2020-010780
食事用具
- 審判番号
- 2020-010780
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-255347外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年07月07日
- 審決日
- 2021年03月23日
- 公報発行日
- 2021年05月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】清川 美也子
- 分類
- P18 .121-WY (A47G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成29年12月19日に出願され、令和元年10月7日付け(発送日:同年10月15日)で拒絶理由が通知され、令和元年12月11日に意見書の提出及び手続補正がされ、令和2年3月31日付け(発送日:同年4月7日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和2年7月7日に拒絶査定不服審判が請求されたと同時に手続補正がされたものである。
第2.本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和2年7月7日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1ないし3という。」)は、次のとおりである。
【請求項1】
手で開閉可能な第1アーム及び第2アームを有する食事用具であって、
前記第1アームは先端部にスプーンを有し、
前記第2アームは先端部にフォークを有し、
前記第2アームの先端部は回転可能であり、前記第2アームの長さは前記第2アームの先端部を180度回転させることで短縮可能であり、
前記第1アームの先端部は回転不能であり、前記第1アームの長さは短縮不能である、食事用具。
【請求項2】
前記第2アームの前記先端部は、前記第2アームの開閉方向に垂直な方向に回転可能であることを特徴とする請求項1の食事用具。
【請求項3】
前記スプーン及び前記フォークは、凹状の形状を有し、
前記スプーン及び前記フォークは、前記凹状の形状が互いに向かい合うよう配置されている、請求項1又は2に記載の食事用具。
第3.原査定の拒絶理由
原査定の拒絶理由の概要は以下のとおりである。
本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.実公昭10-8167号公報
第4.引用文献、引用発明
1.原査定の拒絶理由に引用した実公昭10-8167号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「料理食用運搬具」(審決注:「運」は新字体で表記。)の考案に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、()内に新漢字、ひらがな等の現代表記を併記する。
(1)「圖面ノ略解 圖面ハ一部ヲ展開セル本案品ノ斜面圖ヲ示ス」
(図面の略解 図面は一部を展開せる本案品の斜面図を示す。)
(2)「實用新案ノ性質、作用及効果ノ要領 本案ハ衆人ノ集合セル料理席上ニ於テ碗物又ハ鍋物ヲ食スル際嘗メラレタル匙箸ヲ飲食物ニ當テサルヲ得サル弊ヲ除去セシメントスル考案ニ係リ圖示ス如ク把手部分ニ適宜飾ヲ配設シタル母體(1)ニ於テ稍中央ノ底部ニハ兩側共栓抜(2)ヲ彎弯設シ其各先端ニハ何レモ母體ヲ中ニ挟ミテ「ピンセツト」式箸(3)ヲ内側ニ位スル様一側ニハ「スプン」(4)ヲ一側ニハ「ホーク」(5)ヲ夫々飾釘(6)ニテ締着セシメテナルモノトス」
(実用新案の性質、作用及び効果の要領 本案は衆人の集合せる料理席上において碗物又は鍋物を食する際な[嘗]められたるさじ[匙]箸を飲食物に当てさるを得さる弊を除去せしめんとする考案に係り図面に示す如く把手部分に適宜飾を配設したる母体(1)においてやや中央の底部には両側共栓抜(2)を弯設しその各先端には何れも母体を中に挟みて「ピンセツト」式箸(3)を内側に位する様一側には「スプン」(4)を一側には「ホーク」(5)をそれぞれ飾釘(6)にて締着せしめてなるものとす)
(3)「上記ノ如キ本案ニアリテハ「ピンセツト」式箸(3)ヲ使用スル場合ハ兩側ニ於ケル「スプン」及「ホーク」ヲ夫々上方ニ疊接セシメ且「スプン」及「ホーク」ヲ使用スル場合ハ「ピンセツト」式箸ヲ上方ニ疊接セシムルモノトス」
(上記の如き本案にありては「ピンセツト」式箸(3)を使用する場合は両側における「スプン」及び「ホーク」をそれぞれ上方に畳接せしめ且つ「スプン」及び「ホーク」を使用する場合は「ピンセツト」式箸を上方に畳接せしむるものとす)
(4)「前記ノ如ク各部分ヲ夫々必要に應シ任意ニ開疊ナシテ使用セラレ尚栓抜ヲモ設ケタルヲ以テ料理席上ニ於テ各自自分ノ皿迄飲食物ヲ運搬スルニ好都合ナルモノナリトス」
(前記の如く各部分をそれぞれ必要に応じ任意に開畳なして使用せられなお栓抜をも設けたるをもって料理席上において各自自分の皿まで飲食物を運搬するに好都合なるものなりとす)
