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特許拒絶査定不服審判

2020-005019

不燃化粧板

審判番号
2020-005019
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-222267外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年04月13日
審決日
2020年12月08日
公報発行日
2021年03月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-222267「不燃化粧板」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017- 87621〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
【理 由】

第1 手続の経緯

本願は、平成27年11月12日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和1年7月22日付け:拒絶理由通知書
令和1年8月28日  :意見書、手続補正書の提出
令和2年1月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年4月13日  :審判請求書、同時に手続補正書の提出

第2 令和2年4月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年4月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.本件補正について

(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
火山性ガラス質堆積物を含む板状の第1の無機層、人造鉱物繊維材を含む板状の第2の無機層及び人造鉱物繊維材を含む板状の第3の無機層からなり、前記第1の無機層を前記第2の無機層及び前記第3の無機層で両面から挟み込むように積層した積層体である無機基材層と、金属層を含み前記無機基材層の前記第3の無機層の表面に設けられた表面層と、を有する基材と、
前記基材の表面層側の面に形成されたシーラー層と、
前記シーラー層の表面に形成された表面接着剤層と、
前記表面接着剤層の表面に形成され、樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記表面接着剤層とは反対側の面に順に形成された印刷層及び表面保護層と、前記樹脂フィルムの前記表面接着剤層側の面に形成された裏面プライマー層とを有する化粧シートと、
を備え、
前記表面層は、前記金属層と、該金属層の両面に設けられた第1の樹脂層及び第2の樹脂層と、該第1の樹脂層の前記金属層と反対側の面に設けられた第1の紙層及び該第2の樹脂層の前記金属層と反対側の面に設けられた第2の紙層と、を含み、
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層における、樹脂材料の1平方メートル当たりの質量は、2.0g/m2以上15.0g/m2以下である
不燃化粧板。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、令和1年8月28日にされた手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
火山性ガラス質堆積物を含む第1の無機層、並びに該第1の無機層の両面に形成された人造鉱物繊維材を含む第2の無機層及び第3の無機層を有する無機基材層と、金属層を含み前記無機基材層の前記第3の無機層の表面に設けられた表面層とを有する基材と、
前記基材の表面層側の面に形成されたシーラー層と、
前記シーラー層の表面に形成された表面接着剤層と、
前記表面接着剤層の表面に形成され、樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記表面接着剤層とは反対側の面に順に形成された印刷層及び表面保護層と、前記樹脂フィルムの前記表面接着剤層側の面に形成された裏面プライマー層とを有する化粧シートと、
を備え、
前記表面層は、前記金属層と、該金属層の両面に設けられた第1の樹脂層及び第2の樹脂層と、該第1の樹脂層の前記金属層と反対側の面に設けられた第1の紙層及び該第2の樹脂層の前記金属層と反対側の面に設けられた第2の紙層と、を含み、
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層における、樹脂材料の1平方メートル当たりの質量は、2.0g/m2以上15.0g/m2以下である
不燃化粧板。」

2.本件補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「無機基材層」について、「第1の無機層」、「第2の無機層」及び「第3の無機層」を、それぞれ「板状の」と限定すると共に、本件補正前は、「第2の無機層及び第3の無機層」が「第1の無機層の両面に形成され」ていたものを、本件補正後は、「第1の無機層」を「第2の無機層」及び「第3の無機層で両面から挟み込むように積層した積層体」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献

