2020-011376
スライドファスナー用テープおよびスライドファスナー
- 審判番号
- 2020-011376
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-208264外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年08月17日
- 審決日
- 2021年07月13日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】YKK株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人栄光特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (A44B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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本件審判に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成30年11月5日(パリ優先権による優先権主張2017年12月1日(CN)中華人民共和国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1-9に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2012/042595号
2.特開2006-175129号公報(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2014/013616号(周知技術を示す文献)
4.実願昭53-040612号(実開昭54-145306号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
5.特開昭49-043745号公報(周知技術を示す文献)
第3 審判請求時の手続補正について
審判請求時の手続補正(以下、「本件補正」という。)によって、請求項1に「前記エレメント取付部(32)のみが、前記折り返し部(34)を有して、2層構造となっており、前記エレメント取り付け部(32)以外の残りの部分である前記テープ本体部(33)は、前記折り返し部(34)を有さず、1層構造となっている」なる発明特定事項(以下、「本件補正事項」という。)が追加された。
ここで、本件補正により請求項1に追加された本件補正事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0076】及び図1、3-4に記載されているから、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
また、本件補正は、補正前の請求項1における発明特定事項である、「エレメント取付部(32)」、「テープ本体部(33)」のそれぞれに限定を付加するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、以下「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-9に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができる(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する)ものである。
第4 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、令和2年8月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】ファスナーテープ(3)を構成する糸の経糸(1)の繊度を22dTex~28dTexとし、前記経糸(1)の織密度を205本/インチ~231本/インチとし、ファスナーテープ(3)を構成する糸の緯糸(2)の繊度を81dTex~87dTexとし、続きを表示(全37行)前記緯糸(2)の織密度を42本/インチ~48本/インチとし、かつ前記緯糸(2)は、33本~39本のモノフィラメントを束ねて形成されるマルチフィラメントであり、前記ファスナーテープ(3)は、エレメント取付部(32)と、前記エレメント取付部(32)以外の残りの部分であるテープ本体部(33)と、を有し、前記ファスナーテープ(3)の内側縁がファスナーテープ(3)の幅方向に折り返されて折り返し部(34)が形成され、前記折り返し部(34)およびファスナーテープ(3)上の折り返し部(34)と重なる部分がファスナーテープ(3)の前記エレメント取付部(32)を構成し、前記ファスナーストリンガー(4)は、エレメント縫製糸(9)により前記エレメント取付部(32)に縫合固定されており、ファスナーテープ(3)の幅方向に沿って、エレメント取付部(32)に縫い付けるエレメント縫製糸(9)がエレメント取付部(32)の両端の間に位置しており、前記エレメント取付部(32)のみが、前記折り返し部(34)を有して、2層構造となっており、前記エレメント取り付け部(32)以外の残りの部分である前記テープ本体部(33)は、前記折り返し部(34)を有さず、1層構造となっていることを特徴とするスライドファスナー用テープ。【請求項2】前記経糸(1)の繊度を25dTexとし、前記経糸(1)の織密度を210本/インチ~226本/インチとし、前記緯糸(2)の繊度を84dTexとし、前記緯糸(2)の織密度を43本/インチ~46本/インチとし、前記緯糸(2)は、36本のモノフィラメントを束ねて形成されるマルチフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用テープ。【請求項3】前記ファスナーテープ(3)の厚みが0.1~0.2mmであることを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用テープ。【請求項4】前記ファスナーテープ(3)が平織組織であることを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用テープ。【請求項5】前記ファスナーテープ(3)の光の透過率が15%~30%であることを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用テープ。