2020-005670
コモンモードチョークコイル
- 審判番号
- 2020-005670
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-042937外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年04月27日
- 審決日
- 2021年03月17日
- 公報発行日
- 2021年05月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 22項目
第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和2年1月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1-8
・引用文献等 1-5
・請求項 9
・引用文献等 1-6
・請求項 10-11
・引用文献等 1-7
・請求項 12-17
・引用文献等 1-8
引用文献等一覧
1.特開2017-5079号公報
2.特開2012-153556号公報
3.特開2005-213115号公報
4.特開平10-200360号公報
5.実願昭48-76737号(実開昭50-25014号)のマイクロフィルム
6.特開2004-247697号公報
7.特開2014-120730号公報
8.特開2016-82091号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正によって、請求項1に「前記フェライトコアの比透磁率が1500以下である」という事項を追加する補正は、補正前の請求項1に記載のあった発明を特定するために必要な事項である「フェライトコア」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項4を削除する補正は、請求項の削除を目的とするものである。
また、追加された事項は、願書に最初に添付した明細書の【0013】に「フェライトコアの比透磁率が1500以下である」、【0031】に「フェライトコア3の比透磁率が1500以下であることが好ましい」と記載されている。
よって、審判請求時の補正は、新規事項の追加には該当せず、さらに補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、本願発明1ないし16は、独立特許要件を満たすものである。
よって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
第4 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は、令和2年4月27日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される発明であり、以下の通りの発明である。
「 【請求項1】巻芯部ならびに前記巻芯部の互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部を有するフェライトコアと、線状の中心導体と前記中心導体の周面を覆う絶縁被覆層とを有し、前記巻芯部上において螺旋状に巻回された第1および第2のワイヤと、前記第1のワイヤの第1端および前記第1端とは逆の第2端がそれぞれ電気的に接続された第1および第2の端子電極と、続きを表示(全39行)前記第2のワイヤの第1端および前記第1端とは逆の第2端がそれぞれ電気的に接続された第3および第4の端子電極と、を備え、150℃でのコモンモードインダクタンス値が100kHzにおいて160μH以上であり、かつ20℃でのリターンロスが10MHzにおいて-27.1dB以下であり、前記フェライトコアの比透磁率が1500以下である、コモンモードチョークコイル。【請求項2】130℃でのリターンロスが10MHzにおいて-27dB以下である、請求項1に記載のコモンモードチョークコイル。【請求項3】前記フェライトコアのキュリー温度が150℃以上である、請求項1または2に記載のコモンモードチョークコイル。【請求項4】前記巻芯部の軸線方向に測定した前記フェライトコアの外形寸法は3.4mm以下であり、前記巻芯部の軸線方向に直交する方向に測定した前記フェライトコアの外形寸法は2.7mm以下である、請求項1ないし3のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。【請求項5】前記巻芯部の軸線方向に測定した前記第1および第2の鍔部の各々の厚み寸法は0.7mm未満である、請求項4に記載のコモンモードチョークコイル。【請求項6】当該コモンモードチョークコイルが実装面上に実装された状態において、前記第1および第2の鍔部の各々の、実装面に投影した面積は、1.75mm2未満である、請求項4または5に記載のコモンモードチョークコイル。【請求項7】前記巻芯部の断面積は1.0mm2未満である、請求項4ないし6のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。