた商標についてまで権利を及ぼすべきでない。
特に,商標登録を要件としない商標法第4条第1項第15号の適用には慎重であるべきであって,被修飾語と共に使用されることが想定される形容詞にすぎない全く独創性のない表示については,仮に周知著名であったとしても,被修飾語と組み合わせた表示にまで効力を及ぼすべきではない。
ウ 現に,単なる形容詞にすぎないものの周知・著名となっているブランドの表示に関する事例で,当該形容詞に被修飾語を付した標章が,当該ブランドと同一又は類似の指定商品又は指定役務について商標登録されている例が,多数存在する(乙5)。
仮に,これらの登録商標が全て商標法第4条第1項第15号に該当するとして,同法第46条第1項第1号により無効となるとすれば,商標実務は混乱し,崩壊することは免れない。単なる形容詞にすぎない表示についてその効力を過度に認めるべきではないことは,これらの実例に照らしても明らかである。
(3)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度
請求人は,「PROUD(プラウド)」という表示を分譲マンションに使用している。他方,無効請求役務は,「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地,の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」であり,いずれも「建物」又は「土地」に関する役務である。
分譲マンションに係る業務は,確かに「建物」を取扱う側面もあるが,分譲マンションは「建物」のごく一部の形態にすぎない。
したがって,分譲マンションに係る業務について使用される「PROUD(プラウド)」という表示が,有料老人ホーム事業を含めた他の「建物」に関する事業についてまで当然に関連性を有するとはいえない。
また,「PROUD(プラウド)」は,分譲マンションという「商品」についての表示であり,本件商標の指定役務である不動産の売買等の「役務」についての表示ではない。この点からも,「PROUD(プラウド)」という表示が,本件商標の指定役務である「建物の貸与」等との関連性を有するとはいえない。
(4)商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
本件商標は,主に有料老人ホーム事業に使用され,「PROUD(プラウド)」という表示は分譲マンションの販売に係る業務に使用されている。
両者の取引者,需要者は共通せず,取引の実情も異なる。すなわち,両者は,介護等のサービスが付されているか否か,取引の際に区分所有権の譲渡がなされるか否か等といった点で明確な違いがあるほか,一般的なイメージとしても,終の住処となり,スタッフによる介護等や老人の仲間と共に暮らす場となる有料老人ホームと,区分所有権内において外部と遮断され,自らのプライバシーを確保した生活拠点となる分譲マンションとは大きな乖離がある。また,想定される取引者,需要者も,有料老人ホームは介護を必要とする老人であるのに対し,分譲マンションは将来の生活を考える(老人と比べて)若い層である。
実際に,被請求人が経営する有料老人ホームは,分譲マンションとは明らかに異なる設備及びサービスを数多く備えており(乙6の1,乙6の2),このような設備及びサービスだけを見ても,有料老人ホームと分譲マンションには明らかな違いがある。
また,被請求人は,平成29年8月1日に商号を「プラウドライフ株式会社」に変更してから約3年間有料老人ホーム事業を展開しているが,有料老人ホーム事業を行うに際し,取引者,需要者から,請求人の事業と関わりがあるのかといった疑問を呈されたことは一度もない。これは,本件商標が,請求人の,「PROUD(プラウド)」に係る業務と誤認するおそれがあるものではないことの証左である。
さらに,建物及び土地に関する取引は,金額や生活に与える影響が大きいため,取引者及び需要者はその出所や役務の質を慎重な注意力をもって確認吟味するという実情がある。そのような取引の実情において,取引者及び需要者が「プラウドライフ」という本件商標を請求人の「PROUD(プラウド)」という表示と混同して取引に入ることはおよそ考えられない。
(5)小括
以上のとおり,本件商標は,請求人の「PROUD(プラウド)」に係る業務と誤認のおそれが生じるとはいえない。
3 結語
よって,本件商標と引用商標は類似せず,本件商標は,請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれはないから,請求人の請求は成り立たない。
第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき,利害関係について争いがないから,本案について判断する。
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
ア 請求人の提出した証拠及びその主張によれば,以下のとおりである。
(ア)請求人は,マンション・戸建分譲やビル賃貸などの不動産事業を営む企業であって,半世紀以上もの長期間にわたって事業を展開してきた。
(イ)「PROUD(プラウド)」は,請求人による住宅事業の中核ブランドであり,2002年12月のブランドリリース以来,今日に至るまで首都圏・関西・名古屋・仙台といった大都市圏において大規模に事業展開している。
(ウ)「PROUD」,「プラウド」は,主に分譲マンションシリーズの物件名として用いられている(甲11)。基本的に,分譲マンションには「PROUD(プラウド)」を単独で用いているが,大規模物件については「プラウドシティ」,高層階の物件には「プラウドタワー」,戸建分譲住宅には「プラウドシーズン」,賃貸物件に「プラウドフラット」のように,「プラウド」を冠した名称を使用し,様々な種類の物件を展開している。
