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商標無効審判

2020-890022

アクタル

審判番号
2020-890022
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2017-100997
登録番号
6043520
請求日
2020年02月26日
審決日
2024年04月18日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】クラリアント インターナショナル リミテッド
  • 【請求人代理人】村山 靖彦
  • 【請求人代理人】眞島 竜一郎
  • 【請求人代理人】恩田 俊郎
  • 【請求人代理人】石川 香菜子
  • 【被請求人】アシャプラ マインケム リミテッド
  • 【被請求人代理人】新保 斉
審判長/審判官
  • 審判長 高野 和行
  • 審判官 大森 友子
  • 審判官 板谷 玲子
分類
T111 .264-Z (W01) / T111 .255-Z (W01)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項11号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6043520号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第6043520号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6043520号商標(以下「本件商標」という。)は、「ACTAL」の文字を標準文字で表してなり、平成29年7月31日に登録出願、第1類「微粒子状活性白土」を指定商品として、同30年3月26日に登録査定、同年5月18日に設定登録されたものである。 第2 引用商標及び引用標章 1 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第5382388号商標(以下「引用商標」という。)は、「ACTAL」の文字を標準文字で表してなり、平成21年11月4日に登録出願、第1類「酸性粘土触媒,工業用化学品」を指定商品として、同23年1月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 2 請求人主張の全趣旨より、請求人が本件商標が商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する標章は「ACTAL」の欧文字からなり、請求人が活性白土商品に使用して周知であると主張するもの(以下「引用標章」という。)である。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第38号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項により、その登録は無効とされるべきである。 2 利害関係について 引用商標の権利者であるクラリアントアクチエンゲゼルシャフトは、請求人の持株会社であるから、請求人は、本審判について、利害関係を有するものである(甲3)。 3 活性白土について 活性白土とは、粘土鉱物である酸性白土およびベントナイト等を酸処理し、これら粘土鉱物が持っている吸着能および触媒能を更に高め、より効率的にこれらの性能が発現することを可能にしたものである(甲4~甲7)。 歴史的には、古くから酸性白土及びフラー土(Fuller’s eath)並びにベントナイトなどの粘土鉱物は、天然のままで活性(吸着力、接触力)をもつことから、吸着剤として工業的に利用されていた(甲6、甲9)。石油・油脂の精製のために酸性白土の需要が増大したことで、高性能な脱色剤の研究が促進された結果、活性白土が開発され、1919年にはドイツにて企業化・商品化され、今日では天然限度のまま使用することは非常に少なく、活性白土が用いられている(甲7、甲9)。 また、活性白土は、表面積を増やす必要性から、原土を酸処理したのち最後は粉砕して製造され(甲14)、製品は、粉末状または微粒子状である(甲15)。 活性白土の開発は、1908年ミュンヘンを拠点とするズードケミー社が、酸性白土などの粘土鉱物を酸処理すると、固体酸や細孔、比表面積が著しく増大し、触媒能、吸着能が向上することを発見したことによる(甲8、甲10)。そして、活性白土を開発したズードケミー社は、2011年に請求人によって買収されており、ズードケミー社の機能性鉱物事業および触媒事業も請求人に承継されている(甲12)。 4 商標法第4条第1項第11号について (1)商標の類似について 本件商標と引用商標はともに「ACTAL」の文字から構成され、「アクタル」の称呼を生じ、標準文字で登録されていることから、両商標は、外観上および称呼上共通する同一の商標である。 (2)商品の類似について ア 「微粒子状活性白土」と「工業用化学品」の類似性 活性白土は化学製品であり(甲16)、その用途は工業用である(甲5)。なお、「化学品」とは、化学工業によって製造されるものであり(甲17)、「工業」とは、自然の原料に人力や機械力を加え、商品価値のある生産物を製造する産業をいう(甲18)。 そして、活性白土は、吸着剤、脱色剤、触媒として、石油工業、醸造業、油脂工業等において使用されている(甲6、甲9、甲10、甲14、甲15、甲19~甲25) すなわち、本件商標の指定商品「微粒子状活性白土」は、引用商標の指定商品である「工業用化学品」に含まれる商品であり、両商品は類似すると考えるのが妥当である。 イ 「微粒子状活性白土」と「酸性粘土触媒」の類似性 活性白土は、酸性粘土触媒としても用いられる。活性白土を触媒に用いることは、本件商標と引用商標の指定商品を扱う業界においては周知の事実であるから(甲10、甲14、甲15、甲19、甲27、甲29)本件商標の指定商品「微粒子状活性白土」の機能、品質、原材料、用途等は、引用商標の指定商品「酸性粘土触媒」に包含される。 一方で、活性白土については、その用途を触媒のほか、吸着、脱色といった他の表現で示しているものが見受けられる。 しかしながら、活性白土は、そもそも触媒能と吸着能を有するものであり、いずれの機能も別個独立したものではなく、販売者や需要者が、一方の機能に着目したとしても、いずれの機能も同時に作用するものである(甲10)。 よって、活性白土における「触媒」、脱色、脱水、乾燥といった機能も含む「吸着剤」及び「脱色剤」といった商品の区分けは、明確に設けられるものではなく、取引市場における活性白土に関する表現は必ずしも共通するものではない(甲21、甲30、甲31)。 (3)出所誤認混同のおそれ こうした取引市場における状況下において、被請求人が、実際に「ACTAL」の商標を酸性粘土触媒に使用しており、両権利者は、共通する活性白土の商品について、同一の商品名「触媒」を表記し、同一の商標「ACTAL」を使用する事態が生じている(甲32~甲35)。 そうすると、本件商標の指定商品である「微粒子状活性白土」と引用商標の指定商品である「工業用化学品」の一部および「酸性粘土触媒」は、取引者・需要者が共通し、市場における流通経路も共通している。 よって、両商標は同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認されるおそれがあるといわざるを得ない。 (4)小括 以上から、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 5 商標法第4条第1項第10号について (1)請求人は、スイスに拠点を置くスペシャリティケミカル企業であり、活性白土グローバルマーケットで主要なメーカーとして周知である(甲36~甲38)。 また、前記3のとおり、請求人の前身であるドイツのズードケミー社は、活性白土を製品化したことで(甲8)世界的に広く知られている。1990年ごろ、ズードケミー社は英国Laport社と並んで欧州、中南米および東南アジアと世界的に戦略的に進出し、マーケットを広げていった(甲9)。その後も現在に至るまで、請求人は、活性白土のマーケットを拡張・牽引しつづけ、2015年の市場分析および2024年までを予測した「MARKET ESTIMATES & TREND ANALYSIS Bleaching Clay Market」(2016年)によれば、現在においてもBASF社と並んで、収益、従業員数、グローバル拠点、および、顧客の観点からも、活性白土市場のグローバルリーダー的存在である(甲13)。そして、請求人は、少なくとも2014年から、複数ある活性白土商品の一部について、特にアジア地域において、引用標章を使用している(甲26)。 したがって、請求人は、活性白土の業界において、少なくとも2015年には、活性白土の発明者および現在のマーケットリーダーとして世界的に周知著名である。請求人の活性白土商品は、TonsilおよびACTALのみであり、日本国内ではACTALのみが販売されている(甲35)。 よって、引用標章も、2015年には、日本国内を含むアジア地域において周知著名である。 (2)一方、被請求人も、活性白土メーカーとして存在し、「Bleaching Clay Market」によれば、市場におけるビジョナリー(業界のトレンドに沿っているものの、リーダーよりも生産・財務能力が低いサプライヤー)のうちの一社として挙げられている(甲13)。 また、本件商標は、請求人が販売する触媒等を含む活性白土商品に使用する引用標章と同一であり、本件商標の指定商品「微粒子状活性白土」と引用標章が使用される触媒等を含む活性白土商品とは、前述のとおり同一または類似する商品である。 (3)よって、本件商標は、日本国内において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者間に広く知られている引用標章と同一の商標であって、引用標章を使用する商品と同一または類似する商品に使用するものである。 