特許拒絶査定不服審判
2020-008876
コークス工場の操作及び生産高を最適化するための方法及びシステム
- 審判番号
- 2020-008876
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-117023
- 請求日
- 2020年06月25日
- 審決日
- 2021年11月24日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サンコーク テクノロジー アンド ディベロップメント リミテッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 木村 敏康
- 分類
- P18 .121-WZ (C10B) / P18 .536-WZ (C10B) / P18 .537-WZ (C10B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-117023「コークス工場の操作及び生産高を最適化するための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年9月13日出願公開、特開2018-141175〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2015年8月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年8月28日 米国)を国際出願日とする特願2017-511646号の一部を平成30年6月20日に新たな特許出願としたものであって、令和元年8月5日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月13日に意見書の提出とともに手続補正がされ、同年同月20日付けで拒絶査定がされ(謄本の発送は同年同月25日)、同年6月25日に審判請求がされ、令和3年1月20日に当審により拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月24日に意見書の提出と共に手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は、令和3年6月24日に補正された請求項1~5に記載された発明であるが、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。なお、下線は請求人が付したものである。
「コークス炉の石炭処理速度を増加させる方法であって、
操作上の装入炭の量を規定して、コークス炉内に石炭のベッドを装入する工程であって、前記コークス炉が、コークス炉内に装入できる石炭の最大体積と最大コークス化時間とによって定義される最大石炭処理速度を有し、前記操作上の装入炭の量が、コークス炉内に装入できる石炭の最大体積未満である、装入する工程と、
操作上の石炭処理速度を定義するように、前記操作上の装入炭を、操作上のコークス化時間にわたって前記コークス炉内でコークス化する工程と、を含み、前記操作上のコークス化時間が、前記最大コークス化時間未満であり、前記操作上の石炭処理速度が、前記最大石炭処理速度を上回る、方法。」
第3 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由
1 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明が、原査定において引用された特開平11-131074号公報(以下「引用例1」という。)及び特表2009-541503号公報(以下「引用例2」という。)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
2 当審拒絶理由
当審拒絶理由は、以下のとおりである。
(1)理由1(明確性):この出願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)理由2(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3)理由3(サポート要件):この出願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第4 当審の判断
1 令和3年6月24日付けの手続補正により、少なくとも当審拒絶理由における理由1(明確性)は解消したものと認められるが、それによってもなお、当審拒絶理由において判断を留保した原査定の拒絶の理由(進歩性)は解消していないと判断するところ、その理由は以下のとおりである。
