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特許拒絶査定不服審判

2020-006012

磁性体コアおよび磁性部品

審判番号
2020-006012
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-032890外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年05月01日
審決日
2021年02月10日
公報発行日
2021年05月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2019- 32890「磁性体コアおよび磁性部品」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-136647〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
【理 由】

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和元年2月26日の出願であって、令和元年8月19日付けで拒絶理由が通知され、令和元年10月24日に手続補正がなされ、令和元年10月31日付けで最後の拒絶理由が通知され、令和2年1月10日に手続補正がなされ、令和2年1月30日付けで、令和2年1月10日の手続補正について補正却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年5月1日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、令和2年10月13日に上申書が提出されたものである。

第2 令和2年5月1日にされた手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年5月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「【請求項1】
大径粉および小径粉を含むFe系軟磁性粉を有する磁性体コアであって、
前記大径粉がFe基ナノ結晶を含み、
前記大径粉は、組成式(Fe(1-(α+β))X1αX2β)(1-(a+b+c+d+e+f+g))MaBbPcSidCeSfTigからなる成分からなり、
続きを表示(全27行)
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Cr,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
MはNb,Hf,Zr,Ta,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
0.020≦a≦0.14
0.020<b≦0.20
0≦c≦0.15
0≦d≦0.14
0≦e≦0.030
0≦f≦0.010
0≦g≦0.0010
α≧0
β≧0
0≦α+β≦0.50
であり、
前記大径粉における上記以外の元素の含有量は前記大径粉100重量%に対して、0.1重量%以下であり、
前記大径粉の平均粒子径をD1、前記小径粉の平均粒子径をD2として、
D1が5.0μm以上200μm以下であり、D2が0.10μm以上15μm以下であり、D2/D1<1.0を満たし、
前記大径粉および前記小径粉が絶縁コーティングされており、
前記大径粉の平均絶縁コート厚みをT1、前記小径粉の平均絶縁コート厚みをT2として、
3.00≦T1/T2≦5.00を満たし、
任意の切断面における前記大径粉の面積割合をS1、前記小径粉の面積割合をS2とし
て、
0.20≦S2/S1≦0.55を満たす磁性体コア。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、令和元年10月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
大径粉および小径粉を含むFe系軟磁性粉を有する磁性体コアであって、
前記大径粉がFe基ナノ結晶を含み、
前記大径粉は、組成式(Fe(1-(α+β))X1αX2β)(1-(a+b+c+d+e+f+g))MaBbPcSidCeSfTigからなる成分からなり、
続きを表示(全24行)
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Cr,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
MはNb,Hf,Zr,Ta,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
0.020≦a≦0.14
0.020<b≦0.20
0≦c≦0.15
0≦d≦0.14
0≦e≦0.030
0≦f≦0.010
0≦g≦0.0010
α≧0
β≧0
0≦α+β≦0.50
であり、
前記大径粉における上記以外の元素の含有量は前記大径粉100重量%に対して、0.1重量%以下であり、
前記大径粉の平均粒子径をD1、前記小径粉の平均粒子径をD2として、
D1が5.0μm以上200μm以下であり、D2が0.10μm以上15μm以下であり、D2/D1<1.0を満たし、
前記大径粉および前記小径粉が絶縁コーティングされており、
前記大径粉の平均絶縁コート厚みをT1、前記小径粉の平均絶縁コート厚みをT2として、
T1/T2>1.0を満たす磁性体コア。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「T1/T2」について、「T1/T2>1.0」とあったところを、「3.00≦T1/T2≦5.00」と減縮するとともに、「任意の切断面における前記大径粉の面積割合をS1、前記小径粉の面積割合をS2として、0.20≦S2/S1≦0.55を満たす」との限定をさらに付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

