商標拒絶査定不服審判
2020-650030
- 審判番号
- 2020-650030
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 1379178
- 請求日
- 2020年07月02日
- 審決日
- 2022年06月29日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】Volkswagen Aktiengesellschaft
- 【請求人代理人】江崎 光史
- 【請求人代理人】佐久間 洋子
- 【請求人代理人】田崎 恵美子
- 審判長/審判官
- 審判長 森山 啓
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T18 .13 -Z (W092830) / T18 .17 -Z (W092830)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、特許法第150条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
国際登録第1379178号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。
結論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)9月6日にGermanyにおいてなされた商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年11月1日に立体商標として国際商標登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
2018年(平成30年)8月3日付け:暫定拒絶通報
2018年(平成30年)12月14日:手続補正書、意見書の提出
2020年(令和2年)3月19日付け:拒絶査定
2020年(令和2年)7月2日 :審判請求書の提出
2020年(令和2年)8月28日 :手続補正書(甲1~甲20)の提出
令和3年4月12日付け :証拠調べ通知書
令和3年7月13日 :意見書(甲21~甲29)の提出
第2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、日本国を指定する国際登録において指定された第9類、第28類及び第30類に属する商品を指定商品として、上記第1のとおり国際商標登録出願されたものであり、指定商品については、上記第1の原審における平成30年12月14日付けの手続補正書により、別掲2のとおりの商品に補正されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、「本願商標は、自動車の立体形状を正面図、背面図、右側面図並びに背面右側からみた斜視図及び正面右側からみた斜視図の5図面で表してなるところ、これよりは一見して自動車の形状を表したものと認識できるものであり、その指定商品中、第28類「Toy automobiles; scale model automobiles.」及び第30類「Chocolate and desserts; ice creams, frozen yogurts and sorbets.」との関係においては、商品の形状を表したものと認められる。そうすると、本願商標をその指定商品中の上記商品に使用した場合、これに接する需要者、取引者は、単に「自動車」の形状をした商品であることを認識するにすぎない。そして、本願商標を上記商品のうち「自動車」の形状以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第4 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲3に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、上記第1のとおり、証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第5 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)
請求人は、上記第4の証拠調べ通知に対して、上記第1のとおり意見書を提出し、要旨以下のように述べるとともに、証拠方法として、甲第21号証ないし甲第29号証を提出した。
1 第28類の商品の分野においては、モデルカーやミニカーを専門的に製造・販売する業者は自動車メーカーとは異なること、数多く製造・販売される自動車のうち、需要者に人気のある周知な車種だけが選ばれ、モデルカー等として製造・販売されていること、モデルとして選ばれる車種には自他商品の識別を可能とする固有な特徴があり、モデルカー等は忠実にその特徴を再現していることから、需要者は購買欲をそそられるのである。また、第30類の商品の分野においても、当該商品の製造業者は、需要者に広く知られ人気がある実在の自動車の外観を模したチョコレート等を製造・販売しているという取引の実情がある。このとき需要者にとっての重要な購入ポイントは、モデルとなる自動車が有する固有な特徴をどれだけ再現しているかにある。
そうすると、上記の商品は、自他商品の識別を可能とする固有な特徴がある、実在する周知な自動車をモデルとして、その固有な特徴を再現して製造され、顧客はその商品に惹きつけられ購入する。これは、モデルとなる自動車が有する自他識別力が、本願の指定商品にも及んでいるからにほかならない。とりわけ、本願商標の形状を有する自動車は、請求人の長年の使用により、我が国においてその固有な特徴が広く知られるに至っているから、その自他識別力は本願の指定商品にも及んでいる。よって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものではない。
2 本願商標が万が一、商標法第3条第1項第3号に該当する場合であっても、同法第3条第2項に該当する商標である。本願商標は、請求人が1938年に生産を開始し、1952年に日本に初上陸し、65年にわたり累計約2153万台が製造・販売された、請求人のアイコン的存在である自動車「ビートル」の外形形状からなる立体商標であり、当該形状は需要者が請求人の業務に係る自動車の形状であると認識するに至る著名性を獲得した。その著名性は当該自動車の固有な特徴を再現する本願の指定商品についても及ぶものである。
第6 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)立体商標における商品又は商品の包装の形状に係る判示
ア 商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品等の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
イ また、商品等の具体的形状は、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品等について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。
けだし、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から適切でないからである。
(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10555号判決、平成19年(行ケ)第10215号判決参照)。
(2)上記の観点から、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かを判断する。
本願商標は、別掲1のとおりの立体的形状であるところ、各図面に表された構成に照らして、一台の自動車の形状を表したものと容易に認識できるものである。
そして、本願の指定商品中、第28類「Toy automobiles; scale model automobiles.」及び第30類「Chocolate and desserts;frozen yogurts and sorbets.」(以下「本願商品」という。)の分野においては、様々な形状(包装の形状を含む。)の商品が製造、販売されているところ、令和3年4月12日付け証拠調べ通知書において通知したとおり、様々な自動車の立体的形状からなる商品が製造、販売されている実情がある。