【請求項6】前記ファスナーテープ(3)の外周にテープ縁部(31)を有し、前記テープ縁部(31)が超音波切断により得られることを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用テープ。【請求項7】前記ファスナーテープ(3)の材質が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、及びポリアミドのいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用テープ。【請求項8】2列のファスナーストリンガー(4)およびスライダー(5)を備えるスライドファスナーにおいて、一対の請求項1~7のいずれか1項に記載のファスナーテープ(3)をさらに備え、前記一対のファスナーテープ(3)の内側縁のそれぞれに、1列の前記ファスナーストリンガー(4)が設けられ、前記スライダー(5)が2列のファスナーストリンガー(4)上に挟持されて、2列のファスナーストリンガー(4)の噛合又は分離を実現することを特徴とするスライドファスナー。【請求項9】前記スライドファスナーは、ナイロンファスナーであり、前記ファスナーストリンガー(4)は、螺旋コイル状を呈し、かつエレメント縫製糸(9)により前記ファスナーテープ(3)に縫合固定されることを特徴とする請求項8に記載のスライドファスナー。」
第5 引用文献
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付与した。以下、同様。)
ア.「[0028] 図1-1及び図1-2は、本発明に係るファスナーテープ(100)の一実施形態に係るテープ主体部(B)及びエレメント取付部(A)の部分拡大図をそれぞれ示している。」
イ.「[0030] 具体的には、経糸を繊度30~100dTex、織密度100~220本/インチ(2.54cm)とし、緯糸を繊度60~180dTex、織密度30~80本/インチ(2.54cm)としている。糸はモノフィラメント及びマルチフィラメントの何れを使用しても良いが、一本の糸はモノフィラメントから構成されることもでき、2本以上のモノフィラメントを束ねてできたマルチフィラメントから構成されることもでき、更には複数のマルチフィラメントから構成されることもできる。例えば、5dTexのモノフィラメントを50本束ねたマルチフィラメント2本によって構成される糸は500dTexの1本の糸である。使用する織機にもよるが、緯糸は一般に2本のマルチフィラメントから構成される。」
ウ.「[0048] 図2は、コイル状エレメント(201)が縫合糸(202、203)によってエレメント取付部(A)に縫工されてできたファスナーストリンガー(200)の模式図を表している。図3は図2の矢印方向の断面図である。縫合糸(202、203)の種類に特に制限はないが、ファスナーテープの軽量化を図り、更には柔軟性を向上させる上では、160~350dTexの縫合糸を使用することが好ましい。このような細い糸を縫合糸に使用する場合には、エレメントの取付強度を補完するためにも複数のニードル糸を使用することが好ましく、例えば、複数のニードル糸に1本のルーパー糸を使用する二重環下飾り縫いが好ましい。図2及び図3の実施形態では、コイル状エレメント(201)が2本のニードル糸(202)と1本のルーパー糸(203)によってエレメント取付部(A)に縫着されている。」
エ.「[請求項1] エレメント取付部(A)及びテープ主体部(B)を有するスライドファスナー用織物製テープであって、テープ主体部(B)を構成する糸は経糸(101)を繊度30~100dTex、織密度100~220本/インチ(2.54cm)とし、緯糸(102)を繊度60~180dTex、織密度30~80本/インチ(2.54cm)とし、テープ主体部(B)の経糸(101)の全本数に対する平織組織を構成する経糸(101)の本数の割合が40%以上であるテープ。」
オ.
上記記載事項、図示内容を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
(引用発明1)
経糸の繊度を30dTex~100dTexとし、前記経糸の織密度を100本/インチ~220本/インチとし、緯糸の繊度を60dTex~180dTexとし、前記緯糸の織密度を30本/インチ~80本/インチとしており、
ファスナーテープ(100)を構成する糸の緯糸は、モノフィラメントを束ねて形成されるマルチフィラメントであり、
前記ファスナーテープ(100)は、エレメント取付部(A)と、前記エレメント取付部(A)以外の残りの部分であるテープ主体部(B)と、を有し、
前記ファスナーストリンガー(200)は、縫合糸(202、203)により前記エレメント取付部(A)に縫合固定されており、
ファスナーテープ(100)の幅方向に沿って、エレメント取付部(A)に縫い付ける縫合糸(202、203)がエレメント取付部(A)の両端の間に位置しており、
前記エレメント取付部(A)以外の残りの部分である前記テープ主体部(B)は、1層構造となっているスライドファスナー用織物製テープ。
(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。
カ.「【0007】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明において、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維とは、少なくとも二種のポリエステル成分で構成(具体的には、サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)されているものであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分の複合比(一般的に、質量%で70/30~30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)等は特に限定されない。又、総繊度は20~300dtexが好ましく、単糸繊度は0.1~20dtexが好ましいが、これに限定されるものではない。」
(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
キ.「[0008] 本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、表裏で異なる模様や色彩を独立して表出可能なファスナーストリンガーを提供することを課題の一つとする。また、本発明はそのようなファスナーストリンガーを用いたスライドファスナーを提供することを別の課題の一つとする。」