(5)「従來支那料理殊ニ朝鮮料理ニ於テハ匙及箸ヲ卓上ニ羅置スレトモ之カ直接口ニ出入スルニ便利ニシテ且習慣トナリテ汁物等ヲ食スル際ハ相混交シ甚タ不衛生的ナリシモ本案ハ之ヲ直接口ニ入ラサル様一機械トナラシメタルニ依リ衛生的ニシテ氣持ヨキ理想品ナリトス」
(従来支那料理ことに朝鮮料理においてはさじ[匙]及び箸を卓上に羅置すれともこれが直接口に出入するに便利にして且つ習慣となりて汁物等を食する際は相混交し甚だ不衛生的なりしも本案はこれを直接口に入らさる様一機械とならしめたるにより衛生的にして気持ちよき理想品なりとす)
(6)「」
前記(1)ないし(5)に摘記した事項及び前記(6)の図示内容から、母体(1)は、ピンセツト式箸(3)を使用するために、スプン(4)が締着される母体(1)の第1の側と、ホーク(5)が締着される母体(1)の第2の側とからなり、前記第1の側と第2の側とが手で開閉可能なものとなっていることが看取されることを踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。なお、以下、引用文献1に関する事項は現代表記としている。
《引用発明》
手で開閉可能な第1の側と第2の側とからなる母体(1)を有する料理食用運搬具であって、
前記母体(1)の第1の側の先端には、母体(1)を中に挟んでピンセツト式箸(3)が内側に位置する様に、スプン(4)を飾釘(6)にて、前記ピンセツト式箸(3)及びスプン(4)のそれぞれが任意に開畳なして使用せられる様に締着せしめ、
前記母体(1)の第2の側の先端には、母体(1)を中に挟んでピンセツト式箸(3)が内側に位置する様に、ホーク(5)を飾釘(6)にて、前記ピンセツト式箸(3)及びホーク(5)のそれぞれが任意に開畳なして使用せられる様に締着せしめてなる、料理食用運搬具。
2.原査定において、なお書きで示された請求項3に係る発明の拒絶理由に引用した登録実用新案第3036880号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「キッチン・サーバー」の考案に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】弾力性ある硬質合成樹脂により、ほぼU字形薄板状に成型して作られた把持具1の掴み持ち部2内側面に、その長手方向に向けて、食品挟み取り用のアタッチメントa~eの柄部8を、着脱自在に取付け得るような取付け部4、5を形成した、キッチン・サーバー用把持具。」
(2)「【図1】」
前記(1)に摘記した事項及び前記(2)の図示内容から、アタッチメントa(スプーン)及びアタッチメントb(フォーク)は、凹状の形状を有し、前記凹状の形状が互いに向かい合うよう配置されることが看取されることを踏まえると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2事項」という。)が記載されているといえる。
《引用文献2事項》
弾力性ある硬質合成樹脂により、ほぼU字形薄板状に成型して作られた把持具1の掴み持ち部2内側面に、その長手方向に向けて、食品挟み取り用のアタッチメントa(スプーン)及びアタッチメントb(フォーク)の柄部8を、着脱自在に取付け得るような取付け部4、5を形成した、キッチン・サーバー用把持具において、前記アタッチメントa(スプーン)及びアタッチメントb(フォーク)は、凹状の形状を有し、前記凹状の形状が互いに向かい合うよう配置されること。
第5.対比、判断
1.本願発明1について
(1)対比
引用発明の「母体(1)」の「第1の側」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願発明1の「第1アーム」に相当し、同様に、「母体(1)」の「第2の側」は「第2アーム」に、「スプン(4)」は「スプーン」に、「ホーク(5)」は「フォーク」に、相当し、引用発明の「料理食用運搬具」と本願発明1の「食事用具」とは、「食事の際に用いる道具」という限りにおいて一致する。
そして、引用発明の「前記母体(1)の第1の側の先端には、母体(1)を中に挟んでピンセツト式箸(3)が内側に位置する様に、スプン(4)を飾釘(6)にて締着せしめ、
前記母体(1)の第2の側の先端には、母体(1)を中に挟んでピンセツト式箸(3)が内側に位置する様に、ホーク(5)を飾釘(6)にて締着せしめてなる」と、
本願発明1の「前記第1アームは先端部にスプーンを有し、
前記第2アームは先端部にフォークを有し、
前記第2アームの先端部は回転可能であり、前記第2アームの長さは前記第2アームの先端部を180度回転させることで短縮可能であり、
前記第1アームの先端部は回転不能であり、前記第1アームの長さは短縮不能である」とは、
「前記第1アームは先端部にスプーンを有し、前記第2アームは先端部にフォークを有し」という限りにおいて一致する。
以上を踏まえると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
《一致点》
手で開閉可能な第1アーム及び第2アームを有する、食事の際に用いる道具であって、
前記第1アームは先端部にスプーンを有し、
前記第2アームは先端部にフォークを有する、食事の際に用いる道具。
《相違点》
