2020-009826
積層セラミックコンデンサ
- 審判番号
- 2020-009826
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-099537外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年07月14日
- 審決日
- 2021年02月24日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月18日(優先権主張 平成27年7月14日 日本国(JP))の出願であって、令和1年10月4日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年12月3日に手続補正がなされたが、令和2年4月2日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して、同年7月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月2日付けで拒絶査定)の概要は以下のとおりである。
この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の引用文献2に記載された発明、及び引用文献3ないし5に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開平7-201636号公報
2.特開2014-203862号公報
3.特開2012-9813号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平11-260146号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2009-170706号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和1年12月3日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。
「【請求項1】内部電極と誘電体層が積層された積層体と、前記内部電極と接続するように前記積層体の表面に形成された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、前記外部電極は、前記積層体の主面に形成され、Niを含む第1の外部電極層と、前記積層体の前記内部電極が引き出された端面と、前記第1の外部電極層の前記端面側の先端を含む領域とを覆い、前記第1の外部電極層と接合するとともに、前記内部電極と導通するように形成された、ガラス成分とCuとを含む第2の外部電極層と続きを表示(全12行)を備え、前記第1の外部電極層の、前記積層体の前記主面上に位置する領域であって、前記主面と前記端面によって形成される稜線付近の領域において、前記第1の外部電極層と前記第2の外部電極層とが接合しており、前記内部電極の引き出し方向について見た場合における前記第1の外部電極層の、前記積層体の前記端面側の先端とは逆側の先端は、前記第2の外部電極層に覆われることなく露出しているとともに、前記第1の外部電極層に含まれるNiが、前記稜線付近において、前記第2の外部電極層に拡散し、前記第2の外部電極層に含まれるCuと固溶しており、前記第2の外部電極層が、前記第1の外部電極層を覆う部分の、前記内部電極の引き出し方向の寸法は、前記第1の外部電極層の前記内部電極の引き出し方向の寸法の3%以上50%以下であることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。【請求項2】前記Niの、前記第2の外部電極層への拡散距離は、前記第2の外部電極層が前記第1の外部電極層を覆う部分における前記第2の外部電極層の厚みの10%以上100%以下であることを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、「積層電子部品」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【請求項2】 セラミック層と導体層とを積層し、該導体層により形成される内部電極に導通するよう積層体の端部に外部電極を形成した積層電子部品において、外部電極が表面側のメッキ層を除いて少なくとも2層構造からなり、外部電極の最も下側の第一の導体層に、積層体を形成するセラミックと同種のセラミック材料が含まれていることを特徴とする積層電子部品。【請求項3】 前記請求項1または2において、外部電極の最も下側の第一の導体層は、積層体の端面を除く端部に形成されていることを特徴とする積層電子部品。【請求項4】 前記請求項1~3の何れかにおいて、外部電極の最も下側の第一の導体層より外側にある第二の導体層が銅またはその合金からなることを特徴とする積層電子部品。」
