商標拒絶査定不服審判
2020-012767
- 審判番号
- 2020-012767
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2019-065429
- 請求日
- 2020年09月11日
- 審決日
- 2021年10月18日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社エンジニア
- 【請求人代理人】松井 宏記
- 【請求人代理人】宗助 智左子
- 【請求人代理人】田中 景子
- 【請求人代理人】鈴木 行大
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 松江
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 阿曾 裕樹
- 分類
- T18 .13 -Z (W08) / T18 .17 -Z (W08)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、特許法第150条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2019-65429拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第8類「プライヤー」を指定商品として、令和元年5月7日に立体商標として登録出願されたものである。
原審では、令和2年2月10日付けで拒絶理由の通知、同年7月22日付けで拒絶査定されたもので、これに対して同年9月11日付けで本件拒絶査定不服審判が請求されている。
2 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、その指定商品との関係から、プライヤーの一形状を立体的に表してなると認識させる。
ところで、本願の指定商品を取り扱う業界においては、商品の機能や美感を発揮させるため、又は需要者の注意を惹く目的等で、装飾的な種々の立体的形状や図形、色彩等が使用されている実情がある。
そうすると、本願商標は、その指定商品である「プライヤー」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の美感等を発揮するため、又は機能の向上のために採用したプライヤーの形状を表したものと認識するから、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 当審による通知(令和3年6月1日付け証拠調べ通知書)
本願商標が、その指定商品との関係において、商標法第3条第1項第3号に該当するか、また、同条第2項の要件を具備するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、プライヤーの形状(色彩)について、別掲2及び別掲3に掲げる事例を発見したため、同法第56条第1項で準用する特許法第150条の規定に基づき、その結果を請求人に通知し、意見を求めた。
4 請求人による回答
(1)本願商標の識別力を発揮するポイントは、「本願商標の緑色の持ち手、持ち手に刻み込まれたメカニカルな形状模様、把持部の形状および全体の形状」で、それぞれの構成部分単独ではなく、全体でまとまって識別力を発揮するものであり、また、その全体形状が、請求人の商品(ネジザウルスGT)に長年一貫して使用されて識別力を発揮する要部である。
(2)本願商標は、プライヤー全体の立体商標であるため、別掲2(緑色のハンドル部を備えるプライヤーの事例)は、本願商標の全体形状がありふれていることや識別力を否定する根拠となり得ない。なお、緑色のハンドルを有するプライヤーとして需要者が連想するのは、請求人の商品(ネジザウルスGT)である。
(3)別掲3(くわえ部の把持部に縦溝を施したプライヤーの事例)は、本願商標とは必ずしも同一の形状ではなく、本願商標の全体形状の識別力を覆すことにならない。なお、請求人は、把持部の形状について特許権を保有しており、その請求の範囲において独占して実施できる。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、緑色のハンドル部(表面に細かい溝による装飾、根本にバネがある。)及びくわえ部(把持部には連続した溝がある。)を組み合わせた、プライヤーの立体的形状を表してなるものである。
イ 本願商標の指定商品「プライヤー」は、「物をつかみ、また挟む工具。ねじ・ナットを締めたり板・棒を細工したりするのに用いる。」(「広辞苑 第7版」岩波書店)であるところ、同商品は、物をつかむためのくわえ部と、開閉を操作するためのハンドル部を備えている。
そして、プライヤーの形状(装飾)として、別掲2のとおり、緑色のハンドル部を備える商品が広く一般的に流通しており、その他に、ハンドル部の根本に作業を楽にするためのバネを備えるものや、くわえ部の把持部にしっかりつかむための溝などを設けるものなど、多様な形状(装飾)が採択されている実情がある。
