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特許拒絶査定不服審判

2020-007423

電気融着継手及び電気融着継手の製造方法

審判番号
2020-007423
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-068322外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年06月01日
審決日
2021年03月26日
公報発行日
2021年05月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (F16L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016- 68322「電気融着継手及び電気融着継手の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017-180652、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 12項目
【理 由】

第1 手続の経緯

本願は、平成28年3月30日の出願であって、令和1年10月28日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月12日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和2年2月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、令和2年6月1日に拒絶査定不服審判の請求及び同時に手続補正書の提出がされたものである。

第2 原査定の概要

原査定の概要は次のとおりである。

(1)この出願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)この出願の請求項5、6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1、2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等>

刊行物1:特開平2-141228号公報
刊行物2:特開2001-141168号公報

第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

審判請求時の補正によって、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「加温用電熱線」に関して「前記加温用電熱線同士を接続する接続用電熱線」と限定するとともに、「ICタグ」に関して「前記接続用電熱線に電気的に接続され」、「前記ICタグが前記接続用電熱線の中央部に設けられ、前記ICタグのアンテナとして機能する前記接続用電熱線および前記加温用電熱線の長さが前記ICタグの左右で対称となる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、上記の補正により追加される事項は、出願当初の特許請求の範囲の【請求項2】及び出願当初の明細書の段落【0024】、【0025】に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではない。

そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし5に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明

本願請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和2年6月1日提出の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明は以下のとおりである。

「【請求項1】
複数の樹脂管を加熱により融着することで接続する電気融着継手であって、
複数の受け口を有する樹脂製の継手本体と、
前記受け口に嵌入された前記樹脂管に当接する前記受け口の融着部に埋設された加温用電熱線と、
前記加温用電熱線同士を接続する接続用電熱線と、 隣り合う前記融着部同士の間の前記継手本体に埋没されて前記接続用電熱線に電気的に接続され、アンテナ機能を形成したICタグと、
を備え、
前記ICタグが前記接続用電熱線の中央部に設けられ、前記ICタグのアンテナとして機能する前記接続用電熱線および前記加温用電熱線の長さが前記ICタグの左右で対称となる、電気融着継手。」

第5 刊行物、引用発明等

1.刊行物1について

原査定の拒絶の理由において引用された刊行物1には、「熱可塑性加熱溶融パイプ装着具」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、(1-b)「課題を解決するための手段」、(1-c)「実施例」の箇所を除き、当審が付与したものである。以下同様。)。

(1)刊行物1の記載

(1-a)「本発明の目的は、パイプ装着具の胴体部分に組み込んであるかまたは胴体部分上に据え付けてあるエレメントと電磁気信号を用いて交信し、エレメントに必要とする情報を発信させるようにした便利なパイプ装着具装置を提供することにある。」(第3頁左上欄第8~12行)

(1-b)「課題を解決するための手段

具体的に説明すると、本発明によれば、パイプに被せるようになつていて、組み込まれた電気加熱エレメントにより溶融されるような胴体部分を備えている熱可塑性加熱溶融パイプ装着具において、情報収容エレメントが胴体部分内かまたは胴体部分上に設置され、前記エレメントは外部供給源から電磁気信号を用いて交信しながら前記情報を表わす信号を伝達するように構成されている熱可塑性加熱溶融パイプ装着具を提供することができる。電磁気信号は無線周波数信号であるのが好ましい。また前記情報収容エレメントは、好ましくはパッシブエレメントであり、RF信号より交信時にだけ情報収容信号を発する。

前記情報収容エレメント自体は電力供給源を備えていないのが好ましく、RF信号受信しこれを交換して得る電力に頼るのがよい。これとは別に、前記情報収容エレメントは自己の電力供給源により作動するようにもできる。電力のスイッチはRF信号受信によって初めて入り、前記情報収容エレメントが必要な情報を伝達するようにしている。」(第3頁左上欄第13行~右上欄第14行)

(1-c)「実施例

第1図には、2本のパイプの端部同士を接続するようになつているチユーブ形式またはスリーブ形式のパイプ装着具が示されている。装着具10は、従来と同じ方法で加熱ワイヤ14(第2図参照)に連結された端子12と13を備えている。

パイプ装着具の胴体には凹所9が設けてある。この凹所9内には情報収容エレメント11がスナツプ嵌めされ、突起9aと9bにより所定位置に保持されている。これとは別に、パイプ装着具の壁に情報収容エレメント11を鋳込んでおくこともできる。