(2)「【0014】また、外部電極の最も下側の第一の導体層に、積層体を形成するセラミックと同種のセラミック材料を含ませた場合も、外部電極の第一の導体層に含まれたセラミック材料が外部電極とセラミック層との界面からセラミック層の表面と反応するため、外部電極と積層体との高い密着強度が得られる。さらに、第二の導体層の有する金属固有の特有の延性により、ねばりのある外部電極が形成される。このため、やはり機械的或は熱的な応力により、外部電極の積層体からの剥離やクラック等が生じにくくなる。」
(3)「【0017】【実施例】次ぎに、本発明の実施例について、積層セラミックコンデンサを製造する場合を例に、具体的に説明する。・・・・(中略)【0018】こうして得られた積層体を内部電極が端面に露出するようにしてチップ状に切断し、図3で示すような未焼結の積層体6が得られる。次に、第4図に示すように、この積層体6の端面を除く端部、すなわち上下面と両側面の両端寄りの部分に導電ペースト29を塗布する。この導電ペースト29は、前記セラミックグリーンシート21、27、28に含まれるのとほぼ同じセラミック粉末が添加されている。次に、この積層体を焼成することにより、第一の導体層5aを有する焼成済みの積層体が得られる。さらに、この第一の導体層5aの上に、延性の高い例えば銅やその合金粉末を含む導電ペーストを塗布し、焼き付け、第二の導体層5bを形成する。この第一の導体層5bを形成するための導電ペーストは、その縁が前記第一の導体層5aの縁よりやや引っ込むように塗布し、焼付ける。これにより、図1に示すような積層セラミックコンデンサが完成する。」
(4)「【0020】図1(a)のA部を模式的に示したのが、図1(b)である。前記の焼成時に、セラミック積層体7の最も外側のセラミック層9に含まれる金属粉末1が外部電極5の第一の導体層5aと反応すると共に、同第一の導体層5aに含まれるセラミック粉末がセラミック積層体7の特に最も外側のセラミック層9と反応する。これにより、外部電極5とセラミック層9との界面で導体及びセラミック組織が半ば一体化し、高い密着強度が得られる。他方、外側の第二の導体層5bには、セラミック粉末が含まれておらず、その金属特有の延性により、粘りのある外部電極5が構成できる。さらに、第一の導体層5aは、積層体7の端面に形成されていないので、図2に示すように、積層体7の端面において、セラミック粉末が含まれていない第二の導体層5bが内部電極8aに接続される。これにより、外部電極5と内部電極8a、8bとの接続抵抗を低く抑えることができる。これは、図示してない他方の端面側でも同様である。」
(5)「【0021】次に、本発明の具体例について説明する。(実施例1)・・・・(中略)【0023】次に、Ni粉末に対して25/75の割合で前記セラミック粉末を添加した導電ペーストを用意し、この導電ペーストを前記セラミック積層体の端面を除く端部、すなわち上下両面と両側面に5~8μmの厚みで塗布し、乾燥した。その後、この導電ペーストを塗布した積層体を、H2が2%含まれたN2ガス雰囲気中で、1180℃の温度で焼成した。これにより第一の導体層を有する焼成済みのセラミック積層体を得た。【0024】次に、導体成分として粒径約1μmの銅粉末を含む導電ペーストを積層体の端面及び前記第一の導体層の上に塗布し、乾燥した。その後、この導電ペーストをN2ガス雰囲気中で、920℃の温度で焼き付けた。さらに、この上にNiメッキと半田メッキを各々1.5~3μmの厚さに施し、寸法約3.2×1.6×1.1mmの積層セラミックコンデンサを得た。」
上記(1)ないし(5)から以下のことがいえる。
・上記引用文献1に記載の「積層電子部品」は、上記(1)の【請求項2】の記載事項、及び図1、図2によれば、セラミック層と導体層とを積層し、該導体層により形成される内部電極8a,8bに導通するよう積層体7の端部に外部電極5を形成した積層電子部品であって、外部電極5が表面側のメッキ層を除いて第一の導体層5aと第二の導体層5bの2層構造からなり、外部電極の最も下側の第一の導体層5aに、積層体7を形成するセラミックと同種のセラミック材料が含まれてなる積層電子部品に関するものである。
・上記(3)、(5)の記載事項によれば、積層電子部品は、実施例では積層セラミックコンデンサである。
