商標拒絶査定不服審判
2020-016489
タイシャン
- 審判番号
- 2020-016489
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2018-150116
- 請求日
- 2020年12月01日
- 審決日
- 2022年10月25日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】行田 朋弘
- 審判長/審判官
- 審判長 小松 里美
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 青野 紀子
- 分類
- T18 .16 -Z (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項6号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第6号、商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2018-150116拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「TaiShan」の文字を標準文字で表してなり、第9類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成30年12月6日に登録出願されたものである。
本願は、令和元年10月9日付けで拒絶理由の通知がされ、同2年2月17日受付で意見書及び同月19日受付で手続補足書が提出されたが、同年2年8月24日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対して、令和2年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
なお、指定商品については、当審における令和4年3月22日受付の手続補正書により、第9類「電子計算機,サーバコンピュータ,コンピュータサーバ及びその部品,ネットワークサーバー,インターネットサーバー,イントラネットサーバー,ウェブホスティング用サーバー,プリントサーバ,ビデオサーバー,遠隔監視システム用サーバコンピュータ,通信用サーバー(コンピューターハードウェア),電子メールサーバー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電子計算機用プログラム,コンピュータネットワーク用サーバーコンピュータに使用する電子計算機用プログラム,サーバー利用アクセスの制御用及び管理用のコンピュータソフトウエア,ネットワークアクセスサーバの操作用コンピュータソフトウェア,オペレーティングシステム用プログラム,コンピュータハードウェア,ネットワークアクセスサーバ用コンピューターハードウェア」と補正されたものである。
2 原査定における拒絶の理由の要旨
原審においては、本願を拒絶すべき旨の理由として、以下の(1)及び(2)を通知した後、本願商標は、その(2)の拒絶の理由に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本願商標は、「TaiShan」を標準文字で表してなるところ、該文字は、1987年にユネスコ世界遺産委員会で世界遺産(複合遺産)に登録された中国山東省泰安の北方にある名山「泰山」を欧文字表記したものといえる。そして、我が国において「泰山」は、中国国内にある著名な観光地として知られており、また、一般に著名な観光地においては、その観光地の名称を土産物などの商品に付し、その商品の生産地又は販売地を表すものとして普通に使用されている実情にある。そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は「泰山及びその周辺地域で製造又は販売されている商品」であることを理解するにとどまるものというべきであるから、本願商標は、単に商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の本願指定商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本願商標は「TaiShan」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「TaiShan」の文字は、1987年にユネスコ世界遺産委員会で世界遺産(複合遺産)に登録された中国山東省泰安の北方にある名山「泰山」を欧文字表記したものといえ、「泰山」は、著名な観光地として知られているものである。ところで、世界遺産とは、その国及びその国民が誇るべき重要な文化遺産であるばかりか、人類共通の遺産でもあるというべきものである。そうすると、世界遺産の名称を含む本願商標を、一私人である出願人が自己の営利を目的として採択、登録し、それを独占的に使用することは、当該世界遺産を有する国の国民感情を害するばかりか、国際信義に反するものであり、社会公共の利益に反するおそれがあるといわなければならない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 当審における審尋
当審において、令和3年12月21日付け審尋により、請求人に対し、別掲1ないし別掲3のとおりの事実を提示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第3条第1項第6号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。
4 審尋に対する請求人の対応及び回答(要旨)
請求人は、上記3の審尋に対し、令和4年3月22日受付の回答書及び手続補正書を提出し、要旨、以下(1)及び(2)のとおりの意見を述べるとともに、本願の指定商品を上記1のとおりの商品に補正した。
(1)本願の指定商品から、「ダウンロード可能な電子書籍」を削除する手続補正書を提出したため、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとの拒絶理由は解消した。
(2)本願商標は、以下、アないしウの理由により、商標法第3条第1項第6号には該当しない。
