特許拒絶査定不服審判
2020-008544
保冷材ホルダー
- 審判番号
- 2020-008544
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-092906外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年06月19日
- 審決日
- 2021年02月10日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (A41D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2019- 92906「保冷材ホルダー」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月19日出願公開、特開2020-186494、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、令和 元年 5月16日の出願であって、同年10月18日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月19日に意見書及び手続補正書が提出され、令和 2年 3月17日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年6月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書(以下、当該手続補正書による補正のことを「審判請求時の補正」という。)が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1-9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2005-34556号公報
2.実願昭59-154872号(実開昭61-71113号)のマイクロフィルム
3.特開2012-40182号公報[周知技術を例示する文献。]
4.特開2002-113035号公報[同上。]
5.特開平8-33669号公報
6.登録実用新案第3195107号公報
7.特開2011-218006号公報[同上。]
8.特開2010-200885号公報[同上。]
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、補正前の請求項1の「前記ポケット部」を「前記左右一対の保冷材ポケット(2)」に限定するものであって、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであり、また、「前記左右一対の保冷材ポケット(2)」という事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0032】に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではなく、同条第3項の規定に適合するものである。
そこで、本件補正後の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件補正発明1」~「本件補正発明9」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
第4 本件補正発明
本件補正発明1~9は、審判請求時の補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される以下のとおりである。
【請求項1】
開閉部を有する袋状部材で形成され、前記袋状部材に保冷材(10)を収納するための、左右一対の保冷材ポケット(2)と、
前記保冷材ポケット(2)の上部両端に固定され、肩に掛けることにより前記左右一対の保冷材ポケット(2)を両腋下に保持するための左右一対の肩掛けベルト(4)と、
前記左右一対の保冷材ポケット(2)の腕側表面の略中央部に形成されたベルトループ(5)であって、該ベルトループ(5)に所望のベルトを挿通して身体背側から両脇下を介して胸部に巻回させて締め付け自在に固定できるようにしたベルトループ(5)と、
前記左右一対の肩掛けベルト(4)を互いに連結する連結部(6)と、を具備してなり、
前記保冷材ポケット(2)が、保冷性と通気性とクッション性とを具備する立体メッシュ生地を含んでなることを特徴とする、身体装着用保冷材ホルダー。
【請求項2】
前記ベルトループ(5)に挿通するベルトであって、開閉可能および(または)長さ調整可能である胸部ベルト(9)をさらに具備する、請求項1に記載の保冷材ホルダー。
【請求項3】
前記肩掛けベルト(4)は、開閉可能および(または)長さ調整可能である、請求項1または2に記載の保冷材ホルダー。
【請求項4】
前記肩掛けベルト(4)は、前記保冷材ポケット(2)と着脱可能である、請求項1または2に記載の保冷材ホルダー。
【請求項5】
前記保冷材ポケット(2)の開閉部(3)は、装着時に身体に対して、前面側鉛直方向に開口するように形成されてなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の保冷材ホルダー。
【請求項6】
前記保冷材ポケット(2)の背面側または前面側の下端角部がR形状からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の保冷材ホルダー。
【請求項7】
前記肩掛けベルト(4)、前記胸部ベルト(9)および前記連結部(6)の少なくとも1つが、伸縮性を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の保冷材ホルダー。