2 引用例1の記載事項
引用例1は、コークス炉の操業方法(発明の名称)であって、次の記載がある。
(1)「【請求項1】 通常の装炭量で乾留したときに、設定火落ち時間tS (hr)に対してΔt(hr)だけ火落ちが遅れた炭化室への装炭量を、前記通常の装炭量よりも少なくとも(Δt/tS )×100(%)減じることを特徴とするコークス炉の操業方法。
【請求項2】 請求項1記載のコークス炉の操業方法において、前記火落ちが遅れた炭化室への装炭量の減少程度は、通常の装炭量の20%減を上限とするコークス炉の操業方法。」
(2)「【0002】
【従来の技術】コークス炉には、燃料,空気の供給方法、蓄熱室の配列、燃焼室等の構造の違いにより種々のタイプがある。一般に、下部に蓄熱室、上部には交互に配列した燃焼室と炭化室とを備えて、それぞれ炉長方向に多数に分割配置されている。その炭化室に粉体状の原料石炭を装入して、燃料ガスと空気を蓄熱室で予熱したのち燃焼室で燃焼し、その燃焼熱を隣接の炭化室に伝熱せしめて室内の石炭を乾留する。炭化室内の石炭は、空気を遮断して加熱されると温度上昇に伴って水分や吸蔵CO,CH4 等を放出していき、300℃を越えると石炭自体の熱分解が始まってガス,化合水やタールが急激に発生するとともに軟化溶融する。そして500℃近くになると再び固化して多孔質塊状の半成コークスとなる。更に温度が上昇して900℃以上になると揮発分の放出はほぼ終了して高温乾留コークスになる。上記の加熱開始からガス発生終了迄の所要時間を火落ち時間と称する。この火落ち時間の経過で、炉内の石炭乾留は終了する筈であるが、実際には炉蓋の近傍などでは乾留の進行が部分的に遅れる結果、完全にはコークスになっていない。そこで、更に1~数時間程度の熟成及び均熱化の時間(置時間と称する)を置いた後、炭化室内から押し出している。この置時間と前記火落ち時間との合計を炭化時間といい、これが押し出しサイクルとなる。
【0003】適切な火落ち時間を経ずに、乾留が不完全なままで押し出すと、残存揮発分が空気との接触で不完全燃焼して煤(黒煙)が放散されるという問題がある。反対に乾留過多であると過剰にエネルギーが浪費されるため経済的損失をまねくという問題がある。一般に、所要の火落ち時間の長短は、石炭自体の性状の他に、各炭化室の装入密度,昇温速度,最終到達温度等の乾留条件や、付着カーボン量などの個々の炭化室(窯)の状態等によっても影響され、炭化室間でバラツキが生じる。
【0004】コークス炉の操業のポイントは各窯毎の炭化時間の均一性の確保にあり、炉の各窯間の火落ち時間のバラツキ対策が重要とされている。そのためには、各炭化室における火落ち時間の把握と炉温の把握が必須である。火落ち時間については、実際の操業で炭化処理した後に炉を開けて状態を観察し、今回処理にあたり設定した火落ち時間の適否を確認して、次回の処理に反映させるという方法が採られている。
【0005】また、通常の室炉式コークス炉では、乾留に必要な熱は、燃焼室と炭化室との間に介在する炉壁れんがを通して、両側から炭化室内の石炭層に伝達される。すなわち、乾留における火落ちは伝熱律速であり、基本的には当該炉壁の温度で決定される。それゆえ、火落ち時間を所定値に保つべく、炉内温度を把握して燃焼室に供給する燃焼ガス量の調整を行う。このため種々の温度測定方法が提案されている。」
(3)「【0009】本発明は、このような従来のコークス炉における課題を解決するためになされたものであり、火落ち時間が設定値より遅れた炭化室に対する装炭量を、一定の範囲内で減量することにより炉全体の炭化時間を均一化せしめて、以後の炭化不良を未然に防止するコークス炉の操業方法を提供することを目的とす。」
(4)「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を図面を参照して説明する。図1~図3は、本発明を好適に適用できるコークス炉の一例を示す概要図で、図1は斜視図、図2はそのII-II断面図、図3は図2のIII-III断面図である。図示のものは、カールスチル式コークス炉であって、炉体下部に多数の蓄熱室1が隣接させて設置され、その各蓄熱室の上部に燃焼室2と炭化室3とが交互にそれぞれ70~100室程、炉長方向に配列されている。蓄熱室1は蓄熱れんが4により、燃焼室2は整流板(ダクト)5により、いずれも二分割構造とされており、両室の間は炉壁れんが6で仕切られている。燃料ガス及び空気は蓄熱室1で予熱された後、整流板5に設けた開口5aから6段に分かれて燃焼室2に供給されて燃焼する。そのため上下の温度差は少ない。燃焼後のガスは、隣接する蓄熱室1を通り蓄熱れんが4で熱回収された後、煙道7を経て排出される。燃焼室2内の燃焼熱は炉壁れんが6を通して炭化室3内の石炭層に伝達され、これを加熱する。蓄熱れんが4や整流板5により各燃焼室2の加熱はできるだけ均一に行われるようになっているが、実際は炉蓋9,10のある端の方が昇温しにくく、例えば炭化室3の中央部が1000℃のとき両端部800℃程度になる。