ア 取引者、需要者は、本願商標「TaiShan」が、観光地「泰山」に対応する文字であることを知らないのが通常であり、仮に本願商標が「泰山」を表すものと認識されるとしても、「泰山」は、「ターザン」や実在の人物の姓又は名等の別の複数の意味を有するものであり、また、日本では、多数の事業者が「泰山」を含む名称の下で飲食、介護等の様々な業務を営んでいるという実情があるから、本願商標が地理的名称として認識されることはない。また、観光地「泰山」の日本国内における認知度は高くなく、「泰山」の文字からは「安泰な山」、すなわち、噴火活動が活発ではなく安心して近づける安定した山というような漠然としたイメージが認識されるというのが一般的である。
イ 本願商標が、商標法第3条第1項第6号の審査基準にいう、事業者の設立地・事業所の所在地、指定商品の仕向け地・一時保管地として認識されるとは考えにくく、又、山岳地帯の観光地「泰山」と本願指定商品「電子計算機」等の精密機器との間に何らかの関連性を見出すことはできず、本願商標「TaiShan」は、その指定商品との関係においては、「観光地」である「泰山」を認識させることはなく、商標法第3条第1項第6号には該当しない。
ウ 請求人は、中国において、本願商標と同一の綴りの「TAISHAN」について、商標登録を受けている。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号の趣旨について
商標法第3条第1項第6号が、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは、同項第1号ないし第5号に例示されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10270号判決、及び知財高裁平成24年(行ケ)第10323号判決参照。)。
(2)商標法第3条第1項第6号の該当性について
本願商標は、「TaiShan」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その態様は格別に特異なものではなく、普通に用いられる方法で表示するものである。
そして、別掲1のとおり、広辞苑をはじめとする各種辞書や、新聞記事による当該文字の記載及びインターネット掲載情報による当該文字の記載内容からすると、「TaiShan」の文字は、1987年にユネスコ世界遺産委員会で世界遺産(複合遺産)に登録された中国山東省泰安の北方にある名山「泰山」を欧文字で表記したものと容易に理解させるものといえる。
また、別掲2のとおり、我が国においては、旅行ガイド(電子書籍)等において、観光地の名称を欧文字で表記することが、一般に行われている実情がある。
さらに、別掲3のとおり、実際に、泰山を紹介する旅行ガイド等において「TaiShan」の欧文字が使用され、また、我が国で発行される旅行ガイド等において、観光地「泰山」が紹介されている事実もある。
そうすると、本願商標「TaiShan」は、需要者が特定の営業主体の商品であることを理解できる程度に特異な態様ではなく、世界遺産に登録された中国山東省の名山である「泰山」を欧文字で表記したものであると容易に理解させるものであって、本願商標を、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、自他商品の識別標識を表したものと認識するというよりも、単に上記「泰山」を欧文字で表示したにすぎないものと認識するにとどまり、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、自他商品の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであるというのが相当である。
したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、取引者、需要者は、本願商標「TaiShan」が、観光地「泰山」に対応する文字であることを知らないのが通常であり、仮に本願商標が「泰山」を表すものと認識されるとしても、「泰山」が、「ターザン」や実在の人物の姓又は名等の別の複数の意味を有するものであること、また、日本では、多数の事業者が「泰山」を含む名称の下で飲食、介護等の様々な業務を営んでいるという実情があるから、本願商標が地理的名称として認識されることはない旨主張する。
さらに、請求人は、観光地「泰山」の日本国内における認知度は高くない旨、また、「泰山」の文字からは「安泰な山」、すなわち、噴火活動が活発ではなく安心して近づける安定した山というような漠然としたイメージが認識されるというのが一般的であるとも主張する。
しかしながら、上記(2)のとおり、本願商標「TaiShan」は、「泰山」を欧文字で表記したものであると容易に理解させるものであり、「泰山」の文字は、観光地名として使用されている実情があり、また、漢字の「泰山」の地名を欧文字「TaiShan」で表記したことをもって、他の意味合いを認識させるというべき事情はないことからすると、本願商標に接する取引者、需要者は、本願商標から、上記(2)に記載の意味を有する「泰山」を認識、理解するというのが相当であるから、請求人の意見は採用できない。
イ 請求人は、本願商標が、商標法第3条第1項第6号の審査基準にいう、事業者の設立地・事業所の所在地、指定商品の仕向け地・一時保管地として認識されるとは考えにくく、又、山岳地帯の観光地「泰山」と本願指定商品「電子計算機」等の精密機器との間に何らかの関連性を見出すことはできず、本願商標「TaiShan」は、その指定商品との関係においては、「観光地」である「泰山」を認識させることはなく、商標法第3条第1項第6号には該当しない旨主張する。
しかしながら、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品の識別力を欠くために、商標として機能を果たし得ないものであることによるものと解されるものであり、商標法第3条第1項第6号に規定される「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できない商標」は、上記のような商標が該当するものである。
したがって、請求人の意見は採用することができない。
ウ 請求人は、中国において、本願商標と同一の綴りの「TAISHAN」について、請求人が商標登録を受けている旨主張しているが、登録の判断については、各国は属地主義を採用しているものであるから、外国の登録例があることをもって、我が国においても直ちに本願商標を登録すべきであるとはいえないことは明らかというべきである。
エ したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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