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ア 引用文献1

原査定の拒絶の理由で引用された、特開2018-182203号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0001】
本発明は、コイル部品、具体的には磁性体部と、該磁性体部に埋設されたコイル導体と、該磁性体部の外部に設けられた外部電極を有して成るコイル部品に関する。」
「【0005】
本発明の目的は、金属粒子および樹脂材料を含んで成る磁性体部にコイル導体が埋設されたコイル部品であって、磁性体部における金属粒子の充填率が高いコイル部品を提供することにある。」
「【0012】
・・・図2~図4に示されるように、磁性体ベース8はその上面に凸部11を有している。磁性体ベース8は、前面、底面および背面に、両端面に接するように溝14,15を有している。磁性体ベース8上に、コイル導体3が、磁性体ベース8の凸部11が巻芯部に位置するように配置されている。・・・」
「【0014】
上記磁性体部2は、磁性体ベース8および磁性体外装9から構成される。」
「【0038】
上記磁性体部2は、金属粒子および樹脂材料を含むコンポジット材料から構成される。」
「【0046】
上記金属粒子は、結晶質の金属(あるいは合金)の粒子(以下、単に「結晶質粒子」ともいう)であってもよく、アモルファスの金属(あるいは合金)の粒子(以下、単に「アモルファス粒子」ともいう)であってもよく、ナノ結晶構造の金属(あるいは合金)の粒子(以下、単に「ナノ結晶粒子」ともいう)であってもよい。尚、ここに、ナノ結晶構造とは、アモルファスに微小な結晶を析出させた構造を意味する。一の態様において、磁性体部を構成する金属粒子は、結晶質粒子、アモルファス粒子、およびナノ結晶粒子から選択される少なくとも2種の混合物、好ましくは結晶質粒子およびアモルファス粒子またはナノ結晶粒子の混合物であり得る。一の態様において、磁性体部を構成する金属粒子は、結晶質粒子およびアモルファス粒子の混合物であり得る。一の態様において、磁性体部を構成する金属粒子は、結晶質粒子およびナノ結晶粒子の混合物であり得る。」

「【0050】

・・・アモルファスの金属粒子およびナノ結晶構造の金属粒子の平均粒径を、結晶質の金属粒子の平均粒径よりも大きくすることにより、アモルファス粒子およびナノ結晶構造の金属粒子の透磁率への寄与を相対的に大きくすることができる。

「【0064】
一の態様において、アモルファスの金属粒子およびナノ結晶構造の金属粒子の絶縁被膜の厚みは、結晶質の金属粒子の絶縁被膜の厚みよりも厚い。
【0065】
かかる態様において、アモルファスの金属粒子およびナノ結晶構造の金属粒子の絶縁被膜の厚みと、結晶質の金属粒子の絶縁被膜の厚みとの差は、好ましくは5nm以上25nm以下、より好ましくは5nm以上20nm以下、さらに好ましくは10nm以上20nm以下であり得る。
続きを表示(全12行)
【0066】
好ましい態様において、アモルファスの金属粒子およびナノ結晶構造の金属粒子の絶縁被膜の厚みは、10nm以上30nm以下であり、結晶質の金属粒子の絶縁被膜の厚みは、5nm以上20nm以下である。
【0067】
好ましい態様において、アモルファスの金属粒子およびナノ結晶構造の金属粒子は相対的に平均粒径が大きく、結晶質の金属粒子は相対的に平均粒径が小さく、アモルファスの金属粒子およびナノ結晶構造の金属粒子を覆う絶縁材料はリン酸を含み、結晶質の金属粒子を覆う絶縁材料はSiを含む。比較的粒径が大きい粒子(アモルファス粒子またはナノ結晶構造の金属粒子)を、絶縁性が比較的低いリン酸を含む絶縁材料で被覆すると、圧縮成形時に他のアモルファス粒子またはナノ結晶構造の金属粒子と電気的に繋がって、電気的に接続された粒子の塊を形成し得る。これにより磁性体部の透磁率が向上する。また、比較的粒径が小さい粒子(結晶性粒子)を、絶縁性が比較的高いSiを含む絶縁材料で被覆することにより、磁性体部全体としての絶縁性を高めることができる。これにより、高い透磁率と高い絶縁性を両立することが容易になる。
【0068】
上記磁性体部2において、磁性体ベース8における金属粒子の充填率は、磁性体外装9における金属粒子の充填率よりも高い。磁性体ベースにおける金属粒子の充填率、特に磁性体ベースの凸部における金属粒子の充填率を高くすることにより、磁性体部の透磁率が高くなり、より高いインダクタンスを得ることが可能になる。
【0069】
磁性体ベース8における金属粒子の充填率は、好ましくは65%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは85%以上であり得る。また、磁性体ベース8における金属粒子の充填率の上限は特に限定されないが、例えば、当該充填率は、98%以下、95%以下、90%以下または85%以下であり得る。一の態様において、磁性体ベース8における金属粒子の充填率は、65%以上98%以下、65%以上85%以下、75%以上98%以下、または85%以上98%以下であり得る。」
「【0072】
ここに、上記充填率とは、磁性体部の断面のSEM画像における金属粒子の占める面積の割合を意味する。例えば、上記平均粒径は、コイル部品1をワイヤーソー(メイワフォーシス株式会社製DWS3032-4)で製品中央部付近を切断し、LT面の略中央部が露出するようにする。得られた断面に対して、イオンミリングを行い(株式会社日立ハイテク社製イオンミリング装置IM4000)、切断によるダレを除去し、観察用の断面を得た。断面の複数箇所(例えば5箇所)の所定の領域(例えば130μm×100μm)をSEMで撮影し、このSEM画像を画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング株式会社製、A像くん(登録商標))用いて解析して、領域中金属粒子が占める面積の割合を求めることにより得ることができる。」
「【0110】
次に、コイル部品1の製造方法について説明する。」
「【0134】
(実施例1~5および比較例1~2)
・金属粒子の作製
金属粒子としてFe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子(Si含有量7wt%、Cr含有量3wt%、B含有量3wt%、C含有量0.8wt%;メジアン径(D50)50μm)およびFeの結晶質粒子(メジアン径(D50)2μm)を準備した。尚、アモルファスおよび結晶質については、X線回折を用いて、アモルファスを示すハローを確認することによりアモルファスであることを同定し、結晶相に起因する回折ピークを確認することにより結晶質であることを同定した。
続きを表示(全13行)
【0135】
次いで、Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子を、機械的被覆法(メカノフュージョン(登録商標))により、リン酸でコートした(厚み20nm)。また、Feの結晶質粒子を、金属アルコキシドとしてオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を用いるゾル-ゲル法により、二酸化ケイ素(SiO2)によりコートした(厚み10nm)。
【0136】
・磁性体ベースの作製
上記Fe-Si-Cr系合金粒子およびFe粒子を、下記表1に示す割合で秤量し、Fe-Si-Cr系合金粒子およびFe粒子の混合粉末100質量部に対して、エポキシ系の熱硬化性樹脂を3質量部、メジアン径(D50)が40nmのSiO2ビーズを0.08質量部加え、プラネタリーミキサーで30分混合して、磁性体ベース用の材料を調製した。得られた材料を、金型で加圧成形(1000MPa、100℃)し、金型から取り出した後、250℃で30分熱硬化して、トラック状の凸部を有する磁性体ベースを得た。尚、凹部の壁面と底面のなす角は、120°とした。得られた磁性体ベース5個の平均寸法を下記表2に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】(省略)」
「【0145】
以上により、実施例1~5および比較例1~2の試料(コイル部品)を作製した。
【0146】
評価
(1)透磁率μ
作製した試料を各実施例につき5個について、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製、E4991A;条件:1MHz、1Vrms、周囲温度20±3℃)でインダクタンスを測定し、透磁率(μ)を計算した。5個の平均を求めて、各実施例
の透磁率とした。結果を下記表4に示す。」
「【0153】
【表4】
」

