商標取消審判
2020-300482
アクアエンジェル、アクアエンゼル、アクア、エンジェル、エンゼル
- 審判番号
- 2020-300482
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2005-074010
- 登録番号
- 4943975
- 請求日
- 2020年07月03日
- 審決日
- 2021年10月26日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式會社エルジ生活健康
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】川本 真由美
- 【請求人代理人】市川 久美子
- 【被請求人】有限会社 コスメアライズ
- 【被請求人代理人】特許業務法人グローバル知財
- 審判長/審判官
- 審判長 半田 正人
- 審判官 須藤 康洋
- 審判官 大森 友子
- 分類
- T132 .1 -Y (Y03)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第2号、商標法第50条第1項、商標法第50条、商標法第56条第1項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4943975号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標について
本件登録第4943975号商標(以下「本件商標」という。)は,上段に「アクアエンジェル」の片仮名と下段に「Aqua Angel」の欧文字を二段に横書きした構成からなるものであり,平成17年7月26日に登録出願され,同18年4月14日に第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として設定登録がされ,現に有効に存続しているものである。
なお,本件審判の請求の登録の日は令和2年7月20日であるので,以下,当該登録前3年以内の期間(平成29年7月20日ないし令和2年7月19日)を「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定商品中,第3類「せっけん類,香料類,化粧品」の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲1の1~甲13(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中,第3類「せっけん類,香料類,化粧品」(以下「請求に係る商品」という場合がある。)について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者及び通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから,商標法第50条第1項の規定により,その登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
王子製薬株式会社(以下「王子製薬」という。)は,従来から,対象製品である化粧品「ナチュラルウォーター」,「ナチュラルエマルション」,「DSクリーム」及び「エサンスシュペリウール エクストレ」について自己の登録商標(甲7)である「アクアプリ」を表示した商品名で販売しており,少なくとも令和元年(2019年)5月10日時点(甲5)までは,対象商品であるこれらの化粧品について「アクアエンジェル」との表記は一切付されることなく販売されていた事実が認められる(甲2の1~甲6の2)。
また,本件商標権者と王子製薬は実質的に同一経営主体であり(甲8,甲9),契約締結日の日付を偽装して商標使用契約書(乙1)を作成することは容易である。
さらに,王子製薬のwebページ(乙2)は要証期間外の印刷であり,その表示も不自然である。
そして,使用されていない「アクアエンジェル」の文字が入出庫明細書(乙3の1,乙3の2)及び納品書(乙4)に記載されているのは不自然である。また当該明細書及び納品書の商品名及び伝票番号等の表記も不自然である(甲10の1,甲10の2)。
これら事実を踏まえると,乙1ないし乙4(枝番を含む。)については,偽造された可能性が高いといえる。
よって,これらの証拠を根拠として,被請求人及び王子製薬が本件商標を要証期間内に請求に係る商品に使用していたと認めることはできない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求め,答弁及び審尋に対する回答において,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙1~乙10(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標について
本件商標は,上段に「アクアエンジェル」の片仮名と,下段に「Aqua Angel」アルファベットとを二段併記した構成からなる商標であるところ,片仮名の「アクアエンジェル」とアルファベットの「Aqua Angel」とは、称呼が同一であり、また観念を同一とすることは明らかであるから,その一方の使用は本件商標の社会通念上同一の使用と認められる。