ア.原査定の拒絶の理由で引用された特開2015-54455号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。以下、下線は当審が付した。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性を有し、かつ、難燃性基材に化粧シートを積層後、次工程までの養生期間を省略することで工程の短縮化が可能な不燃性化粧板及び不燃性化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
続きを表示(全12行)
【0002】
従来から、化粧材と、不燃性基材、石膏ボード、火山性ガラス質複層板などを用いた基材とを貼り合わせた化粧板は、建築物の天井、壁材をはじめとする内装・外装用建材、家具等の種々の用途に使用されている。特に、不燃材料認定を受けるために、このような基材とプラスチックフィルム、化粧単板等の化粧材との間に金属箔を積層した防火性を有する化粧材が種々開発されている。
【0003】
このような化粧材の基材と化粧シートとを貼り合せる方法としては、基材に水性エマルジョン系接着剤を塗布し、その上に化粧シートを重ね合わせて加圧するいわゆるコールドプレスラミネート方式と称する方法により積層されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、難燃性基材と化粧シートとをエマルジョン系接着剤を用いて積層した不燃性化粧板も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
これらの化粧板は、水性エマルジョン系接着剤を用いているので、環境負荷が低く優れたものである。しかしながら、水性エマルジョン系接着剤を用いて貼り合せるため、接着剤中の水分を乾燥させ、次工程の加工が可能になるまで養生が必要であり、その養生期間として約3日以上放置する必要があった。そのため、リードタイムが長くなるばかりか、中間製品の保管場所を確保しなければならないという問題があった。
【0005】
これらの問題を改善した化粧シートの貼着方法として、基板にアクリル系エマルジョン型接着剤を塗布し、前記接着剤が塗布された基板上に、前記接着剤を介して化粧シートを積層し、前記化粧シートが積層された基板を加熱した状態で加圧することにより化粧シートを基板に貼着する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に開示された貼着方法により、養生期間が短縮され、リードタイムも短くなったが、それでも約1日の養生期間が必要である。近年、短納期、低コスト化が切望されている中、まだ十分に満足されるレベルの難燃性化粧板や貼着方法は見出されておらず、さらなる開発が望まれている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは不燃性を有し、かつ、難燃性基材に化粧シートを積層後、次工程までの養生期間を省略することで工程の短縮化が可能な不燃性化粧板及び不燃性化粧板の製造方法を提供することにある。」
「【0016】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。
図1は本発明に係る不燃性化粧板の第一実施形態を示す断面図、図2は本発明に係る不燃性化粧板のその他の実施形態を示す断面図、図3は本発明に係る不燃性化粧板の製造方法の一例を示す概略図であり、図中の1、1’は不燃性化粧板、2は難燃性基材、21は火山性ガラス質複層板、22は下層、23は輻射シート層、24は紙質層、25はシーラー層、3は接着剤層、31は水性エマルジョン接着剤組成物、4は化粧シート層、41は化粧シート巻取、5は裏面層、6は塗布部、61は塗布ロール、62は計量ロール、7は乾燥部、71は乾燥炉、8は積層部、81はニップロール、9は搬送ロールをそれぞれ示す。
【0017】
図1は本発明に係る不燃性化粧板の第一実施形態を示す断面図であって、本発明の不燃性化粧板1は、難燃性基材2の一方の面に、接着剤層3と化粧シート層4とが順に積層されたものである。難燃性基材2は、火山性ガラス質複層板21上に、紙質からなる下層22、輻射シート層23、紙質層24、シーラー層25が順に積層されたものである。 なお、難燃性基材2は火山性ガラス質複層板21上に、少なくとも輻射シート層23と紙質層24が順に積層されていればよいものであるが、火山性ガラス質複層板21と輻射シート層23との接着性を高めることができるので紙質からなる下層22を備えているほうが好ましいものである。また、図1にはシーラー層25を記載しているが、シーラー層25を形成するシーラー剤が紙質層24に含浸され、紙質層24がシーラー剤を含浸した樹脂含浸紙であってもよく、この場合には図示しないが図1においてシーラー層25がなくなり、紙質層24に合体された状態となる。」
「【0021】
(火山性ガラス質複層板21)
火山性ガラス質複層板21としては、JIS A5440(「不燃火山性ガラス質複層板」)に準拠するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、市販される「ダイライトFA(商品名)」:大建工業株式会社製、「オーマル(商品名)」:岩倉化学工業株式会社製などを例示することができる。
【0022】
(輻射シート層23)
輻射シート層23は、本発明の不燃性化粧板1に、不燃性を付与するとともに、適度な強度を付与することで、反りを防止し、寸法安定性を高める目的で、設けられる層である。輻射シート層23の形成に用いられる輻射シートとしては、例えば金属箔、黒鉛シートなどが好ましく挙げられる。金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、銀箔、鉄箔、ステンレス鋼箔などが挙げられ、なかでも、加工が容易であり、かつ腐食しにくいという観点から、アルミニウム箔、銅箔、及びステンレス鋼箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。」
「【0035】
〔化粧シート層4〕