上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 段落【0012】には、磁性体ベースはその上面に凸部を有し、磁性体ベース上に、コイル導体が、磁性体ベースの凸部が巻芯部に位置するように配置されることが記載されている。

イ 段落【0014】、【0038】及び【0046】より、磁性体ベースが金属粒子および樹脂材料を含むコンポジット材料から構成され、磁性体ベースを構成する金属粒子は、結晶質粒子およびアモルファス粒子の混合物であることを読み取ることができる。

ウ 段落【0064】には、アモルファスの金属粒子の絶縁被膜の厚みは、結晶質の金属粒子の絶縁被膜の厚みよりも厚いことが記載されている。

エ 段落【0066】には、アモルファスの金属粒子の絶縁被膜の厚みは、10nm以上30nm以下であり、結晶質の金属粒子の絶縁被膜の厚みは、5nm以上20nm以下であることが記載されている。

オ 段落【0134】には、金属粒子としてFe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子(メジアン径(D50)50μm)およびFeの結晶質粒子(メジアン径(D50)2μm)を準備したことが記載されている。

カ 段落【0135】には、Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子を、リン酸でコートし(厚み20nm)、また、Feの結晶質粒子を、二酸化ケイ素(SiO2)によりコートし(厚み10nm)たことが記載されている。

キ 段落【0136】及び【0137】には、Fe-Si-Cr系合金粒子およびFe粒子を、配合量(質量%)65:35~90:10(実施例1~5)の割合で秤量し、エポキシ系の熱硬化性樹脂を加え、加圧成形した後、熱硬化して、凸部を有する磁性体ベースを得たことが記載されている。

上記アないしキによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「磁性体ベースはその上面に凸部を有し、磁性体ベース上に、コイル導体が、磁性体ベースの凸部が巻芯部に位置するように配置され、
磁性体ベースが金属粒子および樹脂材料を含むコンポジット材料から構成され、磁性体ベースを構成する金属粒子は、結晶質粒子およびアモルファス粒子の混合物であり、
アモルファスの金属粒子の絶縁被膜の厚みは、結晶質の金属粒子の絶縁被膜の厚みよりも厚く、
アモルファスの金属粒子の絶縁被膜の厚みは、10nm以上30nm以下であり、結晶質の金属粒子の絶縁被膜の厚みは、5nm以上20nm以下であり、
金属粒子としてFe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子(メジアン径(D50)50μm)およびFeの結晶質粒子(メジアン径(D50)2μm)を準備し、
Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子を、リン酸でコートし(厚み20nm)、また、Feの結晶質粒子を、二酸化ケイ素(SiO2)によりコートし(厚み10nm)、
Fe-Si-Cr系合金粒子およびFe粒子を、配合量(質量%)65:35~90:10(実施例1~5)の割合で秤量し、エポキシ系の熱硬化性樹脂を加え、加圧成形した後、熱硬化して得た、磁性体ベース。」