2 本件商標の使用者及び使用事実並びに使用商標などについて
(1) 本件商標権者は,2017年(平成29年)1月1日から2021年12月31日までの5年間の商標使用許諾契約を王子製薬と締結しており,本件商標の指定商品中「化粧品」に属する商品(「アクアエンジェル アクアプリ ナチュラルウォーター」,「アクアエンジェル アクアプリ ナチュラルエマルション」,「アクアエンジェル アクアプリ DSクリーム」及び「アクアプリ エサンスシュペリウール エクストレ」のスキンケア商品4品)について,日本国内での販売に関して使用許諾している事実がある(乙1)。
(2) 王子製薬は,上記商品4品について会社のWebサイトを通じて販売申出を行っており,その事実が,Webサイトのウェブページの印刷物から確認できる(乙2)。
なお,上記商品4品は,それぞれ化粧水,乳液,保湿クリーム,美容液である。
(3) 「アクアエンジェル アクアプリ ナチュラルウォーター」と「アクアエンジェル アクアプリ ナチュラルエマルション」の2商品については,2017年1月1日から2020年8月31日までの間における各商品の入出庫明細表に示すとおり,2017ないし2019年の3年間,継続して商品販売が行われており,さらに,販売に関する伝票(納品書)を一部抽出して示すとおり,それらの商品が販売されていた事実が確認できる(乙3の1,乙3の2,乙4)。
そして,王子製薬は,乙4の納品書に示すとおり,商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルウォーター」と「アクアエンジェル HB ナチュラルエマルジョン」について要証期間内にAらに販売しており,乙5の納品書に示すとおり,Bに販売している。また,AとBが2018年頃から当該商品を継続して使用していると述べている旨の陳述書(乙9,乙10)を提出する。
(4) 商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルウォーター」と「アクアエンジェル HB ナチュラルエマルジョン」は,ダイレクトメールを用いて頒布した商品宣伝用チラシ(乙6)とリーフレット(乙7)に示すとおり化粧水と乳液であり,それぞれの容器(瓶)に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示したラベルが貼付されている(乙8)。
3 小括
したがって,本件商標権者から商標使用許諾契約を受けた王子製薬(通常使用権者)は,要証期間内において,化粧品(化粧水,乳液)の容器(瓶)に本件商標と社会通念上同一と認められる商標(Aqua Angel)を表示したラベルを貼付した化粧品を譲渡しており,本件商標の使用については,商標法第2条第3項第2号に該当する。
第4 当審の判断
1 認定事実
(1) 乙1は,商標使用許諾契約書であって,本件商標権者は王子製薬に対し,スキンケア商品4品を対象商品として,2017年1月1日から2021年12月31日の間,本件商標についての通常使用権を許諾する旨の定めがある。
(2) 乙8の第1頁は,商品(ガラス瓶・容器)の写真であって,当該商品の容器の横面に貼付されたシールには,「Aqua Angel」及び「natural water」の欧文字(以下「本件使用商標1」という。)が2段に表示されている。
また,上記容器の横面であって,上記シールが貼付された部位の反対側には「アクアエンジェル」及び「アクアプリ ナチュラルウォーター」の文字が二段横書きに表示されており,この二段横書き表示の下には続けて「[化粧水]100ml」,配合成分として「乳酸桿菌/ハイビスカス花発酵液」の表示が,その下部には「製造販売元:王子製薬株式会社」の表示がそれぞれ認められる。
また,乙8の第2頁は,商品(ガラス瓶・容器)の写真であって,当該商品の容器の横面に貼付されたシールには,「Aqua Angel」及び「natural emulsion」の欧文字(以下「本件使用商標2」という。以下,本件使用商標1と本件使用商標2を合わせて「本件使用商標」ということがある。)が2段に表示されている。
また,上記容器の横面であって,上記シールが貼付された部位の反対側には「アクアエンジェル」及び「アクアプリ ナチュラルエマルション」の文字が二段横書きに表示され,この二段横書き表示の下には続けて「[乳液]100ml」,配合成分として「乳酸桿菌/ハイビスカス花発酵液」の表示が,その下部には「製造販売元:王子製薬株式会社」の表示がそれぞれ認められる。