以上より、被請求人が請求人と同一または類似する商品について、同一の商標を使用することは、需要者が出所の混同を生じかねず、需要者に不利益を与えかねない。 (4)小括 以上から、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 6 商標法第4条第1項第15号について (1)本件商標は、引用標章と同一である。そして、上述のとおり、引用標章が使用される商品は、触媒等を含む活性白土商品である。また、引用標章は、化学工業、特に石油工業および油脂工業では、吸着剤、脱色剤、触媒を取り扱う業者において、請求人の触媒等を含む活性白土商品を表示するものとして著名であり、かつ、造語よりなるものであるから独創的な商標である。 さらに、本件商標の指定商品である「微粒子状活性白土」は、上述のとおり、用途が主として石油や油脂等の不純物の吸着剤、脱色剤、触媒反応による精製であるから、吸着剤、脱色剤、触媒とは、その用途において極めて密接な関連性を有しており、両商品の需要者の相当部分が共通する。前記4(2)イのとおり、活性白土、触媒、吸着剤といった商品の区分けは、各販売者等によって、商品の有する触媒能と吸着能のどちらに着目するかにより異なるものであって、市場における活性白土に関する表現は統一されたものではない。これらの取引の事情に照らせば、本件商標を吸着剤等用の活性白土に使用するときは、その取引者及び需要者において、当該商品が請求人の商品に係るものであると誤信されるおそれ、または、請求人と本件商標権者が、緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にあるなど誤認するおそれがある。 (2)小括 以上から、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 7 商標法第4条第1項第19号について (1)上述の通り、活性白土のグローバル市場において、請求人は世界的なマーケットリーダーとして、日本国内のみならずグローバルで活性白土を吸着剤、脱色剤、触媒として使用したい需要者に広く認識されており、引用標章も、少なくともアジア地域において、著名である。 また、引用標章と本件商標は同一である。 そして、請求人は2014年ごろからアジア地域において、活性白土市場において、引用標章を使用していたところ(甲26)、同市場において後から参入した被請求人は、2017年に引用標章と同一の商標「ACTAL」について、活性白土を指定商品として商標登録出願をしている。このような登録出願は、まさに請求人の著名商標に乗じたフリーライド、および、請求人商標の表示機能の希釈化を目的としており、取引則上の信義に反する行為として認められるものではない。 (2)小括 以上から、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号に該当しないこと 本件商標の指定商品は、「微粒子状活性白土」であり、類似群コードは「06B01」が付されている。 一方、引用商標の指定商品は、「酸性粘土触媒,工業用化学品」であり、類似群コードは「01A01」が付されている。 本件商標及び引用商標の指定商品と非類似であることは、本件商標における特許庁での審査及び商標登録異議申立事件(異議2018-900222)においても、結論付けられている。 ちなみに、令和4年12月26日に、総務省および経済産業省が発行した「令和3年経済センサス-活動調査産業別集計(鉱業,採石業,砂利採取業に関する集計)」の15頁「(5)窯業原料用鉱物などの非鉄金属鉱物」のなかでは、「鉱物の採掘から生石灰、消石灰、タンカル、シャモット、ドロマイトクリンカー、活性白土など加工度の高い製品まで一貫して生産している場合は、精鉱をこれらの製品の製造部門に売り渡したものとする。」とあり(乙1)、窯業原料用鉱物などの非鉄金属鉱物の事例として、消石灰などとともに「活性白土」についても記載されている。 この事例を見ても、本件商標の指定商品が、非金属鉱物の範ちゅうの商品であることを裏付けているものである。 以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 なお、上記第3の4(3)のとおり、請求人は被請求人の使用態様を指摘している。しかし、商標法第4条第1項第11号の規定は、当事者の使用態様などは考慮することなく、登録商標や指定商品等の類否を判断するものですので、ここでの主張は適当ではない。 2 商標法第4条第1項第10号に該当しないこと 甲第35号証はホームページの日付として「2019/12/2」と表記されているので、2019年12月2日と解釈される。 次に、甲第26号証は、2014年7月版とある。 しかし、商標法第4条第1項第10号の規定は、同条第3項の規定により商標登録出願の時に該当しないものについては適用しないとある。 