【請求項8】当該コモンモードチョークコイルが実装面上に実装された状態において、前記巻芯部と実装面との間の距離が0.5mm以上である、請求項4ないし7のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。【請求項9】前記巻芯部上における前記第1および第2のワイヤの各々の巻き数が42ターン以下である、請求項1ないし8のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。【請求項10】前記第1および第2の鍔部間に渡された板状のフェライト板をさらに備え、前記フェライト板の厚み寸法は0.75mm以下である、請求項1ないし9のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。【請求項11】前記第1および第2の鍔部と前記フェライト板との間の隙間は10μm以下である、請求項10に記載のコモンモードチョークコイル。【請求項12】前記ワイヤの前記中心導体の径は35μm以下である、請求項1ないし11のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。【請求項13】前記ワイヤの前記中心導体の径は28μm以上である、請求項1ないし12のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。【請求項14】前記ワイヤの前記絶縁被覆層の厚み寸法は6μm以下である、請求項1ないし13のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。【請求項15】前記ワイヤの前記絶縁被覆層の厚み寸法は3μm以上である、請求項1ないし14のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。【請求項16】前記ワイヤの前記絶縁被覆層は、少なくともイミド結合を含む樹脂からなる、請求項1ないし15のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された文献である、特開2017-5079号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審で付与した。
「【0012】最初に、図1を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1(A)は本実施例のコモンモードフィルタの側面図,図1(B)及び(C)は、それぞれ前記図1(A)を矢印F1a方向及びF1b方向から見た側面図,(D-1)は前記(A)を#A-#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(D-2)は前記(D-1)に対応する従来技術の断面図,(E)は前記(A)を#B-#B線に沿って切断したときの端面図である。本実施例のコモンモードフィルタ10は、図1(A)~(C)に示すように、ドラムコア12と、巻線部30と、端子電極40,42,44,46と、板コア60により構成されている。【0013】前記ドラムコア12は、断面略長方形の軸部14と、その両端に設けられた略長方形の鍔部16,22により構成されている。前記巻線部30は、前記軸部14の外周に2本の導線32,34を、同じ周回方向に、かつ、同じ周回数で巻回した周回部36と、それぞれの導線32,34の両端部を引き出した引出し部32A,32B,34A,34Bを有している。周回部36は軸部14と接している導線32,34を指し、2本の導線で形成される周回部は導線32と導線34の長さを同じにすることで、同じ周回数としている。また、引出し部はそれぞれの周回部の端部からそれぞれの固定部までの導線をさしている。前記端子電極40,42は、前記鍔部16に設けられ、他の端子電極44,46は、他方の鍔部22に設けられており、それぞれ、前記引出し部32A,32B,34A,34Bと電気的に接続される係合部40A,42A,44A,46Aを有している。」
「【0018】前記巻線部30の2本の導線32,34のそれぞれの両端の引出し部32A,32B,34A,34Bは、前記側面溝18,20,24,26内に形成された端子電極の係合部40A,42A,44A,46Aと電気的に接続される。本実施例では、前記引出し部32A,32B,34A,34Bの端部を熱圧着等により接続するため、接続部33A,33B,35A,35Bが形成されている。」
「【0021】本実施例のコモンモードフィルタ10の寸法の一例を示すと、製品サイズとしては、2.0×1.2×1.0mmである。また、ドラムコア12及び板コア60としては、例えば、Ni-Znフェライト材を用いた。透磁率(μ)は500の材料としたが、400~1000であれば良い。また、ドラムコア12の寸法は、外形が、長さ1.95mm、幅が1.2mm、高さが0.7mmである。その軸部14は、幅が0.8mm、高さが0.3mmであり、鍔部16,22は、厚みが0.2mmであり、側面溝18,20,24,26は、幅が0.35mm、深さが0.2mmである。側面溝18,20,24,26は鍔部16,22の厚み方向に通しで形成され、溝の中央には底面部分を持ち、幅は底面の寸法を示している。また、板コア60は、外形が、長さ2.0mm、幅が1.2mm、高さが0.25mmであり、ドラムコア12と同じNi-Znフェライトを用いた。【0022】また、巻線部30を形成する導線32,34としては、UEW(ポリウレタン銅線)φ0.1mmを用いた。また、端子電極40,42,44,46としては、Agペーストを焼付け、NiとSnめっきを行い、合わせた厚みを0.1mmとした。また、前記板コア60を鍔部16,22の上面16B,22Bに組み付ける接着剤としては、エポキシ(Tg125℃仕様)を用いた。」