イ 引用文献2

原査定の拒絶の理由に引用された、特開2016-25352号公報(以下、「引用文献2」という。) には、次の事項が記載されている。

「【0017】
インバータ、トランス、インダクタなどに用いられる軟磁性材料には、パーマロイ(permalloy, Fe-Nialloy),センダスト(Sendust, Fe-Si-Al)またはFINEMET(Fe-Si-B-Nb-Cu)等が挙げられ、軟磁性材料に軟磁気的性質を付与するために強磁性材料を合金形態で含んでいる。
【0018】
図1を参照して、本発明の実施形態による球形のFeSiBNbCu系軟磁性金属粉末100は、10nm~20nm大きさのナノスケールの結晶粒110が形成されているこが分かる。ナノスケールの結晶粒がFeSiBNbCu系軟磁性金属粉末に形成されていると、金属粉末の最終組織が既にナノスケールに決定化された状態であるため、後続の熱処理工程において組織の結晶化が抑制され、熱への安定性が優れ、アモルファスの軟磁性金属粉末に比べて高い透磁率が見える。」
「【0034】
実施例(結晶粒-球形) Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu1組成の軟磁性金属材料を溶融し、ガス噴霧工程によって球形の軟磁性金属粉末を製造後、525℃の温度で30分間熱処理して、球形の軟磁性金属粉末にナノスケールの結晶粒を形成する。
【0035】
前記ナノスケールの結晶粒が形成られた球形のFeSiBNbCu系軟磁性金属粉末をエポキシ系バインダーで混合後、トロイダル形態のコアを複数製造する。」

したがって、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる(カッコ内に、認定の根拠とした段落番号を付記した。)。

「軟磁性材料には、FINEMET(Fe-Si-B-Nb-Cu)が挙げられ(【0017】)、
Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu1組成の軟磁性金属粉末にナノスケールの結晶粒を形成(【0034】)し、
前記ナノスケールの結晶粒が形成られたFeSiBNbCu系軟磁性金属粉末をエポキシ系バインダーで混合後コアを製造(【0035】)し、ナノスケールの結晶粒がFeSiBNbCu系軟磁性金属粉末に形成されていると、アモルファスの軟磁性金属粉末に比べて高い透磁率が見える(【0018】)。」

ウ 引用文献4

原査定の拒絶の理由に引用された、特開2016-208002号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「【0019】

本体50は、コイル電子部品100の外観を成し、磁気特性を示す磁性材料が充填されて形成されることができる。

「【0053】
本発明の一実施形態によれば、上記本体を破断して一断面を観察したとき、第1磁性粒子51が占める断面積の和をa、第2磁性粒子及び第3磁性粒子52、53が占める断面積の和をbとするとき、上記第1から第3磁性粒子はa:bが5:5~9:1を満たすように本体に含まれることができる。
【0054】
上記第1から第3磁性粒子51、52、53が上記範囲の混合比で本体に含まれる場合、充填率が向上し、高透磁率を示すことができる。
【0055】
一方、上記本体を破断して一断面を観察したとき、上記本体に含まれた第2磁性粒子52の断面積の和と第3磁性粒子53の断面積の和の比は5:5~9:1を満たすことができる。
【0056】
例えば、上記本体を破断して一断面を観察すると、上記第1磁性粒子が占める断面積:第2磁性粒子が占める断面積:第3磁性粒子が占める断面積の比は5:4.5:0.5~9:0.9:0.1であることができ、上記第1から第3磁性粒子が上記範囲の混合比で本体に含まれる場合、充填率が向上し、高透磁率を示すことができる。」

よって、引用文献4には、次の技術(以下、「引用文献4に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる(カッコ内に、認定の根拠とした段落番号を付記した。)。

「本体50は、磁気特性を示す磁性材料が充填されて形成され(【0019】)、上記本体を破断して一断面を観察したとき、第1磁性粒子51が占める断面積の和をa、第2磁性粒子及び第3磁性粒子52、53が占める断面積の和をbとするとき、上記第1から第3磁性粒子はa:bが5:5~9:1を満たすように本体に含まれることができ(【0053】)、上記第1から第3磁性粒子51、52、53が上記範囲の混合比で本体に含まれる場合、充填率が向上し、高透磁率を示すことができる(【0054】)。」