そうすると、甲第35号証は出願日時点において、引用標章が日本国内において周知であったという証拠にならず、また甲第26号証は、英語の資料のみであって、日本向けの日本語での資料等はなく、当該書証によって引用標章が日本国内で周知性を獲得することは難しいといえる。 以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 なお、前記第3の5(2)のとおり、請求人は、被請求人の状況について言及しているが、商標法第4条第1項第10号の規定は、本件商標が他の周知商標と同一又は類似するか否かを判断するものでありここでの主張は適当ではない。 3 商標法第4条第1項第15号に該当しないこと 商標法第4条第1項第15号の規定は、実際に使用されている商標と本件商標を比較するものである。また、本号についても、商標法第4条第3項の規定により商標登録出願の時に該当しないものについては適用しないとある。 甲第35号証からは、本件商標の出願日時点において、日本において周知であることが、認められない。 また、請求人の取り扱っている商品は、一般小売店に陳列している商品で、価格も数百円程度のものであって、急いで購入するといったものではない。通常は、需要者も業務として専門商社等を通じて購入するものである。その状況では、その取引にあたっては、慎重な取引態様となり、うっかり誤って他の会社のものを取引するといったことはほぼ無い分野である。 以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号に該当しないこと 商標法第4条第1項第19号の規定は、実際に使用されている商標と本件商標を比較するものである。また、本号についても、商標法第4条第3項の規定により商標登録出願の時に該当しないものについては適用しないとある。 甲第35号証からは、本件商標の出願日時点において、日本または外国において周知であることが、認められない。 甲第26号証には製品名として「ACTAL20」と記載されていることが認められるところ、本件商標は「ACTAL」であるから、同一のものではない。 商標法第4条第1項第19号は、外国または日本での周知性が要件となっているところ、本件商標の出願日当時においては英語の資料のみであるので、日本での製造販売は無かったものと思われる。外国においても、このデータシート(甲26)のみでは、周知性を獲得していた根拠にはならない。 また、被請求人が不正目的で商標登録したとの主張については、具体的な証拠等は一切なく、単なる憶測・邪推の域を超えないものである。 以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 第5 当審の判断 請求人が本件審判を請求するにつき、被請求人は利害関係については何ら争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。 以下、本案について判断する。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標と引用商標の類否について 上記第1及び第2の1のとおり、本件商標と引用商標は、共に「ACTAL」の文字を標準文字で表してなるものであるから、同一の商標と認められる。 なお、商標の類否について当事者間に争いはない。 (2)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について ア 本件商標の指定商品について (ア)両当事者の提出した証拠及び請求人の主張によれば以下のとおりである。 a 「株式会社小学館「大辞泉増補・新装版」(1998年11月20日発行)」には「-せいひん【化学製品】」の見出しの下「化学工業によって製造されるもの」の記載及び「こう-ぎょう【工業】」の見出しの下「自然の原料に人力や機械力を加え、商品価値のある生産物を製造する産業。」の記載がある(甲17、甲18)。 b 「技報堂出版株式会社「化学用語辞典」(1980年6月10日発行)」には「kassei-hakudo活性白土」の見出しのもと「activated clay 酸処理して活性を高めた白土.天然の酸性白土や類似の粘土の粉末を90°以上で希酸とともに加熱して処理する.」の記載がある(甲22)。 c 「丸善株式会社発行「科学大辞典」(昭和60年3月5日発行)」には「かっせいはくど 活性白土 [activated clay]の見出しのもと「酸性白土を硫酸で処理して吸着脱色能を増加させた白土」の記載がある(甲24)。 d 「土と基礎,18-9」には「講座「粘土の科学」」入門(VIII)」の見出しの下、「・・・酸性白土およびベントナイトを酸処理してモンモリロナイト結晶内に含まれるAl,Fe,Mgなどを溶出せしめると,新しく珪酸を生じて性能が改善され活性白土となる。」の記載がある(甲4)。 e 「粘土研究会「粘土科学」Vol.2 No.2(1962年10月1日発行)」には「活性白土」の見出しの下「活性白土は酸性白土を鉱酸で処理し其の吸着能,触媒能を更に高めたもの」及び「I.