・上記(1)の【請求項3】、(2)~(5)の記載事項、及び図1、図2によれば、第一の導体層5aは、Ni粉末とセラミック粉末を添加した導電ペーストを、積層体7の端面を除く端部、すなわち上下両面と両側面に塗布して焼成することにより得られるものである。
・上記(1)の【請求項4】、(2)~(5)の記載事項、及び図1、図2によれば、第二の導体層5bは、延性の高いCu粉末を含みセラミック成分を含まない導電ペーストを積層体7の端面及び第一の導体層5aの上にその縁が第一の導体層5aの縁よりやや引っ込むように塗布して焼き付けることにより得られるものであり、第二の導体層5bの有する金属(Cu)固有の特有の延性により、ねばりのある外部電極5が形成され、機械的或いは熱的な応力により、外部電極の積層体からの剥離やクラック等が生じにくくしてなるものである。
以上のことから、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「セラミック層と導体層とを積層し、該導体層により形成される内部電極に導通するよう積層体の端部に外部電極を形成した積層セラミックコンデンサであって、前記外部電極は、表面側のメッキ層を除いて第一の導体層と第二の導体層の2層構造からなり、前記第一の導体層は、Ni粉末とセラミック粉末を添加した導電ペースト、前記積層体の端面を除く端部、すなわち上下両面と両側面に塗布して焼成してなるものであり、前記第二の導体層は、延性の高いCu粉末を含みセラミック成分を含まない導電ペーストを前記積層体の端面及び前記第一の導体層の上にその縁が前記第一の導体層の縁よりやや引っ込むように塗布して焼き付けてなり、当該第二の導体層の有する金属(Cu)固有の特有の延性により、ねばりのある前記外部電極が形成され、機械的或いは熱的な応力により、前記外部電極の前記積層体からの剥離やクラック等を生じにくくしてなる、積層セラミックコンデンサ。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、「セラミック電子部品」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【0010】以下、本発明の一実施の形態におけるセラミック電子部品について、具体的にチップサーミスタを例として、図面を参照しながら説明する。【0011】図1は本発明の一実施の形態におけるチップサーミスタの断面図、図2は同斜視図であって、Mn、Ni、Co等の酸化物を主成分とするセラミックボディ11の内層にPdからなり、お互いに対向するように内部電極12が設けられている。セラミックボディ11の両端部には内部電極12に電気的に接続された外部電極13が設けられている。」
(2)「【0015】以上の構成を実現するために、外部電極13は、セラミックボディ11の両端面11bに設けられた端面電極15と、このチップサーミスタの実装面となる面11aのセラミックボディ11の両端面11bに沿って設けられた下面電極14と、端面電極15と下面電極14とを覆うように設けられためっき電極層16とにより構成することが望ましい。・・・・(中 略)・・・・【0017】セラミックボディ11の両端面11bには端面電極15が設けられており、それぞれの内部電極12に電気的に接続されている。このチップサーミスタの実装面となるセラミックボディ11の面11aの両端面11bに沿って下面電極14が設けられており、この下面電極14はそれぞれの端面電極15に電気的に接続されている。下面電極14は内部電極12と同じ材料を用い、セラミックボディ11と内部電極12を同時焼成するときに、同時に焼成して形成している。さらに端面電極15および下面電極14の上にNiおよびSnのめっき電極層16が形成されており、これにより外部電極13を構成している。また実装面側の外部電極13の外電長さ(L1)は約0.16mmとなっており、図2のように、セラミックボディ11の側面11cには、端面電極の一部が回りこんだものを除いて実質的に外部電極が形成されていない。」
(3)「【0023】なお上記実施の形態では、下面電極14をセラミックボディ11の実装面となる面11aのみに設けたが、図3のように実装面とは反対側の面にも同じ大きさの下面電極14を設けても良い。このようにすることにより、外部電極13の厚さはやや厚くなるが、上下面を区別する必要がなくなるため、製造工程あるいは実装時に工程を簡略化することができる。 」
