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特許判定

2020-600018

スナップ付きブリッジを有する眼鏡類

審判番号
2020-600018
法域
特許
審判種別
判定
出願番号
特願2000-302262外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年06月12日
審決日
2020年09月25日
公報発行日
2020年11月27日
結論
判定(属しない)
当事者
審判長/審判官
分類
P12 .1 -ZB (G02C)
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第3955432号の判定請求事件について、次のとおり判定する。

結論

【結 論】
イ号図面及びその説明書に示す「スナップ付きブリッジを有する眼鏡類」は、特許第3955432号発明の技術的範囲に属しない。

理由

目次 ▾ 13項目
【理 由】

第1 事案の概要

1 手続の経緯

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特許第3955432号(以下「本件特許」という。)は、特願2000-302262号として平成12年10月2日に出願され、平成19年1月25日付けで拒絶の理由が通知され、平成19年3月19日に手続補正(以下「本件補正」という。)がされ、平成19年4月10日付けで特許すべき旨の査定がされ、平成19年5月11日に特許権の設定の登録がされたものである。

本件特許に関して、令和2年6月12日、判定請求人 ロナルド ランド 外1名 から株式会社パルスを被請求人とする判定が請求された(判定2020-600018号)ところ、被請求人から令和2年8月19日、答弁書が提出された。

判定請求書には以下の証拠が添付されている。

甲1:特開2003-261826号公報
甲2:特開平1-295652号公報

2 請求の趣旨

イ号発明の図面及び説明書に示す発明(以下「イ号物品」という。)は、特許第3955432号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求める。

第2 本件特許発明

本件特許発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、本件特許の構成を分説すると以下のとおりとなる(以下「構成要件A」などという。)。

「 (A)一組のレンズ及び一組の枠を有し、
(B)レンズを各枠に取り付け、
(C)磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に、つるを枠の各外端に、それぞれ取り付け、
(D)つるの後方端間を、形状を保持する堅さと弾力性、曲げることができる可撓性を有するストラップによって連結するようにし、
(E)眼鏡類の装着と取り外しを、前記磁石のみからなる一組の連結器により、枠の内端を連結又は分離することにより行う際、前記形状を保持するストラップを介して、レンズを眼の前に正しく配置することができるようにするとともに、装着しない時、首のまわりにかけることができるようにした
(F)ことを特徴とする眼鏡類。」

第3 イ号物品

イ号物品は、別紙「イ号発明の説明書」及び「イ号発明の図面」の記載のとおりのものである。

イ号物品を本件特許発明の構成要件に対応させて分説して記載すると以下のとおりとなる(以下「構成a」などという。)。

「 (a)一組のレンズ(1)及び一組の枠(2)を有し、
(b)レンズ(1)を各枠(2)に取り付け、
(c)2つの磁石(3)を、枠(2)の各内端(2A)に設けられた凹部(2C)内に、各磁石(3)の端面が各内端(2A)の端面よりも低くなるように取り付け、つる(5)を枠(2)の各外端(2B)に取り付け、
(d)塗布膜(4)で、各凹部(2C)を埋め込むとともに、各磁石(3)の端面を被覆し、塗布膜(4)の表面が各枠(2)の内端(2A)の端面より凹状に窪んで形成されており、塗布膜(4)の厚さは各磁石(3)の端面中心部で0.1~0.2mm程度、端面外周部で0.4~0.5mm程度となっており、
(e)つる(5)の後方端間を、形状を保持する硬さと弾力性、曲げることができる可撓性を有するストラップ(6)によって連結するようにし、
(f)眼鏡類の装着と取り外しを、2つの磁石(3)により、各枠(2)の内端(2A)を連結又は分離することにより行う際、形状を保持するストラップ(6)を介して、レンズ(1)を眼の前に正しく配置することができるようにするとともに、装着しない時、首のまわりにかけることができるようにした
(g)ことを特徴とする眼鏡類。」

第4 当事者の主張

1 請求人の主張

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(1)請求人は、判定請求書の「(5-1)本件特許発明とイ号発明との一致点」において、イ号物品の構成a、b、c、e、f及びgの点は、それぞれ、本件特許発明の構成要件A、B、D、E及びF並びに構成要件Cの「磁石のみからなる一組の連結器を枠の各内端に、つるを枠の各外端に、それぞれ取り付け」の点を充足するとしている一方で、イ号物品の構成dの点は、塗布膜(4)が設けられていることから、本件特許発明の構成要件Cの「一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」の点を文言上は充足しないと主張している。

(2)請求人は、判定請求書の「(5-2)本件特許発明とイ号物品の相違点」において、イ号物品は構成dの塗布膜(4)が設けられている点において、本件特許発明の構成要件Cの「一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」の点と相違するとしつつ、「(5-3)相違点の解釈」において、以下の主張をしている。