活性白土の原土について」の項に「現在、我国では珪酸を使用して活性白土を製造して居るが・・・」、「III.活性白土の工業利用について」の項に「活性白土の主なる用途は,石油油脂等の脱色精製であるが,工業利用の概要は次の通りである。」の記載がある(甲5)。 f 「社団法人日本油化学協会「油化学」第12巻第9号(昭和38年9月20日発行)」には「総説 油化学工業における吸着剤 主として活性白土およびアルミナゲルについて 中沢忠久」の見出しの下「1 工業用吸着剤の種類」の項に「現在吸着剤として工業的に用いられているものは・・・天然粘土類を酸処理した活性白土・・・」及び「4 活性白土」の項に「活性白土は酸性白土または類似粘土を酸(通常硫酸)で処理し,塩基性成分(アルミナ,酸化鉄,マグネシウム,酸化カルシウムなど)の一部を溶出させ,酸性白土の持っている性能をさらに高めたものである。この操作を「活性化」とか「付活」と称する。」の記載がある(甲6)。 g 「株式会社国民科学社「土と基礎」(1974年 September)」には「粘土鉱物とその応用」の見出しの下「化学工業の分野においてもある種の粘土を化学処理して,化学製品を製造する。たとえばわが国においては酸性白土と呼ばれるモンモリロナイトあるいはモンモリロナイト質鉱物を主要構成鉱物とする粘土を硫酸その他により処理し,活性白土、感圧紙用クレーなど一連の化学製品を製造している。」の記載がある(甲7、甲16)。 h 「株式会社シーエムシー出版「機能性粘土素材の最新動向」(2010年3月4日発行)」には「4 活性白土の工業応用史」の見出しの下「原料の酸性白土を20~45%硫酸溶液中で5~10時間、煮沸処理し,水洗,フィルタープレス脱水,ロータリンキルンにおる加熱乾燥,クラフト紙バッグ包装工程で活性白土は製造されていた。これは日本活性白土の製造法と考えられる。」、「活性白土の用途は石油,潤滑油,大豆油等植物油,牛脂,魚油の脱色剤や乾燥剤として粉末あるいは粒状製品が使用されていた。」及び「活性白土は石油工業,醸造業,油脂工業などの各方面で広く利用されている。」の記載がある(甲9)。 i 「一般社団法人触媒学会「わが国の工業触媒の歴史」(2018年2月20日発行)」には「第7章 活性白土」の見出しの下「3.活性白土」の項に「酸性白土を硫酸,塩酸のような鉱酸で処理することにより固体酸や細孔,比表面積が著しく増大し触媒能,吸着能が向上することがドイツで開発され,日本でも昭和初期に・・・相次いで設立され活性白土が上市されるに至った.」の記載がある(甲10)。 j 「モンモリロナイト利用の歴史と現状 加藤忠蔵」の表題の書証には「2.モンモリロナイトの利用」の項に「酸性白土は硫酸によって活性化され活性白土として吸着剤,乾燥剤,触媒などに石油工業や油脂工業の分野で利用されている。」、「2-3.活性白土の製造法」の項に「酸性白土を酸で処理して製造する・・・」及び「2-4.活性白土の諸性質とその利用」の項に「活性白土の粒度は粉状のものは一般に200メッシュタイラー標準篩通過分が85%以上であるが、少々粒度が粗くなっても脱色能とろ(審決注:さんずいに「戸」の文字)過には重要な影響はみられない。粒状のものは15~60メッシュ位で・・・」の記載がある(甲14)。 k 「技報堂出版株式会社「吸着剤・吸着操作の設計(昭和57年10月1日発行)」には「b.活性白土」の見出しのもと「粉末状(200メッシュ通過85%)の場合・・・」及び「粒状(15~60メッシュ)の場合・・・」の記載がある(甲15)。 l 「粘土研究会発行「粘土化学」Vol1 No.2-3 (1961年8月1日発行)」には「論説 酸性白土とベントナイトの工業利用 加糖忠蔵」の見出しのもと「III 酸性白土および活性白土の工業利用」の項に「一般的に云うと酸性白土と活性白土は吸着能と触媒能を利用する用途たとえば吸着剤,乾燥剤,触媒などとして石油工業や油脂工業などにひろく使用されている。」の記載がある(甲19)。 m 「公開特許公報 特許出願公開昭63-36837」には「発明の名称」として「活性白土の再生方法」とあり、「明細書」に「活性白土は、天然の酸性白土またはこれに類似の粘土を硫酸処理や焼成処理により活性化されたもので・・・」の記載がある(甲27)。 n 「東新化成株式会社のウェブサイト」には「活性白土」の見出しの下「その後、このような天然に吸着性を持っている粘土に酸処理を行うことによって更にその性質を向上し得ることが知られ“活性白土”(Activated Clay)と称して工業的に使用されるようになりました」、「活性白土は、原料土の選択と活性化条件によって品質を管理し得る化学工業製品であり・・・」及び「活性白土は上述の基礎的特性の知見をもとに、種々の品種が生産されており、使用目的に応じて粉状品、粒状品があります。」の記載がある(甲21)。 o 「水澤化学工業株式会社のウェブサイト」には「吸着剤 ガレオンアース「GALLEON EARTH」」の見出しの下「ガレオンアース(活性白土)は日本海側で産出される良質なモンモリロナイトを主成分とする酸性白土を原料として製造されます。」