(4)「【0024】次に本発明のチップサーミスタの製造方法について説明する。・・・・(中 略)・・・・【0026】続きを表示(全11行)次にこのセラミックスラリーを用いてドクターブレード法等により所定厚みのグリーンシートを得る。さらにスクリーン印刷法を用いてスクリーンのメッシュ開口部にPdの内部電極ペーストを充填しグリーンシートに内部電極ペーストを塗布して内部電極12となる導電体層を形成する。【0027】次に図4(a)のように、内部電極12となる導電体層を形成したグリーンシート17aを所定枚数積層し、その上下に導電体層を形成していないグリーンシート17bを所定枚数重ね、さらにその上下に内部電極を形成するための内部電極ペーストと同じペーストで、下面電極14となる電極パターンを形成したグリーンシート17cを重ね、これを圧着して積層ブロックを形成する。【0028】次に図4(a)の切断線に沿って積層ブロックを切断しチップ化する。さらにチップの両端面11bに内部電極12の端部を露出させた後、脱バインダー、1200℃~1300℃で焼成を順次行って図4(b)のようなセラミック焼結体のセラミックボディ11を得る。続いてセラミックボディ11の両端面11bに、下面電極14に電気的に接続される程度のCu粉体とガラスフリットを含有した導電ペーストを塗布して800℃~900℃で焼付けを行うことにより端面電極15を形成し、図4(c)のようになる。さらにこの端面電極15および下面電極14に、Ni約1.5μm、Sn約2.5μmのめっき電極層16を形成することにより外部電極13を構成し、図4(d)のような長さ約0.4mm、幅約0.2mm、高さ約0.2mmのチップサーミスタを得る。【0029】以上のように外部電極13を形成することにより、外部電極13は端面と上下面にのみ形成し、側面には形成しないようにすることができる(但し端面に塗布したときに側面側の端に滲んだものは除く)。また上下面に形成した下面電極14は印刷によって形成しているため外電長さを一定にすることができる。また端面電極15も下面電極14と電気的に接続される程度に塗布するため、塗布量を少なくすることができ、外形への影響を最小限にすることができる。」
上記(1)ないし(4)から以下のことがいえる。
・上記引用文献2に記載の「セラミック電子部品」は、上記(1)の記載事項、及び図3によれば、具体的にはチップサーミスタであり、セラミックボディ11の内層にPdからなり、お互いに対向するように設けられた複数の内部電極12と、セラミックボディ11の両端部に設けられ、内部電極12に電気的に接続された外部電極13とを有する。
・セラミックボディ11は、上記(4)の記載事項によれば、内部電極12となる導電体層を形成したグリーンシート17aを所定枚数積層し、その上下に導電体層を形成していないグリーンシート17bを所定枚数重ねてこれを圧着して形成した積層ブロックを焼成して得られるものである。
・上記(2)、(3)の記載事項、及び図3によれば、外部電極13は、セラミックボディ11の両端面11bに設けられ、それぞれの内部電極12に電気的に接続された端面電極15と、このチップサーミスタの実装面となる面11aと実装面とは反対側の面のセラミックボディ11の両端面11bに沿って設けられ、それぞれの端面電極15に電気的に接続された下面電極14とを含むものである。
また、上記(4)の記載事項によれば、下面電極14は内部電極12と同じ材料、すなわちPdからなり、端面電極15はCu粉体とガラスフリットを含有した導電ペーストをセラミックボディ11の端面11bに塗布して焼付けてなるものである。
・上記(2)の段落【0017】の「セラミックボディ11の側面11cには、端面電極の一部が回りこんだものを除いて実質的に外部電極が形成されていない。」なる記載、上記(4)の段落【0029】の「外部電極13は端面と上下面にのみ形成し、側面には形成しないようにすることができる(但し端面に塗布したときに側面側の端に滲んだものは除く)。」なる記載、及び図3からみて、外部電極13のうちの端面電極15は、その一部が滲んで回りこんだものがセラミックボディの主面上において下面電極14の端面側の先端を含む領域を覆ってなるものであると解することができる。
以上のことから、特に図3に示されるものに着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「内部電極となるPdからなる導電体層を形成したグリーンシートを所定枚数積層し、その上下に導電体層を形成していないグリーンシート17bを所定枚数重ねてこれを圧着して形成した積層ブロックを焼成して得られたセラミックボディの内層に、お互いに対向するように設けられた複数の前記内部電極と、前記内部電極に電気的に接続された外部電極とを有するチップサーミスタであって、前記外部電極は、前記セラミックボディの両端面に設けられ、それぞれの前記内部電極に電気的に接続された端面電極と、当該チップサーミスタの実装面となる面と実装面とは反対側の面の前記セラミックボディの両端面に沿って設けられ、それぞれの前記端面電極に電気的に接続された下面電極とを含み、前記下面電極は、内部電極12と同じ材料であるPdからなり、前記端面電極は、Cu粉体とガラスフリットを含有した導電ペーストを前記セラミックボディの端面に塗布して焼付けてなるものであり、塗布したときにその一部が滲んで回りこんで前記セラミックボディの主面上において前記下面電極の端面側の先端を含む領域を覆ってなる、チップサーミスタ。」