リード線21を通じて電力を供給する溶融制御ユニツト20が設置されている。ユニツト20は、情報収容エレメント11と交信するための送受信機が装備している。この送受信機は制御ユニツト20に組み込んでおくことができ、また適当なアンテナをボツクス22内に内蔵しておくこともできる。あるいは送受信機設備全体をボツクス22内に設置することができ、またリード線24,25の途中に組み込んでおくこともできる。

電力は、従来と同じようにしてリード線24、25から経て端子12、13に供給される。

情報収容エレメント11は前述したような情報を収容しておくこともできるが、装着具を使用して効率よくパイプを接続するのに必要な電圧と時間または電流と時間に関する情報を収容しておくと非常に都合がよい。情報収集エレメントには前述したもの以外の多くの情報を収容しておくことができる。

前記溶融制御ユニツト20には送受信機26(第3図)を納めておくことができる。この溶融制御ユニツトは、RF信号形態をした交信信号をリード線23からアンテナ22に供給することができる。アンテナはRF信号発信し、また情報収容エレメント11からの送信信号を受信する。」(第3頁右下欄第7行~第4頁右上欄第2行)

(1-d)「独立したアンテナを使用する代わりに、加熱コイル自体をアンテナとして利用することもできる。」(第4頁左下欄第6、7行)

(1-e)「

」

(1-f)Fig.2から、加熱ワイヤ14は、端子12と端子13との間の装着具10内に埋設されていることが把握できる。

(2)引用発明

上記(1)からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「パイプに被せるようになっていて、組み込まれた電気加熱エレメントにより溶融されるような胴体部分を備えている熱可塑性加熱溶融パイプ装着具であって、
2本のパイプの端部同士を接続するようになっているチューブ形式またはスリーブ形式のパイプ装着具10と、
端子12と端子13との間の装着具10内に埋設された電気加熱エレメントとしての加熱ワイヤ14と、
パイプ装着具10の胴体に設けられた凹所9内にスナップ嵌めされた情報収容エレメント11と、
リード線24、25を通じて端子12、13に電力を供給するとともにリード線23から交信信号をボックス22に供給する溶融制御ユニット20と、を備え、
溶融制御ユニット20は、情報収容エレメント11と交信するための送受信機としてのアンテナをボックス22内に内蔵しておき、
独立したアンテナを使用する代わりに、加熱ワイヤ14自体をアンテナとして利用することもできる、熱可塑性加熱溶融パイプ装着具。」

第6 対比・判断

(1)本願発明1について

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明は、「2本のパイプの端部同士を接続する」ものであるから、複数パイプを加熱により溶融するものといえる。

よって、引用発明の「パイプに被せるようになっていて、組み込まれた電気加熱エレメントにより溶融されるような胴体部分を備えている熱可塑性加熱溶融パイプ装着具」は、本願発明1の「複数の樹脂管を加熱により融着することで接続する電気融着継手」に相当する。

イ 引用発明のパイプ装着部10は、「2本のパイプの端部同士を接続するようになっているチューブ形式またはスリーブ形式」となっているから、複数の受け口を有していることは明らかである。また、引用発明は、上記アのとおり、熱可塑性加熱溶融パイプ装着具であるから、樹脂製といえる。

よって、引用発明の「2本のパイプの端部同士を接続するようになっているチューブ形式またはスリーブ形式のパイプ装着具10」は、本願発明1の「複数の受け口を有する樹脂製の継手本体」に相当する。

ウ 引用発明は、「パイプに被せるようになっていて、組み込まれた電気加熱エレメントにより溶融されるような胴体部分を備えている」から、パイプを融着する胴体部分に電気加熱エレメントとしての加熱ワイヤ14が埋設されていることは明らかである。

よって、引用発明の「端子12と端子13との間の装着具10内に埋設された電気加熱エレメントとしての加熱ワイヤ14」は、本願発明1の「受け口に嵌入された樹脂管に当接する前記受け口の融着部に埋設された加温用電熱線」に相当する。

エ 引用発明の「情報収容エレメント11」は、本願発明1の「ICタグ」に相当する。

よって、引用発明の「パイプ装着具10の胴体に設けられた凹所9内にスナップ嵌めされた情報収容エレメント11」と、本願発明1の「隣り合う融着部同士の間の継手本体に埋没されて接続用電熱線に電気的に接続され、アンテナ機能を形成したICタグ」とは、「継手本体の設けられたICタグ」である点で共通する。

そうすると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]

「複数の樹脂管を加熱により融着することで接続する電気融着継手であって、
複数の受け口を有する樹脂製の継手本体と、
前記受け口に嵌入された前記樹脂管に当接する前記受け口の融着部に埋設された加温用電熱線と、前記継手本体に設けられたICタグと、
を備えた、電気融着継手。」