【請求項8】
前記保冷材ポケット(2)の前記開閉部(3)に面ファスナーが設けられてなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の保冷材ホルダー。
【請求項9】
前記保冷材ポケット(2)の前記立体メッシュ生地が、以下の特性を具備する、請求項1~8のいずれか一項に記載の保冷材ホルダー。
厚さ:2mm以上
気孔容積率:80~95%
圧縮率:10%以上
圧縮弾性率:85~95%
嵩高性:5~13cm3/g
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。
ア「【発明に属する技術分野】
【0001】
本発明は、高熱時、脇の下のリンパ節を冷す為の冷却装置である。
【背景技術】
【0002】
高熱時、肩掛け紐を有する冷却装置に、胸の周囲、又は、腕の周囲を固定させるベルトを有した、冷却装置がいまだ無く、両肩掛け紐の一片を背側で繋ぎ止める部材のみで、冷却剤収納袋を人体の両脇の下に固定させていた。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来の構成では、冷却剤収納袋の両側面上部上方向に人体の腕の付け根の円周より大きめの円周を有する肩掛け紐を備えた冷却装置の側面に、胸の周囲、又は、腕の周囲を固定させる為のベルトを構成させ、いつそうに冷却剤収納袋を脇の下に固定することを目的とする。」
イ「【0015】
請求項4の図4の(イ)において、人体の両脇に設置される冷却剤収納袋1の両側面、又は、片側面に袖部材32を設け、腕の付け根の円周より大きめの円周を備えた肩掛け紐2を袖部材32、又は、冷却剤収納袋1の側面上部より湾曲に立ち上げ、該肩掛け紐2は収縮自在の素材を有し、又、該肩掛け紐2の山部分には肩クッション33を備えさせた、両該肩掛け紐2の一片を背側で繋ぎ止める、ループエンド30された、スライド式留め具10を有した、繋ぎ紐15を利用して背中上部にて絞り上げ留める、従来の冷却装置。
(ロ)に示す、本考案である、該冷却剤収納袋1の両側面に、胸の周囲、又は、腕の周囲を固定させるためのベルト31を設、該ベルト31を支持させる部材である、リング14を冷却剤収納袋1の両側面に設、該リング14に繋ぎ止めた、留め具11、相対するベルト31の受け手にはリング14を設、長さ調節可能な部材である、長さ調節具13を備えた収縮自在の素材を有する、ベルト31を胸の周囲、又は、腕の周囲を固定させるために、(a)(b)に示す、該ベルト31を備えた冷却装置を人体に装着させ、該ベルト31に備えられた部材、留め具11により、相対する受け手にはリング14を設、胸の周囲、又は、腕の周囲を固定させる、該ベルト31は、冷却剤収納袋1の側面より取り外すことが出来る。」
ウ「【図4】
」
エ 図4から、冷却剤収納袋1が人体に対して左右一対に設けられること、左右一対の肩掛け紐2が冷却剤収納袋1の両側面の上部に固定されていること、左右一対の肩掛け紐2を人体の両肩に掛けること、冷却剤収納袋が両脇の下に固定されることが看取できる。
以上の摘記事項ア及びイ、ウの図示、並びに、認定事項エから、引用文献1には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。
(引用発明)
「左右一対の冷却剤収納袋1と、冷却剤収納袋1の両側面の上部に固定され、肩に掛けることにより前記左右一対の冷却剤収納袋1を両脇の下に固定するための左右一対の肩掛け紐2と、前記左右一対の冷却剤収納袋1の両側面に繋ぎ止めたリング14であって、該リング14にベルト31を支持して、ベルトにより胸の周囲又は腕の周囲に固定できるようにしたリング14と、前記左右一対の肩掛け紐2を背中上部にて絞り上げ留める繋ぎ紐15を備えた冷却装置。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア「第1図は本考案脇下冷やし具で(A)はその平面図,(B)はその側面図である。胸部14(第2図)に巻いてその両端を重ね合わせうる長さの伸縮性のある例えば幅5cm程度のゴムバンド1に氷等冷媒を入れた冷やし袋2,3を該バンド1にスライド可能に取付け、該冷やし袋2,3の両側のバンド1に長さ50~60cmのつり紐4,5及び6 7をそれぞれスライド可能に取付ける。
第2図は、仰臥した患者の左右の脇下に本冷やし具を取付けた状態を示した平面図である。患者の背にバンド1の中央部が横方向にあたるようにし、冷やし袋2及び3をそれぞれ右左の脇下17,18に挟持せしめる。バンド1の両端を胸部14の前面で重ね合わせマジツクテープのフツク面8とループ面9を接合する(第1図に図示)。・・・」(第2ページ第11行~第3ページ第5行)
イ「
」
3.引用文献3、4、7、8について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3、4、7、8には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)引用文献3
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば炎天下でのスポ-ツ観戦や野外の作業または活動、空調環境の悪い屋内での作業の際の利用に好適で、小形軽量で携帯に至便で、額や脇の下、首筋等の身体の適所に当てて速やかに涼感を得られ、これを容易かつ安価に製作できるようにした携帯冷却具に関する。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題を解決し、例えば炎天下でのスポ-ツ観戦や野外の作業または活動、空調環境の悪い屋内での作業の際の利用に好適で、小形軽量で携帯に至便で、額や脇の下、首筋等の身体の適所に当てて速やかに涼感を得られ、冷却材による冷却作用を十分に得られるとともに、これを容易かつ安価に製作できるようにした携帯冷却具を提供することを目的とする。」