第5 対比・判断
1.引用文献1を主引例とする場合について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア.引用発明1における「セラミック層」、導体層により形成される「内部電極」は、それぞれ本願発明1でいう「誘電体層」、「内部電極」に相当し、当該セラミック層と導体層(内部電極)とを積層してなる「積層体」が、本願発明1でいう「積層体」に相当する。また、引用発明1における内部電極に導通するよう積層体の端部に形成した「外部電極」は、本願発明1でいう「外部電極」に相当する。そして、引用発明1における「積層セラミックコンデンサ」は、本願発明1でいう「積層セラミックコンデンサ」に相当するものである。
よって、本願発明1と引用発明1とは、「内部電極と誘電体層が積層された積層体と、前記内部電極と接続するように前記積層体の表面に形成された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサ」である点で一致する。
イ.引用発明1における外部電極は2層構造からなるものであり、そのうちの「第一の導体層」は、導電ペーストを積層体の上下両面、すなわち両主面と両側面に塗布することから、少なくとも積層体の主面に形成されてなるものであり、本願発明1でいう「第1の外部電極層」に相当するものである。また、「第一の導体層」は、Ni粉末とセラミック粉末を添加した導電ペーストを焼成してなるものであるから、Niを含むものである。
よって、本願発明1と引用発明1とは、「前記外部電極は、前記積層体の主面に形成され、Niを含む第1の外部電極層と」を備えるものである点で一致する。
ウ.引用発明1における外部電極のうちの「第二の導体層」は、導電ペーストを積層体の端面及び第一の導体層の上にその縁が当該第一の導体層の縁よりやや引っ込むように塗布して焼き付けてなるものであることから、内部電極が引き出された端面と、第一の導体層の端面側の先端を含む領域とを覆い、内部電極と導通するとともに、積層体の主面上に位置する領域であって、当該主面と端面によって形成される稜線付近の領域において第一の導体層と接合するものであるといえ、本願発明1でいう「第2の外部電極層」に対応するものである。また、「第二の導体層」は、延性の高いCu粉末を含みセラミック成分を含まない導電ペーストを焼き付けてなるものであるから、Cuを含むものである。さらに、「第二の導体層」は、かかる導電ペーストをNiを含む第一の導体層の上にその縁が当該第一の導体層の縁よりやや引っ込むように塗布して焼き付けてなるものであることから、内部電極の引き出し方向について見た場合における第一の導体層の、積層体の端面側の先端とは逆側の先端は、当該第二の導体層に覆われることなく露出していることは明らかであるとともに、焼き付け時に、第一の導体層に含まれるNiが第二の導体層との接合領域において第二の導体層に拡散し、第二の導体層に含まれるCuと多少なりとも固溶していると解される。
よって、本願発明1と引用発明1とは、「前記積層体の前記内部電極が引き出された端面と、前記第1の外部電極層の前記端面側の先端を含む領域とを覆い、前記第1の外部電極層と接合するとともに、前記内部電極と導通するように形成された、Cuを含む第2の外部電極層と」を備えるものである点で共通し、さらに、「前記第1の外部電極層の、前記積層体の前記主面上に位置する領域であって、前記主面と前記端面によって形成される稜線付近の領域において、前記第1の外部電極層と前記第2の外部電極層とが接合しており、前記内部電極の引き出し方向について見た場合における前記第1の外部電極層の、前記積層体の前記端面側の先端とは逆側の先端は、前記第2の外部電極層に覆われることなく露出しているとともに、前記第1の外部電極層に含まれるNiが、前記稜線付近において、前記第2の外部電極層に拡散し、前記第2の外部電極層に含まれるCuと固溶している」点で一致するということができる。