[相違点1]

継手本体に設けられたICタグに関して、本願発明1では、「隣り合う前記融着部同士の間の前記継手本体に埋没されて前記接続用電熱線に電気的に接続され、アンテナ機能を形成した」のに対して、引用発明では、溶融制御ユニット20は、情報収容エレメント11と交信するための送受信機としてのアンテナを備えているが、情報収容エレメント11(ICタグ)のアンテナについては明示されておらず、該情報収容エレメント11はパイプ装着具10の胴体に設けられた凹所9内にスナップ嵌めされている点。

[相違点2]

本願発明1は、「加温用電熱線同士を接続する接続用電熱線」を備え、「ICタグが接続用電熱線の中央部に設けられ、前記ICタグのアンテナとして機能する前記接続用電熱線および前記加温用電熱線の長さが前記ICタグの左右で対称となる」のに対して、引用発明は、情報収容エレメント11(ICタグ)のアンテナについては明示されていない点。

上記相違点について検討する。

[相違点1]について

引用発明においては、情報収容エレメント11(ICタグ)はパイプ装着具10に埋没されたものではなく、情報収容エレメント11(ICタグ)と情報収容エレメント11(ICタグ)が備えるアンテナとの関係については明示されていない。さらに、情報収容エレメント11と加熱コイル14との関係についても不明である。

したがって、引用発明の情報収容エレメント11(ICタグ)をパイプ装着具10に埋没するとともに、加熱コイル14に電気的に接続し、アンテナ機能を形成し、上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者といえども容易になし得たこととはいえない。

なお、引用発明は、アンテナを備えているが、上述のとおり、当該アンテナは、溶融制御ユニット20に設けられた、情報収容エレメント11(ICタグ)と交信するためのアンテナであり、情報収容エレメント11(ICタグ)に設けられたアンテナではない。

さらに、引用発明には、「独立したアンテナを使用する代わりに、加熱コイル(加熱ワイヤ14)自体をアンテナとして利用することもできる」ことが開示されているが、このアンテナも情報収容エレメント11(ICタグ)に設けられたアンテナではなく、情報収容エレメント11(ICタグ)が加熱ワイヤ14自体をアンテナとして利用することを意味するものではない。

[相違点2]について

上記相違点1で検討したとおり、引用発明の情報収容エレメント11(ICタグ)を加熱コイル14に電気的に接続し、アンテナ機能を形成することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、引用発明において、さらに、加熱ワイヤ14同士を接続する接続用電熱線を設けるとともに、情報収容エレメント11(ICタグ)を接続用電熱線の中央部に設け、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることも、当業者が容易になし得たこととはいえない。したがって、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

そして、本願発明1は、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成を採用することにより、「金属等を含んで導電性を有する加温用電熱線及び接続用電熱線に対してEF継手の外部から電波が照射されると、これらの電熱線から誘導電流が発生し、接続用電熱線と電気的に接続されているICタグに誘導電流が流れ、この電熱線がICタグのアンテナとして機能する。これにより、ICタグは、通信及び内部情報の読み出し・書き出しに必要な電力を得る。」、「接続用電熱線が加温用電熱線同士の間に配置されているので、接続用電熱線に対するICタグの接続部分が加温用電熱線及び接続用電熱線の電熱線の長さ方向の略中間に位置させることができ、アンテナとして機能する電熱線の長さ(アンテナ長)を長くすることができる。」(段落【0012】)等の格別な効果を奏するものである。

(2)本願発明2、3について

本願の特許請求の範囲における請求項2、3は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用して記載したものであるから、本願発明2、3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。

したがって、本願発明2、3は、本願発明1と同様の理由で、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本願発明4、5について

本願の特許請求の範囲における請求項4、5は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用して記載したものであるから、本願発明4、5は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。

そして、刊行物2においては、「ICタグ」に関する記載がなく、引用発明に加えて、刊行物2の記載事項を考慮しても、本願発明4、5は当業者が容易になし得たものとはいえない。

したがって、本願発明4、5は、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1ないし5は「前記加温用電熱線同士を接続する接続用電熱線」、「前記接続用電熱線に電気的に接続され」、「前記ICタグが前記接続用電熱線の中央部に設けられ、前記ICタグのアンテナとして機能する前記接続用電熱線および前記加温用電熱線の長さが前記ICタグの左右で対称となる」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された刊行物1、2に係る発明に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、本願発明1ないし3は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとすることはできない。また、本願発明4、5は、当業者が引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-007423

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