【0013】このコークス炉の付帯設備として、石炭塔12から移載した石炭を各炭化室3内に装入口3aから投入する装炭車13、炭化室3内のコークスを外に押し出す押出機14、押し出されたコークスを受け止めて下方に落とすコークガイド車15、そのコークガイド車15から落とされた赤熱コークスを廃熱回収用の消化装置に搬送する消化電車16等を備えている。」
(5)「【0014】上記コークス炉の操業にあたり、初めは各炭化室3内に通常の操業における装炭量で石炭を装入する。その量は各炭化室3とも同一量である。先に述べた火落ち時間に及ぼす各種要因を勘案して、その装炭量に対応する火落ち時間tS (hr)を設定し、これに1~2時間の置時間を加えた炭化時間をもって押し出しサイクルとする。そして、燃焼室2に燃料ガスを予め設定した所定の流量で供給して燃焼させ、炭化室3内の石炭層を加熱する。押し出しサイクル時間が経過したら加熱を止めて、炉蓋9,10を開く。このとき、未だ乾留不十分であった炭化室3のコークスは残存揮発分が空気との接触で不完全燃焼して煤を出すので(発塵)見分けることができ、その炭化室3は炭化不良と判断される。
【0015】炭化不良の炭化室3は炉蓋9,10閉じて再加熱する。発塵が認められなくなるまで加熱を行い、その再加熱所要時間Δt(hr)を求めれば、その分が火落ちの遅れた時間であり、換言すれば短縮すべき火落ち時間である。次いで、コークス炉1の全炭化室3内のコークスは押出機14で炉外へ排出する。この押し出し作業は、押出機14を順次移動させながら繰り返される。排出が終われば、次のサイクルの装炭を行う。このとき、炭化不良と判断された炭化室3への装炭量は減量する。その減量の程度(装炭量削減率)は、通常の装炭量で乾留した前回のサイクルにおける設定火落ち時間tS (hr)に対する火落ち遅れ時間Δt(hr)の割合(火落ち時間短縮率)と少なくとも同率とする。すなわち、(Δt/tS )×100(%)以上の減量とする。
【0016】この装炭量の減量により、前回サイクルでは炭化不良となった炭化室3については、単位石炭当たりの受熱量が多くなり、火落ち時間が前回より短縮されると共に乾留の遅れた部分のコークス化が促進される。そのため、押出計画を乱すことなく、炭化不良炭化室のコークス押し出しを確実に防止することができる。」
(6)「【0019】かくして、本発明にあっては、コークス炉の多数の炭化室のうち炭化不良傾向となった炭化室については、予め装炭量を減量して炭化不良の発生する危険性を排除したうえで操業を継続する。これにより、その間に燃焼ガス量の調整を着実に実行する余地ができ、当該ガス量調整の完了後は通常の装炭量への復帰がなされる。」
(7)「【0020】(実施例)以下に、実施例により本発明の効果を説明する。カールスチル式の高さ6m級の室炉を用いて、1室(窯)あたりの通常装炭量30.5ドライトン/窯にて実験した。1日当たり稼働率は130%(押し出しサイクル=火落ち時間+置時間=24hr/130×100=18.5hr)に設定した。内訳は、火落ち時間16.5hr、置時間2hrである。この条件で処理した時に設定火落ち時間16.5hrを越える炭化室は、全102室中の25室あり、表1に示すように、目視判定でそのうちの約半数に押し出し時の発塵が認められた。」
【0021】【表1】
[図:0001383518000001.jpg]
【0022】そこで、これらの発塵炭化室に対する装炭量を次の通り減量した。 設定火落ち時間tS :16.5hr火落ち遅れ時間Δt: 0.8hrよって火落ち時間短縮率Δt/tS ×100=4.8%この火落ち時間短縮率の1.5倍を装炭削減率とする。
【0023】このように発塵炭化室の装炭量を削減して再度コークス炉の操業を行ったところ、火落ち時間が設定値16.5hrを越える炭化室は半減した。特に、1hr以上越えるものは皆無であった。これにより押し出し時の発塵はゼロとなり当初の押し出し計画を乱すことなく操業することができた。」
(8)「【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るコークス炉の操業方法によれば、火落ちが遅れた炭化室への装炭量を一定の範囲内で減量するため、各炭化室毎に高価な温度センサを設置することなく炉全体の炭化時間が均一化できて、飛び窯や炭化不良が未然に防止されるという効果を奏する。