ただし、第2の外部電極層について、本願発明1では、Cuに加えて「ガラス成分」を含む旨特定するのに対し、引用発明1では、そのような特定を有していない点で相違する。
エ.そして、第2の外部電極層が、第1の外部電極層を覆う部分の、内部電極の引き出し方向の寸法について、本願発明1では、第1の外部電極層の内部電極の引き出し方向の寸法の「3%以上50%以下」である旨特定するのに対し、引用発明1では、その縁が第一の導体層の縁よりやや引っ込むように設けられてなるものである点で相違している。
上記ア.ないしエ.によれば、本願発明1と引用発明1とは、
「内部電極と誘電体層が積層された積層体と、前記内部電極と接続するように前記積層体の表面に形成された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、前記外部電極は、前記積層体の主面に形成され、Niを含む第1の外部電極層と、前記積層体の前記内部電極が引き出された端面と、前記第1の外部電極層の前記端面側の先端を含む領域とを覆い、前記第1の外部電極層と接合するとともに、前記内部電極と導通するように形成された、Cuを含む第2の外部電極層とを備え、前記第1の外部電極層の、前記積層体の前記主面上に位置する領域であって、前記主面と前記端面によって形成される稜線付近の領域において、前記第1の外部電極層と前記第2の外部電極層とが接合しており、前記内部電極の引き出し方向について見た場合における前記第1の外部電極層の、前記積層体の前記端面側の先端とは逆側の先端は、前記第2の外部電極層に覆われることなく露出しているとともに、前記第1の外部電極層に含まれるNiが、前記稜線付近において、前記第2の外部電極層に拡散し、前記第2の外部電極層に含まれるCuと固溶していることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
第2の外部電極層について、本願発明1では、Cuに加えて「ガラス成分」を含む旨特定するのに対し、引用発明1では、そのような特定を有していない点。
[相違点2]
第2の外部電極層が、第1の外部電極層を覆う部分の、内部電極の引き出し方向の寸法について、本願発明1では、第1の外部電極層の内部電極の引き出し方向の寸法の「3%以上50%以下」である旨特定するのに対し、引用発明1では、その縁が第一の導体層の縁よりやや引っ込むように設けられてなるものである点。
(2)相違点についての判断
まず、上記[相違点2]について検討する。
引用発明1における「第二の導体層」は、その縁が第一の導体層の縁よりやや引っ込むように設けられてなるものであるところ、引用文献1の図2を見ても、第一の導体層の大部分を覆っており、その覆う部分の寸法は、第一の導体層の内部電極の引き出し方向の寸法の「50%」以下と特定することはできない。そして、引用発明1は、当該第二の導体層の有する金属(Cu)固有の特有の延性により、ねばりのある前記外部電極が形成され、機械的或いは熱的な応力により、前記外部電極の前記積層体からの剥離やクラック等を生じにくくしてなるものであることから、第二の導体層が第一の導体層を覆う部分の寸法は、極力大きい方が望ましいものと解され、これをあえて小さくして第一の導体層の内部電極の引き出し方向の寸法の「50%」以下とし、本願発明1で特定する範囲を満たす寸法とすべき動機付けを見出すことはできない。
よって、引用文献1からは、上記相違点2に係る構成を導き出すことはできない。
(3)小括
したがって、上記[相違点1]について判断するまでもなく、請求項1に係る発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に従属する請求項であって相違点2に係る発明特定事項を備えるものであるから、同様の理由により、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2.引用文献2を主引例とする場合について
(1)対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
ア.引用発明2における「グリーンシート」を焼成してなるもの、「内部電極」は、それぞれ本願発明1でいう「誘電体層」、「内部電極」に相当し、積層ブロックを焼成して得られた「セラミックボディ」が、本願発明1でいう「積層体」に相当する。また、引用発明2におけるセラミックボディの両端部に設けられ、内部電極に電気的に接続された「外部電極」が、本願発明1でいう「外部電極」に相当する。
そして、引用発明2における「チップサーミスタ」と本願発明1でいう「積層セラミックコンデンサ」とは、積層セラミック電子部品である点で共通するものである。