エ 引用文献5

周知技術を示す文献として当審で新たに引用する、佐久間 健人、西沢泰二、定量金属組織学、日本金属学会会報、10巻、第5号、1971年、p.279-289(以下、「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「
」(第281頁左欄)
「(7)AA
これは顕微鏡組織中で目的とする相の全表面積に対する相対的な面積を表わす.」(第282頁左欄第17-19行)
「 (i)VV
ある相の体積比は断面での観察結果をもとに次式によって評価することができる.
VV=AA=LL=PP         (5)
一例としてVV=AAの関係を示す.」(第282頁右欄第4-9行)

よって、引用文献5には、「体積比(Vv)を、断面での観察結果をもとに、Vv=AA(AA 面積比)の関係によって評価する」ことが記載されているものと認められる。

オ 引用文献6

周知技術を示す文献として当審で新たに引用する、山内清隆、吉沢克仁、受賞記念講演:平成14年度技術功績賞、アモルファスおよび多結晶金属系軟磁性材料の開発、粉体および粉末冶金、一般社団法人 粉体粉末冶金協会、第51巻、第3号、2004年3月、p.135-142(以下、「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

(ア)「Fig.16に,ファインメットの代表的な組成であるFe73.5Cu1Nb3Si13.5B9」(第140頁右欄第3-4行)

(イ)「また,Fig.1に示したように,Co基アモルファスや80%Niパーマロイなどは優れた軟磁気特性をもつがFe量が少ないために飽和磁束密度が低く,また飽和磁束密度が高いFe基アモルファスや珪素鋼は飽和磁束蜜度は大きいが,比透磁率は小さい.このように,飽和磁束密度と比透磁率ともに大きな材料は従来知られていなかったが,ファインメットはFeを主体にした合金であるために飽和磁束密度が大きいと同時に,上述した理由により優れた軟磁気特性を持ち,従来材料の特性限界を超えるものである.」(第141頁右第2-11行)

(ウ)「このようなことから,ファインメットは,巻磁心形状として各種電源のコモンモードチョークコイルや高周波トランス,加速器用コアや電流センサなど様々な用途に実用化されている.また,ファインメットシートをPETフィルムで積層した磁気シールドシートや,粉末を有機樹脂と複合シート化した電磁波ノイズ吸収シートや圧粉磁心など,ファインメット粉末を電子部品として利用する用途開発が精力的に進められている.」(第142頁左第7-13行)

上記「(ア)」より、ファインメットの代表的な組成がFe73.5Cu1Nb3Si13.5B9であることを読み取ることができ、「(イ)」より、ファインメットが、Fe基アモルファスより比透磁率が大きいことを読み取ることができるから、引用文献6には、次の技術(以下、「引用文献6に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる。

「代表的な組成がFe73.5Cu1Nb3Si13.5B9であるファインメットは、Fe基アモルファスより比透磁率が大きく、圧粉磁心など、ファインメット粉末を電子部品として利用する。」

(3)引用発明との対比

本件補正発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1における「磁性体ベース」は、「コイル導体が、磁性体ベースの凸部が巻芯部に位置するように配置され」るから、本件補正発明における「磁性体コア」に相当する。

イ 引用発明1における「メジアン径(D50)50μm」の「Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子」及び「メジアン径(D50)2μm」の「Feの結晶質粒子」が、それぞれ、本件補正発明における「大径粉」及び「小径粉」の「Fe系軟磁性粉」に相当する。

ウ 引用発明1における「磁性体ベースを構成する金属粒子」は、「メジアン径(D50)50μm」の「Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子」と「メジアン径(D50)2μm」の「Feの結晶質粒子」の「混合物」であるから、本件補正発明における「大径粉および小径粉を含むFe系軟磁性粉」に相当する。

エ 引用発明1における「メジアン径(D50)50μm」の「Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子」における、Fe以外の含有量は、引用文献1の段落【0134】に「Si含有量7wt%、Cr含有量3wt%、B含有量3wt%、C含有量0.8wt%」と記載されているとおりであるから、本件補正発明とは、「前記大径粉がFeを主成分として含み、」の点で共通する。

しかしながら、本件補正発明における「大径粉」が、「Fe基ナノ結晶を含み」、その「組成式」が「(Fe(1-(α+β))X1αX2β)(1-(a+b+c+d+e+f+g))MaBbPcSidCeSfTigからなる成分からなり、

X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、

X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Cr,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、