「【0032】本実施例のコモンモードフィルタ100の寸法の一例を示すと、製品サイズとしては、長さ4.5×幅3.2×高さ2.8mmである。また、ドラムコア12及び板コア60としては、例えば、Ni-Znフェライト材を用いた。透磁率(μ)は500の材料としたが、400~1000であれば良い。また、ドラムコア12の寸法は、外形が、長さ4.3mm、幅が3.2mm、高さが2.1mmである。その軸部14は、幅が1.6mm、高さが0.8mmであり、鍔部16,22は、厚みが0.6mmであり、側面溝18,20,24,26は、幅が0.7mm、深さが0.5mmである。側面溝は鍔部の厚み方向に通しで形成され、溝の中央には底面部分を持ち、幅は底面の寸法を示している。また、鍔部16,22の面取り16G,22Gは、C0.3(面取りの大きさを示し、軸と平行な方向の面取り部分の長さは0.3mm)である。【0033】前記板コア60の寸法は、外形が、長さ4.5mm、幅が3.2mm、高さが0.6mmであり、接着用のくぼみ62A,62B,63C,62Dは、長さが0.6mm、幅が0.5mm、深さが0.2mmである。また、巻線部30を形成する導線32,34としては、AIW(ポリアミドイミド銅線)φ0.05mmを用いた。また、端子金具110,110´,130,130´は、NiとSnめっきを施した厚み0.1mmのリン青銅板を用いた。更に、前記端子金具110,110´,130,130´を接着するための接着剤としては、エポキシ(Tg160℃仕様)を用いた。」
(2)技術的事項
上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 段落【0012】によれば、「コモンモードフィルタ10」は、「ドラムコア12と、巻線部30と、端子電極40,42,44,46と、板コア60により構成される」。
イ 段落【0013】によれば、「前記ドラムコア12は、断面略長方形の軸部14と、その両端に設けられた略長方形の鍔部16,22により構成され」、「前記巻線部30は、前記軸部14の外周に2本の導線32,34を、同じ周回方向に、かつ、同じ周回数で巻回した周回部36と、それぞれの導線32,34の両端部を引き出した引出し部32A,32B,34A,34Bを有し」、「前記端子電極40,42は、前記鍔部16に設けられ、他の端子電極44,46は、他方の鍔部22に設けられて」いる。
また、段落【0013】、【0018】および図1によれば、「端子電極40」は「前記引出し部32Aと電気的に接続される係合部40A」を有し、「端子電極42」は「前記引出し部34Aと電気的に接続される係合部42A」を有し、「端子電極46」は「前記引出し部32Bと電気的に接続される係合部46A」を有し、「端子電極44」は「前記引出し部34Bと電気的に接続される係合部44A」を有する。
ウ 段落【0032】によれば、「ドラムコア12及び板コア60としては、」「Ni-Znフェライト材を用い」、「透磁率(μ)は500の材料」とする。
エ 段落【0033】によれば、「巻線部30を形成する導線32,34としては、AIW(ポリアミドイミド銅線)」を用いている。
(3)引用発明
上記アないしエから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ドラムコア12と、巻線部30と、端子電極40,42,44,46と、板コア60により構成され、前記ドラムコア12は、断面略長方形の軸部14と、その両端に設けられた略長方形の鍔部16,22により構成され、前記巻線部30は、前記軸部14の外周に2本の導線32,34を、同じ周回方向に、かつ、同じ周回数で巻回した周回部36と、それぞれの導線32,34の両端部を引き出した引出し部32A,32B,34A,34Bを有し、前記端子電極40,42は、前記鍔部16に設けられ、他の端子電極44,46は、他方の鍔部22に設けられており、端子電極40は前記引出し部32Aと電気的に接続される係合部40Aを有し、端子電極42は前記引出し部34Aと電気的に接続される係合部42Aを有し、端子電極46は前記引出し部32Bと電気的に接続される係合部46Aを有し、端子電極44は前記引出し部34Bと電気的に接続される係合部44Aを有し、ドラムコア12及び板コア60としては、Ni-Znフェライト材を用い透磁率(μ)は500の材料とし、巻線部30を形成する導線32,34としては、AIW(ポリアミドイミド銅線)を用いた、コモンモードフィルタ10。」
2 引用文献2について
(1)記載事項