(エ)請求人の手掛ける「PROUD」,「プラウド」ブランドの物件は,ブランド立ち上げから今日まで既に数百件を数え,住宅物件のシリーズ名称として,国内最多規模であり,2008年から本件商標の登録時までの分譲物件に限ってみても,首都圏,関西,名古屋(愛知),仙台といった地域に数多く存在することがうかがえる(甲12)。2012年には,全国のマンション供給戸数ランキングで業界首位となっており(甲13),そのほとんどは「PROUD」を冠した物件である。
(オ)分譲マンションの販売に際して,モデルルームでは「PROUD」ブランドを表示して宣伝広告をしており,個別物件のパンフレット類には引用商標2が表示されている(甲14)。
(カ)請求人は,各「PROUD」物件の発売時期に合わせ,その物件の近隣を中心にチラシ広告を行っているとし,新聞の折込チラシの写しにも引用商標2が表示されている(甲15)。
各チラシの配布枚数は,2008年には,首都圏の物件だけで約1億2,400万部,全国合計では約1億2,700万部のチラシを作成・配布しており,以降,全国で,2009年は約7,500万部,2010年は約6,800万部,2011年は約1億部,2012年は約1億5,400万部,2013年は約9,000万部,2014年は約7,300万部,2015年は約8,600万部,2016年は約6,300万部,2017年(9月まで)は約1,900万部である(甲12,甲16)。
(キ)個別物件の広告については,「株式会社リクルート」が発行する不動産情報誌「SUUMO(スーモ)(首都圏版)」において,「PROUD(プラウド)」の宣伝広告を行う(甲17)と共に,不動産情報検索サイト「SUUMO」(関東版)においても「PROUD(プラウド)」の宣伝広告を行っている(甲18)。
(ク)請求人はインターネットを活用した広告も展開しており,分譲販売中の「PROUD(プラウド)」物件について,専用のホームページを製作し一般公開しており(甲19),また,様々なサイトにバナー広告を貼って誘導することで物件情報の提供を行っている(甲20)。そして,それらの広告には,引用商標2が表示されている。
(ケ)請求人は,「PROUD」ブランドのリリース以降,東京・大阪・愛知・宮城及びその近郊でテレビCMを行っており(甲21,甲22),また,日本経済新聞,朝日新聞をはじめとする全国紙及び有力紙に多数広告を出稿している(甲25~甲28)。
(コ)請求人は,住宅情報誌などに「PROUD(プラウド)」のイメージ広告や特集記事を掲載しており(甲29),リクルート社の各種雑誌に掲載した広告回数は,2008年56回,2009年20回,2010年8回,2011年8回,2012年11回,2013年9回,2014年6回,2015年6回,2016年7回である(甲30)。
(サ)「PROUD(プラウド)」に関する2008年度ないし2017年度の年別の広告宣伝費の実績は,全体では毎年80億円から100億円超である(甲31)。
(シ)請求人の「PROUD(プラウド)」物件は,2004年ないし2018年の間,毎年のようにグッドデザイン賞を受賞している(甲33)。
(ス)2009年に日本経済新聞社が実施したマンションブランドに関するアンケートにおいて,請求人の「PROUD(プラウド)」の認知度は,「ライオンズマンション」に続く第2位を獲得しており,回答者の69.3%が「PROUD(プラウド)」を知っていると回答している(甲34の1)。当該アンケートは毎年継続して実施されており,2010年ないし2018年の認知度も第2位を獲得し,おおむね7割から8割程の需要者が「PROUD(プラウド)」を知っていると回答している(甲34の2~甲34の10)。
(セ)新聞・雑誌においても,請求人の「PROUD(プラウド)」に関する記事が多く掲載されている(甲35)。
イ 判断
引用商標2について防護標章登録が認められていること(甲10),及び上記認定事実を総合勘案すれば,引用商標2は,「建物(マンション)の売買」について,請求人が使用する商標として,本件商標の登録出願前から,取引者,需要者の間において広く認識されており,それが本件商標の登録査定時においても継続しているものというのが相当である。
そして,引用商標2は,別掲2のとおりの構成よりなるところ,「PROUD」の欧文字を顕著に有するものであり,上記アに挙げたような紹介記事を併せてみれば,「PROUD」及び「プラウド」の文字も,「建物(マンション)の売買」について,請求人が使用する商標として,本件商標の登録出願前から,取引者,需要者の間に広く認識されているというのが相当である。
そうすると,引用商標は,請求人の取扱いに係る「建物(マンション)の売買」を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,取引者,需要者の間に広く認識されているものというべきである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標は,「プラウドライフ」の片仮名よりなるところ,その語頭において,請求人の取扱いに係る「建物(マンション)の売買」を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識されている「プラウド」の文字が含まれていることからすれば,本件商標と引用商標の類似性の程度は高いというべきである。
(3)本件商標に係る無効請求役務と請求人の業務に係る役務との関連性について
本件商標に係る無効請求役務中には,「建物の売買」が含まれており,当該役務は,請求人の業務に係る「建物(マンション)の売買」と同一又は類似するものである。また,「建物の売買」以外の無効請求役務である「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」と請求人の業務に係る「建物(マンション)の売買」は,いずれも主として,宅地建物取引業法の規制を受ける不動産関連業務というべきものであって,同一の事業者が提供する場合が多いものといえる。