化粧シート層4は、本発明の不燃性化粧板1に意匠性を付与するために設けられる。化粧シート層4に用いられる化粧シートとしては、通常化粧板に用いられる樹脂シートなどを基材とするものを制限なく用いることが可能であり、樹脂シートをなす樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体樹脂、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂;アクリル変性ウレタン系樹脂、ポリエステル変性ウレタン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体変性ウレタン系樹脂等のポリウレタン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂等を挙げることができ、これらのうち1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0036】
また、化粧シートとしては、上記の樹脂からなる着色樹脂シートと透明樹脂シートとを模様を挟んで得られるダブリングシートとして用いることもできる。この場合、着色樹脂シート、及び透明樹脂シートに用いられる樹脂は同じでも異なっていてもよく、ポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができ、樹脂の組合せとしては、ポリエチレン-ポリエチレン、ポリエチレン-ポリプロピレン、あるいはポリプロピレン-ポリプロピレンの組合せが好ましい。ダブリングシートは、例えば上記樹脂からなる樹脂シートAの表面にコロナ放電処理などを施してプライマー層を設け、該樹脂シートAにベタ層及び/又は絵柄層を印刷形成した後に、上記樹脂からなる樹脂シートBを押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーションなどのラミネーション法により加圧接着して得られる。
【0037】
また、樹脂シートBの表面には、電離放射線硬化性樹脂からなる表面保護層(図示しない)を形成することが好ましい。電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を備えた化粧シートとすることにより、図3に示すように、枚葉で供給される難燃性基材2と化粧シート巻取41が積層部8で積層される場合において、枚葉の難燃性基材2は少しの間隔をあけて供給されるのでその間隔部分が段差となり、当該段差では化粧シート層4のみとなるのでニップロール81で圧着時、化粧シート層4が引き伸ばされることとなるが、表面保護層を設けることにより、引き伸ばしが緩和されるので次工程の作業が容易となる。電離放射線硬化性樹脂としては公知のものが使用できる。また、意匠性の観点から、化粧シート層4は、表面にエンボス加工を施すこともできる。」
「【0050】
〔実施例1〕
坪量23g/m2 の紙間強化紙(「FIX-30(商品名)」:三興製紙(株)製)と厚さ20μmのアルミニウム箔と坪量23g/m2 の紙間強化紙(「FIX-30(商品名)」:三興製紙(株)製)とを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネーション法で積層し、難燃性基材の中間体を作製した。なお、2液硬化型ウレタン系接着剤の塗布量はそれぞれ4g/m2 (固形分基準、有機分量4g/m2 )とした。
つぎに、厚さ3mmの火山性ガラス質複層板(商品名:ダイライト、大建工業株式会社製)の一方の面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を40g/m2 (固形分基準、有機分量35g/m2 )の塗布量で塗布した上に、前記中間体の一方の紙間強化紙を貼り合わせて難燃性基材を作製するとともに、火山性ガラス質複層板の他方の面に別途準備した坪量23g/m2 の紙間強化紙(「FIX-30(商品名)」:三興製紙(株)製)と坪量23g/m2 の紙間強化紙(「FIX-30(商品名)」:三興製紙(株)製)とを厚さ25μmのポリプロピレン樹脂を用いてエクストルージョン法によりサンドイッチラミネーションした裏面層としての防湿シートを塗布量40g/m2 (固形分基準)の2液硬化型ウレタン系接着剤を介して積層した。
【0051】
得られた防湿シートを裏面に積層した難燃性基材の前記中間体の他方の紙間強化紙の上に水溶性アクリル系樹脂(「SA-95(商品名)」:中央理化工業株式会社製,Tg:30℃)と硬化剤(「EX-8(商品名)」:中央理化工業株式会社製,エポキシ系樹脂)とを100:10(質量比)で配合し、これに水55質量部を加えて希釈して得られたシーラー剤を、スプレーコートで3.5g/m2 (固形分基準、有機分量:3.5g/m2 )の塗布量で塗布し、シーラー剤を他方の紙間強化紙に含浸させながら100℃で30秒間乾燥を行った。なお、このシーラー剤の粘度は10mPas(20℃)であった。
【0052】
難燃性基材の前記中間体のシーラー剤を塗布した他方の紙間強化紙の上に、主剤に水性エマルジョン系のウレタン樹脂・ビニル共重合樹脂系樹脂接着剤(「CVC(商品名)」:コニシ株式会社製、接着剤組成:ウレタン樹脂・ビニル共重合樹脂系樹脂 35質量%/水 65質量%)、架橋剤にポリイソシアネート系化合物(100質量%)、水酸化アルミニウムを100:5:15(質量比)で配合した水性エマルジョン接着剤組成物を塗布量30g/m2 (ウエット)で塗布して温度180℃の乾燥炉で15秒間、熱風乾燥させ接着剤層(有機分量:10g/m2 )を形成すると共に、熱風乾燥され加熱状態となっている当該接着剤層と、別途準備した厚さ120μmの表面に電離放射線硬化性樹脂からなる表面保護層を備えたポリオレフィン系化粧シート(坪量:135g/m2 、有機分量:110g/m2 、「WSシリーズ(商品名)」:大日本印刷株式会社製)と、 積層部の90℃に加温されたニップロールでポリオレフィン系化粧シート面から加熱加圧して表面保護層が表出するように貼り合わせて不燃性化粧板を得た。得られた不燃性化粧板の評価結果を表1に示す。 なお、得られた不燃性化粧板のアルミニウム箔上の有機分量は、181.5(35+23+3.5+10+110)g/m2 だった。」