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原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された文献である、特開2012-153556号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審で付与した。
「【0002】フェライト焼結体は、インダクタ,変圧器,安定器,電磁石,ノイズフィルタ等のコアとして広く使用されており、特に近年、地球温暖化や大気汚染などの環境問題によって注目の高まっている電気自動車やハイブリッドカーなどは、複雑な制御が必要であることから、ノイズによって誤動作などの悪影響を及ぼすことがないように、ノイズ除去用として、Ni-Zn-Cu系フェライト材料からなるフェライト焼結体をコアとして金属線を巻き付けてなるノイズフィルタが多数使用されるようになっている。このノイズフィルタには、優れたノイズ除去特性が求められるため、コアとして用いられるフェライト焼結体には、透磁率(μ)およびキュリー温度(Tc)が高いことが求められている。」
「【0007】しかしながら、特許文献1~3で提案されたNi-Zn-Cu系フェライト材料は、透磁率やキュリー温度が高く、ノイズ除去特性に優れていると考えられるものの、今般においては、さらに広範囲な温度域において優れたノイズ除去性能を発揮することのできるものが求められていることから、広範囲な温度域において透磁率の変化を小さくしなければならないという課題があった。【0008】本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、透磁率およびキュリー温度が高く、透磁率の温度変化率の小さいフェライト焼結体およびこれを備えるノイズフィルタを提供することを目的とするものである。」
「【0027】このように、本実施形態のフェライト焼結体は、透磁率およびキュリー温度が高く、透磁率の温度変化率が小さいものであり、具体的には、透磁率を1200以上、キュリー温度を159℃以上、透磁率の温度変化率X-40~25およびX25~160の絶対値を40以下とすることができる。」
(2)技術的事項
上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。
「ノイズフィルタ等のコアとして用いられるフェライト焼結体において、広範囲な領域において透磁率の変化を小さくするために、透磁率(μ)およびキュリー温度(Tc)を高く、具体的には、透磁率を1200以上、キュリー温度を159℃以上」とする技術。
3 引用文献3について
(1)記載事項
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原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された文献である、特開2005-213115号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審で付与した。
「【0010】本発明の目的は、高密度表面実装を目的とした電子部品に使用され、良好な磁気特性を有し、ラトラ値が低く、抗折強度が大きく、加工時における欠けや割れが生じ難いフェライト組成物、および該フェライト組成物で構成されるフェライトコアを提供することである。また、本発明は、このようなフェライト組成物およびフェライトコアを用いて製造され、小型、かつ高性能な表面実装型コイル素子やコモンモードチョークコイル等の電子部品およびその製造方法を提供することも目的とする。」
「【0063】フェライト組成物のキュリー温度は、好ましくは180℃以上であり、さらに好ましくは185℃以上である。キュリー温度が180℃未満となると、高温動作時において急激なインダクタンスの低下が起こる傾向にあり、高温度域での使用が困難となる傾向にある。」
(2)技術的事項
上記記載から、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。
「コモンモードチョークコイルに用いられるフェライトコアを構成するフェライト組成物のキュリー温度を、高温度域での使用のために180℃以上」とする技術。
4 引用文献4について
(1)記載事項
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原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された文献である、特開平10-200360号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審で付与した。
「【0006】本発明は、上記した問題点に鑑み、小型化、量産化の面において有利となる積層バルントランスにおいて、損失が小さく、かつ平衡信号端子間における位相差やレベル差を小さく抑制でき、設計も容易となるものを提供することを目的とする。」
「【0018】図3(A)、(B)は、3.2mm×2.5mm×1.5mmのサイズの積層バルントランスにおいて、それぞれ図5(B)の従来例1のものを積層構造によって実現した場合と本発明による場合のリターンロス(インピーダンス不整合による反射による損失)とインサーションロスとを、850MHz~950MHzについて比較して示す図である。これらの図から分かるように、本発明による場合には、従来例1に比較し、リターンロスが減少し、入出力比が従来例1(従来例2の場合も同様である)の0.7~0.8から0.2~0.3dB程度に減少し、インサーションロスを大幅に低減させることが可能となった。」