そうすると,本件商標に係る無効請求役務と請求人の業務に係る役務とは,関連性の高い役務というのが相当である。
(4)需要者の共通性について
上記(3)のとおり,本件商標に係る無効請求役務と請求人の業務に係る役務とは,関連性の高い役務であるから,需要者の範囲を共通にすることも多いものである。
(5)出所の混同のおそれについて
「プラウド」は,上述のとおり,請求人の取扱いに係る「建物(マンション)の売買」を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,取引者,需要者の間に広く認識されているものであり,請求人は,「PROUD(プラウド)」を単独で用いているほか,大規模物件については「プラウドシティ」,高層階の物件には「プラウドタワー」のように,「プラウド」の文字を冠した名称をシリーズ化して使用している状況を併せ考慮すれば,「プラウド」の文字を冠した「プラウドライフ」の文字よりなる本件商標は,請求人の「PROUD(プラウド)」シリーズに関連する物件の名称であるかのように認識され,これに接する需要者等は,本件商標から,請求人を連想,想起するというのが相当である。
(6)小括
上記(1)ないし(5)を総合勘案して判断するに,本件商標権者が,本件商標を無効請求役務に使用した場合,これに接する需要者,取引者は,引用商標を連想又は想起し,その役務が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって,本件商標は,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」について,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,「プラウドライフ」の文字よりなるところ,その構成文字は同書,同大,等間隔で一体に表されており,これより生ずる「プラウドライフ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
そして,「プラウドライフ」の文字は辞書等に載録のある成語ではないことからすれば,本件商標は,その構成全体をもって一体不可分の造語と認識し,把握されるとみるのが自然である。
そうすると,本件商標は,その構成文字全体に相応して,「プラウドライフ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標1及び引用商標2は,前記第2に示したとおりの構成からなるところ,いずれも「PROUD」又は「プラウド」の文字を顕著に有するものであるから,当該文字に相応して「プラウド」の称呼が生じ,「誇りに思う,自慢にする」(甲7)等の観念を生ずるものであり,また,上記1(1)のとおり,引用商標は,請求人の取扱いに係る「建物(マンション)の売買」を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識されていることからすれば,「請求人の取扱いに係るマンションのブランド」の観念が生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標は,それぞれ,上記(1)及び(2)のとおりの構成よりなるところ,外観においては,「ライフ」の文字の有無という明らかな差異を有するものであるから,判然と区別し得るものである。
そして,本件商標から生ずる「プラウドライフ」の称呼と引用商標から生ずる「プラウド」の称呼とは,構成音数,構成音が明らかに異なるものであるから,明瞭に聴別できるものである。
また,引用商標は,「誇りに思う,自慢にする」,「請求人の取扱いに係るマンションのブランド」の観念を生ずるのに対し,本件商標は特定の観念を生じないものであるから,観念において,紛れるおそれはない。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
(4)小括
上記(3)のとおり,本件商標と引用商標は,非類似の商標であるから,両商標の指定役務が類似するものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 被請求人の主張について
被請求人は,「本件商標は,主に有料老人ホーム事業に使用され,『PROUD(プラウド)』は分譲マンションの販売に係る業務に使用されているから,両者の取引者,需要者は共通せず,取引の実情も異なる」旨主張している。
しかしながら,本件商標が商標法第4条第1項第11号又は同第15号に該当するか否かの判断に際しては,現在,実際に本件商標を使用している役務に限定した取引者,需要者の認識や取引の実情をもとに判断するものではなく,無効請求役務に係る取引者,需要者の認識や取引の実情をもとに判断すべきものである。
そして,本件商標に係る無効請求役務中には,「建物の売買」が含まれているところ,当該役務は,請求人の業務に係る「建物(マンション)の売買」と同一又は類似するものであり,関連性の高い役務であって,その需要者が共通するものである。
したがって,被請求人のかかる主張は採用することができない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても,結論掲記の指定役務について,同第15号に該当するものであり,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものであるから,同法第46条第1項の規定に基づき,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」についての登録を無効とすべきである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-890028