以上の記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「厚さ3mmの火山性ガラス質複層板(商品名:ダイライト、大建工業株式会社製)の一方の面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を40g/m2 (固形分基準、有機分量35g/m2 )の塗布量で塗布した上に、難燃性基材坪量23g/m2 の紙間強化紙(「FIX-30(商品名)」:三興製紙(株)製)と厚さ20μmのアルミニウム箔と坪量23g/m2 の紙間強化紙(「FIX-30(商品名)」:三興製紙(株)製)とを塗布量4g/m2 (固形分基準、有機分量4g/m2 )とした2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネーション法で積層した難燃性基材の中間体の一方の紙間強化紙を貼り合わせた難燃性基材、
難燃性基材の前記中間体の紙間強化紙の上に水溶性アクリル系樹脂(「SA-95(商品名)」:中央理化工業株式会社製,Tg:30℃)と硬化剤(「EX-8(商品名)」:中央理化工業株式会社製,エポキシ系樹脂)とを100:10(質量比)で配合し、これに水55質量部を加えて希釈して得られたシーラー剤を、スプレーコートで3.5g/m2 (固形分基準、有機分量:3.5g/m2 )の塗布量で塗布し、シーラー剤を他方の紙間強化紙に含浸させながら100℃で30秒間乾燥を行い、
難燃性基材の前記中間体のシーラー剤を塗布した他方の紙間強化紙の上に、主剤に水性エマルジョン系のウレタン樹脂・ビニル共重合樹脂系樹脂接着剤(「CVC(商品名)」:コニシ株式会社製、接着剤組成:ウレタン樹脂・ビニル共重合樹脂系樹脂 35質量%/水 65質量%)、架橋剤にポリイソシアネート系化合物(100質量%)、水酸化アルミニウムを100:5:15(質量比)で配合した水性エマルジョン接着剤組成物を塗布量30g/m2 (ウエット)で塗布して温度180℃の乾燥炉で15秒間、熱風乾燥させ形成した接着剤層(有機分量:10g/m2 )と、
厚さ120μmの表面に電離放射線硬化性樹脂からなる表面保護層を備えたポリオレフィン系化粧シート(坪量:135g/m2 、有機分量:110g/m2 、「WSシリーズ(商品名)」:大日本印刷株式会社製)と、積層部の90℃に加温されたニップロールでポリオレフィン系化粧シート面から加熱加圧して表面保護層が表出するように貼り合わせた不燃性化粧板。」