(2)技術的事項
上記記載から、引用文献4には、次の技術的事項(以下「引用文献4記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。
「バルントランスにおいて、850MHz~950MHzでのリターンロスを減少」させる技術。
5 引用文献5について
(1)記載事項
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原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された文献である、実願昭48-76737号(実開昭50-25014号)のマイクロフィルム(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、当審で付与した。
「4本線路を使用し入出力側を並列又は直列に接続した平衡-不平衡変換の変成器は衆知されており、その代表的回路構成図を第1図に示す。」(明細書第1頁第13ないし15行)
「本発明は上記欠点を改良するために、第2図に示す如く出力側端子2及び3と接地端子5との間に穴のあいたフェライト等(F)の磁性材料を挿入し、巻線W2、及び巻線W3に流れる不平衡電流を減少せしめて入出力インピーダンス特性を良好にしたものである。」(明細書第2頁第10ないし15行)
「第3図の例は周波数50MHzより1100MHzまでのものである。変成器は巻線のインピーダンスを150Ωとすることにより、入力は75Ωの同軸給電線、出力は300Ωの平衡負荷となる。本考案を実施した特性と、実施しない特性は500MHz位迄は特性に大差が無いが周波数が高くなるとフェライト無しの変成器は急激に特性が悪化し1100MHz附近でリターンロスが10dBを切っている。一方本考案のフェライト付の変成器では80MHz~1100MHz迄リターンロスを20dB以下にすることが出来る。」(明細書第2頁第18行ないし第3頁第10行)
(2)技術的事項
上記記載から、引用文献5には、次の技術的事項(以下「引用文献5記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。
「平衡-不平衡変換の変成器の出力側端子2及び3と接地端子5との間にフェライト等(F)の磁性材料を挿入し、80MHz~1100MHz迄リターンロスを20dB以下」とする技術。
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明との対比を行う。
ア 引用発明の「軸部14」は「外周に2本の導線32,34を、同じ周回方向に、かつ、同じ周回数で巻回」されるから、本願発明1の「巻芯部」に相当し、引用発明の「軸部14」の「両端に設けられた略長方形の鍔部16,22」は、本願発明1の「前記巻芯部の互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部」に相当する。そして、引用発明の「軸部14と、その両端に設けられた略長方形の鍔部16,22」により構成される「ドラムコア12」は「Ni-Znフェライト材を用い」るから、本願発明1の「巻芯部ならびに前記巻芯部の互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部を有するフィライトコア」に相当する。
イ 引用発明の「2本の導線32,34」は「AIW(ポリアミドイミド銅線)を用いた」ものであるから、線状の中心導体と前記中心導体の周面を覆う絶縁被覆層とを有することは明らかである。そして、引用発明の「2本の導線32,34」は「軸部14の外周」に「同じ周回方向に、かつ、同じ周回数で巻回」されるものであるから、本願発明1の「線状の中心導体と前記中心導体の周面を覆う絶縁被覆層とを有し、前記巻芯部上において螺旋状に巻回された第1および第2のワイヤ」に相当する。
ウ 引用発明の「端子電極40は前記引出し部32Aと電気的に接続される係合部40Aを有し、」「端子電極46は前記引出し部32Bと電気的に接続される係合部46Aを有」するから、「端子電極40」および「端子電極46」は「導線32」「の両端を引き出した引出し部32A,32B」と接続されており、本願発明1の「前記第1のワイヤの第1端および前記第1端とは逆の第2端がそれぞれ電気的に接続された第1および第2の端子電極」に相当する。
エ 引用発明の「端子電極42は前記引出し部34Aと電気的に接続される係合部42Aを有し、」「端子電極44は前記引出し部34Bと電気的に接続される係合部44Aを有」するから、「端子電極42」および「端子電極44」は、「導線34」「の両端を引き出した引出し部34A,34B」と接続されており、本願発明1の「前記第2のワイヤの第1端および前記第1端とは逆の第2端がそれぞれ電気的に接続された第3および第4の端子電極」に相当する。