ウ「【0032】
そして、身体の特定の部位を冷却する場合は、クリップ7を収納ケ-ス10から取り外し、冷却具1を収納ケ-ス10から取り出して、例えば首筋や脇の下、足首等に直接当てて冷却し、使用後は収納ケ-ス10に収納し、開口縁をクリップ7で閉塞して携帯する。
なお、収納ケース10は前述のような断熱機能を備えたものの他に、メッシュ地またはニット地、布帛地で袋状に形成したものでも良く、これらの場合は安価に製作でき、また冷却具1の表面の結露を吸収し、若しくは捕捉して滴下を防止して快適に使用し得る。」
(2)引用文献4
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱冷まし用保冷バンドに関し、詳しくは、わきの下、足のつけ根、首筋を冷却する熱冷まし用保冷バンドに関する。」
イ「【0011】かかる保冷バンド1は、袋部2の長手方向に2本の装着帯4を有する。また、袋部2は、その外部を形成する素材として人体接触面がドライメッシュシート5で、またその反対面が防水シート7で被覆され、ドライメッシュシート5および防水シート7と袋部2との間には吸水性ポリマー等を収納した吸水パット6を収容する(図2)。」
(3)引用文献7
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、2層式保冷具に関し、詳しくは、ジェルを含む保冷媒体の冷却効果を利用し人体各部の冷却用として使用し得るとともに、弾力性に優れ使用感が極めて良好な2層式保冷具に関するものである。」
イ「【0038】
(8)試験品:3種
a.本実施例1に係る2層式保冷具1(2層式ジェルマット:シングルサイズ)
b.図6、図7に示す単層保冷具21(単層ジェルマット:シングルサイズ)
c.図8乃至図10に示すハニカムメッシュ付き保冷具31(ハニカムメッシュ付きジェルマット:シングルサイズ)」
ウ「【0042】
前記ハニカムメッシュ付き保冷具31は、図8乃至図10に示すように、例えば綿材、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、麻、起毛生地、ちりめん、楊柳、タオル地等からなる表地33と、高周波加熱により溶着可能な例えばポリ塩化ビニル(PVC)等の非吸水性素材からなる裏地34とを重合した一方の被覆材と、同様な構成の表地33、裏地34からなる他方の被覆材とを前記裏地34同士が対向する配置で重ね合わせ、高周波加熱加工を施した外装体32と、この外装体32内に散在状態で密封収納したジェルを含む保冷媒体35と、を有する保冷具36と、前記保冷具36に対応するサイズに形成され、その一面に重合配置される偏平な形態の多穴弾性体37と、前記保冷具36の外装体32、多穴弾性体37の四辺外周部を覆うように縫着され、前記保冷具36、多穴弾性体37を一体化した綿材のような周辺逢着材38と、を有している。前記保冷具36は、部分圧着部36a、周辺圧着部36b、放熱用の孔36cを有している。」
(4)引用文献8
ア「【0001】
本発明は、保冷敷きシーツに関し、特に、保冷剤を封入した保冷部材を用いた保冷敷きシーツに関するものである。」
イ「【0012】
図1に、本発明の保冷敷きシーツの一実施例を示す。
この保冷敷きシーツ1は、メッシュ地からなる表布2と、保冷剤を封入した保冷部材3と、中綿42を封入したシーツ本体4とからなり、表布2とシーツ本体4の間に開口部5bを備えた空間部5を形成し、この空間部5に保冷部材3を出入可能に挿入してなるものである。
【0013】
この場合において、表布2には、各種のメッシュ生地を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、表布2の表側のメッシュ地21を綿繊維で、裏側の基布22をポリエステル、ナイロン等の合成繊維又はこれらの合成繊維と綿繊維の混紡繊維で、それぞれ構成した、ハニカムメッシュ生地、特に、目が大きく、厚手のハニカムメッシュ生地を好適に用いることができる。
そして、本実施例においては、表布2の表側のメッシュ地21を綿繊維で、裏側の基布22を綿繊維55%、ポリエステル25%、ナイロン20%の混紡繊維で、それぞれ構成した、目が大きく、厚手のハニカムメッシュ生地を用いるようにしている。
この表布2は、表側のメッシュ地21の肌触りや吸湿性を良好に維持しながら、メッシュ地21の強度及び保形性を裏側の基布22の作用によって向上することができ、これによって、空気層を確実に形成するようにすることができる。」
第6 対比・判断
1.本件補正発明1について
(1)対比
本件補正発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「冷却材収納袋1」、「肩掛け紐2」、「両脇下」、「繋ぎ紐15」、「冷却装置」は、それぞれ本件補正発明1の「保冷材ポケット(2)」、「肩掛けベルト(4)」、「両腋下」、「連結部(6)」、「身体装着用保冷材ホルダー」に相当する。
引用発明の冷却剤収納袋は、冷却剤を収納する袋状部材と解されるから、本件補正発明の「袋状部材に保冷材(10)を収納するためのもの」に相当する。
また、引用発明の冷却剤収納袋1は、袋状部材に冷却剤を収納するものであって、袋状部材の開口部に蓋状の開閉部(蓋部材3)が図4(イ)、(ロ)から看取できるので、本件補正発明1の「保冷剤ポケット」と、「開閉部を有する袋状部材で形成され」ている限りで一致する。