【0027】また、押し出し時の発塵も防止できて環境保護に貢献できるという効果が得られる。また、押し出し時に不完全燃焼して放散されていたCガスを回収できて、省エネルギーにも効果を発揮する。」
(9)図面について
ア 図1関連
(ア)【図面の簡単な説明】の項
「本発明のコークス炉の一例を示す斜視図である。」
(イ)「【図1】
[図:0001383518000002.jpg]
」
イ 図2関連
(ア)【図面の簡単な説明】の項
図1のII-II断面図である。
(イ)「【図2】
[図:0001383518000003.jpg]
」
ウ 図3関連
(ア)【図面の簡単な説明】の項
「図1のIII-III断面図である。」
(イ)「【図3】
[図:0001383518000004.jpg]
」
3 引用例2の記載事項
(1)「【0003】
「トンプソン(Thompson)コークス化プロセス」として知られるプロセスにおいて、上述のように、金属鉱石の生成に使用されるコークスは、粉砕された石炭を、密閉され、厳しく管理された大気条件下でかなりの高温に24時間から48時間加熱された炉にバッチフィードすることによって生成される。コークス炉は、石炭を冶金コークスに変化させるために、長年にわたって使用されている。コークス化プロセス中、細かく砕かれた石炭が管理された温度条件下で加熱されて、石炭が液化され、また所定の孔隙率および強度を有する溶融塊が得られる。コークスの生成はバッチプロセスであるため、複数のコークス炉が同時に作動される。以後これを「コークス炉バッテリー」と称する。」
(2)「【0007】
石炭は加熱された炉に装入されるため、石炭の装入プロセスのほとんどは自動化されている。スロットタイプの炉では、石炭は一般に炉の上部のスロットまたは開口口から添加される。このような炉は背が高く幅が狭い傾向がある。最近では、コークスの生成に、水平ノン・リカバリータイプあるいは熱リカバリータイプのコークス炉が使用されている。水平炉は、例えばトンプソンの、特許文献1および特許文献2に記載されている。ノン・リカバリータイプあるいは熱リカバリータイプのコークス炉では、石炭粒子を炉まで水平に運ぶためにコンベアが使用され、高さ約101cm、長さ約13.7m、幅約3.6mの細長い石炭層が得られる。」
4 引用発明の認定
(1)「通常操業時」について
ア 前記2(7)に摘記した引用例1の段落【0020】の記載及び【0021】【表1】における通常操業時の欄を参照する。
イ 【表1】の通常操業時の欄から、炭化室の総数は、2+24+51+8+7+12=102室であることが計算できる。また、一室あたりの装炭量が30.5ドライトンであることから、全ての室を合わせると3111ドライトンとなる。
ウ 【表1】の通常操業時の欄から、102室全体の平均火落ち時間が、16.4hrであることが読み取れる。段落【0020】に記載のように、火落ちの後の置き時間は、2hrである。また、コークス化時間は、火落ち時間+置き時間であるから、1hr当りの石炭処理速度は、3111ドライトン/(16.4hr+2hr)=169.076ドライトン/hrとなる。
エ そうすると、通常操業時には次のコークス炉の操業方法が行われていることが読み取れる。
「102室からなるコークス炉ごとに各30.5ドライトン、計3111ドライトンの石炭を装炭し、平均火落ち時間16.4hr+置き時間2hr(1hr当り、169.076ドライトン)でコークスを製造するコークス炉の操業方法。」
(2)「実施例」について
ア 前記2(7)に摘記した【0020】、【0022】、【0023】の記載及び【0021】【表1】を参照する。
イ 【表1】の実施例の欄から、炭化室の総数は、前記(1)イと同じ102である。また、【表1】の通常操業の欄から、発煙窯(室)数は1+12=13であることが読み取れる。
ウ 【0022】に記載されたように、4.8%の1.5倍、すなわち、7.2%が装炭削減率であることから、前記イの13室については、30.5×0.072=2.196ドライトンの装炭削減量となる。したがって、30.5-2.196=28.304ドライトンが装炭されることになる。
エ 全102室のうち、13室を除いた89室については、30.5ドライトンが装炭されることから、トータルでの装炭量は、28.304×13+30.5×89=367.952+2714.5=3082.452ドライトンとなる。