イ.原査定の拒絶の理由で引用された特開2000-167992号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0004】化粧シートは一般に種々の基材に貼り合わせられて商品化されるが、その貼り合わせ以前の状態では、貼り合わせ特性を向上させるために樹脂シートの貼り合わせ面に易接着層(プライマー層)が形成されている。この易接着層は塩化ビニル樹脂用接着剤を用いて基材に接着できるように、例えば塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系や、塩素化ポリプロピレン変性ポリウレタン系の樹脂層から構成される。」

ウ.原査定の拒絶の理由で引用された特開2014-15009号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0027】
[不燃性化粧板の構成]
この実施例1では、不燃性化粧板に、無機材料を主材料とする難燃性基板1、ピンホール状の通気孔H・H…が無数に形成された金属シート2、及び木目模様が付された通気性のない化粧シート3を使用し、これらの積層体をヒートプレス機のプレス型で加熱・圧着して不燃性化粧板を構成している(図1、図2参照)。
【0028】
〔難燃性基材〕
また、上記化粧板を構成する難燃性基板1には、鉱物繊維(50wt%)、無機充填剤(34%)および無機系粉体(10wt%)を主成分とする上下層と、火山性ガラス質粉体(50wt%)、無機充填剤(34wt%)及び無機系粉体(10wt%)を主成分とする中心層の3層から成る火山性ガラス質複層板を使用している。なお本実施例では、商品名「ダイライトFA」(大建工業社)を、アルミ箔がラミネートされている面を裏面、反対側を表面として使用している。」

(3)対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「火山性ガラス質複層板」は、火山性ガラス質堆積物を含む無機基材からなる積層体である限りで、本件補正発明の「無機基材層」に一致する。

引用発明の「アルミニウム箔」は、本件補正発明の「金属層」に相当し、引用発明の「紙間強化紙」は、本件補正発明の「第1の紙層」及び「第2の紙層」に相当する。

そして、引用発明の「紙間強化紙」と「アルミニウム箔」と「紙間強化紙」とが「2液硬化型ウレタン系接着剤を介して」「積層し」ている態様は、すなわち、「紙間強化紙」と「アルミニウム箔」との間に硬化した「2液硬化型ウレタン系接着剤」が介在する態様であるから、引用発明の「紙間強化紙」と「アルミ箔」との間に介在する硬化した「2液硬化型ウレタン系接着剤」は、本件補正発明の「第1の樹脂層」及び「第2の樹脂層」に相当し、引用発明の「2液硬化型ウレタン系接着剤」が「塗布量4g/m2 (固形分基準、有機分量4g/m2 )」であることは、本件補正発明の「前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層における、樹脂材料の1平方メートル当たりの質量は、2.0g/m2以上15.0g/m2以下」という範囲内にある。

ゆえに、引用発明の「難燃性基材の中間体」は、本件補正発明の「表面層」に相当する。

したがって、引用発明の「難燃性基材」は、火山性ガラス質堆積物を含む無機基材からなる積層体である無機基材層と、金属層を含み前記無機基材層の表面に設けられた表面層とを有する限りで、本件補正発明の「基材」に一致する。

さらに、引用発明の「シーラー剤を、スプレーコートで3.5g/m2 (固形分基準、有機分量:3.5g/m2 )の塗布量で塗布し」た態様は、その結果、シーラー剤による層が形成されることであるから、本件補正発明の「シーラー層」に相当し、引用発明の「接着剤層」は、本件補正発明の「表面接着剤層」に相当し、引用発明の「電離放射線硬化性樹脂からなる表面保護層」は、本件補正発明の「表面保護層」に相当する。