よって、本願発明1と引用発明2とは、「内部電極と誘電体層が積層された積層体と、前記内部電極と接続するように前記積層体の表面に形成された外部電極とを備えた積層セラミック電子部品」である点で共通する。
ただし、積層セラミック電子部品が、本願発明1では「積層セラミックコンデンサ」であるのに対し、引用発明2では「チップサーミスタ」である点で相違する。
イ.引用発明1における外部電極は端面電極と下面電極とを含むものであり、そのうちの「下面電極」は、チップサーミスタの実装面となる面と実装面とは反対側の面、すなわち両主面の前記セラミックボディの両端面に沿って設けられてなるものであり、本願発明1でいう「第1の外部電極層」に対応するものである。また、「下面電極」はPdからなるものであり、Niを含む本願発明1の「第1の外部電極層」とは所定の金属を含むものである点で共通するといえる。
よって、本願発明1と引用発明1とは、「前記外部電極は、前記積層体の主面に形成され、所定の金属を含む第1の外部電極層と」を備えるものである点で共通する。
ただし、所定の金属が、本願発明1では「Ni」と特定するのに対し、引用発明2では「Pd」である点で相違する。
ウ.引用発明1における外部電極のうちの「端面電極」は、導電ペーストをセラミックボディの端面に塗布して焼付けてなり、塗布したときにその一部が滲んで回りこんでセラミックボディの主面上において下面電極の端面側の先端を含む領域を覆ってなるものであることから、内部電極が引き出された端面と、下面電極の端面側の先端を含む領域とを覆い、内部電極と導通するとともに、セラミックボディの主面上に位置する領域であって、当該主面と端面によって形成される稜線付近の領域において下面電極と接合するものであるといえ、本願発明1でいう「第2の外部電極層」に相当する。また、「端面電極」は、Cu粉体とガラスフリットを含有した導電ペーストを焼付けてなるものであるから、ガラス成分とCuとを含むものである。さらに、「端面電極」は、かかる導電ペーストをセラミックボディの端面に塗布したときにその一部が滲んで回りこんでセラミックボディの主面上において下面電極の端面側の先端を含む領域を覆ってなるものであることから、内部電極の引き出し方向について見た場合における下面電極の、セラミックボディの端面側の先端とは逆側の先端は、当該端面電極に覆われることなく露出していることは明らかである。ただし、「端面電極」となる導電ペーストの焼付け時に、下面電極に含まれるPdが当該端面電極との接合領域において端面電極に拡散し、端面電極に含まれるCuと固溶しているのか否かは不明である。
よって、本願発明1と引用発明2とは、「前記積層体の前記内部電極が引き出された端面と、前記第1の外部電極層の前記端面側の先端を含む領域とを覆い、前記第1の外部電極層と接合するとともに、前記内部電極と導通するように形成された、ガラス成分とCuを含む第2の外部電極層と」を備えるものである点で一致し、さらに、「前記第1の外部電極層の、前記積層体の前記主面上に位置する領域であって、前記主面と前記端面によって形成される稜線付近の領域において、前記第1の外部電極層と前記第2の外部電極層とが接合しており、前記内部電極の引き出し方向について見た場合における前記第1の外部電極層の、前記積層体の前記端面側の先端とは逆側の先端は、前記第2の外部電極層に覆われることなく露出している」点で一致する。
そして、本願発明1では、「前記第1の外部電極層に含まれるNiが、前記稜線付近において、前記第2の外部電極層に拡散し、前記第2の外部電極層に含まれるCuと固溶している」旨特定するのに対し、引用発明2では、そのような特定を有していない点で相違するといえる。
エ.そして、第2の外部電極層が、第1の外部電極層を覆う部分の、内部電極の引き出し方向の寸法について、本願発明1では、第1の外部電極層の内部電極の引き出し方向の寸法の「3%以上50%以下」である旨特定するのに対し、引用発明2では、導電ペーストをセラミックボディの端面に塗布したときにその一部が滲んで回りこんで下面電極の端面側の先端を含む領域を覆ってなるものである点で相違している。
上記ア.ないしエ.によれば、本願発明1と引用発明2とは、