(3) 乙4は,王子製薬が発行した一連の納品書であって,その中には,宛先をA(住所:埼玉県川越市)とし,売上日「2018年10月5日」,商品コード/商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルエマルジョン」,数量「1」,伝票番号「00000070」とするもの,売上日「2018年12月11日」,商品コード/商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルウォーター」及び「アクアエンジェル HB ナチュラルエマルジョン」,数量それぞれ「1」,伝票番号「00000092」とするもの,売上日「2019年8月19日」,商品コード/商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルウォーター」及び「アクアエンジェル HB ナチュラルエマルジョン」,数量それぞれ「1」,伝票番号「00000049」とするものがそれぞれうかがえる。
また,乙3の1は商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルウォーター」に関する入出庫明細表,乙3の2は商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルエマルジョン」に関する入出庫明細表であって,それぞれの入出庫明細表のうち,取引先名をAとする部分について,上記納品書と伝票日付(売上日)及び伝票番号が合致する。
さらに,乙9はA自身が作成した陳述書であり,王子製薬の商品「アクアエンジェル アクアプリ ナチュラルウォーター」及び「アクアエンジェル アクアプリ ナチュラルエマルション」を2018年頃から愛用している旨の記述がある。
(4) 乙2は,王子製薬のウェブサイトであって,2葉目には「アクアエンジェルHBシリーズ」の見出しの下,「アクアプリシリーズの中では,化粧品,乳液にハイビスカスエキスを配合し,アクアプリHB(ハイビスカス)シリーズとして位置づけています。」の表示及び「アクアエンジェル アクアプリ ナチュラルウオーター 100ml」の「主な配合成分」として「ハイビスカスエキス」の表示及び「アクアエンジェル アクアプリ ナチュラルエマルション 100ml」の「主な配合成分」として「ハイビスカスエキス」の表示がある。
(5) 上記(1)ないし(4)を総合すると,以下の事実を認めることができる。
ア 王子製薬は、要証期間を含む2017年(平成29年)1月1日ないし2021年(令和3年)12月31日において、スキンケア商品に係る本件商標の通常使用権者であると認められる。
イ 本件使用商標が容器に付された商品(以下「本件使用商品」という。)は,当該容器の表示より,「化粧水」及び「乳液」であって,王子製薬が製造及び販売したものと認められる。
ウ 王子製薬は,品名を「アクアエンジェル HB アクアプリ ナチュラルウォーター」あるいは「アクアエンジェル HB アクアプリ ナチュラルエマルジョン」とする商品の注文をAから受け,2018年(平成30年)10月5日,同年12月11日,2019年(令和元年)8月19日に埼玉県川越市に住所を有するAに納品した。
2 判断
上記1において認定した事実によれば,以下のとおり判断できる。
(1) 本件使用商標の使用者について
本件使用商品の製造販売元は王子製薬であるから,本件使用商品に本件使用商標を付したのは王子製薬であり,王子製薬は本件商標の通常使用権者であるから,本件使用商標の使用者は通常使用権者である。
(2) 本件使用商品の譲渡,使用場所及び使用時期について
王子製薬は,2018年(平成30年)10月5日,同年12月11日,2019年(令和元年)8月19日に商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルウォーター」及び「アクアエンジェル HB ナチュラルエマルジョン」を埼玉県川越市在住のAに納品した。
そして,本件使用商標1は,上記1(2)のとおり,「Aqua Angel」と「natural water」の欧文字を2段に表示したものであるところ,上記商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルウォーター」は,本件使用商標1の読みである「アクアエンジェル ナチュラルウォーター」の文字と「HB」の文字の有無に差異がある。
ところで,王子製薬のウェブサイトには「アクアエンジェルHBシリーズ」の見出しの下,ハイビスカスエキスを配合している商品を「HB(ハイビスカス)シリーズ」と称している。
そして,本件使用商品にも配合成分として「ハイビスカス花発酵液」があることを考慮すると,当該「HB」の文字は,単に商品の原材料を表す文字(記号)として認識されるものであるから,商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルウォーター」は,本件使用商標1が付された本件使用商品であると見て差し支えない。
また,同様に,商品名「アクアエンジェル HB ナチュラルエマルジョン」は,本件使用商標2が付された本件使用商品とみて差し支えない。
このことは,Aが2018年頃から「アクアエンジェル アクアプリ ナチュラルウォーター」及び「アクアエンジェル アクアプリ ナチュラルエマルション」を愛用している旨陳述しているところ,当該名称が本件使用商品のラベル(本件商標と反対側)に表示されていることからも認められるものである。