ゆえに、引用発明の「電離放射線硬化性樹脂からなる表面保護層」を表面に備えた「ポリオレフィン系化粧シート」は、表面接着剤層の表面に形成された化粧シートの限りで、本件補正発明の「化粧シート」に一致する。

したがって、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。

[一致点]

「火山性ガラス質堆積物を含む無機基材からなる積層体である無機基材層と、金属層を含み前記無機基材層の表面に設けられた表面層と、を有する基材と、
前記基材の表面層側の面に形成されたシーラー層と、
前記シーラー層の表面に形成された表面接着剤層と、
前記表面接着剤層の表面に形成された化粧シートと、
を備え、
前記表面層は、前記金属層と、該金属層の両面に設けられた第1の樹脂層及び第2の樹脂層と、該第1の樹脂層の前記金属層と反対側の面に設けられた第1の紙層及び該第2の樹脂層の前記金属層と反対側の面に設けられた第2の紙層と、を含み、
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層における、樹脂材料の1平方メートル当たりの質量は、2.0g/m2以上15.0g/m2以下である
不燃化粧板。」

[相違点1]

「火山性ガラス質堆積物を含む無機基材からなる積層体である無機基材層」について、本件補正発明は「火山性ガラス質堆積物を含む板状の第1の無機層、人造鉱物繊維材を含む板状の第2の無機層及び人造鉱物繊維材を含む板状の第3の無機層からなり、前記第1の無機層を前記第2の無機層及び前記第3の無機層で両面から挟み込むように積層した積層体である」であるのに対し、引用発明は具体的な構成が不明である点。

[相違点2]

「表面接着剤層の表面に形成された化粧シート」について、本件補正発明は「樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記表面接着剤層とは反対側の面に順に形成された印刷層及び表面保護層と、前記樹脂フィルムの前記表面接着剤層側の面に形成された裏面プライマー層とを有する」ものであるのに対し、引用発明は具体的な構成が不明である点。

(4)判断

ア.相違点1について

「板」とは「金属や石などを薄く平たくしたもの。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)という意味であり、「状」とは「すがた。ありさま」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)という意味であるから、「板状」とは、薄く平たくしたすがたを意味すると解される。

そして、引用発明の「火山性ガラス複層板」は字句どおり「板」であるから、これを構成する「複層」のそれぞれが、「板状」であることは自明である。

また、引用文献1には、「火山性ガラス質複層板」について、「火山性ガラス質複層板21としては、JIS A5440(「不燃火山性ガラス質複層板」)に準拠するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、市販される「ダイライトFA(商品名)」:大建工業株式会社製、「オーマル(商品名)」:岩倉化学工業株式会社製などを例示することができる。」(【0021】)と記載されているから、引用発明には、「火山性ガラス質複層板」として周知のものを採用する動機があるところ、引用文献3に記載されているように、「火山性ガラス質複層板」の構成として「鉱物繊維(50wt%)、無機充填剤(34%)および無機系粉体(10wt%)を主成分とする上下層と、火山性ガラス質粉体(50wt%)、無機充填剤(34wt%)及び無機系粉体(10wt%)を主成分とする中心層の3層から成る」ものが周知であり(以下「周知技術1」という。)、かつ引用文献3(【0028】)によれば「ダイライトFA」も同様の構成を備えるものと認識されていたのであるから、上記相違点1に係る構成は実質的な相違点ではないか、上記相違点1が実質的な相違点であるにしても、上記相違点1に係る本件補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ.相違点2について

引用文献1には、「化粧シート層」について、「化粧シート層4は、本発明の不燃性化粧板1に意匠性を付与するために設けられる。化粧シート層4に用いられる化粧シートとしては、通常化粧板に用いられる樹脂シートなどを基材とするものを制限なく用いることが可能であり、・・・」(【0035】)と記載されており、かつ「また、化粧シートとしては、上記の樹脂からなる着色樹脂シートと透明樹脂シートとを模様を挟んで得られるダブリングシートとして用いることもできる。・・・ ダブリングシートは、例えば上記樹脂からなる樹脂シートAの表面にコロナ放電処理などを施してプライマー層を設け、該樹脂シートAにベタ層及び/又は絵柄層を印刷形成した後に、上記樹脂からなる樹脂シートBを押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーションなどのラミネーション法により加圧接着して得られる。 」(【0036】)と記載されている。