ウ そうすると、本願商標は、プライヤーの形状として取引上普通に採択されている特徴を組み合わせてなるもので、その構成部分(緑色のハンドル部、表面の溝による装飾、根本のバネ、把持部の溝)は、客観的に見て、商品の美感若しくは機能(物をつかむ)に資する目的で採用されているもの、又はそれらを目的とする形状であると予測し得る範囲のものにすぎないから、構成全体として、単に商品(プライヤー)の形状を表してなると認識、理解されるにすぎない。
したがって、本願商標は、その指定商品について、商品の形状を普通に用いられる方法で表示してなるもので、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
請求人は、証拠(資料1から資料19(枝番号を含む。)。これらは以下、「甲1」から「甲19」と記載する。)を提出し、本願商標は、請求人による継続した使用により、自他商品の出所識別標識としての機能を獲得しており、商標法第3条第2項の要件を具備する旨を主張するため、以下検討する。
ア 証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、ペンチ等のプロ用精密工具を開発、販売するメーカーであって、2002年に初代「ネジザウルス」を発売、2009年に「ネジザウルスGT」(PZ-58)と称する「プライヤー」(以下「請求人商品」という。)を発売した(甲4)。
(イ)請求人商品は、緑色のハンドル部(表面に細かい溝による装飾があり、根本にバネがある。)及びくわえ部(把持部には連続した縦溝及び横溝がある。)を組み合わせた形状よりなるもので、その他に、「Neji-saurus」等の文字や図形(「N」と「S」の文字を組み合わせたようなモノグラム状の図形)、「ENGINEER」の文字等が表示されている(甲2)。そして、その商品紹介カタログでは、それら商品形状について「トラスネジにも喰いつく鋭い歯」、「バネ入りで連続作業もラクラク」などの機能的側面が解説されている。
(ウ)請求人商品は、ホームセンターやインターネット通信販売等を通じて販売されている(甲6の1~12)ところ、その販売の際の宣伝文句では、例えば「潰れたネジを外せる!!便利工具!」(甲6の1)、「潰れたネジ、錆びたネジのレスキューツール。」(甲6の10)など、商品の機能的側面が強調されている。
(エ)請求人商品の販売実績は、発売以降の約10年間(2009年~2018年)で約198万本あった(甲7の1)。
(オ)雑誌や書籍、インターネット媒体、テレビ番組等において、請求人の事業活動やその商品を取り上げる記事情報や報道が掲載、報道されている(甲8~甲11、甲17)。
ただし、上記記事や報道には、請求人商品の外観全体(本願商標の形状全体)やその形状や装飾の子細が確認できない又は確認困難なものが多数含まれており、その報道内容も、例えば「ヒットの法則/なぜ、あの商品は売れつづけるのか」(甲9の4)、「設備や機器のネジトラブルを解決する大ヒット工具の開発」(甲9の17)、「100万本のヒット どんなネジでも外せるペンチ」(甲11の3)、「この名前にしたら大ヒット!」(甲17)などのように、請求人の事業活動や商品開発、商品の機能、商品名に着目するものが中心で、請求人商品の外観全体の特徴について特段注目する内容ではない。また、商品形状に言及するとしても「通常のプライヤーにはない縦溝と、ねじ頭をしっかりつかむ『コマネチ角度』が大きな特徴だ」(甲9の6)、「ネジザウルスの最大の特徴は『つかむ』だけでなく、『回す』動作にも優れていること。先端部分に施された特殊な溝加工によって、絶対にはずせないと言われてきたネジをいとも簡単にはずせることができるようになったのだ。」(甲10の1)などのように、商品形状、特に把持部の溝の機能的側面を解説するものである。
イ(ア)上記認定事実によれば、本願商標に相当する形状を備える請求人商品は、2009年の発売以降、ホームセンター等の店舗やインターネット通信販売等において販売され、その販売実績も約10年間(2009年~2018年)で約198万本相当程度にのぼり、ヒット商品として雑誌やテレビ番組等でも取り上げられている実情はうかがえる。
(イ)しかしながら、請求人商品は、本願商標に相当する形状の特徴(緑色のハンドル部、表面の装飾、根本のバネ、把持部の溝)に加えて、商品名に相当する「Neji-saurus」等の文字も表示してなるものであって、本願商標に相当する形状のみを頼りに商品の出所を識別して取引されているものではない。
また、請求人商品の販売や広告、報道に際しては、商品の機能や商品名、商品形状の機能的側面(把持部の溝など)が強調されているから、その形状全体の特徴が自他商品の出所識別標識たる特徴として特段印象に残るものではない。
さらに、請求人商品の形状が備える特徴(緑色のハンドル部、把持部の縦溝など)にしても、別掲2及び別掲3のとおり、プライヤーの形状(装飾)としてありふれたものであって、請求人のみが独占使用する固有の特徴でもない。