本件特許発明の眼鏡類に使用される「磁石」は、そのままでは非常に錆びやすく、これを防止するために、磁石の表面に酸化防止皮膜を設けることが一般的に行われている。

また、磁石の表面に設ける酸化防止皮膜の材料としては、金属材料のほか、硬化性樹脂材料が一般的に用いられている(例えば、甲第1号証~甲第2号証参照。)。

したがって、このような技術的背景を勘案すると、本件特許発明の構成要件C中の「磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」は、磁石の表面に酸化防止皮膜を設けた場合を排除するものではなく、磁石の表面に酸化防止皮膜が設けられていても、上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」を充足するものであるといえる。

また、そもそも、上記本件特許発明の構成要件C中の「磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」る構成は、一組の連結器である磁石を枠の各内端に取り付ける際に、接着剤を用いて固定する態様を排除していない。

これらの点を勘案すれば、(a)イ号物品の製造時に磁石(3)の表面に酸化防止の目的で設けられる塗布膜(4)と、(b)磁石の製造時に磁石の表面に酸化防止の目的で設けられる皮膜とは、形成される工程は異なるものの、磁石の表面に酸化防止の目的で設けられる皮膜の点で共通しており、上記のとおり、本件特許発明の構成要件C中の「磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」は、磁石の表面に酸化防止皮膜を設けた場合を排除するものではなく、磁石の表面に酸化防止皮膜が設けられていても、上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」を充足するものであるだけでなく、そもそも、本件特許発明は、一組の連結器である磁石を枠の各内端に取り付ける際に、接着剤を用いて固定する態様を排除していないことから、(a)イ号物品の製造時に磁石(3)の表面に酸化防止の目的で設けられた塗布膜(4)であっても、上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」を充足するものであるといえる。

2 被請求人の主張

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被請求人は、判定請求答弁書において、参考図に示す構造(以下「イ号物品」という。)は、特許第3955432号発明(以下「本件特許発明」といいう。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるとして、以下の主張をしている。

(1)請求人が主張する本件特許発明とイ号物品との一致点、相違点について、一致点とした点は認め、「イ号物品の製造時に磁石(3)の表面に酸化防止の目的で設けられた塗布膜(4)であっても、上記構成要件C中の『磁石の端面が露出する』を充足するものであるといえる。」とした点は争う。

(2)構成要件Cに関して、本件特許発明では、磁石の端面が露出しているのに対し、イ号物品では、塗布膜(4)で各磁石(3)の端面が被覆されている。そこで、特許請求の範囲に記載された「露出」の意義を解釈するために、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮すると、明細書には、「露出」について特段の定義は記載されておらず、また、明細書には、そもそも「露出」なる用語の記載がない(平成19年3月19日になされた手続補正により特許請求の範囲に記載された用語である。)。ただし、図面の図3においては、連結器11が、覆いなくむき出しになっている様子が見て取れる。

したがって、磁石の端面の「露出」については、「何の覆いもなくあらわに見えていること」を意味すると解するのが相当である。また、このような解釈は一般的な「露出」の意味である「あらわに、むき出しになること。」「株式会社岩波書店広辞苑第六版」とも整合する。

(3)イ号物品において、2つの磁石(3)は、枠(2)の各内端(2A)に設けられた凹部(2C)内に、各磁石(3)の端面が各内端(2A)の端面よりも低くなるように取り付けられ、塗布膜(4)で、各磁石(3)の端面が被覆されている。ここで、イ号物品の塗布膜(4)は、各凹部(2C)を埋め込むとともに、各磁石(3)の端面を被覆しており、また、塗布膜(4)の表面が各枠(2)の内端(2A)の端面よりも凹状に窪んで形成されており、塗布膜(4)の厚さは各磁石(3)の端面中心部で0.1~0.2mm程度、端面外周部で0.4~0.5mm程度となっていることから、イ号物品の磁石(3)は、各枠(2)及び塗布膜(4)によって完全に覆われることとなる(この点は、参考図の【イ号図3】、【イ号図4】からも見て取れる事項である。)。したがって、イ号物品の磁石(3)は、塗布膜(4)によって端面が全面覆われており、磁石(3)の端面が露出しているとはいえない。

(4)磁石においては、その表面に酸化防止を目的とした皮膜を設けることが、当業者において周知慣用されており、また、表面の皮膜を含めて(皮膜を磁石の一部とみなして)磁石という場合もある。しかしながら、イ号物品における塗布膜(4)は、各凹部(2C)を埋め込むとともに、各磁石(3)の端面を被覆するものである。したがって、イ号物品における塗布膜(4)は、磁石の製造時に、磁石の表面に設けられる酸化防止の皮膜とは異なるものと解するのが妥当であるから、これを、磁石の一部をなす部材とみることはできない。