ク.「[0030] また、本実施形態においては、図7に示すように、一枚のテープ部材をエレメント取付部(201)の側縁で折り返すことにより表裏二枚のテープ部材(102、103)が形成されている。この方法のメリットとしては、一枚の広幅状のテープ部材を製造することのみで、表裏二枚のテープ部材(102、103)に形成できる点が挙げられる。」
上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている
(引用発明3)
表裏で異なる模様や色彩を独立して表出可能なファスナーストリンガーを提供するために、一枚の広幅状のテープ部材を、エレメント取付部の側縁で折り返し、表裏二枚のテープ部材を形成したこと。
第6 対比・判断
(1)本願発明1について
ア.本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ファスナーテープ(100)」が本願発明1の「ファスナーテープ(3)」に相当し、以下それぞれ、引用発明1の「緯糸」、「エレメント取付部(A)」、「テープ主体部(B)」、「ファスナーストリンガー(200)」、「縫合糸(202、203)」、「スライドファスナー用織物製テープ」が、本願発明1の「緯糸(2)」、「エレメント取付部(32)」、「テープ本体部(33)」、「ファスナーストリンガー(4)」、「エレメント縫製糸(9)」、「スライドファスナー用テープ」に相当する。
してみると、本願発明1と引用発明1とは、両者が
「ファスナーテープ(3)を構成する糸の緯糸(2)は、モノフィラメントを束ねて形成されるマルチフィラメントであり、前記ファスナーテープ(3)は、エレメント取付部(32)と、前記エレメント取付部(32)以外の残りの部分であるテープ本体部(33)と、を有し、前記ファスナーストリンガー(4)は、エレメント縫製糸(9)により前記エレメント取付部(32)に縫合固定されており、ファスナーテープ(3)の幅方向に沿って、エレメント取付部(32)に縫い付けるエレメント縫製糸(9)がエレメント取付部(32)の両端の間に位置しており、前記エレメント取り付け部(32)以外の残りの部分である前記テープ本体部(33)は、1層構造となっているスライドファスナー用テープ。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は、「経糸(1)の繊度を22dTex~28dTexとし、前記経糸(1)の織密度を205本/インチ~231本/インチとし」、
「緯糸(2)の繊度を81dTex~87dTexとし、前記緯糸(2)の織密度を42本/インチ~48本/インチとし、かつ前記緯糸(2)は、33本~39本のモノフィラメントを束ねて形成されるマルチフィラメント」であるのに対して、
引用発明1は、経糸の繊度を30dTex~100dTexとし、前記経糸の織密度を100本/インチ~220本/インチとし、緯糸の繊度を60dTex~180dTexとし、前記緯糸の織密度を30本/インチ~80本/インチとしており、前記緯糸は、何本のモノフィラメントを束ねてマルチフィラメントが形成されているのか不明である点。
(相違点2)
本願発明1は、「ファスナーテープ(3)の内側縁がファスナーテープ(3)の幅方向に折り返されて折り返し部(34)が形成され、前記折り返し部(34)およびファスナーテープ(3)上の折り返し部(34)と重なる部分がファスナーテープ(3)の前記エレメント取付部(32)を構成し」、「前記エレメント取付部(32)のみが、前記折り返し部(34)を有して、2層構造となっている」のに対して、引用発明1は、ファスナーテープが、折り返し部を有していない点。
イ.まず、上記相違点1について検討する。
本願発明1は、テープ3の軽量化を実現すると同時に、テープ3の幅方向の横引強度を大幅に増大するために、ファスナーテープ3を構成する糸において、緯糸2は常に経糸1よりも太く、かつ各々の緯糸2はいずれも33本~39本のモノフィラメントを束ねて形成されるマルチフィラメントとして設定したものである(段落0020を参照。)。しかし、引用発明1は、テープの軽量化と同時に、テープの幅方向の横引強度を追求するものではないから、経糸及び緯糸の繊度及び織密度、並びに、緯糸のモノフィラメントの本数を、本願発明1の範囲に調整する動機付けがない。
ウ.次に、上記相違点2について検討する。
引用発明3は、テープ部材のエレメント取付部が2層構造となっているだけでなく、テープ部材のエレメント取付部以外の部分も2層構造となっているものであり、ファスナーテープ全体が1層構造となっている引用発明1に対して、引用発明3を組み合わせる動機付けはない。
仮に、引用発明1に引用発明3を組み合わせることができたとしても、本願発明1における、「前記エレメント取付部(32)のみが、前記折り返し部(34)を有して、2層構造となっており、前記エレメント取り付け部(32)以外の残りの部分である前記テープ本体部(33)は、前記折り返し部(34)を有さず、1層構造となっている」との構成には至らない。
よって、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、3、及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
エ.本願発明1の、一層軽量化したファスナーテープが得られるとともに、ファスナーテープ自体の強度、特にファスナーテープの幅方向の横引強度を効果的に引き上げ、ファスナーテープの耐用性を大きく向上させ、ファスナーテープが薄さ、軽さおよび強度を兼備する、という効果は、経糸の繊度及び織密度と、緯糸の繊度、織密度及びモノフィラメントの本数とを、それぞれ最適な範囲に調整し、さらに、エレメント取付部のみに折り返し部を設けることにより達成されたものであって、引用発明1、3、及び引用文献2に記載された技術的事項からは、予測し得ないものである。
(2)本願発明2-9について
本願発明2-9も、相違点1-2に係る発明特定事項を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、3、及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-9は相違点1-2に係る発明特定事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-5に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-011376