オ 【表1】の実施例の欄から、102室全体の平均火落ち時間が、16.2hrであることが読み取れる。また、置き時間は通常操業時と同様に2hrと推認できるから、1hr当りの石炭処理速度は、前記(1)ウと同様に、3082.452ドライトン/(16.4+2)hr=169.365ドライトン/hrとなる。
カ そうすると、引用例1の実施例の際には次のコークス炉の操業方法が行われていることが読み取れる。
「102室からなるコークス炉のうち、89室に各30.5ドライトン、13室に28.304ドライトン、計3082.452ドライトンの石炭を装炭し、平均火落ち時間16.2hr+置き時間2hr(1hr当り169.365ドライトン)でコークスを製造するコークス炉の操業方法。」
(3)引用発明
前記(1)オ及び(2)カから次の発明(以下「引用発明」という。)が認定できる。
「102室からなるコークス炉ごとに各30.5ドライトン、計3111ドライトンの石炭を装炭し、平均火落ち時間16.4hr+置き時間2hr(1hr当り169.076ドライトン)でコークスを製造するコークス炉の操業方法に引き続いて、102室からなるコークス炉のうち、89室に各30.5ドライトン、13室に28.304ドライトン、計3082.452ドライトンの石炭を装炭し、平均火落ち時間16.2hr+置き時間2hr(1hr当り169.365ドライトン)でコークスを製造するコークス炉の操業方法。」
5 対比、判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)本願発明の「コークス炉」、「装入」、「コークス化時間」は、引用発明における「コークス炉」、「装炭」、「火落ち時間」と「置き時間」の合計にそれぞれ相当する。
(2)石炭の最大体積、最大コークス化時間、最大石炭処理速度
ア コークス炉において、効率を最大化するためにできるだけ多くの石炭を装入するのは通常のことといえるから、本願発明の「石炭の最大体積」、「最大コークス化時間」、「最大石炭処理速度」とは、コークス炉の通常操業時の石炭の体積、コークス化時間、石炭処理速度であると解される。そうすると、引用発明において対応するのは、前記3(1)において検討した「通常操業時」である。
イ 引用発明の「3111ドライトンの石炭」が持つ体積が、本願発明の「石炭の最大体積」に相当する。
ウ 引用発明の「平均火落ち時間16.4hr+置き時間2hr」が、本願発明の「最大コークス化時間」に相当する。
エ 引用発明の「1hr当り169.076ドライトン」の体積換算が、本願発明の「最大石炭処理速度」に相当する。
(3)操作上の装入炭の量、操作上のコークス化時間、操作上の石炭処理速度
ア 本願発明における「コークス炉の石炭処理速度を増加させる方法」という特定事項からみて、「操作上」のという用語は、前記(1)に認定した通常操業時とは違い、石炭処理速度を増加させるために操作する際という意味と解される。ここで、引用例1における石炭処理速度は、「通常操業時」で「1hr当り169.076ドライトン」、「実施例」で「1hr当り169.365ドライトン」であって、「実施例」において石炭処理速度が増加しているから、引用発明において、本願発明の「操作上」に対応するのは、前記3(2)に検討した、「実施例」である。
イ 本願発明の「操作上の挿入炭の量」は、本願発明の「操作上の装入炭の量が、コークス炉内に装入できる石炭の最大体積未満である」という記載からみて、体積を指すと解される。そうすると、引用発明における「3082.452ドライトンの石炭」の持つ体積が、「操作上の装入炭の量」に相当する。
ウ 引用発明における「平均火落ち時間16.2hr+置き時間2hr」は、本願発明の「操作上のコークス化時間」に相当する。
エ 引用発明における「1hr当り169.365ドライトン」の体積換算は、本願発明の「操作上の石炭処理速度」に相当する。
(4)前記(2)と(3)の比較
ア 前記(3)イの「3082.452ドライトンの石炭」の持つ体積は、前記(2)イの「3111ドライトンの石炭」が持つ体積未満であるから、引用発明は、本願発明の「前記操作上の装入炭の量が、コークス炉内に装入できる石炭の最大体積未満である」を充足する。
イ 前記(3)ウの「平均火落ち時間16.2hr+置き時間2hr」は、前記(2)ウの「平均火落ち時間16.4hr+置き時間2hr」未満であるから、引用発明は、本願発明の「前記操作上のコークス化時間が、前記最大コークス化時間未満であり」を充足する。
ウ 前記(3)エの「1hr当り169.365ドライトン」の体積換算は、前記(2)エの「1hr当り169.076ドライトン」の体積換算を上回るから、引用発明は,本願発明の「前記操作上の石炭処理速度が、前記最大石炭処理速度を上回る」を充足する。