オ 本願発明1は「150℃でのコモンモードインダクタンス値が100kHzにおいて160μH以上であり、かつ20℃でのリターンロスが10MHzにおいて-27.1dB以下」であるのに対し、引用発明は、その旨特定されていない点で相違する。
カ 引用発明の「ドラムコア12」「としては、Ni-Znフェライト材を用い透磁率(μ)は500の材料」とすることは、本願発明1の「前記フェライトコアの比透磁率が1500以下である」ことに相当する。
キ 引用発明の「コモンモードフィルタ10」は「ドラムコア12と、巻線部30」より構成されるものであるからコイルであり、本願発明1の「コモンモードチョークコイル」に相当する。
ク したがって、本願発明1と引用発明は以下の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「巻芯部ならびに前記巻芯部の互いに逆の第1および第2の端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部を有するフェライトコアと、線状の中心導体と前記中心導体の周面を覆う絶縁被覆層とを有し、前記巻芯部上において螺旋状に巻回された第1および第2のワイヤと、前記第1のワイヤの第1端および前記第1端とは逆の第2端がそれぞれ電気的に接続された第1および第2の端子電極と、前記第2のワイヤの第1端および前記第1端とは逆の第2端がそれぞれ電気的に接続された第3および第4の端子電極と、を備え、前記フェライトコアの比透磁率が1500以下である、コモンモードチョークコイル。」
〈相違点〉
本願発明1は「150℃でのコモンモードインダクタンス値が100kHzにおいて160μH以上であり、かつ20℃でのリターンロスが10MHzにおいて-27.1dB以下」であるのに対し、引用発明は、その旨特定されていない点
(2)相違点についての判断
本願発明1は、「150℃でのコモンモードインダクタンス値が100kHzにおいて160μH以上であり、かつ20℃でのリターンロスが10MHzにおいて-27.1dB以下」とすることによって、「より高温で高速通信を最低限使用可能としつつ、常温ではより高品質な高速通信を実現する」ものであり、「150℃でのコモンモードインダクタンス値が100kHzにおいて160μH以上」とすることと「20℃でのリターンロスが10MHzにおいて-27.1dB以下」とすることを同時に満たすことに技術的特徴を有するものである。
そして、当該技術的特徴は、本願の明細書の記載によれば、フェライトコアのキュリー温度、フェライトコアの比透磁率、フェライトコアの外形寸法、鍔部の厚み寸法、鍔部の実装面に投影した面積、巻芯部の断面積、巻芯部と実装面との間の距離、巻芯部上におけるワイヤの巻き数、フェライト板の厚み寸法、鍔部とフェライト板との間の隙間の大きさ、ワイヤの中心導体の径、ワイヤの絶縁被覆層の厚み寸法、ワイヤの絶縁被覆層の材料を選択することにより得られるものである(【0012】-【0026】、【0102】等参照)。
これに対し、引用文献1には、鍔部、巻芯部、ワイヤといった各部の寸法などを、本願の明細書で上記技術的特徴が得られるとされた範囲のものを選択して組み合わせることは記載も示唆もされていない。
また、引用文献2記載の技術や引用文献3記載の技術のように、高温度域での使用のために、コイルのコアに用いるフェライトのキュリー温度を150℃以上とすることは、本願出願前周知技術であり、引用文献4記載の技術や引用文献5記載の技術のように、80MHz以上の高周波域において、バルントランス、平衡-不平衡の変成器(コモンモードチョークコイル)のリターンロスを減少させることは、本願出願前周知技術である。
しかしながら、「150℃でのコモンモードインダクタンス値が100kHzにおいて160μH以上」とすることと「20℃でのリターンロスが10MHzにおいて-27.1dB以下」とすることを同時に満たすことは、引用文献2ないし5のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、本願出願前周知技術であるとも認められない。
なお、上記相違点に係る構成は、原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-247697号公報(引用文献6)、特開2014-120730号公報(引用文献7)、特開2016-82091号公報(引用文献8)にも、記載も示唆もされていない。
したがって、引用発明に引用文献2ないし5に記載された技術的事項を適用して、本願発明1の相違点に係る構成を得ることが、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2ないし16について
本願発明1を直接または間接的に引用する本願発明2ないし16も、上記相違点に係る構成を備えるものである。
したがって、本願発明2ないし16は、本願発明1と同じ理由により、引用文献1ないし8に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはてきない。
また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-005670