MはNb,Hf,Zr,Ta,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、

0.020≦a≦0.14

0.020<b≦0.20

0≦c≦0.15

0≦d≦0.14

0≦e≦0.030

0≦f≦0.010

0≦g≦0.0010

α≧0

β≧0

0≦α+β≦0.50

であり、

前記大径粉における上記以外の元素の含有量は前記大径粉100重量%に対して、0.1重量%以下であ」るのに対し、引用発明1における「メジアン径(D50)50μm」の「粒子」は、「Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子」であって、「Fe基ナノ結晶を含」んでおらず、組成式も一致しない点で相違する。

オ 引用発明1における「Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子」の「メジアン径(D50)」が「50μm」であり、「Feの結晶質粒子」の「メジアン径(D50)」が「2μm」であることは、本件補正発明における「前記大径粉の平均粒子径をD1、前記小径粉の平均粒子径をD2として、D1が5.0μm以上200μm以下であり、D2が0.10μm以上15μm以下であり、D2/D1<1.0を満たし、」に含まれる。

カ 引用発明1における「アモルファスの金属粒子の絶縁被膜の厚みは、結晶質の金属粒子の絶縁被膜の厚みよりも厚」く、「メジアン径(D50)50μm」の「Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子を、リン酸でコートし(厚み20nm)」、「メジアン径(D50)2μm」の「Feの結晶質粒子を、二酸化ケイ素(SiO2)によりコートし(厚み10nm)」は、本件補正発明における「前記大径粉および前記小径粉が絶縁コーティングされており、前記大径粉の平均絶縁コート厚みをT1、前記小径粉の平均絶縁コート厚みをT2として、1<T1/T2を満たし、」に含まれる。

しかしながら、本件補正発明では、「前記大径粉の平均絶縁コート厚みをT1、前記小径粉の平均絶縁コート厚みをT2として、3.00≦T1/T2≦5.00を満たし、」ているのに対し、引用発明1では、「T1/T2」に相当する数値が「T1/T2=2(20nm/10nm)」である点で相違する。

キ 引用発明1における「メジアン径(D50)50μm」の「Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子」と、「メジアン径(D50)2μm」の「Feの結晶質粒子」との「配合量(質量%)の割合」が「65:35」~「90:10」(実施例1~5)であることと、本件補正発明とは、「前記大径粉の割合が、前記小径粉の割合より多い」点で共通する。

しかしながら、本件補正発明では「任意の切断面における前記大径粉の面積割合をS1、前記小径粉の面積割合をS2として、0.20≦S2/S1≦0.55を満たす」のに対し、引用発明1には、その旨の記載がない点で相違する。

上記アないしキから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)

「大径粉および小径粉を含むFe系軟磁性粉を有する磁性体コアであって、
前記大径粉がFeを主成分として含み、
前記大径粉の平均粒子径をD1、前記小径粉の平均粒子径をD2として、
D1が5.0μm以上200μm以下であり、D2が0.10μm以上15μm以下であり、D2/D1<1.0を満たし、
前記大径粉および前記小径粉が絶縁コーティングされており、前記大径粉の平均絶縁コート厚みをT1、前記小径粉の平均絶縁コート厚みをT2として、1<T1/T2を満たし、
前記大径粉の割合が、前記小径粉の割合より多い、
磁性体コア。」

(相違点1)

本件補正発明における「大径粉」は、「Fe基ナノ結晶を含み」、その「組成式」が「(Fe(1-(α+β))X1αX2β)(1-(a+b+c+d+e+f+g))MaBbPcSidCeSfTigからなる成分からなり、

X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、

X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Cr,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、

MはNb,Hf,Zr,Ta,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、

0.020≦a≦0.14

0.020<b≦0.20

0≦c≦0.15

0≦d≦0.14

0≦e≦0.030

0≦f≦0.010

0≦g≦0.0010

α≧0

β≧0

0≦α+β≦0.50

であり、

前記大径粉における上記以外の元素の含有量は前記大径粉100重量%に対して、0.1重量%以下であ」るのに対し、引用発明1における「メジアン径(D50)50μm」の「粒子」は、「Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子」であって、組成も一致しない点。

(相違点2)

本件補正発明では、「前記大径粉の平均絶縁コート厚みをT1、前記小径粉の平均絶縁コート厚みをT2として、3.00≦T1/T2≦5.00を満たし」ているのに対し、引用発明1では、「メジアン径(D50)50μm」の「Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子」の「絶縁被膜の厚み」は、「20nm」、「メジアン径(D50)2μm」の「Feの結晶質粒子」の「絶縁被膜の厚み」は、「10nm」であって、本件補正発明の「T1/T2」に相当する数値が「T1/T2=2(20nm/10nm)」である点。

(相違点3)

本件補正発明では、「任意の切断面における前記大径粉の面積割合をS1、前記小径粉の面積割合をS2として、0.20≦S2/S1≦0.55を満たす」のに対し、引用発明1には、その旨の記載がない点。