そして,本件使用商品が納品された2018年(平成30年)10月5日,同年12月11日,2019年(令和元年)8月19日は,いずれも要証期間内であり,納品場所は埼玉県川越市であるから,本件使用商標の使用時期は要証期間内であり,使用場所は日本国内であると認められる。
(3) 本件使用商品について
本件使用商品は「化粧水」及び「乳液」であり,これらは本件審判の請求に係る指定商品である第3類「化粧品」の範ちゅうに属する商品であるといえる。
(4) 本件使用商標について
本件使用商標1は,上記1(2)で述べたとおり,「Aqua Angel」と「natural water」の欧文字を2段に表示したものであり,本件使用商標2は「Aqua Angel」と「natural emulsion」の欧文字を2段に表したものである。
そして,本件使用商標1の構成中の「natural water」の文字及び本件使用商標2の構成中の「natural emulsion」の文字は,本件使用商品である化粧水及び乳液の品質を表示する文字と認められるから商品の識別標識としての機能を有するものとは認められない。そうすると,本件使用商標の構成中,上段の「Aqua Angel」の文字が商品の識別標識としての機能を有する要部であると認められる。
これに対し,本件商標は,上記第1で述べたとおり,上段に「アクアエンジェル」の片仮名と下段に「Aqua Angel」の欧文字を二段に横書きした構成からなるものであるところ,その構成態様によれば,上段に位置する片仮名は下段に位置する欧文字の読みを表したものと看取,理解される。
そうすると,本件使用商標の要部は,本件商標の下段の文字と同一のつづりであり,本件商標と同一の称呼を生じるものであるから,本件使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。
(5) 使用行為について
上記(1)~(3)で検討のとおり,本件の通常使用権者は,要証期間に日本国内において,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「化粧水」及び「乳液」の容器に,本件商標と社会通念上同一の商標を付して,Aに納品していたことが認められる。そして,本件の通常使用権者のかかる行為は,商標法第2条第3項第2号にいう,商品の包装に標章を付したものを譲渡又は引き渡しする行為に該当するものと認められる。
(6) 請求人の主張について
請求人は,本件使用商品に係る商品名がウェブサイトなどそれぞれの証拠の間で齟齬すること等を根拠として,被請求人の提出した証拠は偽造された可能性が高いといえるものであり,王子製薬が本件商標を要証期間内に使用していたと認めることはできない旨主張する。
しかし,上記のとおり,王子製薬は,要証期間内に,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「化粧水」及び「乳液」の容器に,本件商標と社会通念上同一の商標を付して譲渡又は引き渡しする行為を行ったものと認められるものであり,被請求人の提出した証拠に多少の齟齬や表記揺れ等があったとしても,これらが,上記判断を左右するものではない。
また,請求人は,甲11の1,甲11の2(乙3の1,乙3の2)によれば,Aについての取引先コードは「S-04」と特定できるところ,Aは陳述書(乙9)において,2018年頃から本件使用商品を愛用していると陳述するのに対し,乙3の1,乙3の2における取引先コード「S-04」についての売上実績を確認すると,2017年2月17日にはすでに発注があったことが確認でき,Aの購入開始時期について,陳述書に記載された時期とは少なくとも1年の齟齬があり,よって,Aの取引に関する証拠はいずれも不自然であり信憑性を欠く旨主張する。
しかし,乙3の1,乙3の2に記載の取引先コード「S-04」が,必ずしもAのみに付与されているということはできないし,仮に「S-04」という記号がAのみに付与されている取引先コードである,すなわち,王子製薬とAとの取引が遅くとも2017年2月17日から開始されていたといえるとしても,取引開始時期についての上述のような齟齬は,Aの記憶違いといえる程度のものであって,このような齟齬をもって,Aの取引に関する証拠が信憑性を欠くということにはならない。
したがって,請求人の主張は,採用できない。
3 まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件の通常使用権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していることを証明したというべきである。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定商品について,商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
審判に関する費用については,商標法第56条第1項で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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