「内部電極と誘電体層が積層された積層体と、前記内部電極と接続するように前記積層体の表面に形成された外部電極とを備えた積層セラミック電子部品において、前記外部電極は、前記積層体の主面に形成され、所定の金属を含む第1の外部電極層と、前記積層体の前記内部電極が引き出された端面と、前記第1の外部電極層の前記端面側の先端を含む領域とを覆い、前記第1の外部電極層と接合するとともに、前記内部電極と導通するように形成された、ガラス成分とCuとを含む第2の外部電極層とを備え、前記第1の外部電極層の、前記積層体の前記主面上に位置する領域であって、前記主面と前記端面によって形成される稜線付近の領域において、前記第1の外部電極層と前記第2の外部電極層とが接合しており、前記内部電極の引き出し方向について見た場合における前記第1の外部電極層の、前記積層体の前記端面側の先端とは逆側の先端は、前記第2の外部電極層に覆われることなく露出しているとともに、前記第2の外部電極層が、前記第1の外部電極層を覆う部分の、前記内部電極の引き出し方向の寸法は、前記第1の外部電極層の前記内部電極の引き出し方向の寸法の3%以上50%以下であることを特徴とする積層セラミック電子部品。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点3]
積層セラミック電子部品が、本願発明1では「積層セラミックコンデンサ」であるのに対し、引用発明2では「チップサーミスタ」である点。
[相違点4]
本願発明1では、第1の外部電極層が含む所定の金属が「Ni」であると特定し、さらに、「前記第1の外部電極層に含まれるNiが、前記稜線付近において、前記第2の外部電極層に拡散し、前記第2の外部電極層に含まれるCuと固溶している」旨特定するのに対し、引用発明2では、下面電極が含む所定の金属が「Pd」であり、端面電極に含まれるCuと固溶しているか否か不明である点。
[相違点5]
第2の外部電極層が、第1の外部電極層を覆う部分の、内部電極の引き出し方向の寸法について、本願発明1では、第1の外部電極層の内部電極の引き出し方向の寸法の「3%以上50%以下」である旨特定するのに対し、引用発明2では、導電ペーストをセラミックボディの端面に塗布したときにその一部が滲んで回りこんで下面電極の端面側の先端を含む領域を覆ってなるものである点。
(2)相違点についての判断
まず、上記[相違点5]について検討する。
引用発明2における「端面電極」は、導電ペーストをセラミックボディの端面に塗布したときにその一部が滲んで回りこんでセラミックボディの主面上において下面電極の端面側の先端を含む領域を覆ってなるものにすぎず、当該端面電極は、意図的に(積極的に)セラミックボディの主面上において下面電極の端面側の先端を含む領域についても覆うように設け、主面上における接合部において下面電極に含まれる所定の金属と端面電極に含まれる所定の金属との合金の層(相互拡散層)を形成しようにとしたものではなく、これをあえて下面電極の内部電極の引き出し方向の寸法の「3%」以上とし、本願発明1で特定する範囲を満たす寸法とすべき動機付けは見出し難い。
よって、引用文献2からは、上記相違点5に係る構成を導き出すことはできない。
また、周知技術を示す文献として引用された引用文献3(段落【0033】、【0037】~【0044】、【0096】)、引用文献4(段落【0024】)、及び引用文献5(段落【0016】)には、積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極にNiを用いることや、互いに接する層にそれぞれ含まれるNiとCuの拡散による合金化で層同士の密着性が向上することが記載されているといえるが、上記相違点5に係る構成については記載も示唆もない。
(3)小括
したがって、上記[相違点3]及び[相違点4]について判断するまでもなく、請求項1に係る発明は、引用発明2、及び引用文献3ないし5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に従属する請求項であって相違点5に係る発明特定事項を備えるものであるから、同様の理由により、引用発明1、及び引用文献3ないし5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)本願発明2について
請求項2は、請求項1に従属する請求項であり、相違点3に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明2、及び引用文献3ないし5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1及び2に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることできず、また、引用文献2に記載された発明、及び引用文献3ないし5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-009826