第5 対比・判断

1 各構成要件の充足性について

(1)構成要件A、B、D、E及びFの充足性について

イ号物品の構成a、b、e、f及びgは、それぞれ、本件特許発明の構成要件A、B、D、E及びFを充足する。

(2)構成要件Cの充足性について

イ号物品の構成cは,本件特許発明の構成要件Cのうち,「磁石のみからなる一組の連結器を」「枠の各内端に、つるを枠の各外端に、それぞれ取り付け」の部分を充足する。

なお、上記(1)及び(2)の充足性について、当事者の間に争いはない。

(3)構成要件Cの「磁石の端面が露出するように」の部分の充足性について

ア 構成要件Cに関して、本件特許発明は、「磁石の端面が露出」しているのに対し、イ号物品は、「塗布膜(4)で」「各磁石(3)の端面を被覆し」ている。そこで、特許請求の範囲に記載された「露出」の意義を解釈するために、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮すると、明細書には、「露出」について特段の定義は記載されておらず、また、明細書には、そもそも「露出」なる用語の記載がない(本件補正により特許請求の範囲に記載された用語である。)。ただし、本件特許の図3においては、連結器11が、覆いなくむき出しになっている様子が見て取れる。

【図3】

したがって、磁石の端面の「露出」については、「何の覆いもなくあらわに見えていること」を意味すると解するのが相当である。また、このような解釈は一般的な「露出」の意味である「あらわに、むき出しになること。」[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]とも整合する。

イ イ号物品において、「2つの磁石(3)」は、「枠(2)の各内端(2A)に設けられた凹部(2C)内に、各磁石(3)の端面が各内端(2A)の端面よりも低くなるように取り付け」、「塗布膜(4)で」、「各磁石(3)の端面を被覆し」ている。

ウ ここで、イ号物品の「塗布膜(4)」は、「各凹部(2C)を埋め込むとともに、各磁石(3)の端面を被覆し」ており、また、「塗布膜(4)の表面が各枠(2)の内端(2A)の端面より凹状に窪んで形成されたおり、塗布膜(4)の厚さは各磁石(3)の端面中心部で0.1~0.2mm程度、端面外周部で0.4~0.5mm程度となって」いるのであるから、イ号物品の「磁石(3)」は、「各枠(2)」及び「塗布膜(4)」によって、完全に覆われることとなる(この点は、イ号発明の図面の【イ号図3】、【イ号図4】からも見て取れる事項である。)。したがって、イ号物品の「磁石(3)」は、「塗布膜(4)」によって端面が全面覆われており、「磁石の端面が露出」しているとはいえない。

エ ところで、磁石においては、その表面に酸化防止を目的とした皮膜を設けることが、当業者において周知慣用されており、また、表面の皮膜を含めて(皮膜を磁石の一部とみなして)「磁石」という場合もある。しかしながら、イ号物品における「塗布膜(4)」は、「各凹部(2C)を埋め込むとともに、各磁石(3)の端面を被覆」するものである。したがって、イ号物品における「塗布膜(4)」は、磁石の製造時に、磁石の表面に設けられる酸化防止の皮膜とは異なるものと解するのが妥当であるから、これを「磁石」の一部をなす部材とみることはできない。

オ 以上から、イ号物品の構成dは、本件特許発明の構成要件Cの「磁石の端面が露出するように」の部分を充足しない。

(4)各構成要件の充足性のまとめ

上記(3)のとおり、イ号物品は、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。

2 請求人の主張について

(1)請求人は、(a)イ号物品の製造時に磁石(3)の表面に酸化防止の目的で設けられる塗布膜(4)と、(b)磁石の製造時に磁石の表面に酸化防止の目的で設けられる皮膜とは、形成される工程は異なるものの、磁石の表面に酸化防止の目的で設けられる皮膜の点で共通しており、上記のとおり、本件特許発明の構成要件C中の「磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」は、磁石の表面に酸化防止皮膜を設けた場合を排除するものではなく、磁石の表面に酸化防止皮膜が設けられていても、上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」を充足すると主張している。

しかし、上記1(3)のとおり、イ号物品の「塗布膜(4)」は,その製造工程からみて、磁石の一部を構成するものとみなすことができない。したがって、イ号物品の「塗布膜(4)」と磁石の酸化防止皮膜とが、磁石の表面に酸化防止の目的で設けられる皮膜の点で共通しているとしても、イ号物品が、上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」の部分を充足するということはできない。

(2)また、請求人は、本件特許発明の構成要件C中の「磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」る構成は、一組の連結器である磁石を枠の各内端に取り付ける際に、接着剤を用いて固定する態様を排除していないと主張している。

しかし、本件特許発明の構成要件C中の「磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」る構成が、一組の連結器である磁石を枠の各内端に取り付ける際に、接着剤を用いて固定する態様を排除するかどうかは、磁石を固定する態様について言及したにすぎず、イ号物品が上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」の部分を充足/非充足の観点においては、影響を及ぼさない。

したがって、請求人の主張を採用することはできない。

3 まとめ

イ号物品は、本件特許発明の構成要件Cを充足していない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、イ号物品は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。

別紙「(4)イ号発明の説明書」及び「イ号発明の図面」

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2020-600018

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