の記載がある(甲31)。 p 「令和4年12月16日付け総務省・経済産業省」による「令和3年経済センサス-活動調査 産業別集計(鉱業,採石業,砂利採取業に関する集計)結果の概要」には「用語の解説」の見出しの下「5.生産数量」の項に「(5)窯業原料用鉱物などの非鉄金属鉱物」として「鉱物の採掘から生石灰、消石灰、タンカル、シャモット、ドロマイトクリンカー、活性白土などの加工度の高い製品まで一貫して生産している場合は、精鉱をこれらの製品の製造部門に売り渡したものとする。」の記載がある(乙1)。 (イ)上記(ア)によると、「活性白土」は、天然の酸性白土又はこれに類似の粘土を硫酸処理や焼成処理により活性化されたものであって、吸着剤、乾燥剤、触媒など様々な用途があるものであるから、自然の原料から化学工業によって生産されるものであって、用途において限定されない。 そうすると「活性白土」は鉱物の生産者によって取引される場合があるとしても、化学的に製造された物質であり、汎用の化学製品であるといえる。 また、「活性白土」は、石油工業や油脂工業などに利用されているから、工業用の製品である。 そして、「活性白土」の形状は粉状又は粒状である。 (ウ)本件商標の指定商品である「微粒子状活性白土」は、その表示より、非常に細かい粒状の活性白土のことであるから、上記(イ)の「活性白土」に含まれる製品である。 そうすると、当該「微粒子状活性白土」(本件商標の指定商品)は、工業に利用される汎用の化学製品であると認められる。 イ 引用商標の指定商品について 前記第2の1のとおり、引用商標の指定商品は「酸性粘土触媒,工業用化学品」であるところ、指定商品中の「工業用化学品」は、工業に利用される汎用の化学製品である。 ウ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について 上記ア及びイのとおり本件商標の指定商品である「微粒子状活性白土」も引用商標の指定商品中「工業用化学品」も工業に利用される汎用の化学製品である。 そうすると、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品中「工業用化学品」とは、その用途、性質を同じくする類似の商品である。 (3)小括 以上のとおり、本件商標は、引用商標と同一の商標であり、かつ、その指定商品も引用商標の指定商品と類似の商品であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (4)被請求人の主張について 被請求人は、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類似群コードが異なること、並びに本件商標の審査及び商標登録異議申立事件(異議2018-900222)において本件商標及び引用商標の指定商品が非類似であると結論づけられている旨主張している。 しかしながら、特許庁「類似商品・役務審査基準」よると、「同じ類似群コードが付された商品・役務については、審査において類似と推定されます。」及び「この基準で類似と推定したものでも非類似と認められる場合又はこの基準では類似としていないものでも類似と認められる場合もあり得ます。」とあり、推定が覆滅されることを許容しているものであるから、類似群コードが異なることをもってのみ非類似の商品ということはできない。 また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が、本件商標の審査及び商標登録異議申立事件において非類似とされたとしてもこれらの商品における具体的な事情に基づく判断は、上記(2)で詳細に説示したとおりである。 したがって、被請求人の主張は採用できない。 2 商標法第4条第1項第10号について 請求人の提出した全証拠を見ても、引用標章が他人(請求人)の業務に係る商品(活性白土)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないから、他の要件について検討するまでもなく、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号及び同項第19号について 前記1のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同項第15号かっこ書き「第十号から前号までに掲げるものを除く。」及び同項第19号かっこ書き「前各号に掲げるものを除く。」により、同項第15号及び同項第19号には該当しない。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その登録は同法第4条に違反してされたものであって、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-890022

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