(4)判断

以下、相違点について検討する。

ア(相違点1)について

ファインメットの代表的な組成「Fe73.5Si13 .5B9Nb3Cu1」(引用文献5参照。)は、書き換えると、

「(Fe0.987Cu0.013)0.745Nb0.03B0.09Si0.135」

であるから、本件補正発明における「大径粉」の「組成式」において、

X2をCu、MをNbとし、

a~0.03 (本件補正発明では、0.020≦a≦0.14 の範囲。以下同じ。)

b~0.09 (0.020<b≦0.20)

c~0    (0≦c≦0.15)

d~0.135(0≦d≦0.14)

α~0    (α≧0)

β~0.013(0≦β,0≦α+β≦0.50)

としたものに相当する。

つまり、ファインメットは、本件補正発明における「大径粉」の「組成式」を満足するものである。

この点を踏まえて、以下検討する。

引用文献2に記載されているように、コア(圧粉磁心)用の粒子として、Fe基のアモルファス金属よりも透磁率が高いFINEMET(ファインメット)を用いることは周知技術である。

そして、引用文献1の段落【0050】、段落【0064】ないし【0067】には、「アモルファスの金属粒子」と「ナノ結晶構造の金属粒子」とが併記され(なお、「ナノ結晶構造」とは、引用文献1の段落【0046】に記載されているとおり「アモルファスに微小な結晶を析出させた構造を意味する。」)、しかも、引用文献1の段落【0068】に「磁性体ベースにおける金属粒子の充填率・・・を高くすることにより、磁性体部の透磁率が高くなり、より高いインダクタンスを得ることが可能になる。」と記載されているとおり、引用発明1において磁性体ベースの透磁率を高めることが望ましいことは、いうまでもないことであるから、「メジアン径(D50)50μm」の「粒子」として、「Fe-Si-Cr系合金のアモルファス粒子」に代え、より透磁率の高い周知のFINEMET(ファインメット)粒子を用い、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ(相違点2)について

本願明細書の段落【0127】、【表1】において、本件補正発明の特定事項である「3.00≦T1/T2≦5.00」を満たす試料番号(特に、試料番号4、10、12)の耐電圧、透磁率と、「3.00≦T1/T2≦5.00」を満たさない試料番号1、7、9、13(特に、試料番号13)の耐電圧、透磁率を対比すると、必ずしも前者が後者より優れているわけではないことがわかる。

したがって、本件補正発明における「前記大径粉の平均絶縁コート厚みをT1、前記小径粉の平均絶縁コート厚みをT2として、3.00≦T1/T2≦5.00を満たし」との数値範囲に格別の技術的意義を見出すことはできない。

そして、引用文献1には、「アモルファスの金属粒子およびナノ結晶構造の金属粒子の絶縁被膜の厚みは、結晶質の金属粒子の絶縁被膜の厚みよりも厚」(【0064】)く、「アモルファスの金属粒子およびナノ結晶構造の金属粒子の絶縁被膜の厚みは、10nm以上30nm以下であり、結晶質の金属粒子の絶縁被膜の厚みは、5nm以上20nm以下であ」(【0066】)ると記載されているのであるから、引用発明1において、「メジアン径(D50)50μm」の粒子として「ナノ結晶構造」のFINEMET(ファインメット)粒子を用いるとともに、(「メジアン径(D50)50μm」の「粒子」の「絶縁被膜の厚み」)/(「メジアン径(D50)2μm」の「粒子」の「絶縁被膜の厚み」)の数値範囲を、本件補正発明で規定する3.00ないし5.00とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

ウ(相違点3)について

(ア)引用文献4に記載された技術を再掲すれば、次のとおりである。

「本体50は、磁気特性を示す磁性材料が充填されて形成され、上記本体を破断して一断面を観察したとき、第1磁性粒子51が占める断面積の和をa、第2磁性粒子及び第3磁性粒子52、53が占める断面積の和をbとするとき、上記第1から第3磁性粒子はa:bが5:5~9:1を満たすように本体に含まれることができ、上記第1から第3磁性粒子51、52、53が上記範囲の混合比で本体に含まれる場合、充填率が向上し、高透磁率を示すことができる。」

また、引用文献5には「体積比(Vv)を、断面での観察結果をもとに、Vv=AA(AA 面積比)の関係によって評価する。」ことが記載されている。

さらに、引用文献1の段落【0072】には、「ここに、上記充填率とは、磁性体部の断面のSEM画像における金属粒子の占める面積の割合を意味する。」と、体積率である充填率を、面積の割合で定義している。