そうすると、本願商標に係る自動車の立体的形状は、本願商品との関係において、客観的に見て、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されたと認め得るものであり、本願商品の分野における同種の商品について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであるというべきである。
してみれば、本願商標を本願商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の形状(包装の形状も含む。以下同じ。)の一形態を表したものとして理解するにとどまり、自他商品の識別標識としては認識し得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項該当性について
請求人は、本願商標は請求人のアイコン的存在である自動車の外形形状からなる商標であり、当該形状は需要者が請求人の業務に係る自動車の形状であると認識するに至る著名性を獲得し、その著名性は当該自動車の固有な特徴を再現する本願の指定商品についても及ぶものであるから、商標法第3条第2項に該当する旨主張するので、以下検討する。
(1)商標法第3条第2項に係る判示について
ある標章が商標法第3条第2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは、出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品の販売数量又は売上高等、当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである(知財高裁平成24年(行ケ)第10285号、平成25年1月24日判決参照)。
(2)請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、1938年に、「ビートル」と称される大衆小型自動車(以下「請求人自動車」という。)の生産を開始し、請求人自動車は1953年に我が国において販売が開始された(甲1、甲4)。
イ 請求人自動車は、2003年の生産終了まで、約65年にわたり生産、販売された(甲4、甲5)。
ウ 請求人自動車は、1992年末には全世界累計生産台数2100万台を突破した(甲5)。
エ なお、請求人は、本願商標は請求人自動車の立体的形状を表すものであり、請求人自動車は、生産開始から終了まで50年以上モデルチェンジをすることなく生産されてきた旨主張するが、提出された証拠においては、請求人自動車の外形全体が各方向から表されているものは見当たらず、本願商標と請求人自動車が同一の形状であることについての確認ができない。
オ 2018年には、請求人自動車の日本販売65周年を記念した切手が発売された(甲6)。
カ 2012年及び2018年ないし2020年には、請求人自動車に関する書籍や雑誌が発行された(甲7、甲8)。
キ 2020年には、請求人により、請求人自動車の形状を模したキーホルダーや貯金箱、おもちゃ等が販売されている(甲9)。
ク 2019年及び2020年には、洋菓子メーカーと請求人とのコラボレーションにより製造された、請求人自動車の形状を模したチョコレートが販売されている(甲10、甲11)。
(3)判断
上記(2)アないしエによれば、請求人自動車は、1938年から2003年までの約65年にわたり生産され、1992年末時点での全世界累計生産台数は2100万台以上にのぼったことがうかがえる。しかしながら、請求人自動車が常に本願商標に係る立体的形状と同一の形状からなるものであるかが定かでない上、1953年の日本での発売以降、請求人自動車の我が国における生産台数や販売台数、広告宣伝の状況が不明であり、さらに、請求人自動車が生産終了となった2003年からは、既に20年近く経過している。
そうすると、かかる証拠に基づいて、本願商標に係る立体的形状が、現在において、請求人の業務に係る自動車として需要者に広く知られているものということはできない。
そして、上記(2)オないしクによれば、我が国の自動車以外の分野において、近年、請求人自動車の形状を模した各種商品が、請求人等によって製造、販売されており、本願商品との関係においては、請求人自動車の形状を模したチョコレートが、請求人とのコラボレーションによって製造、販売されている実情があることはうかがえる。
しかしながら、本願商標に係る立体的形状からなる本願商品の売上高、販売数、市場シェアなどの販売実績や広告宣伝等に係る主張はなく、それらを具体的に示す証拠も見いだせない。
してみれば、本願商標が、本願商品の分野において、請求人の業務に係る商品を表すものとして、その取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものということはできない。
したがって、本願商標は、本願商品との関係において、使用により自他商品の識別標識としての機能を獲得するに至っているものとは認められないから、商標法第3条第2項の要件を具備するものということはできない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、証拠調べ通知書において挙げた各証拠に関して、本願商標の指定商品を取り扱う業界において自動車の立体的形状からなる商品が多々あるとしても、各証拠及びこれらの商品について提出した甲第21号証ないし甲第29号証から明らかなように、それらの商品は、実在する周知な自動車をモデルとして、その固有な特徴を再現して製造されたものであり、顧客はその商品に惹きつけられ購入するものであるところ、これは、モデルとなる自動車が有する自他識別力が、本願の指定商品にも及んでいるからであって、とりわけ、本願商標の形状を有する自動車は、請求人の長年の使用により、我が国においてその固有な特徴が広く知られるに至っているから、その自他識別力は本願の指定商品にも及んでいる。よって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものではない旨主張する。
しかしながら、上記1で述べたとおり、本願商標が自動車の一形態を表すものとして理解されるものであって、かつ、本願商品を取り扱う業界において、様々な自動車の立体的形状からなる商品が取引されている実情があることからすれば、本願商標が本願商品に使用された場合に、予測し難いような特異な形状や特別の印象を与えるものであるということはできない。また、本願商標が自動車及び本願商品との関係において、使用により自他商品識別標識としての機能を獲得するに至っているとはいえないことは、上記2のとおりである。
したがって、請求人の上記の主張は採用できない。
(2)請求人は、本願商品のうち、第28類の商品に関して、需要者が商品を購入する際は、「形状が気に入ったから」「自分が好きな車のモデルカーだから」(甲4、甲15~甲17)のように商品の形状が重視され、また、第30類の商品に関しては、商品を購入する決め手として、ブランドや味、値段とともにその形状が重視されており(甲14、甲18、甲19)、特に若者の世代にとって近年「インスタ映え」「SNS映え」するといった、商品や商品の包装の外観がより重要視されている(甲20)ところ、需要者は、本願商標が自動車「ビートル」の外形形状を外観特徴として抽出しているからこそ、本願商標を付した商品を選択・購入する旨主張する。
しかしながら、本願商品の分野において、商品の形状が需要者の商品選択の際の一要素となる場合があるとしても、常にその形状のみが商品選択の基準となるとはいい難い。そして、上記2で述べたとおり、本願商標は、自動車及び本願商品との関係において、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っているとはいえないものである。
したがって、請求人の上記の主張も採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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