引用発明の肩掛け紐2は、冷却材収納袋1の側面の上部に固定されるものであるから、本件補正発明1の「冷却材ポケット(1)の上部両端に固定され、肩に掛けることにより前記左右一対の保冷材ポケット(2)を両腋下に保持しるための左右一対の肩掛けベルト」に相当する。
してみると、引用発明と本件補正発明1とは、
「開閉部を有する袋状部材で形成され、前記袋状部材に保冷材(10)を収納するための、左右一対の保冷材ポケット(2)と、
前記保冷材ポケット(2)の上部両端に固定され、肩に掛けることにより前記左右一対の保冷材ポケット(2)を両腋下に保持するための左右一対の肩掛けベルト(4)と、
前記左右一対の肩掛けベルト(4)を互いに連結する連結部(6)と、を具備してなる、身体装着用保冷材ホルダー。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本件補正発明1では、「前記左右一対の保冷材ポケット(2)の腕側表面の略中央部に形成されたベルトループ(5)であって、該ベルトループ(5)に所望のベルトを挿通して身体背側から両脇下を介して胸部に巻回させて締め付け自在に固定できるようにしたベルトループ(5)」を備えるのに対して、引用発明では、「前記左右一対の冷却剤収納袋1の両側面に繋ぎ止めたリング14であって、該リング14にベルト31を支持して、ベルトにより胸の周囲又は腕の周囲に固定できるようにしたリング14」を備える点。
(相違点2)
本件補正発明1では、「前記保冷材ポケット(2)が、保冷性と通気性とクッション性とを具備する立体メッシュ生地を含んでなる」のに対して、引用発明では、そのような構成がない点。
(2)当審の判断
上記相違点1について検討する。
引用文献2には、上記第5 2.アに摘記したとおり、「胸部14(第2図)に巻いてその両端を重ね合わせうる長さの伸縮製のある例えば幅5cm程度のゴムバンド1に氷等冷媒を入れた冷やし袋2,3を該バンド1にスライド可能に取付け」ることが記載されている。
そして第1図(B)からは、冷やし袋2,3に何らかの部材を設けて、当該部材にゴムバンド1を挿通することで、冷やし袋2,3をゴムバンド1にスライド可能に取り付けていることが看取できる。
また、第2図からは、冷やし袋2,3の腕側にゴムバンド1が巻回されている態様が看取できるから、冷やし袋2,3をゴムバンド1にスライド可能に取り付けるための部材は、冷やし袋2,3の腕側の表面に設けられているものといえる。
してみると、引用文献2には、冷やし袋の腕側の表面に形成された部材にスライド可能に取り付けられたゴムバンドを胸部に巻回させてその両端を重ね合わせて固定できる構造が記載されているものといえる(以下、「引用文献2記載事項」という。)
一方、引用発明は、上記のとおり左右一対の冷却剤収納袋1を「前記左右一対の冷却剤収納袋1の両側面に繋ぎ止めたリング14であって、該リング14にベルト31を支持して、ベルトにより胸の周囲又は腕の周囲に固定できるようにした」ものであって、引用文献1の【図4】(a)、(b)にも、胸の周囲及び腕の周囲にベルト31を巻回した態様が記載されている。
また、引用文献1の【図4】(ロ)、(a)、(b)を参酌すると、引用発明の胸部に巻回するベルト31及びリング14は、冷却剤収納袋1の側面胸部側に取り付けられており、腕部に巻回するベルト31及びリング14は、冷却剤収納袋1の側面腕部側に取り付けられていることが看取できる。
ここで、引用発明の胸部に巻回するベルト31及びリング14を引用文献2記載事項のゴムバンドに置換しようとしても、ゴムバンドをスライド自在とする部材は、腕部に巻回するベルト31及びリング14との干渉を避けるために冷却剤収納袋1の胸部側の表面とせざるを得ず、本件補正発明1のように腕側表面に設けることはできない。
すなわち、引用発明に引用文献2記載事項を組み合わせるにあたっての阻害事由があるから、引用発明に引用文献2記載事項を組み合わせることはできないというべきである。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本件補正発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本件補正発明2~9について
本件補正発明2も、本件補正発明1の「前記左右一対の保冷材ポケット(2)の腕側表面の略中央部に形成されたベルトループ(5)であって、該ベルトループ(5)に所望のベルトを挿通して身体背側から両脇下を介して胸部に巻回させて締め付け自在に固定できるようにしたベルトループ(5)」と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本件補正発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2記載事項及び周知技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。
3.小括
以上のとおりであるから、本件補正発明1~本件補正発明9は、特許出願に際独立して特許を受けることができる発明であり、特許法第17条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
第7 原査定に対する判断
上記のとおり、本件補正発明1~本件補正発明9は、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2記載事項及び周知技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって本願を拒絶することはできないし、他に本願を拒絶すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-008544