(イ)以上の記載より、第1磁性粒子と第2磁性粒子との配合割合を、秤量値で規定するか、断面を観察したときのそれぞれの粒子の断面積の割合(引用文献5に示すとおり、理論的には、体積比と等しい値となる)で規定するかは当業者が適宜選択し得ることであると認められる。

(ウ)そして、引用文献1の上記段落【0072】には「磁性体部の断面のSEM画像における金属粒子の占める面積」を観測することが記載されているのであるから、引用発明1において、「メジアン径(D50)50μm」の粒子と「メジアン径(D50)2μm」の粒子との配合量の割合を、秤量値(質量%)で規定することに代え、それぞれの粒子が磁性体ベースの断面において占める面積の割合(断面積比)で規定するものとし、その数値範囲を、引用発明1における(実施例1)ないし(実施例3)の配合割合の範囲である65:35~80:20(引用文献1の段落【0137】【表1】参照)に対応させて、0.25~0.53(=20/80~35/65、なお、粒子はいずれも鉄を主成分としたものであるから、比重はほぼ同じと考えられ、質量比と体積比とを同じとした。)と規定して、上記相違点3に係る本件補正発明の数値範囲(0.20≦S2/S1≦0.55)を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用文献2、4ないし6に記載された周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ 請求人の主張について

(ア)請求人は、審判請求書において、「透磁率を良好に維持しつつ耐電圧が著しく向上」する点を本件補正発明の「異質な効果および/または著しく優れた効果である」と主張する。

しかし、例えば、特開2001-313208号公報の段落【0018】-【0019】に「【0018】このような絶縁体被覆金属は、樹脂中に分散混合することにより、従来のフェライトを破砕して粉末にした片状、あるいは凹凸のあるブロック状のものに比較して球状でありかつ小径であるため樹脂中に分散性よく混合される。また、この粒子を樹脂に分散させた場合、絶縁体層が金属粒子に対して1wt%の少量の添加量であっても絶縁抵抗の向上に寄与することができ、かつ耐電圧をも向上させることができる。

【0019】さらに、複合磁性材料中においても被覆金属粒子の形状は複合磁性材料に混合させる前の形状を保持しており、かつ、被覆絶縁体層も破壊されず保持されている。このことが、前記に示したような耐電圧の向上の一因をなしている。・・・」と記載されているとおり、「絶縁体被覆金属」を用いて「絶縁抵抗の向上」を図ることは、「耐電圧をも向上」させることにも繋がるのであるから、引用文献1の段落【0067】に記載された「・・・高い透磁率と高い絶縁性を両立すること・・・」とは、高い透磁率と高い耐電圧性を両立することを目指したものと理解することもできる。

よって、請求人の主張する上記作用効果は、「異質な効果および/または著しく優れた効果である」と認めることはできない。

(イ)また、請求人は、本件補正発明の作用効果として「充填率が著しく向上する」ことを挙げているが、引用文献1の段落【0069】には、「磁性体ベース8における金属粒子の充填率は、好ましくは65%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは85%以上であり得る。・・・」と記載されているのであるから、本件補正発明の上記作用効果が格別顕著なものであるということはできない。

(ウ)さらに、請求人は、令和2年10月13日の上申書において、「0.20≦S2/S1≦0.55などを満たす構成とすることにより充填率が高い場合において透磁率と耐電圧との両方を向上させるという技術的思想は引用文献1~4から容易に想到できない。」、「S2/S1の数値範囲のうち、少なくとも下限については臨界的意義がある」旨主張する。

しかし、上記ウに記載したとおり、引用発明1における(実施例1)ないし(実施例3)の配合割合の範囲は、面積割合の比で規定すれば、0.25~0.53であって、上記S2/S1の数値範囲を満たしている。また、引用発明1においても、高い透磁率(すなわち、高い充填率)と高い耐電圧性との両立を目指していることは、上記(ア)で述べたとおりである。

(エ)よって、請求人の主張は採用できない。

カ したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3-6に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和2年5月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和元年10月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし7に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、

というものである。

記

1.特開2018-182203号公報

2.特開2016-25352号公報(周知技術を示す文献)

3.特開2004-349585号公報(周知技術を示す文献)

4.特開2016-208002号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2、4及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明1は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「T1/T2」について、「3.00≦T1/T2≦5.00」とあったところを、「T1/T2>1.0」と数値範囲を拡張するとともに、「任意の切断面における前記大径粉の面積割合をS1、前記小径粉の面積割合をS2として、0.20≦S2/S1≦0.55を満たす」との限定を削除したものに相当する。

そうすると、本願発明1と引用文献1に記載された発明とは、前記第2の[理由]2(3)に記載した(相違点1)で相違するが、該(相違点1)は、前記第2の[理由]2(4)アに記載したとおり、引用文献2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。

よって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-006012

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