(4)一致点
本願発明と引用発明は次の点で一致する。
「操作上の装入炭の量を規定して、コークス炉内に石炭を装入する工程であって、前記コークス炉が、コークス炉内に装入できる石炭の最大体積と最大コークス化時間とによって定義される最大石炭処理速度を有し、前記操作上の装入炭の量が、コークス炉内に装入できる石炭の最大体積未満である、装入する工程と、
操作上の石炭処理速度を定義するように、前記操作上の装入炭を、操作上のコークス化時間にわたって前記コークス炉内でコークス化する工程と、を含み、前記操作上のコークス化時間が、前記最大コークス化時間未満であり、前記操作上の石炭処理速度が、前記最大石炭処理速度を上回る、方法。」
(5)一応の相違点
本願発明と引用発明は次の点で一応相違する。
ア 相違点1
本願発明においては、「コークス炉の石炭処理速度を増加させる方法」と規定されているのに対して、引用発明においてはそのような特定がない点。
イ 相違点2
石炭の装入について、本願発明においては、「石炭のベッドを装入する」のに対して、引用発明においてはそのような特定がない点。
(6)相違点1についての判断
引用発明においては、「コークス炉の石炭処理速度を増加させる方法」であることは明示されていないが、引用発明においても石炭処理速度が増加していることから、相違点1は実質的な相違ではない。
(7)相違点2についての判断
ア 前記2(4)に摘記した引用例1の段落【0013】における「このコークス炉の付帯設備として、石炭塔12から移載した石炭を各炭化室3内に装入口3aから投入する装炭車13」という記載及び前記2(9)に摘記した引用例1の図1、2からみて、石炭はコークス炉の各室の上方から搬入されることが読み取れる。
イ 前記3(2)に摘記した引用例2の段落【0007】には、「スロットタイプの炉では、石炭は一般に炉の上部のスロットまたは開口口から添加される。」と記載されていることから、引用例1に記載のものはスロットタイプの炉であることが読み取れる。
ウ 一方、同引用例2の段落【0007】には、「最近では、コークスの生成に、水平ノン・リカバリータイプあるいは熱リカバリータイプのコークス炉が使用されている。・・・ノン・リカバリータイプあるいは熱リカバリータイプのコークス炉では、石炭粒子を炉まで水平に運ぶためにコンベアが使用され、高さ約101cm、長さ約13.7m、幅約3.6mの細長い石炭層が得られる。」と記載されている。
エ 前記ウの「細長い石炭層」は、本願発明の「石炭のベッド」に相当するものといえる。そして、引用発明の炉の形式を水平炉に特定し、「石炭のベッドを装入する」ように構成することは当業者が容易になし得ることといえる。
オ また、相違点2に係る構成を本願発明が備えることにより格別の作用効果を有するとも認められない。
(8)請求人の主張について
請求人は審判請求書において、引用例1においては、装入炭の量を削減するのは、火落ちが遅れたコークス化時間を短縮するものであり、コークス炉全体の石炭処理速度を増加させるものではないし、「コークス炉の多数の炭化室のうち炭化不良傾向となった炭化室については、予め装炭量を減量して炭化不良の発生する危険性を排除したうえで操業を継続する。これにより、その間に燃焼ガス量の調整を着実に実行する余地ができ、当該ガス量調整の完了後は通常の装炭量への復帰がなされる。」(【0019】)とあるように、最終的には通常の装炭量へ戻されるものであるから、引用例1に記載の発明は、コークス炉の石炭処理速度を増加する方法を開示も示唆もしていない旨主張している。
しかしながら、引用発明が、「火落ち時間が設定値より遅れた炭化室に対する装炭量を、一定の範囲内で減量することにより炉全体の炭化時間を均一化せしめて、以後の炭化不良を未然に防止するコークス炉の操業方法を提供することを目的」(【0009】)とするにしても、前記(3)ア、(4)ウ及び(6)のとおり、引用発明は、「通常操業時」よりも「実施例」において石炭処理速度が増加しているものである。
したがって、引用発明は、「コークス炉の石炭処理速度を増加させる方法」を充足するから、「コークス炉の石炭処理速度を増加させる方法」にも該当するものである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。
6 小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに引用例1及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-008876