そうすると、請求人商品の販売や広告、報道によって、その需要者の間において、商品名(ネジザウルス)や機能的側面の認知度や知名度が向上するとしても、本願商標に相当する請求人商品の形状が、請求人に係る出所識別標識として認識、把握され、その認知度や知名度が向上することまでは想定し難い。
(ウ)以上のとおり、本願商標は、請求人商品の販売実績や報道実績を考慮しても、その使用態様や紹介方法などに鑑みると、その形状について、我が国の需要者の間において、請求人に係る出所識別標識として認知され、周知となっているとは認められない。
したがって、本願商標は、使用をされた結果需要者が何人か(請求人)の業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものとはいえず、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標は、プライヤーの商標として我が国において著名であり、「本願商標の緑色の持ち手、持ち手に刻まれたメカニカルな形状模様、把持部の形状および全体の形状」は、それぞれ単独ではなく、まとまって識別力を発揮する旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、上記(1)ウのとおり、プライヤーの形状として取引上普通に採択されている特徴を組み合わせてなるもので、その構成部分は、客観的に見て、商品の美感若しくは機能(物をつかむ)に資する目的で採用されているもの、又はそれらを目的とする形状であると予測し得る範囲のものを組み合わせてなるにすぎないから、構成全体として、単に商品(プライヤー)の形状を表してなると認識、理解されるにすぎない。
そして、本願商標は、上記(2)イ(ウ)のとおり、請求人商品の販売実績や報道実績を考慮しても、その使用態様や紹介方法などに鑑みると、その形状について、我が国の需要者の間において、請求人に係る出所識別標識として認知され、周知となっているとは認められない。
したがって、本願商標は、その構成全体としても、自他商品の出所識別標識として認識、理解されるものではないというべきである。
イ 請求人は、ネジザウルスシリーズと関連して特許権及び意匠権を取得し、高い評価を受けており(甲3~甲5、甲13)、その把持部の形状に取得している特許権(甲16)の請求の範囲において独占実施できる旨を主張する。
しかしながら、請求人商品の形状(本願商標)について、特許権や意匠権が取得されていることは、その形状が商品の機能又は美感の向上を目的として採択、採用されていることを裏付けるとしても、それに接する需要者が、請求人固有の出所識別標識たる特徴であると認識、理解することを直接示すものではない。
なお、特許権や意匠権により、一定期間独占使用が認められている商品形状について、その保護期間経過後も半永久的に更新可能な商標権によって保護を図ることは適切ではなく、独占適応性を欠く。
ウ 請求人は、別掲3(くわえ部の把持部に縦溝を施したプライヤーの事例)は、本願商標とは必ずしも同一の形状ではなく、本願商標の全体形状の識別力を覆すことはない旨を主張する。
しかしながら、別掲3によれば、プライヤーのくわえ部の把持部は、その機能(物をつかむ)の向上と密接に関連して、様々な態様の溝が採択されている実情があるから、本願商標に係る把持部の溝も同様に、客観的に見て、商品の機能(物をつかむ)に資する目的で採用されているもの、またはそれを目的とする形状であると予測し得る範囲内のものということができる。
なお、プライヤーのくわえ部の把持部の溝は、閉じた状態では態様が確認できないから、自他商品の出所識別標識として機能すること自体が困難でもある。
エ 請求人は、ツイッターの投稿例(甲15、甲18)に示されているとおり、緑色のハンドルを有するプライヤーとして需要者が連想するのは、請求人の商品である旨を主張する。
しかしながら、個人の投稿例などの証拠は、当該個人の認識を示すにすぎず、我が国における需要者全般における認知度や知名度を客観的に示すものではないこと明らかである。また、それぞれの投稿の前提条件は多様であって、知っている商品名を憶測で述べている可能性を考慮すれば、別掲2及び別掲3のとおり、本願商標の形状の特徴を備える商品(プライヤー)が多数流通している中で、本願商標に相当する形状から特定の事業者(請求人)や商品(請求人商品)を想起、連想し、出所を識別できることを客観的に示すものでもない。
オ 以上のとおり、請求人の主張は、いずれも採択できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示してなるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、請求人による使用実績によっては、使用をされた結果需要者が何人か(請求人)の業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものとはいえず、同条第2項の要件を具備するとはいえないから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-012767