本願発明1は、「食事の際に用いる道具」が「食事用具」であって、「第2アームの先端部は回転可能であり、前記第2アームの長さは前記第2アームの先端部を180度回転させることで短縮可能であり」、「第1アームの先端部は回転不能であり、前記第1アームの長さは短縮不能である」のに対し、引用発明は、「食事の際に用いる道具」が「料理食用運搬具」であって、「母体(1)の第1の側の先端には、母体(1)を中に挟んでピンセツト式箸(3)が内側に位置する様に、スプン(4)を飾釘(6)にて、前記ピンセツト式箸(3)及びスプン(4)のそれぞれが任意に開畳なして使用せられる様に締着せしめ」、「母体(1)の第2の側の先端には、母体(1)を中に挟んでピンセツト式箸(3)が内側に位置する様に、ホーク(5)を飾釘(6)にて、前記ピンセツト式箸(3)及びホーク(5)のそれぞれが任意に開畳なして使用せられる様に締着せしめてなる」ものである点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
まず、引用発明は、「『ピンセツト』式箸(3)を使用する場合は両側における『スプン』及び『ホーク』をそれぞれ上方に畳接せしめ且つ『スプン』及び『ホーク』を使用する場合は『ピンセツト』式箸を上方に畳接せしむるものとす」(上記第4.1.(3)を参照。)るために、「母体(1)の第1の側の先端には、母体(1)を中に挟んでピンセツト式箸(3)が内側に位置する様に、スプン(4)を飾釘(6)にて、前記ピンセツト式箸(3)及びスプン(4)のそれぞれが任意に開畳なして使用せられる様に締着せしめ」、「母体(1)の第2の側の先端には、母体(1)を中に挟んでピンセツト式箸(3)が内側に位置する様に、ホーク(5)を飾釘(6)にて、前記ピンセツト式箸(3)及びホーク(5)のそれぞれが任意に開畳なして使用せられる様に締着せしめてなる」ものである。
ゆえに、引用発明において、「ピンセツト式箸(3)」を省き、さらに、「母体(1)の第1の側の先端」の「スプン(4)」を固定して、任意に開畳、すなわち、開いたり畳んだりして使用することを不可能とすることは、想定されておらず、当業者がそのような変更を容易になし得たとはいえない。
また、引用発明の「料理食用運搬具」は、「衆人の集合せる料理席上において碗物又は鍋物を食する際なめられたるさじ[匙]箸を飲食物に当てさるを得さる弊を除去せしめんとする」(上記第4.1.(2)を参照。)ためのものであって、「料理席上において各自自分の皿まで飲食物を運搬するに好都合なるもの」(上記第4.1.(4)を参照。)で、「従来支那料理ことに朝鮮料理においてはさじ[匙]及び箸を卓上に羅置すれともこれが直接口に出入するに便利にして且つ習慣となりて汁物等を食する際は相混交し甚だ不衛生的なりしも本案はこれを直接口に入らさる様一機械とならしめたるにより衛生的にして気持ちよき理想品なりとす」(上記第4.1.(5)を参照。)るものであり、料理を直接口に入れないように当該料理を自分の皿まで飲食物を運搬するための道具であるが、本願発明の「食事用具」は、本願明細書の段落【0012】に、スプーンでスープ等の液状の食材を掬って食べることができ、肉などの食材は、フォークで突き刺して食べることができ、サラダや麺などの食材は、アームを閉じることで、スプーンとフォークの先端で挟んで食べることができる旨の記載があることからも明らかなように、食材を直接口に入れるための道具である。
ゆえに、料理を直接口に入れないように当該料理を自分の皿まで飲食物を運搬するための道具である、引用発明の「料理食用運搬具」を、食材を直接口に入れるための道具とすることは、想定されておらず、当業者がそのような変更を容易になし得たとはいえない。
さらに、引用文献2事項は、上記第4.2.に示したとおりのものであるところ、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
そして、本願発明1は、上記相違点に係る発明特定事項を備えることにより、本願明細書の段落【0012】に記載された「多種多様な食材を片手で容易に食することができる。これにより、老人や障害者が介助無しで容易に食事をすることが可能になる。介助を受ける側は食べたい物を食べたい順番で食べることができるため、ストレスが解消される。自分で手を動かして食事をするので、リハビリ・機能回復・自立心向上等の効果も期待できる。」という格別な作用効果を奏するものである。
(3)小括
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2.本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものであるから、上記本願発明1についての判断と同様の理由により、引用発明及び引用文献2事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし3は、引用発明及び引用文献2事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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