また、引用発明の「ポリオレフィン系化粧シート」は「接着剤層」によって「難燃性基材」に貼り合わせられているから、引用発明には、貼り合わせ特性を向上させる動機があるところ、引用文献2に記載されているように、「貼り合わせ特性を向上させるために樹脂シートの貼り合わせ面に易接着層(プライマー層)が形成」されることが周知である(以下「周知技術2」という。)から、「ポリオレフィン系化粧シート」の「接着剤層」側の面にプライマー層を形成し、上記相違点2に係る本件補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

ウ.審判請求書における審判請求人の主張について

審判請求人は審判請求書において、次のように主張している。

「(4)引用文献記載の発明と本願発明との対比
・・・
しかし、引用文献3に記載された火山性ガラス質複層板は、引用文献3の記載内容を精査してみても、三枚の板状の無機層を積層したものとは認められませんでした。むしろ、引用文献3の図面からも判りますように、難燃性基板1はそれ自体が全体として一枚の板であります。
これに対し、本願の請求項1に係る発明における無機基材層は、板状の第1の無機層、板状の第2の無機層及び板状の第3の無機層の積層体であります。
このように、本願の請求項1に係る発明における無機基材層は、引用文献3に記載された難燃性基材1とは明らかに構成が相違するものであります。
そして、本願の請求項1に係る発明であれば、無機基材層の構成も寄与することで、実施例1~3に示すような高い不燃性、十分なピーリング強度が得られるという顕著な効果を奏することができます。
特に、請求項1に係る発明における無機基材層は、3枚の板状の無機層を積層した構成となっていますので、その積層した部分において熱が伝わりにくい分、引用文献1、3記載のように一枚の板からなる無機基材層に比べて最大発熱速度や発熱速度が遅くなるという効果が期待できます。しかも、極薄い板状のものを多数積層したものではありませんので、強度的な低下を招きにくく、施工時の取り回しなどが大きく低下するようなこともありません。
このように、本願の請求項1に係る発明であれば、引用文献に記載された発明が有していない顕著な効果も奏することができますので、当業者が適宜設計し得るものであるという原審の審査官の認定は不合理であります。
さらに、引用文献1~3には、本願発明の動機付けと成りうる記載は存在しません。」

第一に、上記2.(2)ウ.に摘記しているように、引用文献3には、「鉱物繊維(50wt%)、無機充填剤(34%)および無機系粉体(10wt%)を主成分とする上下層と、火山性ガラス質粉体(50wt%)、無機充填剤(34wt%)及び無機系粉体(10wt%)を主成分とする中心層の3層から成る火山性ガラス質複層板」と記載されているのであり、「板状」については、上記2.(4)アで述べたとおりであるから、請求人の顕著な効果に関する上記主張は、その前提に誤りがある。

第二に、本願の請求項1には、「無機層」の薄さを特定する記載はないから、請求人の「極薄い板状のものを多数積層したものではありません」という構成を前提とした効果に関する上記主張は、特許請求の範囲の記載に基いた主張ではない。

第三に、請求人がいう「本願発明の動機付け」の意味は不明であるが、少なくとも、引用発明には、周知技術1及び周知技術2を適用する動機があるから、「本願発明の動機付け」なるものがいかなるものであったとしても、本件補正発明は、引用発明に周知技術1及び周知技術2を適用することにより、当業者が容易に発明することができたものである。

以上のとおりであるから、審判請求人の上記主張を採用することができない。

3.小括

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、令和1年8月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。

2.原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された周知技術及び引用文献3に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2015-54455号公報
引用文献2:特開2000-167992号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2014-15009号公報(周知技術を示す文献)

3.引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2.(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断

本願発明は、前記第2の[理由]2.で検討した本件補正発明から、「無機基材層」に係る限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2.(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-005019

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